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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】伸縮装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 18/02 20060101AFI20241218BHJP
【FI】
B25J18/02
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020090723
(22)【出願日】2020-05-25
(65)【公開番号】P2021186887
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-02-22
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】306024148
【氏名又は名称】公立大学法人秋田県立大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 敬
(72)【発明者】
【氏名】清野 陸
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 健人
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 靖
【審査官】岩▲崎▼ 優
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05718087(US,A)
【文献】特開平08-318483(JP,A)
【文献】特開昭62-269001(JP,A)
【文献】実開昭57-084961(JP,U)
【文献】特開昭60-094286(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性を有するテープと、
前記テープがロール状に巻き付けられるリールと、
前記リールへの前記テープの巻き取りと前記リールからの前記テープの繰り出しを行うテープ駆動装置と、
前記リールの回転軸に回転トルクを付与して前記テープに巻き取り方向のテンションを付与するものであって、前記リールに巻き付けられた前記テープの弾性力による繰り出し方向のテンションに比べて同等又は僅かに大きい前記巻き取り方向のテンションを付与するテンション付与手段と、
を備えることを特徴とする伸縮装置。
【請求項2】
請求項1に記載の伸縮装置であって、
前記テンション付与手段は、前記リールが前記テープを繰り出す方向に回転するのに伴って巻き締められるぜんまいばねであることを特徴とする伸縮装置。
【請求項3】
請求項2に記載の伸縮装置であって、
前記ぜんまいばねの中心軸と前記リールの回転軸とは、直線状に連結されることを特徴とする伸縮装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載の伸縮装置であって、
前記テープ駆動装置は、
前記リールに巻き付けられた前記テープに接触して回転するローラと、
前記ローラを正逆回転させるモータと、
前記リールによる前記テープの巻き取り及び繰り出しに伴って前記リールの回転軸と前記ローラの回転軸の軸間距離を変化させる軸間距離変化手段と、
を有することを特徴とする伸縮装置。
【請求項5】
弾性を有するテープと、
前記テープがロール状に巻き付けられるリールと、
前記リールへの前記テープの巻き取りと前記リールからの前記テープの繰り出しを行うテープ駆動装置と、
前記リールの回転軸に回転トルクを付与して前記テープに巻き取り方向のテンションを付与するテンション付与手段と、を備え、
前記テープ駆動装置は、
前記リールに巻き付けられた前記テープに接触して回転するローラと、
前記ローラを正逆回転させるモータと、
前記リールによる前記テープの巻き取り及び繰り出しに伴って前記リールの回転軸と前記ローラの回転軸の軸間距離を変化させる軸間距離変化手段と、
を有し、
前記軸間距離変化手段は、
前記リールを支持して揺動軸を中心に揺動自在に設けられたスイング部材と、
前記リールと前記ローラが互いに近づく方向に前記スイング部材を付勢する付勢手段と、
を有することを特徴とする伸縮装置。
【請求項6】
請求項5に記載の伸縮装置であって、
前記リールは、前記スイング部材における前記揺動軸と前記付勢手段の取付位置との間であって、前記付勢手段の前記取付位置に隣接して支持されることを特徴とする伸縮装置。
【請求項7】
請求項から6のいずれか一つに記載の伸縮装置であって、
前記テープは、
前記テープ駆動装置の駆動に伴って伸縮する伸縮部と、
前記リールから前記伸縮部までの非伸縮部と、を有し、
前記非伸縮部における前記テープは、前記ローラのみによって平らに変形することを特徴とする伸縮装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高い伸縮比を有すると共に十分な強度を有する伸縮装置として、特許文献1には、バネ鋼板からなるテープと、テープの巻き取り及び繰り出しを行う繰出装置と、を備えるマニピュレータ機構が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-196026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の伸縮装置では、テープはリールにロール状に巻き付けられる。テープはばね鋼からなり、大きな弾性力を有する。そのため、テープをリールから繰り出す際及びテープをリールに巻き取る際に、テープの弾性力によってテープがリールに密着せずに巻き乱れが生じ易いという問題がある。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、テープの巻き乱れを防止することができる伸縮装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る伸縮装置は、弾性を有するテープと、テープがロール状に巻き付けられるリールと、リールへのテープの巻き取りとリールからのテープの繰り出しを行うテープ駆動装置と、リールの回転軸に回転トルクを付与してテープに巻き取り方向のテンションを付与するものであって、リールに巻き付けられたテープの弾性力による繰り出し方向のテンションに比べて同等又は僅かに大きい巻き取り方向のテンションを付与するテンション付与手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この発明では、伸縮装置はリールの回転軸に回転トルクを付与してテープに巻き取り方向のテンションを付与するテンション付与手段を備えるため、テープがリールに密着した状態を保ちつつ安定したテープの繰り出しと巻き取りを行うことができる。よって、テープの巻き乱れを防止することができる。
【0008】
また、本発明は、テンション付与手段は、リールがテープを繰り出す方向に回転するのに伴って巻き締められるぜんまいばねであることを特徴とする。
【0009】
この発明では、ぜんまいばねは、その弾性力によってリールに対してテープを巻き取る方向の回転トルクを常時付与することができる。
【0010】
また、本発明は、ぜんまいばねの中心軸とリールの回転軸とは、直線状に連結されることを特徴とする。
【0011】
この発明では、ぜんまいばねはリールと別体に設けられるため、リールへのテープの巻き取り長さの仕様に応じて、最適なぜんまいばねに容易に交換することができる。
【0012】
また、本発明は、テープ駆動装置は、リールに巻き付けられたテープに接触して回転するローラと、ローラを正逆回転させるモータと、リールによるテープの巻き取り及び繰り出しに伴ってリールの回転軸とローラの回転軸の軸間距離を変化させる軸間距離変化手段と、を有することを特徴とする。
また、本発明は、弾性を有するテープと、テープがロール状に巻き付けられるリールと、リールへのテープの巻き取りとリールからのテープの繰り出しを行うテープ駆動装置と、リールの回転軸に回転トルクを付与してテープに巻き取り方向のテンションを付与するテンション付与手段と、を備え、テープ駆動装置は、リールに巻き付けられたテープに接触して回転するローラと、ローラを正逆回転させるモータと、リールによるテープの巻き取り及び繰り出しに伴ってリールの回転軸とローラの回転軸の軸間距離を変化させる軸間距離変化手段と、を有し、軸間距離変化手段は、リールを支持して揺動軸を中心に揺動自在に設けられたスイング部材と、リールとローラが互いに近づく方向にスイング部材を付勢する付勢手段と、を有することを特徴とする。
【0013】
これらの発明では、リールに巻き付けられたテープの直径が変化しても、ローラの回転をテープに安定して伝達することができる。
【0014】
また、本発明は、リールは、スイング部材における揺動軸と付勢手段の取付位置との間であって、付勢手段の取付位置に隣接して支持されることを特徴とする。
【0015】
この発明では、リールに巻き付けられたテープはローラに対して強く押し付けられるため、ローラの回転をテープに安定して伝達することができる。
【0016】
また、本発明は、テープは、テープ駆動装置の駆動に伴って伸縮する伸縮部と、リールから伸縮部までの非伸縮部と、を有し、非伸縮部におけるテープは、ローラのみによって平らに変形することを特徴とする。
【0017】
この発明では、非伸縮部におけるテープの剛性を高めることができる。また、ローラは、テープの繰り出しと巻き取りを行う機能と、テープを平らに変形させる機能との2つの機能を有するため、部品点数が削減され構造の簡素化が図られる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、テープの巻き乱れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る伸縮装置を示す模式図であり、伸縮部が伸長した状態である。
図2】本発明の実施形態に係る伸縮装置を示す模式図であり、伸縮部が収縮した状態である。
図3】テープの断面図であって、テープの長手方向に垂直な断面を示す図である。
図4】結束板の平面図である。
図5】本発明の実施形態に係る伸縮装置におけるテープ駆動装置の底面模式図である。
図6】テープに作用するテンションを示す図である。
図7】本発明の実施形態に係る伸縮装置の変形例を示す模式図である。
図8】本発明の実施形態に係る伸縮装置の変形例を示す模式図であって、(a)は伸縮部が伸長した状態のテープ駆動装置の図であり、(b)は伸縮部が収縮した状態のテープ駆動装置の図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る伸縮装置100について説明する。
【0021】
図1に示すように、伸縮装置100は、弾性を有するテープ1と、テープ1がロール状に巻き付けられるリール5と、リール5へのテープ1の巻き取りとリール5からのテープ1の繰り出しを行うテープ駆動装置30と、テープ1に巻き取り方向のテンションを付与するテンション付与手段としてのぜんまいばね40と、を備える。
【0022】
伸縮装置100は、テープ1を伸縮させて駆動対象物101を動かしたり、テープ1にハンド102(図7参照)等のアタッチメントを取り付けてマニピュレータとして用いられるものである。
【0023】
テープ1は、弾性を有する材料にて形成され、本実施形態では、ステンレスばね鋼にて形成される。テープ1は、ステンレスばね鋼に限らず、適度なばね性と剛性を有する材料で形成されればよく、合成樹脂や、合成樹脂に繊維(炭素繊維、ガラス繊維)や金属を組み合せた複合材料にて形成してもよい。
【0024】
図3に示すように、テープ1は、長手方向に垂直な断面が円弧状に形成され、凸面1aと凹面1bを有する。テープ1は、外力が作用していない状態では、長手方向に直線状に形成される。テープ1は、断面円弧状であるため、長手方向からの外力に対しては高い剛性を示し、容易に折れ曲がることはない。一方、長手方向と垂直な方向からの外力に対しては折れ曲がり、外力が除去されると元の直線状に弾性復帰する。
【0025】
図1に示すように、テープ駆動装置30は、ケース35と、リール5に巻き付けられたテープ1に接触して回転するローラ31と、ローラ31を正逆回転させるモータ32と、ローラ31とリール5を互いに近づく方向に付勢する付勢手段としてのコイルばね33と、を有する。モータ32の駆動によりローラ31が回転することによって、リール5へのテープ1の巻き取りとリール5からのテープ1の繰り出しが行われる。具体的には、モータ32が正転駆動することによってリール5からテープ1が繰り出され、モータ32が逆転駆動することによってリール5にテープ1が巻き取られる。ケース35には、ケース35内へのテープ1の出入りを案内するガイド部35aが設けられる。ガイド部35aには、テープ1が摺動自在に挿通し、テープ1を案内する円弧状のガイドスリットが形成される。
【0026】
伸縮装置100は、テープ1を180度折り返す折返装置50をさらに備える。テープ1は、1本の連続したテープからなり、テープ駆動装置30から繰り出された後、折返装置50にて180度折り返され、末端がテープ駆動装置30のケース35に固定される。このように、テープ1は、折返部2と固定端3とを有する。
【0027】
折返装置50では、折返部2は、テープ1の凸面1aが外側となる方向に曲げられる。これは、断面円弧状であるテープ1は、凸面1aが外側となる方向には比較的容易に曲がる一方、凹面1bが外側となる方向に曲がるには大きな力が必要になるためである。折返部2はテープ1の凸面1aが外側となる方向に曲げられているため、折返装置50においてテープ1はスムーズに送られる。なお、リール5に巻き付けられているテープ1も、凸面1aが外側となる方向に曲げられて巻き付けられている。
【0028】
テープ駆動装置30からテープ1が繰り出されると、テープ1の繰り出し量に応じて、テープ1の折返部2は固定端3から離れる方向(図1中上方向)へ移動する。一方、テープ駆動装置30がテープ1を巻き取ると、テープ1の巻き取り量に応じて、テープ1の折返部2は固定端3に近づく方向(図1中下方向)へ移動する。このように、テープ1は、折返部2が自由端として機能し、テープ駆動装置30の駆動に伴って折返部2と固定端3の間の長さが変化する。一方、テープ1におけるリール5とケース35のガイド部35aの間の長さは変化しない。つまり、テープ1におけるガイド部35aから折返部2を経由して固定端3にわたる部分が、テープ駆動装置30の駆動に伴って伸縮する伸縮部10として機能し、テープ1におけるリール5からガイド部35aまでの部分、つまり、テープ1におけるリール5から伸縮部10までの部分が、テープ駆動装置30が駆動したとしても伸縮しない非伸縮部20として機能する。駆動対象物101は折返装置50のケース51に取り付けられるため、伸縮部10を伸縮させることによって、駆動対象物101を動かすことができる。
【0029】
伸縮部10は、先端部に形成されテープ1が180度折り返された折返部2と、テープ1の末端が固定された固定端3とを有するため、2本のテープ1が重なった二重に形成される。したがって、例えば、テープ駆動装置30からテープ1が1m繰り出されると、駆動対象物101は図1中0.5m上方向へ移動し、テープ駆動装置30がテープ1を1m巻き取ると、駆動対象物101は図1中0.5m下方向へ移動する。伸縮部10はテープ1が二重に形成されるため、長手方向の剛性が増し、重量のある駆動対象物101を支持して駆動することが可能となる。
【0030】
伸縮部10には、長手方向に間隔を空けて配置され、2本のテープ1を束ねる複数の結束板11が設けられる。2本のテープ1は、図4に示すように、互いの凹面1bが対向するように結束板11によって束ねられる。結束板11には、テープ1の外形形状と相似形状であってテープ1の外形形状よりも僅かに大きい円弧状の2つのガイドスリット11aが形成される。テープ1は、ガイドスリット11aを摺動自在に挿通し、伸縮部10の伸縮時にはガイドスリット11aに案内されて送られる。
【0031】
図1に示すように、隣り合う結束板11は、紐12によって互いに連結されており、隣り合う結束板11を連結する紐12の長さによって隣り合う結束板11の間隔が設定される。折返装置50に一番近い結束板11(図1中最上方の結束板11)は、紐12によって、折返装置50のケース51に取り付けられる。このように、各結束板11は、紐12を介して折返装置50に吊り下げられる。また、テープ駆動装置30に一番近い結束板11(図1中最下方の結束板11)は、紐12によって、テープ駆動装置30のケース35に取り付けられる。紐12が全体にわたって張った状態が、伸縮部10の最大伸長状態となる(図1に示す状態)。紐12に代わりロープや針金を用いてもよい。
【0032】
テープ1の伸縮部10に過大な外力が作用し、伸縮部10がある部分で折れ曲がったとしても、伸縮部10のテープ1は複数の結束板11にて束ねられて支持されているため、外力が除去されると元の直線状に弾性復帰する。換言すれば、伸縮部10のテープ1は、複数の結束板11によって支持されていることにより、外力に対して折れ曲がることが防止されている。隣り合う結束板11の間隔は、伸縮部10の基端部である固定端3から先端部である折返部2に向かって徐々に大きくなるように配置される。これは、伸縮部10には、基端側ほど大きな負荷が作用するためである。結束板11の数、及び隣り合う結束板11の間隔は、伸縮部10の長さ、駆動対象物101の重量、伸縮装置100の用途、及びテープ1の剛性等を考慮して設定される。
【0033】
テープ1の固定端3とテープ駆動装置30のケース35との間には、圧力検出器としての圧力センサ60が設けられる。ケース35は固定端3を通じて伸縮部10に作用する荷重を支持する機能も有するため、圧力センサ60の検出結果に基づいて伸縮部10に作用する荷重を算出することができる。圧力センサ60の検出結果に基づいて、伸縮部10に作用する過負荷を判定したり、伸縮部10の折れ曲がりを判定したりすることが可能となる。また、ケース35のガイド部35aに、テープ1の繰り出し量と巻き取り量を検出して、伸縮部10のストロークを検出するストロークセンサを設けるようにしてもよい。ストロークセンサの検出結果に基づいてモータ32の駆動を制御することによって、伸縮部10のストロークを制御することが可能となる。なお、ストロークセンサは、後述する折返装置50におけるケース51のガイド部54に設けてもよい。
【0034】
折返装置50は、ケース51と、ケース51に回転自在に設けられテープ1の走行方向を180度変更する方向変更ローラ52と、方向変更ローラ52に対してテープ1を押し付ける複数のガイドローラ53と、ケース51に設けられケース51内へのテープ1の出入りを案内するガイド部54と、を有する。本実施形態では、ガイドローラ53は4つ設けられる。
【0035】
ガイド部54には、テープ1が摺動自在に挿通し、テープ1を案内する円弧状の2つのガイドスリットが形成される。2つのガイドスリットの形状は、図4に示す結束板11に形成された2つのガイドスリット11aと同じ形状である。
【0036】
ガイド部54からケース51内に進入したテープ1は、ガイド部54から方向変更ローラ52にかけて徐々に断面円弧状から断面矩形状に変形して略平らな状態で方向変更ローラ52の外周面に沿って送られる。そして、方向変更ローラ52からガイド部54にかけて徐々に断面矩形状から断面円弧状に変形する。このように、テープ1は方向変更ローラ52によってスムーズに走行方向が変更される。テープ1におけるガイド部54と方向変更ローラ52との間の部分は、断面形状が徐々に変化する形状遷移区間となる。この形状遷移区間におけるテープ1は、他の部分と比較して剛性が低いため、折れ曲がり易い。したがって、形状遷移区間におけるテープ1の折れ曲がりを防止するために、形状遷移区間にテープ1の走行を案内するガイドローラ55を設けることが好ましい。
【0037】
次に、主に図5を参照して、リール5、テープ駆動装置30、及びぜんまいばね40について詳しく説明する。
【0038】
ローラ31は、ケース35に回転自在に支持される。ローラ31におけるテープ1に接触する外周部は弾性部材としてのウレタンゴムによって形成される。したがって、テープ1とローラ31の滑りが防止され、ローラ31の回転がテープ1に安定して伝達される。
【0039】
モータ32はケース35に固定され、モータ32の回転軸はローラ31の回転軸31aに連結される。なお、減速機を介してモータ32の回転軸とローラ31の回転軸31aとを連結してもよい。
【0040】
モータ32の駆動によってローラ31が回転し、リール5へのテープ1の巻き取りとリール5からのテープ1の繰り出しが行われると、リール5に巻き付けられたテープ1の直径が増減する。リール5に巻き付けられたテープ1の直径が増減したとしても、ローラ31の回転がリール5に巻き付けられたテープ1に安定して伝達されるように、テープ駆動装置30は、リール5を支持すると共に揺動軸34aを中心に揺動自在にケース35に設けられたスイング部材34(図1及び2参照)を有する。
【0041】
スイング部材34は、プレート状であって、ケース35の両側板35bに沿って一対設けられる。リール5の回転軸5aの両端のそれぞれは、一対のスイング部材34に回転自在に支持される。このように、リール5は、一対のスイング部材34に挟まれて支持される。
【0042】
リール5は、スイング部材34における揺動軸34aとは反対側に支持されるため(図1参照)、スイング部材34が揺動軸34aを中心として揺動すると、リール5がローラ31に対して相対移動する。
【0043】
コイルばね33は、一対のスイング部材34にわたって設けられたピン36とケース35の両側板35bにわたって設けられたピン37との間にわたって設けられる。スイング部材34に支持されたリール5は、コイルばね33の付勢力によってローラ31に向けて常時付勢される。このように、コイルばね33は、リール5とローラ31が互いに近づく方向に、スイング部材34を付勢する。これにより、リール5に巻き付けられたテープ1はローラ31に押し付けられて密着し、テープ1とローラ31の滑りが防止される。また、コイルばね33の付勢力によりテープ1がローラ31に押し付けられることによって、テープ1は断面矩形状の略平らな状態でリール5に巻き付けられる。このように、折返装置50の形状遷移区間と同様に、テープ1におけるガイド部35aとリール5との間の部分は、断面形状が徐々に変化する形状遷移区間となる。つまり、非伸縮部20は形状遷移区間となる。上述したように、形状遷移区間におけるテープ1は、他の部分と比較して剛性が低い。また、形状遷移区間である非伸縮部20は、テープ1が二重に形成された伸縮部10と異なり、1本のテープ1にて形成されるため、伸縮部10と比較して剛性が低い。したがって、形状遷移区間である非伸縮部20のテープ1の折れ曲がりを防止するために、ガイド部35aとリール5との間にテープ1の走行を案内するガイドを設けてもよい。このガイドとしては、例えば、テープ1の凸面1a側及び凹面1b側の双方に設けられるテフロン(登録商標)製のすべり部材である。
【0044】
本実施形態では、コイルばね33はリール5を中心として対称な位置に一対設けられるため、テープ1はローラ31に対して均一に押し付けられる。また、リール5は、スイング部材34における揺動軸34aとピン36(コイルばね33の取付位置)との間であって、ピン36に隣接して支持される(図1参照)。具体的には、リール5は、スイング部材34における揺動軸34aとピン36の中央からピン36寄りに支持される。したがって、テープ1はローラ31に対して強く押し付けられるため、ローラ31の回転がテープ1に安定して伝達される。なお、コイルばね33のばね常数やコイルばね33の数は、ローラ31の回転がテープ1に安定して伝達されるように、テープ1の材料や剛性等に応じて適宜調整される。
【0045】
本実施形態では、テープ1におけるリール5から伸縮部10までの非伸縮部20において、テープ1を略平らに変形させるのは、テープ1の繰り出しと巻き取りを行うためのローラ31のみである。テープ1は平らに変形した箇所の剛性が低くなるが、非伸縮部20において、テープ1が略平らに変形されるのはローラ31との接触部のみであるため、非伸縮部20におけるテープ1の剛性の低下は最小限に抑えられる。また、ローラ31は、テープ1の繰り出しと巻き取りを行う機能と、テープ1を略平らに変形させる機能との2つの機能を有するため、部品点数が削減され構造の簡素化が図られる。
【0046】
リール5へテープ1が巻き取られ、リール5に巻き付けられたテープ1の直径が大きくなると、スイング部材34はコイルばね33の付勢力に抗して揺動し、リール5がローラ31から離れる方向に移動する(図2に示す状態)。一方、リール5からテープ1が繰り出され、リール5に巻き付けられたテープ1の直径が小さくなると、スイング部材34はコイルばね33の付勢力によって揺動し、リール5がローラ31に近づく方向に移動する(図1に示す状態)。このように、スイング部材34は、リール5によるテープ1の巻き取り及び繰り出しに伴ってリールの回転軸5aとローラ31の回転軸31aの軸間距離を変化させて、ローラ31の回転がテープ1に安定して伝達されるように動作する。スイング部材34及びコイルばね33が軸間距離変化手段に相当する。
【0047】
ここで、テープ1はリール5にロール状に巻き付けられる。テープ1はばね鋼からなり、大きな弾性力を有するため、リール5に巻き付けられたテープ1には、図6に白色矢印で示すように、径方向に拡がって元の形状である直線状に戻ろうとする力が作用する。このように、リール5に巻き付けられたテープ1には、テープ1の弾性力によって繰り出し方向のテンションが作用する。したがって、テープ1をリール5に巻き取る際に、テープ1の弾性力によって、テープ1がリール5に密着せずにリール5に沿って正しく巻き付かない巻き乱れが生じ易い。
【0048】
本実施形態では、コイルばね33の付勢力によって、リール5はローラ31に向けて常時付勢されているものの、コイルばね33のみによってテープ1の巻き乱れを防止しようとすると、ばね定数が大きいコイルばね33を使用したり、コイルばね33の数を増やしたりしてコイルばね33のばね力を大きくする必要があり、調整が難しい。また、テープ1の巻き乱れを防止するためにコイルばね33のばね力を大きくすると、テープ1とローラ31の密着力が大きくなり過ぎて高出力のモータ32を用いる必要がある。
【0049】
そこで、テープ1の巻き乱れの対策として、伸縮装置100は、リール5の回転軸5aに回転トルクを付与してテープ1に巻き取り方向のテンションを付与するぜんまいばね40を備える。図1に示すように、ぜんまいばね40は、ケース41と、ケース41内に渦巻状に収容され一端がケース41の内壁に連結されたばね部42と、ばね部42の他端が連結された中心軸43と、を有する。ケース41は、テープ駆動装置30のケース35に固定される。
【0050】
ぜんまいばね40の中心軸43は、リール5の回転軸5aに連結される。リール5がテープ1を繰り出す方向に回転するのに伴って、ばね部42は中心軸43を中心として巻き締められる。したがって、図6に黒色矢印で示すように、ばね部42は、その弾性力によってリール5に対してテープ1を巻き取る方向の回転トルクを付与する。このように、ぜんまいばね40によって、テープ1には、巻き取り方向のテンションが常時付与される。
【0051】
以上のように、図6に示すように、リール5に巻き付けられたテープ1には、テープ1の弾性力による繰り出し方向のテンション(図6中白色矢印)が作用すると共に、ぜんまいばね40による巻き取り方向のテンション(図6中黒色矢印)が作用する。これら2つのテンションはほぼバランスしているか、又はぜんまいばね40による巻き取り方向のテンションの方が僅かに大きい。したがって、リール5に巻き付けられたテープ1は、巻き乱れることなくリール5に密着した状態に保たれる。
【0052】
テープ1が繰り出された状態でモータが停止した際には(図1に示すような状態)、ローラ31とテープ1の摩擦力によって、リール5は停止した状態に維持される。
【0053】
モータ32が正転駆動してリール5からテープ1が繰り出される際には、リール5に巻き付けられたテープ1は、ぜんまいばね40による巻き取り方向のテンションによりリール5に密着した状態を保ちつつリール5から安定して繰り出される。
【0054】
モータ32が逆転駆動してリール5にテープ1が巻き取られる際には、ぜんまいばね40による巻き取り方向のテンションによりリール5がテープ1の巻き取りと同調して回転するため、テープ1はリール5に密着した状態を保ちつつ安定して巻き取られる。
【0055】
このように、テープ1はリール5に密着した状態を保ちつつ、リール5から安定して繰り出されると共にリール5に巻き取られる。したがって、リール5には、テープ1の巻き乱れを防止するためのガイドや鍔等を設ける必要がないため、リール5の構造を簡素化することができる。
【0056】
図5に示すように、ぜんまいばね40の中心軸43とリール5の回転軸5aとは直線状に連結される。ぜんまいばね40は、リール5の内部に収容することも可能ではあるが、その中心軸43がリール5の回転軸5aと直線状に連結されることによって、リール5の外部、さらに具体的にはテープ駆動装置30のケース35の外部に設けられる。つまり、ぜんまいばね40はリール5と別体に設けられる。
【0057】
伸縮部10の長さが長くリール5へのテープ1の巻き取り長さが長い場合には、テープ1の弾性力による繰り出し方向のテンション(図6中白色矢印)が大きくなる。この場合には、テープ1の巻き乱れを防止するため、ばね部42のばね力を大きくしてぜんまいばね40による巻き取り方向のテンションを大きくする必要がある。このように、テープ1の巻き取り長さの仕様に応じて、ぜんまいばね40のサイズを調整する必要がある。本実施形態では、ぜんまいばね40はリール5と別体に設けられるため、テープ1の巻き取り長さの仕様に応じて、最適なぜんまいばね40に容易に交換することができる。
【0058】
また、リール5の直径には、テープ1が安定して巻き付けられるための最適な範囲がある。つまり、リール5の直径が大き過ぎても小さ過ぎても安定したテープ1の巻き取りが困難となる。安定したテープ1の巻き取りに最適なリール5の直径は、テープ1の材料や剛性等により異なる。本実施形態では、ぜんまいばね40はリール5の内部に収容されずリール5と別体に設けられるため、テープ1の材料や剛性等の仕様に応じて最適な直径を有するリール5に容易に交換することができる。また、リール5の直径をぜんまいばね40の外径よりも小さくすることができ、テープ駆動装置30をコンパクトに構成することができる。
【0059】
以上のように構成される伸縮装置100の動作について、図1及び図2を参照して説明する。
【0060】
モータ32が正転駆動してローラ31が回転すると、リール5からテープ1が繰り出され、繰り出されたテープ1は、非伸縮部20から伸縮部10へと送られる。これにより、伸縮部10が伸長し(図1中上方向へ伸長)、折返装置50に取り付けられた駆動対象物101は図1中上方向へ移動する。これに伴って、ぜんまいばね40のばね部42は中心軸43を中心として巻き締められるため、リール5に巻き付けられたテープ1は、ぜんまいばね40による巻き取り方向のテンションによりリール5に密着した状態を保ちつつリール5から安定して繰り出される。リール5からテープ1が繰り出され、リール5に巻き付けられたテープ1の直径が小さくなると、スイング部材34はコイルばね33の付勢力によって揺動し、リール5がローラ31に近づく方向に移動するため、ローラ31の回転がテープ1に安定して伝達される。
【0061】
伸縮部10の最大伸長状態(図1に示す状態)では、紐12が全体にわたって張った状態となり、各結束板11は紐12を介して折返装置50に吊り下げられた状態となる。
【0062】
一方、モータ32が逆転駆動してローラ31が回転すると、リール5にテープ1が巻き取られ、伸縮部10のテープ1は非伸縮部20へと送られる。これにより、伸縮部10が収縮し(図1中下方向へ収縮)、折返装置50に取り付けられた駆動対象物101は図1中下方向へ移動する。これに伴って、ぜんまいばね40のばね部42は解放されていき、ぜんまいばね40による巻き取り方向のテンションによりリール5がテープ1の巻き取りと同調して回転するため、テープ1はリール5に密着した状態を保ちつつ安定して巻き取られる。また、巻き取られるテープ1は、コイルばね33の付勢力によりローラ31に押し付けられるため、断面円弧状から断面矩形状に変形して略平らな状態でリール5に巻き取られる。さらに、リール5にテープ1が巻き取られ、リール5に巻き付けられたテープ1の直径が大きくなると、スイング部材34はコイルばね33の付勢力に抗して揺動し、リール5がローラ31から離れる方向に移動するため、ローラ31の回転がテープ1に安定して伝達される。
【0063】
伸縮部10の最収縮状態(図2に示す状態)では、紐12は緩んだ状態となり(図2では紐12の図示を省略)、折返装置50のケース51が一端の結束板11に接触すると共に、テープ駆動装置30のケース35が他端の結束板11に接触して、隣り合う結束板11が互いに接触した状態となる。このように、伸縮部10は、折返装置50のケース51とテープ駆動装置30のケース35との間で隣り合う結束板11が互いに接触するまで収縮する。
【0064】
リール5からテープ1が繰り出される途中、又はリール5にテープ1が巻き取られる途中で、モータ32が停止すると、ローラ31とテープ1の摩擦力によって、リール5は停止した状態に維持され、駆動対象物101は伸縮部10によって保持される。
【0065】
伸縮装置100の用途としては、天窓の開閉装置や、ドアの開閉装置、車両のリアハッチを開閉するステー等の種々の用途に利用することができる。また、伸縮装置100は、図7に示すように、駆動対象物101に代えて、開閉動作が可能なハンド102等のアタッチメントを折返装置50に取り付けてマニピュレータとしても用いることができる。
【0066】
以下に、上記実施形態の変形例について説明する。以下のような変形例も本発明の範囲内であり、以下の変形例と上記実施形態の構成とを組み合わせたり、以下の変形例同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0067】
(1)上記実施形態では、テープ1が断面円弧状である形態について説明した。しかし、テープ1の断面形状は円弧状に限定されず、矩形や円形等であってもよい。
【0068】
(2)上記実施形態では、テープ1が折返部2と固定端3を有する形態について説明した。これに代わり、テープ1を折り返さずに、テープ1の先端部に駆動対象物101を取り付けるようにしてもよい。この形態では、伸縮部10を複数本のテープ1で構成してもよい。具体的には、1つのテープ駆動装置30から重ね合わされた複数本のテープ1を同時に繰り出すようにしてもよい。また、複数のテープ駆動装置30からそれぞれ繰り出されたテープ1を束ねるようにしてもよい。
【0069】
(3)上記実施形態では、テープ1に巻き取り方向のテンションを付与するテンション付与手段がぜんまいばね40である形態について説明した。しかし、テンション付与手段は、テープ1に巻き取り方向のテンションを付与する構成であれば、ぜんまいばね40に限定されない。例えば、テンション付与手段として、ぜんまいばね40に代えて電動モータを用いてもよい。その場合には、電動モータの出力軸がリール5の回転軸5aに連結される。リール5に巻き付けられたテープ1の回転に対して電動モータの回転を差動制御することによって、テープ1に巻き取り方向のテンションが付与される。具体的には、リール5に巻き付けられたテープ1が繰り出し方向に1回転する際には、電動モータはテープ1の繰り出し方向に1回転未満、例えば0.9回転するように制御され、リール5に巻き付けられたテープ1が巻き取り方向に1回転する際には、電動モータはテープ1の巻き取り方向に1回転以上、例えば1.1回転するように制御される。また、テンション付与手段として、トーションバーを用いてもよい。さらに、テンション付与手段として、リール5がテープ1を繰り出す方向に回転するのに伴って空気が圧縮され、その圧縮空気を利用してテープ1に巻き取り方向のテンションを付与するようにしてもよい。
【0070】
(4)上記実施形態では、ぜんまいばね40の中心軸43とリール5の回転軸5aとが直線状に連結される形態について説明した。しかし、ぜんまいばね40の回転トルクがリール5の回転軸5aに付与される構成であればよく、ぜんまいばね40の中心軸43とリール5の回転軸5aとを直線状に連結する形態に限定されない。例えば、歯車、チェーン、ベルト等を介して、ぜんまいばね40の中心軸43とリール5の回転軸5aとを連結するようにしてもよい。歯車等を介することによってぜんまいばね40の中心軸43とリール5の回転軸5aとの回転比を変更すれば、ぜんまいばね40のばね部42の剛性や巻き数を調整してぜんまいばね40をコンパクトに構成することができる。
【0071】
(5)上記実施形態では、リール5によるテープ1の巻き取り及び繰り出しに伴ってリール5の回転軸5aとローラ31の回転軸31aの軸間距離を変化させる軸間距離変化手段として、リール5を支持して揺動軸34aを中心に揺動自在に設けられたスイング部材34と、リール5とローラ31が互いに近づく方向にスイング部材34を付勢するコイルばね33と、を有する揺動式の形態について説明した。これに代わり、軸間距離変化手段は、図8に示す変形例の形態であってもよい。図8(a)は伸縮部10が伸長した状態におけるテープ駆動装置30の模式図であり、図8(b)は伸縮部10が収縮した状態におけるテープ駆動装置30の模式図である。なお、図8(a)及び(b)では、ぜんまいばね40の図示を省略している。図8に示す変形例では、軸間距離変化手段として、ケース35に固定された一対のレール70と、一対のレール70に沿ってスライド自在に設けられリール5の回転軸5aを支持するスライダ71と、リール5とローラ31が互いに近づく方向にスライダ71を付勢する付勢手段としてのコイルばね72と、を有する。リール5へテープ1が巻き取られ、リール5に巻き付けられたテープ1の直径が大きくなると、スライダ71がコイルばね72の付勢力に抗してレール70に沿って移動し、リール5がローラ31から離れる方向に移動する(図8(b)に示す状態)。一方、リール5からテープ1が繰り出され、リール5に巻き付けられたテープ1の直径が小さくなると、スライダ71がコイルばね72の付勢力によってレール70に沿って移動し、リール5がローラ31に近づく方向に移動する(図8(a)に示す状態)。このように、図8に示す変形例は、直動式の軸間距離変化手段である。上記実施形態で説明した揺動式の軸間距離変化手段では、図1及び図2からわかるように、リール5によるテープ1の巻き取り及び繰り出しに伴って、リール5の回転軸5aは円弧軌道を描くように移動するため、リール5に巻き付けられたテープ1とローラ31の外周面との接触位置が僅かに変化する。これにより、リール5とローラ31の間に挟まれるテープ1に作用するテンションが微妙に変化するおそれがある。これに対して、図8に示す変形例では、リール5によるテープ1の巻き取り及び繰り出しに伴って、リール5の回転軸5aは直線的に移動するため、リール5に巻き付けられたテープ1とローラ31の外周面との接触位置が変化しない。よって、テープ1に作用するテンションが安定するという利点がある。
【0072】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0073】
伸縮装置100は、弾性を有するテープ1と、テープ1がロール状に巻き付けられるリール5と、リール5へのテープ1の巻き取りとリール5からのテープ1の繰り出しを行うテープ駆動装置30と、テープ1に巻き取り方向のテンションを付与するテンション付与手段と、を備える。
【0074】
この構成では、伸縮装置100はテープ1に巻き取り方向のテンションを付与するぜんまいばね40を備えるため、テープ1がリール5に密着した状態を保ちつつ安定したテープ1の繰り出しと巻き取りを行うことができる。よって、テープの巻き乱れを防止することができる。
【0075】
また、テンション付与手段は、リール5がテープ1を繰り出す方向に回転するのに伴って巻き締められるぜんまいばね40である。
【0076】
この構成では、ぜんまいばね40は、その弾性力によってリール5に対してテープ1を巻き取る方向の回転トルクを常時付与することができる。
【0077】
また、ぜんまいばね40の中心軸43とリール5の回転軸5aとは、直線状に連結される。
【0078】
この構成では、ぜんまいばね40はリール5と別体に設けられるため、リール5へのテープ1の巻き取り長さの仕様に応じて、最適なぜんまいばね40に容易に交換することができる。
【0079】
また、テープ駆動装置30は、リール5に巻き付けられたテープ1に接触して回転するローラ31と、ローラ31を正逆回転させるモータ32と、リール5によるテープ1の巻き取り及び繰り出しに伴ってリール5の回転軸5aとローラ31の回転軸31aの軸間距離を変化させる軸間距離変化手段(スイング部材34,コイルばね33)と、を有する。
また、軸間距離変化手段は、リール5を支持して揺動軸34aを中心に揺動自在に設けられたスイング部材34と、リール5とローラ31が互いに近づく方向にスイング部材34を付勢する付勢手段としてのコイルばね33と、を有する。
【0080】
これらの構成では、リール5に巻き付けられたテープ1の直径が変化しても、ローラ31の回転をテープ1に安定して伝達することができる。
【0081】
また、リール5は、スイング部材34における揺動軸34aとコイルばね33の取付位置との間であって、コイルばね33の取付位置に隣接して支持される。
【0082】
この構成では、リール5に巻き付けられたテープ1はローラ31に対して強く押し付けられるため、ローラ31の回転をテープ1に安定して伝達することができる。
【0083】
また、テープ1は、テープ駆動装置30の駆動に伴って伸縮する伸縮部10と、リール5から伸縮部10までの非伸縮部20と、を有し、非伸縮部20におけるテープ1は、ローラ31のみによって平らに変形する。
【0084】
この構成では、非伸縮部20におけるテープ1の剛性を高めることができる。また、ローラ31は、テープ1の繰り出しと巻き取りを行う機能と、テープ1を平らに変形させる機能との2つの機能を有するため、部品点数が削減され構造の簡素化が図られる。
【0085】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0086】
100・・・伸縮装置、1・・・テープ、1a・・・テープの凸面、1b・・・テープ1の凹面、2・・・折返部、3・・・固定端、5・・・リール、5a・・・リールの回転軸、10・・・伸縮部、20・・・非伸縮部、30・・・テープ駆動装置、31・・・ローラ、31a・・・ローラの回転軸、32・・・モータ、33・・・コイルばね(軸間距離変化手段,付勢手段)、34・・・スイング部材(軸間距離変化手段)、34a・・・揺動軸、35・・・ケース、40・・・ぜんまいばね(テンション付与手段)、42・・・ばね部、50・・・折返装置、101・・・駆動対象物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8