(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】フィルム洗浄装置
(51)【国際特許分類】
B41F 35/00 20060101AFI20241218BHJP
B08B 3/08 20060101ALI20241218BHJP
B08B 1/34 20240101ALI20241218BHJP
B08B 5/04 20060101ALI20241218BHJP
B08B 3/02 20060101ALI20241218BHJP
B41F 23/04 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
B41F35/00 D
B08B3/08 A
B08B1/34
B08B5/04 A
B08B3/02 C
B41F23/04 Z
(21)【出願番号】P 2021004916
(22)【出願日】2021-01-15
【審査請求日】2023-10-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000237260
【氏名又は名称】富士機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】松岡 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】市川 幹二
(72)【発明者】
【氏名】奥林 賢大
(72)【発明者】
【氏名】木村 貴也
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-509613(JP,A)
【文献】特開2009-219986(JP,A)
【文献】特開2019-005707(JP,A)
【文献】特開昭60-155016(JP,A)
【文献】特開平06-116742(JP,A)
【文献】特開平08-173927(JP,A)
【文献】特開平10-268498(JP,A)
【文献】特開平09-057226(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 35/00
B08B 3/08
B08B 1/34
B08B 5/04
B08B 3/02
B41F 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続搬送されるフィルムに付着するインキを洗浄液により洗浄して前記フィルムから除去するよう構成されたフィルム洗浄装置であって、
前記フィルムに前記洗浄液を付着させてインキを前記フィルムから剥離させるインキ剥離ユニットと、当該インキ剥離ユニットにて前記フィルムに付着させた洗浄液を回収する洗浄液回収ユニットと、前記フィルムを水洗いする水洗ユニットとがフィルム搬送方向に順に設けられ、
前記洗浄液回収ユニットは、不織布からなる外周層が前記フィルムに回転しながら接するとともに、第1吸引手段により不織布の隙間を介して前記フィルムに付着する洗浄液を回転軸内部へと吸引する洗浄液吸引ロールを備え
、
前記フィルムは複数のガイドローラによって案内されながら連続搬送され、
前記各ガイドローラの表面は、鏡面仕上げ加工が施されていることを特徴とするフィルム洗浄装置。
【請求項2】
請求項
1に記載のフィルム洗浄装置において、
前記インキ剥離ユニットは、複数の洗浄液用シャワーノズルにより前記洗浄液を前記フィルムに向けて噴出させて付着させるよう構成されていることを特徴とするフィルム洗浄装置。
【請求項3】
請求項
2に記載のフィルム洗浄装置において、
前記インキ剥離ユニットは、フィルム搬送方向に対して逆回転しながら前記フィルムに接してインキを剥離させる複数の剥離ロールを備えていることを特徴とするフィルム洗浄装置。
【請求項4】
請求項
3に記載のフィルム洗浄装置において、
前記複数の剥離ロールは、毛材が柔軟性を有する樹脂材で形成されたブラシが外周層を構成する少なくとも1つの第1剥離ロールと、樹脂材を発泡成形して得られたスポンジが外周層を構成する少なくとも1つの第2剥離ロールとを備え、
前記第1剥離ロールは、前記第2剥離ロールよりもフィルム搬送方向上流側に位置していることを特徴とするフィルム洗浄装置。
【請求項5】
連続搬送されるフィルムに付着するインキを洗浄液により洗浄して前記フィルムから除去するよう構成されたフィルム洗浄装置であって、
前記フィルムに前記洗浄液を付着させてインキを前記フィルムから剥離させるインキ剥離ユニットと、当該インキ剥離ユニットにて前記フィルムに付着させた洗浄液を回収する洗浄液回収ユニットと、前記フィルムを水洗いする水洗ユニットとがフィルム搬送方向に順に設けられ、
前記洗浄液回収ユニットは、不織布からなる外周層が前記フィルムに回転しながら接するとともに、第1吸引手段により不織布の隙間を介して前記フィルムに付着する洗浄液を回転軸内部へと吸引する洗浄液吸引ロールを備え、
前記インキ剥離ユニットは、複数の洗浄液用シャワーノズルにより前記洗浄液を前記フィルムに向けて噴出させて付着させるよう構成され、
前記インキ剥離ユニットは、フィルム搬送方向に対して逆回転しながら前記フィルムに接してインキを剥離させる複数の剥離ロールを備え、
前記複数の剥離ロールは、毛材が柔軟性を有する樹脂材で形成されたブラシが外周層を構成する少なくとも1つの第1剥離ロールと、樹脂材を発泡成形して得られたスポンジが外周層を構成する少なくとも1つの第2剥離ロールとを備え、
前記第1剥離ロールは、前記第2剥離ロールよりもフィルム搬送方向上流側に位置していることを特徴とするフィルム洗浄装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載のフィルム洗浄装置において、
前記水洗ユニットは、複数の水用シャワーノズルにより水を前記フィルムに向けて噴出させて付着させるよう構成されていることを特徴とするフィルム洗浄装置。
【請求項7】
連続搬送されるフィルムに付着するインキを洗浄液により洗浄して前記フィルムから除去するよう構成されたフィルム洗浄装置であって、
前記フィルムに前記洗浄液を付着させてインキを前記フィルムから剥離させるインキ剥離ユニットと、当該インキ剥離ユニットにて前記フィルムに付着させた洗浄液を回収する洗浄液回収ユニットと、前記フィルムを水洗いする水洗ユニットとがフィルム搬送方向に順に設けられ、
前記洗浄液回収ユニットは、不織布からなる外周層が前記フィルムに回転しながら接するとともに、第1吸引手段により不織布の隙間を介して前記フィルムに付着する洗浄液を回転軸内部へと吸引する洗浄液吸引ロールを備え、
前記水洗ユニットは、複数の水用シャワーノズルにより水を前記フィルムに向けて噴出させて付着させるよう構成され、
前記水洗ユニットは、フィルム搬送方向に対して逆回転しながら前記フィルムに接して付着水を払い落とす複数の払落ロールを備えていることを特徴とするフィルム洗浄装置。
【請求項8】
請求項7に記載のフィルム洗浄装置において、
前記複数の払落ロールは、毛材が柔軟性を有する樹脂材で形成されたブラシが外周層を構成する少なくとも1つの第1払落ロールと、樹脂材を発泡成形して得られたスポンジが外周層を構成する少なくとも1つの第2払落ロールとを備え、
前記第1払落ロールは、前記第2払落ロールよりもフィルム搬送方向上流側に位置していることを特徴とするフィルム洗浄装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1つに記載のフィルム洗浄装置において、
前記水洗ユニットのフィルム搬送方向下流側には、前記フィルムの付着水を回収する付着水回収ユニットが設けられ、
該付着水回収ユニットは、不織布からなる外周層が前記フィルムに回転しながら接するとともに、第2吸引手段により不織布の隙間を介して前記フィルムの付着水を回転軸内部へと吸引する付着水吸引ロールを備えていることを特徴とするフィルム洗浄装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1つに記載のフィルム洗浄装置において、
前記水洗ユニットのフィルム搬送方向下流側には、回転動作により前記フィルムをフィルム搬送方向に送り出す駆動ロールを備え、
該駆動ロールは、外周面が前記フィルムに接する筒状をなすロール本体と、該ロール本体の内側に設けられ、当該ロール本体を回転駆動させる駆動軸と、前記ロール本体と前記駆動軸との間に設けられ、前記ロール本体に所定の負荷が掛かった際、前記駆動軸に対して前記ロール本体を相対的に回転させる滑りブッシュとを備えていることを特徴とするフィルム洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続搬送されるフィルムに付着するインキを洗浄液により洗浄してフィルムから除去するフィルム洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、グラビア印刷機等を用いて印刷を行う際、例えば、印刷による各色の位置等を調整するために使用して製品にならなかったフィルムは、インキが付着しているので再利用やリサイクルが困難であるという問題があった。これに対応するために、近年では、フィルム洗浄装置を用いてフィルムに付着するインキを洗浄液により洗浄して除去し、その後、インキが除去されたフィルムを再利用する取り組みがなされている。例えば、特許文献1に開示されているフィルム洗浄装置は、洗浄液が溜められた第1貯溜槽を備え、インキが付着するフィルムを第1貯溜槽の洗浄液に浸しながら通過させてインキを溶解させるようになっている。第1貯溜槽の上方には、連続搬送されるフィルムの表裏面にそれぞれ接する一対のワイパーブレードが配設され、該各ワイパーブレードは、第1貯溜槽を通過してフィルムの表裏面に付着したインキを含む洗浄液を掻き取って第1貯溜槽に戻すようになっている。そして、両ワイパーブレードのフィルム搬送方向下流側には、水が溜められた第2貯溜槽が設けられ、フィルムを第2貯溜槽の水に浸しながら通過させることにより、洗浄液で溶解させたインキを水で洗い流してフィルムから除去している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2017/0313056号明細書(段落0084~0089欄、
図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の如きインキを溶解させる洗浄液は高価であるので、出来るだけ回収して再利用したいという要求がある。
【0005】
しかし、特許文献1のように、ワイパーブレードを用いてフィルムに付着する洗浄液を掻き取って回収する方法では、フィルムの搬送速度やインキの溶解状態等によってワイパーブレードにより掻き取る洗浄液の量が変化するので、洗浄液の回収率が低いという問題がある。
【0006】
また、ワイパーブレードによりフィルムに付着する洗浄液を掻き取ると、洗浄液に含まれるインキの小さな塊等をフィルム表面に擦り付けてフィルムに傷を付けてしまい、フィルムの再利用を困難にしてしまうおそれもある。
【0007】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、フィルムに傷を付けることなく洗浄液の回収率を高くして洗浄液に費やすコストを低く抑えることができるフィルム洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、フィルムに付着する洗浄液を不織布と吸引手段とにより取り除くようにしたことを特徴とする。
【0009】
具体的には、連続搬送されるフィルムに付着するインキを洗浄液により洗浄して前記フィルムから除去するよう構成されたフィルム洗浄装置を対象とし、次のような対策を講じた。
【0010】
すなわち、第1の発明では、前記フィルムに前記洗浄液を付着させてインキを前記フィルムから剥離させるインキ剥離ユニットと、当該インキ剥離ユニットにて前記フィルムに付着させた洗浄液を回収する洗浄液回収ユニットと、前記フィルムを水洗いする水洗ユニットとがフィルム搬送方向に順に設けられ、前記洗浄液回収ユニットは、不織布からなる外周層が前記フィルムに回転しながら接するとともに、第1吸引手段により不織布の隙間を介して前記フィルムに付着する洗浄液を回転軸内部へと吸引する洗浄液吸引ロールを備え、前記フィルムは複数のガイドローラによって案内されながら連続搬送され、前記各ガイドローラの表面は、鏡面仕上げ加工が施されていることを特徴とする。
【0011】
第2の発明では、第1の発明において、前記インキ剥離ユニットは、複数の洗浄液用シャワーノズルにより前記洗浄液を前記フィルムに向けて噴出させて付着させるよう構成されていることを特徴とする。
【0012】
第3の発明では、第2の発明において、前記インキ剥離ユニットは、フィルム搬送方向に対して逆回転しながら前記フィルムに接してインキを剥離させる複数の剥離ロールを備えていることを特徴とする。
【0013】
第4の発明では、第3の発明において、前記複数の剥離ロールは、毛材が柔軟性を有する樹脂材で形成されたブラシが外周層を構成する少なくとも1つの第1剥離ロールと、樹脂材を発泡成形して得られたスポンジが外周層を構成する少なくとも1つの第2剥離ロールとを備え、前記第1剥離ロールは、前記第2剥離ロールよりもフィルム搬送方向上流側に位置していることを特徴とする。
【0014】
第5の発明では、連続搬送されるフィルムに付着するインキを洗浄液により洗浄して前記フィルムから除去するよう構成されたフィルム洗浄装置であって、前記フィルムに前記洗浄液を付着させてインキを前記フィルムから剥離させるインキ剥離ユニットと、当該インキ剥離ユニットにて前記フィルムに付着させた洗浄液を回収する洗浄液回収ユニットと、前記フィルムを水洗いする水洗ユニットとがフィルム搬送方向に順に設けられ、前記洗浄液回収ユニットは、不織布からなる外周層が前記フィルムに回転しながら接するとともに、第1吸引手段により不織布の隙間を介して前記フィルムに付着する洗浄液を回転軸内部へと吸引する洗浄液吸引ロールを備え、前記インキ剥離ユニットは、複数の洗浄液用シャワーノズルにより前記洗浄液を前記フィルムに向けて噴出させて付着させるよう構成され、前記インキ剥離ユニットは、フィルム搬送方向に対して逆回転しながら前記フィルムに接してインキを剥離させる複数の剥離ロールを備え、前記複数の剥離ロールは、毛材が柔軟性を有する樹脂材で形成されたブラシが外周層を構成する少なくとも1つの第1剥離ロールと、樹脂材を発泡成形して得られたスポンジが外周層を構成する少なくとも1つの第2剥離ロールとを備え、前記第1剥離ロールは、前記第2剥離ロールよりもフィルム搬送方向上流側に位置していることを特徴とする。
【0015】
第6の発明では、第1から第5のいずれか1つの発明において、前記水洗ユニットは、複数の水用シャワーノズルにより水を前記フィルムに向けて噴出させて付着させるよう構成されていることを特徴とする。
【0016】
第7の発明では、連続搬送されるフィルムに付着するインキを洗浄液により洗浄して前記フィルムから除去するよう構成されたフィルム洗浄装置であって、前記フィルムに前記洗浄液を付着させてインキを前記フィルムから剥離させるインキ剥離ユニットと、当該インキ剥離ユニットにて前記フィルムに付着させた洗浄液を回収する洗浄液回収ユニットと、前記フィルムを水洗いする水洗ユニットとがフィルム搬送方向に順に設けられ、前記洗浄液回収ユニットは、不織布からなる外周層が前記フィルムに回転しながら接するとともに、第1吸引手段により不織布の隙間を介して前記フィルムに付着する洗浄液を回転軸内部へと吸引する洗浄液吸引ロールを備え、前記水洗ユニットは、複数の水用シャワーノズルにより水を前記フィルムに向けて噴出させて付着させるよう構成され、前記水洗ユニットは、フィルム搬送方向に対して逆回転しながら前記フィルムに接して付着水を払い落とす複数の払落ロールを備えていることを特徴とする。
【0017】
第8の発明では、第7の発明において、前記複数の払落ロールは、毛材が柔軟性を有する樹脂材で形成されたブラシが外周層を構成する少なくとも1つの第1払落ロールと、樹脂材を発泡成形して得られたスポンジが外周層を構成する少なくとも1つの第2払落ロールとを備え、前記第1払落ロールは、前記第2払落ロールよりもフィルム搬送方向上流側に位置していることを特徴とする。
【0018】
第9の発明では、第1から第8のいずれか1つの発明において、前記水洗ユニットのフィルム搬送方向下流側には、前記フィルムの付着水を回収する付着水回収ユニットが設けられ、該付着水回収ユニットは、不織布からなる外周層が前記フィルムに回転しながら接するとともに、第2吸引手段により不織布の隙間を介して前記フィルムの付着水を回転軸内部へと吸引する付着水吸引ロールを備えていることを特徴とする。
【0019】
第10の発明では、第1から第9のいずれか1つの発明において、前記水洗ユニットのフィルム搬送方向下流側には、回転動作により前記フィルムをフィルム搬送方向に送り出す駆動ロールを備え、該駆動ロールは、外周面が前記フィルムに接する筒状をなすロール本体と、該ロール本体の内側に設けられ、当該ロール本体を回転駆動させる駆動軸と、前記ロール本体と前記駆動軸との間に設けられ、前記ロール本体に所定の負荷が掛かった際、前記駆動軸に対して前記ロール本体を相対的に回転させる滑りブッシュとを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
第1の発明では、洗浄液吸引ロールの回転動作に伴ってフィルムに付着する洗浄液が外周層の不織布に順次吸い込まれるとともに、当該不織布に吸い込まれた洗浄液が第1吸引手段で吸引されて順次回収されるようになる。したがって、フィルムに付着する洗浄液を効率良く回収することができ、装置の洗浄液回収率を高めることができる。また、洗浄液吸引ロールにおけるフィルムに接する領域が柔らかい不織布であり、特許文献1の如きワイパーブレードでフィルムに付着する洗浄液を掻き取るといったことをしないので、洗浄液吸引ロールを起因としてフィルムに傷が付くのを防ぐことができる。また、第1の発明では、各ガイドローラにおけるフィルムとの接触領域に凹凸面が無くなり、フィルム搬送時においてフィルムに各ガイドローラ表面が引っ掛かることが無くなるので、各ガイドローラを起因としてフィルムに傷が付くのを防ぐことができる。
【0021】
第2の発明では、フィルムに付着するインキの洗浄が、洗浄液用シャワーノズルから順次供給される新しい洗浄液によって行われるようになる。したがって、特許文献1の如き洗浄後において第1貯溜槽に溜まる洗浄液に次第に蓄積していくインキの小さな塊等が、その後に第1貯溜槽に溜まる洗浄液に浸されながら通過するフィルムに付着して当該フィルムに発生する傷の原因になってしまうといったことを回避することができる。
【0022】
第3の発明では、フィルムに強固に付着するインキを効率良く剥がすことができるようになるので、フィルムに付着するインキの除去をさらに効率良く行うことができる。
【0023】
第4及び第5の発明では、目の粗いブラシで大まかにフィルムからインキを剥がした後、ブラシよりも目が細かいスポンジでフィルムからインキを隅々まで剥がすようになるので、短いフィルム搬送区間で効率良くインキを剥がすことができる。
【0024】
第6の発明では、フィルムに付着するインキの水洗いが、水用シャワーノズルから順次供給される新しい水によって行われるようになる。したがって、特許文献1の如き水洗い後において第2貯溜槽に溜まる水に次第に蓄積していくインキの小さな塊等がその後に第2貯溜槽に溜まる水に浸されながら通過するフィルムに付着してフィルムに発生する傷の原因になってしまうといったことを回避することができる。
【0025】
第7の発明では、短いフィルム搬送区間でフィルムに付着する付着水を効率良く下方に払い落とすことができるようになるので、全長がコンパクトな装置にすることができる。
【0026】
第8の発明では、目の粗いブラシで大まかにフィルムから付着水及びインキを払い落とした後、ブラシよりも目が細かいスポンジでフィルムから付着水及びインキを隅々まで払い落とすようになるので、短いフィルム搬送区間で効率良くフィルムを水洗いすることができる。
【0027】
第9の発明では、付着水吸引ロールの回転動作に伴ってフィルムに付着する付着水が外周層の不織布に順次吸い込まれるとともに、当該不織布に吸い込まれた付着水が第2吸引手段で吸引されて順次回収されるようになる。したがって、フィルムに付着する付着水を効率良く回収することができ、装置の排水回収率を高めることができる。また、付着水吸引ロールにおけるフィルムに接する領域が柔らかい不織布であるので、付着水吸引ロールを起因としてフィルムに傷が付くのを防ぐことができる。
【0028】
第10の発明では、フィルムの搬送速度が不意に変動した際、ロール本体の周方向において当該ロール本体とフィルムとの間の相対位置がずれるのではなく、滑りブッシュによって駆動軸とロール本体との間における相対的な角度がずれるようになる。したがって、ロール本体の外周面がフィルムに対してずれることを起因としてフィルムに傷が付くのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の実施形態に係るフィルム洗浄装置の概略構成図である。
【
図4】
図1のアウトフィード工程を拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0031】
図1は、本発明の実施形態に係るフィルム洗浄装置1を示す。該フィルム洗浄装置1は、フィルム巻出工程2、インキ剥離工程3、水洗工程4、乾燥工程5、アウトフィード工程6、及び、フィルム巻取工程7を上流側から順に備え、表面に鏡面仕上げ加工が施された多数のガイドローラ8により案内されて連続搬送される樹脂製フィルムW1からその表裏面に付着するインキを除去するようになっている。
【0032】
フィルム巻出工程2には、フィルムW1がロール状に巻かれた巻出ロール2aと、該巻出ロール2aを回転自在に支持する第1ロール支持台2bとが配置され、巻出ロール2aからフィルムW1をインキ剥離工程3へと巻き出すようになっている。
【0033】
インキ剥離工程3は、
図2に示すように、インキを溶解させることが可能な洗浄液L1を用いてインキをフィルムW1から剥離させるインキ剥離ユニット3Aと、洗浄液L1を回収する洗浄液回収ユニット3Bとで構成されている。
【0034】
洗浄液L1は、植物由来の溶解液であり、例えば、インフィニティ株式会社製の商品名PAINTSOLV-W(登録商標)等を用いることができる。
【0035】
インキ剥離ユニット3Aの上流側半分は、6つのガイドローラ8によってフィルムW1をひだ状に上下に蛇行搬送させ、下流側半分は、3つのガイドローラ8によってフィルムW1を正面視で略W形状となるように上下に蛇行搬送させている。
【0036】
インキ剥離ユニット3Aは、洗浄液L1を貯留する第1貯留タンク3aと、該第1貯留タンク3aから洗浄液L1を汲み上げる第1ポンプ3bと、該第1ポンプ3bで汲み上げた洗浄液L1を通過させて粒径が5~10μmの異物を捕集する第1フィルタ3cと、該第1フィルタ3cを通過した洗浄液L1をフィルムW1に付着させる複数の洗浄液用シャワーノズル3dと、フィルムW1からインキを剥離する複数の剥離ロール3eとを備えている。
【0037】
各洗浄液用シャワーノズル3dは、各ガイドローラ8の近傍にそれぞれ配設され、洗浄液L1をフィルムW1の表裏面に向けて噴出して付着させるようになっている。
【0038】
尚、洗浄液用シャワーノズル3dから噴出した後、フィルムW1に付着せずに落下する洗浄液L1は、第1貯留タンク3aに回収されるようになっている。
【0039】
各剥離ロール3eは、インキ剥離ユニット3Aの下流側半分に位置する3つのガイドローラ8(以下、便宜上、フィルム搬送方向上流側から順に、ガイドローラ8a~8cと呼ぶことにする)との間にフィルムW1を挟み込むように配置され、フィルム搬送方向に対して逆回転しながらフィルムW1に接してインキを剥離させるようになっている。
【0040】
各剥離ロール3eは、毛材が柔軟性を有する樹脂材で形成されたブラシが外周層を構成する3つの第1剥離ロール3fと、樹脂材を発泡成形して得られたスポンジが外周層を構成する2つの第2剥離ロール3gとを備え、3つの第1剥離ロール3fは、2つの第2剥離ロール3gよりもフィルム搬送方向上流側に位置している。
【0041】
3つの第1剥離ロール3fのうちの2つは、ガイドローラ8aとの間でフィルムW1を挟み込むとともにフィルムW1の表面側に接しており、3つの第1剥離ロール3fのうちの1つは、ガイドローラ8bとの間でフィルムW1を挟み込むとともにフィルムW1の裏面側に接している。
【0042】
一方、2つの第2剥離ロール3gの一方は、ガイドローラ8bとの間でフィルムW1を挟み込むとともにフィルムW1の裏面側に接しており、2つの第2剥離ロール3gの他方は、ガイドローラ8cとの間でフィルムW1を挟み込むとともにフィルムW1の表面側に接している。
【0043】
洗浄液回収ユニット3Bは、ガイドローラ8cのフィルム搬送方向下流側に配設され、
図5に示すように、上下に所定の間隔をあけて位置する一対の洗浄液吸引ロール30と、該両洗浄液吸引ロール30に接続された第1バキュームユニット31(第1吸引手段)とを備えている。
【0044】
洗浄液吸引ロール30は、外周壁に多数の吸引孔32aが形成された筒状をなす回転軸32と、該回転軸32の外側に位置して洗浄液吸引ロール30の外周層を構成する不織布33とを備えている。
【0045】
下側に位置する洗浄液吸引ロール30は、回転しながら不織布33がフィルムW1の表面側に接する一方、上側に位置する洗浄液吸引ロール30は、回転しながら不織布33がフィルムW1の裏面側に接するようになっていて、第1バキュームユニット31により各不織布33の隙間と各吸引孔32aとを通過させてフィルムW1に付着する洗浄液L1を回転軸32の内部へと吸引するようになっている。
【0046】
そして、各洗浄液吸引ロール30の回転軸32内部に回収された洗浄液L1は、第1貯留タンク3aに戻されて再利用されるようになっている。
【0047】
水洗工程4は、
図3に示すように、フィルムW1を水洗いする水洗ユニット4Aと、フィルムW1に付着する付着水を回収する付着水回収ユニット4Bとで構成されている。
【0048】
水洗ユニット4Aは、4つのガイドローラ8によってフィルムW1を正面視で略W形状となるように上下に蛇行搬送させている。尚、便宜上、水洗ユニット4Aにおける4つのガイドローラ8を、フィルム搬送方向上流側から順に、ガイドローラ8d~8gと呼ぶことにする。
【0049】
水洗ユニット4Aは、排水を溜める第2貯留タンク4aと、水(市水)を汲み上げる第2ポンプ4bと、該第2ポンプ4bで汲み上げた水を通過させて粒径が1~10μmの異物を捕集する第2フィルタ4cと、該第2フィルタ4cを通過した水をフィルムW1に付着させる複数の水用シャワーノズル4dと、フィルムW1の付着水を払い落とす複数の払落ロール4eとを備えている。
【0050】
各水用シャワーノズル4dは、各ガイドローラ8の近傍にそれぞれ配設され、水をフィルムW1の表裏面に向けて噴出して付着させるようになっている。
【0051】
尚、水用シャワーノズル4dから噴出した後、フィルムW1に付着せずに落下する水は、第2貯留タンク4aに回収されるようになっている。
【0052】
各払落ロール4eは、ガイドローラ8e~8gとの間にフィルムW1を挟み込むように配置され、フィルム搬送方向に対して逆回転しながらフィルムW1に接して付着水を払い落とすようになっている。
【0053】
各払落ロール4eは、毛材が柔軟性を有する樹脂材で形成されたブラシが外周層を構成する3つの第1払落ロール4fと、樹脂材を発泡成形して得られたスポンジが外周層を構成する2つの第2払落ロール4gとを備え、3つの第1払落ロール4fは、2つの第2払落ロール4gよりもフィルム搬送方向上流側に位置している。
【0054】
3つの第1払落ロール4fのうちの2つは、ガイドローラ8eとの間でフィルムW1を挟み込むとともにフィルムW1の表面側に接しており、3つの第1払落ロール4fのうちの1つは、ガイドローラ8fとの間でフィルムW1を挟み込むとともにフィルムW1の裏面側に接している。
【0055】
一方、2つの第2払落ロール4gの一方は、ガイドローラ8fとの間でフィルムW1を挟み込むとともにフィルムW1の裏面側に接しており、2つの第2払落ロール4gの他方は、ガイドローラ8gとの間でフィルムW1を挟み込むとともにフィルムW1の表面側に接している。
【0056】
付着水回収ユニット4Bは、ガイドローラ8gのフィルム搬送方向下流側に配設され、
図6に示すように、上下に所定の間隔をあけて位置する一対の付着水吸引ロール40と、該両付着水吸引ロール40に接続された第2バキュームユニット41(第2吸引手段)とを備えている。
【0057】
付着水吸引ロール40は、外周壁に多数の吸引孔42aが形成された筒状をなす回転軸42と、該回転軸42の外側に位置して付着水吸引ロール40の外周層を構成する不織布43とを備えている。
【0058】
下側に位置する付着水吸引ロール40は、回転しながら不織布43がフィルムW1の表面側に接する一方、上側に位置する付着水吸引ロール40は、回転しながら不織布43がフィルムW1の裏面側に接するようになっていて、第2バキュームユニット41により各不織布43の隙間と各吸引孔42aとを通過させてフィルムW1に付着する付着水を回転軸42の内部へと吸引するようになっている。
【0059】
そして、各付着水吸引ロール40の回転軸42内部に回収された水は、第2貯留タンク4aに排水として戻されるようになっている。
【0060】
乾燥工程5には、フローティングドライヤ5aが設置されている。該フローティングドライヤ5aは、
図1に示すように、フィルムW1に向かって空気を吹き出す複数のエアノズル5bと、該各エアノズル5bに空気を導入するエア配管5cとを備えている。
【0061】
エアノズル5bは、水平方向に搬送されるフィルムW1の上面側と下面側とに交互に、且つ、フィルム搬送方向に所定の間隔をあけながら千鳥状に複数配置されていて、フィルムW1は、各エアノズル5bから吹き出される空気によって正面視で蛇行しながら搬送されるようになっている。
【0062】
エア配管5cは、フィルムW1の上面側と下面側とにそれぞれ配設されていて、フィルム搬送方向に延びる直線状をなすとともに、各エアノズル5bに接続されている。
【0063】
そして、図示しない送風機から導入される空気を各エア配管5cを介して連続搬送されるフィルムW1に向けて各エアノズル5bから吹き付けることにより、フィルムW1を乾燥させるようになっている。
【0064】
アウトフィード工程6の中途部には、
図4に示すように、乾燥工程5を通過したフィルムW1を挟み込みながら回転動作によりフィルム巻取工程7へと送り出す駆動ロール6a及び従動ロール6bが配設されている。
【0065】
駆動ロール6aは、
図7に示すように、外周面がフィルムW1に接する筒状をなすロール本体6cと、該ロール本体6cの内側に設けられ、当該ロール本体6cを回転駆動させる駆動軸6dと、ロール本体6cと駆動軸6dとの間に設けられ、ロール本体6cに所定の負荷が掛かった際、駆動軸6dに対してロール本体6cを相対的に回転させる滑りブッシュ6eとを備えている。
【0066】
フィルム巻取工程7には、
図1に示すように、アウトフィード工程6を通過したフィルムW1をロール状に巻き取る巻取ロール7aと、該巻取ロール7aを回転自在に支持する第2ロール支持台7bとが配置され、巻取ロール7aには、付着するインキが洗浄液L1により洗浄されて除去されたフィルムW1が巻き取られるようになっている。
【0067】
以上より、本発明の実施形態よると、各洗浄液吸引ロール30の回転動作に伴ってフィルムW1に付着する洗浄液L1が外周層の不織布33に順次吸い込まれるとともに、当該不織布33に吸い込まれた洗浄液L1が第1バキュームユニット31で吸引されて順次回収されるようになる。したがって、フィルムW1に付着する洗浄液L1を効率良く回収することができ、フィルム洗浄装置1の洗浄液L1の回収率を高めることができる。また、各洗浄液吸引ロール30におけるフィルムW1に接する領域が柔らかい不織布33であり、特許文献1の如きワイパーブレードでフィルムに付着する洗浄液を掻き取るといったことをしないので、洗浄液吸引ロール30を起因としてフィルムW1に傷が付くのを防ぐことができる。
【0068】
また、各ガイドローラ8の外周面に鏡面仕上げ加工が施されているので、各ガイドローラ8におけるフィルムW1との接触領域に凹凸面が無くなり、フィルムW1の搬送時においてフィルムW1に各ガイドローラ8の表面が引っ掛かることが無くなるので、各ガイドローラ8を起因としてフィルムW1に傷が付くのを防ぐことができる。
【0069】
また、フィルムW1に付着するインキの洗浄が、各洗浄液用シャワーノズル3dから順次供給される新しい洗浄液L1によって行われるようになる。したがって、特許文献1の如き洗浄後において第1貯溜槽に溜まる洗浄液に次第に蓄積していくインキの小さな塊等が、その後に第1貯溜槽に溜まる洗浄液に浸されながら通過するフィルムに付着して当該フィルムに発生する傷の原因になってしまうといったことを回避することができる。
【0070】
また、各剥離ロール3eがフィルム搬送方向に対して逆回転しながらフィルムW1に接してインキを剥離させるようになっているので、フィルムW1に強固に付着するインキを効率良く剥がすことができるようになり、フィルムW1に付着するインキの除去をさらに効率良く行うことができる。
【0071】
また、インキ剥離ユニット3Aでは、目の粗いブラシで大まかにフィルムW1からインキを剥がした後、ブラシよりも目が細かいスポンジでフィルムW1からインキを隅々まで剥がすようになるので、短いフィルム搬送区間で効率良くインキを剥がすことができる。
【0072】
また、フィルムW1に付着するインキの水洗いが、水用シャワーノズル4dから順次供給される新しい水によって行われるようになる。したがって、特許文献1の如き水洗い後において第2貯溜槽に溜まる水に次第に蓄積していくインキの小さな塊等がその後に第2貯溜槽に溜まる水に浸されながら通過するフィルムに付着してフィルムに発生する傷の原因になってしまうといったことを回避することができる。
【0073】
また、各払落ロール4eがフィルム搬送方向に対して逆回転しながらフィルムW1に接して付着水を払い落とすようになっているので、短いフィルム搬送区間でフィルムW1に付着する付着水を効率良く下方に払い落とすことができるようになり、全長がコンパクトなフィルム洗浄装置1にすることができる。
【0074】
また、水洗ユニット4Aでは、目の粗いブラシで大まかにフィルムW1から付着水及びインキを払い落とした後、ブラシよりも目が細かいスポンジでフィルムW1から付着水及びインキを隅々まで払い落とすようになるので、短いフィルム搬送区間で効率良くフィルムW1を水洗いすることができる。
【0075】
また、付着水吸引ロール40の回転動作に伴ってフィルムW1に付着する付着水が外周層の不織布43に順次吸い込まれるとともに、当該不織布43に吸い込まれた付着水が第2バキュームユニット41で吸引されて順次回収されるようになる。したがって、フィルムW1に付着する付着水を効率良く回収することができ、フィルム洗浄装置1の排水回収率を高めることができる。また、付着水吸引ロール40におけるフィルムW1に接する領域が柔らかい不織布43であるので、付着水吸引ロール40を起因としてフィルムW1に傷が付くのを防ぐことができる。
【0076】
また、フィルムW1の搬送速度が不意に変動した際、ロール本体6cの周方向において当該ロール本体6cとフィルムW1との間の相対位置がずれるのではなく、滑りブッシュ6eによって駆動軸6dとロール本体6cとの間における相対的な角度がずれるようになる。したがって、ロール本体6cの外周面がフィルムW1に対してずれることを起因としてフィルムW1に傷が付くのを防ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、連続搬送されるフィルムに付着するインキを洗浄液により洗浄してフィルムから除去するフィルム洗浄装置に適している。
【符号の説明】
【0078】
1 フィルム洗浄装置
3A インキ剥離ユニット
3B 洗浄液回収ユニット
3d 洗浄液用シャワーノズル
3e 剥離ロール
3f 第1剥離ロール
3g 第2剥離ロール
4A 水洗ユニット
4B 付着水回収ユニット
4d 水用シャワーノズル
4e 払落ロール
4f 第1払落ロール
4g 第2払落ロール
6a 駆動ロール
6c ロール本体
6d 駆動軸
6e 滑りブッシュ
8 ガイドローラ
30 洗浄液吸引ロール
31 第1バキュームユニット(第1吸引手段)
32 回転軸
33 不織布
40 付着水吸引ロール
41 第2バキュームユニット(第2吸引手段)
42 回転軸
43 不織布
W1 フィルム
L1 洗浄液