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  • 特許-刃物用鋼 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】刃物用鋼
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20241218BHJP
   C22C 38/26 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
C22C38/00 302Z
C22C38/26
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022179011
(22)【出願日】2022-11-08
(65)【公開番号】P2024068501
(43)【公開日】2024-05-20
【審査請求日】2024-06-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000238348
【氏名又は名称】武生特殊鋼材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002804
【氏名又は名称】弁理士法人フェニックス特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 通郎
(72)【発明者】
【氏名】坪川 翼
(72)【発明者】
【氏名】堀本 里加子
【審査官】河野 一夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-081082(JP,A)
【文献】特開平09-078199(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00
C22C 38/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、C:1.30~1.70%、Si:0.19~0.34%、Mn:0.10~0.31%、Cr:14.00~18.00%、Mo:2.00~2.80%、V、W、Nbのうち1種以上:合計で2.10~3.60%、残余がFe及び不可避的不純物から成る組成を有することを特徴とした刃物用鋼。
【請求項2】
-1.2%≦Mo%-(V+W+Nb)%≦-0.2%の関係を有することを特徴とした請求項1に記載の刃物用鋼。
【請求項3】
V:1.50~2.10%、W:0.50~1.40%、Nb:0.20~0.60%であることを特徴とした請求項1または請求項2に記載の刃物用鋼。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルテンサイト系刃物用鋼に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、ナイフ、包丁、理美容鋏、医療用メス等の刃物類には、鋭い切れ味と、その切れ味の持続性が求められる。従来、これら刃物類の素材として、SUS420J2やSUS440Cなどに代表されるマルテンサイト系ステンレス鋼が使用されているが、この刃物用鋼には、鋭い刃先を形成することができ、その刃先の変形を抑制するための硬度、鋭く研ぎ上げた刃先の刃こぼれを抑制する適度な靭性、鋭い切れ味を維持するための耐摩耗性、そして、刃先の錆びを抑制する耐食性等の諸特性を兼ね備えている必要がある。
【0003】
通常、C(炭素)含有量の多いステンレス鋼ほど、焼入れ焼戻し硬度が高くなる傾向があるが、硬度を更に高めるためにC含有量を増やすと、不働態被膜を形成して耐食性を向上させるCr(クロム)がCと結合してCr炭化物を形成するため、耐食性が低下する副作用が生じる。そこで、従来では、Mo(モリブデン)、V(バナジウム)、W(タングステン)等の他の炭化物形成元素を添加し、その添加量を調整することによって、硬度と耐食性との両立を図り、靭性、耐摩耗性等の他の特性とのバランスを図るようにしている(例えば、下記特許文献1、2等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-212679号公報
【文献】特開平10-1703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年、特に高級刃物類において、更に優れた切れ味が要求されており、より鋭い刃付けがなされた刃先角度の刃物類(例えば、小刃角度約16度)も製作されるに至っている。このような鋭利な刃先を形成、維持するためには、より高い硬度と靭性を備えた上で、十分な耐食性と耐摩耗性を有している必要があるが、従来の刃物用鋼では、このような要請に十分に応えることができない問題があった。
【0006】
例えば、図1に示すように、従来の刃物用鋼を用いて製作した刃物1の刃付けを行う際、その小刃角度が約24度の場合(図1(a))には、刃先11を適正に形成することが可能であったとしても、小刃角度が約16度の場合(図1(b))には、刃先11を砥石に当てて研ぎ上げる際に刃先11が砥石の反対側へ塑性変形してしまい、鋭利な刃先11を適正に形成することが困難であった。
【0007】
このように鋭利な刃先を形成、維持するためには、鋭く研がれた刃先でも欠けず、曲がらずといった機械特性が必要であり、そのために、より強化された素地硬度と、耐摩耗性に寄与する、刃付け性を阻害しない程度の微細な金属炭化物の分散が必要であるが、従来の刃物用鋼にあっては、素地強化と金属炭化物分散強化とのバランスが考慮されておらず、過量な炭素や金属元素の添加によって素地硬度や耐食性が犠牲になっていた。
【0008】
本発明は、従来の刃物用鋼に上記のような問題があったことに鑑みて為されたもので、より高硬度で優れた刃付け性を備えながらも、耐食性、靭性、耐摩耗性にも優れた刃物用鋼を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
鋼素地に固溶して耐食性を向上させる元素として重要なCrは、同時にFe(鉄)やCなどと複炭化物(MC、M、M23等)を形成して硬度や耐摩耗性の向上に寄与する炭化物形成元素でもあるが、このCrは、鋼素地中への固溶濃度に対する複炭化物中への固溶濃度の割合(分配係数)が、Mo、V、W等の他の炭化物形成元素よりも大きい傾向がある。従来では、Cの添加量を抑えることで粗大な複炭化物の形成を抑制し、Crの素地固溶濃度を確保して耐食性を維持していた。ところが、Cの添加量が少ない場合、焼入れ熱処理による素地固溶強化がなされず、高い硬度を得ることができない。
【0010】
そこで、本発明者は、Cr、Mo、V、W、Nb(ニオブ)等の添加元素の炭化物形成傾向に注目し、炭化物形成傾向の比較的に高いV、W、Nbの添加量を調整することによって、粗大な複炭化物の形成を抑制することを着想し、さらに、刃物用鋼としての切断性能を向上させるためには、各種炭化物を含んだ鋼全体の硬度だけでなく、特に鋼素地自体の硬度を向上させる必要があるとの知見を得、鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成させるに至った。
【0011】
即ち、本発明に係る刃物用鋼は、質量%で、C:1.30~1.70%、Si:0.19~0.34%、Mn:0.10~0.31%、Cr:14.00~18.00%、Mo:2.00~2.80%、V、W、Nbのうち1種以上:合計で2.10~3.60%、残余がFe及び不可避的不純物から成る組成を有することを特徴としている。
【0012】
また、本発明に係る刃物用鋼は、-1.2%≦Mo%-(V+W+Nb)%≦-0.2%の関係を有することを特徴としている。
【0013】
また、本発明に係る刃物用鋼は、V:1.50~2.10%、W:0.50~1.40%、Nb:0.20~0.60%であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る刃物用鋼は、炭化物形成傾向が比較的に高いV、W、Nbを所定量、添加しているので、耐食性を低下させ、鋭い刃付けの際に有害となるような複炭化物の形成を有効に抑制すると同時に、鋼素地自体の硬度を確保することができ、より高硬度で優れた刃付け性を備えながらも、優れた耐食性、靭性、耐摩耗性を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】従来の刃物用鋼を用いて製作した刃物の(a)小刃角度24度、(b)小刃角度16度の刃先部分の拡大断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る刃物用鋼の実施形態について説明する。まず、本発明に係る刃物用鋼を構成する各成分の限定理由を説明する。
【0017】
C(炭素):1.30~1.70%
C(炭素)は、鋼素地に固溶して硬度を高めると共に、Cr、Mo、V、W、Nbと結合して高硬度の炭化物を形成して更に硬度を高める元素である。Cが1.30%を下回ると、より鋭利な刃先(例えば小刃角度約16度)を研ぎ出し、その刃先の変形を抑制するために必要な鋼素地の硬度を確保することができない。一方、1.70%を上回ると、炭化物量が過度に多くなり、靭性が低下すると共に、素地中へのCr、Mo等の固溶量が不足して耐食性が低下する。
【0018】
Cr(クロム):14.00~18.00%
Cr(クロム)は、鋼素地に固溶して不働態被膜を形成し耐食性を向上させると共に、炭化物を形成して硬度や耐摩耗性を向上させる元素である。Crが14.00%を下回ると、ナイフ、包丁等の刃物類に必要な耐食性を確保することができず、18.00%を上回ると、炭化物量が過度に多くなり靭性が低下する。
【0019】
Mo(モリブデン):2.00~2.80%
Mo(モリブデン)は、Crと共に安定な不働態被膜を形成して耐食性を向上させると共に、より硬質な炭化物を形成して硬度や耐摩耗性を向上させる元素である。Moが2.00%を下回ると、必要な耐食性、硬度、耐摩耗性を確保することができず、また、焼戻し2次硬化も充分に得られない。一方、2.80%を上回ると、炭化物量が過度に多くなり靭性が低下する。
【0020】
V(バナジウム):1.50~2.10%
V(バナジウム)は、硬質な炭化物を形成して硬度や耐摩耗性を向上させると共に、結晶粒を微細化して靭性を向上させる元素である。Vが1.50%を下回ると、必要な硬度、耐摩耗性を確保することができず、2.10%を上回ると、炭化物量が過度に多くなり靭性が低下すると共に、塑性加工時の加工性が悪化する。
【0021】
W(タングステン):0.50~1.40%
W(タングステン)は、硬質な炭化物を形成して硬度や耐摩耗性を向上させると共に、結晶粒を微細化して靭性を向上させる元素である。Wが0.50%を下回ると、必要な硬度、耐摩耗性を確保することができず、1.40%を上回ると、炭化物量が過度に多くなり靭性が低下すると共に、塑性加工時の加工性が悪化する。
【0022】
Nb(ニオブ):0.20~0.60%
Nb(ニオブ)は、硬質な炭化物を形成して硬度や耐摩耗性を向上させると共に、結晶粒を微細化して靭性を向上させる元素である。Nbが0.20%を下回ると、必要な硬度、耐摩耗性を確保することができず、0.60%を上回ると、過量なNb炭化物が生成され、素地固溶強化に必要なC量を減少させ、素地固溶強化能を低下させる。
【0023】
V、W、Nbのうち1種以上:合計で2.10~3.60%
V、W、Nbは、Crよりも炭化物形成傾向が高い元素であり、これら元素の炭化物形成によりCr炭化物の形成を抑制することができ、素地中のCr固溶量不足を防いで必要な耐食性を確保することができる。特にNbは、他の元素よりも炭化物形成傾向が高いため、Cr炭化物の形成をより有効に抑制し、耐食性を向上させることができる。これらV、W、Nbのうちの1種以上の合計が2.10%を下回ると、Cr炭化物の形成を有効に抑制することができず、耐食性が低下する。一方、3.60%を上回ると、炭化物量が過度に多くなり、焼入れ時の固溶C量が減少し、鋼素地の硬度が低下してしまい、より鋭利な刃先の刃付け性が低下する。
【0024】
-1.2%≦Mo%-(V+W+Nb)%≦-0.2%
Moは、上述したV、W、Nbと同様に、硬質な炭化物を形成して硬度や耐摩耗性を向上させるとともに、Crと共に安定な不働態被膜を形成して耐食性を向上させる元素である。Mo添加量とV、W、Nbの合計添加量との差が-1.2%~-0.2%の範囲にあれば、より良好な耐食性や切断性能を発揮する。
【0025】
なお、本発明に係る刃物用鋼は、鋼素地に固溶して素地強化を促進させるCo(コバルト)を、その不可避的不純物を除き、意図的に添加していない。本発明に係る刃物用鋼は、上述したように所定量のV、W、Nb添加によりCr炭化物の形成を抑制することによって必要な素地強化能を確保することができるからである。したがって、本発明に係る刃物用鋼は、紛争鉱物に指定されているCoを実質的に含んでいないので、持続可能な成分設計を実現している。
【0026】
また、本発明に係る刃物用鋼は、従来の溶製法による他、粉末冶金法によっても製造され得る。粉末冶金法により製造された刃物用鋼は、結晶粒を微細化すると共に多量の炭化物を均一微細に分布させることができるので、硬度と靭性とを高いレベルで両立させることができる。
【実施例
【0027】
表1に示す各組成を有する実施例1~8及び比較例1~10を製造し、各鋼種について、硬度、曲げ強度(靭性)、耐摩耗性、切断性能、耐食性に関する試験を実施した。その結果を表2に示す。
【0028】
なお、各鋼種について、厚み2mmに加工して焼入れ焼戻し処理を施したものから試験片を採取した。焼入れ焼戻し温度は、各鋼種の最高硬度が出る温度に設定した。また、比較例9及び比較例10(SUS440C)は溶製法により製造し、他は粉末冶金法により製造した。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
「硬度」
試験片の研磨面においてビッカース硬度計(荷重500グラム)により測定した。
【0032】
「曲げ強度」
2mm×50mmに調整した試験片を治具で片持ち保持し、破断した際の強度を測定した。
【0033】
「耐摩耗性」
5mm×70mmに調整した試験片3本(総面積1050mm平方)を、研磨機により回転数200rpm、約200Nの荷重下において、エメリー紙(#80)を相手材として15分間の研磨を行った後、試験片の総損失重量(摩耗量)を測定した。この摩耗量の少ないものほど、耐摩耗性に優れている。
【0034】
「切断性能」
同条件で製作した二種類の刃物(小刃角度16±1度、小刃角度24±1度)を切れ味試験機に固定し、7.5mm幅の新聞紙相当の紙を多数枚、重ねて約750グラムの荷重をかけながら、20mmの往復運動をさせ、切断された紙の枚数を計測した。
【0035】
「耐食性」
18mm×18mmに調整した試験片をエポキシ樹脂に埋入し、端面を粗さ1000番で研磨したものを、5%のNaCl水溶液、35℃、75kPaで24時間、連続噴霧の条件下で、塩水噴霧試験を実施した。実施後、試験片の研磨面の稜線部を除く14mm×14mmの範囲に発生した各孔食の深さを計測した。各試験片における最大孔食深さが小さいものほど、刃物の研ぎ直し時の研磨量を少なくすることができ、研ぎ直し作業を容易に行うことができる。また、これら実施例1~8及び比較例1~10の各鋼種について、従来使用されている孔食指数(PRE値=Cr%+3.3Mo%+16N%)を表2に示す。このPRE値は、鋼材の成分から耐食性を予測する指標であるが、今回の実施例・比較例では、このPRE値による予測を覆す試験結果が出ている。
【0036】
表1及び表2に示すように、本発明に係る実施例1~8は、Crよりも炭化物形成傾向が高い元素であるV、W、Nbの合計添加量が2.10~3.60%の範囲にあるため、複炭化物の形成を有効に抑制することができ、刃物に求められる優れた耐食性を示すと同時に、鋼素地自体の硬度を確保することができ、より鋭利な刃先であっても適正に刃付けすることができ、優れた切断性能を示す。また、各種炭化物が過剰に形成されていないので、適度な靭性、耐摩耗性を示す。
【0037】
特に実施例2~5および実施例8は、Mo添加量とV、W、Nbの合計添加量との差が-1.2%~-0.2%の範囲にあるため、より高い硬度を示すと共に、刃物用鋼に求められる耐食性、靭性、耐摩耗性においてより良好なバランスを示す。
【0038】
これに対して、比較例1は、V、W、Nbの合計添加量が本願発明の範囲内であるが、Cr添加量が本願発明範囲よりも下回っているため、高い硬度を示すものの、実施例1~8に比べて最大孔食深さ及び合計孔食深さが大きく、耐食性に劣っている。
【0039】
また、比較例2も、V、W、Nbの合計添加量が本願発明の範囲内であるが、C添加量が本願発明範囲よりも下回っているため、高い耐食性を示すものの、実施例1~8に比べて硬度及び切断性能に劣っている。特に、この比較例2は、各種炭化物を含んだ鋼全体のビッカース硬度は、比較例10(SUS440C)と同程度であるものの、鋼素地の固溶C量の減少により鋼素地自体の硬度が不足しているため、小刃角度24±1度の刃先を形成することは可能であるものの、小刃角度16±1度のより鋭利な刃先を適正に形成することが困難であり、小刃角度16±1度のときの切断性能は、切断枚数0枚と著しく劣っている。
【0040】
また、比較例6も、V、W、Nbの合計添加量が本願発明の範囲内であるが、Mo添加量が本願発明の範囲を下回っているため、実施例1~8に比べて硬度及び切断性能に劣っている。
【0041】
比較例3及び比較例4は、C及びCrの添加量が本願発明の範囲を大幅に上回っているにも関わらず、V、W、Nbの合計添加量が本願発明の範囲を下回っているため、Cr炭化物抑制効果が十分に働かず、実施例1~8に比べて耐食性に著しく劣り、全面腐食してしまう。
【0042】
また、比較例7、比較例9、比較例10も、V、W、Nbの合計添加量が本願発明の範囲を下回っているため、Cr炭化物抑制効果が十分に働かず、実施例1~8に比べて耐食性に劣っている。特に、比較例7は、その孔食指数(PRE値)が26.2と高い値を示しているものの、実施例1~8に比べて最大孔食深さ及び合計孔食深さが大きく、刃物としての耐食性に劣っている。
【0043】
比較例5は、V、W、Nbの合計添加量が本願発明の範囲を上回っているため、高い耐食性を示すものの、実施例1~8に比べて硬度に劣っている。この比較例5は、炭化物量が過度に多くなるため、各種炭化物を含んだ鋼全体のビッカース硬度は、比較例10(SUS440C)と同程度であるものの、鋼素地の固溶C量の減少により鋼素地自体の硬度が不足しているため、小刃角度16±1度のときの切断性能は、小刃角度24±1度のときよりも劣っている。
【0044】
また、比較例8も、V、W、Nbの合計添加量が本願発明の範囲を上回っているため、C及びCrの添加量が本願発明の範囲を上回っているにも関わらず、実施例1~8に比べて硬度に劣っている。
【0045】
これらの試験結果から明らかなように、本願発明によれば、V、W、Nbの炭化物形成傾向が比較的に高いことを利用することによって、耐食性を低下させ、鋭い刃付けの際に有害となるような複炭化物の形成を抑制して必要な耐食性を確保すると同時に、鋼素地自体の硬度を確保することができるので、より高硬度で優れた刃付け性を備えながらも、耐食性、靭性、耐摩耗性にも優れた刃物用鋼を提供することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 刃物
11 刃先
図1