(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】インソールおよび履物
(51)【国際特許分類】
A43B 17/00 20060101AFI20241218BHJP
A43B 17/14 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
A43B17/00 Z
A43B17/14
(21)【出願番号】P 2024533015
(86)(22)【出願日】2024-03-01
(86)【国際出願番号】 JP2024007817
【審査請求日】2024-05-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524206924
【氏名又は名称】株式会社HAMA R&D
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100165456
【氏名又は名称】鈴木 佑子
(74)【代理人】
【識別番号】100128392
【氏名又は名称】服部 秀一
(72)【発明者】
【氏名】濱野 喜敏
【審査官】葛谷 光平
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-073404(JP,U)
【文献】特開2001-353005(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0120914(US,A1)
【文献】実開昭58-041206(JP,U)
【文献】登録実用新案第3224134(JP,U)
【文献】特開2023-118087(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 17/00
A43B 17/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
足の踵部を支持する踵サポート部を備え、
前記踵サポート部は、
所定の厚さを有する略円盤状の本体部を有し、
この本体部のうちの踵の外側を支持する領域が外側部とされ、前記本体部のうちの踵の内側を支持する領域が内側部とされ、
前記外側部と前記内側部とは、前記外側部の反発力が
前記内側部の反発力より大きく
なるように硬度が異なる別素材にて構成され
、歩行時に生じ得る踵骨のねじれが抑制されるように、前記外側部と前記内側部との割合が調整されている
ことを特徴とするインソール。
【請求項2】
少なくとも足の土踏まず部および踵部を支持するインソール本体と、
前記インソール本体に設けられ、前記土踏まず部を支持する土踏まずサポート部と、を備え、
前記踵サポート部は、前記インソール本体に設けられている、
ことを特徴とする請求項1記載のインソール。
【請求項3】
前記土踏まずサポート部は、パット状に形成され、前記インソール本体の裏面側に取り付けられている、
ことを特徴とする請求項2記載のインソール。
【請求項4】
請求項1ないし
3のいずれか1項に記載のインソールが中敷きとして取り付けられた、
ことを特徴とする履物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばスニーカーや革靴等の靴の中敷きとして用いられるインソールおよび、このインソールを備えた履物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、足をサポートするインソールとして、例えば特許文献1に記載の構成が知られている。この特許文献1には「平板状であり、かつクッション性のある弾性材料からなり、足裏種子球や土踏まずなどの位置に対応した上面に種々の凹部及び隆起部を形成した歩行用履物の中底又はインソールであり、更に、かかる中底又はインソールとともに足裏に接する面(上面)に横方向の直線状の溝を設け、接地面(下面)に円形または楕円形の溝とつま先方向に凸の円弧状の溝を形成してなる靴底又はアウトソールとを組み合わせて構成した」構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載のインソールでは、足の土踏まずの部分をサポートする構成に過ぎないため、足の左右方向のねじれを抑えることができないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、足の踵部を支持する踵サポート部を備え、前記踵サポート部は、踵の外側を支持する外側部の反発力が、前記踵の内側を支持する内側部の反発力より大きく構成されている、ことを特徴とするインソールである。
また、本発明は、上記インソールが中敷きとして取り付けられた、ことを特徴とする履物である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、足の左右方向のねじれを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るインソールの概略構成図で、(a)は平面図、(b)は正面図で、(c)は底面図、(d)は右側面図である。
【
図2】上記第1実施形態に係るインソールの作用を示す概略図で、(a)は足のバランスを示す図で、(b)はインソールを用いた状態の足のバランスを示す図である。
【
図3】本発明の第2実施形態に係るインソールの概略構成図で、(a)は平面図、(b)は底面図である。
【
図4】上記第2実施形態に係るインソールの概略構成図で、(a)は正面図、(b)は右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の第1実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0009】
[第1実施形態]
<構成>
図1に示す本発明の第1実施形態に係るインソール1は、例えばスニーカーや革靴、安全靴等の履物(靴)の中敷きとして用いられる補正インソール(踵角度補正パッド)であり、左足用と右足用として一対とされている。このインソール1は、
図1(a)ないし
図1(c)に示すように、足の土踏まずから踵までを支持する大きさに形成されている。そして、インソール1は、シート状のインソール本体2を備えている。このインソール本体2は、所定の弾性を有するシート状の基材2aの表面に、例えばレザー(皮)等で構成された耐久性の高い表材2bが貼り付けられた二層構造に構成されている。
【0010】
ここで、基材2aは、例えばEVA(Ethylen-Vinyl Acetate:エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂)にて構成されており、柔軟性と弾力性とを兼ね備えた材質で構成されている。なお、表材2bは、インソール本体2の耐久性を確保できる素材であれば、レザー以外の、例えば合皮、布地、不織布などのどのような素材であってもよく、またインソール本体2を基材2aのみで構成しても良い。
【0011】
そして、一対のインソール本体2は、左右対称に形成されており、踵(踵骨C)を支持する部分が円形に形成され、土踏まず(立方骨B)を支持する部分から踵を支持する部分に向けて幅方向の両側部が凹弧状に湾曲した形状となっている。また、これらインソール本体2の基材2aの裏面側には、足の土踏まずを支持してサポートする土踏まずサポート部としての土踏まず支持部3と、足の踵を支持してサポートする踵サポート部としての踵支持部4とがそれぞれ取り付けられている。
【0012】
そして、土踏まず支持部3は、インソール本体2の土踏まずを支持する部分の幅寸法より小さな長手寸法を有する略矩形平板状に形成されている。この土踏まず支持部3は、この土踏まず支持部3の長手方向をインソール本体2の幅方向に沿わせつつ、このインソール本体2の幅方向の略中心位置に取り付けられている。また、踵支持部4は、インソール本体2の踵を支持する部分より小さな円盤状に形成され、このインソール本体2の踵を支持する部分の中心位置(同心上)に取り付けられている。
【0013】
また、土踏まず支持部3は、所定の厚さを有するパッド状に形成され、EVAにて構成された一対のシート体である基材3a,3b間に、ゴム系の(ゴム剤をブレンドした)EVAにて構成されたシート状の緩衝材3cを介在させた三層構造に構成されている。そして、土踏まず支持部3は、長方形の長手方向の両側部を円弧状とした形状に形成されている。要するに、この土踏まず支持部3は、インソール本体2の踵側の部分を履物の踵部分に合わせて履物の中敷きとして収容させてセットした際に、足の土踏まずを下方から支持してサポートする位置に取り付けられる構成となっている。
【0014】
次いで、踵支持部4は、所定の厚さを有する略円盤状のパッド状に形成され、EVAにて構成された一対のシート体である基材4a,4b間に、シート状の本体部としての緩衝材4cを介在させた三層構造に構成されている。そして、この緩衝材4cは、踵の外側を支持する外側部としての外緩衝部4dと、踵の内側を支持する内側部としての内緩衝部4eとが一対の基材4a,4b間に水平方向(左右方向)に並べられて取り付けられ、この緩衝材4cの外側の約3分の1の部分が外緩衝部4dにて構成され、この緩衝材4cの内側の約3分の2の部分が内緩衝部4eにて構成された構造となっている。
【0015】
ここで、外緩衝部4dは、反発力および弾性力が大きなシート状の弾性部材、例えば、高比重物質配合塩化ビニル樹脂シートや特殊非硫化ゴム等にて構成されている。そして、この外緩衝部4dは、例えば80mPa程度の圧縮応力を有している。一方、内緩衝部4eは、ゴム系の(ゴム剤をブレンドした)EVAにて構成され、例えば0.07mPaや0.17mPa程度の圧縮応力を有している。要するに、外緩衝部4dは、内緩衝部4eの反発力(弾性力,圧縮応力)より反発力が、50倍から1000倍程度、大きな素材にて構成されている。すなわち、外緩衝部4dおよび内緩衝部4eは、硬度が異なる素材にて構成されている。
【0016】
そして、これら外緩衝部4dおよび内緩衝部4eの大きさ(占有面積,サイズ)や素材(反発力)は、インソール1の需要者が踵支持部4に踵部を載置させて背筋を伸ばして起立した際に、
図2(b)に示すように、踵骨Cの左右方向のバランスを安定、要するに水平にさせ、脛骨と腓骨(図示せず)とが地面に対して垂直となり、膝が正面を向き、足がまっすぐ前を向いて、踵骨Cと距骨Tとの隙間が少なくなるように調整されている。要するに、これら外緩衝部4dおよび内緩衝部4eは、インソール1の需要者の足の形や立姿勢での重心バランスなどに対応させて、歩行時に生じ得る踵骨Cのねじれが抑制されるように、これら外緩衝部4dおよび内緩衝部4eの割合(占有面積)が調整されている。また、これら外緩衝部4dおよび内緩衝部4eは、外緩衝部4dを硬質なウレタンにて構成し、内緩衝部4eを軟質なウレタンにて構成してもよい。
【0017】
さらに、踵支持部4の外側、要するに下側に位置する基材4aには、インソール本体2の左右を識別するための目印4fが取り付けられている。この目印4fは、例えばオレンジ色等の目立つ色彩に着色されたシール材等にて構成されており、各インソール1の外側、要するに外緩衝部4dが配置されている側が分かるように、各踵支持部4の下面側に位置する基材4aの、外緩衝部4dが配置されている側に寄った位置に貼り付けられている。
【0018】
<作用効果>
次に、上記第1実施形態に係るインソール1の作用効果について説明する。
【0019】
まず、インソール1の需要者の足の形を測定したり、立姿勢での重心バランスなどを測定したり等して、この需要者の歩行時に生じ得る踵骨Cのねじれが抑制されるように、踵支持部4の外緩衝部4dと内緩衝部4eとの割合を決定する。このとき、需要者によっては、左右の足の形状や左右の重心バランスが異なる場合があるが、この場合には、左右の外緩衝部4dと内緩衝部4eとの割合を異ならせる。
【0020】
具体的には、
図2(a)に示すように、インソール1なしで起立した際に踵骨Cが左右方向に傾斜している需要者の場合においては、この需要者が踵支持部4に踵部を載置させて背筋を伸ばして起立した際に、
図2(b)に示すように、踵骨Cの左右方向のバランスが安定、要するに水平となり、かつ足の脛骨と腓骨とが地面に対して垂直となり、膝が正面を向き、足がまっすぐ前を向く(正常の位置となる)ように、外緩衝部4dと内緩衝部4eとのバランス(大きさ,素材)を調整する。
【0021】
次いで、この決定した外緩衝部4dと内緩衝部4eとの割合となるように踵支持部4を形成し、この形成した踵支持部4をインソール本体2の基材2a側の下面に貼り付ける等して取り付ける。また、この需要者の土踏まずを支持する位置となるように土踏まず支持部3をインソール本体2の基材2a側の下面に貼り付ける等して取り付けて左右一対のインソール1を形成する。このとき、この一対のインソール1上に需要者が足をのせて垂直に起立させた際に、この重要者の足の重心が足裏全体となる(若干前のめりな状態)とように、土踏まず支持部3および踵支持部4の厚さ(高さ)を調整することが好ましい。
【0022】
そして、需要者が利用する履物に予め挿入されている既存の中敷き(インソール)上に、作成したインソール1をそれぞれ取り付ける。このとき、これらインソール1のインソール本体2の踵側の部分を、既存の中敷きの踵部分に重なるように、これらインソール本体2を中敷き上に載置させて設置する。
【0023】
その後、これらインソール1を所定位置に設置した履物を履いて日常生活や種々の作業またはスポーツを行うことにより、これらインソール1の土踏まず支持部3による土踏まず(立方骨B)の支持(サポート)により、これら土踏まずを用いたバランス調整が可能となる。また同時に、各インソール1の踵支持部4によって、踵(踵骨C)が支持(サポート)されて、これら踵骨Cの左右方向のねじれが抑制され、これら踵骨Cがしっかりと踵支持部4にて押さえら(ホールドさ)れ、両膝がまっすぐ正面を向いた状態となり、内股や蟹股が解消されるため、踵を交互にまっすぐ正面に出しながら歩行できる。
【0024】
よって、各インソール1の土踏まず支持部3および踵支持部4による各足の立方骨Bおよび踵骨Cのサポートに加え、各足の重心が足裏全体(若干前のめりな状態)となるため、両足による身体の支持がより安定かつ強固にとなり、より力を発揮できるようになる。また同時に、足の血行(血流)が改善されるため、冷え性が改善され、より体が暖かくなる感じとなる。また、両足による身体の支持がより安定かつ強固になることから、思わぬ転倒を防止でき、ねんざや怪我を防止できる。また、起立時の姿勢が安定し(正常な状態となり)、体軸が安定するため、体への負荷を軽減でき、足腰の痛みを軽減できる。
【0025】
次に、本発明の第2実施形態に係るインソール11について、図面を参照して説明する。
【0026】
[第2実施形態]
<構成>
図3および
図4に示す本発明の第2実施形態に係るインソール11は、インソール本体21の形状が、上述した第1実施形態に係るインソール1と相違する。なお、本第1実施形態と共通する構成については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0027】
具体的に、この一対のインソール11は、インソール本体21が足の足先から踵までを支持する大きさに形成されている。そして、これらインソール本体21は、土踏まずから踵までを支持する部分の周縁が上側に向けて円弧状に立ち上げられた形状となっている。また、これらインソール本体21は、所定の弾性を有するシート状の基材21aの表面に、例えば布地で構成された表材21bが貼り付けられた二層構造に構成されている。
【0028】
そして、各基材21aは、例えばEVA等にて構成されている。なお、表材21bは、布地以外の、例えば合皮、不織布などのどのような素材であってもよく、またインソール本体21を基材21aのみで構成しても良い。また、これらインソール本体21の基材21aの裏面側の所定位置には、土踏まず支持部3と踵支持部4とがそれぞれ貼り付けられて取り付けられている。
【0029】
<作用効果>
以上により、本第2実施形態に係るインソール11によれば、上記第1実施形態に係るインソール1と同様の作用効果を奏する上、以下の作用効果を奏することができる。要するに、このインソール11は、インソール本体21が足の足先から踵までを支持する大きさに形成されているため、需要者が利用する履物から既存の中敷きを取り外してから、この中敷きの代わりにインソール11を取り付けることができる。
【0030】
そして、これらインソール11を履物の中敷きとして取り付けた場合には、この履物内での土踏まず支持部3および踵支持部4のずれ(移動)が生じてしまうおそれが少なくなる。このため、これらインソール11の土踏まず支持部3による土踏まずの支持と、踵支持部4による踵骨Cの左右方向のねじれの抑制とをより確実に機能させることができる。
【0031】
[その他]
なお、本発明は前述した各実施形態に限定されるものではなく、様々な変形態様が含まれる。例えば、前述した各実施形態は、本発明を分りやすく説明するために説明したものであり、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0032】
すなわち、上記各実施形態においては、土踏まず支持部3および踵支持部4をインソール本体2,21の裏面に貼り付けて裏面側に突出させた構成としたが、これら土踏まず支持部3および踵支持部4の少なくとも1つをインソール本体2,21に内蔵させたり、このインソール本体2,21を刳り貫いて取り付けたりしてもよい。また、土踏まず支持部3および踵支持部4の少なくともいずれかを既存のインソールの裏面に貼り付けたりすることもできる。
【符号の説明】
【0033】
1,11 インソール
2,21 インソール本体
2a,21a 基材
2b,21b 表材
3 土踏まず支持部(土踏まずサポート部)
3a,3b 基材
3c 緩衝材
4 踵支持部(踵サポート部)
4a,4b 基材(シート体)
4c 緩衝材(本体部)
4d 外緩衝部(外側部)
4e 内緩衝部(内側部)
4f 目印
B 立方骨
C 踵骨
T 距骨
【要約】
足の左右方向のねじれを抑制できるインソール1を提供する。インソール1は、足の踵部を支持する踵支持部4を備える。踵支持部4は、踵の外側を支持する外側部の反発力が、踵の内側を支持する内側部の反発力より大きく構成されている。また、インソール1は、少なくとも足の土踏まずおよび踵を支持するインソール本体2と、インソール本体2に設けられ、土踏まずを支持する土踏まず支持部3と、を備える。踵支持部4は、インソール本体2に設けられている。