(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】電気的インタフェースを有することなく超音波を使用して直接的タイミング情報を提供する心臓内通信
(51)【国際特許分類】
A61N 1/362 20060101AFI20241218BHJP
A61N 1/372 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
A61N1/362
A61N1/372
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020017525
(22)【出願日】2020-02-05
【審査請求日】2023-01-30
(32)【優先日】2019-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512158181
【氏名又は名称】バイオトロニック エスエー アンド カンパニー カーゲー
【氏名又は名称原語表記】BIOTRONIK SE & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Woermannkehre 1 12359 Berlin Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カート スウェンソン
(72)【発明者】
【氏名】ランプラサド ビジャヤゴパル
(72)【発明者】
【氏名】カール - ハインツ フライベルク
【審査官】鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0339160(US,A1)
【文献】特表2008-505714(JP,A)
【文献】特表2009-512505(JP,A)
【文献】特表2009-535120(JP,A)
【文献】特表2009-535170(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/362
A61N 1/372
A61B 5/283
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1の埋め込み型デバイス(10)と第2の埋め込み型デバイス(20)とを備える医療システム(1)であって、各埋め込み型デバイス(10、20)は、通信ユニット(11、21)を備え、前記通信ユニット(11、21)は、前記医療システム(1)の別の埋め込み型デバイス(20、10)の前記通信ユニット(21、11)に超音波信号を送信するように構成され、
前記第1の埋め込み型デバイス(10)は、電子モジュール(103)を備え、心臓周期ごとに、前記電子モジュール(103)により、ペーシング・パルス
を心房(2a)に適用するか、又は心臓イベントを感知するように構成され、前記第1の埋め込み型デバイス(10)は、前記心臓イベント又はペーシング・パルスの後、前もって定められた期間の経過後に、前記第1の埋め込み型デバイス(10)の前記通信ユニット(11)を使用して、超音波信号の形態の同報メッセージを少なくとも前記第2の埋め込み型デバイス(20)に送信するように構成され、前記同報メッセージは、前記心房(2a)において心臓イベント又はペーシング・パルスが発生したかを示し、
それぞれの前記埋め込み型デバイス(10、20)は、心臓イベントの発生又はペーシング・パルスが発生したことを示す同報メッセージを受信したときにタイマーを開始させるように構成され、各埋め込み型デバイス(10、20)の前記タイマーは、タイムアウトによる終了前に持続期間を経過させるように構成され、それぞれの前記持続期間は前記埋め込み型デバイス(10、20)の固有の持続期間であり、
前記埋め込み型デバイス(10、20)の前記固有の持続期間が短いほど、心臓ペーシング又は検出された前記心臓イベントに関連する前記同報メッセージ後のメッセージの送出ができることについての埋め込み型デバイス(10、20)の優先順位は高くなる、医療システム(1)。
【請求項2】
それぞれの前記通信ユニット(11、21)は圧電トランスデューサ(12、22)を備える、請求項1に記載の医療システム。
【請求項3】
それぞれの前記通信ユニット(11、21)は、前記医療システム(1)の別の通信ユニット(21、11)から超音波信号を受信するように構成される、請求項1又は2に記載の医療システム。
【請求項4】
前記第1の埋め込み型デバイス(10)は、第1の埋め込み型リードレス・ペースメーカー(10)であり、前記第2の埋め込み型デバイス(20)は、第2の埋め込み型リードレス・ペースメーカー(20)である、請求項1から3までのいずれか一項に記載の医療システム。
【請求項5】
前記第2の埋め込み型デバイス(20)は、超音波コマンド信号を、その通信ユニット(21)を通じて前記第1の埋め込み型デバイス(10)に送信するように構成され、前記第1の埋め込み型デバイス(10)は、前記超音波コマンド信号を受信したとき、ペーシング・パルスを生成して、その電子モジュール(103)を通じて前記心房(2a)に適用するように構成される、請求項1に記載の医療システム。
【請求項6】
前記第2の埋め込み型デバイスは、外部プログラミング・デバイス(30)からプログラミング信号を受信するためのアンテナ(23)を備え、前記第1の埋め込み型デバイス(10)は、前記第2の埋め込み型デバイス(20)の前記通信ユニット(21)を介してプログラムされるように構成される、請求項1から5までのいずれか一項に記載の医療システム。
【請求項7】
前記医療システム(1)は、超音波信号を前記第1及び/又は前記第2の埋め込み型デバイス(10、20)に送信するように構成された、及び/又は、超音波信号を前記第1及び/又は前記第2の埋め込み型デバイス(10、20)から受信するように構成された第3の埋め込み型デバイス(40)を備える、請求項1から6までのいずれか一項に記載の医療システム。
【請求項8】
それぞれの前記埋め込み型デバイス(10、20)は、それぞれの他の前記埋め込み型デバイス(10、20)からのメッセージとの衝突を避けるために、それぞれの前記埋め込み型デバイス(10、20)の前記通信ユニット(11、21)を通じたメッセージの送信をスケジュールするように構成された制御ユニット(14、24)を備え、それぞれの前記埋め込み型デバイス(10、20)は、送出されるべき前記メッセージを保留メッセージとしてその通信ユニット(11、21)に記憶し、保留メッセージを示すフラグを設定するように構成され、それぞれの前記埋め込み型デバイス(10、20)の前記通信ユニット(11、21)は、それぞれの前記埋め込み型デバイス(10、20)の前記タイマーのタイムアウトにおいて、それぞれの前記埋め込み型デバイス(10、20)の前記通信ユニット(11、21)の受信回路が着信するメッセージの受信を処理中であるかを判定するように構成され、メッセージの受信の処理中である場合には、少なくとも次のタイムアウトまで前記通信ユニット(10、20)によってメッセージが送出されることはなく、メッセージが受信中でなく、前記フラグが設定されている場合には、前記通信ユニット(10、20)は、前記保留メッセージを送出するように構成される、請求項1から7までのいずれか一項に記載の医療システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療システムに関し、特には、少なくとも第1及び第2の埋め込み型リードレス・ペースメーカーを備えるペースメーカー・システムに関する。
【背景技術】
【0002】
リードレス・ペースメーカー・システムは、ペーシングが発生すべき各チャンバのために少なくとも1つの埋め込み型リードレス・ペースメーカーを必要とする。2(又は3のときさえもある)チャンバ・ペースメーカー・システムの役割の一つは、チャンバの間での途切れた内在的タイミング接続を修正することである。別の役割は、ペーシングが発生する速度を制御することによって、患者の心臓の要求に合ったやり方で全心臓周期のタイミングを制御することである。
【0003】
このようなシステムにおけるリードレス・ペースメーカーは、1つのチャンバから別のチャンバへと情報を運ぶワイヤを有さないので、これらの要件に合わせるために必要となる速度及びタイミング同期を可能とするために、チャンバの間での何らかの形態の通信が必要とされる。
【0004】
イベント・タイミング情報の通信は、タイム・クリティカルである。一方のチャンバにおけるイベントは、それに応える挙動を別のチャンバにおいて即座に始動させ得る。他の種類の情報の通信は、タイム・クリティカルではなくてよい。例えば、もしもペーシング速度が一方のチャンバにおいて計算されたならば、別のチャンバにおけるリードレス・ペースメーカーがこの情報を共有することは有益であり得るが、情報交換のタイミングは、必要となる追加的な情報を何も伝えない。別の種類のデータ伝達は、協調的なシステム挙動を提供するために、一方のリードレス・ペースメーカーが、別のリードレス・ペースメーカーの挙動を設定することを可能とするためになされ得る。両デバイスが同時に設定を切り換えることを可能とするために同期信号を使用する必要があり得るが、設定情報は、典型的にはタイム・クリティカルではない。
【0005】
特には、文献、米国特許出願公開第2015/0224320A1号は、第1の心臓部位に埋め込まれ得る第1のリードレス心臓ペースメーカーと、第2の心臓部位に埋め込まれ得る第2のリードレス心臓ペースメーカーとを備えるリードレス・ペースメーカー・システムを開示しており、第1のペースメーカーは、第1の心臓部位において第1のペースメーカーによって感知された心臓イベントに関する情報を第2のペースメーカーに通信するように構成される。
【0006】
更には、文献、米国特許第9,623,251B2号は、心室部位に埋め込まれ得るように構成された第1のリードレス心臓ペースメーカーと、心房部位に埋め込まれ得るように構成された第2のリードレス心臓ペースメーカーとを備えるリードレス心臓ペースメーカー・システムを説明しており、第2のペースメーカーは、心房収縮を感知するように構成され、第1のペースメーカー及び第2のペースメーカーは、通信可能に結合されるように構成されて、第2のペースメーカーは、感知された心房収縮を第1のペースメーカーに通信し得る。
【0007】
更に、文献、米国特許出願公開第2015/0335894Α1号は、心臓の第1及び第2のチャンバ内に全体的に埋め込まれるように構成された第1及び第2のリードレス埋め込み型医療デバイスを備える分散リードレス埋め込み型システムを開示しており、第1及び第2のデバイスの各々は、局所的なチャンバの局所的な関心組織に係合するように構成された近位端部を有するハウジングと、ハウジングに沿って位置する電極と、局所的チャンバに関係する近接場において発生した内在的な及びペーシングされた心臓イベントを検出するように構成された心臓感知回路と、内在的な及びペーシングされたイベントを分析し、それに基づいて、局所的チャンバにおいて関心イベントが発生したときに電極において始動パルスを生むように構成されたコントローラと、遠方場において発生したペーシングされたイベント又は始動パルスのうちの少なくとも1つを検出するように構成されたパルス感知回路とを備え、ペーシングされたイベント又は始動パルスは、対応する局所的チャンバとは異なる遠方のチャンバにおいて生じ、始動パルスは遠方のチャンバにおいて関心イベントが発生したことを示すように構成された所定のパターンを有し、コントローラは、ペーシングされたイベント、又は遠方のチャンバにおける関心イベントの発生を示す始動パルスのうちの少なくとも1つを認識し、それに応じて、関連する動作を局所的チャンバにおいて開始するように構成される。
【0008】
典型的には、上述されたもののような2つの埋め込みシステムにおいて、システムにおけるいくつかの情報交換はタイム・クリティカルであり、いくつかの場合において、内在的な心臓イベントによって直接的に始動されるので、メッセージが同時に発生する可能性があり、結果として、いくつかの情報が失われる可能性のある衝突が起こる。
【0009】
特には、情報交換のための経路が、心臓組織内で伝導される変調された電気パルスを介している場合、組織における内在的な電気的活動がデータ送信に干渉することがある。典型的な解決策は、データを不応期中にのみ送出することであるが、これは、タイム・クリティカルなイベント・フラグの送出を妨げる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許出願公開第2015/0224320A1号
【文献】米国特許第9,623,251B2号
【文献】米国特許出願公開第2015/0335894Α1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記のことに基づき、本発明の目的は、心臓組織内の電気的活動と競合することのない通信経路を使用することが可能なシステムを提供することである。
【0012】
更には、異なる心臓のチャンバにおけるデバイス間の情報伝達を、タイム・クリティカルなメッセージとタイム・クリティカルではないメッセージとに分類することが望ましい。更には、タイム・クリティカルではない情報を送出するための衝突回避機構を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載の医療システム及び請求項13に記載の医療システムが提供される。更なる実施例は、従属請求項の主題である。
【0014】
一態様において、医療システムが開示され、この医療システムは、少なくとも第1の埋め込み型デバイスと第2の埋め込み型デバイスとを備え、各埋め込み型デバイスは、通信ユニットを備え、通信ユニットは、医療システムの他の埋め込み型デバイスの通信ユニットに超音波信号(例えば、変調された超音波圧力波)を送信するように構成される。
【0015】
医療システムの実施例によると、それぞれの通信ユニットは圧電トランスデューサを備える。
【0016】
更には、医療システムの実施例によると、それぞれの通信ユニットは、他の通信ユニットから超音波信号(例えば、変調された超音波圧力波)を受信するように構成される。
【0017】
特には、各埋め込み型デバイスにおける圧電ベースの超音波トランスデューサは、他のデバイスへと情報を運び得る変調された圧力波を生むために電気的に誘起され得る。同じトランスデューサが、着信する変調された圧力波に応じて比例した電気信号を生成する。特には、これらの信号は、送信された情報を回復するために復調される前に、フィルタリング及び増幅され得る。
【0018】
更には、実施例によると、それぞれのトランスデューサは、ハウジング内に密封されることによって生物組織から隔離されているとともに、ハウジングは、それぞれの埋め込み型デバイス(例えば、埋め込み型リードレス・ペースメーカー)のバッテリ及び/又は電子機器を患者の組織から隔離するためにも使用される。特には、それぞれのトランスデューサとハウジングとの間の機械的インタフェースは、生物環境の圧力波とトランスデューサとの間の機械的結合を可能とするように設計される。
【0019】
更には、医療システムの実施例によると、第1の埋め込み型デバイスは、患者の心臓の心房(例えば右心房)内に埋め込まれるように構成された第1の埋め込み型リードレス・ペースメーカーであり、第2の埋め込み型デバイスは、患者の心臓の心室(例えば、前記心房と同じ側の、例えば、右心室)内に埋め込まれるように構成された第2の埋め込み型リードレス・ペースメーカーである。
【0020】
特には、それぞれの埋め込み型リードレス・ペースメーカーは、ペースメーカーのハウジングに配置されたペーシング電極を備え、ハウジングは、心房又は心室における心臓壁に固定されるように構成される。
【0021】
患者の心臓の心房内への埋め込みのための埋め込み型デバイスは、心房のサイズが小さいため、非常に小型で、非常に長いサービス期間を有する必要がある。業界の見込みでは、劣化した埋め込み型リードレス・ペースメーカーは、長期的な埋め込み物を心臓から除去することにはリスクが伴うので、作動停止され、破棄される必要がある。このことが不可避になる一方、心房にデバイスが埋め込まれた状態では、これはできる限り長期の間、回避されるべきであり、というのは、交換デバイスを、破棄される劣化した埋め込み型デバイスと同一の心房のチャンバにフィットさせることができないことがあるからである。CPU及び/又はペースメーカー・タイマー回路を有するという埋め込み型心房デバイスの負担を緩和することによって、埋め込み型心房デバイスは、小型化でき、所与の時間におけるバッテリ容量の消費も小さくなり得、使用可能なサービス期間を増やすことができる。
【0022】
更には、医療システムの実施例によると、第1の埋め込み型デバイスは、心房における心臓イベント(例えば、心房収縮)を検出し、その通信ユニットを通じて対応する超音波信号(感知マーカーとも称される)を第2の埋め込み型デバイスに送信するように構成され、この超音波信号は、検出された心臓イベントを示す。
【0023】
更に、医療システムの実施例によると、第2の埋め込み型デバイスは、超音波コマンド信号を第1の埋め込み型デバイスに送信するように構成され、第1の埋め込み型デバイスは、前記超音波コマンド信号を受信したとき、ペーシング・パルスを生成して心房に適用するように構成される。
【0024】
更に、医療システムの実施例によると、第2の埋め込み型デバイスは、医療システムの外部プログラミング・デバイスからプログラミング信号を受信するためのアンテナ(例えば、電磁コイル)を備え、第1の埋め込み型デバイスは、第2の埋め込み型デバイスを介してプログラムされるように構成される。例えば、第2の埋め込み型デバイスは、プログラミング・デバイスによって生成された超音波プログラミング信号の形態のプログラミング信号、又は前記プログラミング信号の一部を、第1の埋め込み型デバイスに転送するように構成され得る。
【0025】
第1の埋め込み型デバイスは、心室デバイスによって設定され得るので、第1の埋め込み型デバイスは、外部プログラミング・デバイスとの誘導通信を可能とするために必要となる比較的大型のコイルを必要としない。特には、実施例によると、第2の埋め込み型デバイスは、全体的な医療システムのためのペースメーカー・タイマーを備え、第1の埋め込み型デバイスなどの他のデバイスから報告されたイベントを使用するように構成され得る。
【0026】
更には、医療システムの実施例によると、医療システムは、超音波信号を第1及び/又は第2の埋め込み型デバイスに送信するように構成された、及び/又は、超音波信号を第1及び/又は第2の埋め込み型デバイスから受信するように構成された第3の埋め込み型デバイスを備える。このような(例えば、皮下デバイスの形態の)第3の埋め込み型デバイスは、例えば、ペースメーカー・タイマーへの入力としてペーシングが発生したときに捕捉確認を提供するために使用され得る。
【0027】
医療(例えば、心臓)システムにある埋め込み型デバイスが2つだけであっても、プロトコルが通信衝突が起こり得るタイミングを明示的に回避しない限り、通信衝突は起こり得る。特には、医療システムの実施例において、システムは、3つ以上の埋め込み型デバイスを備える。例えば、皮下デバイスが、身体エリア・ネットワークの状態を監視し、深い埋め込み物からホーム監視システムへのRF(radio frequency:高周波)ベースの通信の可能性を提供するために使用され得る。更に、交換シナリオは、劣化したデバイスを遮断する前に、交換デバイスの適切な動作を保証するためにデバイス間の協調を必要とすることが多い。
【0028】
マスター/スレーブ協調メッセージが埋め込み型デバイス間で交換されることを可能とする通信プロトコルは、感知マーカー、ペース・コマンド及び設定同期コマンドなどのタイム・クリティカルなメッセージを取り扱わなくてはならず、及び、デバイスからの統計情報を問い合わせてそれらを設定するために使用されるものなどのそれほどタイム・クリティカルではないメッセージも取り扱わなくてはならない。タイム・クリティカルなメッセージは、環境が指示するとおりに送出されなければならない。故に、タイム・クリティカルなメッセージの衝突を防止することは、本質的に一層困難である。単純なペースメーカー・システムにおいて必要とされるタイム・クリティカルなメッセージの分析は、イベントの1つの特定の集中だけによってこのような衝突が生じる可能性があることを明らかにしている。
【0029】
これは、ペースメーカー・タイマーが、内在的な心房感知が発生したのと同じ瞬間に、心房のペーシングが送達されるべきであると決定した場合である。この場合、ペースメーカー・タイマーは、イベントがペーシングであろうと感知であろうと同じようにリセットされ、内在的な心臓脱分極と同時的な心房ペーシングの送達は、心臓に影響を与えず、したがって、ペースメーカー・システムは、いずれかのメッセージが無事に他の埋め込み物に送達されようとされまいと、安全で適正な状態になるであろう。2つの超音波メッセージが、異なる埋め込み物によって同時に送信されたとき、最もあり得る結果は、どちらのメッセージも適切に受信されないことである。タイム・クリティカルではないメッセージのうちの一つが失われると、システムのためにより適正でない状態が生じる可能性があり、例えば、設定の変更が無視されたり、又は統計情報アイテムが報告されなかったりする。したがって、実施例によると、タイム・クリティカルな心房イベントが、医療/ペースメーカー・システムの埋め込み型デバイス間での他のメッセージの優先順位付けを可能とする時間基準として使用される。
【0030】
更には、医療システムの実施例によると、第1の埋め込み型デバイスは、心臓周期ごとに、ペーシング・パルスを心房に適用するか、又は(心房の)心臓イベントを感知するように構成され、第1の埋め込み型デバイスは、前記心臓イベント又はペーシング・パルスの後、前もって定められた期間の経過後に、第1の埋め込み型デバイスの通信ユニットを使用して、超音波信号の形態の同報メッセージを少なくとも第2の埋め込み型デバイスに(又は、医療システムにおける全ての他の埋め込み型デバイスに)送信するように構成され、前記同報メッセージは、心臓イベント又はペーシング・パルスが発生したかを示す。
【0031】
特には、前記前もって定められた期間は、5秒から90秒、特には5秒から50秒、好ましくは5秒から20秒の範囲であり得る。5秒から20秒の期間は、イベントからの如何なる外乱も終了するまで十分に長く待機することを可能とするが、メッセージを割り込ませるために多くの不応期を使用可能にしたままにもする。
【0032】
更には、医療システムの実施例によると、それぞれの埋め込み型デバイスは、心臓イベントの発生又はペーシング・パルスが発生したことを示す同報メッセージを受信したときにタイマーを開始させるように構成され、各埋め込み型デバイスのタイマーは、タイムアウトによる終了前に持続期間を経過させるように構成され、それぞれの持続期間は、システムの他の埋め込み型デバイスの持続期間とは異なる固有の持続期間である。
【0033】
特には、実施例によると、それぞれの埋め込み型デバイスによって生成される全てのメッセージは、どのターゲット(例えば、第1又は第2の埋め込み型デバイス)に対してメッセージが送出されているかを示すアドレス識別子を備える。特には、アドレス識別子のうちの1つは、それぞれのメッセージがシステムの全てのデバイス(例えば、第2の及び特には第3の埋め込み型デバイス)に対して送出されていることを示す同報アドレス識別子である。
【0034】
更には、実施例によると、それぞれの埋め込み型デバイスのタイマーの持続期間は、埋め込み型デバイスのアドレス識別子によって決まる。特には、持続期間が短いほど、メッセージの送出ができることについての埋め込み型デバイスの優先順位は高くなる。
【0035】
更に、特には、システムの各埋め込み型デバイスにおける通信ユニット(例えば、そのメッセージ復号器)は、少なくともアドレス識別子が判定されるまでは、全てのメッセージを復号するように構成される。もしもそれぞれの通信ユニット(特には、復号器)がそれ自身がメッセージのターゲットであると判定したならば、すなわち、受信されたアドレス識別子がそれ自身の所定のアドレス識別子と一致したならば、メッセージの残りも同様に復号される。特には、同報アドレスをターゲットにしたメッセージは、システムにおける全ての埋め込み型デバイスによって完全に復号される。
【0036】
更には、医療システムの実施例によると、それぞれの埋め込み型デバイスは、それぞれの埋め込み型デバイスの通信ユニットを通じたメッセージの送信をスケジュールするように構成された制御ユニットを備え、それぞれの埋め込み型デバイスは、送出されるべきメッセージを保留メッセージとしてその通信ユニットに記憶し、保留メッセージを示すフラグを設定するように構成される。
【0037】
更に、医療システムの実施例によると、それぞれの埋め込み型デバイスの通信ユニットは、埋め込み型デバイスのタイマーのタイムアウトにおいて、埋め込み型デバイスの受信回路が着信するメッセージの受信を処理中であるかを判定するように構成され、メッセージの受信の処理中である場合には、少なくとも次のタイムアウトまで通信ユニットによってメッセージが送出されることはなく、メッセージが受信中でなく、前記フラグが設定されている場合には、通信ユニットは、保留メッセージを送出するように構成される。これが送信されている間、このメッセージは、他の埋め込み物による優先順位の低いタイム・クリティカルではないメッセージの送出を効果的に禁止する。
【0038】
本発明の更なる態様は医療システムに関し、この医療システムは、少なくとも第1の埋め込み型デバイスと第2の埋め込み型デバイスとを備え、各埋め込み型デバイスは、通信ユニットを備え、通信ユニットは、他の埋め込み型デバイスの通信ユニットに(例えば、変調された超音波圧力波の形態の)メッセージを送信するように構成され、第1の埋め込み型デバイスは、第1の埋め込み型デバイスの通信ユニットを使用して、同報メッセージを少なくとも第2の埋め込み型デバイス(特には、システムの全ての埋め込み型デバイス)に周期的に送信するように構成され、前記同報メッセージはイベントが発生したことを示し、第1の埋め込み型デバイスは、前記イベントの後、前もって定められた期間の経過後に、前記同報メッセージを送信するように構成され、それぞれの埋め込み型デバイスは、イベントの発生を示す同報メッセージを受信したときにタイマーを開始させるように構成され、各埋め込み型デバイスのタイマーは、タイムアウトによる終了前に持続期間を経過させるように構成され、それぞれの持続期間は、医療システムの他のデバイスに与えられた持続期間とは異なる固有の持続期間である。
【0039】
上述のように、実施例によると、第1の埋め込み型デバイスは、患者の心臓の心房(例えば右心房)内に埋め込まれるように構成された第1の埋め込み型リードレス・ペースメーカーであり得、第2の埋め込み型デバイスは、患者の心臓の心室(例えば、前記心房と同じ側の、例えば、右心室)内に埋め込まれるように構成された第2の埋め込み型リードレス・ペースメーカーであり得る。特には、前記イベントは、第1の埋め込み型デバイスによって検出された(心房の)心臓イベント、又は第1の埋め込み型デバイスによって心房に印加されたペーシング・パルスであり得る。更には、特には、前記前もって定められた期間は、上に既に述べられた値をとり得る。
【0040】
特には、実施例によると、ここにおいても、それぞれの埋め込み型デバイスの通信ユニットによって生成される全てのメッセージは、どのターゲット(例えば、第1又は第2の埋め込み型デバイス)に対してメッセージが送出されているかを示すアドレス識別子を備え得る。特には、アドレス識別子のうちの1つは、それぞれのメッセージがシステムの全ての埋め込み型デバイス(例えば、第2の、及び特には第3の埋め込み型デバイス)に対して送出されていることを示す同報アドレス識別子である。
【0041】
更には、実施例によると、ここにおいても、それぞれの埋め込み型デバイスのタイマーの持続期間は、埋め込み型デバイスのアドレス識別子によって決まり得る。特には、上に説明されたように、持続期間が短いほど、メッセージの送出ができることについての埋め込み型デバイスの優先順位は高くなる。
【0042】
更に、特には、システムの各埋め込み型デバイスの通信ユニット(例えば、そのメッセージ復号器)は、少なくともアドレス識別子が判定されるまでは、全てのメッセージを復号するように構成される。それぞれの通信ユニット(特には、復号器)がそれ自身がメッセージのターゲットであると判定したならば、すなわち、受信されたアドレス識別子がそれ自身の所定のアドレス識別子と一致したならば、メッセージの残りも同様に復号される。特には、同報アドレスをターゲットにしたメッセージは、システムにおける全ての埋め込み型デバイスによって完全に復号される。
【0043】
更には、医療システムの実施例によると、それぞれの埋め込み型デバイスは、埋め込み型デバイスの通信ユニットを通じたメッセージの送信をスケジュールするように構成された制御ユニットを備え、それぞれの埋め込み型デバイスは、送出されるべきメッセージを保留メッセージとしてその通信ユニットに記憶し、保留メッセージを示すフラグを設定するように構成される。
【0044】
更には、医療システムの実施例によると、それぞれの埋め込み型デバイスの通信ユニットは、それぞれの埋め込み型デバイスのタイマーのタイムアウトにおいて、それぞれの埋め込み型デバイスの受信回路が着信するメッセージの受信を処理中であるかを判定するように構成され、メッセージの受信の処理中である場合には、少なくとも次のタイムアウトまで通信ユニットによってメッセージが送出されることはなく、メッセージが受信中でなく、前記フラグが設定されている場合には、通信ユニットは、保留メッセージを送出するように構成される。
【0045】
以下の実施例において、本発明の特徴及び利点が、図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】医療システムの実施例の概略的な図を図示する。
【
図2】心臓内ペーシング・デバイスの第1の実施例の概略的な図を図示する。
【
図3】心臓内ペーシング・デバイスの第2の実施例の概略的な図を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図1は、第1の埋め込み型デバイス10と第2の埋め込み型デバイス20とを備える医療システム1であって、各埋め込み型デバイス10、20は、通信ユニット11、21を備え、通信ユニット11、21は、医療システム1の別の埋め込み型デバイス20、10の通信ユニット21、11に超音波信号を送信するように構成される、医療システム1の実施例を図示する。
【0048】
ここで、実例として、第1及び第2の埋め込み型デバイス10、20は、埋め込み型リードレス・ペースメーカー10、20によって形成され、第1の埋め込み型リードレス・ペースメーカー10は、患者の心臓2の心房(例えば、右心房)2a内に埋め込まれ、第2の埋め込み型リードレス・ペースメーカー20は、心臓2の心室2b内に埋め込まれる。心臓2の心臓ペーシングに関して、特に房室(AV:atrioventricular)同期性を維持することは非常に重要である。AV同期性は、心臓の(正常な)興奮順序において、心房がまず収縮し、次いで、房室(AV)遅延と称される適正な遅延の後に、心室が収縮することを意味する。2つのチャンバの間のタイミングの同期が外れると、各拍動において送達される血液は少なくなり、心血管出力が低下する。故に、適切なペーシングを提供することができるように、適正な通信がデバイス10、20間で達成されるべきである。
【0049】
このために、ペーシングされる必要のある心臓2の各チャンバ2a、2bには、好ましくは、そのチャンバ内の心臓イベント(例えば、それぞれ心房収縮又は心室収縮)を感知すること、及び、そのチャンバ2a、2bにおいて心臓のペーシングを行うことが可能なリードレス・ペースメーカー10、20が付けられる。実施例によると、各デバイス10、20は、心臓組織を通って他のチャンバ2a、2bにおけるデバイス10、20へと伝播し得る変調された超音波圧力波の送信を可能とする圧電トランスデューサ12、22を有する。特には、同じトランスデューサ11、12が、受信された変調された圧力波を、もともと送信された信号を復元するために復調され得る電気信号へと変換することもできる。
【0050】
特には、実施例によると、それぞれのデバイス10、20の通信ユニット11、21は、時間的制約のあるメッセージについてはメッセージが即座に送出され、又は、時間的制約のないメッセージについては特定の時間スロットまで遅延されるプロトコルを実行する、ハードウェアをベースとする状態機械を備える。
【0051】
システム1にある埋め込み型デバイス10、20が2つだけであっても、前記プロトコルが通信衝突が起こり得るタイミングを明示的に回避しない限り、通信衝突は起こり得る。好ましくは、実施例において、システム1は、3つ以上の埋め込み型デバイス10、20も含み得る。例えば、同様に
図1において示されるように、皮下デバイス(第3の埋め込み型デバイス)40が、身体エリア・ネットワークの状態を監視し、深い埋め込み物からホーム監視システムへの高周波ベースの通信の可能性を提供するために使用され得る。
【0052】
特には、
図1において図示されるような前記第1及び第2の埋め込み型リードレス・ペースメーカー10、20を備えるペースメーカー・システムなどの医療システム1において、タイム・クリティカルなメッセージとは、好ましくは第1のデバイスからシステム1における全ての他のデバイス20へと同報される心房感知マーカー(すなわち、心房の心臓イベントを示すメッセージ);好ましくは第1のデバイス10からシステムにおける全ての他のデバイス20へと送出される「ペーシング後同期(Sync After Pace)」に関連するメッセージ;好ましくは第1のデバイス10からシステムにおける全ての他のデバイス20へと送出される「感知後同期(Sync After Sense)」に関連するメッセージ;第2のデバイス20から第1のデバイス10に送出され、第1のデバイス10にペーシング・パルスを心房2aに対して印加させるコマンド・メッセージ又は信号;第2のデバイス20から第1のデバイス10へと送出される「クロス・チャンネル・ブランキング実行(Do Cross Channel Blanking)」に関連するメッセージであり得る。「ペーシング後同期」は、ペーシング・パルスが発生したことを示す。「感知後同期」は心臓イベントが発生したことを示す。故に、同報メッセージは、心臓イベント又はペーシング・パルスが発生したかを示す。もしも1つのチャンバのペースメーカーがペーシングをしようとしているならば、他のチャンバにおける感知検出回路は、他のチャンバにおけるペーシングの影響によって誤った感知が検出されることを回避するために、ペーシング期間中はブランクされる(検出を禁じられる)べきである。ブランキング期間は前もって定められ得、したがって、ペーシングしようとしていないチャンバへと通信される必要があるのはこのブランキング期間の開始のみである。これは、メッセージ「クロス・チャンネル・ブランキング実行」によってなされる。これは、受信するデバイスに、いつ(すぐに開始する)何らかのことを行う必要かあるかを告げるものであるから、タイム・クリティカルなメッセージである。
【0053】
その一方で、必要とする優先順位がより低いタイム・クリティカルではないメッセージは、以下のもののうちの1つ、すなわち:レジスタへの書き込み(Write to Register)、レジスタからの読み出し(Read from Register)、次の同期でのプログラム作動(Activate Program on next sync)、恒久的作動停止(Disable Permanently)のうちの1つを開始するために第2のデバイスから第1のデバイスへと送出されるメッセージに関連し得、又は、例えば、レジスタ応答からの読み出し(Read from Register Response)を開始するために第1のデバイスから第2のデバイスへと送出されるメッセージに関連し得る。レジスタは、デバイスがどのように挙動するべきかを設定する、デバイスにおけるメモリの場所である。レジスタへの書き込みは、設定を変更するためになされる。レジスタの読み出しは、デバイスが以前にどのように設定されていたかを告げるために使用される。レジスタは、発生した何らかのことについてのステータス情報を渡すためにも使用され得る。プログラム作動は、デバイスに、特定の時間ポイントにおいて、特には、次の心臓インターバルのあるポイントにおいて、それ自身の設定を変更するために、前もって定められたレジスタのコレクションを使用するべきであることを告げるために使用される。恒久的作動停止は、デバイスが新たなデバイスによって置き換えられるので、デバイスがそれ自身を完全に及び恒久的に遮断するためのコマンドである。メッセージが別のデバイスからのある情報をリクエストしたとき(すなわち、レジスタからの読み出しコマンド)アドレスされたデバイスは、応答メッセージを送出する。このメッセージは、以前のリクエストに対する応答であることを特定している。
【0054】
好ましくは、心臓周期ごとに、心房2aにおける第1のデバイス10は、ペーシング又は心房内在的感知(心房2aにおける心臓イベント)の検出のいずれかを行う。このイベントから例えば約10秒ほどであり得る定められた期間の後、心房デバイス10は、ペーシング又は感知を行ったことを示す同報メッセージを送出する。このメッセージは、タイム・クリティカルではないメッセージの時間スロットのための基準ポイントとなる。
【0055】
このために、それぞれの埋め込み型デバイス10、20は、好ましくは、心臓イベントの発生又はペーシング・パルスが発生したことを示す同報メッセージを受信したときにタイマーを開始させるように構成され、各埋め込み型デバイス10、20のタイマーは、タイムアウトによる終了前に持続期間を経過させるように構成され、それぞれの持続期間は、システム1の他の埋め込み型デバイス20、10の持続期間とは異なる固有の持続期間である。
【0056】
特には、それぞれの埋め込み型デバイス10、20によって生成される全てのメッセージは、どのターゲット(例えば、第1又は第2の埋め込み型デバイス10、20)に対してメッセージが送出されているかを示すアドレス識別子を備える。特には、アドレス識別子のうちの1つは、それぞれのメッセージがシステムの全てのデバイス(例えば、第2の埋め込み型デバイス20)に対して送出されていることを示す同報アドレス識別子である。
【0057】
特には、それぞれの埋め込み型デバイス10、20のタイマーの持続期間は、それぞれの埋め込み型デバイス10、20のアドレス識別子によって決まる。持続期間が短いほど、メッセージの送出ができることについての埋め込み型デバイス10、20の優先順位は高くなる。
【0058】
更に、特には、システム1の各埋め込み型デバイス10、20における通信ユニット(例えば、そのメッセージ復号器)11、21は、少なくともアドレス識別子が判定されるまでは、全てのメッセージを復号するように構成される。もしもそれぞれの通信ユニット(特には、復号器)11、21がそれ自身がメッセージのターゲットであると判定したならば、すなわち、受信されたアドレス識別子がそれ自身の所定のアドレス識別子と一致したならば、メッセージの残りも同様に復号される。特には、同報アドレスをターゲットにしたメッセージは、医療システム1における全ての埋め込み型デバイス10、20によって完全に復号される。
【0059】
特には、
図1において示されるように、それぞれの埋め込み型デバイス10、20は、好ましくは、それぞれの埋め込み型デバイス10、20の通信ユニット11、21を通じたメッセージの送信をスケジュールするように構成された制御ユニット14、24を備え、それぞれの埋め込み型デバイス10、20は、送出されるべきメッセージを保留メッセージとしてその通信ユニット11、21に記憶し、保留メッセージを示すフラグを設定するように構成される。更に、それぞれの埋め込み型デバイス10、20の通信ユニット11、21は、対応する埋め込み型デバイス10、20のタイマーのタイムアウトにおいて、それぞれの埋め込み型デバイス10、20の受信回路が着信するメッセージの受信を処理中であるかを判定するように構成される。メッセージの受信の処理中である場合には、少なくとも次のタイムアウトまでそれぞれの通信ユニット11、21によってメッセージが送出されることはなく、メッセージが受信中でなく、前記フラグが設定されている場合には、対応する通信ユニット11、21は、保留メッセージを送出するように構成される。これが送信されている間、このメッセージは、他の埋め込み物による優先順位の低いタイム・クリティカルではないメッセージの送出を効果的に禁止する。特には、2つの超音波メッセージが、システム1の異なる埋め込み型デバイスによって同時に送信されたとき、最もあり得る結果は、どちらのメッセージも適切に受信されないことである。タイム・クリティカルなメッセージの衝突が起こりそうなときだけが、全ての起こり得る通信結果に耐性がある。タイム・クリティカルなメッセージは、イベントが発生したときに、又はイベントが始動されているときに、同時に送出されなければならない。システムは、心房感知の発生と同時に心房ペーシングを始動することを試みることができる。この場合、始動メッセージ及び感知検出メッセージは、互いを破損させ得るが、システムは、メッセージの一方、他方又は両方が適切に受信されなくとも、適正な状態にあるであろう。他の同時的なタイム・クリティカルなメッセージのペアは予想されない。
【0060】
換言すれば、各埋め込み型デバイス10、20は、固有の所定の遅延(対応するタイマーの持続期間)を有し、この後に、待機メッセージの送出を開始し得る。メッセージの送出を取り扱う通信ユニット11、21の状態機械は、送信を開始する前に超音波キャリア周波数が存在するかを常にチェックする。全てのメッセージ・パケットは、常にアクティブな開始ビットで始まる。このプロトコルは、アクティブなメッセージが既に進行中であるとき、メッセージの開始を禁止する。デバイスの優先順位は、どのデバイス10、20であっても、心房ペーシング・イベント又は検出された心房の心臓イベントに関連するそれぞれの同報メッセージによって示される時間スロット基準ポイント後に最も短い遅延(すなわち、それぞれのタイマーの持続期間)を有するかに起因する。
【0061】
好ましくは、プロトコルのパケット定義は、メッセージ受信体のアドレスを示すビットを含む。メッセージが全ての受信者への同報であることを示すために1つのアドレスが確保される。それぞれの通信ユニット11、21の受信する状態機械は、着信するメッセージがそのデバイスをターゲットにしているかを検出し、受信することを想定されているメッセージのみを処理する。好ましくは、アドレスは、ほとんど劣化しているデバイス10、20を新しいものと着実に交換することを可能とするように構成可能である。新しい工場出荷デバイスが、臨床テストを通過するまでシステム1において別個に制御され得るように、古いデバイス・アドレスは、工場出荷アドレスとは異なるものに変更される。臨床テスト通過の時点において、新しいデバイスを完全に使用可能とするのと同時に古いデバイスは作動停止され得る。
【0062】
図1において図示される医療システム1は、第2のデバイス20において単一のペースメーカー・タイマー・サブシステムを有することで、単純化されている。このペースメーカー・タイマーは、ターゲットされたペース・コマンド(時間的制約のあるメッセージ)を使用して、他のデバイスにおける(例えば、第1のデバイス10における)ペーシングを命じることができる。他のデバイス10における感知は、感知フラグ同報メッセージ(これも時間的制約のあるメッセージ)を使用して、ペースメーカー・タイマーによって、第2のデバイス20に伝えられ得る。
【0063】
もしも電気的ノイズが通常のペースメーカーにおいて感知検出に干渉するならば、ペースメーカーはノイズ・モードに移行する。このモードにおいて、高い信頼性で感知が検出され得ないので、ペースメーカーは、適切な内在的心臓活動が存在しようとしまいと心臓サポートが確実に提供されるように、非同期的にペーシングする。ノイズ・モードが作動しているとき、いくつかのペースメーカーの特徴は、それらの挙動を変化させる。この種類の情報は、「ノイズ開始(Start Noise)」及び「ノイズ終了(End Noise)」の同報マーカーを使用して、全てのチャンバにおけるリードレス・デバイス間で共有され得る。
【0064】
更には、1つのデバイス10、20は、別のデバイス20、10へと、宛先のデバイスの特定のレジスタへの書き込み(Write)コマンドの形態で設定メッセージを送出し得る(上記を参照)。これらのレジスタは、レジスタ伝達(Transfer Registers)コマンドが送出されて全てのレジスタを同時に新しい設定に変更するまで、二重バッファリングを使用して新しい設定の作動を遅延させ得る。書き込みコマンドは、時間的制約のないメッセージである。レジスタ伝達コマンドは、内在的心臓タイミングとともに設定変更をサポートする時間的制約のあるコマンドであり得る。
【0065】
本発明は、リードレス・ペースメーカー・システムなどの複数デバイス医療システムにおける別のチャンバからの遠方場感知の必要性を回避する。超音波通信のおかげで、心房デバイスの占有空間は減少され得る。これは、CPU及び/又はペースメーカー・タイマー回路を有するという心房デバイスの負担が緩和されるという事実により、これは、所与の時間において必要となるバッテリ容量も減少させる。心房デバイス10は、心室デバイス20(これは、外部プログラミング・デバイス30への同時的誘導通信を使用し得る)によって設定され得るので、心房デバイス10は、外部プログラミング・デバイス30との誘導通信を可能とするために必要となる比較的大型のコイルを必要としない。特には、心室デバイス20は、全体的なシステム1のためにペースメーカー・タイマーを含み得、心房デバイス10などの他のデバイスから報告されたイベントをタイミング論理回路への入力として使用し得る。更に、皮下埋め込み型の第3のデバイス40も、ペーシングが発生したときに捕捉確認を提供するために使用され得る(
図1参照)。更には、本発明は、劣化したデバイスの着実な交換方式を可能とする。最後に、本発明は、心臓イベントから生じる電気的信号と衝突又は干渉することなくデバイス間で情報を交換するための一般的機構を提供する。
【0066】
図2は、心臓内ペーシング・デバイス(埋め込み型リードレス・ペースメーカーとも呼ばれる)の概略的な図を図示する。デバイスは、エネルギー貯蔵器102(例えば、バッテリ)を包囲するハウジング100と、電極モジュール103と、第1の通信ユニット104と、第2の通信ユニット107とを備える。ハウジング100は、チタニウムを含み得、又はチタニウムで作られ得る。
【0067】
ハウジング100の遠位端部に、第1の電極106(ペーシング/感知電極とも呼ばれる)が設置される。ハウジング100の近位領域に、第2の電極101(リターン電極とも呼ばれる)が配置される。第2の電極101は、リング電極として形成され得る。
【0068】
デバイスは、固定要素105によって心臓組織に固定され得る。固定要素は、タインとして形成され得る。固定要素は、ニチノールを含み得、又はニチノールで作られ得る。一実施例において、ニチノールで作られた4つのタイン105が、ハウジング100の遠位端部に形成され得る。
【0069】
エネルギー貯蔵器102は、デバイスのコンポーネント、特には電子モジュール103、第1の通信ユニット104、第2の通信ユニット107、及び第1の電極106に電気エネルギーを提供するように構成され得る。
【0070】
電子モジュール103は、心臓イベントの感知及びペーシング・パルスの提供を含むペースメーカーの機能を実施するように構成され得る。電子モジュール103は、プロセッサ、メモリ及び/又は状態機械論理回路を備え得る。
【0071】
第1の通信ユニット104は、外部デバイス(例えば、プログラマ)との通信のために構成され得る。第1の通信ユニットは、誘導通信のためのコイルとして形成され得る。
【0072】
第2の通信ユニット107は、超音波の送信及び/又は受信のために構成され得る。これは圧電トランスデューサであってよい。
【0073】
図3は、別の心臓内ペーシング・デバイスの別の実施例を図示し、これは第1の通信ユニット以外は
図2と同じコンポーネントを有する。故に、この他のデバイスは超音波を介してのみ通信し得る。第1の通信ユニットを省略することによって、この他のデバイスは、
図2によるデバイスよりも小さなフォーム・ファクタを有し得る。
【0074】
上記の教示に鑑みて、説明された実例及び実施例の多くの修正及び変形が可能であることは、当業者には明らかであろう。開示された実例及び実施例は、例示のみを目的として提示される。他の代替的な実施例は、本明細書において開示された特徴のうちのいくつか又は全てを含み得る。したがって、本発明の真の範囲内にあり得る全てのそのような修正及び代替実施例をカバーすることが意図される。