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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】消防訓練用泡消火薬剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A62D 1/02 20060101AFI20241218BHJP
【FI】
A62D1/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020085582
(22)【出願日】2020-05-15
(65)【公開番号】P2021178073
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2023-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000188951
【氏名又は名称】松本油脂製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川久保 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 良貢
(72)【発明者】
【氏名】重田 啓彰
(72)【発明者】
【氏名】武田 悠介
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】特開昭52-058296(JP,A)
【文献】特開2007-252731(JP,A)
【文献】特開2011-087792(JP,A)
【文献】特開2016-174802(JP,A)
【文献】特開昭54-103299(JP,A)
【文献】特開昭54-030700(JP,A)
【文献】特開昭61-185325(JP,A)
【文献】特開2000-005337(JP,A)
【文献】特開2019-073957(JP,A)
【文献】特開2015-228966(JP,A)
【文献】特開2018-122291(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状構造を有する非イオン性界面活性剤(A)と、アニオン性界面活性剤(B)を含
前記環状構造が酸素原子及び/又は窒素原子を有する、消防訓練用泡消火薬剤組成物。
【請求項2】
前記環状構造が3~10員環構造から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の消防訓練用泡消火薬剤組成物。
【請求項3】
前記活性剤(B)がアルカリ金属塩である、請求項1又は2に記載の消防訓練用泡消火薬剤組成物。
【請求項4】
前記活性剤(B)の分子中に窒素原子を有する、請求項1~3のいずれかに記載の消防訓練用泡消火薬剤組成物。
【請求項5】
前記活性剤(B)の含有量が前記活性剤(A)100重量部に対して10~1500重量部である、請求項1~のいずれかに記載の消防訓練用泡消火薬剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は消防訓練用泡消火薬剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
泡消火薬剤は主として油火災を消火する場合に用いられ、使用時は水等で一定濃度に希釈された後、発泡ノズル等で発泡され泡となることによって、火災の表面を覆い、冷却及び窒息効果により消火を行う事を目的に開発されている。
泡消火設備で放出された消火用泡は、自然状態では消泡し難い性質を有している。また、環境負荷の点から、使用した薬剤を回収しなければならないという問題がある。
【0003】
そこで、環境に優しい成分を含んだ消防訓練用泡消火薬剤として、特許文献1では両性界面活性剤を含有した訓練用合成界面活性剤泡薬剤が、特許文献2では炭化水素系アニオン界面活性剤を含んだ消火設備試験用泡薬剤が例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-5337号公報
【文献】特開2011-87792号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2の泡薬剤は初期発泡性が低く、さらに放出された泡の処理に時間がかかるといった問題があった。
本発明は、初期発泡性に優れ、一定時間経過後に泡が減少する消防訓練用泡消火薬剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定の界面活性剤を含む消防訓練用泡消火薬剤組成物であれば、上記課題を解決することができることを見出した。
すなわち本発明の消防訓練用泡消火薬剤組成物は、環状構造を有する非イオン性界面活性剤(A)と、アニオン性界面活性剤(B)を含むものである。
【0007】
前記環状構造が3~10員環構造から選ばれる少なくとも1種であると、好ましい。
前記環状構造が酸素原子及び/又は窒素原子を有すると、好ましい。
前記活性剤(B)がアルカリ金属塩であると、好ましい。
前記活性剤(B)の分子中に窒素原子を有すと、好ましい。
前記活性剤(B)の含有量が前記活性剤(A)100重量部に対して10~1500重量部であると、好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の消防訓練用泡消火薬剤組成物は、初期発泡性に優れ、一定時間経過後に泡が減少する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の消防訓練用泡消火薬剤組成物は、環状構造を有する非イオン性界面活性剤(A)と、アニオン性界面活性剤(B)を必須に含む。まず、消防訓練用泡消火薬剤組成物を構成する成分について詳しく説明する。
【0010】
〔環状構造を有する非イオン性界面活性剤(A)〕
環状構造を有する非イオン性界面活性剤(A)(以下、単に活性剤(A)ということがある。)は、その分子中に環状構造を有する化合物である。
【0011】
活性剤(A)が有する環状構造としては、特に限定はないが、3~10員環構造から選ばれる少なくとも1種であると好ましい。活性剤(A)の有する環状構造が10員環構造を超える環状構造を有すると、一定時間経過後の泡の減少効果が低下することがある。
活性剤(A)が有する環状構造は、4~8員環構造から選ばれる少なくとも1種であるとより好ましくは、5~7員環構造から選ばれる少なくとも1種であるとさらに好ましく、5~6員環構造から選ばれる少なくとも1種であると特に好ましい。
【0012】
活性剤(A)が有する環状構造は、酸素原子及び/又は窒素原子を有すると、一定時間経過後の泡の減少効果をより向上させることができ、好ましい。また、活性剤(A)が有する環状構造は、酸素原子又は窒素原子を有するとより好ましく、酸素原子を有するとさらに好ましい。
活性剤(A)が有する環状構造は炭素原子を有すると好ましく、炭素原子と、酸素原子及び/又は窒素原子を有すると、より好ましい。
また、活性剤(A)が有する環状構造は、その構造中に二重結合を有していてもよい。
活性剤(A)が有する環状構造の数としては、特に限定はないが、1~8個であると好ましく、1~6個であるとより好ましく、1~4個であると特に好ましい。
【0013】
活性剤(A)は、その分子中に炭化水素基を有していてもよい。なかでも、特に限定はないが、炭素数6~30の炭化水素基を有すると、泡の保持性の点で好ましい。炭化水素基の炭素数としては、より好ましくは6~24、より好ましくは6~22、さらに好ましくは7~18、特に好ましくは8~16である。
活性剤(A)が炭化水素基を有する場合、炭化水素基は直鎖状及び/又は分枝鎖状の炭化水素基であってもよい。また、炭化水素基は飽和炭化水素基であってもよく、不飽和炭化水素基であってもよい。なかでも、活性剤(A)の有する炭化水素基は、直鎖状の飽和炭化水素基及び/又は分枝状の飽和炭化水素基であると好ましい。
活性剤(A)が炭化水素基を有する場合、炭化水素基の数としては、特に限定はないが、好ましくは1~4個、より好ましくは1~3個、さらに好ましくは1~2個である。
【0014】
活性剤(A)はアルキレンオキサイド付加物であってもよい。また、アルキレンオキサイドの炭素数としては、特に限定はないが、2~3であると好ましい。また、活性剤(A)におけるアルキレンオキサイドの付加数は、特に限定はないが、好ましくは5~100である。
【0015】
活性剤(A)としては、例えば、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル;ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレントリスチレン化フェニルエーテル等のポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテル;ポリオキシエチレンソルビタンラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンオレイン酸エステル等のポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル;2-エチルヘキシルグリコシド、オクチルグリコシド、デシルグリコシド、ドデシルグリコシド、テトラデシルグリコシド等のアルキルグリコシド等を挙げることができる。上記活性剤(A)は1種単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。上記活性剤(A)のなかでも、アルキルグルコシドが好ましい。
【0016】
〔アニオン性界面活性剤(B)〕
本発明の消防訓練用泡消火薬剤組成物に含まれるアニオン性界面活性剤(B)(以下、単に活性剤(B)ということがある)としては、その分子中に炭化水素基を有していてもよい。なかでも炭素数1~30の炭化水素基を有すると、泡の起泡性の点で好ましい。炭化水素基の炭素数としては、特に限定はないが、好ましくは1~24、より好ましくは1~22、さらに好ましくは1~20、特に好ましくは1~18である。
活性剤(B)が炭化水素基を有する場合、炭化水素基は直鎖状、分枝鎖状、及び環状から選ばれる少なくとも1種の炭化水素基であってもよい。また、炭化水素基は飽和炭化水素基であってもよく、不飽和炭化水素基であってもよい。また、活性剤(B)が炭化水素基を有する場合、炭化水素基の数としては、特に限定はないが、好ましくは1~4個、より好ましくは1~3個、さらに好ましくは1~2個である。
【0017】
活性剤(B)は、特に限定はないが、その分子中に窒素原子を有すると、泡の保持性の点で好ましい。活性剤(B)がその分子中に窒素原子を有する場合、活性剤(B)の分子量に占める活性剤(B)の有する全ての窒素原子の原子量の合計の割合は、特に限定はないが、好ましくは2.0~5.5重量%である。活性剤(B)の有する全ての窒素原子の原子量の合計の割合が2.0重量%以上であると、泡の起泡性と保持性が向上する傾向がある。一方、単量体(I-1)の有する全ての窒素原子の原子量の合計の割合が5.5重量%以下であると、泡の起泡性と保持性が向上する傾向がある。活性剤(B)の分子量に占める活性剤(B)の有する全ての窒素原子の原子量の合計の割合は、より好ましくは2.5~5.0重量%である。
【0018】
活性剤(B)は、特に限定はないが、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩から選ばれる少なくとも1種であると好ましい。なかでも、スルホン酸塩、硫酸エステル塩が好ましく、スルホン酸塩がより好ましい。また、活性剤(B)としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;アンモニウム塩等が挙げることができ、アルカリ金属塩であると好ましい。
【0019】
活性剤(B)としては、例えば、アミノ酸型アニオン性界面活性剤を挙げることができる。活性剤(B)がアミノ酸型アニオン界面活性剤であると、初期発泡性及び環境への配慮の点で好ましい。
アミノ酸型アニオン界面活性剤としては、例えば、カプロイルメチルタウリンナトリウム、ココイルメチルタウリンナトリウム、ココイルメチルタウリンカリウム、ラウロイルメチルタウリンナトリウム、ラウロイルメチルタウリンカリウム、ステアロイルメチルタウリンナトリウム、オレイルメチルタウリンナトリウム等のタウリン系界面活性剤;ココイルサルコシンナトリウム、ココイルサルコシンカリウム、ラウロイルサルコシンナトリウム、パルミトイルサルコシンナトリウム、オレイルサルコシンナトリウム等のサルコシン系界面活性剤;ココイルメチルアラニンナトリウム、ラウロイルメチルアラニンナトリウム、ラウロイルメチルアラニントリエタノールアミン等のアラニン系界面活性剤等を挙げることができる。
これらの活性剤(B)は1種又は2種以上併用してもよい。上記活性剤(B)の中でも、タウリン系界面活性剤が好ましい。
【0020】
消防訓練用泡消火薬剤組成物における活性剤(B)の含有量としては、特に限定はないが、活性剤(A)100重量部に対して、好ましくは10~1500重量部である。活性剤(B)の含有量が10重量部未満であると、一定時間後の泡の減少量が少なくなることがある。一方、活性剤(B)の含有量が1500重量部超であると、初期発泡性が低下することがある。活性剤(B)の含有量は、より好ましくは20~1200重量部、さらに好ましくは30~800重量部、特に好ましくは40~400重量部である。
【0021】
本発明の消防訓練用泡消火薬剤組成物は、上述の活性剤(A)と活性剤(B)以外の界面活性剤(C)(以下、単に活性剤(C)ということがある)を含んでもよい。活性剤(C)としては、環状構造を有さない非イオン性界面活性剤であると好ましい。
【0022】
活性剤(C)は炭化水素基を有していてもよい。活性剤(C)が炭化水素基を有する場合、炭化水素基の炭素数は、特に限定はないが、好ましくは6~24、より好ましくは7~22、さらに好ましくは8~18である。
また、活性剤(C)が炭化水素基を有する場合、炭化水素基は直鎖状及び/又は分枝鎖状の炭化水素基であってもよい。また、炭化水素基は飽和炭化水素基であってもよく、不飽和炭化水素基であってもよい。なかでも、活性剤(C)の有する炭化水素基は、直鎖状の飽和炭化水素基及び/又は分枝状の飽和炭化水素基であると好ましい。
活性剤(C)が炭化水素基を有する場合、炭化水素基の数としては、特に限定はないが、好ましくは1~4個、より好ましくは1~3個、さらに好ましくは1~2個である。
【0023】
活性剤(C)はアルキレンオキサイド付加物であってもよい。また、アルキレンオキサイドの炭素数としては、特に限定はないが、2~3であると好ましい。また、活性剤(C)におけるアルキレンオキサイドの付加数は、特に限定はないが、好ましくは5~20である。
【0024】
活性剤(C)としては、エーテル型界面活性剤であると好ましい。また、エーテル型界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンSEC-アルキル(C12~14)エーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油エーテル等のポリオキシアルキレンヒマシ油エーテル等を挙げることができ、これらの1種または2種以上を併用してもよい。
【0025】
消防訓練用泡消火薬剤組成物における活性剤(C)の含有量としては、特に限定はないが、活性剤(A)100重量部に対して、好ましくは100重量部以下、より好ましくは50重量部以下、さらに好ましくは40重量部以下、特に好ましくは30重量部以下である。
【0026】
上記活性剤(A)、活性剤(B)及び活性剤(C)から選ばれる少なくとも1種は、使用者及び環境へ配慮の点から、医薬部外品原料規格に収載されている界面活性剤から選ばれてもよく、それ以外の界面活性剤でもよい。
【0027】
〔水〕
本発明の消防訓練用泡消火薬剤組成物は水を含んでもよい。消防訓練用泡消火薬剤組成物が水を含むと、作業性の点で好ましい。水としては水道水、イオン交換水、蒸留水等が挙げることができる。
消防訓練用泡消火薬剤組成物における水の含有量は、特に限定されないが、活性剤(A)100重量部に対して、好ましくは500~100000重量部、より好ましくは1000~80000重量部、さらに好ましくは2000~60000重量部、特に好ましくは3000~60000重量部である。
【0028】
〔その他成分〕
本発明の訓練用泡消火薬剤組成物は、本願効果を阻害しない範囲で、上記成分以外のその他成分を含んでもよい。その他成分としては、例えば、硫酸、塩酸、酢酸、乳酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アルカノールアミン類、炭酸ナトリウム等のpH調整剤;メチルパラベン、エチルパラベン、安息香酸塩類、フェノキシエタノール等の防腐剤;塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム等の無機塩;メタノール、エタノール、イソプロパノールエチレングリコール、プロピレングリコール等の水溶性有機溶剤;香料;色素等を挙げることができる。
【0029】
〔訓練用泡消火薬剤組成物、その製造方法〕
本発明の消防訓練用泡消火薬剤組成物は、活性剤(A)と、活性剤(B)を必須に含むものである。活性剤(A)と活性剤(B)を必須に含むことで、高い起泡性を有しつつ、さらに発生した泡の膜厚の制御も可能となるため、初期発泡性に優れ、消火に必要と考えられる適度な時間においては泡の保持をしつつ、一定時間経過後に泡を減少させることができると考えられる。また、これにより消防訓練の際の作業効率を向上できる。
本発明の消防訓練用泡消火薬剤組成物は、消防訓練の際に使用されるものであり、消火効果を有するものであってもよく、消火効果を有しないものであってもよい。当該消防訓練用泡消火薬剤組成物を、消火設備に組み込んで使用してもよい。また、当該消防訓練用泡消火薬剤組成物は、消火設備の試験時や点検時にも使用することができる。
【0030】
本発明の消防訓練用泡消火薬剤組成物に占める消防訓練用泡消火薬剤組成物の不揮発分濃度は、特に限定はないが、好ましくは0.05~50重量%、より好ましくは0.1~25重量%、さらに好ましくは0.5~10重量%、特に好ましくは0.5~5重量%である。なお、本発明の「消防訓練用泡消火薬剤組成物の不揮発分」は、消防訓練用泡消火薬剤組成物を110℃で加熱し、重量が恒量となったときの、残留物である。
【0031】
本発明の消防訓練用泡消火薬剤組成物の不揮発分濃度3重量%の25℃における粘度は、特に限定はないが、ハンドリング性の点で、好ましくは1~1000mPa・s、さらに好ましくは1~100mPa・sである。なお、消防訓練用泡消火薬剤組成物の不揮発分濃度3重量%の25℃における粘度の測定方法は、実施例で測定される方法によるものである。
【0032】
本発明の消防訓練用泡消火薬剤組成物の不揮発分濃度3重量%の25℃におけるpHは、特に限定はないが、好ましくは5~11である。消防訓練用泡消火薬剤組成物の不揮発分濃度3重量%の25℃におけるpHが5以上であると、初期発泡性が向上する傾向がある。一方、pHが11以下であると、一定時間経過後の泡の減少性が向上する傾向がある。消防訓練用泡消火薬剤組成物の不揮発分濃度3重量%の25℃におけるpHは、より好ましくは6~10、さらに好ましくは6.5~9.5、特に好ましくは7~9.5である。なお、消防訓練用泡消火薬剤組成物の不揮発分濃度3重量%の25℃におけるpHの測定方法は、実施例で測定される方法によるものである。
【0033】
本発明の消防訓練用泡消火薬剤組成物において、その製造方法は、特に限定はないが、活性剤(A)と活性剤(B)と、適宜、活性剤(C)、水、その他成分を混合する方法等を挙げることができる。混合については、特に限定はないが、容器と攪拌翼といった極めて簡単な機構を備えた装置を用いて行うことができる。
【実施例
【0034】
以下に本発明の消防訓練用泡消火薬剤組成物の実施例、比較例について具体的に説明する。なお、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
【0035】
〔初期発泡性、泡の保持性及び泡の減少性の評価〕
測定温度25℃で、JIS K3362に規定された方法により、訓練用泡消火薬剤組成物の気泡力から初期発泡性を測定した。また、滴下5分後、60分後の泡の高さを測定し下記式(1)により、泡の保持性、泡の減少性をそれぞれ算出した。さらに、得られた訓練用泡消火薬剤組成物の初期発泡性、泡の保持性及び泡の減少性を以下の基準に従い、判定した。
泡の保持性、又は泡の減少性(%)=〔1-(所定時間後の泡の高さ/起泡力)〕×100 式(1)
【0036】
<初期発泡性>
滴下直後の起泡力(泡の高さ、初期発泡性)が200mm以上のものを発泡性が良好とし、これを「○」、それ以下のものは発泡性不良とし、これを「×」と判定した。
<泡の保持性>
滴下5分後の泡の減少率が、10%以下のものを保持性が良好とし、これを「○」、それ以上のものは保持性不良とし、これを「×」と判定した。
<泡の減少性>
滴下60分後の泡の減少率が、25%以上のものを減少性が良好とし、これを「○」、それ以下のものは減少性不良とし、これを「×」と判定した。
【0037】
〔粘度の測定〕
消防訓練用泡消火薬剤組成物の不揮発分濃度3重量%の水溶液を25℃の恒温槽に24時間静置した後、粘度計(東機産業社製、型番:TVB-10形)で粘度を測定した。
【0038】
〔pHの測定〕
消防訓練用泡消火薬剤組成物の不揮発分濃度3重量%の水溶液を25℃の恒温槽に24時間静置した後、pH測定器(堀場製作所製、型番:F-71)で25℃の水溶液のpHを測定した。
【0039】
〔実施例、比較例〕
表1~3に記載の各成分を配合し、ガラス棒で良く撹拌し、消防訓練用泡消火薬剤組成物をそれぞれ得た。得られた訓練用泡消火薬剤組成物を上記評価方法にて評価を行った。
なお、表1~3の記載のうち、A-1~C-2に係る成分は以下のものを使用した。
A-1 デシルグリコシド
A-2 ドデシルグリコシド
A-3 ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレイン酸エステル
B-1 ココイルメチルタウリンナトリウム
B-2 カプロイルメチルタウリンナトリウム
C-1 ポリオキシエチレン(5)SEC-アルキル(12~14)エーテル
C-2 ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油エーテル
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】
表1~3より、環状構造を含む非イオン性界面活性剤(A)とアニオン性界面活性剤(B)を含む消防訓練用泡消火薬剤組成物であると、初期発泡性に優れ、一定時間経過後に泡が減少している。一方、環状構造を含む非イオン性界面活性剤(A)を含まない場合(比較例1~4)、アニオン性界面活性剤前記(B)を含まない場合(比較例5~7)であると、本願課題を解決できていない。