(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】マルチプレクサ
(51)【国際特許分類】
H03H 9/72 20060101AFI20241218BHJP
H03H 9/64 20060101ALI20241218BHJP
H03H 9/25 20060101ALI20241218BHJP
H03H 9/02 20060101ALI20241218BHJP
H03H 9/70 20060101ALI20241218BHJP
H03H 9/17 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
H03H9/72
H03H9/64 Z
H03H9/25 A
H03H9/02 J
H03H9/70
H03H9/17 F
(21)【出願番号】P 2020162308
(22)【出願日】2020-09-28
【審査請求日】2023-07-03
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004370
【氏名又は名称】弁理士法人片山特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井坂 史章
【審査官】福田 正悟
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/144036(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/115870(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/163841(WO,A1)
【文献】特開2016-152612(JP,A)
【文献】特開2017-204827(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/72
H03H 9/64
H03H 9/25
H03H 9/02
H03H 9/70
H03H 9/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と前記第1面に対向する第2面を有する基板と、
前記基板の第2面に設けられた共通端子、第1信号端子、および第2信号端子と、
前記基板の第1面に設けられ、前記共通端子と前記第1信号端子との間に接続された第1フィルタと、
前記基板を貫通し前記第1フィルタと前記第1信号端子を接続する第1信号ビア配線と、
前記基板の第1面に設けられ、前記共通端子と前記第2信号端子との間に接続された第2フィルタと、
前記基板を貫通し前記第2フィルタと前記第2信号端子を接続する第2信号ビア配線と、
前記基板の第1面に設けられ、前記第1フィルタおよび前記第2フィルタを囲む環状金属層と、
前記基板の第2面に設けられた接地端子と、
前記第1フィルタが設けられた領域と前記第2フィルタが設けられた領域の間に設けられ、前記基板を貫通し、前記環状金属層と前記接地端子とを接続する接地ビア配線と、
前記環状金属層上に設けられ、前記環状金属層と電気的に接続し、前記第1フィルタおよび前記第2フィルタを空隙に封止する金属リッドと、
を備え、
前記第1信号端子および前記第2信号端子は、平面視において前記環状金属層に重ならずに前記第2面に設けられ、
前記環状金属層の平面形状は略矩形であり、前記第1信号ビア配線および前記第2信号ビア配線は、前記略矩形の1つの辺のそれぞれ両端近傍に設けられ、前記接地ビア配線は前記環状金属層の前記1つの辺を前記接地端子に接続し、
前記第1フィルタおよび前記第2フィルタは前記空隙を介して前記金属リッドに直接対向するマルチプレクサ。
【請求項2】
前記接地ビア配線は、前記第1面において前記第1フィルタおよび前記第2フィルタと非接続である請求項
1に記載のマルチプレクサ。
【請求項3】
前記第2面に設けられた第1接地端子および第2接地端子と、
前記基板を貫通し、前記1つの辺に対向する辺の両端近傍において前記環状金属層と前記第1接地端子および前記第2接地端子とをそれぞれ接続する第1接地ビア配線および第2接地ビア配線を備える請求項
1または2に記載のマルチプレクサ。
【請求項4】
前記第1フィルタは第1直列共振器と第1並列共振器を備えるラダー型フィルタであり、前記第1接地端子は前記第1並列共振器のうち前記共通端子に最も電気的に近い第1並列共振器に接続され、
前記第2フィルタは第2直列共振器と第2並列共振器を備えるラダー型フィルタであり、前記第2接地端子は前記第2並列共振器のうち前記共通端子に最も電気的に近い第2並列共振器に接続されている請求項
3に記載のマルチプレクサ。
【請求項5】
前記環状金属層は、前記接地ビア配線、前記第1接地ビア配線および前記第2接地ビア配線のみを介し接地される請求項
3または4に記載のマルチプレクサ。
【請求項6】
前記基板は、支持基板と、前記支持基板上に設けられた圧電層と、を備え、
前記環状金属層は、前記圧電層が除去された前記支持基板上に設けられ、前記第1フィルタおよび前記第2フィルタは前記圧電層上に設けられている請求項1から
5のいずれか一項に記載のマルチプレクサ。
【請求項7】
前記第1フィルタおよび前記第2フィルタは、単一の前記圧電層上に設けられている請求項
6に記載のマルチプレクサ。
【請求項8】
前記第1フィルタの通過帯域と前記第2フィルタの通過帯域は重ならない請求項1から
7のいずれか一項に記載のマルチプレクサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチプレクサに関し、例えば複数のフィルタを有するマルチプレクサに関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に設けられたフィルタを囲むように枠体を設け、枠体上にリッドを設けることで、フィルタを空隙に封止する弾性波デバイスが知られている(例えば特許文献1)。送信フィルタが設けられた基板と受信フィルタが設けられた基板を、フィルタが設けられた面が空隙を挟み対向するように接合することが知られている。送信フィルタが設けられた面において、送信フィルタと、受信信号を伝送するパッドとの間にグランドパターンを設けることが知られている(例えば特許文献2)。多層基板上に送信フィルタと受信フィルタを実装したマルチプレクサが知られている(例えば特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-152612号公報
【文献】特開2017-204827号公報
【文献】特開2019-205065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マルチプレクサにおいて、例えば送信端子と受信端子との間のアイソレーションを向上させることが求められている。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、アイソレーション特性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1面と前記第1面に対向する第2面を有する基板と、前記基板の第2面に設けられた共通端子、第1信号端子、および第2信号端子と、前記基板の第1面に設けられ、前記共通端子と前記第1信号端子との間に接続された第1フィルタと、前記基板を貫通し前記第1フィルタと前記第1信号端子を接続する第1信号ビア配線と、前記基板の第1面に設けられ、前記共通端子と前記第2信号端子との間に接続された第2フィルタと、前記基板を貫通し前記第2フィルタと前記第2信号端子を接続する第2信号ビア配線と、前記基板の第1面に設けられ、前記第1フィルタおよび前記第2フィルタを囲む環状金属層と、前記基板の第2面に設けられた接地端子と、前記第1フィルタが設けられた領域と前記第2フィルタが設けられた領域の間に設けられ、前記基板を貫通し、前記環状金属層と前記接地端子とを接続する接地ビア配線と、前記環状金属層上に設けられ、前記環状金属層と電気的に接続し、前記第1フィルタおよび前記第2フィルタを空隙に封止する金属リッドと、を備え、前記第1信号端子および前記第2信号端子は、平面視において前記環状金属層に重ならずに前記第2面に設けられ、前記環状金属層の平面形状は略矩形であり、前記第1信号ビア配線および前記第2信号ビア配線は、前記略矩形の1つの辺のそれぞれ両端近傍に設けられ、前記接地ビア配線は前記環状金属層の前記1つの辺を前記接地端子に接続し、前記第1フィルタおよび前記第2フィルタは前記空隙を介して前記金属リッドに直接対向するマルチプレクサである。
【0008】
上記構成において、前記接地ビア配線は、前記第1面において前記第1フィルタおよび前記第2フィルタと非接続である構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記第2面に設けられた第1接地端子および第2接地端子と、前記基板を貫通し、前記1つの辺に対向する辺の両端近傍において前記環状金属層と前記第1接地端子および前記第2接地端子とをそれぞれ接続する第1接地ビア配線および第2接地ビア配線を備える構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記第1フィルタは第1直列共振器と第1並列共振器を備えるラダー型フィルタであり、前記第1接地端子は前記第1並列共振器のうち前記共通端子に最も電気的に近い第1並列共振器に接続され、前記第2フィルタは第2直列共振器と第2並列共振器を備えるラダー型フィルタであり、前記第2接地端子は前記第2並列共振器のうち前記共通端子に最も電気的に近い第2並列共振器に接続されている構成とすることができる。
【0012】
前記環状金属層は、前記接地ビア配線、前記第1接地ビア配線および前記第2接地ビア配線のみを介し接地される構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、前記基板は、支持基板と、前記支持基板上に設けられた圧電層と、を備え、前記環状金属層は、前記圧電層が除去された前記支持基板上に設けられ、前記第1フィルタおよび前記第2フィルタは前記圧電層上に設けられている構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記第1フィルタおよび前記第2フィルタは、単一の前記圧電層上に設けられている構成とすることができる。
【0015】
上記構成において、前記第1フィルタの通過帯域と前記第2フィルタの通過帯域は重ならない構成とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、アイソレーション特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、実施例1に係るマルチプレクサの回路図である。
【
図2】
図2(a)および
図2(b)は、実施例1に係るマルチプレクサの平面図である。
【
図4】
図4(a)は、実施例1における弾性波共振器の平面図であり、
図4(b)は、実施例1における別の弾性波共振器の断面図である。
【
図5】
図5は、比較例1に係るマルチプレクサの断面図である。
【
図6】
図6は、サンプルAにおけるマルチプレクサの平面図である。
【
図7】
図7(a)から
図7(c)は、それぞれサンプルBからDにおけるマルチプレクサの平面図である。
【
図8】
図8は、サンプルAおよびBにおけるアイソレーション特性を示す図である。
【
図9】
図9(a)および
図9(b)は、それぞれサンプルAおよびBにおけるリッドの下面における電流密度を上から見た図である。
【
図10】
図10は、サンプルAからCにおけるアイソレーション特性を示す図である。
【
図11】
図11(a)および
図11(b)は、それぞれサンプルAおよびCにおけるリッドの下面における電流密度を上から見た図である。
【
図12】
図12は、サンプルA、BおよびDにおけるアイソレーション特性を示す図である。
【
図13】
図13(a)および
図13(b)は、それぞれサンプルAおよびDにおけるリッドの下面における電流密度を上から見た図である。
【
図14】
図14は、サンプルEにおけるマルチプレクサの平面図である。
【
図15】
図15は、サンプルEおよびFにおけるアイソレーション特性を示す図である。
【
図16】
図16(a)は、実施例1の変形例1に係るマルチプレクサの回路図、
図16(b)は、実施例1の変形例1に係るマルチプレクサの平面図である。
【
図17】
図17(a)は、実施例1の変形例2に係るマルチプレクサの回路図、
図17(b)は、実施例1の変形例2に係るマルチプレクサの平面図である。
【
図18】
図18は、実施例1の変形例3に係るマルチプレクサの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照し本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0019】
図1は、実施例1に係るマルチプレクサの回路図である。
図1に示すように、共通端子Antと送信端子Txとの間に送信フィルタ30が接続されている。共通端子Antと受信端子Rxとの間に受信フィルタ32が接続されている。送信フィルタ30は送信端子Txに入力した高周波信号のうち通過帯域の信号を共通端子Antに通過させ他の周波数の信号を抑圧する。受信フィルタ32は共通端子Antに入力した高周波信号のうち通過帯域の信号を受信端子Rxに通過させ他の周波数の信号を抑圧する。
【0020】
図2(a)および
図2(b)は、実施例1に係るマルチプレクサの平面図である。
図3は、
図2(a)および
図2(b)のA-A断面図である。
図2(a)は、基板10、配線13a~13c、14a~14c、ビア配線15a~15c、16a~16c、環状金属層20、送信フィルタ30および受信フィルタ32を図示している。
図2(b)は、基板10の下面を上から透視した平面図であり、基板10、ビア配線15a~15c、16a~16cおよび端子18を図示している。基板10の法線方向をZ方向とし、送信フィルタ30および受信フィルタ32の配列方向をX方向、X方向とY方向に直交する方向をY方向とする。
【0021】
図2(a)から
図3に示すように、基板10は、支持基板10bと支持基板10b上に直接または間接的に接合された圧電層10aとを有する。圧電層10aはビア配線15a~15cおよび16a~16cが設けられた領域および環状金属層20が設けられた領域には設けられていない。圧電層10a上に弾性波共振器12aおよび12bが設けられている。弾性波共振器12aおよび12bはそれぞれ送信フィルタ30および受信フィルタ32を形成する。基板10上に配線13a~13cおよび14a~14cおよび環状金属層20が設けられている。配線14aは送信フィルタ30に電気的に接続され、配線14bは受信フィルタ32に電気的に接続され、配線14cは送信フィルタ30および受信フィルタ32に電気的に接続されている。配線13a~13cは環状金属層20に電気的に接続されている。
【0022】
支持基板10bを貫通するようにビア配線15a~15cおよび16a~16cが設けられている。基板10の下面に端子18が設けられている。端子18は、共通端子Ant、送信端子Tx、受信端子Rxおよび接地端子Gnd1~Gnd5を含む。ビア配線15aは配線14aと送信端子Txを接続し、ビア配線15bは配線14bと受信端子Rxとを接続し、ビア配線15cは配線14cと共通端子Antとを接続する。ビア配線15は送信フィルタ30および受信フィルタ32のグランドと接地端子Gnd2~Gnd5とを接続する。ビア配線16a~16cはそれぞれ配線13a~13cと接地端子Gnd1~Gnd3とを接続する。リッド22は、環状金属層20上に接合され、送信フィルタ30および受信フィルタ32を空隙24に封止する。
【0023】
基板10および環状金属層20の平面形状は略矩形である。送信端子Txおよび受信端子Rxは環状金属層20の矩形の4辺のうち1辺60の両端近傍に設けられている。共通端子Antは矩形の4辺のうち辺60に対向する辺62の中心近傍に設けられている。このように、送信端子Tx、受信端子Rxおよび共通端子Antを三角形の頂点の位置に配置することで、各端子間のアイソレーション特性が向上する。配線13aは環状金属層20における辺60の中央付近に接続されている。これにより、ビア配線16aは環状金属層20における辺60の中央付近と接地端子Gnd1とを電気的に接続する。配線13bおよび13cは環状金属層20における辺62の両端近傍に接続されている。これにより、ビア配線16bおよび16cは環状金属層20における辺62の両端近傍と接地端子Gnd2およびGnd3とをそれぞれ電気的に接続する。
【0024】
支持基板10bは、例えばサファイア基板、スピネル基板、アルミナ基板、ガラス基板、水晶基板またはシリコン基板である。圧電層10aは、例えばタンタル酸リチウム基板、ニオブ酸リチウム基板または水晶基板等の圧電基板である。配線13a~13c、14a~14c、ビア配線15a~15c、16a~16c、端子18、環状金属層20は、例えば銅層、金層、アルミニウム層またはニッケル層の金属層である。リッド22は、例えばコバール等の金属板である。
【0025】
支持基板10bと圧電層10aの間には別の絶縁層が設けられていてもよい。例えば、支持基板10bと圧電層10aとの間に、弾性定数の温度係数に符号が圧電層10aの弾性定数の温度係数の符号と反対の温度補償膜が設けられていてもよい。支持基板10bと温度補償膜との間に、バルク波の音速が温度補償膜のバルク波の音速より速い境界層が設けられていてもよい。温度補償膜は例えば酸化シリコン膜であり、境界層は例えば酸化アルミニウム膜である。
【0026】
図4(a)は、実施例1における弾性波共振器の平面図であり、
図4(b)は、実施例1における別の弾性波共振器の断面図である。
図4(a)の例では、弾性波共振器12aおよび12bは弾性表面波共振器である。基板10の上面にIDT(Interdigital Transducer)40と反射器42が設けられている。IDT40は、互いに対向する1対の櫛型電極40aを有する。櫛型電極40aは、複数の電極指40bと複数の電極指40bを接続するバスバー40cとを有する。反射器42は、IDT40の両側に設けられている。IDT40が基板10に弾性表面波を励振する。基板10は、
図3のような支持基板10bおよび圧電層10aでもよいし、圧電基板でもよい。IDT40および反射器42は例えばアルミニウム膜、銅膜またはモリブデン膜により形成される。基板10上にIDT40および反射器42を覆うように保護膜または温度補償膜が設けられていてもよい。弾性波共振器12aおよび12bは弾性境界波共振器またはLamb波共振器でもよい。
【0027】
図4(b)の例では、弾性波共振器12aおよび12bは圧電薄膜共振器である。基板10上に圧電膜46が設けられている。圧電膜46を挟むように下部電極44および上部電極48が設けられている。下部電極44と基板10との間に空隙45が形成されている。圧電膜46の少なくとも一部を挟み下部電極44と上部電極48とが対向する領域が共振領域47である。共振領域47内の下部電極44および上部電極48は圧電膜46内に、厚み縦振動モードの弾性波を励振する。基板10は、例えばサファイア基板、スピネル基板、アルミナ基板、ガラス基板、水晶基板またはシリコン基板である。下部電極44および上部電極48は例えばルテニウム膜等の金属膜である。圧電膜46は例えば窒化アルミニウム膜である。空隙45の代わりに音響反射膜が設けられていてもよい。
【0028】
[比較例1]
図5は、比較例1に係るマルチプレクサの断面図であり、
図2(a)および
図2(b)のA-A断面に相当する断面図である。
図5に示すように、比較例1ではビア配線16aが設けられていない。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0029】
比較例1では、基板10を挟んだ送信端子Txと環状金属層20との容量結合に起因し、
図5の矢印50のように送信端子Txから基板10を介し環状金属層20に送信信号が漏れる。矢印51のように送信信号は環状金属層20からリッド22に漏れる。リッド22が金属板のとき、矢印52のようにリッド22に送信信号が伝搬する。空隙24を挟んだ送信フィルタ30とリッド22との間の容量結合に起因し、矢印53のように、送信フィルタ30から空隙24を介しリッド22に信号が漏れる。空隙24を挟んだリッド22と受信フィルタ32との容量結合に起因し、矢印56のように、リッド22を伝搬する高周波信号は受信フィルタ32に漏れる。リッド22の信号は矢印57のように環状金属層20に漏れ、矢印58のように基板10を介し受信端子Rxに漏れる。リッド22が絶縁板のとき、リッド22を伝搬する高周波信号の強度は小さいが、高周波信号は環状金属層20を介し送信端子Txから受信端子Rxに至る。これにより、送信端子Txに入力した送信信号の一部が受信端子Rxに漏れ、アイソレーション特性が劣化する。特に、マルチプレクサの小型化のため、支持基板10bの厚さは例えば100μm以下、空隙24の厚さは例えば100μm以下となると、基板10および空隙24を挟んだ容量結合が大きくなり、アイソレーション特性は特に劣化する。
【0030】
実施例1では、
図3のように、送信フィルタ30と受信フィルタ32との間の環状金属層20が配線13aを介し接地されている。これにより、矢印54のように、リッド22を伝搬する高周波信号は環状金属層20を介し配線13aに至り、矢印55のようにビア配線16aを介し接地端子Gnd1に至る。また、リッド22が絶縁板の場合、環状金属層20を伝搬する高周波信号は配線13aおよびビア配線16aを介し接地端子Gnd1に至る。これにより、送信端子Txから受信端子Rxに漏れる高周波信号が小さくなり、アイソレーション特性が改善する。
【0031】
[シミュレーション]
サンプルA~Dについてアイソレーション特性をシミュレーションした。
図6は、サンプルAにおけるマルチプレクサの平面図である。
図6に示すように、送信フィルタ30は、ラダー型フィルタであり、直列共振器S11~S13および並列共振器P11~P14を備えている。直列共振器S11~S13は共通端子Antと送信端子Txとの間の直列経路に設けられている。並列共振器P11~P14は一端が直列経路に接続され、他端が接地端子Gnd2およびGnd4に接続されている。直列共振器S11~S13および並列共振器P11~P14は、
図4(a)において示した弾性波共振器12aであり、配線14aにより互いに接続されている。
【0032】
受信フィルタ32は、ラダー型フィルタであり、直列共振器S21~S25および並列共振器P21~P24を備えている。直列共振器S21~S25は共通端子Antと受信端子Rxとの間の直列経路に設けられている。並列共振器P21~P24は一端が直列経路に接続され、他端が接地端子Gnd3およびGnd5に接続されている。直列共振器S21~S25および並列共振器P21~P24は、
図4(a)において示した弾性波共振器12bであり、配線14bにより接続されている。直列共振器S11~S13、S21~S25、並列共振器P11~P14およびP21~P24の弾性波の伝搬方向はX方向である。
【0033】
ビア配線16aは、送信フィルタ30が設けられた領域と受信フィルタ32が設けられた領域の間において、環状金属層20に接続された配線13aと接地端子Gnd1とを接続する。ビア配線16bは環状金属層20の角(辺62の+X端部)に接続された配線13bと接地端子Gnd2とを接続する。接地端子Gnd2は並列共振器P11~P14のうち共通端子Antに最も近い並列共振器P11が接続されている。ビア配線16cは環状金属層20の角(辺62の-X端部)に接続された配線13cと接地端子Gnd3とを接続する。接地端子Gnd3は並列共振器P21~P24のうち共通端子Antに最も近い並列共振器P21が接続されている。
【0034】
ビア配線15aは送信フィルタ30に接続された配線14aを送信端子Txに接続する。ビア配線15bは受信フィルタ32に接続された配線14bを受信端子Rxに接続する。ビア配線15cは送信フィルタ30および受信フィルタ32に接続された配線14cを共通端子Antに接続する。ビア配線15は並列共振器P11~P14およびP21~P24の一端を接地端子Gnd2~Gnd5に接続する。
【0035】
図7(a)から
図7(c)は、それぞれサンプルBからDにおけるマルチプレクサの平面図である。
図7(a)に示すように、サンプルBでは、ビア配線16aが設けられていない。その他の構成はサンプルAと同じである。
図7(b)に示すように、サンプルCでは、ビア配線16bが設けられていない。その他の構成はサンプルAと同じである。
図7(c)に示すように、サンプルDでは、ビア配線16cが設けられていない。その他の構成はサンプルAと同じである。サンプルBは比較例に相当し、サンプルA、CおよびDは実施例1に相当する。
【0036】
シミュレーションの条件は以下である。
マルチプレクサ:LTE(Long Term Evolution)バンド7用マルチプレクサ
支持基板10b:厚さが70μmのサファイア基板
圧電層10a:厚さが2.4μmの42°YカットX伝搬タンタル酸リチウム
配線13a~13c、14a~14c:基板10側から厚さ50nmのチタン膜、厚さ100nmのアルミニウム膜、厚さ200nmのチタン膜および厚さ1μmの金膜
ビア配線15、15a~15c、16a~16c:径が40μmの銅層
環状金属層20:基板10側から厚さ2.5μmのニッケル層、厚さ17.5μmおよび幅23μmの銅層
リッド22:厚さ30μmのコバール
【0037】
図8は、サンプルAおよびBにおけるアイソレーション特性を示す図である。
図8に示すように、LTEバンド7の送信帯域34は2500MHz~2570MHzであり、受信帯域36は2620MHz~2690MHzである。2470MHzより低い帯域、送信帯域34、受信帯域36および2750MHzより高い帯域においてサンプルAのアイソレーション特性はサンプルBより良好である。送信端子Txに電圧が1Vであり周波数が2400MHz(破線38a)の高周波電力を印加し、リッド22の下面における電流密度をシミュレーションした。
【0038】
図9(a)および
図9(b)は、それぞれサンプルAおよびBにおけるリッドの下面における電流密度を上から見た図である。高周波電力の電流密度が7.2A/m以上の領域を濃いハッチで示し、電流密度が1.7m/A~7.2A/mの間の領域をやや濃いハッチで示し、電流密度が0.42A/m~1.7A/mの領域を薄いハッチで示し、電流密度が0.42A/m以下の領域を白で示す。送信フィルタ30および受信フィルタ32を細実線で図示している。以下の図も同様である。
【0039】
図9(b)に示すように、サンプルBでは、送信端子Txに供給された高周波電力は、送信フィルタ30内を共通端子Antに向けて伝搬する。送信フィルタ30の送信端子Txから共通端子Antにかけての領域に重なるリッド22に高周波電力が漏洩し、リッド22における高周波電力が大きくなる。さらに、矢印52a~52cのように、高周波電力はリッド22の全体に伝搬する。これにより、リッド22全体の高周波電力が大きくなる。
【0040】
図9(a)に示すように、サンプルAでは、ビア配線16aが設けられている。このため、矢印52dのように受信端子Rxに向かう高周波電力はビア配線16aおよびその近傍の環状金属層20を介し接地される。これにより、矢印52bのように送信端子Txからリッド22を対角線上に伝搬する高周波電力が小さくなる。これにより、領域64のように、受信フィルタ32と重なるリッド22の領域における高周波電力が小さくなる。よって、サンプルAでは、サンプルBに比べリッド22および環状金属層20を介し受信端子Rxに至る高周波電力が小さくなり、アイソレーション特性が改善すると考えられる。
【0041】
図10は、サンプルAからCにおけるアイソレーション特性を示す図である。
図10に示すように、2470MHzより低い帯域および送信帯域34において、サンプルCのアイソレーション特性はサンプルAと同程度である。2750MHzより高い帯域において、サンプルCのアイソレーション特性はサンプルAよりややよい。受信帯域36においてサンプルCのアイソレーション特性はサンプルAよりやや悪い。送信端子Txに電圧が1Vであり周波数が2700MHz(破線38b)の高周波電力を印加し、リッド22の下面における高周波電力の電流密度をシミュレーションした。
【0042】
図11(a)および
図11(b)は、それぞれサンプルAおよびCにおけるリッドの下面における電流密度を上から見た図である。
図11(a)に示すように、サンプルAでは、
図9(a)と同様に、受信フィルタ32と重なるリッド22の領域64における高周波電力を抑制できる。
図11(b)に示すように、サンプルCでは、矢印52bのように高周波電力はリッド22を送信端子Txから対角線上に伝搬する。これにより、受信フィルタ32に重なるリッド22の領域における高周波電力が大きくなり、アイソレーション特性が劣化する。
【0043】
図10のように、サンプルCはサンプルBよりアイソレーション特性が良いが、
図11(a)および
図11(b)のように、受信フィルタ32と重なる領域への高周波電力の漏れがあり、サンプルAより受信帯域36におけるアイソレーション特性がやや悪くなる。
【0044】
図12は、サンプルA、BおよびDにおけるアイソレーション特性を示す図である。
図12に示すように、2470MHzより低い帯域、受信帯域36および2750MHzより高い帯域において、サンプルDのアイソレーション特性はサンプルAと同程度である。送信帯域34において、サンプルDのアイソレーション特性はサンプルBと同程度でありサンプルAより悪い。送信端子Txに電圧が1Vであり周波数が2550MHz(破線38c)の高周波電力を印加し、リッド22の下面における高周波電力の電流密度をシミュレーションした。
【0045】
図13(a)および
図13(b)は、それぞれサンプルAおよびDにおけるリッドの下面における電流密度を上から見た図である。
図13(a)と
図13(b)を比較すると、サンプルDでは、矢印52eのように共通端子Ant付近から受信端子Rx付近に高周波電力が伝搬する。これにより、受信端子Rx付近のリッド22の高周波電力はサンプルAの領域64より大きい。
【0046】
図12のように、サンプルDはサンプルBよりアイソレーション特性が良いが、
図13(a)および
図13(b)のように、受信フィルタ32と重なる領域への高周波電力の漏れがあり、サンプルAより送信帯域34でのアイソレーション特性が悪くなる。
【0047】
以上のシミュレーションのサンプルA、CおよびDのように、送信フィルタ30と受信フィルタ32との間にビア配線16aを設けることで、サンプルBに比べアイソレーション特性を改善できる。ビア配線16bおよび16cは設けなくてもよいが、設けることでアイソレーション特性をより向上できる。
【0048】
図14は、サンプルEにおけるマルチプレクサの平面図である。
図14に示すように、送信フィルタ30では、共通端子Antと送信端子Txとの間に直列共振器S11~S13が直列に接続され、並列共振器P11~P14が並列に接続されている。受信フィルタ32では、共通端子Antと受信端子Rxとの間に直列共振器S21~S25が直列に接続され、並列共振器P21~P24が並列に接続されている。直列共振器S11~S13、S21~S25、並列共振器P11~P14およびP21~P24の弾性波の伝搬方向はY方向である。その他の構成はサンプルAと同じである。サンプルFとして、ビア配線16aを設けない以外はサンプルEと同じサンプルについてもシミュレーションした。サンプルFは比較例1に相当する。
【0049】
図15は、サンプルEおよびFにおけるアイソレーション特性を示す図である。
図15に示すように、送信帯域34において、サンプルEのアイソレーション特性はサンプルFより良好である。サンプルEおよびFのように、チップ内の配置を変えても、実施例1は比較例1に比べアイソレーション特性が向上する。
【0050】
[実施例1の変形例1]
図16(a)は、実施例1の変形例1に係るマルチプレクサの回路図である。
図16(a)に示すように、実施例1の変形例1では、共通端子Antと送信端子Tx1との間に送信フィルタ30aが接続され、共通端子Antと送信端子Tx2との間に送信フィルタ30bが接続されている。共通端子Antと受信端子Rxとの間の受信フィルタ32が接続されている。送信フィルタ30aおよび30bはそれぞれ例えばLTEバンド13およびLTEバンド17の送信フィルタである。受信フィルタ32は例えばLTEバンド13およびLTEバンド17の共用の受信フィルタである。
【0051】
図16(b)は、実施例1の変形例1に係るマルチプレクサの平面図である。
図16(b)に示すように、送信フィルタ30aは辺62側に設けられ、送信フィルタ30bは辺60側に設けられている。送信フィルタ30aと送信端子Tx1とを接続する配線14dおよびビア配線15dは辺60と62との間の+X側の辺61の中央部近傍に設けられている。送信フィルタ30bと送信端子Tx2とを接続する配線14aおよびビア配線15aは辺60と61の端部近傍に設けられている。配線14cは送信フィルタ30a、30bおよび受信フィルタ32を接続する。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。実施例1の変形例1のように、マルチプレクサはトリプレクサでもよい。
【0052】
[実施例1の変形例2]
図17(a)は、実施例1の変形例2に係るマルチプレクサの回路図である。
図17(a)に示すように、実施例1の変形例2では、共通端子Antと送信端子Tx1との間に送信フィルタ30aが接続され、共通端子Antと送信端子Tx2との間に送信フィルタ30bが接続されている。共通端子Antと受信端子Rx1との間の受信フィルタ32aが接続され、共通端子Antと受信端子Rx2との間に受信フィルタ32bが接続されている。送信フィルタ30aおよび30bはそれぞれ例えばLTEバンド13およびLTEバンド17の送信フィルタである。受信フィルタ32aおよび32bはそれぞれ例えばLTEバンド13およびLTEバンド17の受信フィルタである。
【0053】
図17(b)は、実施例1の変形例2に係るマルチプレクサの平面図である。
図17(b)に示すように、受信フィルタ32aは辺62側に設けられ、受信フィルタ32bは辺60側に設けられている。受信フィルタ32aと受信端子Rx1とを接続する配線14eおよびビア配線15eは辺60と62との間の-X側の辺63の中央部近傍に設けられている。受信フィルタ32bと受信端子Rx2とを接続する配線14bおよびビア配線15bは辺60と63の端部近傍に設けられている。配線14cは送信フィルタ30a、30b、受信フィルタ32aおよび32bを接続する。その他の構成は実施例1の変形例1と同じであり説明を省略する。実施例1の変形例2のように、マルチプレクサはクワッドプレクサでもよい。
【0054】
[実施例1の変形例3]
図18は、実施例1の変形例3に係るマルチプレクサの断面図である。
図18に示すように、基板10上に送信フィルタ30を形成する弾性波共振器12aおよび受信フィルタ32を形成する弾性波共振器12bが設けられている。弾性波共振器12aおよび12bは、
図4(b)において示した圧電薄膜共振器である。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。実施例1の変形例3のように、弾性波共振器12aおよび12bは圧電薄膜共振器でもよい。
【0055】
実施例1およびその変形例によれば、基板10の上面(第1面)に、共通端子Antと送信端子Tx(第1信号端子)との間に接続された送信フィルタ30(第1フィルタ)と、共通端子Antと受信端子Rx(第2信号端子)との間に接続された受信フィルタ32(第2フィルタ)と、が設けられている。環状金属層20は、基板10の第1面に設けられ、送信フィルタ30および受信フィルタ32を囲む。ビア配線16a(接地ビア配線)は送信フィルタ30が設けられた領域と受信フィルタ32が設けられた領域の間に設けられ、基板10を貫通し、環状金属層20と基板10の下面(第2面)に設けられた接地端子Gnd1とを接続する。これにより、送信端子Txに入力した高周波信号が環状金属層20を介し受信端子Rxに漏洩することを抑制でき、アイソレーション特性を改善できる。
【0056】
リッド22は、環状金属層20上に設けられ、環状金属層20と電気的に接続し、送信フィルタ30および受信フィルタ32を空隙24に封止する。リッド22が金属リッドの場合、送信フィルタ30からリッド22に漏洩した高周波信号がリッド22を伝搬し、受信端子Rxに至るとアイソレーション特性の劣化となる。シミュレーションのサンプルA、CおよびDのように、ビア配線16aを設けることで、送信フィルタ30からリッド22に漏洩し、リッド22から受信フィルタ32に漏洩する高周波信号を抑制できる。よって、アイソレーション特性をより向上できる。
【0057】
ビア配線16aは、基板10の上面(送信フィルタ30および受信フィルタ32が設けられた面)において送信フィルタ30および受信フィルタ32と非接続である。これにより、送信フィルタ30のグランドから受信フィルタ32のグランドに配線13aを介して高周波信号が漏洩することを抑制できる。
【0058】
ビア配線15a(第1信号ビア配線)は、基板10を貫通し送信フィルタ30と送信端子Txを接続する。ビア配線15b(第2信号ビア配線)は、基板10を貫通し、受信フィルタ32と受信端子Rxとを接続する。環状金属層20は略矩形であり、ビア配線15aおよび15bは、略矩形の辺60のそれぞれ両端近傍に設けられ、ビア配線16aは環状金属層20の辺60を接地端子Gnd1に接続する。これにより、送信端子Txから受信端子Rxに環状金属層20を介し漏洩する高周波信号をビア配線16aを介し接地できる。また、リッド22を伝搬する高周波信号を環状金属層20の辺60を介し接地できる。よって、アイソレーション特性をより改善できる。なお、環状金属層20の平面形状が略矩形とは、角が曲線であることおよび辺が製造誤差程度に湾曲することを許容する。また、辺60の両端近傍とは、辺60の端から辺60の長さの1/4程度離れることを許容する。
【0059】
ビア配線16b(第1接地ビア配線)およびビア配線16c(第2接地ビア配線)は、辺60に対向する辺62の両端近傍において、環状金属層20と接地端子Gnd2(第1接地端子)および接地端子Gnd3(第2接地端子)をそれぞれ接続する。これにより、ビア配線16aから離れた位置で環状金属層20を接地できる。このため、環状金属層20およびリッド22を伝搬する高周波信号を接地でき、アイソレーション特性を向上できる。なお、辺62の両端近傍とは、辺62の端より辺62の長さの1/4程度離れることを許容する。
【0060】
送信フィルタ30は直列共振器S11~S13(第1直列共振器)と並列共振器P11~P14(第1並列共振器)を備えるラダー型フィルタであり、接地端子Gnd2は共通端子Antに最も電気的に近い並列共振器P11に接続されている。受信フィルタ32は直列共振器S21~S25(第2直列共振器)と並列共振器P21~P24(第2並列共振器)を備えるラダー型フィルタであり、接地端子Gnd3は共通端子Antに最も電気的に近い並列共振器P21に接続されている。ビア配線16bにより、送信端子Txから共通端子Antに漏れる高周波信号を接地できる。また、ビア配線16cにより、送信端子Txから共通端子Antを介し受信端子Rxに漏れる高周波信号を接地できる。
【0061】
環状金属層20に接続されたビア配線を多く設けるとマルチプレクサが大型化する。そこで、実施例1のサンプルAおよびE、実施例1の変形例1~3のように、環状金属層20は、基板10を貫通するビア配線のうちビア配線16a~16cのみを介し接地される。これにより、アイソレーション特性を向上させるために最も有効な箇所にビア配線を設けることができ、アイソレーション特性を改善できる。アイソレーション特性の改善にあまり効果のない箇所にビア配線を設けないため、小型化が可能となる。
【0062】
実施例1およびその変形例1および2のように、基板10は、支持基板10bと支持基板10b上に設けられた圧電層10aを備える。環状金属層20は、圧電層10aが除去された支持基板10b上に設けられ、送信フィルタ30および受信フィルタ32は圧電層10a上に設けられている。これにより、環状金属層20の応力により圧電層10aが破壊されることを抑制できる。送信フィルタ30および受信フィルタ32は、単一の圧電層10a上に設けられている。これにより、マルチプレクサを小型化できる。実施例1の変形例3のように、弾性波共振器12aおよび12bは圧電薄膜共振器もよい。また、基板10は圧電基板でもよい。
【0063】
送信フィルタ30の通過帯域と受信フィルタ32の通過帯域は重ならない。この場合、通過帯域間のアイソレーションが問題となる。よって、ビア配線16aを設けることが好ましい。
【0064】
実施例1およびその変形例では、マルチプレクサが送信フィルタと受信フィルタとを有する例を説明したが、マルチプレクサは複数の送信フィルタのみまたは複数の受信フィルタのみを有してもよい。マルチプレクサは、FDD(Frequency Division Duplex)方式のバンド用のフィルタおよびTDD(Time Division Duplex)方式のバンド用のフィルタの少なくとも一方のフィルタを有してもよい。送信フィルタ30および受信フィルタ32は多重モードフィルタでもよい。
【0065】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0066】
10 基板
10a 圧電層
10b 支持基板
12a、12b 弾性波共振器
13a~13c、14a~14e 配線
15a~15e、16a~16c ビア配線
18 端子
20 環状金属層
22 リッド
30、30a、30b 送信フィルタ
32、32a、32b 受信フィルタ
60~63 辺