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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】車両の移動体検出装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20241218BHJP
   B60W 30/00 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60W30/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020165533
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022057334
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2023-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】由川 輝
【審査官】白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-224785(JP,A)
【文献】国際公開第2018/193535(WO,A1)
【文献】特開2016-162229(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
B60W 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の後側方を走査して第1物標を検出する後側方検出部と、
前記自車両の前側方を走査して第2物標を検出する前側方検出部と、
前記後側方検出部と前記前側方検出部とで検出した前記各物標に基づき、該物標によって特定される移動体の移動を検出する移動体検出部と
を備え
前記後側方検出部が走査する後側方走査領域と前記前側方検出部が走査する前側方走査領域との間に走査不能な不感帯が形成される車両の移動体検出装置において、
前記移動体検出部は、
前記後側方走査領域内であって、前記不感帯と該後側方走査領域との境界線及び前記自車両が走行する車線に隣接する隣接車線に囲まれた領域内に後側方補間領域を設定すると共に、前記前側方走査領域内であって、前記不感帯と該前側方走査領域との境界線及び前記自車両が走行する車線に隣接する隣接車線に囲まれた領域内に前側方補間領域を設定する補間領域設定部と、
前記後側方補間領域内で検出した前記第1物標の移動軌跡に基づいて、前記不感帯を通過する該第1物標の前記前側方補間領域への移動を推定する推定軌跡を設定する推定軌跡設定部と、
前記推定軌跡上の推定第1物標と前記第2物標とを比較して、同一時刻における前記推定第1物標と前記第2物標とが一致しているか否かの一致度を検証する物標検証部とを備える
ことを特徴とする車両の移動体検出装置。
【請求項2】
前記物標検証部では、前記推定第1物標と前記第2物標の位置座標に基づいて前記一致度を判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両の移動体検出装置。
【請求項3】
前記物標検証部では、前記自車両に対する前記推定第1物標の相対車速と、前記自車両に対する前記第2物標の相対車速に基づいて前記一致度を判定する
ことを特徴とする請求項1記載の車両の移動体検出装置。
【請求項4】
前記物標検証部では、前記推定第1物標と前記第2物標との位置座標の差の二乗平均及び、前記自車両に対する前記推定第1物標の相対車速と前記自車両に対する前記第2物標の相対車速の差の二乗平均とを加算した値に基づいて前記一致度を判定する ことを特徴とする請求項1に記載の車両の移動体検出装置。
【請求項5】
前記物標検証部は、前記一致度が予め設定した判定しきい値よりも低い場合、前記推定第1物標と前記第2物標とは一致していると判定し、前記前側方補間領域で前記推定第1物標と前記第2物標とが一致していると判定した回数をカウントし、該カウントの値が所定以上の場合、前記第2物標と前記第1物標とは同一であると検証する
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の車両の移動体検出装置。
【請求項6】
前記物標検証部は、前記第1物標と前記第2物標とが同一であると検証した場合、前記推定軌跡のデータと前記第2物標のデータとの双方を、前記推定第1物標と前記第2物標とが前記前側方補間領域を退出するまで保持する
ことを特徴とする請求項5記載の車両の移動体検出装置。
【請求項7】
前記物標検証部は、前記第1物標と前記第2物標とが異なると検証した場合には、前記推定第1物標が前記前側方補間領域を退出するまでは、前記推定軌跡のデータのみを保持し、運転者に対して該推定軌跡が検出された側の隣接車線線への車線変更を注意させる
ことを特徴とする請求項5記載の車両の移動体検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後側方検出部の走査領域と前側方検出部の走査領域とに、後側方補間領域と前側方補間領域を設定し、この各補間領域で検出した第1物標と第2物標とが一致しているか否かを調べる車両の移動体検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自車両の前部左右と後部左右とに設けた側方センサ(前側方センサと後側方センサ)にて、隣接する車線に所定パルス波形の送信波を送信し、当該隣接車線を移動する移動体から反射された反射波を受信し、送信波の送信タイミングと受信波の受信タイミングとに基づき、反射波が受信されるまでの往復伝播時間、及び受信した方角を求め、自車両を基準とする移動体までの距離、相対車速、位置等の移動体情報を取得する技術が知られている。
【0003】
ところで、この前側方センサの走査領域と後側方センサとの走査領域との間には、例えば、特許文献1(特開2019-66447号公報)に開示されているように、センサ特性上の不感帯(死角領域)が形成される。この不感帯は、移動体が後側方センサの走査領域から退出して、前側方センサの走査領域に侵入するまでの間に、移動体の検出が途切れる区間である。
【0004】
例えば、自車両に隣接する車線を走行する車両、二輪車等の移動体が自車両を、後方からを追い越そうとする場合、この移動体は、先ず、後側方センサの走査領域に進入し、この走査領域を退出し、不感帯を通過して、前側方センサの走査領域に進入する。自車両に対する移動体の最近方の部位を物標とした場合、この物標が不感帯を通過している間は、この物標を検出することができない。そのため、前側方センサの走査領域で検出した物標が、果たして、後側方センサの走査領域で検出した物標と同一か否かを検証する必要がある。
【0005】
この場合、前側方センサの走査領域と後側方センサの走査領域とは予め把握されており、不感帯も予め特定されている。従って、後側方センサで検出した所定周期毎の物標に基づいて、当該物標の移動軌跡を求めることで、この移動軌跡が不感帯を通過して、前側方センサの走査領域に進入するまでの時刻、及び位置を推定することが可能である。
【0006】
その結果、前側方センサの走査領域で検出した物標の進入時刻及び位置と、前側方センサ側で求めた物標の移動軌跡(前側方センサの走査領域への進入時刻及び位置)とを比較すれば、前側方センサの走査領域で検出した物標と後側方センサで検出した物標とが同一か否かを確認することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2019-66447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、後側方センサで受信する反射波には、上述した物標からの反射波以外に、様々なノイズ成分が重畳されて受信される。従って、後側方センサで検出した物標に基づいて推定した移動軌跡と、前側方センサで検出した物標とを単純に比較しただけでは、ノイズ成分を同一の移動物標であると誤検出する可能性がある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑み、後側方センサで検出した物標と前側方センサで検出した物標とが同一か否かを高い精度で判定することができて、誤検出を未然に防止することのできる車両の移動体検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、自車両の後側方を走査して第1物標を検出する後側方検出部と、前記自車両の前側方を走査して第2物標を検出する前側方検出部と、前記後側方検出部と前記前側方検出部とで検出した前記各物標に基づき、該物標によって特定される移動体の移動を検出する移動体検出部とを備え、前記後側方検出部が走査する後側方走査領域と前記前側方検出部が走査する前側方走査領域との間に走査不能な不感帯が形成される車両の移動体検出装置において、前記移動体検出部は、前記後側方走査領域内であって、前記不感帯と該後側方走査領域との境界線及び前記自車両が走行する車線に隣接する隣接車線に囲まれた領域内に後側方補間領域を設定すると共に、前記前側方走査領域内であって、前記不感帯と該前側方走査領域との境界線及び前記自車両が走行する車線に隣接する隣接車線に囲まれた領域内に前側方補間領域を設定する補間領域設定部と、前記後側方補間領域内で検出した前記第1物標の移動軌跡に基づいて、前記不感帯を通過する該第1物標の前記前側方補間領域への移動を推定する推定軌跡を設定する推定軌跡設定部と、前記推定軌跡上の推定第1物標と前記第2物標とを比較して、同一時刻における前記推定第1物標と前記第2物標とが一致しているか否かの一致度を検証する物標検証部とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、後側方走査領域内であって、不感帯と後側方走査領域との境界線及び自車両が走行する車線に隣接する隣接車線に囲まれた領域内に後側方補間領域を設定し、前側方走査領域内であって、不感帯と前側方走査領域との境界線及び前記自車両が走行する車線に隣接する隣接車線に囲まれた領域内に前側方補間領域を設定し、後側方補間領域内で検出した第1物標の移動軌跡に基づいて、不感帯を通過する第1物標の前記前側方補間領域への移動を推定する推定軌跡を設定し、この推定軌跡上の推定第1物標と第2物標とを比較して、同一時刻における前記推定第1物標と前記第2物標とが一致しているか否かの一致度を検証するようにしたので、後側方センサで検出した物標と前側方センサで検出した物標とが同一か否かを高い精度で判定することができ、第2物標の誤検出を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】運転支援装置の概略構成図
図2】移動体検出部の機能ブロック図
図3】補間領域設定ルーチンを示すフローチャート
図4】推定軌跡設定ルーチンを示すフローチャート
図5】物標検証ルーチンを示すフローチャート(その1)
図6】物標検証ルーチンを示すフローチャート(その2)
図7】自車両の側方に設定する補間領域と走査領域間の不感帯に車両が進入した状態を示す俯瞰図
図8】自車両の側方に設定する補間領域と走査領域間の不感帯に二輪車が進入した状態を示す俯瞰図
図9】後続車から取得する物標の中から基準物標を抽出する態様を示す俯瞰図
図10】(a)は後続車が後側方補間領域を通過する際の相対車速の変化に特化した基準物標パターンを示すタイムチャート、(b)は(a)の基準物標パターンに基づいて前側方補間領域に設定する推定基準物標パターンを示すタイムチャート
図11】前側方センサで検出した基準物標と後側方センサで検出した基準物標に基づき移動軌跡とを比較する態様を示す俯瞰図
図12】移動軌跡と前側方センサで検出した基準物標とを比較した状態を示す説明図
図13】前側方センサで検出した後続車からの基準物標がノイズ成分であると検証する態様を示す俯瞰図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。図7に示す符号Mは走行車線を走行する自車両である。又、隣接車線(追越車線)を走行する移動体としては、図7に示すような車両(以下、「後続車」と称する)Faや、図8に示すような自動二輪車Fbがある。尚、本実施形態では左側通行規制の道路を前提に説明する。従って、右側通行規制の場合は、左右が逆の説明となる。
【0014】
自車両Mには、図1に示す運転支援装置1が搭載されている。この運転支援装置1は、運転支援制御部11、移動体検出部12等の各ユニットを備え、この各ユニット11,12が、CAN(Controller Area Network)等の車内通信回線を通じて、双方向通信自在に接続されている。尚、各ユニット11,12はCPU、ROM、RAMなどを備えたマイクロコンピュータ、及び、その周辺機器で構成されており、ROMにはシステム毎に設定されている動作を実現するための制御プログラムや固定データ等が記憶されている。
【0015】
運転支援制御部11の入力側に、車載カメラユニット21、左折時にONする左折スイッチと右折時にONする右折スイッチを有するウインカスイッチ23、車速(自車速)を検出する車速センサ24、地図ロケータユニット25等が接続されている。車載カメラユニット21は、メインカメラ21aとサブカメラ21bとからなるステレオカメラと、画像処理ユニット(IPU)22とを有している。両カメラ21a,21bは、例えば車内前部のルームミラー上方であって、フロントガラスに近接する位置の車幅方向中央から左右に等間隔を開けて水平な状態で設置されている。車載カメラユニット21は、両カメラ21a,21bで撮像した自車前方の所定撮像領域21A(図7図8参照)の走行環境画像がIPU22で所定に画像処理された後、運転支援制御部11に送信される。
【0016】
又、地図ロケータユニット25は、GNSS(Global Navigation Satellite System)センサ25aと道路地図データベース25bとを備えている。GNSSセンサ25aは複数の測位衛星から発信される測位信号を受信して自車両の位置座標を取得する。又、道路地図データベース25bはHDD等の大容量記憶媒体であり、周知の道路地図情報が記憶されている。尚、記憶されている道路地図情報としては、道路の種別(一般道路、幹線道路、高速道路等)、道路形状、道路方位、車線数、車線幅等がある。運転支援制御部11は、GNSSセンサ25aが取得した位置座標(緯度、経度、高度)を、道路地図データベース25bに記憶されている道路地図情報上にマップマッチングして、道路地図上における自車位置(現在位置)、及び複数車線を走行しているのであればどの車線を走行しているかを推定する。
【0017】
又、この運転支援制御部11の出力側に制御アクチュエータ31、及び報知装置32が接続されている。この制御アクチュエータ31は、自車両Mの走行状態を支援する、パワーアクチュエータ、電動パワーステアリング(EPS)アクチュエータ、ブレーキアクチュエータなどの総称である。ここで、パワーアクチュエータはエンジンや電動モータ等の駆動源の出力を制御するものである。EPSアクチュエータはEPSモータの駆動を制御するものである。又、ブレーキアクチュエータは、各車輪に設けられているブレーキホイールシリンダに対して供給するブレーキ油圧を調整するものである。更に、報知装置32はブザー音、音声、モニタ表示等を通じて運転者に注意を促すものである。
【0018】
運転支援制御部11は、カメラユニット21からの走行環境情報に基づき制御アクチュエータ31を動作させて、周知の衝突被害軽減ブレーキ(AEB:Advanced Emergency Braking)制御、追従車間距離制御(ACC:Adaptive Cruise Control)、車線維持(ALK:Active Lane Keep)制御、車線逸脱防止(LDP:Lane Departure Prevention)制御等の各種運転支援制御を実行する。
【0019】
更に、この運転支援制御部11が自動運転機能を備えている場合、この運転支援制御部11は、運転者が設定した目標地点までの走行ルートを地図ロケータユニット25に基づいて設定し、この走行ルートに設定されている自動運転区間を、制御アクチュエータ31を動作させて自動運転させる。又、運転支援制御部11は、運転者によるハンドル操作において車線変更すべく運転者がウインカスイッチ23をONした際に、後述する移動体検出部12が車線変更しようとする側の隣接車線に、後方から接近する、或いは並走する移動体の移動を検出した場合は、報知装置32を動作させて運転者に注意を促す。
【0020】
一方、移動体検出部12の入力側に、前側方検出部としての左前側方センサ26及び右前側方センサ27と、後側方検出部としての左後側方センサ28及び右後側方センサ29とが接続されている。この各センサ26~29はミリ波レーダ、マイクロ波レーダ、LiDAR(Light Detection and Ranging)等で構成されている。図7図8に示すように、左右の前側方センサ26,27は、例えば、フロントパンパの左右稜部に配置され、一方、左右の後側方センサ28,29は、例えば、リヤバンパの左右稜部に配置されている。
【0021】
前側方センサ26,27は、自車両Mの左右斜め前方から側方にかけての領域(走査領域)26A,27Aを扇状に走査する。一方、左右後側方センサ29,29は、自車両Mの後方から左右にかけての、左右前側方センサ26,27では走査することのできない領域(走査領域)28A,29Aを扇状に走査する。
【0022】
図7図8に示すように、自車両Mの側面を各々走査する左前側方センサ26と左後側方センサ28との走査領域26A,28A、及び、右前側方センサ27と右後側方センサ29との走査領域27A,29Aは、そのセンサ特性上、自車両Mの左右側方を全てカバーすることはできない。そのため、図7図8に示すような、走査不能な不感帯(死角領域)Dl,Drが、走査領域26A,28A間、及び走査領域27A,29A間に形成される。
【0023】
各側方センサ26~29の走査領域26A~29Aは扇状となり、走査領域26A,28Aと不感帯Dlとの間の境界線、及び、走査領域27A,29Aと不感帯Drとの間の境界線が走査遠方の端部で交差している。そのため、本実施形態による不感帯Dl,Drは自車両Mの側面を底辺とする三角形状となる。又、この不感帯Dl,Drは、各側方センサ26~29の自車両Mに対する設置位置、及び、センサ特性から一義的に求めることができる。各側方センサ26~29は、走査領域27A~29Aに所定パルス波形の送信波を送信し、その反射波を受信する。
【0024】
図2に示すように、移動体検出部12は、基準物標抽出部12a、補間領域設定部12b、推定軌跡設定部12c、物標検証部12dの各機能を備えている。
【0025】
基準物標抽出部12aは、各側方センサ26~29で受信した反射波を所定時間サンプリングする。このサンプリング間隔(t)は反射波を受信する1フレームの周期よりも長く設定されている。例えば、反射波を2秒間隔でサンプリングするとした場合、それを8個(14秒間)集めて、平均化し、その平均化した波形を平均反射波として設定する。従って、次の平均反射波は、8個のうち最も古い1個をクリアし、新たな1個を加えて算出することになるため、この平均反射波は2秒間隔で設定される。
【0026】
そして、図9に示すように、基準物標抽出部12aは、受信した平均反射波の中から、受信した側方センサとの距離が最近傍の物標を基準物標(ターゲット)Tとして抽出する。そして、抽出した基準物標Tの往復伝播時間、及び受信した方角から、自車両Mを基準とする基準物標Tまでの距離、相対車速、道路地図上の位置座標等の物標情報を取得する。尚、この基準物標抽出部12aでの処理は、既に知られている技術であるため、詳細な説明は省略する。
【0027】
補間領域設定部12bは、自車両Mに隣接する車線(隣接車線)に前側方補間領域Ifl,Ifrと後側方補間領域Irl,Irrを設定する。この各補間領域Ifl,Ifr,Irl,Irrは、後側方センサ28,29の走査領域28A,29Aで抽出した第1物標としての基準物標Tと、前側方センサ26,27の走査領域26A,27Aで抽出した第2物標としての基準物標Tとが一致しているか否かを検証する領域である。
【0028】
推定軌跡設定部12cは、基準物標Tが後側方補間領域Irl,Irrを通過する際の走行軌跡に基づいて、不感帯Dl,Drを通過する基準物標Tの移動を推定する推定軌跡Qd、及び、前側方補間領域Ifl,Ifrを通過する基準物標Tの移動を推定する推定軌跡Qを時間軸上に設定する。
【0029】
物標検証部12dは、前側方補間領域Ifl,Ifrで検出された基準物標Tと推定軌跡Qとを比較して、この両者が一致しているか否かを検証する。
【0030】
移動体検出部12の補間領域設定部12bで実行する補間領域の設定は、具体的には、図3に示す補間領域設定ルーチンに従って行われる。このルーチンでは、先ず、ステップS1で、地図ロケータユニット25で推定し、或いはカメラユニット21の走行環境情報に基づいて推定した自車位置情報を読込む。次いで、ステップS2へ進み、推定した自車位置に基づき、その周辺の道路地図情報を道路地図データベース25bから読込む。
【0031】
そして、ステップS3へ進み、自車両Mが現在走行している車線に隣接する車線(隣接車線)の情報を道路地図データベース25b、或いはカメラユニット21の走行環境情報から取得し、この隣接車線に後側方補間領域Irl,Irrと前側方補間領域Ifl,Ifrとを設定する。図7図8に示すように、自車両M周辺に設定される各側方センサ26~29の走査領域26A~29Aは、この各側方センサ26~29の特性から求めることができる。又、不感帯Dl,Drは、自車両Mに対する各側方センサ26~29の設置位置から求めておくことができる。
【0032】
前側方補間領域Ifl,Ifrの前後方向は、不感帯Dl,Drの境界線から走査領域26A,27A内に設定されている。又、後側方補間領域Irl,Irrの前後方向は、不感帯Dl,Drの境界線から走査領域28A,29A内に設定される。
【0033】
そのため、不感帯Dl,Drの境界線、及び後側方補間領域Irl,Irrの境界線、及び前側方補間領域Ifl,Ifrの境界線は、自車両Mを基準とする位置座標で、予め記憶さておくことができる。例えば、図9に示すように、自車両Mの中心を原点として、前後方向をx軸とし、車幅方向をy軸として位置座標を設定する。尚、この前側方補間領域Ifl,Ifrの前方の境界線と、後側方補間領域Irl,Irrの後方の境界線とは、それぞれ自車両Mの前後長よりも数メートル先の位置に設定されている。
【0034】
一方、隣接車線の車幅方向は、道路地図情報から取得して設定する。尚、この場合、ステップS2では、カメラユニット22からの走行環境情報を読込み、ステップS3において、この走行環境情報から隣接車線の車線幅を求めるようにしても良い。
【0035】
従って、ステップS3では、予め記憶されている、各側方補間領域Ifl,Ifr,Irl,Irrの前後方向の境界線と、隣接車線の区間線情報に基づいて設定した左右方向の境界線とで囲まれた領域に、図7図8にハッチングで示すような側方補間領域Ifl,Ifr,Irl,Irrをそれぞれ設定してルーチンを抜ける。
【0036】
又、推定軌跡設定部12cで設定する推定軌跡は、具体的には、図4に示す推定軌跡設定ルーチンに従って設定される。このルーチンは、基準物標抽出部12aのサンプリング間隔(t)に同期して実行され、先ず、ステップS11で、左右の後側方補間領域Irl,Irrの少なくとも一方に、基準物標Tが存在しているか否かを、基準物標抽出部12aに記憶されている基準物標Tから調べる。そして、左右の後側方補間領域Irl,Irrの少なくとも一方に、基準物標Tがある場合はステップS12へ進む。又、左右の後側方補間領域Irl,Irrの何れにも基準物標Tがない場合は、ルーチンを抜ける。
【0037】
尚、左前側方センサ26で検出した物標から抽出した基準物標Tと推定軌跡Qとが一致するか否かの判定、及び、右前側方センサ27で検出した物標から抽出した基準物標Tと推定軌跡Qとが一致するか否かの判定は同一の処理であるため、以下においては、前側方センサ(26,27)、前側方補間領域(Ifl,Ifr)、不感帯(Dl,Dr)と記載して、まとめて説明する。
【0038】
ステップS12へ進むと、基準物標Tを道路地図上の座標にプロットし、時系列に沿った基準物標パターンを記憶させて、ステップS13へ進む。基準物標Tは、受信した後側方センサ(28,29)との距離が最近傍の物標に基づいて設定される。従って、図9に示すように、例えば、自車両Mの走行車線に対して右側の隣接車線を走行する移動体としての後続車Faが、自車両Mに対して後方から接近して追い越そうとしている状況を考える。
【0039】
この場合、後続車Faは、先ず、右後側方センサ29の走査領域29Aに進入し(Fa(0))、次いで、後側方補間領域Irrに進入する(Fa(1))。その後、不感帯Drを通過して(Fa(2))、前側方補間領域Ifr、及び右前側方センサ27の走査領域27Aに進入する(Fa(3))。その後、この前側方補間領域Ifrを退出し、更に右前側方センサ27の走査領域27Aを退出する(Fa(4))。
【0040】
後続車Faが走査領域29Aに進入し、右後側方センサ29の側方付近に達するまでは、後続車Fa前部の左稜部付近の物標が基準物標Tとして抽出される。又、後続車Faの前部が右後側方センサ29の側方に到達した後、右後側方センサ29の側方を通過している間は、後続車Faの側面が右後側方センサ29の最近傍となる。
【0041】
そのため、基準物標抽出部12aは、右後側方センサ29で検出した物標の中から、側面を検出した物標を基準物標Tとして抽出する。そして、後続車Faの後部が右後側方センサ29の側方を通過すると、基準物標抽出部12aは右後側方センサ29で検出した物標の中から、後続車Fa後部の左稜部付近を検出した物標を基準物標Tとして抽出する。
【0042】
例えば、図10(a)に、後続車Faが自車両Mを追い越そうとして、後側方補間領域Irrに進入し、不感帯Drへ退出するまでの基準物標Tから得られる前後方向の相対車速ΔVx[m/sec]の変化を表す基準物標パターンを概略的に示す。尚、ここでは、説明を簡単にするために、後続車Faが自車両Mとの横方向の距離(横位置)を一定とし、且つ相対車速を一定に保持しているものとする。従って、横方向の相対車速ΔVyは0[m/sec]として説明する。
【0043】
同図に示すように、後続車Faが後側方補間領域Irrに進入し、右後側方センサ29に後方から接近して、後続車Faの前部が右後側方センサ29の側方に達するまでは、基準物標抽出部12aは後続車Faの前部側を基準物標Tとして抽出している。そのため、基準物標Tから前後方向の相対車速ΔVxを検出することができる。
【0044】
そして、後続車Faの側面が右後側方センサ29の側方を通過している間、この相対車速ΔVxはほぼ0[m/sec]となる。従って、基準物標Tからは、正しい相対車速ΔVxは検出されない。尚、この場合、当然後続車Faの位置座標はほぼ同じ位置で固定される。
【0045】
その後、この後続車Faの後部が右後側方センサ29の横方向に到達した後、離れることで、基準物標抽出部12aは後続車Fa後部側を基準物標Tとして抽出するため、前後方向の相対車速ΔVxが再び検出される。
【0046】
その後、ステップS13へ進み、後側方センサ(28,29)で検出した物標の中から、基準物標抽出部12aが抽出した基準物標Tが不感帯(Dl,Dr)の境界線に達したか否かを調べる。そして、境界線に達していない場合は、ルーチンを抜ける。一方、境界線に達した場合はステップS14へ進む。基準物標Tが境界線に達したか否かは、例えば、自車両Mを基準とする基準物標Tの位置座標と予め設定されている境界線の位置座標とを比較して行う。
【0047】
ステップS14へ進むと、後側方補間領域(Irl,Irr)から退出する直前の基準物標T、すなわち、上述した図10(a)で説明した、後続車Faの後部側を抽出した基準物標Tに基づき、不感帯(Dl,Dr)内を通過する推定軌跡Qdを設定し、ステップS15へ進む。尚、この推定軌跡Qdには、基準物標抽出部12aのサンプリング間隔(t)に同期して、推定基準物標の移動を推定する位置座標(x1,y1)、及びそのときの車速(Vx1,Vy1)が記憶されている。
【0048】
従って、不感帯(Dl,Dr)内を移動する物標の位置座標、及び相対車速は、この推定軌跡Qdに基づいて推定される。そのため、例えば、図8に示す自動二輪車Fbのように、前後長が短く、自車両Mを追い越す過程で、その全体が不感帯(Dl,Dr)に入ってしまい、両側方センサ(26,27),(28,29)で検出することが出来なくなっても、推定軌跡Qdに基づいて、不感帯(Dl,Dr)を移動する移動体(自動二輪車Fb)を推定することができる。
【0049】
ステップS15へ進むと、図10(a)で説明した、基準物標Tが後側方補間領域(Irl,Irr)を退出するまでの基準物標パターンを示す物標データに基づき、ステップS14で設定した推定軌跡Qdに連なる基準物標パターンの推定軌跡Qnを設定する。更に、この推定軌跡Qnに連なる推定軌跡Qfを設定してルーチンを抜ける。尚、この推定軌跡Qfは、不感帯(Dl,Dr)内を通過する推定軌跡Qdに基づいて設定される。更に、この推定軌跡Qn,Qfには、推定基準物標の移動を推定する位置座標(x1,y1)、及びそのときの車速(Vx1,Vy1)が、基準物標抽出部12aのサンプリング間隔(t)に同期して記憶されている(図12参照)。
【0050】
図10(b)に示すように、後続車Faが不感帯(Dl,Dr)から退出して、前側方補間領域(Ifl,Ifr)に進入する場合は、後続車Faが自車両Mを追い越して前方へ移動するため、推定軌跡Qnは、上述した図10(a)に示す基準物標パターンと逆のパターンとなる。従って、図10(b)に例示する推定基準物標パターンに基づいて、前側方補間領域(Ifl,Ifr)を通過する後続車Faの推定軌跡Qnを設定する。従って、上述した推定軌跡Qは、推定軌跡Qn,Qfの総称である。
【0051】
尚、移動体検出部12は、後述する物標検証部12dで、前側方補間領域(Ifl,Ifr)で検出した基準物標Tと後側方補間領域(Irl,Irr)で抽出した基準物標Tとが同一であると検証されるまでは、推定軌跡Qd,Qに基づく推定基準物標を基準物標データとして運転支援制御部11へ出力する。
【0052】
又、物標検証部12dで実行する、後側方補間領域(Irl,Irr)で検出した基準物標Tと前側方補間領域(Ifl,Ifr)で検出した基準物標Tとが一致しているか否かの検証は、具体的には、図5図6に示す物標検証ルーチンに従って行われる。
【0053】
このルーチンでは、先ず、ステップS21で、推定軌跡Qの推定基準物標が不感帯(Dl,Dr)から前側方補間領域(Ifl,Ifr)に進入したか否かを、推定基準物標の移動を推定する位置座標(x1,y1)に基づいて判定する。
【0054】
そして、推定軌跡Q(推定基準物標)の進入が検出された場合は、ステップS22へ進む。又、推定軌跡Q(推定基準物標)の進入が未だ検出されない場合はルーチンを抜ける。
【0055】
ステップS22へ進むと、推定軌跡Qが検出された側の隣接車線への車線変更注意指令を運転支援制御部11へ出力して、ステップS23へ進む。
【0056】
運転支援制御部11は、移動体検出部12から推定軌跡(推定基準物標)Qの進入が検出された側の隣接車線への車線変更注意指令を受けると、運転者が車線変更注意指令の対象となっている隣接車線への車線変更しようとする操作を検出した場合、報知装置32を駆動させて注意を促す。例えば、車線変更をしようとする操作がウインカスイッチ23のONであり、運転者が車線変更注意指令の対象となっている隣接車線側のスイッチをONした場合、運転支援制御部11は、報知装置32を駆動させて、隣接車線には推定軌跡Qで特定される移動体が走行している旨、或いは移動体が走行している可能性がある旨を、運転者に報知する。
【0057】
その後、ステップS23へ進むと、同一時間軸上において推定軌跡Qの推定基準物標と基準物標抽出部12aで抽出した基準物標Tとの一致度を調べる。
【0058】
例えば、図11に示すように、後続車Faが右側の隣接車線を走行している場合、右後側方補間領域Irrで検出した走行軌跡に基づいて、右前側方補間領域Ifrの推定軌跡Qが設定される。そして、この推定軌跡Qによって後続車Faの右前側方補間領域Ifrでの移動が推定される。一方、基準物標抽出部12aが、右前側方センサ27で検出した物標に基づき、右前側方補間領域Ifr内に基準物標T(0)~T(6)を、サンプリング間隔毎の時系列で抽出したとする。そして、同一時刻における推定軌跡Qの推定基準物標と基準物標T(0)~T(6)を逐次比較して一致度を調べる。
【0059】
以下、一致度の求め方を例示する。図12に示すように、同一時刻の推定基準物標をQ(t)、基準物標をT(t)とする。そして、推定基準物標Q(t)の位置座標を(x1,y1)、相対車速を(ΔVx1,ΔVy1)とする。又、基準物標T(t)の位置座標を(x1’,y1’)、相対車速を(ΔVx1’,ΔVy1’)とする。
【0060】
先ず、この各物標Q(t),T(t)の位置座標の直線距離でのずれ幅ΔLを、(1)式に示す二乗平均から求め、又、各物標Q(t),T(t)の相対車速の速度ベクトルPvを、(2)式に示す二乗平均から求める。
【0061】
【数1】
【0062】
ここで、α、βはΔL、Pvに設定する重み係数であり、状況に応じて、両者の比率を適宜設定する(α=1-β)。
【0063】
そして、位置座標のずれ幅ΔLと相対車速の速度ベクトルPvとを加算して、一致度レベルLvを求める(Lv=ΔL+Pv)。この一致度レベルLvは、位置座標のずれ幅ΔLと相対車速の速度ベクトルPvとが小さい値を示すほど、一致度が高いことを示す。
【0064】
例えば、推定基準物標Q(t)と基準物標T(t)との位置座標が、(x=2[m],y=2[m])だけ離れているとした場合、ΔLは、重み係数αを0.5とした場合、約1.4[m]となる。
【0065】
又、例えば、推定基準物標Q(t)の相対車速が(ΔVx1=10[m/sec],ΔVy1=0) 、基準物標T(t)の相対車速が(ΔVx1=12[m/sec],ΔVy1’=0)の場合、重み係数βを0.5とした場合、速度ベクトルPvはx軸方向に1[m/sec]となる。従って、Lv≒2.4となる。
【0066】
この一致度レベルLvは、重み係数α、βの比率を何れにするかで値が変化する。従って、この重み係数α,βにより、一致度にある程度の自由度を与えることができる。
【0067】
次いで、ステップS24へ進み、一致度レベルLvと一致度判定しきい値Loとを比較する。この一致度判定しきい値Loは、推定基準物標Q(t)と基準物標T(t)とが一致しているか否かを判定する値であり、予め実験等から求めて設定したものであるが、任意に可変設定することができる。
【0068】
そして、Lv≦Loの場合、同一時刻の推定基準物標Q(t)と基準物標T(t)とは一致していると判定し、ステップS25へ進み、一致カウンタのカウント値Cをインクリメントして(C←C+1)、ステップS26へ進む。又、Lv>Loの場合、同一時刻の推定基準物標Q(t)と基準物標T(t)とは不一致と判定し、ルーチンを抜ける。
【0069】
ステップS26へ進むと、推定軌跡Qが前側方補間領域(Ifl,Ifr)を退出したか否かを調べる。退出したか否かは推定軌跡Qの時系列で進行する位置座標と前側方補間領域(Ifl,Ifr)の退出側に予め設定されている境界線の位置座標とを比較して行う。そして、推定軌跡Qが前側方補間領域(Ifl,Ifr)を退出したと判定した場合は、ステップS27へ進む。又、推定軌跡Qが前側方補間領域(Ifl,Ifr)内にあると判定した場合は、ルーチンを抜ける。
【0070】
ステップS27へ進むと、一致カウンタのカウント値Cが信頼度判定しきい値Co以上か否かを調べる。そして、C≧Coの場合、前側方センサ(26,27)で検出した物標に基づいて抽出した基準物標Tの信頼度は高いと判定し、ステップS28へ進む。又、C<Coの場合、基準物標Tは誤検知の可能性が高いと判定し、ステップS29へ分岐する。
【0071】
ステップS28では、前側方補間領域(Ifl,Ifr)で検出した基準物標Tは後側方補間領域(Irl,Irr)で抽出した基準物標Tと同一であるとの検証結果を記憶させてステップS31へ進む。例えば、図11に示すように、推定軌跡Qの推定基準物標Q(図示せず)と同一時刻の基準物標T(0)~T(6)とを比較した際に、基準物標T(0),T(2),T(5),T(6)の一致度レベルLvがLo以下の一致と判定され、基準物標T(1),T(3),T(4)の一致度レベルLvがLoを超えた不一致と判定されたとする。この場合、Co=4に設定されていれば、基準物標T(1),T(3),T(4)にノイズ成分が重畳されて一時的に不安定な値が検出されたとしても、前側方補間領域(Ifl,Ifr)で検出した基準物標Tは、後側方補間領域(Irl,Irr)で抽出した基準物標Tと同一であると検証する。
【0072】
尚、ステップS28において、前側方補間領域(Ifl,Ifr)で検出した基準物標Tと後側方補間領域(Irl,Irr)で抽出した基準物標Tとが同一であると検証された場合、移動体検出部12は前側方センサ(26,27)で検出した基準物標Tのデータ(位置座標、相対車速)を運転支援制御部11へ出力する。運転支援制御部11は得られた基準物標Tのデータに基づいて車線変更時などにおける的確な運転支援を実行する。
【0073】
又、ステップS29へ分岐すると、前側方補間領域(Ifl,Ifr)で検出した基準物標Tは誤検知であるとの検証結果を記憶してステップS30へ進む。ステップS30では、前側方補間領域(Ifl,Ifr)で抽出した基準物標Tのデータをクリアして、ステップS31へ進む。
【0074】
例えば、図13に示すように、隣接車線を走行する移動体としての後続車Faが不感帯Drから右折車線へ車線変更した場合、前側方センサ27で検出した物標は明らかにノイズ成分であり、従って、このノイズ成分から抽出した基準物標T(0)~T(2)は明らかに誤検知である。この場合、基準物標T(0)~T(2)を同一時刻における推定軌跡Qの推定基準物標Q(t)と比較しないとした場合、基準物標T(0)~T(2)が実際に存在しているか否かを明確に判定することができない。
【0075】
上述したステップS30において、誤検知した基準物標Tをクリアしているため、誤った基準物標Tに基づく後続車Faの誤検出を未然に防止することができる。尚、この場合、推定軌跡設定部12cにおいて新たな推定軌跡Qが設定されるまでの間、前側方センサ26,27で検出する物標はノイズ成分と判定される。
【0076】
その後、ステップS28、或いはステップS30からステップS31へ進むと、推定軌跡QのデータをクリアしてステップS32へ進む。従って、ステップS28で基準物標Tは移動体であると検証した場合は、推定軌跡Qと基準物標Tとの双方が前側方補間領域(Ifl,Ifr)を退出するまで保持される。一方、ステップS29において、前側方補間領域(Ifl,Ifr)で検出した基準物標Tは誤検知であると検証された場合は、推定軌跡Qのみが前側方補間領域(Ifl,Ifr)を退出するまで保持される。
【0077】
従って、運転支援制御部11では、図13に示すように、後続車Faが右折車線へ車線変更した場合であっても、推定軌跡Qの推定基準物標Q(t)が前側方補間領域(Ifl,Ifr)を退出するまでは、推定軌跡Qが検出された側の隣接車線への車線変更注意指令が継続される。
【0078】
ステップS32へ進むと、推定軌跡Qが前側方補間領域(Ifl,Ifr)を退出したため、推定軌跡Qが検出された側の隣接車線への車線変更注意解除指令を運転支援制御部11へ出力して、ステップS33へ進み、一致カウンタのカウント値Cをクリアして(C←0)、ルーチンを抜ける。
【0079】
尚、前側方補間領域(Ifl,Ifr)で検出した基準物標Tが移動体(後続車Fa)からのものであると検証され、推定軌跡Qの推定基準物標Q(t)が前側方補間領域(Ifl,Ifr)を退出した後は、前側方センサ(26,27)で検出した値に基づいて基準物標Tを抽出する。
【0080】
このように、本実施形態によれば、自車両Mに設けた前側方センサ26,27の走査領域26A,27Aと後側方センサ28,29の走査領域28A,29Aとの間に形成される不感帯Dl.Drを挟んで前後に前側方補間領域Ifl,Ifrと後側方補間領域Irl,Irrとを設定し、後側方補間領域Irl,Irrで検出した基準物標Tに基づいて、不感帯Dl.Drを通る推定軌跡Qdを設定し、この推定軌跡Qdに基づいて不感帯Dl.Drを移動する移動体Fa,Fbを推定するようにした。これにより、移動体Fa,Fbが不感帯Dl.Drを通過している場合であっても、運転者に注意を促すなどの的確な運転支援を行うことができる。
【0081】
更に、後側方補間領域Irl,Irrで検出した基準物標Tに基づいて、前側方補間領域Ifl,Ifrを通過する基準物標の軌跡を推定する推定軌跡Qを設定し、同時刻における推定軌跡Qと前側方センサ26,27で検出した基準物標Tとの一致度を調べて、この基準物標Tが、後側方センサ28,29で検出したものと同一か、或いはノイズ成分かを判定するようにしたので、後側方センサ28,29で検出した基準物標Tと前側方センサ26,27で検出した基準物標Tが同一か否かを高い精度で判定することができ、誤検出を未然に防止することができる。
【0082】
尚、本発明は、上述した実施形態に限るものではなく、例えば、自車両Mが自動運転で走行している場合、運転支援制御部11がステップS22での車線変更注意の指令を受けると、その指令が解除されるまで車線変更が禁止される。
【符号の説明】
【0083】
1…運転支援装置、
11…運転支援制御部、
12…移動体検出部、
12a…基準物標抽出部、
12b…補間領域設定部、
12c…推定軌跡設定部、
12d…物標検証部、
21…車載カメラユニット、
21A…撮像領域、
21a…メインカメラ、
21b…サブカメラ、
22…カメラユニット、
23…ウインカスイッチ、
24…車速センサ、
25…地図ロケータユニット、
25a…GNSSセンサ、
25b…道路地図データベース、
26…左前側方センサ、
27…右前側方センサ、
28…左後側方センサ、
29…右後側方センサ、
29…左右後側方センサ、
26A~29A…走査領域、
31…制御アクチュエータ、
32…報知装置、
C…カウント値、
Co…信頼度判定しきい値、
Dl,Dr…不感帯、
Fa…後続車、
Fb…自動二輪車、
Ifl…左前側方補間領域、
Ifr…右前側方補間領域、
Irl…左前側方補間領域、
Irr…右後側方補間領域、
Lo…一致度判定しきい値、
Lv…一致度レベル、
M…自車両、
Pv…速度ベクトル、
Q,Qd,Qf,Qn…推定軌跡、
Q(t)…推定基準物標、
T…基準物標、
ΔL…ずれ幅、
ΔVx,ΔVy…相対車速、
α,β…重み係数
図1
図2
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