(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】記録装置
(51)【国際特許分類】
B65H 31/04 20060101AFI20241218BHJP
B65H 31/26 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
B65H31/04
B65H31/26
(21)【出願番号】P 2020166112
(22)【出願日】2020-09-30
【審査請求日】2023-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤掛 聴
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智洋
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 和一郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 涼
(72)【発明者】
【氏名】古宇田 武
(72)【発明者】
【氏名】杉山 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】永瀬 知之
【審査官】松江川 宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-144970(JP,A)
【文献】特開2018-080043(JP,A)
【文献】米国特許第08915492(US,B2)
【文献】特開2008-156012(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 31/00-31/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排紙トレイと、
前記排紙トレイのシートの搬送方向上流側に配置され、前記排紙トレイの側に突き出
して前記排紙トレイに対してシートを押し付ける第1の位置と、前記第1の位置から前記上流側に退避する退避位置と
、前記第1の位置と前記退避位置との間の第2の位置とに移動可能な可動ガイドと、
シートの先端が前記可動ガイドに沿って搬送される
際に前記可動ガイドを前記
第1の位置に移動させ、シートの後端が前記可動ガイドに沿って搬送される
際に前記可動ガイドを前記退避位置に移動させる駆動手段と、を備え、
前記駆動手段は、前記可動ガイドを、前記第1の位置から前記退避位置に移動させ、前記退避位置から前記第2の位置へ移動させて前記第2の位置で停止させた後、前記第1の位置へ移動させることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記可動ガイドは、シートの幅方向に複数配置されていることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記駆動手段は、複数の前記可動ガイドを並列に駆動することを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
シートを前記排紙トレイに排出するための排出ローラをさらに備え、前記第2の位置は、前記第1の位置と前記排出ローラとの間の位置であることを特徴とする請求項1乃至
3のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項5】
前記可動ガイドは前記第2の位置で所定時間停止し、該所定時間は、排紙されるシートの種類によって設定されることを特徴とする請求項1乃至
4のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項6】
前記排紙トレイは、前記シートが傾斜した状態で載置されるように配置されていることを特徴とする請求項1乃至
5のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項7】
排紙トレイと、
前記排紙トレイのシートの搬送方向上流側に配置され、前記排紙トレイの側に突き出す突出位置と、前記突出位置から前記上流側に退避する退避位置とに移動する可動ガイドと、
シートの先端が前記可動ガイドに沿って搬送される際に前記可動ガイドを前記突出位置に移動させ、シートの後端が前記可動ガイドに沿って搬送される際に前記可動ガイドを前記退避位置に移動させる駆動手段と、を備え、
前記可動ガイドは、前記駆動手段による駆動量に対して前記可動ガイドの先端の動き量が異なることを許容する弾性部材を備えることを特徴とす
る記録装置。
【請求項8】
排紙トレイと、
前記排紙トレイのシートの搬送方向上流側においてシートの幅方向に複数配置され、前記排紙トレイの側に突き出す突出位置と、前記突出位置から前記上流側に退避する退避位置とに移動する可動ガイドと、
シートの先端が前記可動ガイドに沿って搬送される際に前記可動ガイドを前記突出位置に移動させ、シートの後端が前記可動ガイドに沿って搬送される際に前記可動ガイドを前記退避位置に移動させる駆動手段と、
シートを排出する排出ローラの近傍でかつ排出されるシートの下側に配置され、前記排紙トレイに排出されるシートと前記排紙トレイとの間に風を送る送風手段と、を備え、
前記排出ローラはシートを挟んで対向する従動ローラに接触しており、前記送風手段は、前記排出ローラと前記従動ローラのうちシートの下側に位置するローラの外形よりも突出しないように配置されていることを特徴とす
る記録装置。
【請求項9】
前記送風手段は、排出されるシートの延長と前記排紙トレイの延長とを結ぶ点と前記送風手段の送風口とを結ぶ方向である第3の方向に風を送風し、該第3の方向は、シートが排出される第1の方向と、シートが前記排紙トレイに積載される第2の方向の間の方向であることを特徴とする請求項
8に記載の記録装置。
【請求項10】
前記第1の方向の延長線と前記第2の方向の延長線は交差することを特徴とする請求項
9に記載の記録装置。
【請求項11】
前記送風手段は、複数の前記可動ガイドの間にそれぞれ備えられた複数の送風口を有することを特徴とする請求項
8乃至
10のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項12】
前記送風手段は、前記複数の送風口に共通に送風する一つのファンを有することを特徴とする請求項
11に記載の記録装置。
【請求項13】
前記駆動手段は、駆動モータと、ギア列と、該ギア列の中に配置され、所定トルク以上の負荷が加わったときにスリップするトルクリミッタとを備えることを特徴とする請求項1乃至
12のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項14】
前記トルクリミッタと該トルクリミッタに接続されるギアとの間に、前記可動ガイドを突出状態に移動させる方向に前記ギアが回転するときは前記トルクリミッタとの連結を遮断し、可動ガイドを退避状態に移動させる方向にギアが回転するときは前記トルクリミッタとの連結を保持するワンウェイクラッチをさらに備えることを特徴とする請求項
13に記載の記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排出されたシートを積載する積載装置を有する記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、大判のインクジェットプリンタでは、記録媒体としてロール紙を使用する。ロール紙は印刷が行われた後に排出され、その排出された印刷物はプリンタ下部に設けられたバスケットに収納される。しかしながら、バスケットの収納量には限界があり、また、ロール紙のカールにより丸まった印刷物の上に次の印刷物が積載される。そのため、傷や折れが発生しやすい、取り出し性が悪いなどの問題から、大容量積載には適さなかった。近年では、大容量積載への要望の高まりから、上記の問題に対応した大判スタッカが登場してきている。
【0003】
この種のスタッカとして、印刷物を排出する排出手段を備え、排出手段により排出された印刷物を排出手段の搬送方向下流側に配置された積載トレイに積載する装置が知られている。印刷物を積載する積載トレイは、搬送方向上流側において、印刷物を多数枚積載するために排出手段より一段低くなるように配置されており、そこから搬送方向下流側に向けて上方に傾斜している。排出手段により搬送された印刷物は、印刷物の後端が排出手段のニップを抜けるとトレイ上に落下し、積載される。
【0004】
印刷物を積載する場合、積載トレイ上に排出された印刷物がカールしていると、新たに排出される印刷物により、そのカールした印刷物が積載トレイから押し出されてしまう場合がある。これに対応するため、例えば特許文献1では、印刷物の後端を押さえ部材で押さえることにより、積載された印刷物がカールしていても後続の印刷物の排出時に搬送方向に押し出されることを防ぎ、印刷物を揃えて積載することを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されている構成では、インクの定着性が悪いシートに印刷を行って積載トレイに積載する場合、積載トレイに排出された印刷物の後端を押さえることにより、シート間または積載トレイにインクが転写してしまうことがある。この問題の一つの対策として、インクの転写を防ぐために、積載トレイにシートが排出されてから後端を押さえるまでにインクを乾燥させる時間を設けることが考えられる。しかし、このように乾燥させる時間を設けると、印刷物がカールしている場合などに、印刷物の後端が排紙ローラと接触し、シートが押し出されたりシートに傷を生じさせてしまうことがある。
【0007】
本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、印刷済みのシートを積載トレイに載置する場合に、積載されたシートの品質を向上させることが可能な記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係わる記録装置は、排紙トレイと、前記排紙トレイのシートの搬送方向上流側に配置され、前記排紙トレイの側に突き出して前記排紙トレイに対してシートを押し付ける第1の位置と、前記第1の位置から前記上流側に退避する退避位置と、前記第1の位置と前記退避位置との間の第2の位置とに移動可能な可動ガイドと、シートの先端が前記可動ガイドに沿って搬送される際に前記可動ガイドを前記第1の位置に移動させ、シートの後端が前記可動ガイドに沿って搬送される際に前記可動ガイドを前記退避位置に移動させる駆動手段と、を備え、前記駆動手段は、前記可動ガイドを、前記第1の位置から前記退避位置に移動させ、前記退避位置から前記第2の位置へ移動させて前記第2の位置で停止させた後、前記第1の位置へ移動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、印刷済みのシートを積載トレイに載置する場合に、積載されたシートの品質を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態における上面排紙中のプリント装置の斜視図。
【
図2】上面排紙中のプリント装置におけるシートの搬送経路の説明図。
【
図3】一実施形態における前面排紙中のプリント装置の斜視図。
【
図4】前面排紙中のプリント装置におけるシートの搬送経路の説明図。
【
図5】一実施形態におけるプリント装置の制御部の構成を示すブロック図。
【
図7】可動ガイドが退避状態の上面排紙部の上面図。
【
図10】送風口と排紙ローラユニットの関係を示す図。
【
図12】可動ガイドの突出状態かつ積載用紙を押さえた状態の説明図。
【
図16】紙種と印字モードに応じた排紙シーケンスの選択条件を示す図。
【
図17】排紙シーケンスAの動作を示すフローチャート。
【
図18】排紙シーケンスBの動作を示すフローチャート。
【
図21】トレイにシートが排紙された状態を示す図。
【
図22】可動ガイドが退避を開始した状態を示す図。
【
図23】可動ガイドが退避位置に移動した状態を示す図。
【
図24】可動ガイドが排紙直後にシートを押さえはじめる状態を示した図。
【
図25】可動ガイドが第2押さえ位置に移動した状態を示した図。
【
図26】可動ガイドが第1押さえ位置に移動した状態を示した図。
【
図27】可動ガイドが排紙直後のシートを押さえはじめる状態を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0012】
図1から
図5は、本発明の記録装置の一実施形態であるインクジェットプリント装置の構成を示す図である。本実施形態のプリント装置は、プリント媒体としてのシートを供給するためのシート供給装置と、そのシートに画像をプリントするプリント部と、シートをプリント装置上面部とプリント装置前面部の2か所に選択的に排紙する排紙部とを備えている。
【0013】
図1は、シート1をロール状に巻回したロールシートを2本セットすることが可能なプリント装置100の上面排紙中の概略図である。上下に配置されたシート供給装置200にセットされた2本のロールシートから選択的に引き出されたシート1に画像がプリントされる。プリントが完了したシートはプリント装置上部に設けられたスタッカ28に排紙される。ユーザは、操作パネル2に備わる各種のスイッチなどを用いて、シート1のサイズ指定、オンライン/オフラインの切り換え、排紙先の設定など、プリント装置100に対する各種コマンドなどを入力することができる。
【0014】
図2は、プリント装置100の要部の上面排紙中の概略断面図である。2本のロールRに対応する2つのシート供給装置200が上下に配置されている。シート供給装置200によってロールRから引き出されたシート1は、シート搬送部(搬送機構)300によって、シート搬送経路に沿って画像をプリント可能なプリント部400に搬送される。プリント部400は、インクジェット式のプリントヘッド18からインクを吐出することにより、シート1に画像をプリントする。プリントヘッド18は、電気熱変換素子(ヒータ)やピエゾ素子などの吐出エネルギー発生素子を用いて、吐出口からインクを吐出する。プリントヘッド18はインクジェット方式のみに限定されず、またプリント部400のプリント方式も限定されない。例えば、シリアルスキャン方式あるいはフルライン方式などであってもよい。シリアルスキャン方式の場合には、シート1の搬送動作と、シート1の搬送方向と交差する方向におけるプリントヘッド18の走査とを伴って画像をプリントする。フルライン方式の場合には、シート1の搬送方向と交差する方向に延在する長尺なプリントヘッド18を用い、シート1を連続的に搬送しつつ画像をプリントする。
【0015】
プリント部400へ導かれたシート1は、搬送ローラ14によって矢印F1で示される搬送方向へ搬送される。搬送ローラ14に対向するニップローラ(従動ローラ)15は、搬送ローラ14の回転に追従して従動回転可能である。プリントヘッド18の搬送方向(矢印F1の方向)の下流側にはカッター21が配置されており、プリント終了時に動作してシート1をカットする。カッター21のさらに下流側には、図中の矢印E1,E2の方向に回動可能な排紙切替フラップ22が配置されており、CPU201(
図5参照)の制御に基づいて位置が切り替えられる。排紙切替フラップ22は、上面排紙中は矢印E1の方向に回動した位置に位置している。排紙切替フラップ22を通過したシート1は、上面排紙部500によって、プリント部400の上部に設置されるスタッカ28へ排紙される。上面排紙部500とスタッカ28の間には、排紙ローラ25および排紙ニップコロ(従動ローラ)26が備えられており、カットされたシート1を把持して矢印F2で示される排紙方向に排紙する。排紙されたシート1はスタッカ28に収容され、トレイ(排紙トレイ)29および積載紙1aの上部に積載される。
【0016】
図3は、プリント装置100の前面排紙中の概略図である。プリントが完了したシート1はプリント装置100の前面部に設けられた前面排紙支持部161から排紙される。
図4は、プリント装置100の要部の前面排紙中の概略断面図である。カッター21の下流側に配置された排紙切替フラップ22が矢印E2の方向に回動した位置に位置している。排紙切替フラップ22を通過したシート1は前面排紙支持部161の上部を通ってプリント装置100の前面に排紙される。プリントの終了後にカットされたシート1は、シート1の自重によって排紙され、プリンタ下部から引き出し可能な前面排紙収容部30へ収容される。
【0017】
図5は、プリント装置100における制御系の構成例を説明するためのブロック図である。CPU201は、ROM204に記憶された制御プラグラムにしたがって、シート供給装置200、シート搬送部300、プリント部400、上面排紙部500を含むプリント装置100の各部を制御する。CPU201には、操作パネル2から、シート1の種類、幅、および種々の設定情報などが入力インターフェイス202を介して入力される。またCPU201は、RAM203に対して、シート1に関する情報などの書き込みおよび読み出しを行う。排紙ローラ駆動用モータ34は、排紙ローラ25を正転および逆転させるためのモータである。搬送ローラ駆動用モータ35は、搬送ローラ14を正転および逆転させるためのモータである。排紙切替フラップ駆動モータ36は、排紙切替フラップを矢印E1で示す方向または矢印E2で示す方向に回動させる。
【0018】
次に、プリント装置100における上面排紙部の詳細な構成と動作について説明する。
【0019】
図6は上面排紙部500の詳細な構成を示す断面図である。シート1は、上面排紙部500の内部で、半円状の上面排紙経路502を通過してトレイ29まで到達する。高速で排紙を行うプリント装置では、排紙動作中に後続シートの印刷が行われる。
【0020】
本実施形態のプリント装置100は、積載紙1aの後端を押さえるための可動ガイド510を有し、排紙動作中は積載紙1aの後端を押さえる。可動ガイド510は、シート1がトレイ29に排出された後に、一旦積載紙1aから退避し、後続シートが排紙される前に再びシート1(積載紙1a)の後端を押さえるために突出される。突出した可動ガイド510と積載紙1aは、接触点511において接触しており、この点で積載紙1aがトレイ29に加圧され押さえられる。これにより、トレイ29に載置された積載紙1aのカールが抑制され、排紙ローラ25と排紙ニップコロ26から排出される後続のシート1を排紙する経路を確保することができる。また、同時に、トレイ29上の積載紙1aと排紙中のシート1が接触した際に、摩擦力によって積載紙1aがシート1の移動方向にずれてしまい、トレイ29内で整列性が乱れてしまうことを防止することができる。
【0021】
可動ガイド510は、CPU201が可動ガイド駆動モータ513を駆動することにより、突出状態と退避状態に切り替えられる。上面排紙経路502は上面排紙外側ガイド502aと上面排紙内側ガイド502bから形成され、可動ガイド510は上面排紙内側ガイド502bの内部に概ね収まるように配置されている。
【0022】
図7は、上面排紙内側ガイド502bとトレイ29を、
図6のZ軸方向に見下ろした際のX、Y方向の構成図である。
【0023】
図7(a)は、可動ガイド510の退避状態を示している。
図7(b)は、可動ガイド510が突出状態で、トレイ29上の積載紙1aが存在しない状態を示している。
図7(c)は、可動ガイド510が突出状態で、トレイ29上に積載紙1aが積載されている状態を示している。
【0024】
図7(b)に示されるように、複数の排紙ニップコロ26と可動ガイド510と送風口533とがX軸方向に位相をずらして配置されている。複数の可動ガイド510は、それぞれ独立して可動に構成されている。そして、
図7(c)では、積載紙1aを押さえた状態のX軸方向右から8個目までの可動ガイド510に比べ、積載紙1aを押さえていない残りの可動ガイド510が突出している状態が示されている。このように、複数の可動ガイド510をそれぞれ独立させることにより、積載紙1aの幅が大きくなるのに応じて可動ガイド510が積載紙1aを押さえる力の総力が増加する関係にある。そのため、可動ガイド510の1つあたりの押さえる力を比較的弱い一定の力に設定することができ、押さえる力による傷などのリスクを下げることができる。
【0025】
次に、
図8を参照して、送風機構530の詳細な構成について説明する。
図8(a)は、送風機構530の概略図である。送風機構530は、送風ファン531を備えており、送風ファン531からの風がプリント装置100の幅方向に延びる送風ダクト532を介して、複数設置された送風口533から共通して排出される。
【0026】
ここで、送風ファンの数や位置は限定されず、例えば複数の送風ファンの風を一つの送風ダクトに送り、送風口から排出させる構成でもよい。本実施形態では、送風口533からの風速は送風口533の直下でおよそ6.0m/sであるが、風速も限定されない。シート1が安定して浮くのであれば、この風速でなくてもよい。また、送風速度が一定値であることにも限定されず、例えば送風ファンの稼働デューティを可変とし、シート1の紙種や印字内容によって送風量を変更する機構を設けてもよい。
【0027】
図8(b)は、送風機構530と可動ガイド510の位置関係を示す図である。可動ガイド510は、排紙されるシート1の紙幅を考慮して幅方向に配置されるため、送風口533は可動ガイド510の近傍にそれぞれ備えられている。これにより、効果的に排紙されたシートを浮かせることができる。
【0028】
図9は、上面排紙部500の排紙ローラ25の周辺機構の概略図である。排紙ローラ25および排紙ニップコロ26を通過したシート1とトレイ29の間に送風口533が配置されている。排紙ローラ25から排紙されたシート1は、送風口533からの送風によりトレイ29との接触圧が低減された状態で、トレイ29上に搬送され積載される。
【0029】
送風口533から送風される風の向きである第3の方向536は、排紙ローラ25からシート1が排出される第1の方向534と、トレイ29にシート1が積載される第2の方向535の中間の角度となる。
【0030】
第3の方向536は、シート1とトレイ29が接触する点と送風口533をつなぐ方向となる。第1の方向534と第2の方向535は、略45°傾いてその延長線が交差している。ただし、トレイ29(第2の方向535)と排紙ニップローラ25が搬送する方向(第1の方向534)の傾きは45°に限定されず、45°より大きくても小さくてもよい。その場合、送風機530の傾きを調整する機構を設けることにより、第3の方向を調整することができ、排紙されるシート1の種類や長さによって最適な方向に送風することが可能となる。
【0031】
図10は、送風口533と排出ローラ25の近傍の構造を示す概略図である。送風口533は、排紙ニップコロ26の外形より突出しないように配置される。これにより、排紙されたシートが送風口533に乗り上げることを防止することができる。なお、排紙ローラ25と排紙ニップコロ26が入れ替わり、排紙ローラ25が紙面下側に位置する場合は、送風口533が排紙ローラ25の外形より突出しないように配置される。
【0032】
次に、
図11を参照して、可動ガイド510の詳細な構成について説明する。
図11は、可動ガイド510の詳細な構成を示す図である。積載紙1aを押さえる可動ガイドの先端に位置するフラップ部510aは、回動中心510dを中心として矢印F1,F2で示す方向に回動可能となるように、スライド部510bに連結されている。フラップ部510aは、
図11(b)に示すように、スライド部510bとの間に取り付けられた付勢バネ510eによって矢印F1で示す方向に付勢されている。
図11(b)の状態は、フラップ部510aがスライド部510bに突き当たって停止している状態を示しているが、フラップ部510aに対してZ軸方向に力が加わると、矢印F2で示す方向に回動することができる。
【0033】
このようにフラップ部510aが可動であることにより、可動ガイド510は、次のように機能する。つまり、可動ガイド510がシート1および積載紙1aを押さえる際は、シート1および積載紙1aのカールの上側からカールを押しつぶすように機能する。一方、可動ガイド510を退避させる際には、シート1の重みによってフラップ部510aが矢印F2で示す方向に回動し、フラップ部510aをシート1と積載紙1aから引き抜くように機能する。
【0034】
スライド部510bは、駆動連結部510cに対して矢印S1で示す方向と矢印S2で示す方向に円弧状の軌跡で移動可能であり、付勢バネ(弾性部材)510fによって矢印S1で示す方向に付勢されている。
図11の状態では、スライド部510bは駆動連結部510cに設けられたストッパーに突き当たって停止している。そして、可動ガイド510がシート1および積載紙1aを押さえる際に、フラップ部510aと一体のスライド部510bが矢印S2で示す方向に移動する。一方で、スライド部510bは付勢ばね510fによって矢印S1で示す方向に押されているので、可動ガイド510とトレイ29間でシート1および積載紙1aを把持することができる。スライド部510bは、積載紙1aの厚みが増加すると矢印S2で示す方向への移動量が増加し、付勢バネ510fによって発生するバネ力も増加する。そのため、積載紙1aが厚紙の場合や枚数が多い場合などのように積載紙1aの持つカール力が大きい場合に、より強い押さえ力を発生させることができる。
【0035】
トレイ29に積載紙1aが1枚存在し、可動ガイド510が積載紙1aをトレイ29に密着させるまで(第1突出位置まで)突出している第1突出状態を
図12(a)に示す。トレイ29に積載紙1aが1枚存在し、可動ガイド510が、フラップ部510aとトレイ29の間にLtで示す隙間が空くように(第2突出位置に)突出している第2突出状態を
図12(b)に示す。トレイ29上に積載紙1aが100枚程度存在し、可動ガイド510が突出している状態を
図16(c)に示す。さらに、可動ガイド510が退避した状態を
図13に示す。
【0036】
図12では、退避状態の駆動連結部510cの稜線を点線、突出状態(突出位置)での駆動連結部510cの点線と同じ稜線を一点鎖線で示している。
図12(a)と
図12(c)では、点線と一点鎖線で形成される角度θ1は一致しているが、
図12(c)では、シートの積載枚数に応じてフラップ部510aおよびスライド部510bが矢印S2で示す方向にスライドする。
【0037】
図12(a)の第1突出状態では、積載紙1aが、接触点511においてフラップ部510aとトレイ29の間で挟み込まれて可動ガイド510に把持される。そのため、積載紙1a上をシート1が通過する際に、シート1と積載紙1a間に発生する摩擦で積載紙1aが動くことはない。一方、
図12(b)の第2突出状態では、可動ガイド510によって積載紙1aは把持されず、フラップ部510aとトレイ29の間にLtで示す隙間が形成される。
【0038】
本実施形態では、トレイ29のシート最大積載枚数が100枚に設定されており、トレイ29上に略10mm程度の厚みの積載紙1aが積載される。そのため、Ltの寸法を10mm以上に設定することにより、積載紙1aの枚数に関わらず、積載紙1aが可動ガイド510によって把持されない状態とすることができる。
【0039】
図12(b)の第2突出状態では、積載紙1aの端部1bが排紙ローラ25と排紙ニップコロ26の接触する点から離間するように、フラップ部510aのZ軸方向下側の稜線である破線が排紙ローラ25と排紙ニップコロ26の接触する点よりY軸方向左側に位置するように可動ガイド510を位置させる。排紙直後のシート1の端部1bは排紙ローラ25と排紙ニップコロ26の接触する点に位置するため、第2突出状態まで可動ガイド510を移動させると、積載紙1aの端部1bは
図12(b)のようにフラップ部510aと接触し押し出される。これにより、積載紙1aの端部1bが排紙ローラ25と排紙ニップコロ26の接触する点から離間する。
【0040】
図12(a)と
図12(b)に示す可動ガイド510の位置の切替は、駆動連結部510cの点線と稜線で形成される角度θ1および角度θ2を見ればわかる通り、駆動連結部510cの回転位相を変更することによって行われる。
図12(a)と
図12(b)では、回転位相角がθ1>θ2という関係となる。可動ガイド510の回転位相の位置出しは次のようにして行われる。つまり、まず可動ガイド510の位置を検知する位置検知センサ515(
図5参照)によって、駆動連結部510cが
図13の退避位置にあることを検知する。そして、そこを原点として、所定の角度(θ1あるいはθ2)回転させることにより可動ガイド510の位置出しをする。所定の角度は、可動ガイド510の駆動手段がパルスモータであれば駆動パルス数などで管理すればよい。また、DCモータであれば、エンコーダなどをつけて管理すればよい。また駆動連結部510cが角度θ1あるいは角度θ2にあることを検知する検知手段を設けてもよい。
【0041】
図14は、可動ガイド510の駆動部の構成を示す図である。X軸方向に複数配置された可動ガイド510は、可動ガイド軸514に一律な向きで取り付けられている。可動ガイド軸514に取り付けられたギアは、ギア列からなる駆動部512を介して可動ガイド駆動モータ513と接続されている。可動ガイド駆動モータ513を駆動して可動ガイド軸514を矢印P1で示す方向に回転させることにより、可動ガイド510は並列して突出し、矢印P2で示す方向に回転させることにより退避する。可動ガイド510は並列して可動ガイド軸の駆動量だけ回動されるが、可動ガイド510は、付勢バネ510fを備えるため、積載紙1aの厚みに応じて可動ガイド510の先端の変位が許容される。可動ガイド510を突出させてシート1および積載紙1aを押さえる際に、付勢バネ510fの反力を駆動連結部510cが受ける。そのため、駆動連結部510cと連結された可動ガイド軸514は、矢印P2で示す方向に回転しようとする押さえ時トルクTnを受ける。押さえ時トルクTnが駆動部512および可動ガイド駆動モータ513の発生する静止トルクを上回ると、可動ガイド軸514は矢印P2で示す方向に回転してしまう。そのため、付勢バネ510fのシートを押さえる力が弱まり、結果的にシート1および積載紙1aを押さえる力が不十分になってしまう。
【0042】
そこで、本実施形態では、駆動部512に、トルクリミッタ512aおよびワンウェイクラッチ512bを設けている。トルクリミッタ512aは所定トルク以上のトルクが作用するとスリップするが、そのすべりトルク値Tlは、可動ガイド駆動モータ513の駆動時の最大トルク値Tmax以下に設定される。また、トルクリミッタ512aと連結して設けられたワンウェイクラッチ512bは、可動ガイド軸514を矢印P1で示す方向に回転させる際は、トルクリミッタ512aと、可動ガイド駆動モータ513および可動ガイド軸514との駆動連結を遮断する。また、矢印P2方向に回転させる際はトルクリミッタ512aと、可動ガイド駆動モータ513および可動ガイド軸514との駆動連結を保持する。これにより可動ガイド510を突出させ積載紙1aを押さえる際には、可動ガイド駆動モータ513に、トルクリミッタ512aのすべりトルク値Tlの負荷がかからず、駆動トルクを最大トルク値Tmaxよりもその分減らした値に設定することができる。
【0043】
ここで、可動ガイド軸514が回転する際の機械的負荷トルク値Tmを、トルクリミッタ512aのすべりトルク値Tlを除く駆動部512、および可動ガイド510をシート1を押さえることなく純粋に駆動させるために必要な駆動負荷トルクと定義する。また、可動ガイド駆動モータ513の持つ静止トルク値をTdと定義する。
【0044】
トルク値を全て可動ガイド軸514上のトルク値として換算すると以下のような関係式が成り立つ。
【0045】
P1回転方向:Tmax>Tn+Tm …(1)
突出状態で停止中:Tl+Tm+Td>Tn …(2)
P2回転方向:Tmax>Tl+Tm …(3)
式(1)、(3)から、押さえ時トルクTnとすべりトルクTlは、略同等に設定することが可能であることがわかる。また、可動ガイド510の突出状態で停止中に必要な機械的負荷トルクTmとモータの静止トルクTdは押さえ時トルクTnに比べ低値に設定すればいいことがわかる。
【0046】
一方で、トルクリミッタ512aを備えない場合は、式(2)からすべりトルクTlがなくなるため、機械的負荷トルクTmとモータの静止トルクTdを、押さえ時トルクTnを超えるように設定しなければならない。つまり、押さえ時トルクTnが大きくなると機械的負荷トルクTm、モータの静止トルクTdを大きくする必要がある。機械的負荷トルクTmを大きくしようとすると、式(1)、(3)から必要な可動ガイド駆動モータ513の最大トルクTmaxも増大する。モータの静止トルクTdを大きくしようとすると、停止中も可動ガイド駆動モータ513を励磁させるなどのモータの消費電力が増加するような構成が必要となる。これに対し、本実施形態では、そのような構成が不要であり、必要最小限の最大トルク値Tmaxを備えた可動ガイド駆動モータ513を選定することが可能となる。
【0047】
次に、上面排紙動作のシーケンスについて説明する。
図15は、プリント装置100の印刷シーケンスにおける排紙部の動作に関するフローチャートである。
【0048】
印刷JOBの受信時に、印刷に用いられる用紙種類およびインク吐出濃度を検出し(ステップS201)、接触する他のシート1、トレイ29などへのインク転写が発生する条件か否かを判定する(ステップS202)。例えば
図16に示すテーブルを参照して、インク定着性とインク吐出モードに応じてインク転写が発生する条件か否かを判定する。
【0049】
そして、ステップS202の判定結果に基づいて、排紙シーケンスA(ステップS203)または排紙シーケンスB(ステップS204)を選択する。排紙シーケンスAおよび排紙シーケンスBの詳細な動作については後述する。排紙シーケンスBを選択する場合、後述する可動ガイド510の待機時間Tcも決定する。選択した排紙シーケンスに基づき排紙動作を印刷動作と並行して行う。
【0050】
排紙動作が完了すると、次の用紙の排紙準備を行う。可動ガイド510がトレイ29に積載されたシート1の後端を押さえた状態で後続紙の排紙を開始するため、次の用紙の搬送長に基づいて後続の用紙の先端位置が排紙ローラ25を超えるか否かを判定する(ステップS205)。
【0051】
可動ガイド510が第1突出状態であるかを検出し(ステップS206)、可動ガイド510が第1突出状態でない場合は、可動ガイド510が第1突出状態に移動するまで用紙の搬送を停止する(ステップS207)。
【0052】
可動ガイド510が第1突出状態でシート1の後端を押さえた後に、次のインク吐出位置まで後続の用紙を搬送し(ステップS208)、プリントヘッド18によりインク吐出を行う(ステップS209)。
【0053】
印刷完了判定を行い(ステップS210)、印刷が完了していなければステップS205からステップS210を繰り返す。
【0054】
ステップS210で印刷が完了した後、カット位置まで用紙を搬送し用紙カットを行う(ステップS211)。用紙カット後、ステップS202で決定した排紙シーケンスにおいて可動ガイド510の突出時に待機時間Tcが必要な場合は、用紙カット後の搬送再開前に、待機時間Tcのカウントを行い(ステップS212)、その後、用紙の搬送を再開させる(ステップS213)。
【0055】
用紙の排出が完了後、未完了の印刷JOBが残っているか否かを確認する(ステップS214)。未完了の印刷JOBが残っている場合はステップS201に戻り、未完了の印刷JOBが残っていない場合は印刷終了となる。
【0056】
次に、ステップS203で選択される排紙シーケンスAについて
図17を参照して説明する。また、ステップS204で選択される排紙シーケンスBについて
図18を参照して説明する。
【0057】
排紙シーケンスAについて説明する。排紙動作開始時は、
図19のように可動ガイド510を、その先端がトレイ29に接触する位置、または積載紙1aの後端を押さえる第1突出状態となる第1押さえ位置に移動させる。この際、可動ガイド駆動モータ513の駆動後に励磁をOFFにすることにより、消費電力を削減できる(ステップS1)。
【0058】
可動ガイド510が第1突出状態となった後に、排紙ローラ25の駆動を開始し(ステップS2)、排紙動作を行う。排紙動作時は、排紙ローラ25の近傍から印刷面に向けて印刷面の乾燥を目的としたエアーを供給するための送風ファン531をONにする(ステップS3)。この状態で印刷終了後のカットが完了するまで待機する(ステップS4)。
【0059】
図20のように、排紙ローラ25の上流側にある排紙中用紙センサ520によってシート1の後端を検知後(ステップS5)、
図21のように、シート1がトレイ29上に排紙される規定時間が経過するのを待つ。そして、送風ファン531をOFFとし、エアーの供給を停止させる(ステップS6)。排紙後に送風ファン531をOFFにしないと、可動ガイド510が退避する時に、可動ガイド510の上に排紙されたシート1の下部にエアーが入りすぎてしまい、可動ガイド510で再びシートを押さえる際に空振りしてしまう等の悪影響が考えられる。
【0060】
シート1がトレイ29に排紙された後、排紙ローラ25の駆動を停止させ(ステップS7)、可動ガイド510を退避させる。このとき、
図22のようにトレイ29に排紙されたシート1の下に潜り込んでいる可動ガイド510を、排紙ローラ25側に回動させ、
図23のようにシート1から完全に抜ける退避位置まで退避させる。
図22のように、可動ガイド510のフラップ部510aがシート1の重みによって逃げるように回動することにより、フラップ部510aと下流ガイド521の間でシート1を挟み傷つけることなく、可動ガイド510を引き抜くことが可能である。
図23の状態では、シート1の端部カールが可動ガイド510によって全く押さえられていない状態となるが、下流ガイド521によってシート1の端部位置が規制される。
【0061】
可動ガイド510を退避位置に移動させた後、可動ガイド510を動作させる可動ガイド駆動モータ513の励磁をOFFにする(ステップS8)。ステップS6からステップS8の順序は、シート1の後端がカールしていても、可動ガイド510が退避した時にシート1の後端が排紙ローラ25に当たり、シート1が搬送方向に押し出されたり、傷が生じないようにするための順序である。
【0062】
可動ガイド510が退避状態において、未完了の印刷JOBが残っているか確認する(ステップS9)。未完了の印刷JOBが残っている場合、次の印刷で排紙シーケンスAを選択するか排紙シーケンスBを選択するかを確認する(ステップS10)。排紙シーケンスAが選択される場合は再びステップS1に戻り、排紙シーケンスBが選択される場合は排紙シーケンスBのステップS101に移行する。
【0063】
可動ガイド510を退避位置から第1押さえ位置へ移動させる時は、
図24のように可動ガイド510でシート1のカールした後端を押し込み、
図25の状態を経て、最終的に
図26のように可動ガイド510の先端でシート1を押さえる。
【0064】
図27は、
図24の排紙ローラ25の周辺部を拡大して示した図である。下流ガイド521付近のカールしたシート1の後端部1bと、排紙ローラ25の脇を通って回動してきたフラップ部510aが接触する。フラップ部510aとカールしたシート1の後端部1bの接線である一点鎖線の形成する角度θ3は90°よりやや小さく、鋭角に接触するため、カールを上から押しつぶすことなく、後端部1bが矢印Jで示す方向に逃げていく。そのため、シート1は
図25から
図26のよう移動する。この時、トレイ29と下流ガイド521の隙間Lcを、シート1の取りうるカール半径Rよりも小さい関係にすることで、後端部1bの接線とトレイ29が形成する角度θ4は、略90°より小さくなる。
【0065】
本実施形態では、フラップ部510aの回動する軌跡の中の
図27の位相では、トレイ29とフラップ部510aの押さえ面が略平行なため、角度θ3を略90°より小さく保つことが可能である。
【0066】
ステップS9で未完了の印刷JOBが残っていない場合は排紙シーケンスAが終了となる。排紙シーケンスAでは可動ガイド510が退避状態になった直後に、可動ガイド510が再度第1の突出状態に移動されるため、シート1と積載紙1aが可動ガイド510で把持されていない時間が短時間である。そのため、積載紙1aが外乱(プリント装置100の振動、ユーザによる積載紙1aの取り出しによる揺れ、空調などの空気流の力)によって動く機会が少なく、一連の動作時間が短時間で完了するという利点がある。
【0067】
次に、排紙シーケンスBについて説明する。排紙シーケンス開始から可動ガイドを退避状態に移動させるステップS101からステップS108は、排紙シーケンスAのステップステップS1からステップS8までと同様である。
【0068】
可動ガイド510が退避状態で未完了の印刷JOBが残っているか否かを確認する(ステップS109)。
【0069】
未完了の印刷JOBが残っている場合は、可動ガイド510を
図25のように第2突出状態となる第2押さえ位置まで回動させ、可動ガイド駆動モータ513の励磁をOFFにする(ステップS110)。
【0070】
後続紙の排紙のため、可動ガイド510が第2押さえ位置の状態で排紙ローラ25を駆動させ(ステップS111)、印刷を再開する(ステップS112)。
【0071】
可動ガイド510を、インク転写防止のために第2押さえ位置で待機させ(ステップS113)、待機時間Tcの経過後(所定時間停止した後)に第1押さえ位置に戻す。なお、用紙の種類によってインクの乾燥状態が異なるため、待機時間Tcは、用紙の種類に応じて設定される。
【0072】
次の印刷が排紙シーケンスAを選択するか排紙シーケンスBを選択するかを確認し(ステップS114)、排紙シーケンスAが選択される場合は、排紙シーケンスAのステップS1に戻り、排紙シーケンスBが選択される場合は、ステップS101に戻る。
【0073】
ステップS109で未完了の印刷JOBが残っていない場合は排紙シーケンスBを終了する。
【0074】
排紙シーケンスBでは、シート1と積載紙1aが可動ガイド510で把持されていない時間を設けることにより、印刷直後に排紙されたシート1を乾燥させることができる。これにより、シート間または積載トレイへのインク転写を防ぐことが可能となる。一方で、インク乾燥が進むまでシート1と積載紙1aが可動ガイド510によって把持されないため、外乱によってシートが動く機会が排紙シーケンスAより多い。また、インク乾燥が完了し可動ガイド510が第1押さえ状態になるまで、トレイ29上に次のシート1を排紙できないため、一連の動作時間が長くなる。
【0075】
以上説明したように、本実施形態によれば、排紙シーケンスAでは、インク定着の良いシートに対して、安定的かつ高速に印刷済みのシートの積載を行うことができる。また、排紙シーケンスBではインク定着が悪いシートにおいても、可動ガイドを第2押さえ位置で止めることにより、シート間または積載トレイへのインク転写を防止することができ、かつシートに傷を生じさせることなく安定したシートの積載を行うことができる。
【0076】
(他の実施形態)
また本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現できる。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現できる。
【0077】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0078】
1:シート、1a:積載紙、14:搬送ローラ、15:ニップローラ、18:プリントヘッド、21:カッター、25:排紙ローラ、26:排紙ニップコロ、29:トレイ、100:プリント装置、510:可動ガイド、530:送風機構、531:送風ファン、533:送風口