(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】樹脂製薄厚シート部材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0284 20160101AFI20241218BHJP
H01M 8/0273 20160101ALI20241218BHJP
B29C 45/27 20060101ALI20241218BHJP
B29C 45/37 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
H01M8/0284
H01M8/0273
B29C45/27
B29C45/37
(21)【出願番号】P 2020182931
(22)【出願日】2020-10-30
【審査請求日】2023-04-17
(31)【優先権主張番号】P 2019199706
(32)【優先日】2019-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000106988
【氏名又は名称】シミズ工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003034
【氏名又は名称】東亞合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100183232
【氏名又は名称】山崎 敏行
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】池原 陽一
(72)【発明者】
【氏名】▲つつみ▼ 篤史
(72)【発明者】
【氏名】北出 智弘
(72)【発明者】
【氏名】淺川 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】谷澤 直紀
(72)【発明者】
【氏名】山家 裕之
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-207445(JP,A)
【文献】特開平05-200789(JP,A)
【文献】特開2003-071886(JP,A)
【文献】特開平06-278163(JP,A)
【文献】特開2005-319727(JP,A)
【文献】特開2001-074915(JP,A)
【文献】実開昭53-060568(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/02
B29C 45/00
F16J 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する一対の主面を備え、
前記一対の主面間の最大間隔である最大厚さが40μm以上450μm以下であり、
前記一対の主面に正対する方向から見たときに、一つの縁部と該一つの縁部と対向する他の縁部とが対向する方向に間隔を開けて配置された複数の
線状のコヒーレント模様線が現れ、かつ前記複数の線状のコヒーレント模様線のうちの互いに隣接する一対が交差していない領域を有する、樹脂製薄厚シート部材。
【請求項2】
前記領域は前記一対の主面の総面積の50%以上である、請求項1に記載の樹脂製薄厚シート部材。
【請求項3】
熱可塑性樹脂の射出により形成された、請求項1又は2に記載の樹脂製薄厚シート部材。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂は、メルトマスフローレートが1g/10min以上300g/10min以下であって、融解熱量が0mj/mg以上150mj/mg以下である、請求項3に記載の樹脂製薄厚シート部材。
【請求項5】
樹脂製薄厚シート部材が成形される製品部と、成形機射出ユニットと連通したゲート・ランナー部と、前記ゲート・ランナー部と連通すると共に、前記製品部の一つの縁部と連通するランド部とを有するキャビティを画定し、前記ランド部の厚さは前記製品部の厚さよりも大きい成形用型を準備し、
前記ゲート・ランナー部に前記成形機射出ユニットから溶融した樹脂を供給し、前記溶融した樹脂は、前記ランド部に充填された後に、前記一つの縁部から前記製品部に流入し、前記製品部の前記一つの縁部と対向する他の縁部に向かって流れる、樹脂製薄厚シート部材の製造方法。
【請求項6】
前記ランド部の厚さは、前記製品部の厚さの1.3倍以上24倍以下である、請求項5に記載の樹脂製薄厚シート部材の製造方法。
【請求項7】
前記ランド部の平均厚さは、300μm以上1200μm以下である、請求項5又は6に記載の樹脂製薄厚シート部材の製造方法。
【請求項8】
前記ランド部は、前記製品部の内側周縁部の全域と連通し、
前記溶融した樹脂は、前記ランド部に充填された後に、前記
内側周縁部から前記製品部に流入し、前記製品部の
外側周縁部に向かって流れる、請求項5から7のいずれか1項に記載の樹脂製薄厚シート部材の製造方法。
【請求項9】
前記ランド部は、前記製品部の外側周縁部の全域と連通し、
前記溶融した樹脂は、前記ランド部に充填された後、前記
外側周縁部から前記製品部に流入し、前記製品部の
内側周縁部に向かって流れる、請求項5から7のいずれか1項に記載の樹脂製薄厚シート部材の製造方法。
【請求項10】
前記製品部の外側周縁部は複数の縁部により構成され、
前記ランド部は前記製品部の前記外側周縁部の一部を構成する一つの縁部と連通し、
前記溶融した樹脂は、前記ランド部に充填された後、前記一つの縁部から、前記
外側周縁部の一部を構成する前記一つの縁部と対向する他の縁部に向かって流れる、請求項5から7のいずれか1項に記載の樹脂製薄厚シート部材の製造方法。
【請求項11】
前記樹脂は、メルトマスフローレートが10g/10min以上300g/10min以下であって、融解熱量が0mj/mg以上150mj/mg以下の熱可塑性樹脂である、請求項5から10のいずれか1項に記載の樹脂製薄厚シート部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製薄厚シート部材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂製薄厚シート部材の一例である燃料電池用ガスケットの製造方法としては、押出成形した薄厚樹脂フィルムをプレス加工により所望の形状とすることが知られている。また、特許文献1には、射出成形による燃料電池用ガスケットの製造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
押出成形した薄厚樹脂フィルムのプレス加工より製造した燃料電池用ガスケットは、寸法安定性に劣る。
【0005】
燃料電池用ガスケットは、厚さが薄いことが燃料電池の小型化の観点から好ましい。しかし、特許文献1に開示されている射出成形によって製造した燃料電池用ガスケットは、最小厚さが0.2mmであり、さらなる薄厚化の余地がある。
【0006】
本発明は、良好な寸法安定性を有する薄厚の樹脂製薄厚シート部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、互いに対向する一対の主面を備え、前記一対の主面間の最大間隔である最大厚さが40μm以上450μm以下であり、前記一対の主面に正対する方向から見たときに、一つの縁部と該一つの縁部と対向する他の縁部とが対向する方向に間隔を開けて配置された複数の線状のコヒーレント模様線が現れ、かつ前記複数の線状のコヒーレント模様線のうちの互いに隣接する一対が交差していない領域を有する、樹脂製薄厚シート部材を提供する。
【0008】
具体的には、前記領域は前記一対の主面の総面積の50%以上である。
【0009】
樹脂製薄厚シート部材が前述のようにコヒーレント模様線が現れる領域を有するのは、樹脂製薄厚シート部材が、押出成形した薄厚樹脂フィルムのプレス加工により製造したものではなく、後述するような態様の射出成形、つまり、本発明の第2の態様の製造方法に係る射出成形で製造したことに起因する。かかる射出成形により製造した本発明の樹脂製薄厚シート部材は、押出成形した薄厚樹脂フィルム製の樹脂製薄厚シート部材と比較して、優れた寸法安定性を有する。
【0010】
本発明に係る樹脂製薄厚シート部材は、最大厚さが40μm以上450μm以下、つまり従来の射出成形により製造した樹脂製薄厚シート部材よりもさらに薄厚化されている。そのため、本発明に係る樹脂製薄厚シート部材は、燃料電池用ガスケットとして使用される場合、燃料電池の小型化に寄与し得る。
【0011】
本発明の第2の態様は、樹脂製薄厚シート部材が成形される製品部と、成形機射出ユニットと連通したゲート・ランナー部と、前記ゲート・ランナー部と連通すると共に、前記製品部の一つの縁部と連通するランド部とを有するキャビティを画定し、前記ランド部の厚さは前記製品部の厚さよりも大きい成形用型を準備し、前記ゲート・ランナー部に前記成形機射出ユニットから溶融した樹脂を供給し、前記溶融した樹脂は、前記ランド部に充填された後に、前記一つの縁部から前記製品部に流入し、前記製品部の前記一つの縁部と対向する他の縁部に向かって流れる、樹脂製薄厚シート部材の製造方法を提供する。
【0012】
溶融した樹脂は、ランド部に充填された後に、製品部の一つの縁部から製品部に流入し、製品部の一つの縁部と対向する他の縁部に向かって流れる。その結果、製品部内において一つの縁部から他の縁部に向かう一方向の樹脂の流れが生じ、この流れの方向に樹脂の配向が揃う。このように樹脂の配向が揃うことで、押出成形した薄厚樹脂フィルム製の樹脂製薄厚シート部材と比較して、優れた寸法安定性を有する樹脂製薄厚シート部材が得られる。
【0013】
本発明の第2の態様の製造方法により得られた樹脂製薄厚シート部材は、前述のように樹脂の配向が一方向に揃っている。そのため、樹脂製薄厚シート部材は、樹脂が配向している方向、つまり製品部の一つの縁部と、この一つの縁部と対向する他の縁部とが対向する方向(樹脂製薄厚シート部材の一つの縁部と、この一つの縁部と対向する他の縁部とが対向する方向)に間隔を開けて配置された複数のコヒーレント模様線が現れ、かつこれらのコヒーレント模様線のうちの互いに隣接する一対が交差していない領域を有する。
【0014】
前記ランド部の厚さは、前記製品部の厚さの1.3倍以上24倍以下に設定できる。
【0015】
前記ランド部の平均厚さは、300μm以上1200μm以下に設定できる。
【0016】
前記ランド部は、前記製品部の内側周縁部の全域と連通し、前記溶融した樹脂は、前記ランド部に充填された後に、前記内側周縁部から前記製品部に流入し、前記製品部の外側周縁部に向かって流れてもよい。
【0017】
前記ランド部は、前記製品部の外側周縁部の全域と連通し、前記溶融した樹脂は、前記ランド部に充填された後、前記外側周縁部から前記製品部に流入し、前記製品部の内側周縁部に向かって流れてもよい。
【0018】
前記製品部の外側周縁部は複数の縁部により構成され、前記ランド部は前記製品部の前記外側周縁部の一部を構成する一つの縁部と連通し、前記溶融した樹脂は、前記ランド部に充填された後、前記一つの縁部から、前記外側周縁部の一部を構成する前記一つの縁部と対向する他の縁部に向かって流れてもよい。
【0019】
前記樹脂は、メルトマスフローレートが10g/10min以上300g/10min以下であって、融解熱量が0mj/mg以上150mj/mg以下の熱可塑性樹脂であってもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、良好な寸法安定性を有し、最大厚さが40μm以上450μm以下の薄厚化された樹脂製薄厚シート部材が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るシート部材(燃料電池用ガスケット)の模式的な斜視図。
【
図3】第1実施形態に係るシート部材を製造するための成形用型の模式的な平面図。
【
図5】射出成形時の樹脂の配向を説明するための下型の模式的な平面図。
【
図6】成形用型から取り出された際のシート部材の模式的な平面図。
【
図8】第1実施形態のシート部材の製造に使用できる成形用型の他の例の
図4と同様の断面図。
【
図9】第1実施形態のシート部材の製造に使用できる他の成形用型(下型)の
図5と同様の模式的な平面図。
【
図10】
図9の成形用型から取り出された際のシート部材の模式的な平面図。
【
図12】第1実施形態のシート部材の製造に使用できる他の成形用型(下型)の
図5と同様の模式的な平面図。
【
図13】
図12の成形用型から取り出された際のシート部材の模式的な平面図。
【
図14】第1実施形態のシート部材の製造に使用できる成形用型の他の例の
図4と断面図。
【
図15】
図14の成形用型から取り出された際のシート部材の模式的な平面図。
【
図19】本発明の第2実施形態に係るシート部材の模式的な斜視図。
【
図20】第2実施形態のシート部材の製造に使用できる成形用型(下型)の
図5と同様の模式的な平面図。
【
図21】
図20の成形用型から取り出された際のシート部材の模式的な平面図。
【
図22】第2実施形態のシート部材の製造に使用できる他の成形用型(下型)の
図5と同様の模式的な平面図。
【
図23】
図22の成形用型から取り出された際のシート部材の模式的な平面図。
【
図24】本発明の第3実施形態に係るシート部材の模式的な斜視図。
【
図25】第3実施形態に係るシート部材を製造するための成形用型の模式的な平面図。
【
図27】第3実施形態のシート部材の製造に使用できる成形用型(下型)の
図5と同様の模式的な平面図。
【
図28】
図27の成形用型から取り出された際のシート部材の模式的な平面図。
【
図30】第3実施形態に係るシート部材を製造するための他の成形用型の模式的な平面図。
【
図32】
図31の成形用型から取り出された際のシート部材の模式的な平面図。
【
図34】本発明の第4実施形態に係るシート部材の模式的な斜視図。
【
図35】第4実施形態に係るシート部材を製造するための成形用型の模式的な平面図。
【
図37】第4実施形態のシート部材の製造に使用できる成形用型(下型)の
図5と同様の模式的な平面図。
【
図38】
図37の成形用型から取り出された際のシート部材の模式的な平面図。
【
図40】第4実施形態の変形例に係るシート部材の模式的な平面図。
【
図41】第4実施形態の他の変形例に係るシート部材の模式的な平面図。
【
図42】本発明の第5実施形態に係るシート部材の模式的な斜視図。
【
図43】第5実施形態のシート部材の製造に使用できる成形用型(下型)の
図5と同様の模式的な平面図。
【
図44】
図43の成形用型から取り出された際のシート部材の模式的な平面図。
【
図45】第5実施形態の変形例に係るシート部材の模式的な斜視図。
【
図46】本発明の第6実施形態に係るシート部材の模式的な斜視図。
【
図47】第6実施形態に係るシート部材を製造するための成形用型の模式的な平面図。
【
図48】
図47のXXXXVIII-XXXXVIII線での断面図。
【
図49】
図48の成形用型から取り出された際のシート部材の模式的な平面図。
【
図51】本発明の第7実施形態に係るシート部材の模式的な斜視図。
【
図52】第7実施形態に係るシート部材を製造するための成形用型の模式的な平面図。
【
図54】第7実施形態のシート部材の製造に使用できる成形用型(下型)の
図5と同様の模式的な平面図。
【
図55】
図49の成形用型から取り出された際のシート部材の模式的な平面図。
【
図56】本発明の第8実施形態に係るシート部材の模式的な斜視図。
【
図57】第8実施形態に係るシート部材を製造するための成形用型の模式的な平面図。
【
図59】第8実施形態のシート部材の製造に使用できる成形用型(下型)の
図5と同様の模式的な平面図。
【
図60】
図59の成形用型から取り出された際のシート部材の模式的な平面図。
【
図61】評価試験に使用したガスケットの模式的な平面図。
【
図62】評価試験に使用した比較例の模式的な平面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0023】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る樹脂製薄厚シート部材1(以下、単にシート部材1という。)を示す。本実施形態のシート部材1は、燃料電池用ガスケットである。
【0024】
シート部材1は、後述するように、熱可塑性樹脂の射出成形により製造したものである。
【0025】
シート部材1は、他の面よりも十分に大きな面積を有する互いに対向する2の面、つまり一対の主面1a,1bを有する。本実施形態では、主面1a,1b間の間隔、つまりシート部材1の厚さTHmは一定ないし均一である。シート部材1(ガスケット)は、従来の射出成形により製造したガスケットよりも薄厚化されている。つまり、シート部材1の厚さTHmは、40μm以上450μm以下に設定されている。シート部材1の厚さTHmは、好ましくは50μm以上350μm以下、より好ましくは100μm以上200μm未満に設定される。シート部材1の厚さTHmは必ずしも均一である必要はない。つまり、シート部材1の異なる部分が異なる厚さTHmを有していてもよい。シート部材1の厚さTHmが均一でない場合、最大厚さ、つまり厚さTHmの最大値(主面1a,1b間の最大間隔)は、40μm以上450μm以下、好ましくは50μm以上350μm以下、より好ましくは100μm以上200μm未満に設定される。
【0026】
本実施形態のシート部材1の全体的な形状は平坦な矩形枠状であり、シート部材1の長手方向に延びる一対の長手部2A,2Bと、シート部材1の短手方向に延びてそれぞれ長手部2A,2Bの端部を接続する一対の短手部3A,3Bを備える。本実施形態のシート部材1は、主面2a,2bに正対する方向から見ると、いずれも長方形状の内側周縁部4と、外側周縁部5とを備える。
【0027】
次に、本実施形態のシート部材1の製造方法(射出成形方法)を説明する。
【0028】
図3から
図5を参照すると、本実施形態では、シート部材1を射出成形するための成形用型100は、上型101と下型102とを備える。本実施形態では、上型101と下型102とによって画定されるキャビティ103は、1個の製品部104、複数個(10個)のゲート・ランナー部105、及び1個のランド部106を有する。
【0029】
製品部104は、シート部材1が成形される部分であり、シート部材1と実質的に同一の寸法及び形状を有する。特に、製品部104は、シート部材1の内側周縁部4と外側周縁部5にそれぞれ対応する、内側周縁部104aと外側周縁部104bを有する。内側周縁部104aと外側周縁部はいずれも、平面視で矩形状である。また、製品部104の厚さTHpは、シート部材1の厚さTHmと実質的に同一である。つまり、製品部104の厚さTHpの最大値は40μm以上450μm以下、好ましくは50μm以上350μm以下、より好ましくは100μm以上200μm未満に設定される。
【0030】
本実施形態では、平面視で製品部104の内側に、ゲート・ランナー部105が配置されている。
【0031】
個々のゲート・ランナー部105は、上型101に設けられたスプール機構107を介して、図示しない成形機射出ユニットと流体的に連通している。成形機射出ユニットからゲート・ランナー部105に、溶融した熱可塑性樹脂が供給される。このスプール機構107は、上型101と下型102とが型締めされている状態の場合にのみ、熱可塑性樹脂がゲート・ランナー部105に供給する。そのため、後述する第2非製品部109にはスプール機構107の出口孔の形状に対応する痕跡が残る。
【0032】
個々のゲート・ランナー部105はランド部106に流体的に連通している。
【0033】
本実施形態では、平面視で製品部104の内側にランド部106が配置されている。ランド部106はゲート・ランナー部105と製品部104との間に介在している。ランド部106は、平面視で矩形状であり、製品部104の内側周縁部の全域と連通している。
【0034】
ランド部106の厚さTHzは、製品部104の厚さTHpよりも大きい。例えば、ランド部106の厚さTHzは、製品部104の厚さTHpの1.3倍以上24倍以下、好ましくは2.5倍以上10倍以下に設定される。また、ランド部106の厚さTHzは、ゲート・ランナー部105の厚さTHgr以下に設定される。例えば、ランド部106の厚さTHは、ゲート・ランナー部105の厚さTHgrの0.12倍以上1.0倍以下に設定される。製品部104の厚さTHp、ランド部106の厚さTHz、及びゲート・ランナー部105の厚さTHgr(平均厚さ)は、以下の式(1)の関係を満たすように設定される。
【0035】
THp<THz≦THgr (1)
【0036】
ランド部106の厚さTHzは、以上の条件を満たした上で、平均厚さで300μm以上1200μm以下、好ましくは500μm以上1000μm以下に設定される。本実施形態では、ランド部106の厚さTHzは一定であり平均厚さでは500μmに設定されている。また、本実施形態では、ランド部106の厚さTHzは製品部104の厚さTHpの3倍である。
【0037】
成形機射出ユニットからゲート・ランナー部105に供給される溶融した熱可塑性樹脂はランド部106に流入するが、ランド部106に熱可塑性樹脂が充填されるまで、つまりランド部106の全容積が熱可塑性樹脂で占められるまで、製品部104への熱可塑性樹脂の流入は実質的にない。ランド部106の全容積が熱可塑性樹脂で占められた状態で、ゲート・ランナー部105からさらに溶融した熱可塑性樹脂がランド部106に供給されると、
図5において破線の矢印で示すように、ランド部106から製品部104に一斉に溶融した熱可塑性樹脂が流入する。より具体的には、
図5において破線の矢印で示すように、製品部104の内側周縁部104aから外側周縁部104bに向かって、溶融した熱可塑性樹脂が一方向に流れる。
【0038】
ランド部106は製品部104へ一方向に均一に要求された樹脂を流し込むために、溶融した熱可塑性樹脂を溜めておく部分として機能する。製品部104への流入に優先して、ランド部106の全体に熱可塑性樹脂が流入する必要が、前述のようにランド部106の厚さTHzを製品部104の厚さTHpよりも厚く設定することで、そのような態様での熱可塑性樹脂の流入が実現される。ランド部106への熱可塑性樹脂の流入が完了すると、成形用型100の内圧が上昇し、ランド部106から、厚みがより薄い製品部104への熱可塑性樹脂の流入が可能になる。また、このような均一な溶融樹脂の流入状態を実現するためには、成形用型100の温度を20℃以上80℃以下、好ましくは40℃以上80℃以下に維持することが好ましい。本実施形態では、成形用型100の温度は40℃以上50℃以下に維持している。適切な温度に維持するために、成形型100(上型101、下型102)に冷却孔を設けてもよい。
【0039】
上述のような流入状態を実現する上で、熱可塑性樹脂は、メルトマスフローレート(測定条件:JIS K 7210 230℃,2.16kg)が10g/10min以上300g/10min以下であって、融解熱量が0mj/mg以上150mj/mg以下、好ましくは50mj/mg以上110mj/mg以下であることが好ましい。
【0040】
以下の表1は採用し得る熱可塑性樹脂の例を示す。
【0041】
【0042】
上述のような熱可塑性樹脂の流れの方向(
図5の破線の矢印)に熱可塑性樹脂の配向が揃う。このように熱可塑性樹脂の配向が揃うことで、押出成形した薄厚樹脂フィルム製の樹脂製薄厚シート部材と比較して、優れた寸法安定性を有するシート部材1が得られる。
【0043】
図6及び
図7は、射出成形完了後に、成形用型100から取り出したシート部材1を示す。シート部材1の内側には、ランド部106に対応する矩形枠状の第1非製品部108が形成されており、この第1非製品部108のさらに内側にゲート・ランナー部105に対応する第2非製品部109が形成されている。第1非製品部108は、ランド部106の厚さTHzに対応する厚さTHn1を有し、第2非製品部109はゲート・ランナー部105の厚さTHgrに対応する厚さTHn2を有する。第1非製品部108と第2非製品部109を切断のような手段で除去することで、シート部材1の製造が完了する。
【0044】
前述のように、キャビティ103の製品部104内で熱可塑性樹脂の流れの方向(
図5の破線の矢印)に熱可塑性樹脂の配向が揃うことで、シート部材1には規則的なコヒーレント模様線が現れる。このコヒーレント模様線は、シート部材1に照明光を照射することで観察できる。具体的には、シート部材1には、
図5の破線の矢印で示す熱可塑性樹脂の流れの方(熱可塑性樹脂の配向方向)に対応して、
図1において二点鎖線で概念的に示す複数のコヒーレント模様線CLが現れる。
図2は
図1の一部の写真でありコヒーレント模様線CLが現れている。本実施形態では、シート部材1を主面2a,2bに正対する方向から見たときに、長手部2A,2Bと短手部3A,3Bのいずれにおいても、内側周縁部4と外側周縁部5とが対向する方向に間隔を開けて配置された複数のコヒーレント模様線CLが現れる。また、これらのコヒーレント模様線CLのうち互いに隣接する一対は交差していない。
【0045】
本実施形態のシート部材1に以上のように規則的なコヒーレント模様線CLが現れる領域を有するのは、シート部材1が、押出成形した薄厚樹脂フィルムのプレス加工により製造したものではなく、前述したような射出成形で製造したことに起因する。つまり、以上のような規則的なコヒーレント模様線CLが現れることは、シート部材1が前述したような射出成形で製造されたことで、熱可塑性樹脂の配向が揃っており、押出成形した薄厚樹脂フィルム製の樹脂製薄厚シート部材と比較して、優れた寸法安定性を有するものであることを間接的に証していると言える。
【0046】
以上のように、シート部材1(ガスケット)は熱可塑性樹脂の配向方向が揃うように射出成形で製造したものであるので、押出成形した薄厚樹脂フィルム製のガスケットと比較して、優れた寸法安定性を有する。また、シート部材1(ガスケット)の厚さTHmは、40μm以上450μm以下、好ましくは50μm以上350μm以下、より好ましくは100μm以上200μm未満であり、従来の射出成形により製造したガスケットよりもさらに薄厚化されている。そのため、本実施形態のシート部材1をガスケットに用いることで、燃料電池の小型化を図ることができる。
【0047】
上述のように、本実施形態のシート部材1では、熱可塑性樹脂の配向方向が揃っていることで、優れた寸法安定性を有する。しかし、シート部材1の全域で、熱可塑性樹脂の配向方向が揃っている必要は必ずしもない。言い換えれば、主面1a,1bの全体が、前述したように内側周縁部4と外側周縁部5とが対向する方向に複数のコヒーレント模様線CLが間隔を開けて配置され、かつ隣接コヒーレント模様線CLが交差しない領域である必要はない。そのような領域が主面1a,1bの総面積の50%以上、好ましくは70%以上であれば、熱可塑性樹脂の配向方向が揃っていることによる寸法安定性の向上を図ることができる。
【0048】
図8から
図18、第1実施形態の変形例を示す。これらの実施形態は、後述する第2から第8実施形態にも適用され得る。
【0049】
図8の変形例では、スプール110aが形成されたスプールブシュ110が、上型101に取り付けられている。つまり、この変形例の成形用型100は、いわゆるダイレクトスプール型である。本変形例の場合、第2非製品部109にはスプール110aに対応する細長い円錐状の痕跡が残る。
【0050】
図9の変形例では、成形用型100によって画定されるキャビティ103は、製品部104の外側に配置されたランド部106と、ランド部106の外側に配置された複数のゲート・ランナー部105とを備える。射出成形時には、
図9において破線の矢印で示すように、製品部104の外側周縁部104aから内側周縁部104bに向かって、溶融した熱可塑性樹脂が一方向に流れる。
図10及び
図11に示すように、射出成形完了後に成形用型100から取り出したシート部材1では、製品部104の外側にランド部106に対応する第1非製品部108が形成され、その外側にゲート・ランナー部105に対応する第2非製品部109が形成されている。
【0051】
図12及び
図13に示す変形例では、ゲート・ランナー部105は、ランド部106の内側に、スプール機構107又はスプールブシュ110と対向する部分、すなわち溶融した熱可塑性樹脂が流入するゲート部105aを1個備えている。また、本実施形態におけるゲート・ランナー部105は、ゲート部105aから分岐してランド部106にそれぞれ接続された複数のランナー部105bを備える。
【0052】
図14に示す変形例では、キャビティ103には製品部106の外側全域を囲むようにオーバーフロー部112が設けられている。そのため、
図15及び
図16に示すように、射出成形後に
成形用型100から取り出した状態では、製品部104の外側全域を囲むように、第3非製品部113が形成される。第3非製品部113は、第1及び第2非製品部108,109と同様に、切断のような手段でシート部材1から除去される。本実施形態では、オーバーフロー部112の厚さTHoは製品部106の厚さTHpと同一に設定されている。オーバーフロー部112を設けることで、製品部106に局所的に熱可塑性樹脂が充填されない箇所が発生するのを防止できる。
【0053】
図17で示す変形例では、ランド部106のゲート・ランナー部105側の部分では厚さTHzは一定であるが、ランド部106の製品部104に接続する部分では、製品部104に向かって厚さTHzが漸減している。
図18に示す変形例では、ランド部106の厚さTHzは、ゲート・ランナー部105に接続する部分から製品部104に接続する部分に向かって漸減している。
【0054】
以下、本発明の第2から第8実施形態を説明する。これらの実施形態について、特に言及してない事項については、第1実施形態と同様である。また、これらの実施形態の図面では、第1実施形態のものと同一又は同様の要素には、同一の符号を付している。
【0055】
(第2実施形態)
図19は、本発明の第2実施形態に係るシート部材1を示す。
【0056】
本実施形態のシート部材1の全体的な形状は六角形状であり、いずれも直線状の6個の辺部11A,11B,11C,11D,11E,11Fを備える。
【0057】
図20を参照すると、本実施形態における成形用型100には、平面視で六角形状の製品部104の外側に、同じく六角形状のランド部106が設けられている。また、ランド部106の辺部11A~11Fに対応する部分の外側に、それぞれ2個のゲート・ランナー部105が設けられている。成形機射出ユニットからゲート・ランナー部105に供給される溶融した熱可塑性樹脂は、ランド部106に充填された後、
図20において破線の矢印で示すように、ランド部106から製品部104に一斉に流入する。より具体的には、
図20において破線の矢印で示すように、製品部104の外側周縁部104bから内側周縁部104aに向かって、溶融した熱可塑性樹脂が一方向に流れる。
【0058】
図21は、射出成形完了後に、成形用型100から取り出したシート部材1を示す。シート部材1の外側には、ランド部106に対応する六角形状の第1非製品部108が形成されており、この第1非製品部108のさらに外側にゲート・ランナー部105に対応する第2非製品部109が形成されている。
【0059】
キャビティ103の製品部104内で熱可塑性樹脂の流れの方向(
図20の破線の矢印)に熱可塑性樹脂の配向が揃うことで、シート部材1には
図19において二点鎖線で概念的に示す複数のコヒーレント模様線CLが現れる。具体的には、個々の辺部11A~11Fにおいて、内側周縁部4と外側周縁部5とが対向する方向に間隔を開けて配置された複数のコヒーレント模様線CLが現れる。また、これらのコヒーレント模様線CLのうち互いに隣接する一対は交差していない。
【0060】
図22及び
図23は、第2実施形態の変形例を示す。この変形例では、成形用型100によって画定されるキャビティ103は、製品部104の内側に配置されたランド部106と、ランド部106の内側に配置された複数のゲート・ランナー部105とを備える。射出成形時には、
図22において破線の矢印で示すように、製品部104の内側周縁部104aから外側周縁部104bに向かって、溶融した熱可塑性樹脂が一方向に流れる。
図23に示すように、射出成形完了後に成形用型100から取り出したシート部材1では、製品部104の内側にランド部106に対応する第1非製品部108が形成され、その内側にゲート・ランナー部105に対応する第2非製品部109が形成されている。
【0061】
(第3実施形態)
図24は、本発明の第3実施形態に係るシート部材1を示す。
【0062】
本実施形態のシート部材1は、円環状である。本実施形態では、シート部材1は平面視で概ね真円状であるかが、平面視で楕円状であってもよい。
【0063】
図25から
図27を参照すると、本実施形態における成形用型100には、平面視で円環状の製品部104の内側に、同じく円環状のランド部106が設けられている。また、ランド部106の内側に、円柱状の単一のゲート・ランナー部105が設けられている。ランド部106の内側の全域がゲート・ランナー部105と連通している。成形機射出ユニットからゲート・ランナー部105に供給される溶融した熱可塑性樹脂は、ランド部106に充填された後、
図27において破線の矢印で示すように、ランド部106から製品部104に一斉に流入する。
【0064】
図28及び
図29は、射出成形完了後に、成形用型100から取り出したシート部材1を示す。シート部材1の外側には、ランド部106に対応する円環状の第1非製品部108が形成されており、この第1非製品部108のさらに外側にゲート・ランナー部105に対応する円柱状の第2非製品部109が形成されている。第1非製品部108と第2非製品部109を除去することでき、シート部材1の製造が完了する。しかし、第1非製品部108と第2非製品部109をシート部材1から除去せずに完成品として使用してもよい。第1非製品部108と第2非製品部109をシート部材1から除去しない場合、これらの部分は、主面1a,1b間の間隔(厚さTHm)よりも厚い厚さTHn1,THn2を有する肉厚部となる。このような肉厚部はシート部材1の全面積の50%以下であることが、シート部材1の肉厚部以外の部分における熱可塑性樹脂の配向を揃えることで寸法安定性を確保する上で好ましい。第1非製品部108と第2非製品部109を除去しないシート部材1を完成品として使用できることは、後述する本実施形態の変形例、並びに本実施形態以外の他の実施形態とそれらの変形例についても同様である。第2非製品部109はシート部材1から除去するが、第1非製品部108をシート部材1から除去せずに完成品として使用してもよい。
【0065】
キャビティ103の製品部104内で熱可塑性樹脂の流れの方向(
図27の破線の矢印)に熱可塑性樹脂の配向が揃うことで、シート部材1には
図24において二点鎖線で概念的に示すように複数のコヒーレント模様線CLが現れる。具体的には、内側周縁部4と外側周縁部5とが対向する方向に間隔を開けて配置された複数のコヒーレント模様線CLが現れる。また、これらのコヒーレント模様線CLのうち互いに隣接する一対は交差していない
【0066】
【0067】
図30及び
図31の変形例では、ゲート・ランナー部105は、製品部104及びランド部106よりも図において上方に突出している。また、下型102は、ゲート・ランナー部105を画定する部分に、図において上方に突出する円柱状部102aを備えている。そのため、
図32及び
図33に示すように、この変形例における第2非製品部109は、シート部材1及び第1非製品部108から図において上方に突出し、かつ下端に円柱状の窪みが形成された形状を有する。
【0068】
(第4実施形態)
図34は、本発明の第4実施形態に係るシート部材1を示す。
【0069】
本実施形態のシート部材1は、平坦な矩形状である。シート部材1の外側周縁部5は、互いに対向する一対の直線縁部5a,5bと、互いに対向し、かつ直線縁部5a,5bの端部を接続する一対の直線縁部5c,5dを備える。
【0070】
図35から
図37を参照すると、本実施形態における成形用型100には、製品部104の直線縁部5aに対応する部分に、一定幅の細長い矩形状のランド部106が設けられている。このランド部106の製品部104とは反対側には単一のゲート・ランナー部105が設けられている。成形機射出ユニットからゲート・ランナー部105に供給される溶融した熱可塑性樹脂は、ランド部106に充填された後、
図37において破線の矢印で示すように、ランド部106から製品部104に一斉に流入する。より具体的には、
図37において破線の矢印で示すように、製品部104の外側周縁部104bの直線縁部5aに対応する部分から直線縁部5bに対応する部分に向かって、溶融した熱可塑性樹脂が一方向に流れる。
【0071】
図38及び
図39は、射出成形完了後に、成形用型100から取り出したシート部材1を示す。シート部材1の直線縁部5a側には、ランド部106に対応する細長い矩形状の第1非製品部108が形成されており、この第1非製品部108のシート部材1とは反対側にゲート・ランナー部105に対応する第2非製品部109が形成されている。
【0072】
キャビティ103の製品部104内で熱可塑性樹脂の流れの方向(
図37の破線の矢印)に熱可塑性樹脂の配向が揃うことで、シート部材1には
図34において二点鎖線で概念的に示す複数のコヒーレント模様線CLが現れる。具体的には、直線縁部5aと直線縁部5bとが対向する方向に間隔を開けて配置された複数のコヒーレント模様線CLが現れる。また、これらのコヒーレント模様線CLのうち互いに隣接する一対は交差していない。
【0073】
【0074】
図40に示す変形例のシート部材1には、複数の貫通孔1cが形成されている。
【0075】
図41に示す変形例に示すシート部材1には、直線縁部5bから直線縁部5aに向かって伸びてシート部材1内で終端する複数の切欠1dが形成されている。
【0076】
図40のような貫通孔、
図41のような切欠を、第4実施形態以外の他の実施形態に係るシート部材1に設けてもよい。
【0077】
(第5実施形態)
図42は、本発明の第5実施形態に係るシート部材1を示す。
【0078】
本実施形態のシート部材1は、第4実施形態(
図34)と同様に平坦な矩形状であるが、第4実施形態のシート部材1よりも細長い。つまり、外側周縁部5の一部である直線縁部5a,5bは、同じく外側周縁部5の一部である直線縁部5c,5dよりも十分に長い。
【0079】
図43を参照すると、本実施形態における成形用型100には、製品部104の直線縁部5aに対応する部分に、一定幅の細長い矩形状のランド部106が設けられている。このランド部106の製品部104の反対側には複数のゲート・ランナー部105が設けられている。成形機射出ユニットからゲート・ランナー部105に供給される溶融した熱可塑性樹脂は、ランド部106に充填された後、破線の矢印で示すように、ランド部106から製品部104に一斉に流入する。より具体的には、製品部104の外側周縁部104bの直線縁部5cに対応する部分から直線縁部5bに対応する部分に向かって、溶融した熱可塑性樹脂が一方向に流れる。
【0080】
図44は、射出成形完了後に、成形用型100から取り出したシート部材1を示す。シート部材1の直線縁部5a側には、ランド部106に対応する細長い矩形状の第1非製品部108が形成されており、この第1非製品部108のシート部材1とは反対側にゲート・ランナー部105に対応する第2非製品部109が形成されている。
【0081】
図45は、本実施形態の変形例のシート部材1を示す。このシート部材1の直線縁部5cには、半円状の切欠1eと矩形状の切欠1fが形成されている。
【0082】
(第6実施形態)
図46は、本発明の第6実施形態に係るシート部材1を示す。
【0083】
本実施形態のシート部材1は、半円弧状である。シート部材1の外側周縁部5は、互いに対向する一対の円弧縁部5e,5fと、これら円弧縁部5e,5fの端部を接続する一対の直線縁部5g,5hを備える。
【0084】
図47及び
図48を参照すると、本実施形態における成形用型100には、製品部104の円弧縁部5eに対応する部分に、一定幅の半円弧状のランド部106が設けられている。このランド部106の製品部104とは反対側には半円柱状の単一のゲート・ランナー部105が設けられている。成形機射出ユニットからゲート・ランナー部105に供給される溶融した熱可塑性樹脂は、ランド部106に充填された後、ランド部106から製品部104に一斉に流入し、製品部104の外側周縁部104bの円弧縁部5eに対応する部分から円弧縁部5fに対応する部分に向かって、溶融した熱可塑性樹脂が一方向に流れる。
【0085】
図49及び
図50は、射出成形完了後に、成形用型100から取り出したシート部材1を示す。シート部材1の円弧縁部5e側には、ランド部106に対応する円環状の第1非製品部108が形成されており、この第1非製品部108のシート部材1とは反対側にゲート・ランナー部105に対応する半円柱状の第2非製品部109が形成されている。
【0086】
キャビティ103の製品部104内での熱可塑性樹脂の流れの方向に熱可塑性樹脂の配向が揃うことで、シート部材1には
図46において二点鎖線で概念的に示す複数のコヒーレント模様線CLが現れる。具体的には、直線縁部5aと直線縁部5bとが対向する方向に間隔を開けて配置された複数のコヒーレント模様線CLが現れる。また、これらのコヒーレント模様線CLのうち互いに隣接する一対は交差していない。
【0087】
(第7実施形態)
図51は、本発明の第7実施形態に係るシート部材1を示す。
【0088】
本実施形態のシート部材1の外側周縁部5は、第4及び第5実施形態と同様に4個の縁部を備える。具体的には、シート部材1の外側周縁部5は、互いに対向する一対の相対的に短い直線縁部5i,5j、これらの直線縁部5i,5jを接続する相対的に長い直線縁部5k、及び直線縁部5kと対向する曲線縁部5mとを備える。
【0089】
図52から
図54を参照すると、本実施形態における成形用型100には、製品部104の直線縁部5kに対応する部分に、細長い矩形状のランド部106が設けられている。このランド部106の製品部104とは反対側には、複数のゲート・ランナー部105が設けられている。成形機射出ユニットからゲート・ランナー部105に供給される溶融した熱可塑性樹脂は、ランド部106に充填された後、
図54において破線の矢印で示すように、ランド部106から製品部104に一斉に流入する。より具体的には、製品部104の外側周縁部104bの直線縁部5kに対応する部分から曲線縁部5mに対応する部分に向かって、溶融した熱可塑性樹脂が一方向に流れる。
【0090】
図55は、射出成形完了後に、成形用型100から取り出したシート部材1を示す。シート部材1の直線縁部5k側には、ランド部106に対応する細長い矩形状の第1非製品部108が形成されており、この第1非製品部108のシート部材1とは反対側にゲート・ランナー部105に対応する第2非製品部109が形成されている。
【0091】
(第8実施形態)
図56は、本発明の第8実施形態に係るシート部材1を示す。
【0092】
本実施形態のシート部材1は、主面1a,1bの対向方向から見ると、第4及び第5実施形態(
図34,
図42)と同様に矩形状であり、外側周縁部5は一対の直線縁部5a,5bと、これらを接続する他の一対の直線縁部5c,5dを備える。第4及び第5実施形態(
図34,
図42)のシート部材1が平坦であるのに対し、本実施形態のシート部材1は湾曲しており、曲面状である。本実施形態では、シート部材1は直線縁部5a,5bが互いに対向する方向にのみ湾曲を有する。しかし、シート部材1は三次元曲面状であってもよい。
【0093】
図57から
図59を参照すると、本実施形態における成形用型100には、製品部104の直線縁部5aに対応する部分に、一定幅の細長い矩形状のランド部106が設けられている。このランド部106の製品部104とは反対側には複数のゲート・ランナー部105が設けられている。成形機射出ユニットからゲート・ランナー部105に供給される溶融した熱可塑性樹脂は、ランド部106に充填された後、
図59において破線の矢印で示すように、ランド部106から製品部104に一斉に流入する。より具体的には、
図59において破線の矢印で示すように、製品部104の外側周縁部104bの直線縁部5aに対応する部分から直線縁部5bに対応する部分に向かって、溶融した熱可塑性樹脂が一方向に流れる。
【0094】
図60は、射出成形完了後に、成形用型100から取り出したシート部材1を示す。シート部材1の直線縁部5a側には、ランド部106に対応する細長い矩形状の第1非製品部108が形成されており、この第1非製品部108のシート部材1とは反対側にゲート・ランナー部105に対応する第2非製品部109が形成されている。
【0095】
キャビティ103の製品部104内で熱可塑性樹脂の流れの方向(
図59の破線の矢印)に熱可塑性樹脂の配向が揃うことで、シート部材1には
図56において二点鎖線で概念的に示す複数のコヒーレント模様線CLが現れる。具体的には、直線縁部5aと直線縁部5bとが対向する方向に間隔を開けて配置された複数のコヒーレント模様線CLが現れる。また、これらのコヒーレント模様線CLのうち互いに隣接する一対は交差していない。
【0096】
(評価試験)
第1実施形態に係るガスケット
1の寸法安定性を検証する評価試験を行った。この評価試験では6個のサンプルを使用した。サンプルS1,S2は、
図61に示すように、実施形態に係るガスケット1の長手部2Aから切り出したものである(実施例)。サンプルS3~S6は、
図62に示すように、押出成形した薄厚樹脂フィルム200から切り出したものである(比較例)。サンプルS3,S4は押出成形における樹脂の流れの方向(MD方向)に細長く、サンプルS5,S6はMD方向に直交する方向(TD方向)に細長い。
【0097】
サンプルS1~6を80℃の環境下に3日間おき、初期長さと3日後の長さを測定した。評価試験の結果を以下の表2に示す。
【0098】
【0099】
実施例のサンプルS1,2では長手方向と短手方向のいずれについても収縮率が0.6%未満であるのに対して、比較例のサンプル3~4ではMD方向とTD方向のいずれについても収縮率が0.8%を上回る。この試験結果は、射出成形により製造した本実施形態のガスケット1は、押出成形した薄厚樹脂フィルム製のガスケットと比較して、優れた寸法安定性を有することを示している。
【0100】
本発明は、燃料電池用ガスケット以外にも、例えばニッケル水素電池などのその他の電池用のガスケットやセパレータのような他の樹脂製薄厚シート部材にも適用できる。
【符号の説明】
【0101】
1 樹脂製薄厚シート部材(シート部材)
1a,1b 主面
1c 貫通孔
1d,1e,1f 切欠
2A,2B 長手部
3A,3B 短手部
4 内側周縁部
5 外側周縁部
5a,5b,5c,5d 直線縁部
5e,5f円弧縁部
5g,5h 直線縁部
5i,5j,5k 直線縁部
5m 曲線縁部
11A,11B,11C,11D,11E,11F 辺部
100 成形用型
101 上型
102 下型
102a 円柱状部
103 キャビティ
104 製品部
104a 内側周縁部
104b 外側周縁部
105 ゲート・ランナー部
105a ゲート部
105b ランナー部
106 ランド部
107 スプール 108 第1非製品部
109 第2非製品部
110 スプールブシュ
110a スプール
112 オーバーフロー部
113 第3非製品部