(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】アスファルト改質剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 95/00 20060101AFI20241218BHJP
C08G 63/82 20060101ALI20241218BHJP
C08G 63/16 20060101ALI20241218BHJP
C08L 53/02 20060101ALI20241218BHJP
E01C 7/18 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
C08L95/00
C08G63/82
C08G63/16
C08L53/02
E01C7/18
(21)【出願番号】P 2020206140
(22)【出願日】2020-12-11
【審査請求日】2023-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋野 雄亮
(72)【発明者】
【氏名】垣内 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】福利 憲廣
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】特開昭48-008307(JP,A)
【文献】特表2019-508608(JP,A)
【文献】特表2021-509694(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G63
C08L95/00
E01C 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程1及び工程2を含む、ポリエステルを含むアスファルト改質剤の製造方法。
工程1:アルコール成分及びカルボン酸成分を触媒の存在下で重縮合し、ポリエステルを得る工程
工程2:工程1で得られたポリエステルを
80℃以下まで冷却する工程であって、
冷却時間は20分間以上であり、冷却時のポリエステルの形状が厚さ1cm以下のシート状である工程
【請求項2】
工程1における触媒が、スズ系触媒、チタン系触媒、アンチモン系触媒及び有機酸触媒から選択される1種以上を含む、請求項1に記載のアスファルト改質剤の製造方法。
【請求項3】
工程1における触媒の使用量が、アルコール成分及びカルボン酸成分の合計100質量部に対して、0.1質量部以上2質量部以下である、請求項1又は2に記載のアスファルト改質剤の製造方法。
【請求項4】
ポリエステルの180℃にて2時間加熱後の溶融粘度の変化が1倍以上4倍以下である、請求項1~3のいずれかに記載のアスファルト改質剤の製造方法。
【請求項5】
アスファルト、骨材、及び請求項1~4のいずれかに記載の製造方法により得られるアスファルト改質剤を混合する工程を含む、アスファルト混合物の製造方法。
【請求項6】
アスファルトが、ストレートアスファルト又は改質アスファルトである、請求項5に記載のアスファルト混合物の製造方法。
【請求項7】
前記改質アスファルトが、熱可塑性エラストマーで改質されたアスファルトである、請求項
6に記載のアスファルト混合物の製造方法。
【請求項8】
前記熱可塑性エラストマーが、スチレン/ブタジエンブロック共重合体、スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体、スチレン/ブタジエンランダム共重合体、スチレン/イソプレンブロック共重合体、スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体、スチレン/イソプレンランダム共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、及びエチレン/アクリル酸エステル共重合体からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項7に記載のアスファルト混合物の製造方法。
【請求項9】
請求項5~8のいずれかに記載の製造方法により得られるアスファルト混合物を道路に施工し、アスファルト舗装材層を形成する工程を含む、道路舗装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスファルト改質剤の製造方法、アスファルト混合物の製造方法、及び道路舗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車道や駐車場、貨物ヤード、歩道等の舗装には、敷設が比較的容易であり、舗装作業開始から交通開始までの時間が短くてすむことから、アスファルト組成物を用いるアスファルト舗装が行われている。このアスファルト舗装は、骨材をアスファルトで結合したアスファルト混合物によって路面が形成されているので、舗装道路は良好な硬度や耐久性を有している。
【0003】
特許文献1には、低温でも施工可能であり、高温下でも安定性を保持した道路舗装用に適したアスファルト組成物として、アスファルト及びポリエステル系重合体を含有してなるアスファルト組成物が開示されている。
特許文献2には、瀝青に対する溶解性に優れるとともに、タフネス、テナシティーなどに優れ、かつ、低温特性や貯蔵安定性が改善された瀝青組成物として、ビニル芳香族炭化水素を主体とする重合体ブロックと共役ジエンを主体とする重合体ブロックを特定量含有するブロック共重合体と、多価の高級カルボン酸と多価アルコールとを縮重合して得られる油溶性ポリエステルとを有効成分とする瀝青改質材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平04-8766号公報
【文献】特開平08-311299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、ポリエステルを含むアスファルト混合物は優れた耐久性を発揮する一方で、現場でアスファルト混合物を混練する際に合材光沢が失われ、締固め性に悪影響を及ぼす問題があった。締固め性が低下する結果、ヘアクラックが発生し、アスファルト舗装の外観が不良となる。
本発明は、締固め性と耐久性とを両立した舗装面が形成されるアスファルト混合物を得ることができるアスファルト改質剤の製造方法、アスファルト混合物の製造方法及び道路舗装方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の〔1〕~〔3〕に関する。
〔1〕下記工程1及び工程2を含む、ポリエステルを含むアスファルト改質剤の製造方法。
工程1:アルコール成分及びカルボン酸成分を触媒の存在下で重縮合し、ポリエステルを得る工程
工程2:工程1で得られたポリエステルを冷却する工程であって、冷却時のポリエステルの形状が厚さ1cm以下のシート状である工程
〔2〕アスファルト、骨材、及び上記〔1〕に記載の製造方法により得られるアスファルト改質剤を混合する工程を含む、アスファルト混合物の製造方法。
〔3〕上記〔2〕に記載の製造方法により得られるアスファルト混合物を道路に施工し、アスファルト舗装材層を形成する工程を含む、道路舗装方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、締固め性と耐久性とを両立した舗装面が形成されるアスファルト混合物を得ることができるアスファルト改質剤の製造方法、アスファルト混合物の製造方法及び道路舗装方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[アスファルト改質剤の製造方法]
本発明のアスファルト改質剤の製造方法は、下記工程1及び工程2をこの順で含む、ポリエステルを含むアスファルト改質剤の製造方法である。
工程1:アルコール成分及びカルボン酸成分を触媒の存在下で重縮合し、ポリエステルを得る工程
工程2:工程1で得られたポリエステルを冷却する工程であって、冷却時のポリエステルの形状が厚さ1cm以下のシート状である工程
【0009】
本発明者らは、特定の冷却工程を含む製造方法により得られたポリエステルを含むアスファルト改質剤をアスファルト混合物に含有させることで、締固め性と耐久性とを両立した舗装面が形成できることを見出した。
本発明の効果が得られる理由は定かではないが、以下のように考えられる。
ポリエステル製造時に由来する触媒の活性がポリエステル中に残存することにより、アスファルト混合物中でポリエステルの反応活性が変化し、アスファルト混合物の粘度の上昇を引き起こすと考えられる。
本発明の製造方法が含む冷却工程により、ポリエステルを冷却する際に空気及び冷却媒体との接触が大きくなり、ポリエステル中の触媒の失活が進むと考えられる。このことによりポリエステルの反応活性が低くなり、アスファルト混合物の混合中および運搬中の粘度上昇が抑制される。それにより締固め性が向上し、舗装物性が良好となると考えられる。
【0010】
本明細書における各種用語の定義等を以下に示す。
「バインダ混合物」とは、アスファルトと熱可塑性エラストマーとを含む混合物を意味し、例えば、後述の熱可塑性エラストマーで改質されたアスファルト(以下、「改質アスファルト」ともいう)を含む概念である。
ポリエステル中、「アルコール成分由来の構成単位」とは、アルコール成分のヒドロキシル基から水素原子を除いた構造を意味し、「カルボン酸成分由来の構成単位」とは、カルボン酸成分のカルボキシル基からヒドロキシル基を除いた構造を意味する。
「カルボン酸化合物」とは、そのカルボン酸のみならず、反応中に分解して酸を生成する無水物、及びカルボン酸のアルキルエステル(例えば、アルキル基の炭素数1以上3以下)も含む概念である。カルボン酸化合物がカルボン酸のアルキルエステルである場合、カルボン酸化合物の炭素数には、エステルのアルコール残基であるアルキル基の炭素数を算入しない。
【0011】
<工程1>
工程1は、アルコール成分及びカルボン酸成分を触媒の存在下で重縮合し、ポリエステルを得る工程である。
【0012】
〔ポリエステル〕
工程1では、アルコール成分とカルボン酸成分との重縮合物であるポリエステルを得る。ポリエステルは、アルコール成分由来の構成単位及びカルボン酸成分由来の構成単位を含む。
(アルコール成分)
アルコール成分としては、脂肪族ジオール、芳香族ジオール、3価以上の多価アルコールが挙げられる。これらのアルコール成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0013】
脂肪族ジオールとしては、締固め性と耐久性の観点から、好ましくは炭素数2以上12以下の直鎖又は分岐の脂肪族ジオールであり、より好ましくは炭素数2以上4以下の直鎖又は分岐の脂肪族ジオールである。脂肪族ジオールの具体例としては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,4-ブテンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオールが挙げられる。
【0014】
芳香族ジオールとしては、例えば、ビスフェノールAのアルキレンオキド付加物が挙げられる。ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物としては、式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物が挙げられる。
【化1】
〔式中、OR
1及びR
1Oはアルキレンオキシドであり、R
1は炭素数2又は3のアルキレン基、x及びyはアルキレンオキシドの平均付加モル数を示す正の数を示し、xとyの和は好ましくは1以上、より好ましくは1.5以上であり、そして、好ましくは16以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは4以下である。〕
【0015】
式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物としては、例えば、ビスフェノールA〔2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン〕のプロピレンオキシド付加物、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物が挙げられる。これらのビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0016】
3価以上の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトールが挙げられる。
【0017】
アルコール成分としては、締固め性と耐久性の観点から、芳香族ジオールが好ましい。芳香族ジオールの含有量は、締固め性と耐久性の観点から、ポリエステルのアルコール成分100モル%中、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上であり、そして、100モル%以下である。
【0018】
(カルボン酸成分)
カルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸化合物、芳香族ジカルボン酸化合物、3価以上6価以下の多価カルボン酸化合物が挙げられる。これらのカルボン酸成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0019】
脂肪族ジカルボン酸の主鎖の炭素数は、締固め性と耐久性の観点から、好ましくは3以上、より好ましくは4以上であり、そして、好ましくは10以下、より好ましくは8以下である。
脂肪族ジカルボン酸化合物としては、例えば、フマル酸、マレイン酸、シュウ酸、マロン酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、炭素数1以上20以下のアルキル基若しくは炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸が挙げられる。置換されたコハク酸としては、例えば、ドデシルコハク酸、ドデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸が挙げられる。以上の脂肪族ジカルボン酸化合物の中でも、フマル酸、マレイン酸及びアジピン酸からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、アジピン酸がより好ましい。
【0020】
芳香族ジカルボン酸化合物としては、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、又は、これらの無水物、これらのアルキルエステル(例えば、アルキル基の炭素数1以上3以下)が挙げられる。以上の芳香族ジカルボン酸化合物の中でも、締固め性と耐久性の観点から、から、イソフタル酸及びテレフタル酸が好ましく、テレフタル酸がより好ましい。
【0021】
3価以上6価以下の多価カルボン酸は、好ましくは3価カルボン酸である。3価以上6価以下の多価カルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸、又はこれらの酸無水物等が挙げられる。なお、多価カルボン酸を含む場合、物性調整の観点から、アルコール成分には1価のアルコールが適宜含有されていてもよく、カルボン酸成分には1価のカルボン酸化合物が適宜含有されていてもよい。
【0022】
カルボン酸成分としては、締固め性と耐久性の観点から、芳香族ジカルボン酸が好ましい。芳香族ジカルボン酸化合物の含有量は、アスファルトへの溶融分散性を高め、かつ締固め性と耐久性の観点から、カルボン酸成分100モル%中、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上であり、そして、好ましくは100モル%以下、より好ましくは99モル%以下、更に好ましくは95モル%以下、より更に好ましくは90モル%以下である。
【0023】
(ポリエチレンテレフタレート由来の構成単位)
本発明に用いられるポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート由来のエチレングリコール及びテレフタル酸からなる構成単位を含む。ポリエチレンテレフタレートは、エチレングリコール及びテレフタル酸からなる構成単位の他にブタンジオールやイソフタル酸等の成分を少量含有してもよい。ポリエチレンテレフタレートは、回収されたポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。
【0024】
なお、本発明において、ポリエステル樹脂は、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステル樹脂であってもよい。変性されたポリエステル樹脂としては、例えば、特開平11-133668号公報、特開平10-239903号公報、特開平8-20636号公報等に記載の方法によりフェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステル樹脂が挙げられるが、変性されたポリエステル樹脂のなかでは、ポリエステル樹脂をポリイソシアネート化合物でウレタン伸長したウレタン変性ポリエステル樹脂が好ましい。
【0025】
(アルコール成分由来の構成単位に対するカルボン酸成分由来の構成単位のモル比)
アルコール成分由来の構成単位に対するカルボン酸成分由来の構成単位のモル比〔カルボン酸成分/アルコール成分〕は、酸価の調整の観点及び締固め性と耐久性の観点から、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.8以上、更に好ましくは0.9以上であり、そして、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.3以下、更に好ましくは1.1以下である。
【0026】
〔触媒〕
工程1では、アルコール成分及びカルボン酸成分を触媒の存在下で重縮合し、ポリエステルを得る。
触媒としては、スズ系触媒、チタン系触媒、アンチモン系触媒、有機酸触媒等のエステル化触媒が挙げられる。スズ系触媒としては、ジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)、酸化ジブチル錫等のSn-C結合を有していない錫(II)化合物が挙げられる。チタン系触媒としては、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等が挙げられる。アンチモン触媒としては、三酸化アンチモン等が挙げられる。有機酸触媒としては、スカンジウム(III)トリフラート等のスルホン酸塩触媒が挙げられる。
触媒としては、反応性の観点から、スズ系触媒が好ましく、Sn-C結合を有していない錫(II)化合物がより好ましい。
【0027】
触媒の使用量がアルコール成分及びカルボン酸成分の合計100質量部に対して、締固め性と耐久性の観点から、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.15質量部以上であり、更に好ましくは0.2質量部以上、そして、好ましくは2質量部以下より好ましくは1.5量部以下、更に好ましくは1質量部以下、より更に好ましくは0.7質量部以下である。
【0028】
重縮合反応には、反応性とコストの観点及び締固め性と耐久性の観点から、助触媒として、さらに没食子酸等のピロガロール化合物を使用することができる。助触媒の使用量は、上記エステル化触媒の使用量に対して、質量比で、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上、更に好ましくは0.03以上であり、そして、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.3以下、更に好ましくは0.2以下である。なお、助触媒の使用量は、上記触媒の使用量に含まれる。
【0029】
〔反応条件〕
重縮合反応の温度は、特に限定されるものではないが、反応性の観点とモノマー分解温度の観点から、好ましくは120℃以上、より好ましくは160℃以上、更に好ましくは180℃以上であり、そして、好ましくは260℃以下、より好ましくは250℃以下、更に好ましくは240℃以下である。
反応時間は、反応性の観点から、好ましくは1時間以上、より好ましくは2時間以上、更に好ましくは5時間以上であり、そして、好ましくは20時間以下、より好ましくは15時間以下、更に好ましくは12時間以下である。
アルコール成分及びカルボン酸成分の重縮合反応は、反応性の観点から、不活性ガス雰囲気中にて行うことができる。
【0030】
重縮合反応には、触媒に加えて、締固め性と耐久性の観点から、ターシャルブチルカテコール等の重合禁止剤を、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.2質量部以下、更に好ましくは0.1質量部以下、用いてもよい。
【0031】
ポリエステルが、ポリエチレンテレフタレート由来のエチレングリコール由来の構成単位及びテレフタル酸由来の構成単位を含む場合、その原料におけるポリエチレンテレフタレートの存在量は、ポリエチレンテレフタレート、アルコール成分及びカルボン酸成分の総量中、好ましくは5~80質量%、より好ましくは15~70質量%、更に好ましくは25~60質量%である。
アルコール成分とカルボン酸成分との重縮合反応の際にポリエチレンテレフタレートを添加することで、エステル交換反応が起こり、ポリエチレンテレフタレートの構成単位がアルコール成分由来の構成単位及びカルボン酸成分由来の構成単位中に取り込まれたポリエステルを得ることができる。
ポリエチレンテレフタレートは、重縮合反応開始時から存在させていても、重縮合反応途中で反応系に添加してもよい。ポリエチレンテレフタレートの添加時期は、アスファルト舗装の耐わだち掘れ性及び表面美観の観点から、アルコール成分とカルボン酸成分との反応率が10%以下の段階が好ましく、5%以下の段階がより好ましい。なお、反応率とは、生成反応水量(モル)/理論生成水量(モル)×100の値をいう。
【0032】
かくしてポリエステルが得られる。
【0033】
<工程2>
工程2は、工程1で得られたポリエステルを冷却する工程であって、冷却時のポリエステルの形状が厚さ1cm以下のシート状である。
〔冷却〕
工程2において、締固め性と耐久性の観点から、ポリエステルを好ましくは80℃以下、より好ましくは60℃以下、更に好ましくは40℃以下まで冷却する。
工程2における冷却時間は、締固め性と耐久性の観点から、好ましくは20分間以上、より好ましくは40分間以上、更に好ましくは60分間以上であり、そして、好ましくは8時間以下、より好ましくは6時間以下、更に好ましくは4時間以下である。
工程2における冷却の手段としては、空冷、直接水冷却、間接水冷却が挙げられる。また、冷却はスチールベルトクーラーやドラムクーラーを用いることができる。
【0034】
〔シート〕
工程2において、冷却時のポリエステルの形状が厚さ1cm以下のシート状である。
ポリエステルをシート状とする手段は特に限定されず、押出成形、キャスト成形などが挙げられる。
冷却時のシートの厚さは、締固め性と耐久性の観点から、1cm以下であり、好ましくは0.9cm以下、より好ましくは0.7cm以下、更に好ましくは0.5cm以下であり、そして、好ましくは0.1cm以上、より好ましくは0.2cm以上、更に好ましくは0.3cm以上である。押出成形によりポリエステルをシート状とする場合、押出速度を調整することで、厚さの調整をすることができる。
シートの厚さは、例えば実施例に記載の方法により測定することができる。
【0035】
シート状のポリエステルをそのままアスファルト改質剤として用いることができる。また、粉砕、分級等の公知の工程でさらに処理することもできる。粉砕は、粗粉砕であっても微粉砕であってもよく、粗粉砕した後に更に微粉砕してもよい。
粗粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、ハンマーミル、アトマイザー、ロートプレックス等が挙げられる。微粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、流動層式ジェットミル、衝突板式ジェットミル、回転型機械式ミル等が挙げられる。
かくして、アスファルト改質剤が製造される。
【0036】
[アスファルト改質剤]
アスファルト改質剤は、上記の本発明の製造方法により得られる。
アスファルト改質剤は、例えばアスファルトと混合し、アスファルト組成物を得るために使用することができる。得られたアスファルト組成物に、骨材を添加して、アスファルト混合物とした後に、舗装に使用することができる。アスファルト改質剤は、骨材を含むアスファルト混合物に配合するための改質剤として好適に使用することができる。
【0037】
<アスファルト改質剤を構成するポリエステルの物性>
アスファルト改質剤を構成するポリエステルは、締固め性と耐久性の観点から、180℃にて2時間加熱後の溶融粘度の変化が、好ましくは1倍以上、より好ましくは1.5倍以上、更に好ましくは2.0倍以上であり、そして、好ましくは4倍以下、より好ましくは3.8倍以下、更により好ましくは3.7倍以下である。
180℃にて2時間加熱後の溶融粘度の変化は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。具体的には、180℃にて2時間加熱後の溶融粘度の変化は次式により求めることができる。
180℃にて2時間加熱後の溶融粘度の変化=(180℃にて2時間加熱後の溶融粘度[Pa・s])/(180℃にて2時間加熱前の溶融粘度[Pa・s])
【0038】
アスファルト改質剤を構成するポリエステルの酸価は、締固め性と耐久性の観点から、好ましくは2mgKOH/g以上、より好ましくは5mgKOH/g以上、更に好ましくは10mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは40mgKOH/g以下、より好ましくは35mgKOH/g以下、更に好ましくは30mgKOH/g以下である。
アスファルト改質剤を構成するポリエステルの水酸基価は、締固め性と耐久性の観点から、好ましくは1mgKOH/g以上、より好ましくは5mgKOH/g以上、更に好ましくは8mgKOH/g以上、より更に好ましくは10mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは70mgKOH/g以下、より好ましくは60mgKOH/g以下、更に好ましくは50mgKOH/g以下、より更に好ましくは40mgKOH/g以下である。
アスファルト改質剤を構成するポリエステルの数平均分子量(Mn)は、上記と同様の観点から、から、好ましくは1600以上、より好ましくは2000以上、更に好ましくは2500以上であり、そして、好ましくは5000以下、より好ましくは4500以下、更に好ましくは4000以下である。
アスファルト改質剤を構成するポリエステルの重量平均分子量(Mw)は、上記と同様の観点から、好ましくは5000以上、より好ましくは6000以上、更に好ましくは7000以上であり、そして、好ましくは30000以下、より好ましくは20000以下、更に好ましくは15000以下である。
【0039】
酸価、水酸基価、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)は、実施例に記載の方法により測定することができる。なお、アスファルト改質剤を構成するポリエステルの酸価、水酸基価、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)は、原料モノマー組成、分子量、触媒量、反応条件又は冷却条件により調整することができる。
【0040】
[アスファルト混合物の製造方法]
アスファルト混合物は、アスファルト、骨材、上記アスファルト改質剤を配合して得ることができる。本発明のアスファルト混合物の製造方法は、アスファルト、骨材、及び上記アスファルト改質剤を同時に又は順不同で混合する工程を含む。
【0041】
<アスファルト>
アスファルトとしては、種々のアスファルトが使用できる。例えば舗装用石油アスファルトであるストレートアスファルトの他、改質アスファルトが挙げられる。改質アスファルトとしては、ブローンアスファルト;熱可塑性エラストマー、熱可塑性樹脂等の高分子材料で改質したポリマー改質アスファルト等が挙げられる。ストレートアスファルトとは、原油を常圧蒸留装置、減圧蒸留装置等にかけて得られる残留瀝青物質のことである。また、ブローンアスファルトとは、ストレートアスファルトと重質油との混合物を加熱し、その後空気を吹き込んで酸化させることによって得られるアスファルトを意味する。アスファルトは、ストレートアスファルト及びポリマー改質アスファルトからなる群から選択されることが好ましく、アスファルト舗装の締固め性と耐久性の観点からは改質アスファルトがより好ましく、汎用性の観点からはストレートアスファルトがより好ましい。
【0042】
(熱可塑性エラストマー)
ポリマー改質アスファルトにおける熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン/ブタジエンブロック共重合体(以下、「SB」ともいう)、スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体(以下、「SBS」ともいう)、スチレン/ブタジエンランダム共重合体(以下、「SBR」ともいう)、スチレン/イソプレンブロック共重合体(以下、「SI」ともいう)、スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体(以下、「SIS」ともいう)、スチレン/イソプレンランダム共重合体(以下、「SIR」ともいう)、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/アクリル酸エステル共重合体、スチレン/エチレン/ブチレン/スチレン共重合体、スチレン/エチレン/プロピレン/スチレン共重合体、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、イソブチレン/イソプレン共重合体、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、上記以外の合成ゴム、及び天然ゴムから選択される少なくとも1種が挙げられる。
これらの中でも、熱可塑性エラストマーとしては、アスファルト舗装の締固め性と耐久性の観点から、好ましくはSB、SBS、SBR、SI、SIS、SIR、及びエチレン/アクリル酸エステル共重合体から選択される少なくとも1種、より好ましくはSB、SBS、SBR、SI、SIS、及びSIRから選択される少なくとも1種、更に好ましくはSBR及びSBSから選択される少なくとも1種である。
ポリマー改質アスファルトにおける熱可塑性エラストマーの量比は、アスファルト舗装の締固め性と耐久性の観点から、アスファルト組成物100質量%中、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上、より更に好ましくは2質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは5質量%以下である。
【0043】
<骨材>
骨材としては、例えば、砕石、玉石、砂利、砂、再生骨材、セラミックス等を任意に選択して用いることができる。また、骨材としては、粒径2.36mm以上の粗骨材、粒径2.36mm未満の細骨材のいずれも使用することができる。
粗骨材としては、例えば、粒径範囲2.36mm以上4.75mm未満の砕石、粒径範囲4.75mm以上12.5mm未満の砕石、粒径範囲12.5mm以上19mm未満の砕石、粒径範囲19mm以上31.5mm未満の砕石が挙げられる。
細骨材は、好ましくは粒径0.075mm以上2.36mm未満の細骨材である。細骨材としては、例えば、川砂、丘砂、山砂、海砂、砕砂、細砂、スクリーニングス、砕石ダスト、シリカサンド、人工砂、ガラスカレット、鋳物砂、再生骨材破砕砂が挙げられる。
上記の粒径はJIS A5001:2008に規定される値である。
これらの中でも、粗骨材と細骨材との組合せが好ましい。
【0044】
なお、細骨材には、粒径0.075mm未満のフィラーが含まれていてもよい。フィラーとしては、砂、フライアッシュ、石灰石粉末などの炭酸カルシウム、消石灰等が挙げられる。このうち、アスファルト舗装の強度向上の観点から、炭酸カルシウムが好ましい。
フィラーの平均粒径は、舗装強度向上の観点から、好ましくは0.001mm以上であり、そして、好ましくは0.06mm以下、より好ましくは0.04mm以下、更に好ましくは0.03mm以下である。フィラーの平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定することができる。ここで、平均粒径とは、体積累積50%の平均粒径を意味する。
【0045】
粗骨材と細骨材との質量比率(含有量又は配合量)は、締固め性と耐久性の観点から、好ましくは10/90以上、より好ましくは20/80以上、更に好ましくは30/70以上であり、そして、好ましくは90/10以下、より好ましくは80/20以下、更に好ましくは70/30以下である。
【0046】
アスファルト混合物における好適な配合例として、以下の(1)~(3)が挙げられる。
(1)30容量%以上45容量%未満の粗骨材と、30容量%以上50容量%以下の細骨材と、アスファルト及びアスファルト改質剤を合計5容量%以上10容量%以下含む細粒度アスファルト。
(2)45容量%以上70容量%未満の粗骨材と、20容量%以45容量%以下の細骨材と、アスファルト及びアスファルト改質剤を合計3容量%以上10容量%以下含む密粒度アスファルト。
(3)70容量%以上80容量%以下の粗骨材と、10容量%以上20容量%以下の細骨材と、アスファルト及びアスファルト改質剤を合計3容量%以上10容量%以下含むポーラスアスファルト。
【0047】
骨材の含有量は、締固め性と耐久性の観点から、アスファルト及びアスファルト改質剤の合計の100質量部に対して、好ましくは1,000質量部以上、より好ましくは1,200質量部以上、更に好ましくは1,400質量部以上であり、そして、好ましくは3,000質量部以下、より好ましくは2,500質量部以下、更に好ましくは2,000質量部以下である。
【0048】
なお、従来の骨材とアスファルトを含むアスファルト混合物におけるアスファルトの配合割合については、通常、公益社団法人日本道路協会発行の「舗装設計施工指針」に記載されている「アスファルト組成物の配合設計」から求められる最適アスファルト量に従って用いられている。
本発明においては、上記の最適アスファルト量が、アスファルト及びポリエステルからなるアスファルト改質剤の合計量に相当する。ただし、「舗装設計施工指針」に記載の方法に限定する必要はなく、他の方法によって決定してもよい。
【0049】
<アスファルト改質剤の含有量>
アスファルト混合物におけるアスファルト改質剤の含有量は、アスファルト舗装の締固め性と耐久性の観点から、アスファルト100質量部に対して、好ましく1質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは8質量部以上であり、そして、作業性の観点から、好ましくは40質量部以下、より好ましくは35質量部以下、更に好ましくは30質量部以下である。
【0050】
アスファルト混合物には、更に必要に応じて、その他の成分を含んでもよい。
【0051】
<アスファルト混合物の製造方法>
アスファルト混合物の具体的な製造方法としては、従来のプラントミックス方式、プレミックス方式等といわれるアスファルト混合物の製造方法が挙げられる。いずれも加熱した骨材にアスファルト及びポリエステルを添加する方法である。添加方法は、例えば、アスファルト及び上記アスファルト改質剤を予め溶解させたプレミックス方式、又はアスファルトにアスファルト改質剤を投入するプラントミックス法が挙げられる。
より具体的には、アスファルト混合物の製造方法は、当該混合する工程において、好ましくは、
(i)加熱した骨材に、アスファルトを添加及び混合した後、アスファルト改質剤を添加及び混合する、
(ii)加熱した骨材に、アスファルト及びアスファルト改質剤を同時に添加及び混合する、又は
(iii)加熱した骨材に、事前に加熱混合したアスファルトとアスファルト改質剤との混合物を添加及び混合する。
【0052】
(i)~(iii)の方法における加熱した骨材の温度は、アスファルト舗装の締固め性と耐久性の観点から、好ましくは130℃以上、より好ましくは160℃以上、更に好ましくは180℃以上であり、アスファルトの熱劣化を防止する観点から、好ましくは230℃以下、より好ましくは210℃以下、更に好ましくは200℃以下である。
【0053】
混合する工程において、アスファルト舗装の締固め性と耐久性の観点の観点から、混合温度は、好ましくは130℃以上、より好ましくは150℃以上、更に好ましくは170℃以上、より更に好ましくは180℃以上であり、アスファルトの熱劣化を防止する観点から、好ましくは230℃以下、より好ましくは210℃以下、更に好ましくは200℃以下である。混合する工程における混合時間は、特に限定されず、好ましくは30秒以上、より好ましくは1分以上、更に好ましくは2分以上、より更に好ましくは5分以上であり、時間の上限は、特に限定されず、好ましくは約30分程度である。
【0054】
アスファルト混合物の製造方法は、アスファルト舗装の締固め性と耐久性の観点から、混合する工程後、得られた混合物を上記の混合温度で保持する工程を有することが好ましい。
保持する工程においては、混合物を更に混合してもよいが、前述の温度以上を保持していればよい。
保持する工程において、混合温度は、好ましくは130℃以上、より好ましくは150℃以上、更に好ましくは170℃以上、より更に好ましくは180℃以上であり、そして、アスファルト混合物の熱劣化を防止する観点から、好ましくは230℃以下、より好ましくは210℃以下、更に好ましくは200℃以下である。保持する工程における保持時間は、好ましくは0.2時間以上、より好ましくは0.3時間以上、更に好ましくは0.5時間以上であり、そして、時間の上限は、特に限定されないが、例えば5時間程度である。
【0055】
[道路舗装方法]
アスファルト混合物は、道路舗装用として好適であり、道路舗装に使用される。
本発明の道路舗装方法は、前述のアスファルト混合物を道路に施工し、アスファルト舗装材層を形成する工程を有する。具体的には、道路舗装方法は、アスファルトと、前述の結晶性ポリエステルと、骨材とを混合する、アスファルト混合物を得る工程(工程1)、及び前記工程1で得られたアスファルト混合物を道路に施工してアスファルト舗装材層を形成する工程(工程2)を含む。アスファルト舗装材層は、通常は基層又は表層であり、締固め性と耐久性の観点から、好ましくは表層である。
【0056】
アスファルト舗装材層の厚さは、締固め性と耐久性の観点から、好ましくは3cm以上、より好ましくは4cm以上、更に好ましくは4.5cm以上であり、そして、好ましくは7cm以下、より好ましくは6cm以下、更に好ましくは5.5cm以下である。
アスファルト混合物は、公知の施工機械編成で、同様の方法によって締固め施工すればよい。加熱アスファルト混合物として使用する場合の締固め温度は、締固め性と耐久性の観点から、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、更に好ましくは130℃以上であり、そして、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。
【0057】
アスファルト混合物は、公知の施工機械編成で、同様の方法によって締固め施工すればよい。加熱アスファルト混合物として使用する場合の締固め温度は、締固め性と耐久性の観点から、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、更に好ましくは130℃以上であり、そして、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。
【実施例】
【0058】
各種物性については、以下の方法により、測定及び評価を行った。
なお、以下の実施例及び比較例において、特記しない限り、部及び%は質量基準である。
【0059】
(1)ポリエステルの酸価及び水酸基価
ポリエステルの酸価及び水酸基価は、JIS K0070:1992の方法に基づき測定した。ただし、測定溶媒のみJIS K0070:1992に規定のエタノールとエーテルとの混合溶媒から、アセトンとトルエンとの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更した。
【0060】
(2)ポリエステルの数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)
以下の方法により、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により数平均分子量及び重量平均分子量を求めた。
(i)試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mLになるように、試料をクロロホルムに、40℃で溶解させた。次いで、この溶液を孔径0.20μmのPTFEタイプメンブレンフィルター「DISMIC-25JP」(東洋濾紙(株)製)を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とした。
(ii)分子量測定
下記の測定装置と分析カラムを用い、溶離液としてクロロホルムを、毎分1mLの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させた。そこに試料溶液200μLを注入して測定を行った。試料の分子量は、あらかじめ作成した検量線に基づき算出した。このときの検量線には、数種類の単分散ポリスチレン(東ソー株式会社製のA-500(5.0×102)、A-1000(1.01×103)、A-2500(2.63×103)、A-5000(5.97×103)、F-1(1.02×104)、F-2(1.81×104)、F-4(3.97×104)、F-10(9.64×104)、F-20(1.90×105)、F-40(4.27×105)、F-80(7.06×105)、F-128(1.09×106))を標準試料として作成したものを用いた。括弧内は分子量を示す。
測定装置:「HLC-8320GPC」(東ソー株式会社製)
分析カラム:「TSKgel Super HZM」+「TSKgel Super H-RC」×2本(東ソー株式会社製)
【0061】
(3)ポリエステルの溶融粘度の測定
ポリエステルの溶融粘度は、「公益社団法人石油学会規格JPI-5s-54-99:アスファルト-回転粘度計による粘度試験方法」に準拠し、試験温度180℃で測定した。
具体的には、ポリエステル50gを測定セルに計量し、オーブンで30分加熱した溶融試料を得た。その後、180℃で2時間撹拌した。
測定は、B型粘度計(Brookfield社製、「DV1 VISCOMETER」;スピンドル:SC4-27、チャンバー:SC4-13R)を用いて、20rpm(上限値12,500mPa・s)の条件で測定した。ただし、上限を超えた試料については5rpm(上限値50,000mPa・s)の条件で測定した。
(4)ポリエステルのシートの厚さ測定
ポリエステルのシートの5か所に金属製の針をさし、金属製の針にポリエステルが付着した長さを測定した。測定した長さの平均値を、ポリエステルのシートの厚さとした。
【0062】
製造例1 (アスファルト改質剤AM1)
表1に示すポリエステルのアルコール成分と、テレフタル酸を、温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)及び没食子酸を添加し、マントルヒーター中で3時間かけて235℃まで昇温を行い235℃到達後7時間保持した。8.0kPaにて減圧反応を行い、表1に示す軟化点に達するまで反応を行った。
得られたポリエステルA1 9000gを、アルミホイルで作製した150mm四方の型に注ぎ入れた。この時のポリエステルのシートの厚さは4mmであった。ポリエステルのシートを室温で2時間かけて冷却しながら固化させた。
その後、固化したポリエステルのシートを取り出し、粉砕して、アスファルト改質剤AM1を得た。結果を表1に示す。
【0063】
製造例2 (アスファルト改質剤AM2)
表1に示すアジピン酸以外の原料を、温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)及び没食子酸を添加し、マントルヒーター中で235℃まで昇温を行い235℃到達後7時間保持した後8.0kPaにて1時間減圧反応を行った。その後、180℃まで冷却後、アジピン酸を投入し、210℃まで2時間かけて昇温後210℃で1時間保持し、減圧反応を行いながら、表1に示す軟化点に達するまで反応を行った。
得られたポリエステルB1 9000gを、アルミホイルで作製した150mm四方の型に注ぎ入れた。この時のポリエステルのシートの厚さは4mmであった。ポリエステルのシートを室温で2時間かけて冷却しながら固化させた。
その後、固化したポリエステルのシートを取り出し、粗粉砕して、アスファルト改質剤AM2を得た。結果を表1に示す。
【0064】
製造例3 (アスファルト改質剤AM3)
表1に示す原料モノマーを窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5L容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下にてジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)を添加し、140℃で6時間保持、さらに210℃まで6時間かけて昇温後、210℃にて1時間反応させた後、8.3kPaにて1時間反応させた。
得られたポリエステルC1 9000gを、アルミホイルで作製した150mm四方の型に注ぎ入れた。この時のポリエステルのシートの厚さは4mmであった。ポリエステルのシートを室温で2時間かけて冷却しながら固化させた。
その後、固化したポリエステルのシートを取り出し、粗粉砕して、アスファルト改質剤AM3を得た。結果を表1に示す。
【0065】
製造例4、5(アスファルト改質剤AM4及びAM5)
表1に示す原料モノマーを用いる以外は製造例1と同様にして、ポリエステルA2及びA3を得た。
得られたポリエステル9000gを、アルミホイルで作製した150mm四方の型に注ぎ入れた。この時のポリエステルのシートの厚さは4mmであった。ポリエステルのシートを室温で2時間かけて冷却しながら固化させた。
その後、固化したポリエステルのシートを取り出し、粗粉砕して、アスファルト改質剤AM4及びAM5を得た。結果を表1に示す。
【0066】
製造例6~8(アスファルト改質剤AM6~AM8)
表2に示す原料モノマーを用いる以外は製造例1と同様にして、ポリエステルA4~A6を得た。
得られたポリエステル9000gを、アルミホイルで作製した150mm四方の型に注ぎ入れた。この時のポリエステルのシートの厚さは4mmであった。その後、過剰量の水をポリエステルの上に注ぎ入れた。ポリエステルのシートを室温で2時間かけて冷却しながら固化させた。
その後、固化したポリエステルのシートを取り出し、粗粉砕して、アスファルト改質剤AM6~AM8を得た。結果を表2に示す。
【0067】
製造例9(アスファルト改質剤am1)
製造例7と同様にして、ポリエステルa1を得た。
得られたポリエステル9000gを、スチール製バット(12号;43×30cm)に注ぎ入れた。この時のポリエステルのシートの厚さは65mmであった。その後、過剰量の水をポリエステルの上に注ぎ入れた。ポリエステルのシートを室温で2時間かけて冷却しながら固化させた。
その後、固化したポリエステルのシートを取り出し、粗粉砕して、アスファルト改質剤am1を得た。結果を表2に示す。
【0068】
製造例10(アスファルト改質剤am2)
製造例8と同様にして、ポリエステルa2を得た。
得られたポリエステル9000gを、スチール製バット(12号;43×30cm)に注ぎ入れた。この時のポリエステルのシートの厚さは65mmであった。その後、過剰量の水をポリエステルの上に注ぎ入れた。ポリエステルのシートを室温で2時間かけて冷却しながら固化させた。
その後、固化したポリエステルのシートを取り出し、粗粉砕して、アスファルト改質剤am2を得た。結果を表2に示す。
【0069】
【0070】
【0071】
用いたアルコール成分の略称は以下の通りである。
BPA-EO:ビスフェノールAのポリオキシエチレン(2.2モル)付加物
BPA-PO:ビスフェノールAのポリオキシプロピレン(2.2モル)付加物
【0072】
実施例1
180℃に加熱した骨材(骨材の組成は以下を参照)15kgをアスファルト用混合機に入れ、180℃にて60秒間混合した。次いで改質II型アスファルト(東亜道路工業株式会社製、「HRバインダー」)822gを加えて、アスファルト用混合機にて1分間混合した。さらに、製造例1で得たアスファルト改質剤AM1 164gを加えて2分間混合し、アスファルト混合物を得た。
得られたアスファルト混合物を180℃で15分保管後、型枠に混合物約1200gを充填し、株式会社ナカジマ技販製アスファルト自動突き固め装置(NA-507)を用いて片面50回両面突き固めにて成型した後、室温まで15時間かけて放冷し、直径100mm、厚さ約63mmの円筒形のアスファルト供試体M-1を得た。
【0073】
<骨材の組成>
6号砕石 50.9質量部
砕砂1 10.4質量部
砕砂2 22.1質量部
細砂 10.4質量部
石粉(炭酸カルシウム) 6.2質量部
通過質量%:
ふるい目 15 mm: 100 質量%
ふるい目 10 mm: 85.6質量%
ふるい目 5 mm: 49.7質量%
ふるい目 2.5 mm: 44.6質量%
ふるい目 1.2 mm: 31.6質量%
ふるい目 0.6 mm: 21.3質量%
ふるい目 0.3 mm: 12.7質量%
ふるい目 0.15mm: 7.1質量%
【0074】
実施例2~9、比較例1~3
表3に示す配合に変更したこと以外、実施例1と同様にして、アスファルト供試体M-2~M-9、M-a1~M-a3を調製した。
【0075】
[評価]
〔マーシャル安定度〕
マーシャル試験機(株式会社ナカジマ技販製、「Model No.-504」)を用いて、アスファルト供試体の側面を、円弧形2枚の載荷板ではさみ、供試体温度が70℃にて、載荷速度50mm/minにより直径方向に破壊するまで荷重を加えた。破壊するまでの最大荷重をマーシャル安定度とした。マーシャル安定度の値が大きいほど、アスファルト舗装の耐久性に優れる。結果を表3に示す。
【0076】
〔充填度〕
(充填度)
アスファルト供試体の充填度を、次式に従い算出した。
充填度=(ポリエステル未添加時の空隙率)/(ポリエステル添加時の空隙率)
(空隙率)
充填度の算出に用いる空隙率は、次式に従い算出した。
空隙率=100×{1-(供試体かさ密度)/(理論密度)}
(各物性値)
空隙率の算出に用いる各物性は、以下の計算式に従い算出した。
供試体のかさ密度=(気中質量)/(表乾質量-水中質量)
理論密度=1/[{(1-アスファルト添加率)/100)/骨材比重(表乾)}+(アスファルト添加率)/100/1.04]
なお、表乾重量とは、供試体を水中に3分間浸したのち、表面を拭ったあとの質量である。
骨材比重(表乾)は、アスファルト吸収を加味した比重であり、定数「2.618」とした。結果を表3に示す。
【0077】
【0078】
本発明の製造方法により得られるポリエステルからなるアスファルト改質剤によれば、締固め性と耐久性とを両立した舗装面が形成されるアスファルト混合物を得られることがわかる。