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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】異常検知システム及び空気調和機
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/49 20180101AFI20241218BHJP
   F24F 11/52 20180101ALI20241218BHJP
   F24F 11/89 20180101ALI20241218BHJP
   G01K 7/24 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
F24F11/49
F24F11/52
F24F11/89
G01K7/24 M
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020208078
(22)【出願日】2020-12-16
(65)【公開番号】P2022095008
(43)【公開日】2022-06-28
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147304
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 知哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148493
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】六角 雄一
【審査官】安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-227829(JP,A)
【文献】特開2008-196726(JP,A)
【文献】特開2010-223477(JP,A)
【文献】特開2011-089662(JP,A)
【文献】国際公開第2018/154768(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0178989(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00 - 11/89
G01K 7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の温度センサ、及び冷媒を循環させるサイクル機構を有する空気調和機の異常を検知する異常検知システムであって、
前記複数の温度センサが測定した複数の測定温度を取得する温度取得部と、
前記温度取得部が取得した前記複数の測定温度に基づいて、前記空気調和機が正常であるか否かを判定する判定処理を行う判定部と、
前記判定部の判定結果を出力する出力部と、を備え、
前記判定部は、
前記空気調和機の空調運転の停止状態における前記複数の測定温度に基づいて、前記複数の温度センサの各々が正常であるか否かを判定する温度判定処理を行い、
前記温度判定処理において前記複数の温度センサの全てが正常であると判定した場合、前記サイクル機構における冷媒サイクルの向きが前記停止状態の前の運転状態における前記冷媒サイクルの向きと反対向きとなる逆サイクル運転の実行状態における前記複数の測定温度に基づいて、前記サイクル機構のどこに異常があるかを判定するサイクル判定処理を行う
異常検知システム。
【請求項2】
前記判定部は、前記温度判定処理において、前記複数の測定温度の代表値と前記複数の測定温度のそれぞれとを比較した比較結果に基づいて、前記複数の温度センサの各々が正常であるか否かを判定する、
請求項1に記載の異常検知システム。
【請求項3】
前記複数の温度センサは、屋内に配置された複数の第1温度センサと、屋外に配置された複数の第2温度センサと、を含み、
前記判定部は、
前記複数の第1温度センサの複数の第1測定温度の代表値と、前記複数の第1測定温度のそれぞれとを比較した第1比較結果に基づいて、前記複数の第1温度センサの各々が正常であるか否かを判定し、
前記複数の第2温度センサの複数の第2測定温度の代表値と、前記複数の第2測定温度のそれぞれとを比較した第2比較結果に基づいて、前記複数の第2温度センサの各々が正常であるか否かを判定する、
請求項1又は2に記載の異常検知システム。
【請求項4】
前記判定部は、前記複数の測定温度のそれぞれの経時変化に基づいて、前記複数の温度センサの各々が正常であるか否かを判定する、
請求項1に記載の異常検知システム。
【請求項5】
前記判定部は、前記複数の温度センサのうち少なくともいずれか1つの温度センサの測定温度の異常によって前記空気調和機の空調運転がエラー停止した場合に、前記複数の温度センサの各々が正常であるか否かを判定する、
請求項1~4のいずれか1項に記載の異常検知システム。
【請求項6】
前記判定部は、前記エラー停止から所定時間後に、前記複数の温度センサの各々が正常であるか否かを判定する、
請求項5に記載の異常検知システム。
【請求項7】
記判定部が前記温度判定処理において前記複数の温度センサの全てが正常であると判定した場合、前記サイクル機構における前記冷媒サイクルの向きが前記エラー停止前における前記冷媒サイクルの向きと反対向きとなる前記逆サイクル運転を実行させる空調制御部を更に備える、
請求項5又は6に記載の異常検知システム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の異常検知システムと、
空調運転を制御する空調制御部と、を備える、
空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常検知システム及び空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数台の室外機を備えた空気調和機において、取り付け不具合が起きている温度サーミスタ(温度センサ)を検出する空気調和機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5516295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
温度センサに異常が生じた場合、測定温度が異常温度となるおそれがあった。したがって、温度センサの測定温度が異常温度である場合、この原因が、温度センサ自体の異常であるか、温度センサの測定箇所の異常であるかの判別が困難であった。
【0005】
したがって、本発明の一態様は、空気調和機に設けられた複数の温度センサの異常を検知する異常検知システム及び空気調和機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る異常検知システムは、複数の温度センサを有する空気調和機の異常を検知する異常検知システムであって、前記複数の温度センサが測定した複数の測定温度を取得する温度取得部と、前記温度取得部が取得した前記複数の測定温度に基づいて、前記空気調和機が正常であるか否かを判定する判定処理を行う判定部と、前記判定部の判定結果を出力する出力部と、を備える。前記判定部は、前記空気調和機の空調運転の停止状態における前記複数の測定温度に基づいて、前記複数の温度センサの各々が正常であるか否かを判定する温度判定処理を行う。
【0007】
本発明の一態様に係る空気調和機は、前記異常検知システムと、空調運転を制御する空調制御部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る異常検知システムと空気調和機のブロック図である。
図2図2は、図1に示す異常検知システムの温度判定処理の動作を説明するためのフローチャートである。
図3図3は、冷房運転中に空気調和機がエラー停止し、全ての温度センサが正常であると判定された場合に行われるサイクル判定処理の動作を説明するためのフローチャートである。
図4図4は、暖房運転中に空気調和機がエラー停止し、全ての温度センサが正常であると判定された場合に行われるサイクル判定処理の動作を説明するためのフローチャートである。
図5図5は、変形例に係る空気調和機のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に説明する実施形態及び変形例は、本開示の一例に過ぎず、本開示は、実施形態及び変形例に限定されない。この実施形態及び変形例以外であっても、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0010】
(実施形態)
以下、本実施形態の異常検知システム10及び空気調和機20について、図1を参照して説明する。
【0011】
異常検知システム10は、空気調和機20に設けられた複数の温度センサに異常があるか否かを検知するように構成されている。
【0012】
空気調和機20は、空調制御部21と、通信部22と、室内熱交換器23と、四方弁24と、室外熱交換器25と、膨張弁26と、圧縮機27と、複数の温度センサ(第1温度センサ281~285、第2温度センサ291~295)と、を備え、空調運転を行うように構成されている。空調運転は、冷房運転と暖房運転を含む。
【0013】
室内熱交換器23、四方弁24、室外熱交換器25、膨張弁26、及び圧縮機27によって、冷媒を循環させるサイクル機構200が構成されている。このサイクル機構200において、冷房運転と暖房運転とでは、冷媒が循環する方向が逆になる。
【0014】
空気調和機20は、室内機201と、室外機202と、を備えている。
【0015】
サイクル機構200の構成要素のうち、室内熱交換器23は、室内機201に設けられている。サイクル機構200の構成要素のうち、四方弁24、室外熱交換器25、膨張弁26、及び圧縮機27は、室外機202に設けられている。
【0016】
空調制御部21は、空調運転を制御する。具体的には、空調制御部21は、サイクル機構200、及び室内機201に設けられたファン等を制御して、空調を実行する。
【0017】
通信部22は、通信インターフェースであり、ルータ、ゲートウェイ等を介して通信回線NTに接続されている。通信部22は、通信回線NTを介してサーバ30の通信部31と通信可能である。
【0018】
複数の温度センサは、室内機201に設けられた複数の第1温度センサ281、282、283、284、285と、室外機202に設けられた複数の第2温度センサ291、292、293、294、295と、を含んでいる。複数の温度センサとしては、例えば、サーミスタを用いることができる。
【0019】
第1温度センサ281~285は、例えば、それぞれ、室内機201の吸気口から吸気された空気(室内温度)、吹出し口から吹き出される空気、室内熱交換器23を通過する前後それぞれの冷媒、室内ファンの駆動モータ、の温度を測定する。
【0020】
第2温度センサ291~295は、例えば、それぞれ、外気温、室外熱交換器25を通過する冷媒、膨張弁26を通過する冷媒、圧縮機27の吸込側(吸込温度)と吐出側(吐出温度。以下、単に「吐出温度」ともいう。)それぞれの冷媒の温度を測定する。
【0021】
空調制御部21は、空調運転時に、複数の温度センサ(第1温度センサ281~285、第2温度センサ291~295)それぞれの測定温度を所定周期(例えば、1分、5分、10分など)で取得し、測定温度に異常が無いかを判断する。空調制御部21は、測定温度に異常が無いかの判断のために、取得した各温度センサの測定温度と、各温度センサに対応する予め定められた温度閾値とを比較する。空調制御部21は、複数の温度センサの複数の測定温度のうち、1つでも対応する温度閾値を超えた場合、サイクル機構200に何らかの異常があると判断し、空調運転をエラー停止する。測定温度に異常が無いかの判断はこれに限らず、複数の温度センサの測定温度同士を比較して、正常な状態とセンサ測定温度の大小が逆転または差が閾値外となった場合にサイクル機構200に何らかの異常があると判断してもよい。
【0022】
空調制御部21は、空調運転をエラー停止した場合、各温度センサの測定温度を、通信部22、通信回線NT、及び通信部31を介して異常検知システム10に送信する。具体的には、空調制御部21は、エラー停止から所定時間経過後の各温度センサの測定温度を異常検知システム10に送信する。所定時間とは、各温度センサの温度が定常温度に変化するまでの時間よりも長いことが好ましく、例えば15分、30分、1時間等である。
【0023】
異常検知システム10は、温度取得部11と、判定部12と、出力部13と、を備えている。異常検知システム10は、複数の温度センサ(第1温度センサ281~285、第2温度センサ291~295)の各々が正常であるか否かを判定する温度判定処理を行うように構成されている。
【0024】
温度取得部11は、第1温度取得部111と、第2温度取得部112と、を備えている。第1温度取得部111は、複数の第1温度センサ281~285の測定温度(複数の第1測定温度)を取得する。第2温度取得部112は、複数の第2温度センサ291~295の測定温度(複数の第2測定温度)を取得する。
【0025】
異常検知システム10は、以下のようにして、温度判定処理を行う。温度判定処理では、第1温度センサ281~285の各々が正常であるか否かの判定と、第2温度センサ291~295の各々が正常であるか否かの判定とは、別々に行われる。
【0026】
判定部12は、第1温度取得部111が取得した複数の第1測定温度の平均値を、複数の第1測定温度の代表値(第1代表値Trp1)として算出する。そして、判定部12は、複数の第1測定温度のそれぞれと第1代表値Trp1とを比較する。具体的には、判定部12は、複数の第1測定温度のそれぞれと第1代表値Trp1との差分を算出する。複数の差分それぞれの絶対値が全て所定の温度閾値Tth(例えば、3℃)未満である場合、判定部12は、複数の第1温度センサ281~285の全てが正常であると判定する。複数の差分の中に、絶対値が温度閾値Tth以上の差分がある場合、判定部12は、その差分に対応する第1温度センサが異常であると判定し、その他の第1温度センサは正常であると判定する。このようにして、判定部12は、複数の第1温度センサのうち、異常のある第1温度センサを特定する。
【0027】
具体的な例として、複数の第1温度センサ281~285の測定温度がそれぞれ以下に示す表1のとおりであった場合、第1代表値Trp1は、26.6℃となる。上述のように、温度閾値Tthを3℃と設定している場合、第1温度センサ285の測定温度30℃と第1代表値Trp1との差分の絶対値は3.4℃であり、これは、温度閾値Tth以上となる。したがって、判定部12は、第1温度センサ285が異常であると判定し、その他の第1温度センサ281~284は、正常であると判定する。
【0028】
【表1】
【0029】
判定部12は、第2温度取得部112が取得した複数の第2測定温度の平均値を、複数の第2測定温度の代表値(第2代表値Trp2)として算出する。そして、判定部12は、複数の第2測定温度のそれぞれと第2代表値Trp2とを比較する。具体的には、判定部12は、複数の第2測定温度のそれぞれと第2代表値Trp2との差分を算出する。複数の差分それぞれの絶対値が全て温度閾値Tth未満である場合、判定部12は、複数の第2温度センサ291~295の全てが正常であると判定する。複数の差分の中に、絶対値が温度閾値Tth以上の差分がある場合、判定部12は、その差分に対応する第2温度センサが異常であると判定し、その他の第2温度センサは正常であると判定する。このようにして、判定部12は、複数の第2温度センサのうち、異常のある第2温度センサを特定する。
【0030】
具体的な例として、複数の第2温度センサ291~295の測定温度がそれぞれ以下に示す表2のとおりであった場合、第2代表値Trp2は、31.8℃となる。上述のように、温度閾値Tthを3℃と設定している場合、第2温度センサ294の測定温度35℃と第2代表値Trp2との差分の絶対値は3.2℃であり、これは、温度閾値Tth以上となる。したがって、判定部12は、第2温度センサ294が異常であると判定し、その他の第2温度センサ291~293、295は、正常であると判定する。
【0031】
【表2】
【0032】
上記では、例として、複数の第1温度センサ281~285及び複数の第2温度センサ291~295それぞれに1つずつ異常のある温度センサが含まれている場合を説明したが、これに限られない。複数の第1温度センサ281~285及び複数の第2温度センサ291~295のいずれか一方のみに異常のある温度センサが含まれている場合や、複数の第1温度センサ281~285に2つ以上、異常のある温度センサが含まれている場合等もある。また、複数の第1温度センサ281~285及び複数の第2温度センサ291~295の全てが正常である場合ももちろんある。
【0033】
次に、異常検知システム10の温度判定処理の動作について、図2に示すフローチャートを用いて説明する。ここでは、異常検知システム10による複数の第1温度センサ281~285に異常があるか否かを判定する動作について説明する。
【0034】
まず、第1温度取得部111は、室内機201に設けられた複数の第1温度センサ281~285それぞれの測定温度(複数の第1測定温度)を取得する(S1)。
【0035】
判定部12は、複数の第1測定温度から第1代表値Trp1を算出する(S2)。
【0036】
判定部12は、複数の第1測定温度それぞれと第1代表値Trp1との差分を算出する(S3)。
【0037】
判定部12は、複数の差分の絶対値が全て温度閾値Tth未満であるか否かの判定処理を行う(S4)。
【0038】
複数の差分の絶対値が全て温度閾値Tth未満である場合(S4:YES)、判定部12は、全ての第1温度センサが正常であると判定する(S5)。
【0039】
複数の差分の全ての絶対値が温度閾値Tth未満でない場合(S4:NO)、判定部12は、異常のある第1温度センサを特定する(S6)。
【0040】
なお、異常検知システム10による複数の第2温度センサ291~295に異常があるか否かを判定する温度判定処理の動作については、複数の第1温度センサ281~285に異常があるか否かを判定する上述の動作と同様のため、説明は省略する。
【0041】
温度判定処理において、判定部12が異常のある温度センサを特定した場合、出力部13は、異常のある温度センサを識別する識別情報を含む判定結果を、通信部31及び通信回線NTを介して空気調和機20の通信部22に出力する。空気調和機20は、受信した判定結果を、例えば、修理業者の端末に出力する。これにより、修理業者は、空調運転のエラー停止の原因が温度センサの異常であることを事前に把握することができるので、異常箇所を特定する作業を省略して修理作業時間の短縮を図ることができる。
【0042】
一方、温度判定処理において、判定部12が複数の温度センサ(第1温度センサ281~285、第2温度センサ291~295)の全てが正常であると判定した場合、出力部13は、全ての温度センサが正常であることを示す判定結果を空気調和機20に出力する。具体的には、出力部13は、全ての温度センサが正常であることを示す判定結果を通信部31及び通信回線NTを介して空気調和機20の通信部22に出力する。空気調和機20は、受信した判定結果を、例えば、修理業者の端末に出力する。
【0043】
このように、本実施形態によれば、空調制御部21が空調運転をエラー停止した場合に、エラー停止の原因が温度センサの異常によるものか否かを判定することができる。また、温度センサの異常がエラー停止の原因である場合には、異常のある温度センサを特定することができる。
【0044】
更に、本実施形態の異常検知システム10は、判定部12が複数の温度センサの全てが正常であると判定した場合、サイクル機構200のどこに異常があるかを判定するサイクル判定処理を行う。
【0045】
具体的には、判定部12が複数の温度センサの全てが正常であると判定した場合、異常検知システム10は、空調制御部21に逆サイクル運転を実行させる。逆サイクル運転とは、エラー停止直前に行っていた空調運転とは冷媒のサイクル方向が逆方向の空調運転を意味する。例えば、エラー停止直前の空調運転が冷房運転である場合、逆サイクル運転は、暖房運転となる。判定部12が複数の温度センサの全てが正常であると判定した場合、出力部13は、通信部31及び通信回線NTを介して空気調和機20の通信部22に逆サイクル運転の指示を出力する。
【0046】
空気調和機20が逆サイクル運転の指示を受けると、空調制御部21は、逆サイクル運転を実行する。
【0047】
空調制御部21は、逆サイクル運転を開始してから所定時間経過後に、複数の温度センサ(第1温度センサ281~285、第2温度センサ291~295)それぞれの測定温度を取得する。空調制御部21は、取得したそれぞれの測定温度を、通信部22、通信回線NT、及び通信部31を介して異常検知システム10に送信する。所定時間とは、逆サイクル運転のサイクル状態が安定するまでの時間よりも長いことが好ましく、例えば5分、10分、15分等である。
【0048】
異常検知システム10の判定部12は、各測定温度に基づいて、サイクル機構200のどこに異常があるかを判定する。
【0049】
具体的には、逆サイクル運転が暖房運転である場合、判定部12は、例えば、下式1及び2が成立するか否かを判定することにより、サイクル機構200のどこに異常があるかを判定する。
吐出温度>室内熱交換器温度>室内温度+5 ・・・(1)
室外温度>室外熱交換器温度 ・・・(2)
【0050】
また、逆サイクル運転が冷房運転である場合、判定部12は、例えば、下式3及び4が成立するか否かを判定することにより、サイクル機構200のどこに異常があるかを判定する。
吐出温度>室外熱交換器温度>室外温度 ・・・(3)
室内温度>室内熱交換器温度+5 ・・・(4)
【0051】
次に、異常検知システム10のサイクル判定処理の動作について、図3及び図4に示すフローチャートを用いて説明する。図3は、エラー停止直前の空調運転が冷房運転であり、逆サイクル運転が暖房運転である場合の動作を示すフローチャートである。図4は、エラー停止直前の空調運転が暖房運転であり、逆サイクル運転が冷房運転である場合の動作を示すフローチャートである。まず、図3を用いて、逆サイクル運転が暖房運転である場合の異常検知システム10の動作について説明する。
【0052】
空調制御部21が冷房運転中に空調運転をエラー停止し、異常検知システム10が温度判定処理を実行し、判定部12が複数の温度センサの全てが正常であると判定すると(図2:S5)、異常検知システム10は、空調制御部21に暖房運転を開始させる(S11)。
【0053】
異常検知システム10は、暖房運転のサイクル状態が安定する所定時間が経過するまで待機する(S12)。
【0054】
温度取得部11は、空気調和機20に設けられた複数の温度センサ(第1温度センサ281~285、第2温度センサ291~295)それぞれの測定温度(複数の測定温度)を取得する(S13)。
【0055】
判定部12は、取得した複数の測定温度の中から、吐出温度(室内機201の吹出し口の温度)、室内熱交換器温度、及び室内温度(室内機201の給気口の温度)を用いて、上記式1が成立するか否かの判定処理を行う(S14)。
【0056】
上記式1が成立する場合(S14:YES)、判定部12は、取得した複数の測定温度の中から、室外温度(外気温)及び室外熱交換器温度を用いて、上記式2が成立するか否かの判定処理を行う(S15)。
【0057】
上記式2が成立する場合(S15:YES)、判定部12は、サイクル機構200のうち、四方弁24に異常があると判定する(S16)。
【0058】
上記式1が成立しない場合(S14:NO)、判定部12は、サイクル機構200のうち、圧縮機27等に異常があると判定する(S17)。具体的には、判定部12は、圧縮機27の異常、膨張弁26の異常、又は冷媒漏洩による冷媒欠乏などの冷媒の異常であると判定する。
【0059】
上記式2が成立しない場合(S15:NO)、上記式1が成立しない場合(S14:NO)と同様、判定部12は、サイクル機構200のうち、圧縮機27等に異常があると判定する(S17)。
【0060】
上記式1が成立するか否かの判定処理(S14)と上記式2が成立するか否かの判定処理(S15)とは同時に行っても良いし、また順序を入れ替えて行ってもよい。また、上記式1または上記式2のいずれか一方のみが成立する(S14とS15のいずれか一方のみYES)場合には、圧縮機27は正常であるとみなし、膨張弁26の異常、または冷媒漏洩による冷媒欠乏などの冷媒の異常と判定するようにしてもよい。さらに、上記式1が成立するか否かの判定処理(S14)と上記式2が成立するか否かの判定処理(S15)の少なくともいずれか一方が成立しない場合(S14:NOまたはS15:NO)に逆サイクル運転中の複数の温度センサ(第1温度センサ281~285、第2温度センサ291~295)それぞれの測定温度を取得し、一定以上の温度変化が認められる場合にも、圧縮機27は正常であるとみなし、膨張弁26の異常、または冷媒漏洩による冷媒欠乏などの冷媒の異常と判定するようにしてもよい。
【0061】
次に、図4を用いて、逆サイクル運転が冷房運転である場合の異常検知システム10の動作について説明する。
【0062】
空調制御部21が暖房運転中に空調運転をエラー停止し、異常検知システム10が温度判定処理を実行し、判定部12が複数の温度センサの全てが正常であると判定すると(図2:S5)、異常検知システム10は、空調制御部21に冷房運転を開始させる(S21)。
【0063】
異常検知システム10は、冷房運転のサイクル状態が安定する所定時間が経過するまで待機する(S22)。
【0064】
温度取得部11は、空気調和機20に設けられた複数の温度センサ(第1温度センサ281~285、第2温度センサ291~295)それぞれの測定温度(複数の測定温度)を取得する(S23)。
【0065】
判定部12は、取得した複数の測定温度の中から、吐出温度(室内機201の吹出し口の温度)、室内熱交換器温度、及び室内温度(室内機201の給気口の温度)を用いて、上記式3が成立するか否かの判定処理を行う(S24)。
【0066】
上記式3が成立する場合(S24:YES)、判定部12は、取得した複数の測定温度の中から、室外温度(外気温)及び室外熱交換器温度を用いて、上記式4が成立するか否かの判定処理を行う(S25)。
【0067】
上記式4が成立する場合(S25:YES)、判定部12は、サイクル機構200のうち、四方弁24に異常があると判定する(S26)。
【0068】
上記式3が成立しない場合(S24:NO)、判定部12は、サイクル機構200のうち、圧縮機27等に異常があると判定する(S27)。具体的には、判定部12は、圧縮機27の異常、膨張弁26の異常、又は冷媒の異常(冷媒が無い等)であると判定する。
【0069】
上記式4が成立しない場合(S25:NO)、上記式3が成立しない場合(S24:NO)と同様、判定部12は、サイクル機構200のうち、圧縮機27等に異常があると判定する(S27)。
【0070】
上記式3が成立するか否かの判定処理(S24)と上記式4が成立するか否かの判定処理(S25)とは同時に行っても良いし、また順序を入れ替えて行ってもよい。また、上記式3または上記式4のいずれか一方のみが成立する(S24とS25のいずれか一方のみYES)場合には、圧縮機27は正常であるとみなし、膨張弁26の異常、または冷媒漏洩による冷媒欠乏などの冷媒の異常と判定するようにしてもよい。さらに、上記式3が成立するか否かの判定処理(S24)と上記式4が成立するか否かの判定処理(S25)の少なくともいずれか一方が成立しない場合(S24:NOまたはS25:NO)に逆サイクル運転中の複数の温度センサ(第1温度センサ281~285、第2温度センサ291~295)それぞれの測定温度を取得し、一定以上の温度変化が認められる場合にも、圧縮機27は正常であるとみなし、膨張弁26の異常、または冷媒漏洩による冷媒欠乏などの冷媒の異常と判定するようにしてもよい。
【0071】
以上のようにして、サイクル判定処理により、サイクル機構200のどこに異常があるかが判定されると、出力部13は、判定結果を通信部31及び通信回線NTを介して空気調和機20の通信部22に出力する。空気調和機20は、受信した判定結果を、例えば、修理業者の端末に出力する。
【0072】
このように、本実施形態によれば、温度判定処理によって、エラー停止の原因が温度センサの異常によるものか否かを判定し、異常のある温度センサを特定することができるだけでなく、サイクル機構200のどこに異常があるかを特定することもできる。すなわち、空調運転がエラー停止した場合に、その原因が温度センサ自体の異常であるか、温度センサが温度を測定している測定箇所(例えば四方弁)の異常であるかを判定し、どこに異常があるかを特定することができる。したがって、修理業者は、異常箇所を特定する作業を省略して修理作業時間の短縮を図ることができる。
【0073】
(変形例)
以下、本実施形態の異常検知システム10の変形例について説明する。以下の説明では、上述した実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0074】
(変形例1)
上記実施形態では、判定部12は、エラー停止から所定時間後に、複数の温度センサ(第1温度センサ281~285、第2温度センサ291~295)の各々が正常であるか否かを判定する例を示したが、これに限られない。判定部12は、複数の測定温度のそれぞれの経時変化に基づいて、複数の温度センサの各々が正常であるか否かを判定してもよい。具体的には、空調制御部21が、エラー停止から所定時間後までの時間的に連続した測定温度を所定時間後にまとめて異常検知システム10に送信する。そして、所定時間における測定温度の経時変化の曲線と、温度センサの正常時における経時変化の曲線との類似度を算出する。類似度は、例えば相互相関係数などが用いられる。そして、判定部12は、類似度が閾値未満である場合、温度センサが正常であると判定し、類似度が閾値以上である場合、温度線が異常であると判定する。
【0075】
(変形例2)
上記実施形態では、異常検知システム10は、サーバ30に設けられているが、これに限られない。異常検知システム10は、図5に示すように、空気調和機20に設けられていてもよい。この場合も、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0076】
(変形例3)
上記実施形態では、複数の第2温度センサ291~295に関し、判定部12が複数の第2測定温度のそれぞれと第2代表値Trp2とを比較して、第2温度センサ291~295に異常があるか否かを判定する例を示したが、これに限られない。例えば、温度取得部11が、通信回線NTを介して、室外機202が設けられた地域の気象データを有する気象サーバからその地域の温度データを取得し、判定部12が当該温度データと複数の第2測定温度のそれぞれとを比較するようにしてもよい。
【0077】
(変形例4)
上記実施形態では、複数の測定温度の平均値を代表値として使用する例を示したが、これに限られない。代表値として、平均値に代えて、中央値、最頻値等を用いてもよい。
【符号の説明】
【0078】
10 異常検知システム
11 温度取得部
12 判定部
13 出力部
20 空気調和機
21 空調制御部
22 通信部
23 室内熱交換器
24 四方弁
25 室外熱交換器
26 膨張弁
27 圧縮機
281~285 第1温度センサ
291~295 第2温度センサ
図1
図2
図3
図4
図5