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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
   D06F 37/12 20060101AFI20241218BHJP
【FI】
D06F37/12 H
D06F37/12 J
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020210951
(22)【出願日】2020-12-21
(65)【公開番号】P2022097795
(43)【公開日】2022-07-01
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147304
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 知哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148493
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】三角 勝
(72)【発明者】
【氏名】公文 ゆい
【審査官】遠藤 邦喜
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0149202(US,A1)
【文献】実開昭53-070774(JP,U)
【文献】中国実用新案第206157403(CN,U)
【文献】特開平10-015288(JP,A)
【文献】実開昭49-150857(JP,U)
【文献】特開2003-164692(JP,A)
【文献】特開2012-187200(JP,A)
【文献】特開2006-068189(JP,A)
【文献】特開平09-253376(JP,A)
【文献】実公昭46-035591(JP,Y1)
【文献】実開昭49-111175(JP,U)
【文献】実開昭62-151861(JP,U)
【文献】実開昭63-028488(JP,U)
【文献】特開昭63-068200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 37/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被洗濯物が入れられる洗濯槽と、
前記洗濯槽の内周面から前記洗濯槽の中心側に突出し、前記洗濯槽内で前記洗濯槽の内周面に沿って移動される前記被洗濯物に接触する側面突出部と、
前記洗濯槽の底部に配置され、前記洗濯槽に対して回転可能な円盤状の回転体と、
前記洗濯槽の底部から上方に延びる軸部と、
前記軸部から前記洗濯槽の内周面側に延びるブラシと、を備え、
前記側面突出部の下端は、前記回転体の外周縁の少なくとも一部よりも下側に位置
前記側面突出部は、前記洗濯槽の中心側から視て、左右方向長さが上下方向の長さよりも大きく、
前記側面突出部の上端は、前記ブラシの上下方向中央よりも低い位置にある、
洗濯機。
【請求項2】
前記側面突出部の表面は、前記洗濯槽の内周面と比較して、摩擦係数が大きく形成された、
請求項1に記載の洗濯機。
【請求項3】
前記側面突出部の厚みは、前記洗濯槽の周方向における前記側面突出部の両端から中心側に向かうほど、前記洗濯槽の中心側へ連続的に盛り上がる、
請求項1に記載の洗濯機。
【請求項4】
前記側面突出部は、上端から前記洗濯槽の周方向に沿って下側に傾く部分を含み、且つ前記洗濯槽の中心側から視て上向きの円弧状である、
請求項1からの何れかに記載の洗濯機。
【請求項5】
前記側面突出部の上端は、洗濯時に回転される前記洗濯槽の貯留水位よりも低い位置にある、
請求項1からの何れかに記載の洗濯機。
【請求項6】
被洗濯物が入れられる洗濯槽と、
前記洗濯槽の内周面から前記洗濯槽の中心側に突出し、前記洗濯槽内で前記洗濯槽の内周面に沿って移動される前記被洗濯物に接触する側面突出部と、
前記洗濯槽の底部に配置され、前記洗濯槽に対して回転可能な円盤状の回転体と、を備え、
前記側面突出部の下端は、前記回転体の外周縁の少なくとも一部よりも下側に位置し、
前記側面突出部は、前記洗濯槽の中心側から視て、左右方向長さが上下方向の長さよりも大きく、
前記側面突出部は、前記回転体の外周よりも前記洗濯槽の中心側に突出する、
濯機。
【請求項7】
前記回転体は、前記回転体の上面から上方に突出する底面突出部を有し、
前記側面突出部の上端と、前記底面突出部の上端とは、互いに異なる高さにある、
請求項に記載の洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の靴洗浄機では、洗剤及び水が貯留された洗濯槽内でブラシ軸を回転させることで、ブラシ軸の周囲に配置された靴をブラシで洗浄する。次いで靴洗浄機は、洗濯槽を排水して高速回転させる脱水動作を行う。靴洗浄機は脱水動作を一時停止し、ブラシ軸の反転によってブラシが靴に擦れることで、靴の向きを変える。その後、靴洗浄機は脱水動作を再度行う。これにより、洗濯槽の槽壁面に靴底が接していることに起因する靴の脱水不足を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭62-41634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の靴洗浄機では、ブラシ軸の反転時に靴底が槽壁面に接している場合、靴底と槽壁面との摩擦が大きいため、ブラシが靴に擦れても靴の向きが変わらない場合がある。毛丈が長いブラシを用いる場合、靴をムラなく洗浄できる一方、ブラシの剛性が小さいため、ブラシが靴に擦れても靴の向きが変わらない可能性が高い。一方、ブラシの毛丈を短くしてブラシの剛性を高めると、ブラシと擦れる靴を傷つけたり、ブラシが槽壁面に接している靴に届かずに空転したりする可能性がある。
【0005】
本開示の一態様は、被洗濯物を傷つけることを抑制しつつ、洗濯槽の内周面に沿って移動される被洗濯物の向きを変えることができる洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る洗濯機は、被洗濯物が入れられる洗濯槽と、前記洗濯槽の内周面から前記洗濯槽の中心側に突出し、前記洗濯槽内で前記洗濯槽の内周面に沿って移動される前記被洗濯物に接触する側面突出部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】洗濯機の斜視図である。
図2】洗濯槽及び駆動機構の斜視断面図である。
図3】洗濯槽の平面図である。
図4】回転体、軸部、ブラシ、及び側面突出部の斜視図である。
図5】洗濯運転時において、軸部側から視た側面突出部の正面図である。
図6】洗濯運転時において、図4に示す構成を軸線及び側面突出部の頂部を通る垂直面で切断した縦断面図である。
図7A】洗濯運転時における側面突出部周辺の拡大平面図である。
図7B】洗濯運転時における側面突出部周辺の拡大平面図である。
図8】回転体の斜視図である。
図9】回転体の平面図である。
図10図9に示すA-A線の矢視方向断面図である。
図11図6において回転体が180度回転した、回転体、軸部、ブラシ、及び側面突出部の斜視図である。
図12A】転がし動作時における側面突出部周辺の拡大平面図である。
図12B】転がし動作時における側面突出部周辺の拡大平面図である。
図13A】転がし動作時における底面突出部周辺の拡大正面図である。
図13B】転がし動作時における底面突出部周辺の拡大正面図である。
図14】転がし動作時における底面突出部周辺の縦断面図である。
図15A】転がし動作時における外側突出部周辺の縦断面図である。
図15B】転がし動作時における外側突出部周辺の縦断面図である。
図16A】変形例における側面突出部及び底面突出部の拡大正面図である。
図16B】変形例における側面突出部及び底面突出部の拡大正面図である。
図17図6において、変形例の側面突出部を設けた縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、図面については、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0009】
[洗濯機1の概略構成]
洗濯機1の概略構成を説明する。図1は、洗濯機1の斜視図である。図2は、洗濯槽12及び駆動機構50の斜視断面図である。図3は、洗濯槽12の平面図である。以下の説明では、図1の上下方向が洗濯機1の上下方向である。本実施形態の洗濯機1は、被洗濯物である靴9(図5等参照)を洗濯及び脱水する洗濯脱水機を例示する。
【0010】
図1図3に示すように、洗濯機1は、外箱10、上面部材20、上蓋30、ベース部材40、駆動機構50等を含む。外箱10の外形は、上下に開口する角筒状である。外箱10の上側に上面部材20が設けられ、外箱10の下側にベース部材40が設けられる。上蓋30は、上面部材20を上下方向に貫通する開口部21を開閉可能である。水槽11は、外箱10内に配置され、上方に開口した略有底円筒状である。水槽11の上端開口は、開口部21に接続されている。水槽11の底部には、水槽11内の水を排水するための排水部が設けられている。
【0011】
水槽11内には、被洗濯物である靴9が入れられる洗濯槽12が設けられる。洗濯槽12は、水槽11と同様に上方に開口した略有底円筒状であり、水槽11に対して回転可能である。洗濯槽12の回転中心を通る軸線Oは、上下方向に延びる。洗濯槽12の底部には水抜部が形成され、且つ洗濯槽12の周壁には複数の排水孔が形成されている。洗濯槽12の上端縁には、バランスリング14が設けられる。バランスリング14を上下方向に貫通する開口は、洗濯槽12内に上方から靴9を出し入れするための内側開口22である。
【0012】
洗濯機1は、洗濯槽12の底部に配置された回転体13を含む。例えば回転体13は、洗濯槽12内の水を撹拌するための円盤状のパルセータである。回転体13は、洗濯槽12に対して回転可能である。回転体13の回転中心を通る軸線は、洗濯槽12の軸線Oと略一致している。洗濯槽12の下方には、洗濯槽12と回転体13とを回転駆動する駆動機構50が設けられる。駆動機構50と、洗濯槽12及び回転体13との間には、クラッチ51が設けられている。駆動機構50の動力が洗濯槽12及び回転体13に伝達される状態と、駆動機構50の動力が回転体13のみに伝達される状態とが、クラッチ51によって切り替えられる。
【0013】
洗濯機1は、洗濯槽12の底部から上方に延びる軸部60と、軸部60から洗濯槽12の内周面12A側に延びるブラシ61と含む。本例では、軸部60は回転体13の上面中央から上方に延びる円筒状であり、回転体13と共に回転可能である。ブラシ61は、軸部60の外周面から内周面12A側に延び、且つ上下方向に並ぶ複数の毛束によって構成された縦長ブラシである。
【0014】
ブラシ61の上端は、内側開口22の下方に配置される。ブラシ61の下端は、回転体13の上面に対して、間隔を空けて上側から対向する。ブラシ61の毛先は、内周面12Aと間隔を空けて対向する。本例では、二つのブラシ61が、軸部60に180度間隔で設けられ、互いに反対方向に延びる。ブラシ61の数量、位置、形状等は、本実施形態に限定されない。
【0015】
洗濯機1の動作概要を説明する。洗濯機1は、洗濯機1の動作を制御するための制御部90を備える。制御部90は、CPU、RAM、ROM等を含むコントローラであるが、MCU、MPU等でもよい。制御部90が駆動機構50を制御することで、洗濯機1で以下の運転動作が実行される。
【0016】
まず洗濯運転では、洗剤及び水が溜められた洗濯槽12内で、靴9が洗濯される。具体的には、駆動機構50はクラッチ51によって、洗濯槽12及び回転体13のうちで回転体13と接続される。駆動機構50の動力が回転体13に伝達されて、軸線Oを中心に回転体13が回転駆動されると共に、軸部60も回転体13と一体に回転する。軸部60に設けられた二つのブラシ61も、軸線Oを中心に回転する。
【0017】
軸線Oを中心とする回転方向は、洗濯槽12の周方向Cと略平行である。周方向Cに回転するブラシ61の先端が描く回転軌跡Tは、軸線Oを中心とした円形であり、且つ回転体13の外周Pよりも小径である(図3参照)。回転軌跡T内で回転するブラシ61が、軸部60の外周側にある靴9と接触することで、靴9が洗濯される。その後、洗剤及び水が洗濯槽12の水抜部及び排水孔から排出される。
【0018】
上記の洗濯運転後、以下の脱水運転が行われる。具体的には、まず洗剤及び水が排出された洗濯槽12において、洗濯運転と同様に回転体13及びブラシ61を回転させる転がし動作が実行される。本例の転がし動作では、回転体13及びブラシ61が所定時間又は所定回数、交互に正転及び反転される。これにより、靴9が洗濯槽12から剥がされて分散されるが、詳細は後述する。
【0019】
次に、洗剤及び水が排出された洗濯槽12を回転させる槽回転動作が実行される。槽回転動作では、駆動機構50はクラッチ51によって、洗濯槽12及び回転体13のうちで洗濯槽12と接続される。駆動機構50の動力が洗濯槽12に伝達されて、軸線Oを中心に洗濯槽12が回転駆動される。洗濯槽12内にある靴9に遠心力が作用して、靴9が脱水される。なお槽回転動作では、駆動機構50が洗濯槽12及び回転体13と接続されて、洗濯槽12及び回転体13が共に回転駆動されてもよい。
【0020】
[側面突出部100]
側面突出部100の詳細を説明する。図4は、回転体13、軸部60、ブラシ61、及び側面突出部100の斜視図である。図5は、軸部60側から視た側面突出部100の正面図である。図6は、図4に示す構成を軸線O及び側面突出部100の頂部101Aを通る垂直面で切断した縦断面図である。図7A及び図7Bは、洗濯運転時における側面突出部100周辺の拡大平面図である。以下の説明では、側面突出部100を軸線O側から視た状態を、側面突出部100の正面視とする。
【0021】
図2図4に示すように、側面突出部100は、洗濯槽12の内周面12Aから洗濯槽12の中心側に突出する。洗濯槽12の中心側は、軸線O側と同義である。例えば、側面突出部100は、洗濯槽12の内周面12Aに固定された、正面視で若干横長の板状部材である。側面突出部100のうちで洗濯槽12内に露出する表面が、上述した洗濯運転時及び脱水運転時に靴9と接触可能である。
【0022】
本例では、側面突出部100の表面が、洗濯槽12の内周面12Aと比較して、摩擦係数が大きく形成される。具体的には、側面突出部100の表面は、内周面12Aよりも摩擦係数が大きくなるように粗面加工されている。これに代えて、側面突出部100の表面又は全体が、内周面12Aよりも摩擦係数が高い材料、例えばゴム等の弾性体で形成されてもよい。
【0023】
図4及び図5に示すように、本例の側面突出部100は、軸部60側から視て左右対称である。換言すると、側面突出部100は、洗濯槽12の周方向Cに対称な形状である。側面突出部100の表面は、軸部60側を向く正面101と、上側を向く上面102とを含む。
【0024】
図4及び図7Aに示すように、側面突出部100は、洗濯槽12の周方向Cに沿って、洗濯槽12の内周面12Aから軸部60側への突出幅が大きい部分である右部111及び左部112を含む。本例では、平面視で側面突出部100の厚みが、周方向Cの両端から中心側に向かうほど、軸部60側へ連続的に盛り上がる。正面101は、周方向Cの中心位置を境界として、右部111及び左部112を含む。周方向Cは、平面視で時計回り方向C1(図5の右方向)及び反時計回り方向2(図5の左方向)を含む。右部111は、反時計回り方向C2に沿って、内周面12Aから軸部60側への突出幅が大きい。左部112は、時計回り方向C1に沿って、内周面12Aから軸部60側への突出幅が大きい。
【0025】
図4及び図6に示すように、側面突出部100は、下側よりも上側のほうが、洗濯槽12の中心側に近い部分である下部113を含む。本例では、側面視で側面突出部100の厚みが、上下方向の両端から中心側に向かうほど、軸部60側へ連続的に盛り上がる。正面101は、上下方向中心よりも若干上側を境界として、下部113及び上部114を含む。下部113は、その表面が下向きとなるように傾いているため、下側よりも上側のほうが洗濯槽12の中心側に近い。なお上部114は、その表面が上向きとなるように傾いているため、上側よりも下側のほうが洗濯槽12の中心側に近い。
【0026】
図4及び図5に示すように、側面突出部100は、上端102Aから洗濯槽12の周方向Cに沿って下側に傾く部分である右上面121及び左上面122を含む。本例では、上面102のうちで周方向C(図5の左右方向)の中心位置が、側面突出部100の上端102Aである。上面102は、周方向Cの両端から上端102Aに向かって上側に傾く。上面102は、正面視で上向きの円弧状であるが、例えば上向きの三角形状でもよい。上面102は、上端102Aを境界として右上面121及び左上面122を含む。右上面121は、時計回り方向C1に沿って下側に傾く。左上面122は、反時計回り方向C2に沿って下側に傾く。
【0027】
図4及び図6に示すように、側面突出部100の少なくとも一部は、ブラシ61の上端よりも下側、且つブラシ61の下端よりも上側に設けられる。つまり、側面突出部100の上下方向範囲と、ブラシ61の上下方向範囲とは、互いに重複する。本例では、側面突出部100の上端102Aは、ブラシ61の上下方向中央よりも低い。側面突出部100の下端は、ブラシ61の下端と略同じ高さにある。従って、回転するブラシ61の先端は、側面突出部100の正面側を横切るとき、正面101の略全体と間隔を空けて対向する。
【0028】
側面突出部100の上端102Aは、洗濯時に回転される洗濯槽12の貯留水位よりも低い位置にある。本例では、洗濯運転時において、ブラシ61の上下方向中央よりも高い貯留水位まで、洗濯槽12に給水される。従って洗濯運転時には、上端102Aが洗濯槽12の貯留水位よりも低い。側面突出部100の全体が水面下に配置された状態で、靴9が洗濯される。
【0029】
図3及び図6に示すように、側面突出部100は、回転体13の外周Pよりも洗濯槽12の中心側に突出する。本例では、側面突出部100の頂部101Aは、右部111及び左部112の境界をなす稜線と、下部113及び上部114の境界をなす稜線とが交差する位置である。頂部101Aは、側面突出部100のうちで、内周面12Aから軸部60側への突出幅が最も大きい部分であり、換言すると洗濯槽12の中心側に最も近い部分である。側面突出部100では、少なくとも頂部101Aが外周Pよりも洗濯槽12の中心側に突出する。ただし、頂部101Aは回転軌跡Tの外側にあるため、回転するブラシ61は側面突出部100と接触しない。
【0030】
図4及び図6に示すように、回転体13は、回転体13の上面から上方に突出する底面突出部200を有する。側面突出部100の上端102Aと、底面突出部200の上端200Aとは、互いに異なる高さにある。本例では、側面突出部100の上端102Aは、底面突出部200の上端200Aよりも高い位置にある。底面突出部200の上端200Aは、側面突出部100の頂部101Aよりも若干下側にある。底面突出部200の詳細は後述する。
【0031】
[底面突出部200]
底面突出部200の詳細を説明する。図8は、回転体13の斜視図である。図9は、回転体13の平面図である。図10は、図9に示すA-A線の矢視方向断面図である。
【0032】
図4図8図9に示すように、回転体13の上面は、回転体13の外周P側から洗濯槽12の中心側に向かって下側に傾く斜面である第二基準面13Bを含む。本例では、軸部60が固定される平面視円形の凹部130が、回転体13の上面中央に設けられる。回転体13の上面は、凹部130の外周側にある第一基準面13A及び第二基準面13Bを含む。
【0033】
第一基準面13Aは、凹部130の外周に沿って延びる水平面である。第一基準面13Aは、回転体13の上面のうちで最も低い面部であり、且つ平面視で回転軌跡Tの内側にある。第二基準面13Bは、回転体13の外周P側から第一基準面13Aの外周まで、下側に傾いて延びる斜面である。例えば第二基準面13Bは、回転体13の外周P側に向かうほど、水平面に対する傾斜角度が大きくなる湾曲面である。第二基準面13Bは、平面視で回転軌跡Tの内側から外側まで延びる。
【0034】
図4図8図10に示すように、底面突出部200は、回転体13の上面から上方に突出し、且つ回転体13の回転方向に沿って延びる稜線Rを有する。本例では、底面突出部200は、第一基準面13A及び第二基準面13Bから上方に突出している。底面突出部200は、軸線0を中心として略180度の範囲で、凹部130の外周側を円弧状に延びる。換言すると底面突出部200は、回転体13の上面において、平面視で二つのブラシ61の一方から他方に向かって略180度延びる。稜線Rは、底面突出部200の延伸方向の両端部を結び、且つ底面突出部200の表面で最も高い部分を辿って延びる仮想線である。
【0035】
回転体13の回転方向に沿って延びる稜線Rは、回転体13の回転方向と平行な稜線Rに限定されず、平面視で回転体13の半径線L(図10参照)と交差する稜線Rであればよい。例えば稜線Rは、平面視で半径線Lと交差するのであれば、直線状でもよいし、回転体13の回転方向とは異なる曲率の曲線でもよいし、蛇行する形状でもよい。
【0036】
稜線Rは、稜線Rの上端から稜線Rの両端に夫々向かう二つの部分稜線R1、R2を含む。二つの部分稜線R1、R2は、互いに水平面に対する傾斜角度が異なる。本例では、稜線Rの上端は、底面突出部200の上端200Aと同義である。稜線Rは、上端200Aから時計回り方向C1に延びる部分稜線R1と、上端200Aから反時計回り方向C2に延びる部分稜線R2とを含む。
【0037】
底面突出部200は、部分稜線R1を有する第一突出部201と、部分稜線R2を有する第二突出部202とを含む。第一突出部201は、軸線0を中心として角度θ1の範囲で、上端200Aから時計回り方向C1に延びる円弧状である。部分稜線R1は、上端200Aから回転体13の上面まで時計回り方向C1に向かうほど、回転体13の上面からの突出幅が小さくなり、且つ軸線Oから遠ざかる。
【0038】
第二突出部202は、軸線0を中心として角度θ2の範囲で、上端200Aから回転体13の上面まで反時計回り方向C2に沿って延びる円弧状である。部分稜線R2は、上端200Aから反時計回り方向C2に向かうほど、回転体13の上面からの突出幅が小さくなり、且つ軸線Oに近づく。
【0039】
本例では、第一突出部201の角度θ1は略120度であり、第二突出部202の角度θ2は、略60度である。そのため、第一突出部201の部分稜線R1は、第二突出部202の部分稜線R2よりも長い。部分稜線R1の水平面に対する傾斜角度は、部分稜線R2の水平面に対する傾斜角度よりも小さい。
【0040】
底面突出部200は、稜線Rの少なくとも一部がブラシ61の回転軌跡Tと上下方向に重なる位置に設けられる。本例では、稜線Rの全体が回転軌跡Tと上下方向に重なる(図3参照)。
【0041】
底面突出部200は、稜線Rから洗濯槽12の中心側に向かって下側に傾く内側斜面211と、稜線Rから洗濯槽12の内周面12A側に向かって下側に傾く外側斜面212と、を含む。本例では、内側斜面211が稜線Rから回転体13の上面まで延びる長さは、外側斜面212が稜線Rから回転体13の上面まで延びる長さよりも大きい。そのため、内側斜面211の水平面に対する傾斜角度は、外側斜面212の水平面に対する傾斜角度よりも小さい。
【0042】
回転体13には、外側突出部220が設けられる。外側突出部220は、回転体13の上面から上方に突出し、且つブラシ61の回転軌跡Tよりも洗濯槽12の内周面12A側に設けられる。本例では、軸線Oを挟んで対称をなす二つの外側突出部220が、回転体13に設けられる。各外側突出部220は、第二基準面13Bの外周端から連続して上方に突出し、且つ回転体13の外周Pに沿って延びる円弧状である。各外側突出部220は、平面視で回転軌跡Tの外側にある。
【0043】
先述したように、軸部60は回転体13と一体に回転駆動されるため、回転体13に対する二つのブラシ61の位置は固定である。例えば、二つの外側突出部220は、二つのブラシ61と夫々対応して設けられる。各外側突出部220は、平面視で、各ブラシ61と間隔を空けて対向する位置から周方向Cの両側に延びる。なお、複数の外側突出部220を回転体13の外周Pに沿って設けるのに代えて、一つの外側突出部220を外周Pの一部又は全部に沿って設けてもよい。
【0044】
外側突出部220は、底面突出部200の稜線Rよりも洗濯槽12の内周面12A側に設けられる。外側突出部220の上端は、底面突出部200の上端200Aよりも低い位置にある。本例では、軸線Oから外側突出部220までの距離は、軸線Oから稜線Rまでの距離よりも大きい。そのため、外側突出部220は稜線Rよりも内周面12Aに近い。
【0045】
一例として、回転体13の半径長は、210mm程度である。底面突出部200の高さは、85mm程度である、底面突出部200の高さは、第一基準面13Aから上端200Aまでの距離である。このように本例では、底面突出部200の高さが回転体13の半径長の1/3以上に設計されているが、底面突出部200の高さはこれに限定されるものではない。
【0046】
図6に示すように、底面突出部200の上端200Aは、ブラシ61の下端よりも高い位置にある。これに対し、外側突出部220の上端は、ブラシ61の下端と略同じ高さにある。従って、外側突出部220の上端は、底面突出部200の上端200Aよりも低い。
【0047】
なお、回転体13の上面には、凹部130を挟んで底面突出部200とは反対側に、二つの撹拌羽根140が設けられている。各撹拌羽根140は、回転体13の上面から上方に若干突出し、凹部130の外周から回転体13の外周P側へ直線状に延びる。各撹拌羽根140の上端は、外側突出部220よりも低い位置にある。各撹拌羽根140は、洗濯運転時に洗濯槽12内の水を撹拌する。
【0048】
[洗濯運転の一態様]
洗濯機1の洗濯運転の一態様を説明する。先述したように洗濯運転では、洗濯槽12内に水及び洗剤が貯留され、回転体13及びブラシ61が周方向Cに正転及び反転を繰り返す(図3図6参照)。回転体13及びブラシ61が、洗濯槽12の内周面12Aに対して相対的に回転する。回転するブラシ61が、洗濯槽12内に投入された靴9の汚れを払拭する。
【0049】
本例において、ブラシ61及び撹拌羽根140は、その回転方向に沿った水流を洗濯槽12内で生成する。洗濯槽12内に投入された靴9は、この水流によって軸部60の周りを移動するように付勢され、且つ洗濯運転の遠心力によって軸線Oの径方向外側に付勢される。従って靴9は、洗濯槽12の内周面12Aに沿って移動される。さらに撹拌羽根140は、周方向Cと交差する径方向に延びるため、周方向Cの回転時における洗濯槽12内の水との接触圧が相対的に大きい。撹拌羽根140は、その回転方向に沿って回転する渦水流、即ち軸線O側から視て環状の渦水流を生成する。
【0050】
一方、底面突出部200は、周方向Cに沿って延びるため、周方向Cの回転時における洗濯槽12内の水との接触圧が相対的に小さい。底面突出部200は、内側斜面211及び外側斜面212の両側に、その回転方向と交差するように回転する渦水流、即ち周方向Cから視て環状の渦水流を生成する。このような水流及び渦水流によって、靴9は洗濯槽12内で様々な向きに転動するため、ブラシ61は靴9の表面全体にムラなく接触して洗浄できる。
【0051】
図5図7Bに示すように、洗濯運転時には、内周面12Aに沿って移動される靴9が、側面突出部100に接触する。このとき、例えば側面突出部100における靴9の接触位置や、側面突出部100と接触する靴9の姿勢や、靴9に作用する水流などに応じて、靴9の挙動が異なる。
【0052】
図5及び図6は、内周面12Aに沿って移動される靴9が、周方向Cの両端から上側に傾く上面102に接触した場合を例示する。詳細には、時計回り方向C1に移動される靴9が、反時計回り方向C2に沿って下側に傾く左上面122に接触した場合を示す。この場合、時計回り方向C1に移動される靴9は、左上面122に沿って、上端102Aの近傍まで上側に案内される。
【0053】
本例の洗濯運転時には、側面突出部100よりも高い位置に貯留水位があるため、靴9は水中の浮力の作用によって、左上面122に沿って上側に移動し易い。さらに側面突出部100は、靴9を左上面122に沿って上側に跳ね上げることができる。このとき、靴9のうちで内周面12Aに近接する部分のみが、左上面122によって下側から付勢される。そのため、靴9は内周面12Aとは反対側の軸線O側に移動するように、側面突出部100から斜め上方に跳ね上げられる。
【0054】
例えば複数の靴9を同時に洗濯する場合、複数の靴9が相互に干渉して向きが変化し難くなり、靴9が回転体13等に噛み込まれ易くなることが想定される。本例では、側面突出部100と接触する靴9が上側に逃がされることで、靴9が回転体13から離れると共に、複数の靴9を洗濯する場合でも相互の距離を確保できる。したがって、靴9が回転体13等に噛み込まれることを抑制できる。さらに、複数の靴9を水中で分散させるとともに、各靴9の向きを大きく変化させて、靴9の洗浄力を向上できる。
【0055】
本例の側面突出部100は、内周面12Aよりも摩擦係数が大きいため、靴9が上面102に接触して上側に移動し易い。なお、図5及び図6は、回転体13及びブラシ61が時計回り方向C1に回転する場合を例示しているが、回転体13及びブラシ61が反時計回り方向C2に回転する場合も、靴9が側面突出部100の右上面121に沿って移動することで、上記と同様の作用を奏する。
【0056】
ここで、ブラシ61の洗浄力を発揮するために、靴9は回転軌跡T内の上下方向中央側に配置されることが好適である。本例では、側面突出部100の上端102Aは、ブラシ61の上下方向中央よりも低い。これにより、側面突出部100から跳ね上げられた靴9は、回転軌跡T内の上下方向中央に移動させやすくできる。
【0057】
図7A及び図7Bは、内周面12Aに沿って移動される靴9が、周方向Cの両端から軸線O側に傾く正面101に接触した場合を例示する。詳細には、図7Aの例は、反時計回り方向C2に移動される靴9が、内周面12Aから連続して延びる右部111に引っ掛かり、その移動が一時停止した状態を示す。この場合、回転するブラシ61が、靴9を内周面12A側に押し付けるように移動する。仮に靴9がブラシ61の回転に追従して移動すると、ブラシ61と靴9との間に生じる摩擦力が小さくなり、靴9の洗浄力が落ちる。本例では、回転するブラシ61と停止した靴9との間に相対的に大きな摩擦力を生じさせて、靴9の洗浄力を向上できる。
【0058】
図7Bの例は、反時計回り方向C2に移動される靴9が、内周面12Aから連続して延びる右部111に沿って、側面突出部100に乗り上げた状態を示す。この状態では、靴9は側面突出部100に乗り上げた分、内周面12Aよりも軸線O側に偏る。回転するブラシ61が、側面突出部100との間で靴9を挟み込むように移動する。このとき、靴9は内周面12Aよりも軸線Oに近い位置でブラシ61と接触するため、ブラシ61と靴9との間に生じる摩擦力が大きくなり、靴9の洗浄力を向上できる。
【0059】
本例の側面突出部100は、内周面12Aよりも摩擦係数が大きいため、靴9が正面101に引っ掛かったり、乗り上げたりし易い。なお、図7A及び図7Bは、回転体13及びブラシ61が反時計回り方向C2に回転する場合を例示しているが、回転体13及びブラシ61が時計回り方向C1に回転する場合も、靴9が側面突出部100の左部112に引っ掛かったり、乗り上げたりすることで、上記と同様の作用を奏する。
【0060】
また本例では、回転体13の上面のうち、軸部60を挟んで底面突出部200とは反対側に、非突出部230が設けられる(図4図9参照)。非突出部230は、二つの外側突出部220の間において、第二基準面13Bの外周端から水平に外周P側に延びる部位であり、外側突出部220よりも高さが低い。
【0061】
図11に示すように、洗濯運転時に作用する遠心力によって、靴9が非突出部230の上側で洗濯槽12の内周面12Aに接する場合がある。この場合、回転体13の回転に伴って非突出部230が側面突出部100に接近すると、靴9は側面突出部100に乗り上げる。このとき、靴9が水中の浮力によって浮上すると、上方に向かって軸線O側に傾く下部113に沿って、靴9が軸線O側に案内される。これにより、靴9の向きが変わると共に、靴9を回転軌跡T側に移動させて、靴9の洗浄力を向上できる。
【0062】
本例では、側面突出部100は、回転体13の外周Pよりも洗濯槽12の中心側に突出する。従って、下部113に沿って軸線O側に案内された靴9は、外周Pよりも軸線O側に移動し易い。これにより、靴9が洗濯槽12と回転体13との間に挟み込まれることが抑制される。
【0063】
洗濯運転時には、洗濯槽12内で靴9が自重により沈下する場合がある。靴9が洗濯槽12内で沈下すると、底面突出部200の回転体13と共に回転する底面突出部200と接触して、上方に跳ね上げられる。本例では、底面突出部200の稜線Rの少なくとも一部が、ブラシ61の回転軌跡Tと上下方向に重なる位置に設けられる。したがって、底面突出部200は、沈下した靴9を回転軌跡T内に戻すように、上方に跳ね上げる。これにより、靴9を確実にブラシ61に接触させて、靴9の洗浄力を向上できる。
【0064】
[脱水運転の一態様]
洗濯機1の脱水運転の一態様を説明する。図12A及び図12Bは、転がし動作時における側面突出部100周辺の拡大平面図である。図13A及び図13Bは、転がし動作時における底面突出部200周辺の拡大正面図である。図14は、転がし動作時における底面突出部200周辺の縦断面図である。図15A及び図15Bは、転がし動作時における外側突出部220周辺の縦断面図である。
【0065】
先述したように脱水運転では、洗濯槽12が排水された後、転がし動作が実行される。このとき、例えば洗濯で濡れた靴底が洗濯槽12の内周面12Aに貼り付いた状態のように、靴9と洗濯槽12との摩擦が大きい場合でも、以下のように靴9を洗濯槽12から剥離して分散できる。
【0066】
転がし動作時には、図12A及び図12Bに示すように、回転体13上の靴9は、回転体13の回転に伴って、又は回転するブラシ61に押されて、内周面12Aに沿って周方向Cに移動される。移動される靴9が側面突出部100に接触したとき、洗濯運転時と同様に、接触摩擦などに応じて靴9の挙動が異なる。
【0067】
図12A及び図12Bは、回転体13及びブラシ61が反時計回り方向C2に回転する場合を例示する。図12Aの例は、内周面12Aに沿って移動される靴9が、側面突出部100の右部111に衝突した状態を示す。転がし動作時は洗濯運転時と異なり水圧の影響がないため、靴9は右部111に衝突した衝撃によって、内周面12Aから剥がされて軸線O側に転動し易い。
【0068】
図12Bの例は、内周面12Aに沿って移動される靴9が、内周面12Aと連続して延びる右部111に沿って、側面突出部100に乗り上げた状態を示す。この場合も、先述のように転がし動作時は水圧の影響がないため、靴9は側面突出部100に乗り上げて姿勢が変わることで、内周面12Aから剥がされて軸線O側に転動し易い。
【0069】
このように靴9が側面突出部100に接触することで、靴9を洗濯槽12から剥離すると共に、複数の靴9を重ならないように分散できる。なお、本例の側面突出部100は、内周面12Aよりも摩擦係数が大きいため、靴9が側面突出部100に衝突したり、乗り上げたりし易い。また、回転体13及びブラシ61が時計回り方向C1に回転する場合も、靴9が側面突出部100の左部112に衝突したり、左部112から側面突出部100に乗り上げたりすることで、上記と同様の作用を奏する。
【0070】
転がし動作時には、図13A及び図13Bに示すように、回転体13の回転に伴って、底面突出部200も周方向Cに移動する。なお、図13A及び図13Bでは、理解を容易にするために、軸線O側から視た底面突出部200を、稜線Rで模式的に示す(後述の図16A図16Bも同様)。例えば靴底が洗濯槽12の内周面12Aと強く貼り付いている場合、回転体13及びブラシ61が回転しても、靴9が内周面12Aに対して移動しないことがある。
【0071】
図13Aの例は、靴9が内周面12Aに貼り付いて移動しない状態で、回転体13が時計回り方向C1に回転する場合を示す。この場合、内周面12Aに貼り付いた靴9に対して、時計回り方向C1に移動する底面突出部200の第一突出部201が接触する。このとき、回転体13の上面から小さな勾配で上方傾斜する部分稜線R1に沿って、靴9が第一突出部201に乗り上げることで、靴9の向きが斜め上方に変化し易い。この靴9の向きの変化によって、靴底と内周面12Aとの貼り付きが解消され、靴9は内周面12Aから剥がされて、自重により軸線O側に転動し易い。
【0072】
図13Bの例は、靴9が内周面12Aに貼り付いて移動しない状態で、回転体13が反時計回り方向C2に回転する場合を示す。この場合、内周面12Aに貼り付いた靴9に対して、反時計回り方向C2に移動する底面突出部200の第二突出部202が接触する。このとき、回転体13の上面から大きな勾配で上方傾斜する部分稜線R2に引っ掛かり、靴9が第二突出部202に押されるように、内周面12Aに対して反時計回り方向C2に移動し易い。この靴9の移動によって、靴底と内周面12Aとの貼り付きが解消され、靴9は内周面12Aから剥がされて、自重により軸線O側に転動し易い。
【0073】
このように靴9が底面突出部200に接触することで、靴9を洗濯槽12から剥離すると共に、複数の靴9を重ならないように分散できる。さらに転がし動作時には、図14に示すように、洗濯槽12内で転動する靴9が、底面突出部200に乗り上げることがある。このとき靴9は、稜線Rから軸線O側に下方傾斜する内側斜面211に沿って転動したり、又は稜線Rから内周面12A側に下方傾斜する外側斜面212に沿って転動したりし易い。このように底面突出部200は、靴9を洗濯槽12の内側及び外側に転動させることで、靴9の向きを変えると共に、複数の靴9を分散できる。
【0074】
本例では、外側突出部220は稜線Rよりも内周面12A側に設けられ、外側突出部220の上端は、底面突出部200の上端200Aよりも低い。これにより、靴9が外側斜面212に沿って内周面12A側に転動することが、外側突出部220によって妨げられることを抑制できる。
【0075】
また、転がし動作時には、図15Aに示すように、第一基準面13Aにある靴9が、遠心力Gによって、内周面12Aに向かって上側に湾曲する第二基準面13Bに沿って、外周P側に転動し易い。靴9が第二基準面13Bを超えて外周P側に移動すると、靴9は外側突出部220に乗り上がり不安定な姿勢になり易い。そのため、図15Bに示すように、例えば転がし動作中の正転及び反転の切替え時に、回転体13の回転が一時停止されると、靴9は外側突出部220から落下し、さらに第二基準面13Bに沿って軸線O側に転動し易い。このように、第二基準面13B及び外側突出部220も、靴9を洗濯槽12の内側及び外側に転動させることで、靴9の向きを変えると共に、複数の靴9を分散できる。
【0076】
以上のように、洗濯槽12から剥離された靴9が分散された状態で、洗濯槽12を回転させる槽回転動作が実行されるため、靴9を効果的に脱水できる。したがって、ブラシ61の毛丈を短くしなくても、洗濯槽12に靴底が接していることに起因する靴9の脱水不足を抑制できる。なお、転がし動作は、槽回転動作前に実行することに限定されず、槽回転動作の途中で少なくとも一回実行してもよい。
【0077】
槽回転動作では、洗濯槽12と共に回転する靴9が、停止しているブラシ61及び回転体13に対して相対的に移動する。槽回転動作が正転及び反転を繰り返す毎に、転がし動作時と同様に、靴9が第二基準面13B及び外側突出部220によって洗濯槽12の内側及び外側に転動する。これにより、靴9は向きが変わると分散されて、靴9の脱水をより効果的に実行できる。
【0078】
[備考]
本開示は上述した実施形態及び変形例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態に夫々開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。更に、各実施形態に夫々開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【0079】
例えば、本実施形態の洗濯機1は、洗濯脱水機を例示したが、洗濯及び脱水の少なくとも一つが可能でもよい。被洗濯物は、靴9に限定されず、立体形状の有体物であればよい。洗濯機1は、側面突出部100及び底面突出部200の少なくとも一つを備えなくてもよい。洗濯機1は、外側突出部220を備えなくてもよい。側面突出部100の表面は、内周面12Aと同じ摩擦係数でもよい。
【0080】
側面突出部100や底面突出部200の数量、サイズ、形状等は、上記実施形態に限定されない。図16A及び図16Bは、変形例における側面突出部100及び底面突出部200の拡大正面図である。図17は、図6において、変形例の側面突出部100を設けた縦断面図である。図16A図17に示す変形例では、側面突出部100の形状が上記実施形態と異なる。
【0081】
変形例の側面突出部100は、上記実施形態(図4参照)と同様の構造であるが、正面視で縦長の板状部材である点で異なる。また、側面突出部100の正面101は、側面突出部100の下端から上面102まで延び、且つ上側に向かって軸線O側に傾く斜面である。側面突出部100の上端102Aは、ブラシ61の上下方向中央よりも高く、且つ洗濯時に回転される洗濯槽12の貯留水位よりも高い位置にある。側面突出部100の一部が水面下に配置された状態で、靴9が洗濯される。
【0082】
洗濯運転時には、上記実施形態(図7A及び図7B参照)と同様に、回転体13上の靴9は、内周面12Aに沿って周方向Cに移動される。本例では、回転体13及びブラシ61が時計回り方向C1に回転すると、靴9が以下の挙動をとる場合がある。図16Aに示す例では、図7Aと同様に、靴9が内周面12Aから連続して延びる左部112に引っ掛かり、回転するブラシ61が靴9を内周面12A側に押し付けるように移動する。
【0083】
次いで図16Bの例では、側面突出部100に引っ掛かった靴9に対して、時計回り方向C1に回転する底面突出部200が接近する。このとき靴9は、図13Aと同様に、第一突出部201に乗り上げて、部分稜線R1に沿って上方に案内される。図17に示すように、靴9は側面突出部100に乗り上げながら、正面101に沿って上側に案内される。靴9は上側に案内されつつ軸線O側に傾いて、側面突出部100から軸線O側に転動する。これにより、靴9の向きが変わると共に、靴9がブラシ61の上下方向中心と近づくように回転軌跡T側に移動されて、靴9の洗浄力を向上できる。
【符号の説明】
【0084】
1 洗濯機、9 靴、12 洗濯槽、12A 内周面、13 回転体、60 軸部、61 ブラシ、100 側面突出部、200 底面突出部、220 外側突出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13A
図13B
図14
図15A
図15B
図16A
図16B
図17