(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】ゴルフボール及びそのカバー又はトップコート用の樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
A63B 37/00 20060101AFI20241218BHJP
【FI】
A63B37/00 216
A63B37/00 212
A63B37/00 316
A63B37/00 342
(21)【出願番号】P 2020212550
(22)【出願日】2020-12-22
【審査請求日】2023-11-13
(73)【特許権者】
【識別番号】592014104
【氏名又は名称】ブリヂストンスポーツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】篠原 宏隆
【審査官】桐山 愛世
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-113363(JP,A)
【文献】特開2004-305755(JP,A)
【文献】特開2019-118523(JP,A)
【文献】特開2009-095660(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴルフボールのカバー又はトップコート用の樹脂と、
紫外線を吸収する植物由来の抽出物と
を含むゴルフボールのカバー又はトップコート用の樹脂組成物であって、
前記樹脂組成物で形成した膜にキセノンランプを照射する色調変化試験において、当該試験前後のLab表色系による色差ΔEが10.0以下であ
り、
前記トップコート用の樹脂が、主剤と硬化剤とを含むウレタン塗料を含み、前記植物由来の抽出物の含有量が、溶剤も含む前記主剤全量に対して、0.01~8.0質量%の範囲内であるゴルフボールのカバー又はトップコート用の樹脂組成物。
【請求項2】
前記溶剤が、エステル系溶剤またはケトン系溶剤である請求項
1に記載のゴルフボール。
【請求項3】
前記植物由来の抽出物が、フェルラ酸、フェルラ酸化合物、ケイ皮酸化合物、リノール酸、またはこれらの組み合わせである請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項4】
前記植物由来の抽出物が、320nm~360nmの間の波長において吸光度のピークを有するものである請求項1に記載のゴルフボール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフボール及びそのカバー又はトップコート用の樹脂組成物に関し、特に、紫外線吸収剤を改善したゴルフボール及びそのカバー又はトップコート用の樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフボールは外観がカラフルなものや模様があるものも販売されているが、一般的なゴルフボールは、白色の地に、ゴルフボールのメーカー名や、ブランド名、ロゴ、数字などの標識が付されている。白色のゴルフボールは、通常、ディンプルが形成されるカバーの樹脂に白色顔料が配合されており、このカバーの表面に無色透明のトップコートが形成されて、製造される。
【0003】
ゴルフボールのカバーの樹脂は、太陽光に曝されることによる黄変が生じ易いことから、このような黄変を防ぐために、カバー又はその上のトップコートには、太陽光の紫外線を吸収する紫外線吸収剤を配合したり、白色をより際立たせるために、紫外線を吸収して所定の波長の可視光線を放出する蛍光増白剤を配合したりしている。
【0004】
このような紫外線吸収剤として、特開2009-050420号公報には、ゴルフボールのカバーを構成するウレタン樹脂の変色を効果的に抑制するために、カバー及びトップコートの双方に、紫外線吸収剤として、ベンゾトリアゾール系やトリアジン系の紫外線吸収剤を配合することが記載されている。
【0005】
また、特表2000-516521号公報には、太陽からのUV及びUV硬化性インクを硬化させるために用いるUV光線の双方から、トップコートを保護することができ、退色及び黄ばみを低減又は防止するために、約330nmから約360nmの間の波長において吸収ピークを有すると共に、約350nmの波長におけるUV光線の吸光度が、約370nmにおけるUV光線の吸光度よりも少なくとも約3倍であるUV光線吸収剤を、可視透過性のゴルフボール用ウレタントップコート組成物に配合させることが記載されている。そして、好ましいUV吸収剤としては、2,4-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-6-(2-ヒドロキシ-4-イソオクチロキシフェニル)-1,3,5-トリアジンが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-050420号公報
【文献】特表2000-516521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ゴルフボールに使用されている紫外線吸収剤は、上記の文献に記載されているものも含めて、いずれも石油由来の資源からなるもので、人体や環境に優しいものではない。ゴルフボールにも、石油由来の資源ではなく天然由来の資源を使用することが求められてきているが、本発明者は、紫外線吸収作用があると知られている天然由来の物質を使って、実際に紫外線によるゴルフボールの黄変を抑制するには、耐熱性や、透明性、変色防止効果の点で問題があるという知見を得た。
【0008】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、紫外線吸収剤として天然由来の物質を使っても、紫外線によるゴルフボールの黄変を抑制することができる、人体や環境に優しいゴルフボール及びそのカバー又はトップコート用の樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、その一態様として、コアとカバーとトップコートとを少なくとも備えるゴルフボールであって、前記カバー又はトップコートは、紫外線を吸収する植物由来の抽出物を含み、前記カバー又はトップコートは、キセノンランプを照射する色調変化試験において、当該試験前後のLab表色系による色差ΔEが10.0以下である。
【0010】
前記植物由来の抽出物は、フェルラ酸、フェルラ酸化合物、ケイ皮酸化合物、リノール酸、またはこれらの組み合わせが好ましい。
【0011】
前記植物由来の抽出物は、320nm~360nmの間の波長において吸光度のピークを有するものが好ましい。
【0012】
前記植物由来の抽出物が前記トップコートに含まれている場合、前記トップコートは油性塗料を含むものが好ましい。
【0013】
更に、本発明は、別の態様として、ゴルフボールのカバー又はトップコート用の樹脂組成物であって、ゴルフボールのカバー又はトップコート用の樹脂と、紫外線を吸収する植物由来の抽出物とを含み、前記樹脂組成物で形成した膜にキセノンランプを照射する色調変化試験において、当該試験前後のLab表色系による色差ΔEは10.0以下である。
【0014】
前記トップコート用の樹脂は、主剤と硬化剤とを含むウレタン塗料を含むことが好ましく、この場合、前記植物由来の抽出物の含有量は、溶剤も含む前記主剤全量に対して、0.01~8.0質量%の範囲内であることが好ましい。
【0015】
前記溶剤は、エステル系溶剤またはケトン系溶剤であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
このように本発明によれば、ゴルフボールのカバー又はトップコートの樹脂組成物に、紫外線を吸収する植物由来の抽出物を配合することによって、ゴルフボールのカバー又はトップコートが、キセノンランプを照射する色調変化試験において、当該試験前後のLab表色系による色差ΔEが10.0以下とすることが可能となり、よって、紫外線吸収剤として天然由来の物質を使っても、紫外線によるゴルフボールの黄変を抑制できる、人体や環境に優しいゴルフボールを提供することができる。
【0017】
特に、紫外線を吸収する植物由来の抽出物であるフェルラ酸化合物やケイ皮酸化合物は、水には溶けにくいものの、油溶性であり、よって、トップコート用の樹脂として、主剤と硬化剤を含むウレタン塗料などの油性塗料を採用することによって、トップコートに配合することができる。トップコート用の樹脂の溶剤として、人体や環境に良くない芳香族系溶剤ではなく、エステル系溶剤またはケトン系溶剤を用いることで、より人体や環境に優しいゴルフボールを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るゴルフボール及びそのカバー又はトップコート用の樹脂組成物の実施の形態について詳細に説明する。
【0019】
本実施の形態のカバー又はトップコート用の樹脂組成物は、ゴルフボールのカバー又はトップコート用の樹脂と、紫外線を吸収する植物由来の抽出物(「フィトケミカル」とも呼ばれる)とを含むものである。
【0020】
カバー用の樹脂としては、これらに限定されないが、例えば、熱可塑性ポリウレタン、アイオノマー樹脂、またはこれらの混合物を主成分として使用することができる。
【0021】
熱可塑性ポリウレタン材料の構造は、高分子ポリオール(ポリメリックグリコール)からなるソフトセグメントと、ハードセグメントを構成する鎖延長剤及びポリイソシアネートからなる。ここで、原料となる高分子ポリオールとしては、特に限定されるものではないが、本発明では、ポリエステル系ポリオール及びポリエーテル系ポリオールが好ましい。ポリエステル系ポリオールとしては、具体的には、ポリエチレンアジペートグリコール、ポリプロピレンアジペートグリコール、ポリブタジエンアジペートグリコール、ポリヘキサメチレンアジペートグリコール等のアジペート系ポリオールやポリカプロラクトンポリオール等のラクトン系ポリオールが挙げられる。ポリエーテルポリオールとしては、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)及びポリ(テトラメチレングリコール)等が挙げられる。
【0022】
鎖延長剤としては、特に限定されるものではないが、本発明では、イソシアネート基と反応し得る活性水素原子を分子中に2個以上有し、かつ分子量が2,000以下である低分子化合物を用いることができ、その中でも炭素数2~12の脂肪族ジオールが好ましい。具体的には、1,4-ブチレングリコール、1,2-エチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール等を挙げることができ、その中でも特に1,4-ブチレングリコールが好ましい。
【0023】
ポリイソシアネート化合物としては、特に限定されるものではないが、本発明では、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレン1,5-ジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネートからなる群から選択された1種又は2種以上を用いることができる。ただし、イソシアネート種によっては射出成形中の架橋反応をコントロールすることが困難なものがあり、よって、本発明では、生産時の安定性と発現される物性とのバランスとの観点から、芳香族ジイソシアネートである4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましい。
【0024】
アイオノマー樹脂としては、これに限定されないが、以下の(a)成分及び/又は(b)成分をベース樹脂とするものを用いることができる。また、このベース樹脂には、任意に、以下の(c)成分を添加することができる。(a)成分は、オレフィン-不飽和カルボン酸-不飽和カルボン酸エステル3元ランダム共重合体及び/又はその金属塩、(b)成分は、オレフィン-不飽和カルボン酸2元ランダム共重合体及び/又はその金属塩、(c)成分は、ポリオレフィン結晶ブロック、ポリエチレン/ブチレンランダム共重合体を有する熱可塑性ブロックコポリマーである。
【0025】
また、カバー用の樹脂には、上記の熱可塑性ポリウレタンまたはアイオノマー樹脂の主成分の他に、熱可塑性ポリウレタン以外の熱可塑性樹脂又はエラストマーを配合することができる。具体的には、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、アイオノマー樹脂、スチレンブロックエラストマー、水添スチレンブタジエンゴム、スチレン-エチレン・ブチレン-エチレンブロック共重合体又はその変性物、エチレン-エチレン・ブチレン-エチレンブロック共重合体又はその変性物、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロック共重合体又はその変性物、ABS樹脂、ポリアセタール、ポリエチレン及びナイロン樹脂から選ばれ、その1種又は2種以上を用いることができる。特に、生産性を良好に維持しつつ、イソシアネート基との反応により、反発性や耐擦過傷性が向上することなどの理由から、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー及びポリアセタールを採用することが好適である。上記成分を配合する場合、その配合量は、カバー材の硬度の調整、反発性の改良、流動性の改良、接着性の改良などに応じて適宜選択され、特に制限されるものではないが、熱可塑性ポリウレタン成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上とすることができる。また、配合量の上限も特に制限されないが、熱可塑性ポリウレタン成分100質量部に対して、好ましくは100質量部以下、より好ましくは75質量部以下、更に好ましくは50質量部以下とすることができる。その他、ポリイソシアネート化合物、脂肪酸又はその誘導体、塩基性無機金属化合物、充填材などを添加することができる。
【0026】
トップコート用の樹脂としては、特に限定されないが、例えば、主剤であるポリオールと硬化剤であるポリイソシアネートとからなるウレタン塗料や、ゴム系塗料などの塗料樹脂を主成分として使用することができる。これら塗料樹脂は、有機溶剤を用いる油性塗料である。また、トップコートを形成する材料には、上記の主成分の他に、添加剤として、シリコーンワックス等の低表面エネルギー組成物を含有してもよい。各成分について、以下に説明する。
【0027】
ポリオールとしては、これに限定されないが、ポリカーボネートポリオールや、ポリエステルポリオールを用いることが好ましく、2種類のポリエステルポリオール、すなわち、ポリエステルポリオール(A)とポリエステルポリオール(B)とを用いてもよい。これらの2種類のポリエステルポリオールを用いる場合は、重量平均分子量(Mw)が異なるものであり、(A)成分の重量平均分子量(Mw)が20,000~30,000であり、且つ、(B)成分の重量平均分子量(Mw)が800~1,500であることが好適である。(A)成分の重量平均分子量(Mw)は22,000~29,000がより好ましく、23,000~28,000が更に好ましい。(B)成分の重量平均分子量(Mw)は900~1,200がより好ましく、1,000~1,100が更に好ましい。
【0028】
ポリエステルポリオールは、ポリオールと多塩基酸との重縮合により得られる。このポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ジメチロールヘプタン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のジオール類、トリオール、テトラオール、脂環構造を有するポリオールが挙げられる。多塩基酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等の脂肪族不飽和ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族多価カルボン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸等の脂環構造を有するジカルボン酸、トリス-2-カルボキシエチルイソシアヌレートが挙げられる。特に、(A)成分のポリエステルポリオールとしては、樹脂骨格に環状構造が導入されたポリエステルポリオールを採用することができ、例えば、シクロヘキサンジメタノール等の脂環構造を有するポリオールと多塩基酸との重縮合、或いは、脂環構造を有するポリオールとジオール類又はトリオールと多塩基酸との重縮合により得られるポリエステルポリオールが挙げられる。一方、(B)成分のポリエステルポリオールとしては、多分岐構造を有するポリエステルポリオールを採用することができ、例えば、東ソー社製の「NIPPOLAN 800」等の枝分かれ構造を有するポリエステルポリオールが挙げられる。
【0029】
また、上述したようなポリエステルポリオールを用いた場合、主剤全体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは13,000~23,000であり、より好ましくは15,000~22,000である。また、主剤全体の数平均分子量(Mn)は、好ましくは1,100~2,000であり、より好ましくは1,300~1,850である。これらの平均分子量(Mw及びMn)が上記範囲を逸脱すると、トップコートの耐摩耗性が低下するおそれがある。なお、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、示差屈折率計検出によるゲルパーミェーションクロマトグラフィー(以下、GPCと略称する)測定による測定値(ポリスチレン換算値)である。2種類のポリエステルポリオールを用いた場合も主剤全体のMwとMnは上述した範囲である。
【0030】
上記2種類のポリエステルポリオール(A)、(B)成分の配合量は、特に限定されないが、(A)成分の配合量は、溶剤も含む主剤全量に対して20~30質量%であり、(B)成分の配合量が主剤全量に対して2~18質量%であることが好ましい。
【0031】
ポリイソシアネートとしては、特に限定されないが、一般的に用いられている芳香族、脂肪族、脂環式などのポリイソシアネートであり、具体的には、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-4-イソシアナトメチルシクロヘキサン等が挙げられる。これらは、単独または混合で使用することができる。
【0032】
上記のヘキサメチレンジイソシアネートの変性体としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのポリエステル変性体やウレタン変性体などが挙げられる。上記のヘキサメチレンジイソシアネートの誘導体としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体(イソシアヌレート体)やビュレット体、アダクト体が挙げられる。
【0033】
主成分であるポリオールとポリイソシアネートとからなるウレタン塗料において、ポリオールが有する水酸基(OH基)とポリイソシアネートが有するイソシアネート基(NCO基)とのモル比(NCO基/OH基)は、下限として、0.6以上が好ましく、0.65以上がより好ましい。また、このモル比は、上限として、1.5以下が好ましく、1.0以下がより好ましく、0.9以下が更に好ましい。このモル比が上記の下限値を下回ると、場合には未反応の水酸基が残り、トップコートとしての性能及び耐水性が悪くなるおそれがある。一方、上記の上限値を超えるとイソシアネート基が過剰となるため、水分との反応でウレア基(脆い)が生成することになり、その結果、トップコートの性能が低下するおそれがある。
【0034】
ポリオールとポリイソシアネートの反応を促進する硬化触媒(有機金属化合物)としては、アミン系触媒や有機金属系触媒を使用することができ、この有機金属化合物としては、アルミニウム、ニッケル、亜鉛、スズ等の金属石鹸等、従来から2液硬化型のウレタン塗料の硬化剤として配合されているものを好適に使用することができる。
【0035】
主剤であるポリオールと硬化剤であるポリイソシアネートは、それぞれ、塗装条件により各種の有機溶剤と混合することができる。このような有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルプロピオネート等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素系溶剤、ミネラルスピリット等の石油炭化水素系溶剤等が挙げられる。
【0036】
これらのうち、トルエンやキシレンなどの芳香族系溶剤は、人体や環境に良くないことから、エステル系溶剤またはケトン系溶剤を用いることが好ましい。特に、植物由来の抽出物を溶解しやすいという観点から、酢酸ブチルや酢酸エチルなどのエステル系溶剤がより好ましい。なお、植物由来の抽出物のうち、フェルラ酸化合物やケイ皮酸化合物は油溶性であり、水には溶けにくい。
【0037】
紫外線を吸収する植物由来の抽出物は、これらに限定されないが、例えば、フェルラ酸、フェルラ酸化合物、ケイ皮酸化合物、リノール酸などが挙げられる。紫外線を吸収する作用を有する植物由来の抽出物があることが知られているが、紫外線吸収の効果は植物由来の抽出物によって大きく異なる。ゴルフボールに使用する紫外線吸収剤として効果のある波長領域としては、好ましくは200~400nmであり、より好ましくは280~360nmであり、さらに好ましくは320~360nmである。すなわち、よりUVAの波長領域で吸収するものが好ましい。
【0038】
このような波長領域で吸収する植物由来の抽出物としては、例えば、フェルラ酸や、フェルラ酸化合物、ケイ皮酸化合物、リシノール酸などが挙げられる。フェルラ酸およびフェルラ酸化合物は、米、小麦、ライ麦、大麦などの穀物や、コーヒー、リンゴ、アーティチョーク、落花生、オレンジ、パイナップルなどの種子の中に含まれ、特に米糠から抽出される。フェルラ酸およびフェルラ酸化合物は、320~360nmの波長領域において吸光度のピークを有する。フェルラ酸化合物としては、例えば、γ-オリザノール等のフェルラ酸エステルを挙げることができる。
【0039】
ケイ皮酸化合物は、シアバターやココナッツオイルから抽出され、280~320nmの波長領域において吸光度のピークを有する。ケイ皮酸化合物としては、例えば、ケイ皮酸メチル、ケイ皮酸エチル、2,4?ジイソプロピルケイ皮酸メチル、2,4?ジイソプロピルケイ皮酸エチル、パラジメチルアミノ安息香酸オクチル、パラメトキシケイ皮酸ナトリウム、パラメトキシケイ皮酸カリウム等のケイ皮酸エステルが挙げられる。
【0040】
リシノール酸は、ひまし油や、大豆油、コーン油、椿油などから抽出され、230nm付近の波長領域において吸光度のピークを有する。
【0041】
紫外線を吸収する植物由来の抽出物は、トップコート用の樹脂組成物の場合、トップコート用の主剤に添加して使用することが好ましい。植物由来の抽出物の配合量は、詳しくは後述するキセノンランプを照射する色調変化試験において、Lab表色系による色差ΔEが10.0以下となるのに十分な量とし、例えば、これに限定されないが、溶剤も含む主剤全量に対して、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上が更に好ましく、1.0質量%以上が更により好ましい。また、植物由来の抽出物の配合量の上限は、植物由来の抽出物によっては溶剤への溶解度が低く、樹脂中に残留するとゴルフボールの外観や飛び性能に影響を与え得ることから、例えば、これに限定されないが、8.0質量%以下が好ましく、7.0質量%以下がより好ましく、6.0質量%以下が更に好ましく、5.0質量%以下が更により好ましい。
【0042】
カバー用の樹脂組成物の場合、植物由来の抽出物の配合量は、上記と同様にキセノンランプを照射する色調変化試験において、Lab表色系による色差ΔEが10.0以下となるのに十分な量であり、例えば、これに限定されないが、カバーの基材となる樹脂に対して0.5質量%以上が好ましく、5.0質量%以下が好ましい。
【0043】
その他、カバー又はトップコート用の樹脂組成物には、必要により、白色顔料や、パール顔料などを添加してもよい。
【0044】
本実施の形態のカバー又はトップコート用の樹脂組成物は、当該樹脂組成物で形成した膜にキセノンランプを照射する色調変化試験において、Lab表色系による色差ΔEが10.0以下である。Lab表色系による色差ΔEは、JIS Z 8730-1980に準拠して測定する。色差ΔEは、値が小さいほど変色が少ないことを示す。この色差ΔEを10.0以下とすることで、太陽光による色調変化を抑えることができる。色差ΔEは、8.0以下が好ましく、6.5以下がより好ましい。色差ΔEの下限は、特に限定されないが、例えば、0以上が好ましい。
【0045】
本実施の形態のカバー又はトップコート用の樹脂組成物は、当該樹脂組成物で形成した膜にキセノンランプを照射する黄色度変化試験において、黄変度ΔYIが、16以下であることが好ましい。黄変度ΔYIの下限は、特に限定されないが、例えば、0以上が好ましい。黄色度YIは、JIS Z 8722に準拠して測定する。黄変度ΔYIは、カバー又はトップコート用の樹脂組成物に配合される顔料によって変化するが、紫外線吸収剤の種類および配合量によっても変化する。上記の範囲とすることで、ゴルフボールの外観を白色に呈することができる。本実施の形態の紫外線を吸収する植物由来の抽出物は、太陽光に曝されても透明性を維持することから、ゴルフボールの外観に影響を与えることなく、カバー又はトップコートに配合することができる。
【0046】
次に、このカバー又はトップコート用の樹脂組成物を用いてゴルフボールを製造する方法の一実施の形態について説明する。
【0047】
本実施の形態のゴルフボールは、コアとカバーからなるツーピース構造や、コアとカバーの間に中間層を備えるスリーピース構造などのマルチピース構造を採用することができる。
【0048】
コアは、主に基材ゴムにより形成することができる。基材ゴムとしては、広くゴム(熱硬化性エラストマー)を用いることができ、例えば、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリウレタンゴム(PU)、ブチルゴム(IIR)、ビニルポリブタジエンゴム(VBR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ニトリルゴム(NBR)、シリコーンゴムを用いることができるが、これらに限定されない。ポリブタジエンゴム(BR)としては、例えば、1,2-ポリブタジエンやシス1,4-ポリブタジエン等を用いることができる。
【0049】
コアには、主成分となる基材ゴムの他、任意に、例えば、共架橋材、架橋剤、充填材、老化防止剤、異性化剤、素練り促進剤、硫黄、及び有機硫黄化合物を添加することができる。また、主成分として、基材ゴムに代えて、熱可塑性エラストマー、アイオノマー樹脂、またはこれらの混合物を用いることもできる。
【0050】
コアは、実質的に球状の形状を有している。コアの外径は、上限として、約42mm以下が好ましく、約41mm以下がより好ましく、約40mm以下がさらに好ましい。また、コアの外径は、下限として、約5mm以上が好ましく、約15mm以上がより好ましく、約25mm以上が最も好ましい。なお、コアは中実であっても中空であってもよい。また、コアは一層でもよいし、センターコアとその包囲層などの複数の層からなるコアでもよい。
【0051】
コアの成形法は、ゴルフボールのコアの公知の成形法を採用することができる。例えば、これに限定されないが、基材ゴムを含む材料を混練機で混練した後、この混練物を丸型金型で加圧加硫成形して得ることができる。また、複数の層を有するコアの成形法は、多層構造のソリッドコアの公知の成形法を採用することができる。例えば、センターコアを、材料を混練機で混練し、この混練物を丸型金型で加圧加硫成形して得た後、包囲層として、材料を混練機で混練し、この混練物をシート状に成形し、このシートでセンターコアを覆ったものを丸型金型で加圧加硫成形することで、複数層のコアを得ることができる。
【0052】
次に、コアの外周に、本実施の形態の紫外線を吸収する植物由来の抽出物を含むカバー用の樹脂組成物を用いてカバーを形成する。なお、トップコートの形成に、本実施の形態の紫外線を吸収する植物由来の抽出物を含むトップコート用の樹脂組成物を用いる場合は、カバーの形成には、紫外線を吸収する植物由来の抽出物を配合しないものを用いる。
【0053】
カバーの形成法は、ゴルフボールのカバーの公知の成形法を採用することができる。例えば、特に限定されないが、金型内にコアを配置し、カバー用の樹脂組成物を射出成形することによって、コアを覆うようにカバーを形成することができる。本実施の形態の紫外線を吸収する植物由来の抽出物は、カバーを射出成形で形成する際の温度条件で分解することはなく、よって、カバーにおいて紫外線吸収剤として機能を発揮することができる。このカバー成型用の金型は、カバー表面にディンプルを形成するための複数の突起部を有する。カバー表面に形成されるディンプルの大きさ、形状、数などは、ゴルフボールの所望する空気力学的特性に応じて、適宜、設計することができる。
【0054】
カバーの厚さは、これに限定されないが、下限は、0.2mm以上が好ましく、0.4mm以上がより好ましく、上限は、4mm以下が好ましく、3mm以下がより好ましく、2mm以下が更に好ましい。
【0055】
カバーの材料硬度は、これに限定されないが、上限として、ショアDにて、約60以下が好ましく、約55以下がより好ましく、約50以下が更に好ましい。また、下限として、ショアDにて、約35以上が好ましく、約40以上がより好ましい。カバーの材料硬度は、カバーの樹脂材料を厚さ2mmのシート状に成形し、2週間以上放置し、その後、ショアD硬度として、ASTM D2240-95規格に準拠して計測する。
【0056】
更に、カバーの外周に、本実施の形態の紫外線を吸収する植物由来の抽出物を含むトップコート用の樹脂組成物を用いてトップコート(「塗膜」とも呼ばれる)を形成する。なお、上述したように、カバーの形成に、本実施の形態の紫外線を吸収する植物由来の抽出物を含むカバー用の樹脂組成物を用いた場合は、トップコートの形成には、紫外線を吸収する植物由来の抽出物を配合しないものを用いる。
【0057】
トップコートの厚さは、特に限定されないが、下限として、7μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましく、13μm以上が更に好ましい。厚さの上限としては、22μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましい。
【0058】
カバーの表面にトップコートを形成する方法は、特に限定されず、カバー表面にゴルフボール塗料を塗装する公知の方法を用いることができ、エアガン塗装法や静電塗装法などの方法を用いることができる。
【0059】
トップコートは、塗装後に、塗膜を乾燥させる工程を行ってもよい。乾燥条件は、ウレタン塗料を乾燥させる公知の条件と同様でよく、本実施の形態では、例えば、乾燥温度を約40℃以上、特に40~60℃、乾燥時間を20~90分、特に40~50分としてもよい。本実施の形態の紫外線を吸収する植物由来の抽出物は、このような乾燥条件で分解することはなく、よって、トップコートにおいて紫外線吸収剤として機能を発揮することができる。
【0060】
コアとカバーとの間には、任意に中間層を設けてもよい。中間層の材料としては、上述したカバーと同様の材料、すなわち、熱可塑性ポリウレタンや、アイオノマー樹脂、またはこれらの混合物を使用して形成することができる。また、中間層には、上記の主成分の他に、他の熱可塑性エラストマーや、ポリイソシアネート化合物、脂肪酸又はその誘導体、塩基性無機金属化合物、充填材などを添加することができる。
【0061】
中間層の材料硬度は、これに限定されないが、下限として、ショアDで、50以上が好ましく、55以上が更に好ましい。また、中間層40の硬度は、上限として、ショアDで、70以下が好ましく、65以下が更に好ましい。
【0062】
中間層の厚さは、これに限定されないが、0.5mm以上が好ましく、1mm以上がより好ましい。また、中間層の厚さは、上限として、10mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましい。
【0063】
このようにして、紫外線を吸収する植物由来の抽出物を含むカバー又はトップコートを備えたゴルフボールを得ることができる。
【実施例】
【0064】
以下、本発明の実施例および比較例について説明する。
【0065】
実施例および比較例のゴルフボールの作製に際し、表1に示す塗膜配合を用いて、ゴルフボールのトップコートを作製した。表1中の配合は、質量部で表した。トップコートの塗膜厚みは15μmとした。そして作製したゴルフボールについて、キセノン色調変化試験およびキセノン黄色度変化試験を行った。
【0066】
表1中の塗膜配合の主剤のポリオールとしては、重量平均分子量(Mw)28,000のポリエステルポリオールを用いた。これは、以下の方法によって合成した。環流冷却管、滴下漏斗、ガス導入管及び温度計を備えた反応装置に、トリメチロールプロパン140質量部、エチレングリコール95質量部、アジピン酸157質量部、1,4-シクロヘキサンジメタノール58質量部を仕込み、撹拌しながら200~240℃まで昇温させ、5時間加熱(反応)させた。その後、酸価4、水酸基価170、重量平均分子量(Mw)28,000のポリエステルポリオールを得た。
【0067】
硬化剤のイソシアネートとしては、旭化成社製の商品名デュラネートTPA-100(NCO含有量23.1%、不揮発分100%)のヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)のヌレート体(イソシアヌレート体)を用いた。
【0068】
表1中の紫外線吸収剤として、フェルラ酸化合物は、Mono社製のライスパウダーである商品名「UVカットライスエキス」を用いた。リシノール酸は、TORASOL製薬社製のひまし油である商品名「VELUS Castor Oil」を用いた。Tinuvin479は、BASF社製のトリアジン系紫外線吸収剤である。いずれの紫外線吸収剤も、主剤に配合した。主剤および硬化剤の溶剤としては、どちらも酢酸ブチルを用いた。また、溶剤に対する紫外線吸収剤の溶解について観察し、評価した。沈殿が残らずに溶解したものを◎と、沈殿が若干観察されたがほぼ溶解したものを〇と評価し、実施例および比較例についての評価結果を表1に示す。
【0069】
いずれのゴルフボールも、カバーには、ディーアイシーコベストロポリマー社製の商品名「パンデックス」、エーテルタイプの熱可塑性ポリウレタンを使用した。カバーの材料硬度はショアDで47であった。
【0070】
いずれのゴルフボールも、中間層の配合は、三井・ダウポリケミカル社製のエチレン-メタクリル酸共重合体のアイオノマー樹脂である商品名ハイミラン1706を35質量部、同商品名ハイミラン1557を15質量部、同商品名ハイミラン1605を50質量部、トリメチロールプロパンを1.1質量部とした。
【0071】
いずれのゴルフボールも、コアの配合は、基材ゴムとしてJSR社製の商品名BR51のポリブタジエンを20質量部、JSR社製の商品名BR-01のポリブタジエンを80質量部、アクリル酸亜鉛(和光純薬社製)を28.5質量部、有機過酸化物としてジクミルパーオキサイド(日本油脂社製の商品名パークミルD)を1.0質量部、老化防止剤として2,2-メチレンビス(4-メチル-6-ブチルフェノール)(大内新興化学工業社製の商品名ノクラックNS-6)を0.1質量部、硫酸バリウム(堺化学工業社製の商品名沈降性硫酸バリウム#100)を33.0質量部、酸化亜鉛(堺化学工業社製の商品名三種酸化亜鉛)を4.0質量部、有機硫黄化合物としてペンタクロロチオフェノール亜鉛塩(和光純薬社製)を0.5質量部とした。
【0072】
[キセノン色調変化試験]
キセノン色調変化試験は、スガ試験機株式会社製のスーパーキセノンウェザーメーター(SX75)を用いて、キセノン照射前後でのボール表面の色の変化をスガ試験機(株)製の色差計(型式SC-P)を用いて測定し、JIS Z 8701のLab表色に基づき、照射前と照射後のボールの黄変に対する変色性(色差ΔE)を調べた。なお、色差ΔEは、値が小さいほど変色が少ないことを示す。また、色差ΔEから黄変を評価した。評価基準は、色差ΔEが6.5以下の場合に◎と評価し、6.5超10.0以下の場合に○と評価し、10.0より大きい場合に×と評価した。
【0073】
[キセノン黄色度変化試験]
キセノン黄色度変化試験は、色差計(スガ試験機株式会社製の分光測定機SC-P)を用い、JIS Z 8722「反射物体の測定方法」(拡散光照明、8度受光の光学系:条件c)に準拠し、d/8(試料の正反射成分を含まないで測定:光トラップあり)により測定した。測定孔径はφ30mmを使用した。そして、キセノン照射前後のボール表面を、JIS Z 8701のLab表色に基づきL、a、bの各値、および黄色度YIを測定し、照射前と照射後の差(黄変度ΔYI)を求めた。
【0074】
【0075】
表1に示すように、紫外線吸収剤を一切配合しなかった比較例1は、キセノン色調変化試験で、色差ΔEが11.0と高く、黄変が目立って生じていた。一方、紫外線吸収剤として、石油由来であるトリアジン系のTinuvin479を用いた比較例2、3は、0.3~0.5質量部という少量の配合で、色差ΔEが6.5と非常に低く、黄変がほとんど生じなかった。
【0076】
そして、紫外線吸収剤として植物由来の抽出物であるフェルラ酸化合物を使った実施例1~5は、いずれの濃度でも色差ΔEが10.0以下となり、フェルラ酸化合物をゴルフボールのトップコートに配合することで、ゴルフボールの黄変を防ぐことができることが確認された。特に、フェルラ酸化合物の配合量が多い程、色差ΔEが低くなり、石油由来の紫外線吸収剤と同等の効果を得ることができたが、多すぎると、溶剤に完全に溶解しないことがわかった。
【0077】
また、植物由来の抽出物であるリシノール酸を使った実施例6も、色差ΔEが10.0以下となり、リシノール酸をゴルフボールのトップコートに配合することで、ゴルフボールの黄変を防ぐことができることが確認された。