(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】ガラス繊維用帯電防止剤及びそれを含有するガラス繊維用集束剤
(51)【国際特許分類】
D06M 13/463 20060101AFI20241218BHJP
D06M 15/333 20060101ALI20241218BHJP
D06M 13/513 20060101ALI20241218BHJP
C03C 25/25 20180101ALI20241218BHJP
【FI】
D06M13/463
D06M15/333
D06M13/513
C03C25/25
(21)【出願番号】P 2020219889
(22)【出願日】2020-12-29
【審査請求日】2023-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000221797
【氏名又は名称】東邦化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高橋 清丸
【審査官】緒形 友美
(56)【参考文献】
【文献】特表平07-505658(JP,A)
【文献】特表平04-502911(JP,A)
【文献】特開2019-011391(JP,A)
【文献】特開2015-113256(JP,A)
【文献】特開2019-119832(JP,A)
【文献】特公昭34-000079(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 13/00-15/693
C09K 3/00- 3/32
C03C 25/00-25/70
C08J 5/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラウリルジエタノールアミン、ヤシアルキルジエタノールアミン、またはポリオキシエチレンヤシアルキルアミンと、硫酸ジエチルとの反応物であって、
下記一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩を含有
し、
常温で液状である前記反応物を含有するガラス繊維用帯電防止剤。
【化1】
(式中、R
1は、炭素数8以上22以下のアルキル基又はアルケニル基を示し、R
2は、
エチル基を示し、m及びnは、エチレンオキシ基の平均付加モル数を示し、それぞれ独立に0.5以上10以下の数である。R
3は、
エチル基を示す。)
【請求項2】
請求項
1に記載のガラス繊維用帯電防止剤を含有するガラス繊維用集束剤。
【請求項3】
さらに被膜形成剤、潤滑剤及びシランカップリング剤を含有する、請求項
2に記載のガラス繊維用集束剤。
【請求項4】
複数本のガラス繊維モノフィラメントと、該ガラス繊維モノフィラメントに請求項
2又は
3に記載のガラス繊維用集束剤を塗布して形成された皮膜とを有するガラス繊維。
【請求項5】
請求項
4に記載のガラス繊維と、熱硬化性樹脂とを含有することを特徴とする樹脂成型体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス繊維用帯電防止剤及びガラス繊維用集束剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス繊維は、繊維補強樹脂(FRP)や繊維補強セメント製品を製造する際の補強用繊維等として広く使用されている。ブッシング(溶融ガラスの紡糸用口金)から引き出したガラスフィラメント(ガラス単繊維)に集束剤を塗布して所定本数集束して、巻き取られたガラスストランド(ガラス繊維束)は、加熱乾燥された後、ロービング(ガラスストランドを円筒状に巻き取ったもの)、チョップドストランド(ガラスストランドを所定の長さに切断したもの)、チョップドストランドマット(チョップドストランドを積層してマット状に成形したもの)等のガラス繊維製品に加工される。
【0003】
ガラス繊維の製造工程では、静電気が発生しやすく、作業の障害となることがある。例えば、ガラスストランドの切断工程で発生する静電気は、カッターへの切断物の付着や短時間での切断性能の低下等の原因となる。このため、従来より静電気の発生を防止する目的で、集束剤中に帯電防止剤を添加したり、ガラスストランドを作製してから切断するまでの間に、帯電防止剤を塗布する方法が採られている。このようなガラス繊維用の帯電防止剤としては、ラウリルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェートやオクチルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート等の第4級アンモニウム硫酸塩が用いられている(特許文献1~4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特公昭62-42870号公報
【文献】特公平5-30780号公報
【文献】特開2015-113256号公報
【文献】特開2017-206787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これら従来の第4級アンモニウム塩は帯電防止効果が十分でなく、所望の帯電防止効果を得るためには、多量の帯電防止剤を使用しなければならない。また、従来の第4級アンモニウム塩は高温下でガラス繊維の着色を生じるという欠点があり、ガラス繊維の製造工程における乾燥工程等の高温下においてガラス繊維の着色が問題となっている。以上の問題から、十分な帯電防止性能を発揮するとともにガラス繊維の着色が無い帯電防止剤の開発が望まれていた。
本発明はこのような状況に鑑みなされたものであり、ガラス繊維を加工する際に発生する静電気を低減でき、外観が良好な樹脂成型体を得ることが可能なガラス繊維用帯電防止剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、高濃度で液状の第4級アンモニウム塩を使用することで、ガラスストランドの乾燥時に水分とともにその表面に移行しやすくして帯電防止性を改善することを着想し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、以下に示すものである。
[1]下記一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩を含有するガラス繊維用帯電防止剤。
【化1】
(式中、R
1は、炭素数8以上22以下のアルキル基又はアルケニル基を示し、R
2は、炭素数1以上3以下のアルキル基を示し、m及びnは、エチレンオキシ基の平均付加モル数を示し、それぞれ独立に0.5以上10以下の数である。R
3は、炭素数1以上3以下のアルキル基を示す。)
[2]常温で液状である、[1]に記載のガラス繊維用帯電防止剤。
[3][1]又は[2]に記載のガラス繊維用帯電防止剤を含有するガラス繊維用集束剤。
[4]さらに被膜形成剤、潤滑剤及びシランカップリング剤を含有する、[3]に記載のガラス繊維用集束剤。
[5]複数本のガラス繊維モノフィラメントと、該ガラス繊維モノフィラメントに[3]又は[4]に記載のガラス繊維用集束剤を塗布して形成された皮膜とを有するガラス繊維。
[6][5]に記載のガラス繊維と、熱硬化性樹脂とを含有することを特徴とする樹脂成型体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、優れた帯電防止性能を発揮するとともに、高温下に晒らされた後であってもガラス繊維の着色が少ないガラス繊維用帯電防止剤を提供することができる。また、本発明は前記帯電防止剤を含有するガラス繊維用集束剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に
限定されるものではない。
【0010】
[ガラス繊維用帯電防止剤]
本発明で用いられるガラス繊維用帯電防止剤は、下記一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩を含有する。
【化1】
(式中、R
1は、炭素数8以上22以下のアルキル基又はアルケニル基を示し、R
2は、炭素数1以上3以下のアルキル基を示し、m及びnは、平均付加モル数を示し、それぞれ独立に0.5以上10以下の数である。R
3は、炭素数1以上3以下のアルキル基を示す。)
【0011】
炭素数8以上22以下のアルキル基としては、具体的には、n-オクチル基、n-デシル基、ドデシル基(ラウリル基)、トリデシル基、テトラデシル基(ミリスチル基)、ヘキサデシル基(パルミチル基)、オクタデシル基(ステアリル基)、イコシル基、ドコシル基(ベヘニル基)、テトラコシル基等が挙げられる。炭素数8以上22以下のアルケニル基としては、具体的には、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、エイコセニル基、ドコセニル基、テトラコセニル基等が挙げられ、これらは分岐構造、環状構造を有していてもよい。
これらの中でも、適度な帯電防止性を付与する観点から、炭素数8以上18以下のアルキル基又はアルケニル基が好ましく、特にドデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基が好ましい。
【0012】
一般式(1)中のm及びnは、エチレンオキサイドの平均付加モル数を示し、第4級アンモニウム塩が高濃度で液状であり、ストランドの表面に移行して帯電防止性能を向上させる観点から、それぞれ独立に、0.5以上であり、好ましくは1.0以上であり、同様の観点から、10以下であり、好ましくは5以下、より好ましくは3以下である。また、m+nは、帯電防止性能を向上させる観点から、1以上であり、好ましくは1.5以上であり、同様の観点から、20以下、好ましくは5以下、より好ましくは3以下である。
【0013】
一般式(1)中のR2及びR3は、炭素数1以上3以下のアルキル基を示す。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられるが、最も好ましくはエチル基である。
【0014】
本発明で用いられる第4級アンモニウム塩の製造方法に特に制限はないが、脂肪族アミンにエチレンオキサイドを付加したポリオキシエチレン脂肪族アミンと硫酸ジアルキルとを反応させることにより製造することができる。
【0015】
ポリオキシエチレン脂肪族アミンとしては、オクチルジエタノールアミン、デシルジエタノールアミン、ラウリルジエタノールアミン、ミリスチルジエタノールアミン、パルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン及びオレイルジエタノールアミンからなる群から選ばれる脂肪族アミンの1種又は2種以上、ヤシアルキルジエタノールアミン、ポリオキシエチレンココアミン、ポリオキシエチレン牛脂アルキルアミン等が挙げられるがこの限りではない。
【0016】
硫酸ジアルキルとしては、例えば、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジプロピル等が挙げられるが、この限りではない。
【0017】
ポリオキシエチレン脂肪族アミンと硫酸ジアルキルとを反応させる際の反応温度は、反応を速やかに進行させる観点から、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上であり、そして、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下、更に好ましくは80℃以下である。
【0018】
ポリオキシエチレン脂肪族アミン(a)と硫酸ジアルキル(b)の反応モル比は、好ましくは(a)/(b)=0.1以上1.2以下、より好ましくは0.5以上1.0以下、さらに好ましくは0.7以上1.0以下である。特に反応モル比が1.0以下になると、未反応の化合物の影響で反応物の粘度が低くなり、表面に移行して帯電防止性が効きやすくなるため好ましい。
【0019】
第4級アンモニウム塩を含有する反応物が常温で固体状やゲル状である場合、帯電防止性が十分でないため、常温で液状であることが好ましい。この場合の常温とは25℃である。
【0020】
本発明のガラス繊維用帯電防止剤は、集束剤に配合してもよく、又はガラスストランドに直接塗布して使用することもでき、いずれの場合においても、ガラスストランドに優れた帯電防止性を付与することができる。
【0021】
[ガラス繊維用集束剤]
本発明のガラス繊維用帯電防止剤を集束剤に添加して使用する場合、集束剤は特に限定されず、ガラス繊維の種類及びその用途に応じて常用の集束剤を使用してよい。集束剤は、通常、デンプン系、セルロース系、合成樹脂エマルジョン系等の被膜形成剤を、1~20質量部含有する水性液体である。本発明のガラス繊維用帯電防止剤を集束剤に添加して使用する場合の添加量は、被膜形成剤の有効成分100質量部に対して、好ましくは0.5~20質量部、より好ましくは1~15質量部、さらに好ましくは3~10質量部である。すなわち、帯電防止剤の添加量が少なすぎると帯電防止性が十分発揮できず、逆に多すぎると、帯電防止性が飽和するとともに、ガラスストランドの集束性が低下する場合がある。
【0022】
本発明のガラス繊維用帯電防止剤を配合する集束剤の被膜形成剤としては、帯電防止効果の点から、合成樹脂エマルジョン系被膜形成剤が好ましい。合成樹脂エマルジョン系被膜形成剤としては、例えば、ポリ酢酸ビニルエマルジョン、酢酸ビニル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体エマルジョン、エチレン/酢酸ビニル共重合体エマルジョン、ポリ(メタ)アクリル酸エステルエマルジョン、エポキシ樹脂エマルジョン、ウレタン樹脂エマルジョン等が挙げられる。
【0023】
本発明のガラス繊維用帯電防止剤を集束剤に添加して使用する場合、他の添加剤を含有していても良い。このような他の成分としては、シランカップリング剤、潤滑剤、界面活性剤等が挙げられる。
【0024】
シランカップリング剤として、例えば、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリス-β-メトキシエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル系シラン;アミノメチルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、ジアミノプロピルジエトキシシラン、トリアミノプロピルエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ系シラン;γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のメタクリロキシ系シラン;β-3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のエポキシ系シラン;γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト系シラン等が挙げられる。シランカップリング剤の配合量は、集束剤中の被膜形成剤の有効成分100質量部に対して0.2~20質量部程度である。
【0025】
潤滑剤としては、例えば、パラフィンワックス等の脂肪族炭化水素;ラウリルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール等の脂肪族アルコール;パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド等の脂肪族アミド;ステアリン酸ブチル、ステアリン酸オクチル、脂肪酸トリグリセライド等の脂肪酸エステル等が挙げられる。潤滑剤の配合量は、集束剤中の被膜形成剤の有効成分100質量部に対して0.5~10質量部程度である。
【0026】
界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコールプロピレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオイサイド付加物、グリセリン脂肪酸エステル又はそのエチレンオキサイド付加物、ソルビタン脂肪酸エステル又はそのエチレンオキサイド付加物、アルキルポリグルコシド、脂肪酸モノエタノールアミド又はそのエチレンオキサイド付加物、脂肪酸ジエタノールアミド又はそのエチレンオイサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸メチルエステルエトキシレート、ポリエチレンポリアミンの部分脂肪酸アミドの弱酸塩等が挙げられる。界面活性剤の配合量は、集束剤中の被膜形成剤の有効成分100質量部に対して0.2~20質量部程度である。
【0027】
本発明のガラス繊維用帯電防止剤を集束剤に配合せずに、ガラスストランドに直接塗布する場合、帯電防止剤を塗布する工程は、ガラスストランドに集束剤を塗布した後であることが好ましく、ガラスストランドの乾燥後でガラスストランドの切断前であることが更に好ましい。この場合、帯電防止剤を1~50質量部の水溶液として塗布することが好ましい。ガラスストランドの帯電防止剤被着量は、ガラスストランドに対して0.005~0.5質量%であることが好ましい。また、この帯電防止剤の水溶液は、前記潤滑剤や界面活性剤が配合されていてもよい。
【0028】
[ガラス繊維]
本発明のガラス繊維は、複数本のガラス繊維モノフィラメントと、ガラス繊維モノフィラメントに上述のガラス繊維用集束剤を塗布して形成された皮膜とを有することを特徴とする。
【0029】
本発明のガラス繊維は、例えば以下のようにして得られる。まず、溶融ガラスを白金製のブッシングの底部に設けられた多数のノズルから引き出すことによって30~6000本のガラス繊維モノフィラメントを形成する。次に、これらのガラス繊維モノフィラメントに、アプリケーターなどによって上記のガラス繊維用集束剤を塗布し、これらガラス繊維モノフィラメントを、ギャザリングシューにより1束に集束することで、ガラス繊維ストランドを形成し、コレットに巻き取りケーキとする。そして、ケーキを乾燥器に入れ、80~130℃で、1~30時間程度かけてガラス繊維用集束剤に含まれる溶媒(揮発分)を蒸発させ、ガラス繊維モノフィラメントの表面を覆うような固形の皮膜を形成する。これにより、ケーキに巻き取られたガラス繊維が得られる。
【0030】
乾燥したガラス繊維は、ケーキから引出され、長さが1~40mm程度に切断され、チョップドストランドとなる。
【0031】
ガラス繊維を構成するガラスとしては、Eガラス、Aガラス、Sガラス、Dガラス、NCRガラス、NEガラス等の任意の組成を有するガラスを適用することができる。
【0032】
本発明のガラス繊維を構成するガラス繊維モノフィラメントは、3~30μmの繊維径を有するものであれば、BMC法において、チョップドストランドと熱硬化性樹脂とを均一に混合させることができる。ガラス繊維モノフィラメントの平均直径は、光学顕微鏡により計測してよく、またレーザー計測機などにより計測してもよい。
【0033】
本発明のガラス繊維は、ガラス繊維用集束剤を塗布し、乾燥させることにより完全に揮発性物質を揮発させた時におけるガラス繊維用集束剤の質量割合、すなわち強熱減量が、0.2~3.0質量%であることが好ましい。ガラス繊維表面に塗布されたガラス繊維用集束剤の強熱減量が小さすぎると、上述した特性を十分に発揮することができないおそれがある。一方、ガラス繊維表面に塗布されたガラス繊維用集束剤の強熱減量が大きすぎても、塗布量の増加にも関わらず、上述した特性の向上が認められず、経済的ではない。強熱減量は、1.0~2.0質量%であることがより好ましい。なお、ガラス繊維へのガラス繊維用集束剤の強熱減量は、JIS R 3420(2013)7.3.2 に従い、測定することができる。
【0034】
[樹脂成型体]
次に、本発明の樹脂成型体について説明する。
本発明の樹脂成型体は、上記に記載のガラス繊維と、熱硬化性樹脂を含むことを特徴とする。
【0035】
本発明の樹脂成型体は、ガラスチョップドストランドと熱硬化性樹脂とを含むシートを積層した積層体をプレスすることにより製造するSMC法や、ガラスチョップドストランドを熱硬化性樹脂コンパウンドに混練した混合体を金型のポットに投入し、プランジャーで押し込んで加熱・加圧を行い成型するBMC法により製造される。
【0036】
樹脂成型体に対するチョップドストランドの含有割合は、10~40質量%であることが好ましい。チョップドストランドの含有割合が少なすぎると、チョップドストランドの含有量が不足し、補強効果が十分とならないおそれがある。一方、チョップドストランドの含有割合が多すぎると、チョップドストランドと熱硬化性樹脂が均一にならなかったり、樹脂成型体の形状を保てないおそれがある。チョップドストランドの含有割合は、15~30質量%であることがより好ましい。
【実施例】
【0037】
次に本発明を実施例により説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0038】
<第4級アンモニウム塩の製造>
製造例1
500mLの4つ口フラスコに、ヤシアルキルジエタノールアミンを342.2gを入れ、窒素バブリング下で80℃まで昇温した後、滴下ロートより硫酸ジエチル157.8gを120分かけて滴下し、滴下終了後60分反応させ、ジヒドロキシエチルエチルココアルキルアンモニウムエチルサルフェートを含む黄~赤褐色透明液体を得た。なお、この反応における反応率(4級化率)は85%であった。
【0039】
製造例2
500mLの4つ口フラスコに、ラウリルジエタノールアミンを338.0g入れ、窒素バブリング下で80℃まで昇温した後、滴下ロートより硫酸ジエチル162.0gを配合したこと以外は製造例1と同様の方法により、ジヒドロキシエチルエチルラウリルアンモニウムエチルサルフェートを含む黄~赤褐色透明液体を得た。なお、この反応における反応率(4級化率)は85%であった。
【0040】
製造例3
500mLの4つ口フラスコに、ポリオキシエチレン(5)ヤシアルキルアミンを354.9g、硫酸ジエチル144.8gを配合したこと以外は製造例1と同様の方法により、ジポリオキシエチレンエチルココアルキルアンモニウムエチルサルフェートを含む黄~赤褐色透明液体を得た。なお、この反応における反応率(4級化率)は100%であった。
【0041】
製造例4
500mLの4つ口フラスコに、ポリオキシエチレン(20)ヤシアルキルアミンを438.0g、硫酸ジエチル59.1gを配合したこと以外は製造例1と同様の方法により、ジポリオキシエチレンエチルココアルキルアンモニウムエチルサルフェートを含む黄~赤褐色透明液体を得た。なお、この反応における反応率(4級化率)は100%であった。
【0042】
製造例5
500mLの4つ口フラスコに、ポリオキシエチレン(20)牛脂アルキルアミンを439.4g、硫酸ジエチル60.6gを配合したこと以外は製造例1と同様の方法により、ジポリオキシエチレンエチル牛脂アルキルアンモニウムエチルサルフェートを含む黄~赤褐色透明液体を得た。なお、この反応における反応率(4級化率)は100%であった。
【0043】
<ガラス繊維用集束剤の調整>
(実施例1)
第4級アンモニウム硫酸塩として、製造例1で得られたジヒドロキシエチルエチルココアルキルアンモニウムエチルサルフェートが0.8質量%、ポリ酢酸ビニル樹脂 モビニール350(ジャパンコーティングレジン株式会社製)が10質量%(固形分換算、以下同じ)、ポリウレタン樹脂 ボンディック2220(DIC株式会社製)が1質量%、シランカップリング剤 A-174(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)が0.5質量%となるように脱イオン水で調製することでガラス繊維用集束剤1を作製した。
【0044】
(実施例2)
第4級アンモニウム硫酸塩として、製造例2で得られたジヒドロキシエチルエチルラウリルアンモニウムエチルサルフェートを用いたこと以外は実施例1と同様にして、ガラス繊維用集束剤2を作製した。
【0045】
(実施例3)
第4級アンモニウム硫酸塩として、製造例3で得られたジポリオキシエチレン(n=2、m=3)エチルココアルキルアンモニウムエチルサルフェートを用いたこと以外は実施例1と同様にして、ガラス繊維用集束剤3を作製した。
【0046】
(実施例4)
第4級アンモニウム硫酸塩として、製造例4で得られたジポリオキシエチレン(n,m=10)エチルステアリルアンモニウムエチルサルフェートを用いたこと以外は実施例1と同様にして、ガラス繊維用集束剤4を作製した。
【0047】
(実施例5)
第4級アンモニウム硫酸塩として、製造例5で得られたジヒドロキシエチルエチルステアリルアンモニウムエチルサルフェートを用いたこと以外は実施例1と同様にして、ガラス繊維用集束剤5を作製した。
【0048】
(比較例1)
第4級アンモニウム硫酸塩として、ラウリルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェートを用いたこと以外は実施例1と同様にして、ガラス繊維用集束剤6を作製した。
【0049】
(比較例2)
第4級アンモニウム硫酸塩として、オクチルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェートを用いたこと以外は実施例1と同様にして、ガラス繊維用集束剤7を作製した。
【0050】
平均直径が13μmのガラス繊維モノフィラメントに、ガラス繊維用集束剤1~7を、強熱減量が1.0質量%となるようにアプリケーターで塗布し、300本のガラス繊維モノフィラメントを1本に集束させ、ガラス繊維を得る。その後、コレットにケーキとして巻き取り、ガラス繊維に塗布されたガラス繊維集束剤を140℃の温度で10時間乾燥させた後、ケーキからガラス繊維を取り出し合糸し、巻き取ることで番手が4800texのガラスロービングストランドを得た。次に、ガラスロービングストランドを切断することで、長さ25mmのチョップドストランドを得た。
【0051】
チョップドストランドの帯電量及びチョップドストランドを用いて作製した樹脂成型体の外観色について、下記の方法により評価を行った。結果を表1に示す。
帯電量は、ガラス繊維を切断終了後、1分間経過した際におけるチョップドストランドの帯電圧を、静電気測定器 スタチロンDZ4(シシド静電気株式会社製)で測定した。
外観色は、不飽和ポリエステル樹脂、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウムからなるバスタブ用コンパウンド(75質量%)とチョップドストランド(25質量%)とからなるシートを用いて、SMC法により樹脂成型体を作製し、この樹脂成型体の外観を目視で確認した。目視の結果、所望の色となった場合は、「〇」とし、所望の色でなかった場合は、「×」とした。
【0052】
【0053】
表1に示すように、実施例1~6のチョップドストランドは、いずれも帯電防止性及び外観に優れるものであった。
これに対し、比較例1~2のチョップドストランドは、帯電防止性が十分でなかった。