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特許7606350エアバッグ装置の製造方法及びエアバッグ装置。
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  • 特許-エアバッグ装置の製造方法及びエアバッグ装置。 図1
  • 特許-エアバッグ装置の製造方法及びエアバッグ装置。 図2
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  • 特許-エアバッグ装置の製造方法及びエアバッグ装置。 図4
  • 特許-エアバッグ装置の製造方法及びエアバッグ装置。 図5
  • 特許-エアバッグ装置の製造方法及びエアバッグ装置。 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】エアバッグ装置の製造方法及びエアバッグ装置。
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/237 20060101AFI20241218BHJP
   B60R 21/207 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
B60R21/237
B60R21/207
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021001080
(22)【出願日】2021-01-06
(65)【公開番号】P2021147033
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-10-20
(31)【優先権主張番号】P 2020044356
(32)【優先日】2020-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】小林 優斗
(72)【発明者】
【氏名】桜井 努
(72)【発明者】
【氏名】下野 博賢
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-511414(JP,A)
【文献】米国特許第05899490(US,A)
【文献】国際公開第2016/035746(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16 - 21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室(1)内部の隣り合う座席(2)、(3)間で膨張展開し、夫々の座席に着座する乗員(20)、(30)を側方から拘束するエアバッグクッション(5)を備えるエアバッグ装置(4)の製造方法であって、
前記エアバッグクッション(5)は、
膨張展開時に上下方向に離れて対向する上面パネル(50)及び下面パネル(51)と、
該上面パネル(50)及び下面パネル(51)の周縁を連絡する側面パネル(52)と、
前記上面パネル(50)の左右方向中央から上方に突出する突出部(53)と、
前記側面パネル(52)にて前記突出部(53)に対応する位置よりも左右方向の一端側の位置で前記側面パネル(52)の内面に沿って取付けられた筒状のインフレータ(6)とを備え、
前記エアバッグクッション(5)を収納形態に折りたたむ手順は、
前記上面パネル(50)と前記インフレータ(6)の取付け部が設けられた前記側面パネル(52)とが表裏に重なるように折りたたむ第1工程と、
前記突出部(53)を端部からロール状に丸め、前記上面パネル(50)に重なる第1ロール部(54)を形成する第2工程と、
前記取付け部を含む一方の側部を前記取付け部を覆うように折り返し、端部を前記第1ロール部(54)に近接配置した折り返し部(55)を形成する第3工程と、
前記取付け部を含まない他方の側部をロール状に丸めて第2ロール部(56)を形成し、前記第1ロール部(54)と前記折り返し部(55)との間に配置する第4工程とを含むことを特徴とするエアバッグ装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1工程の前に、前記下面パネル(51)を前記側面パネル(52)の間から引き出す引き出し工程を更に含む請求項1に記載のエアバッグ装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1工程と前記第2工程との間、又は前記第2工程と前記第3工程との間に、前記第1工程で生じる前記下面パネル(51)及び側面パネル(52)のはみ出し部分を前記上面パネル(50)及び側面パネル(52)の重なり部分の間に折り込む折り込み工程を更に含む請求項1又は請求項2に記載のエアバッグ装置の製造方法。
【請求項4】
車室(1)内部の隣り合う座席(2)、(3)間で膨張展開し、夫々の座席に着座する乗員(20)、(30)を側方から拘束するエアバッグクッション(5)を備えるエアバッグ装置(4)であって、
前記エアバッグクッション(5)は、
膨張展開時に上下方向に離れて対向する上面パネル(50)及び下面パネル(51)と、
該上面パネル(50)及び下面パネル(51)の周縁を連絡する側面パネル(52)と、
前記上面パネル(50)の左右方向中央から上方に突出する突出部(53)と、
前記側面パネル(52)にて前記突出部(53)に対応する位置よりも左右方向の一端側の位置で前記側面パネル(52)の内面に沿って取付けられた筒状のインフレータ(6)とを備え、
前記上面パネル(50)と前記インフレータ(6)の取付け部が設けられた前記側面パネル(52)とを表裏に重ね、前記突出部(53)をロール状に丸めた第1ロール部(54)と、前記取付け部を含む一方の側部を前記取付け部を覆うように折り返した折り返し部(55)と、他方の側部をロール状に丸めた第2ロール部(56)とが、該第2ロール部(56)を中央として前記上面パネル(50)上で並ぶ折りたたみ形態で収納されていることを特徴とするエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグ装置の製造方法及びエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多くの車両にエアバッグ装置が装備されている。エアバッグ装置は、車両衝突等の緊急時に作動し、ガス圧で膨張展開するエアバッグクッションにより乗員を受け止めて保護する。エアバッグ装置には、設置箇所及び用途に応じて様々な種類があり、そのうちの一つに、車室内部の隣り合う座席間(例えば、運転席と助手席の間)で膨張展開するエアバッグクッションを備え、夫々の座席に着座する乗員を側方から拘束して、側面衝突時における乗員の横移動を抑制するエアバッグ装置、いわゆるサイドエアバッグ装置がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-115947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のエアバッグ装置は、膨張展開時に隣り合う座席間の空間を占める大きいサイズのエアバッグクッションを備えており、このエアバッグクッションに膨張用のガスを供給するインフレータのガス発生量を増やす必要が生じる。
【0005】
この問題を解消するため、異なる方向に膨張展開する複数の部分を有するエアバッグクッションが提案されている。このエアバッグクッションは、例えば、座席に着座する乗員の胴部及び肩部に対応する高さ位置で横方向に拡がるように膨張展開する主展開部と、主展開部の上面の中央部で上方向に突出するように膨張展開する突出部とを備えている。このエアバッグクッションを備えるエアバッグ装置によれば、主展開部の両側で乗員の胴部及び肩部を支え、更に移動する乗員の頭部を突出部で支えることができ、小さいサイズのエアバッグクッションにより所望の保護機能を果たすことができる。
【0006】
しかしながら、このようなエアバッグ装置においては、収納形態からエアバッグクッションが膨張展開する際に複数の部分同士が絡み合い、夫々の展開を阻害する結果、膨張完了後に想定されたエアバッグクッションの展開形状が得られないという問題が生じ得る。
【0007】
本開示の目的は、膨張完了後に想定されたエアバッグクッションの展開形状を良好に実現し得るエアバッグ装置の製造方法及びエアバッグ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係るエアバッグ装置の製造方法は、車室内部の隣り合う座席間で膨張展開し、夫々の座席に着座する乗員を側方から拘束するエアバッグクッションを備えるエアバッグ装置の製造方法であって、前記エアバッグクッションは、膨張展開時に上下方向に離れて対向する上面パネル及び下面パネルと、該上面パネル及び下面パネルの周縁を連絡する側面パネルと、前記上面パネルから上方に突出する突出部と、該突出部の一側で前記側面パネルの内面に沿って取付けられた筒状のインフレータとを備え、前記エアバッグクッションを収納形態に折りたたむ手順は、前記上面パネルと前記インフレータの取付け部が設けられた前記側面パネルとが表裏に重なるように折りたたむ第1工程と、前記突出部を端部からロール状に丸め、前記上面パネルに重なる第1ロール部を形成する第2工程と、前記取付け部を含む一方の側部を前記取付け部を覆うように折り返し、端部を前記第1ロール部に近接配置した折り返し部を形成する第3工程と、前記取付け部を含まない他方の側部をロール状に丸めて第2ロール部を形成し、前記第1ロール部と前記折り返し部との間に配置する第4工程とを含む。
【0009】
また前記第1工程の前に、前記下面パネルを前記側面パネルの間から引き出す引き出し工程を更に含む。
【0010】
また前記第1工程と前記第2工程との間、又は前記第2工程と前記第3工程との間に、前記第1工程で生じる前記下面パネル及び側面パネルのはみ出し部分を前記上面パネル及び側面パネルの重なり部分の間に折り込む折り込み工程を更に含む。
【0011】
更に本開示に係るエアバッグ装置は、車室内部の隣り合う座席間で膨張展開し、夫々の座席に着座する乗員を側方から拘束するエアバッグクッションを備えるエアバッグ装置であって、前記エアバッグクッションは、膨張展開時に上下方向に離れて対向する上面パネル及び下面パネルと、該上面パネル及び下面パネルの周縁を連絡する側面パネルと、前記上面パネルから上方に突出する突出部と、該突出部の一側で前記側面パネルの内面に沿って取付けられた筒状のインフレータとを備え、前記上面パネルと前記インフレータの取付け部が設けられた前記側面パネルとを表裏に重ね、前記突出部をロール状に丸めた第1ロール部と、前記取付け部を含む一方の側部を前記取付け部を覆うように折り返した折り返し部と、他方の側部をロール状に丸めた第2ロール部とが、該第2ロール部を中央として前記上面パネル上で並ぶ折りたたみ形態で収納されている。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、折りたたまれたエアバッグクッションが膨張展開する際の各部の絡み合いを防止し、膨張完了後に想定された展開形状を確実に実現することができ、衝突時における乗員の保護を良好に達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態に係るエアバッグ装置が設けられた車室の内部を略示する斜視図である。
図2図1のII-II線によるエアバッグ装置の断面図である。
図3】エアバッグクッションの斜視図である。
図4】車室内でのエアバッグクッションの展開形態を示す前方から見た正面図である。
図5】エアバッグクッションの折りたたみ手順の説明図である。
図6】エアバッグクッションの折りたたみ手順の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施の形態を図面に基づき説明する。なお、以下の説明で使用している「上下方向」とは、車室の天井の中心と床の中心とを結ぶ線上での方向を示し、天井に向かう方向が「上方向」、床に向かう方向が「下方向」である。また「前後方向」とは、車両が進行する方向であり、前進方向が「前方向」、後進方向が「後方向」である。更に、「車幅方向」とは、上記した「前後方向」と直交する方向であり、車室内で通常の座席が並んで配置される方向である。
【0015】
図1は、実施の形態に係るエアバッグ装置が設けられた車室の内部を略示する斜視図である。本図には、車室1の床面10上に幅方向に並べて設置された運転席2及び助手席3と、運転席2に装備されたシートベルト23とが示されている。運転席2は、座部21と、該座部21の後側から上向きに立ち上がる背もたれ22とを備えており、乗員20(図4参照)は、座部21上にシートベルト23を装着して着座する。
【0016】
実施の形態に係るエアバッグ装置4は、運転席2の背もたれ22の助手席3側の側面に組み込まれている。図2は、図1のII-II線によるエアバッグ装置4の断面図である。本図における上下方向は、前述した「前後方向」に対応する。
【0017】
エアバッグ装置4は、収納部40内に収納されたエアバッグクッション5とインフレータ6とを備える。収納部40は、背もたれ22の助手席3側(図2における左側)の側面に外向きの開口を有して設けられた箱体であり、例えば、背もたれ22の骨格フレームの一部を利用して構成されている。収納部40の開口は、背もたれ22の側面と面一をなすカバー板41に覆われている。カバー板41は、収納部40よりも低強度の樹脂製の板であり、カバー板41の前部(図2における上部)の内面には、上下方向に延びる開裂溝42が形成されている。
【0018】
エアバッグクッション5は、例えば、ナイロン繊維等の高強度繊維の編み込みにより強化された布地製の袋体であり、後述する手順で折りたたまれて収納部40の内側に収納されている。インフレータ6は、円筒状であり、エアバッグクッション5の内部に取り付けられている。インフレータ6の周面には、径方向外向きにスタッドボルト60が突設され、該スタッドボルト60は、エアバッグクッション5の外側に延びている。インフレータ6は、収納部40の底板に通したスタッドボルト60にナット61を締め付けて固定されており、エアバッグクッション5は、インフレータ6の取付け位置で収納部40の底板との間に挟まれて固定されている。
【0019】
インフレータ6は、車両衝突等の緊急時に作動し、エアバッグクッション5の内部に膨張展開用のガスを噴射する。エアバッグクッション5は、インフレータ6の噴射ガスの作用により爆発的に膨張し、開裂溝42の位置でカバー板41を破断して、収納部40支えとして外方に向けて展開する。
【0020】
図3は、エアバッグクッション5の斜視図であり、膨張展開時の形態を示している。本図に示す如くエアバッグクッション5は、膨張展開時に上下方向に離れて対向する上面パネル50及び下面パネル51と、上面パネル50及び下面パネル51の周縁を連絡する側面パネル52と、上面パネル50から上方に突出する突出部53とを備えている。上面パネル50、下面パネル51及び側面パネル52は、例えば、夫々の周縁を縫い合わせることにより一体的に接合され、図示のように左右方向(車幅方向)に長い直方体状に展開する主展開部を構成する。突出部53は、上面パネル50の長さ方向中央部で上向きに立ち上がり、左右方向に適宜の幅を有して展開する。
【0021】
インフレータ6は、図中に破線で示すように、軸長方向を上下方向とし、突出部53の一側で側面パネル52の内面に沿わせて取付けられている。前述した固定に用いるスタッドボルト60は、インフレータ6の上下方向に離れた2位置に設けられ、夫々の位置で側面パネル52の外側に突出している。
【0022】
図4は、車室1内でのエアバッグクッション5の展開形態を示す前方から見た正面図である。前述の如くエアバッグクッション5は、運転席2の背もたれ22の側部に収納されており、車両衝突等の緊急時にインフレータ6の噴射ガスの作用により膨張し、車幅方向に隣り合う運転席2と助手席3との間で展開する。
【0023】
上面パネル50、下面パネル51及び側面パネル52により構成された主展開部は、運転席2に着座する乗員20及び助手席3に着座する乗員30の胴部及び肩部に対応する高さ位置で横方向に拡がり、運転席2及び助手席3の前位置に達する両側で乗員20、30を側方から拘束する。従って、側面衝突時における乗員20、30の横移動を防止し、乗員20、30を有効に保護することができる。なお、図4中の乗員20、30は、2点鎖線により略示してある。
【0024】
突出部53は、主展開部の中央で上方に立ち上がり、運転席2に着座する乗員20及び助手席3に着座する乗員30の頭部に対応する高さ位置に達する。従って、例えば、助手席3に着座している乗員30がOOP(Out Of Position:非正規着座姿勢)であっても、運転席2側に横移動する乗員30の頭部を突出部53により拘束することができ、非正規着座姿勢にある乗員の保護程度を評価する試験、いわゆるOOP試験において良好な成績を示すエアバッグ装置4を提供できる。
【0025】
図4に示すエアバッグクッション5の展開状態は、エアバッグクッション5の各部の寸法を、運転席2及び助手席3とエアバッグ装置4の配設位置との位置関係に応じて適正に設定することで実現し得るが、一方でエアバッグクッション5は、前述したような形状を有しており、折りたたんだ状態での収納形態から膨張展開する際に複数の部分同士が絡み合い、夫々の展開を阻害する結果、膨張完了後に想定された展開形状が得られないという問題が生じ得る。
【0026】
図2に示すエアバッグクッション5の折りたたみ形態は、膨張展開時の各部の絡み合いを防止し、図4に示す展開状態を、確実に且つ速やかに実現することを目的としている。図5及び図6は、エアバッグクッション5の折りたたみ手順の説明図である。以下にエアバッグクッション5の折りたたみ手順を、図5及び図6に従って説明する。なお、この説明においては、図中の「上、下」及び「左、右」を使用する。
【0027】
図5Aは、展開状態にあるエアバッグクッション5を示しており、インフレータ6は、図5A中に破線で示す位置に取り付けてある。エアバッグクッション5の折りたたみに際しては、まず図5B中に矢符により示すように、下面パネル51を側面パネル52の間から引き出し(引き出し工程)、上面パネル50の下方に側面パネル52及び下面パネル51を連続させる。
【0028】
次に、引き出された下面パネル51と側面パネル52とを、上面パネル50の一側の長辺を折り線とし、図5B中に白抜矢符により示す向きに折り、図5Cに示すように、上面パネル50と、インフレータ6の取付け部が設けられた側面パネル52とが表裏に重なるように折りたたむ(第1工程)。第1工程の前に実施される引き出し工程は、第1工程において上面パネル50と側面パネル52との所望の重なり状態を、簡易に且つ正しく実現するために必要な工程である。
【0029】
一方で上面パネル50から突出する突出部53は、図5B中に矢符により示すように、左右両側から力を加えて両側面を重ねた板状とし、図5B中に白抜矢符により示すように上端部からロール状に丸め、図5Cに示すように、上面パネル50に重なる第1ロール部54を形成する(第2工程)。なお、第1ロール部54の巻き方向は、図示の方向に限らず、図と逆の方向であってもよい。
【0030】
上面パネル50と側面パネル52とを重ねる第1工程と、突出部53をロール状に丸めて第1ロール部54を形成する第2工程との実施順は任意であり、第1工程の次に第2工程の順で実施してもよく、また、第2工程の次に第1工程の順で実施してもよい。
【0031】
また第1工程での折りたたみにより、図5Cに示すように、表裏に重なる上面パネル50と側面パネル52との間から下面パネル51及び残りの側面パネル52が外向きにはみ出した状態となる。このはみだし部分は、図5C中に矢符により示すように、上面パネル50及び側面パネル52の間に折り込むのが望ましい。この折り込み工程は、前述した第1工程と、次に説明する第3工程との間の適宜のタイミングで実施すればよい。
【0032】
以上の折り込み工程を含む第1工程及び第2工程の実施により、エアバッグクッション5は、図6Aに示すように、上面パネル50、下面パネル51及び側面パネル52が重なって形成された板状部の中央に第1ロール部54が位置し、この第1ロール部54の一側(右側)にインフレータ6の取付け部が略平行をなして並ぶ形態となる。
【0033】
次に、インフレータ6の取付け部を含む右側の半部を、図6A中に白抜矢符により示すように折り返し、図6Bに示すように、インフレータ6の取付け部を上側から覆い、第1ロール部54の右側に端部を近接配置させた折り返し部55を形成する(第3工程)。
【0034】
一方で、インフレータ6の取付け部を含まない左側の半部を、図6A中に白抜矢符により示すように端部からロール状に丸め、図6Bに示すように、第1ロール部54の左側に位置する第2ロール部56を形成し、この第2ロール部56の形成部分を、図6B中に白抜矢符により示すように折り返し、折り返し部分で第1ロール部54を上側から覆って、第2ロール部56を第1ロール部54と折り返し部55との間に配置する(第4工程)。なお第2ロール部56の巻き方向は、図示の方向に限らず、図と逆の方向であってもよい。
【0035】
以上の説明において第3工程での折り返し部55は、インフレータ6の取付け部を含む右側の半部を折り返して形成されるとしてあるが、折り返し部55は、インフレータ6の取付け部を含む一方の側部(図の右側の部分)を、実質的に半分の長さに限らない適宜の長さに亘って前述のように折り返して形成することができる。同様に第4工程における第2ロール部56は、他方の側部(左側の部分)を適宜の長さに亘ってロール状に丸めて形成することができる。
【0036】
一方の側部及び他方の側部の範囲は、車両の構造、座席の位置関係等によって定まるエアバッグクッション5の形状、及びエアバッグクッション5内でのインフレータ6の取付け位置に応じて異なる。例えば、一方の側部が前述した板状部の全長の4分の1(又は4分の3)であり、他方の側部が残りの4分の3(又は4分の1)である等、夫々の側部は、全長の半分から大きく外れる場合もあり得る。
【0037】
エアバッグクッション5は、以上の第1~第4工程を、望ましくは、前述した引き出し工程及び折りだの込み工程を含めて実施する手順により折りたたまれ、図2に示すように収納部40の内側に収納される。図2中には、第1ロール部54、折り返し部55及び第2ロール部56の配置が示されている。
【0038】
このように収納されたエアバッグクッション5は、膨張展開する際に、折り返し部55及び第2ロール部56が夫々の側に拡がることにより上面パネル50の位置が確定され、この上面パネル50の位置を基準として第1ロール部54が上方に延びるように展開して突出部53が形成され、一方で下面パネル51が下方に離隔するように展開して主展開部が形成される。このようなエアバッグクッション5の膨張展開は、主展開部及び突出部53が相互に絡み合うことなく生じるから、膨張完了後に想定された図4に示す展開形状を確実に実現し、衝突時における乗員20、30の保護を良好に達成することができる。
【0039】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等な意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。なお、特許請求の範囲に付した参照符号は、請求項の理解をしやすくするために付記したものである。
【符号の説明】
【0040】
1 車室
2 運転席
3 助手席
4 エアバッグ装置
5 エアバッグクッション
6 インフレータ
20 乗員
30 乗員
50 上面パネル
51 下面パネル
52 側面パネル
53 突出部
54 第1ロール部
55 折り返し部
56 第2ロール部
図1
図2
図3
図4
図5
図6