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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20241218BHJP
【FI】
A61B5/055 370
A61B5/055 331
A61B5/055 390
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021008023
(22)【出願日】2021-01-21
(65)【公開番号】P2022112260
(43)【公開日】2022-08-02
【審査請求日】2023-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八田▲羽▼美咲
(72)【発明者】
【氏名】冨羽 貞範
【審査官】清水 裕勝
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-187042(JP,A)
【文献】特開2012-187396(JP,A)
【文献】国際公開第2015/173921(WO,A1)
【文献】特表2017-527424(JP,A)
【文献】特開2000-201902(JP,A)
【文献】米国特許第06208142(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0137475(US,A1)
【文献】特開2010-142586(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01R 33/00-33/64
G01N 24/00-24/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気共鳴周波数を支配的に決定する磁場を生成する電流駆動型の磁石(但し、静磁場磁石とシムコイルの組み合わせを除く)と、
前記磁場内において移動可能な状態で撮像される被検体の位置を検出する検出部と、
検出された前記被検体の位置に基づいて前記磁石の駆動電流を制御することにより、前記被検体の動きに応じて、前記被検体の撮像領域を設定する制御部と、
を備える磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記磁石は、1つ以上のコイルユニットから構成され、
前記1つ以上のコイルユニットは、平板状筐体に収納され、
前記被検体は、撮像時において、前記磁石の中心軸方向において前記平板状筐体から離れた位置に配置される、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記磁石は、1つ以上のコイルユニットから構成され、
前記1つ以上のコイルユニットは、両端面又は片端面が開放された円筒状筐体に収納され、
前記被検体は、撮像時において、前記円筒状筐体の内部空間の位置、又は、前記磁石の中心軸方向において前記円筒状筐体から離れた位置に配置される、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記1つ以上のコイルユニットは、前記コイルユニットの夫々のコイル面が前記磁石の中心軸に垂直になるように配置され、
前記撮像領域は、前記磁石の中心軸方向に沿って移動可能に設定される、
請求項2または3に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記1つ以上のコイルユニットは、2以上のコイル面を有する平面コイルを備えて構成され、
前記2以上のコイル面は互いに傾斜するように配置され、
前記撮像領域は、前記磁石の中心軸方向、前記中心軸方向に垂直な第1の方向、及び、前記中心軸方向と前記第1の方向に垂直な第2の方向の3方向に独立に移動可能に設定される、
請求項2または3に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記検出部は、前記被検体、又は、前記被検体に装着されるRF(radio Frequency)コイルに付されたマーカの位置を検出するカメラ、を備えて構成される、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記検出部は、被検体の位置を検出するセンサ、を備えて構成される、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
前記検出部は、前記被検体から発せられる磁気共鳴信号に基づいて前記被検体の位置を検出する位置検出回路、を備えて構成される、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記磁場の空間分布と前記駆動電流とが関連付けられたデータベースであって、前記被検体の撮像前に予め求められた前記データベースに基づいて、前記被検体の動きに応じた前記被検体の撮像領域を設定する、
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
前記制御部は、設定しようとする前記撮像領域の位置に基づいて、前記駆動電流をリアルタイムに算出する、
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項11】
前記磁石が生成する磁場の強度を測定する少なくとも1つの磁場センサ、
を更に備える、
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記磁場センサが測定した前記磁場の強度が所定の範囲になったとき、前記被検体の撮像を開始する、
請求項11に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記磁場センサが測定した前記磁場の強度を用いて、前記駆動電流によって生成される前記磁場の校正を行う、
請求項11に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、磁気共鳴イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング装置は、静磁場中に置かれた被検体の原子核スピンをラーモア周波数の高周波(RF:Radio Frequency)信号で励起し、励起に伴って被検体から発生する磁気共鳴信号(MR(Magnetic Resonance)信号)を再構成して画像を生成する撮像装置である。
【0003】
多くの磁気共鳴イメージング(MRI:Magnetic Resonance Imaging)装置は、ガントリと呼ばれる構成を有しており、ガントリには円筒形の空間(この空間はボアと呼ばれる)が形成されている。天板に横臥した被検体(例えば、患者)は円筒形の空間内に搬入された状態で撮像が行われる。ガントリの内部には、円筒状の静磁場磁石、円筒状の傾斜磁場コイル、及び、円筒状のRFコイル(即ち、WB(Whole Body)コイル)が収納されている。従来から多くあるこの種の磁気共鳴イメージング装置では、静磁場磁石、傾斜磁場コイル、RFコイルが円筒形であるため、以下、この種の磁気共鳴イメージング装置を円筒型磁気共鳴イメージング装置と呼ぶものとする。
【0004】
円筒型磁気共鳴イメージング装置では、ボア内の閉鎖空間で撮像されることになるため、例えば、閉所恐怖症などの一部の患者に対しては撮像が困難となる場合がある。
【0005】
これに対して、静磁場磁石、傾斜磁場コイル、及び、RFコイルの形状を平板状とし、例えば、2つの平板状の静磁場磁石に挟まれた開放空間において患者等の被検体を撮像するように構成された磁気共鳴イメージング装置が提案、開発されている。この種の磁気共鳴イメージング装置を、以下、平面開放型磁気共鳴イメージング装置と呼ぶものとする。平面開放型の磁気共鳴イメージング装置では、解放された空間で撮像されるため、閉所恐怖症の患者の撮像も可能となる。
【0006】
一方、円筒型磁気共鳴イメージング装置では狭い閉鎖空間内で撮像されるため患者の動きは制限されているが、平面開放型磁気共鳴イメージング装置では患者を開放空間で撮像するため、動きの自由度が高く、撮像中に患者が動く可能性がある。一般に、磁気共鳴イメージング装置を用いた撮像は比較的長時間を要するため、同じ姿勢を保つのがつらく、このことも、撮像中に患者が動く要因となっている。平面開放型磁気共鳴イメージング装置において患者が動くと、画像を正常に生成することが困難となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特表2002-53212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の1つは、平面開放型の磁気共鳴イメージング装置を用いた撮像において、撮像中に被検体が動いても、画像を正常に生成できるようにすることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限らない。後述する各実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置付けることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態の磁気共鳴イメージング装置は、電流駆動型の磁石と、検出部と、制御部とを備える。電流駆動型の磁石は、磁気共鳴周波数を支配的に決定する磁場を生成する。検出部は、前記磁場内において移動可能な状態で撮像される被検体の位置を検出する。制御部は、検出された前記被検体の位置に基づいて前記磁石の駆動電流を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る平面開放型の磁気共鳴イメージング装置の第1の動作概念を示す図。
図2】実施形態に係る平面開放型の磁気共鳴イメージング装置の第2の動作概念を示す図。
図3】実施形態の磁石の内部構成の一例を示す図。
図4】第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の構成例を示すブロック図。
図5】第1の実施形態の第1変形例に係る磁気共鳴イメージング装置の構成例を示すブロック図。
図6】第1の実施形態の第2変形例に係る磁気共鳴イメージング装置の構成例を示すブロック図。
図7】第2の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の構成例を示すブロック図。
図8】磁場センサの配置と撮像領域の推定磁場強度とを説明する第1の図。
図9】磁場センサの配置と撮像領域の推定磁場強度とを説明する第2の図。
図10】他の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の磁石の構造例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る平面開放型の磁気共鳴イメージング装置1の第1の構成例を示す図である。図1に例示するように、磁気共鳴イメージング装置1は、例えば、円形平板状(言い換えれば、薄い円筒形状)の2つの磁石10を有している。
【0013】
夫々の磁石10は、磁石10の中心軸、即ち、円筒形状の両端面の円の中心を通る軸が、例えば床面に対して平行となるように配置される。また、2つの磁石10は、被検体を挟むように配置される。このような磁石10の配置により、2つの磁石10の間の解放された空間に磁場が形成されることになる。被検体は、この開放空間において、例えば、立位の状態で撮像される。
【0014】
従来の円筒型の磁気共鳴イメージング装置では、磁気共鳴周波数を支配的に決定する磁場は、静磁場と呼ばれており、静磁場磁石によって生成される。静磁場磁石は、常に一定の強度の磁場を生成するように構成されている。例えば、静磁場磁石を超電導コイルで構成する場合、励磁モードにおいて静磁場用電源から供給される電流を超電導コイルに印加することで静磁場を発生し、その後、永久電流モードに移行すると、静磁場用電源は切り離され、常に一定の強度の磁場を発生させる。静磁場磁石を永久磁石として構成することもできる。この場合にも、静磁場磁石としての永久磁石によって生成される磁場の強度は常に一定である。
【0015】
一方、実施形態の磁石10も、磁気共鳴周波数を支配的に決定する磁場を生成する点においては、従来の静磁場磁石と同じである。しかしながら、後述するように、実施形態の磁石10は、動作中(即ち、撮像中)においても電流で駆動される電磁石として構成されている点において、従来の静磁場磁石とは大きく異なっている。実施形態の磁石10は、駆動電流の大きさに依存して磁場強度を変化させることができるため、磁石10で生成する磁場は、厳密には「静磁場」ではない。そこで、以下では、実施形態の磁石10が生成する磁場を「主磁場」、或いは、単に「磁場」と呼ぶものとする。
【0016】
図2は、第1の実施形態に係る平面開放型の磁気共鳴イメージング装置1の第2の構成例を示す図である。図1が立位の被検体を撮像する構成例を示しているの対して、図2は、寝台81から延出した天板80に横臥する臥位の被検体を撮像する構成例を示している。臥位の被検体の撮像する場合、2つの磁石10は、図2に示すように、その中心軸が鉛直方向となるように配置され、例えば、一方の磁石10は天板80の下方に配置され、他方の磁石10は天板80の上方に配置される。
【0017】
図1及び図2に示すように、実施形態の磁石10を用いた撮像では、被検体は開放された磁場空間の撮像が可能となるため、例えば、閉所恐怖症の患者でも撮像することができる。その一方で、開放空間での撮像となるため、動きの自由度が高く、撮像中に被検体が動く可能性が高くなる。
【0018】
そこで、前述したように、実施形態の磁石10を電流駆動型の磁石(即ち、電磁石)として構成するものとしている。そして、被検体の動きに応じて、或いは、被検体の位置に応じて、磁石10に印加する駆動電流を制御することにより、磁気共鳴周波数を支配的に決定する磁場の空間分布を変化させている。この結果、所定の磁気共鳴周波数の信号が被検体から得られる領域、即ち、被検体の撮像領域を、被検体の動きに応じて、或いは、被検体の位置に応じて移動させることを可能にしている。
【0019】
図3は、磁石10の内部構成の一例を示す図である。図3(a)は、磁石10を中心軸に直交する方向から見た内部断面を例示する図である。また、3(b)は、磁石10を中心軸方向から見た内部断面を例示する図であり、図3(a)のA-A’断面図である。
【0020】
磁石10は、1つ以上のコイルユニットから構成され、この1つ以上のコイルユニットは、図3に示すように、例えば、所定の厚みを有する平板状の磁石筐体に収納される。図3に示す例では、磁石筐体の中に、例えば、断面積の異なる2つの円形のコイルユニット(コイルユニット11及びコイルユニット12)が収納されている。
【0021】
各コイルユニット11、12は、駆動電流の大きさに依存して磁場強度が変化する電磁石として構成される。コイルユニット11、12は、超電導電磁石として構成してもよいし、常電動電磁石として構成してもよい。コイルユニット11、12によって、磁気共鳴周波数を支配的に決定する磁場(即ち、主磁場)が生成される。
【0022】
磁石筐体に隣接して、主磁場に重畳される傾斜磁場を生成する傾斜磁場コイル60と、被検体にRF(Radio Frequency)パルスを印加すると共に被検体から発せられる磁気共鳴信号(MR信号)を受信するRFコイル62が配設される。
【0023】
傾斜磁場コイル60は、例えば、X方向傾斜磁場コイル、Y方向傾斜磁場コイル、Z方向傾斜磁場コイルを含んで構成される。各方向の傾斜磁場コイルは、例えば、平板状コイルとして構成される。また、RFコイル62も、例えば、平板状コイルとして構成される。
【0024】
図4は、上述した磁石10を具備する、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置1の構成例を示すブロック図である。この磁気共鳴イメージング装置1は、図3に示した磁石10、傾斜磁場コイル60、及び、RFコイル62で構成される磁石ユニットを2つ有している。そして、2つの磁石ユニットは、被検体を挟んで対向するように配置される。また、磁気共鳴イメージング装置1は、上記の磁石ユニットの他、検出装置20、制御回路30、及び、磁石電源40を少なくとも備える。検出装置20は、磁石10で生成される磁場内において、移動可能な状態で撮像される被検体の位置を検出する。
【0025】
制御回路30は、検出装置20で検出された被検体の位置に基づいて磁石10に印加する駆動電流の電流値を算出する。図4に例示する磁石10は、2つのコイルユニット11、12を有しているので、コイルユニット11、12に対する電流値(1)と電流値(2)を夫々算出する。電流値(1)、(2)を制御することにより、被検体の動きに応じて、被検体の撮像領域を設定することができる。
【0026】
磁石電源40は、制御回路30で算出された電流値(1)、(2)に対応する電流(1)、(2)を生成し、2つのコイルユニット11、12に駆動電流として印加する電源である。
【0027】
磁石電源40で生成された電流(1)、(2)は、コイルユニット(1)、(2)に夫々印加され、磁石10は、電流(1)、(2)に対応する磁場強度の分布を有する磁場を生成する。
図4に示す構成例では、電流(1)、(2)を、被検体を挟む左右の2つの磁石10の夫々に供給し、夫々の磁石10のコイルユニット(1)、(2)に電流(1)、(2)を印加しているが、実施形態の磁気共鳴イメージング装置1は、この構成に限定されない。例えば、被検体を挟む左右の2つの磁石10のうち、一方の磁石10のみに(例えば、図4における右側の磁石10のみに)、被検体の位置に応じて変化するように制御された電流値の電流(1)、(2)が供給され、他方の磁石10には、電流値が一定の電流を供給するように構成してもよい。或いは、他方の磁石10は、励磁モードで所定の静磁場を発生させた後電源と切り離し、永久電流モードに移行させて運転させるように構成してもよい。
また、図4に示す構成例では、電流(1)、(2)をコイルユニット(1)、(2)に夫々印加しているが、この構成に限定されない。例えば、コイルユニット(1)とコイルユニット(2)とを直列又は並列に接続し、コイルユニット(1)及びコイルユニット(2)に、1つの電流(例えば、電流(1))を印加するように構成してもよい。
【0028】
実施形態の磁気共鳴イメージング装置1は、図4に示すように、上述した構成に加えて、傾斜磁場電源51、送受信回路52、シーケンスコントローラ53、撮像条件設定回路54、及び、再構成処理回路55を備えている。
【0029】
撮像条件設定回路54は、図示しないユーザインタフェースを介して入力されたパルスシーケンスの種類や各種パラメータの値等の撮像条件をシーケンスコントローラ53に対して設定する。
【0030】
シーケンスコントローラ53は、設定された撮像条件に基づいて、傾斜磁場電源51及び送受信回路52をそれぞれ駆動することによって被検体のスキャンを行う。傾斜磁場電源51は、シーケンスコントローラ53からの駆動信号に基づいて、傾斜磁場コイル60に傾斜磁場電流を印加する。
【0031】
送受信回路52は、シーケンスコントローラ53からの駆動信号に基づいて、RFパルスを生成し、RFパルスをRFコイル62に印加する。RFコイル62は、RFパルスを被検体に印加する一方、この印加に応じて被検体から発せられるMR信号を受信する。RFコイル62で受信されたMR信号は、送受信回路52にてアナログ信号からデジタル信号に変換される。デジタル信号に変換されたMR信号は、k空間データとして再構成処理回路55に供給される。
再構成処理回路55は、k空間データに対して逆フーリエ変換処理等の再構成処理を施して、磁気共鳴画像を生成する。
【0032】
なお、撮像条件設定回路54、シーケンスコントローラ53、及び、再構成処理回路55は、例えば所定のプログラムを実行するプロセッサや、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェアで構成される。
【0033】
第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置1では、検出装置20は、カメラ21と位置検出回路22を備えている。カメラ21は、被検体、又は、被検体に装着される、受信用の表面コイルに付されたマーカ25を撮影する。位置検出回路22は、カメラ21で撮影されたマーカ25の画像からマーカ25の位置を検出し、更には、マーカ25の位置に基づいて、被検体の撮像対象位置、例えば、心臓や肺といった臓器の位置や、肩や膝のような器官の位置を検出する。
【0034】
被検体の位置をX軸、Y軸、Z軸の3次元で検出する場合には、1つ以上のカメラ21を設け、マーカ25を1以上の方向から撮影した画像から被検体の位置を検出すればよい。一方、被検体の動きを治具等で限定することにより、被検体の位置が1軸方向、例えば、Z軸方向のみに限定される場合には、1つのカメラ21で被検体の位置を検出することが可能である。
【0035】
検出装置20は、撮像中も動作を継続しており、被検体が撮像空間内を動く場合においても、移動前後の撮像対象の位置だけでなく、移動中の撮像対象の位置も継続的に検出し続ける。
【0036】
制御回路30及び磁石電源40は、検出装置20によって検出された撮像対象の位置に基づいて、磁石10(図4の例では、コイルユニット11、12)で生成する磁場強度が、検出された撮像対象の位置において所望の磁場強度となるように、コイルユニット11、12に印加する電流(1)、(2)を制御する。
【0037】
磁石10が2つ以上のコイルユニットを持つことにより、そして、各コイルユニットに印加する電流の値と電流の向きを各コイルユニット毎に独立に設定することにより、磁場分布を自由度の高い形状に形成することが可能となる。ただし、磁石10が備えるコイルユニットの数を1つとすることも可能である。
【0038】
磁場の空間分布は、X方向、Y方向、Z方向に3次元状の分布となる。ここで、Z方向は、磁石10の中心軸方向に対応し、例えば、床面に平行な方向に対応する。Y方向は中心軸に直交する方向であり、例えば、鉛直方向に対応する。X方向は、Z方向とY方向の双方に直交し、例えば、紙面の奥行方向に対応する。
【0039】
コイルユニット11、12に印加する電流を変化させると磁場分布が変化し、同一磁場強度の位置も変化する。
【0040】
周知のように、磁気共鳴周波数は磁場強度によって決定される。また、正常に画像を生成するためには、被検体の撮像対象部位に対応する領域、即ち、撮像領域の磁気共鳴周波数を、撮像中も同じ値に維持する必要がある。一方、磁石10によって生成される磁場強度は必ずしも一様な空間分布とはならず、位置によって異なる値を示す。このため、被検体が、例えば、2つの磁石10に挟まれた開放空間内を撮像中に移動した場合、撮像対象部位に対応する領域の磁気共鳴周波数が被検体の動きに応じて変化することになり、正常な画像形成が困難となる。
【0041】
そこで、実施形態の磁気共鳴イメージング装置1では、被検体が撮像中に移動した場合であっても被検体の位置を検出装置20で逐次検出する。そして、検出された被検体の位置に基づいてコイルユニット11、12の印加電流を制御することにより、撮像領域(即ち、磁場強度が一定となるような領域、言い換えれば、磁気共鳴周波数が一定となるような領域)を、被検体の動きに追従するように動的に設定するようにしている。
検出した被検体の位置からコイルユニット11、12の印加電流を決定する方法には種々のものが考えられる。
【0042】
例えば、コイルユニット11、12によって生成される磁場の空間分布を、多数の異なる駆動電流に対して予め算出しておき、駆動電流に関連付けられた磁場分布を、データベースとして磁気共鳴イメージング装置1の適宜の記憶回路に保存しておく。一方、撮像の初期条件として、所望の磁気共鳴周波数f、或いは、磁気共鳴周波数fに対応する所望の磁場強度Bを予め設定しておく。
【0043】
そして、検出した被検体の位置(x、y、z)において磁場強度Bが得られる磁場分布をデータベースから抽出し、抽出した磁場分布に関連付けられた印加電流を、コイルユニット11、12に印加する電流として決定することができる。
【0044】
この場合において、被検体の位置(x、y、z)を、所定の装置座標における絶対値として検出し、印加電流を電流の絶対値として算出してもよい。ここで、装置座標の取り方は特に限定するものではないが、例えば、コイルユニット11、12のコイル面の重心位置を原点とし、コイル面に垂直な方向(即ち、磁石10の中心軸方向)をZ方向とし、Z方向に垂直で床面から鉛直に延びる方向をY方向とし、Z方向及びY方向の双方に垂直な方向をX方向とする座標を装置座標とすることができる。
【0045】
或いは、例えば、撮像開始時における被検体の位置(x、y、z)を基準位置とし、撮像開始時の印加電流の値を基準電流Iとしてもよい。そして、撮像開始時後の被検体の移動量(Δx、Δy、Δz)から、印加電流の基準電流に対する増減量ΔIを求めてもよい。
【0046】
また、データベースを用いて電流値を求める手法に替えて、電流値を所定の計算式を用いてリアルタイムに計算して求めることもできる。例えば、ビオサバールの法則に基づく計算式を用いて、被検体の位置(x、y、z)において所望の磁場強度Bを得るためのコイルユニット11、12の電流値をリアルタイムで算出することができる。
【0047】
(第1の実施形態の第1変形例)
図5は、第1の実施形態の第1変形例に係る磁気共鳴イメージング装置1の構成例を示すブロック図である。第1の実施形態(図4)と第1変形例との差異は検出装置20の構成にある。第1変形例の検出装置20は、重量センサ23と位置検出回路22とを備える。重量センサ23は、例えば床面に設置され、被検体の位置(例えば重心位置)を検出する。或いは、重量センサ23は、例えば寝台81の天板80に設置され、被検体の身長、体重に基づいて被検体の重心位置を算出するようにしてもよい。
重量センサ23の他、例えば、赤外線センサや圧力センサ等の各種のセンサを用いて、被検体の位置を検出することもできる。
【0048】
(第1の実施形態の第2変形例)
図6は、第1の実施形態の第2変形例に係る磁気共鳴イメージング装置1の構成例を示すブロック図である。第1の実施形態(図4)との差異は、第1変形例と同様に検出装置20の構成にある。第2変形例の検出装置20は、被検体の磁気共鳴信号を撮像前及び撮像中に入力し、入力した磁気共鳴信号を用いて被検体の位置を検出するように構成されている。
【0049】
第2変形例の位置検出回路22は、磁気共鳴信号を用いてリアルタイムで被検体の画像を再構成することによって、被検体の位置を検出してもよい。或いは、被検体の位置が特定の1方向(例えば、Z方向)に限定される場合には、入力した磁気共鳴信号に対して、特定の1方向の一次元フーリエ変換をリアルタイムで実施し、フーリエ変換後の信号のピーク位置から被検体の位置を検出してもよい。
【0050】
(第2の実施形態)
図7は、第2の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置1の構成例を示すブロック図である。第2の実施形態の磁気共鳴イメージング装置1は、第1の実施形態の構成、或いはその各変形例の構成に、磁場センサ70と磁場測定/判定回路72とを付加した構成になっている。
【0051】
磁場センサ70は、磁石10で生成される磁場の強度を測定するセンサであり、NMR(Nuclear Magnetic Resonance)プローブや、ガウスメータなどを磁場センサ70として用いることができる。磁場センサ70の位置は特に限定するものではなく、磁石10を収納する磁石筐体から離れた磁場空間に配置してもよいし、図7に示すように、磁石筐体に近接する位置、例えば、傾斜磁場コイル60やRFコイル62の一部の領域に配設してもよい。
【0052】
磁石10は、電流の印加を開始してから所望の磁場強度になるまでに時間を要する場合がある。この場合、磁場測定/判定回路72は、磁場センサ70で検出した磁場強度に基づいて、磁石10が生成する磁場強度が所定の範囲なったか否かを判定する。磁場の強度が所定の範囲内になったと判定されると、磁場測定/判定回路72は、シーケンスコントローラ53に対して撮像開始の指令を出す。シーケンスコントローラ53はこの指令に基づいて、撮像を自動的に開始する。或いは、磁場の強度が所定の範囲内になったと判定された後、例えば、心電同期撮像の同期信号とANDをとって撮像を開始しても良い。或いは、磁場の強度が所定の範囲内になったと判定された場合、その旨を磁気共鳴イメージング装置1が具備する適宜の表示装置や表示デバイス等を用いて検査技師などのユーザに通知し、ユーザの判断によって撮像を開始してもよい。
【0053】
また、磁場測定/判定回路72は、駆動電流によって生成される磁場の校正を行う機能を有してもよい。校正は、撮像開始前に撮像の都度行ってもよいし、磁気共鳴イメージング装置1を病院等の医療機関に据え付けるとき行ってもよい。
図8及び図9は、磁場センサ70の配置、例えば、校正を行うときの磁場センサ70の配置と、撮像領域の推定磁場強度とを説明する図である。
【0054】
図8は、磁石10に含まれる複数のコイルユニット、例えば、2つのコイルユニット11、12のコイル面を互いに平行とし、かつ、磁石10の中心軸90に対して垂直になるように配置したケース、即ち、2つのコイルユニット11、12を中心軸90に対して対称に配置したケースの磁場強度のふるまいを例示する図である。ここで、コイル面とは、各コイルユニット11、12を構成するループ状の導線の周全体を包含する平面のことである。また、図8では、被検体を挟む2つの磁石10のうち、一方の磁石10(紙面に向かって右側の磁石10)のコイルユニット11、12のみに、可変の電流を印加し、他方の磁石10のコイルユニット11、12に印加する電流は一定とした場合の磁場強度のふるまいを例示している。
【0055】
このケースでは、印加電流の大きさに応じて、磁場強度は中心軸90の方向に沿って変化することになり、同一磁場強度に対応する撮像領域の位置は、中心軸90の方向に沿って移動する。そして、このケースでは、1つの磁場センサ70によって、撮像領域の磁場強度を推定することが可能である。したがって、1つの磁場センサ70によって、駆動電流によって生成される撮像領域の磁場を校正することができる。
【0056】
一方、図9は、複数のコイルユニット、例えば、2つのコイルユニット11、12のコイル面を互い傾斜させ、かつ、少なくとも1つのコイル面を磁石10の中心軸90に対して傾斜するように配置したケース、即ち、2つのコイルユニット11、12を中心軸90に対して非対称に配置したケースの磁場強度のふるまいを例示する図である。なお、図9においても、被検体を挟む2つの磁石10のうち、一方の磁石10(紙面に向かって右側の磁石10)のコイルユニット11、12のみに、可変の電流を印加し、他方の磁石10のコイルユニット11、12に印加する電流は一定とした場合の磁場強度のふるまいを例示している。
【0057】
このケースでは、各コイルユニットの印加電流の大きさや向きに応じて、磁場強度の分布の形状をX軸、Y軸、Z軸方向に変化させることが可能となり、同一磁場強度に対応する撮像領域の位置も、X軸、Y軸、Z軸方向の3次元方向に移動させることが可能となる。このケースでは、2つ以上の磁場センサ70によって、磁場強度の空間分布を測定することにより、駆動電流によって生成される磁場を3次元で推定する。これにより、駆動電流によって生成される撮像領域の磁場強度の空間分布を校正することができる。
【0058】
(その他の実施形態)
図10は、その他の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置1の磁石10の構造例を示す図である。ここまでは、図3等に示すような平板状の磁石10について説明してきたが、磁気共鳴イメージング装置1の磁石10は、平板状の形状に限定されない。またこの場合、傾斜磁場コイル60やRFコイル62も、平板状の形状に限定されない。
【0059】
例えば、図10(a)に示すように、2つの磁石10の夫々を、片方の端面が開放され、他方の端面が塞がれた円筒状の形状とすることができる。また、図10(b)に示すように、磁石10の数を1つとし、従来の円筒型磁気共鳴イメージング装置が具備する、両方の端面が開放された円筒状の形状とすることもできる。
【0060】
図10(a)の上段に示す図は、図10(a)の下段に示す図のA-A’断面である。図10(a)に示す磁石は、複数のコイルユニット、例えば、コイルユニット11、12、13を備えて構成されている。このような磁石10において、撮像空間は、磁石10の円筒の内側の閉塞空間100でもよいし、2つの磁石10の間の開放空間102でもよい。
【0061】
一方、図10(b)の上段に示す図は、図10(b)の下段に示す図のB-B’断面である。図10(b)に示す磁石は、複数のコイルユニット、例えば、コイルユニット11、12、13、14を備えて構成されている。このような磁石10において、撮像空間は、磁石10の円筒の内側の閉塞空間100でもよいし、磁石10の円筒から離れた開放空間102でもよい。
なお、ここまでは、図1図2図4乃至図9に例示したように、実施形態の磁気共鳴イメージング装置1が、被検体を挟む2つの磁石10を有する構成について説明してきたが、実施形態の磁気共鳴イメージング装置1は、このような構成に限定されるものではない。例えば、被検体を挟む2つの磁石10のうち、一方の磁石10のみを有する構成も可能である。この構成においても、上述した技術的効果を得ることが可能である。
【0062】
以上説明した各実施形態の説明における検出回路は、特許請求の範囲の記載における検出部の一例である。また、各実施形態の説明における制御回路、或いは、制御回路と磁石電源の組み合わせは、特許請求の範囲の記載における制御部の一例である。
【0063】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、平面開放型の磁気共鳴イメージング装置を用いた撮像において、撮像中に被検体が動いても、画像を正常に生成できる。
【0064】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0065】
1 磁気共鳴イメージング装置
10 磁石
11 コイルユニット1
12 コイルユニット2
20 検出装置
21 カメラ
22 位置検出回路
23 重量センサ
30 制御回路
40 磁石電源
70 磁場センサ
72 磁場測定/判定回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10