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  • 特許-発電体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】発電体
(51)【国際特許分類】
   H02N 1/08 20060101AFI20241218BHJP
【FI】
H02N1/08
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021011616
(22)【出願日】2021-01-28
(65)【公開番号】P2022115142
(43)【公開日】2022-08-09
【審査請求日】2023-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲
(74)【代理人】
【識別番号】100137316
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 宏
(72)【発明者】
【氏名】塚田 佳子
(72)【発明者】
【氏名】浦本 清弘
(72)【発明者】
【氏名】塚田 貴浩
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 仁
(72)【発明者】
【氏名】内村 允宣
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-529868(JP,A)
【文献】特開2020-167041(JP,A)
【文献】特表2017-500736(JP,A)
【文献】国際公開第2021/008940(WO,A1)
【文献】特開2005-251715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面から対向する他方の面に連通する連通孔を有する基材と、
少なくとも上記連通孔の内表面を被覆した導電層と、
上記連通孔内を一方の面から対向する他方の面に流下するイオン含有液体と、
上記イオン含有液体の流れる方向に離間して配置され上記導電層と接点を有する2つの電極と、を備え、
上記イオン含有液体の流れにより、上記導電層の電荷が上記イオン含有液体の電荷に引き付けられて移動し上記電極を介して外部に取り出されることで発電する発電体であって、
上記連通孔の平均孔径が、0.05mmを超え7mm未満であることを特徴とする発電体。
【請求項2】
上記基材が、上記連通孔が複数集まって形成された多孔構造部を有することを特徴とする請求項1に記載の発電体。
【請求項3】
上記多孔構造部が、空隙が3次元方向にランダムに配列し、該複数の空隙が繋がって連通孔を形成した構造、及び/又は、複数の直線状の連通孔が一方向に並んだ構造であることを特徴とする請求項2に記載の発電体。
【請求項4】
上記連通孔の内表面に凹凸を有することを特徴とする請求項1~3のいずれか1つの項に記載の発電体。
【請求項5】
上記基材が絶縁体で形成されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1つの項に記載の発電体。
【請求項6】
上記イオン含有液体の溶媒が水であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1つの項に記載の発電体。
【請求項7】
上記イオン含有液体は、その溶質の陽イオンの主成分が、リチウムイオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオンから成る群から選ばれた少なくとも一種のイオンであることを特徴とする請求項6に記載の発電体。
【請求項8】
上記導電層が、金属を主成分とすることを特徴とする請求項1~7のいずれか1つの項に記載の発電体。
【請求項9】
上記導電層が、炭素を主成分とすることを特徴とする請求項1~7のいずれか1つの項に記載の発電体。
【請求項10】
上記導電層が、グラフェン、カーボンナノチューブ及びカーボンナノファイバーから成る群から選択された少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項9に記載の発電体。
【請求項11】
導電層が、濡れ性調整材を含むことを特徴とする請求項1~10のいずれか1つの項に記載の発電体。
【請求項12】
上記連通孔の平均孔径が、1mm~3mmであることを特徴とする請求項1に記載の発電体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電体に係り、更に詳細には、接触帯電と静電誘導とを利用した発電体に関する。
【背景技術】
【0002】
電子親和力が異なる材料間の接触帯電と静電誘導を利用して発電することが行われている。
【0003】
接触帯電は、仕事関数が異なる2つの物体を接触させることで、一方の物体は電荷を得て負に帯電し、他方の物体は電荷を失って正に帯電する現象である。
【0004】
静電誘導は、導体に帯電した物体を近づけたときに、帯電した物体とは逆の極性の電荷が、上記帯電した物体に近い側に引き寄せられて帯電する現象であり、電荷が導体中を実際に移動することで引き起こされる。
【0005】
これらの帯電した物体の表面間に導電経路がない場合、これらの物体はそれぞれの誘導電荷を表面に維持する。そして、この誘導電荷を維持した状態で、2つ物体を相対的に移動させると電位差が生じて電荷が輸送され発電することができる。
【0006】
特許文献1には、波などの液体の運動エネルギーを利用して発電を行う摩擦式電気ナノ発電機が記載され、2つの電極を絶縁体で覆うことで、発電環境下において上記電極が液体と接触しないので、長期間安定して動作できる旨が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特表2016-529868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記発電方法において、液体の運動エネルギーを効率よく利用して発電電力量を増加させるためには、単位体積当たりの液体が、発電面と接触する接触量を増大させることが有効であり、液体が発電面に薄く濡れ拡がって移動することが好ましい。
【0009】
しかし、発電面の形状が平面状であると、発電面上の液体は、その一方側の面しか発電面と接触と接触しないので、発電電力量を向上させ難い。
【0010】
発電面の形状が連通孔など液体を取り囲む形状であると、液滴となった液体の周囲のすべてが発電面と接触し、単位体積当たりの液体が発電面と接触する接触量が増大するので発電電力量を向上できる。
【0011】
しかしながら、単位体積当たりの液体と発電面との接触量を増大させるために上記連通孔の径を小さくしすぎると、すなわち、液体の流れを細くしすぎると、液体の流れが連通孔の内部で滞り発電できなくなってしまう。
【0012】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、液体の運動エネルギー効率よく利用でき、発電電力量を向上できる発電体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、連通孔の平均孔径を所望の範囲にすることにより、イオン含有液体が上記連通孔内を速やかに流下し、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
即ち、本発明の発電体は、
一方の面から対向する他方の面に連通する連通孔を有する基材と、少なくとも上記連通孔の内表面を被覆した導電層と、上記連通孔内を一方の面から対向する他方の面に流下するイオン含有液体と、上記イオン含有液体の流れる方向に離間して配置され上記導電層と接点を有する2つの電極と、を備え、
上記イオン含有液体の流れにより、上記導電層の電荷が上記イオン含有液体の電荷に引き付けられて移動し上記電極を介して外部に取り出されることで発電する発電体である。
そして、上記連通孔の平均孔径が、0.05mmを超え7mm未満であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、連通孔の平均孔径を所望の範囲とすることとしたため、イオン含有液体が連通孔内を速やかに流れ、発電電力量を向上できる発電体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】接触帯電と静電誘導とを利用した発電メカニズムを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の発電体について詳細に説明する。
上記発電体は、基材表面を被覆した導電層と、上記導電層の面内方向に離間して配置され上記導電層と接点を有する2つの電極とを備え、イオン含有液体が導電層の表面を流れることで発電する。
【0018】
上記発電体による発電原理は完全に明らかにされているわけではないが、次のように考えられる。
【0019】
図1に示すように、基材と導電層とが接触していることで、接触帯電により仕事関数の大きい方が正に帯電し、仕事関数の小さい方が負に帯電する。
【0020】
そして、基材が帯電しているので、該基材と接している導電層には静電誘導によって基材側と表面側とで電荷の偏りが生じ、イオン含有液体も静電誘導によって導電層側に導電層の表面側の電荷とは逆の電荷が集まって、これらの電荷が互いに引き付け合う。
【0021】
したがって、イオン含有液体が2つの電極の両方と交差にする方向に導電層上を流れると、導電層の電荷がイオン含有液体の電荷に引き付けられて移動するので、これを外部に取り出すことで発電することができる。
【0022】
本発明の発電体は、上記基材に形成された連通孔の平均孔径が0.05mmを超え7mm未満であることで、イオン含有液体が上記連通孔内を速やかに流下し、発電電力量を向上できる。
【0023】
連通孔の平均孔径が0.05mm以下では、イオン含有液体が連通孔内に入らなくなったり、イオン含有液体の重力加速度に対する表面張力(毛管現象)が大きくなってイオン含有液体が連通孔内に留まったりして流下し難くなって発電電力量が低下する。
【0024】
また、連通孔の平均孔径が7mm以上であると、連通孔内を流下するイオン含有液体の流れが太くなり、導電層(発電面)との接触量が小さくなるので発電できる発電電力量を増加させることが困難である。
【0025】
さらに連通孔の平均孔径が1mm~3mmであると、連通孔内を流下するイオン含有液体の流れの太さ、すなわち導電層とイオン含有液体との接触面積の増大と、イオン含有液体の流下速度とのバランスがよく発電電力量を増加させることができる。
【0026】
連通孔の平均開口径は、CCDカメラで基材の表面を撮影し、得られた画像を2値化処理して算出することができる。
【0027】
(基材)
上記基材は、その内部をイオン含有液体が流れる連通孔を有すればよいが、該連通孔が複数集まって形成された多孔構造部を有することが好ましい。
上記連通孔によって多孔構造が形成されていると、1つの発電体における導電層(発電面)の比表面積が増大して発電電力量が向上する。
【0028】
上記基材は、多孔構造部のみから成るものであっても、上記多孔構造部が支持部で支持された構造であってもよい。
【0029】
上記基材は、導電層よりも電気伝導性が低く、かつ導電層と仕事関数が異なる材料で形成されていればよいが、絶縁体から成ることが好ましい。
【0030】
多孔構造部の導電性が高くなると、多孔構造部から導電層に導電層の電荷とは逆の電荷が補填されて導電層の電荷が打ち消され易くなるので、イオン含有液体が流れても導電層内の電荷が移動し難くなって、発電電力量を増加させ難くなる。
【0031】
上記絶縁体としては、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化チタンなどの金属酸化物の他、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレンなどの樹脂を使用することができる。
なお、上記支持部を構成する材料は、多孔構造部と同じ材料であっても異なる材料であっても構わない。
【0032】
上記多孔構造部の構造は、空隙が3次元方向にランダムに配列し、複数の空隙が繋がって連通孔を形成した、所謂、スポンジ状の多孔構造や、複数の管を並列に並べたように複数の直線状の連通孔が一方向に並んだ構造の他、これらの構造が合わさった構造であってもよい。
【0033】
金属酸化物の多孔構造部は、ゾル-ゲル法でセラミックを作製する際、原料中に樹脂粒子などの造孔材を添加して焼成することで形成できる。また、樹脂の多孔構造部は、モノマー成分に相分離剤や発泡剤などの造孔剤を添加し、重合・硬化させることで形成できる。さらに金属酸化物や樹脂の塊にドリルなどを用いて連通孔を複数形成することによっても形成できる。
【0034】
(導電層)
導電層は、静電誘導によって導電層内を電荷が移動することができる導体を使用することができる。導電層の導電率を高くすることで、発電体の内部抵抗が低減されて発電電力量が向上するので、導電層の主成分は、金属や導電性カーボンであることが好ましい。
なお、本発明において、主成分とは50質量%以上であることをいう。
【0035】
上記金属としては、例えば、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、モリブデン(Mo)などの電気伝導率が高い金属の他、これらの金属を含む合金を挙げることができる。
【0036】
上記金属で形成された導電層は、最表面に酸化物層が形成されることで、イオン含有液体との間で電荷の授受が行われ難く、表面に電荷が発生し易くなる。
なお、ここでの酸化物層とは、常温下で金属に大気を接触させることで自然に形成される金属表面の酸化物の層や、加熱処理などによって金属を酸化させることで形成される酸化物の層など、金属自体が酸化することで形成された層をいい、他の材料の酸化物を積層することなどによって形成した酸化物の層を言わない。
【0037】
また、上記導電性カーボンとしては、グラフェン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンブラック、グラファイトなどを挙げることができる。
中でも、グラフェン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーは導電性が高いので好ましく使用できる。
【0038】
上記導電層の表面、すなわち、連通孔の内表面は凹凸を有することが好ましい。凹凸を有することで、導電層の表面積が増加して発電電力量が向上する。
【0039】
また、連通孔が円筒形など直線形状である場合は、イオン含有液体と連通孔の内壁との摩擦により連通孔の内壁付近と中心付近とで流速に差が生じて渦流が発生する。この渦流による逆方向の流れによって、イオン含有液体内部で電荷の移動が打ち消されるので、導電層内の電荷を移動させ難くなる。
【0040】
導電層の表面が凹凸を有することで渦流の発生が防止され、イオン含有液体の流れが層流になるため、高電圧で発電できる。
渦流の発生を防止する凹部の孔径は、イオン含有液体の粘度などにもよるが1~100μmであることが好ましい。
【0041】
導電層表面の凹凸は、導電層自体に凹凸が形成されていてもよく、基材の連通孔内表面の形状が導電層表面に反映されたものであってもよい。
【0042】
導電層は、濡れ性調整材を含むことができる。
濡れ性調整材としては、界面活性剤や撥水剤を使用できる。
界面活性剤はイオン含有液体を連通孔内に入り易くし、撥水剤は連通孔内に入ったイオン含有液体を素早く流下させ、高電圧での発電を可能にする。
【0043】
上記界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールなどの非イオン界面活性剤を使用できる。
非イオン界面活性剤は、水酸基(OH)などの親水基が水中で解離しないので、イオン性液体中の電荷に影響を及ぼすことがない。上記濡れ性調整材の添加量は、0.1~1質量%であることが好ましい。
【0044】
上記撥水剤としては、シリコーン系材料やフッ素系材料などが挙げられる。
例えば、シリコーンゴムやシリコーンレジンなどの粉末、フッ素系樹脂粉末及びこれらの粉末の分散液、樹脂塗料、シリコーンオイルやフッ素オイルなども使用できる。
【0045】
導電層の厚さは、導電層を構成する材料組成などにもよるが10nm~1μmであることが好ましい。
【0046】
上記導電層は、金属や導電性カーボンを含む塗工液を塗工し乾燥することの他、メッキやスパッタリングなどによっても形成できる。
【0047】
(イオン含有液体)
上記イオン含有液体は、導電層内の電荷を引き連れて連通孔内を流下できればよく、溶質として塩を含む溶液やイオン液体(常温溶融塩)など使用できるが、一般にイオン液体は高粘度であるため、塩を溶かした溶液であることが好ましい。
【0048】
上記溶液の溶媒としては、水や有機溶媒を挙げることができるが、水は塩の良溶媒であり、イオン含有液体中のイオン濃度を高くすることが容易であるので好ましく使用できる。
【0049】
上記溶液に溶解させる塩としては、例えば、リチウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩などの無機塩の他、有機塩を挙げることができる。
【0050】
なかでも、陽イオンの主成分が、リチウムイオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオンから成る群から選ばれた少なくとも一種であることが好ましい。
【0051】
これらの陽イオンの塩は、水への溶解度が高く、イオン含有液体中のイオン濃度を高くすることが可能である。また、これら陽イオンを主成分とする水溶液は、常温における粘度が0.8~1mPa・sであり、表面張力も低いので、連通孔内に留まることなく素早く流下するので高電圧で発電できる。
【実施例
【0052】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0053】
[比較例1]
グラフェン粉末(第六元素社製)を、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(花王社製:エマルゲン709)を0.5質量%含む純水に分散し、さらにカーボンナノチューブとスチレンブタジエンゴム分散液とを加えて分散し、固形分比でグラフェン粉末:カーボンナノチューブ:スチレンブタジエンゴムが20:40:20である塗工液を得た。
【0054】
外形寸法が1cm×1cm×5cmのスポンジ状のアルミナ多孔体(平均開口径:0.05mm)を上記塗工液で浸漬塗工し、120℃で乾燥させて、導電層を形成した。
このアルミナ多孔体の両端に白金線を巻き付けて電極とし、発電体を得た。
【0055】
[実施例1]
平均開口径が0.1mmのアルミナ多孔体(アスザック社製 AZPW40)にかえる他は比較例1と同様にして発電体を得た。
【0056】
[実施例2]
平均開口径が0.5mmのアルミナ多孔体(アスザック社製 AZPW45)にかえる他は比較例1と同様にして発電体を得た。
【0057】
[実施例3]
平均開口径が0.05mmのアルミナ多孔体(アスザック社製 AZP60)を直径が1.0mmのドリルで切削し、貫通孔を5本形成する他は比較例1と同様にして発電体を得た。
【0058】
[実施例4]
平均開口径が0.05mmのアルミナ多孔体を直径が3.0mmのドリルで切削し、貫通孔を4本形成する他は比較例1と同様にして発電体を得た。
【0059】
[実施例5]
平均開口径が0.05mmのアルミナ多孔体を直径が5.0mmのドリルで切削し、貫通孔を1本形成する他は比較例1と同様にして発電体を得た。
【0060】
[比較例2]
平均開口径が0.05mmのアルミナ多孔体を直径が7.0mmのドリルで切削し、貫通孔を1本形成する他は比較例1と同様にして発電体を得た。
【0061】
[実施例6]
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上にCVD法で単層のグラフェンをコーティングして導電層を形成した。このPETフィルムを丸めて直径が3mm、長さが5cmの円管とし、円管の両端の導電層から白金線を引き出して発電体を得た。
【0062】
<評価>
上記発電体の電極間に100Ωの抵抗に繋ぎ、アルミナ多孔体の側面からイオン含有液体が漏れ出さないように1cm角の柱状管に発電体を入れた。
直立させた柱状管の上部から4mol/lの塩化カリウム水溶液50mlを入れ、発電体内を落差5cmで流下させ、電極間に生じた電位差を測定した。
測定結果を多孔構造部の形状と合わせて表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
基材が多孔構造部を有する実施例1~5、及び基材が円管である実施例6は、いずれも連通孔の平均孔径が0.05mmを超え7mm未満であるため、塩化カリウム水溶液が流下し、効率よく発電できた。
【0065】
比較例1は、最初は発電できたが、連通孔の平均孔径が0.05mmであるため、柱状容器内の塩化カリウム水溶液が減少すると塩化カリウム水溶液が流下せずに発電体内部に留まってしまった。
【0066】
比較例2は、連通孔の平均孔径が7mmであるため、高電圧で発電できたが導電層の表面積が小さく、発電電力量が低下した。
【0067】
また、実施例4と実施例6との比較から、多孔構造部を有する発電体は、導電層の表面積が増大して発電電力量が、さらに向上することが確認された。
【0068】
実施例6は、実施例5よりも導電層の表面積が小さいにもかかわらず発電電力量が多くなっているのは、CVDで形成したグラフェンの導電層は、グラフェン層が一様に形成され、グラフェン粉末をバインダーで結着した導電層よりも導電性が高く内部抵抗が低いためであると考えられる。
【0069】
[実施例7]
塩化カリウム水溶液を、4mol/lの塩化ナトリウム水溶液に変える他は実施例4と同様にして電位差を測定した。
【0070】
[実施例8]
塩化カリウム水溶液を、4mol/lの塩化リチウム水溶液に変える他は実施例4と同様にして電位差を測定した。
【0071】
[実施例9]
塩化カリウム水溶液を、4mol/lの塩化マグネシウム水溶液に変える他は実施例4と同様にして電位差を測定した。
【0072】
[実施例10]
塩化カリウム水溶液を、(CNBF(TEABF)が4mol/lのプロピレンカーボネート(PC)溶液にかえる他は実施例4と同様にして電位差を測定した。
【0073】
【表2】
【0074】
実施例4と実施例7,8の比較から、周期表の上に存在する元素のイオンほど発電電力量が増大することがわかる。また、実施例7と実施例9との比較から、アルカリ金属のイオンの方がアルカリ土類金属のイオンよりも発電電力量が増大することがわかる。
また、実施例10から、非水系のイオン含有液体でも発電できることがわかる。
【0075】
[実施例11]
平均開口径が0.5mmのアルミナ多孔体に、無電解Niメッキにより厚さ0.1μmの導電層を形成する他は実施例2と同様にして発電体を得た。
【0076】
[実施例12]
平均開口径が0.5mmのアルミナ多孔体に、スパッタリングで厚さが10nmのPt-Pd膜を形成する他は実施例2と同様にして発電体を得た。
【0077】
[実施例13]
塗工液中のグラフェンを鱗片状黒鉛(日本黒鉛社製:SP20)にかえる他は実施例2と同様にして発電体を得た。
【0078】
[実施例14]
塗工液中のグラフェンをアセチレンブラック(デンカ社製:HS-1000)にかえる他は実施例2と同様にして発電体を得た。
【0079】
上記発電体を評価した。評価結果を表3に示す。
【0080】
【表3】
【0081】
実施例11と実施例12の比較から、導電層の電気伝導率が高くなると発電電力量が増大することがわかる。
実施例13の鱗片状黒鉛は、結晶の方向によって電気伝導性に異方性を有するので、実施例14に比して発電電力量が低くなったと考えられる。
【0082】
[実施例15]
ポリオキシエチレンアルキルエーテルを添加しない塗工液を用いて導電層を形成した後、撥水剤分散液(ポリテトラフルオロエチレンポリマー粒子分散液:ダイキン社製:D-210C)中に浸漬する他は実施例8と同様にして発電体を得た。
【0083】
[実施例16]
導電層を形成した後、撥水剤分散液中に浸漬する他は実施例8と同様にして発電体を得た。
【0084】
[実施例17]
ポリオキシエチレンアルキルエーテルを添加しない塗工液を用いて導電層を形成する他は実施例8と同様にして発電体を得た。
【0085】
上記発電体を評価した。評価結果を表4に示す。
【0086】
【表4】
【0087】
表4の結果から、界面活性剤は連通孔内にイオン含有液体を入り易くするが、連通孔内に入った後には、発電電力量の向上に寄与していないことがわかる。
また、イオン含有液体が連通孔内に入った後には、導電層がイオン含有液体に濡れ難いことで発電電力量が向上することがわかる。
【符号の説明】
【0088】
1 発電体
2 基材(多孔構造部)
3 導電層
4 電極
5 イオン含有液体
図1