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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】階段巾木構造
(51)【国際特許分類】
   E04F 11/16 20060101AFI20241218BHJP
   E04F 19/04 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
E04F11/16
E04F19/04 101D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021028051
(22)【出願日】2021-02-25
(65)【公開番号】P2022129410
(43)【公開日】2022-09-06
【審査請求日】2023-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西塚 隆志
【審査官】眞壁 隆一
(56)【参考文献】
【文献】意匠登録第1495987(JP,S)
【文献】特開2011-246935(JP,A)
【文献】特開2013-130020(JP,A)
【文献】特開2019-163629(JP,A)
【文献】特開2015-206163(JP,A)
【文献】特開平08-165774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 11/00 - 11/17
E04F 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦向きの蹴込板と、横向きの踏板とを有する段差部を、斜め上下方向へ延びるように複数段連ねて成る階段に対し、
該階段の側部に、前記階段に沿った繰返し段差形状の巾木が取付けられ、
該巾木は、前記蹴込板の手前面に沿って縦に延びる縦巾木と、
前記踏板の上面に沿って横に延びる横巾木とを、交互に複数有する階段巾木構造であって、
前記縦巾木および前記横巾木は、一体化されて前記段差部の一つに沿ったL字型の直角巾木となっており、
前記直角巾木には、互いに連結可能な連結具が備えられ、
前記連結具は、前記直角巾木の表面側に位置して、前記直角巾木の端部と重複する上下の重複部分を有する連結具本体と、
前記連結具本体の裏面側から突設されて、前記直角巾木の端部どうしの合わせ部分の間に介在される脚状部と、を有し、
前記脚状部は、前記直角巾木の端部に設けられた嵌合凹部に嵌合可能な嵌合突起部を備え、
前記嵌合凹部および前記嵌合突起部は、凹溝形状の溝底部分の幅が広く凹溝形状の開放部分の幅が狭い断面形状になっており、
前記連結具は、前記直角巾木の上端部に対し、前記嵌合突起部を上に突出させた状態で取付けられていることを特徴とする階段巾木構造。
【請求項2】
請求項1に記載の階段巾木構造であって、
前記直角巾木は、表板と裏板とを有し、
前記裏板は、前記表板よりも短くなって、前記裏板の端部が、前記表板の端部に対して引っ込んでいることを特徴とする階段巾木構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の階段巾木構造であって、
前記踏板が、前記蹴込板に対して手前側に突出する突出部を有しており、
前記縦巾木は、前記突出部の下側に位置する突出部下部片と、
前記突出部の先端部よりも手前側に位置する本体部とに分けて設けられていることを特徴とする階段巾木構造。
【請求項4】
請求項3に記載の階段巾木構造であって、
前記直角巾木は、前記本体部と、前記横巾木とを一体化したものとされ、
そして、前記突出部下部片は、前記直角巾木から独立した部品として、前記突出部の下側に設置された状態で、前記直角巾木の前記本体部と隣接されることを特徴とする階段巾木構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、階段巾木構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
2階建て以上の多階建ての建物には、下階から上階へ上るための階段が設けられる(例えば、特許文献1参照)。階段には、横向きの踏板と、縦向きの蹴込板とからなる段差部を、斜め上下方向へ延びるように複数段連ねて形成したものがある。
【0003】
そして、階段の側部に対して、巾木と呼ばれる化粧材を取付けることも行われている。巾木には、階段に沿った繰返し段差形状となっているものがあり、このような巾木は、例えば、踏板の上面に沿って横へ延びる横巾木と、蹴込板の手前面に沿って縦へ延びる縦巾木とを交互に繰返すように複数設置したものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-204939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載された階段の巾木の構造(階段巾木構造)では、横巾木と縦巾木は、建築現場で一つずつ取付けるようになっており、横巾木と縦巾木に対する多くの現場加工が必要になっていたため、現場での施工に手間と時間がかかるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記した問題点の改善に寄与することを主な目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に対して、本発明は、
縦向きの蹴込板と、横向きの踏板とを有する段差部を、斜め上下方向へ延びるように複数段連ねて成る階段に対し、
該階段の側部に、前記階段に沿った繰返し段差形状の巾木が取付けられ、
該巾木は、前記蹴込板の手前面に沿って縦に延びる縦巾木と、
前記踏板の上面に沿って横に延びる横巾木とを、交互に複数有する階段巾木構造であって、
前記縦巾木および前記横巾木は、一体化されて前記段差部の一つに沿ったL字型の直角巾木となっており、
前記直角巾木には、互いに連結可能な連結具が備えられ、
前記連結具は、前記直角巾木の表面側に位置して、前記直角巾木の端部と重複する上下の重複部分を有する連結具本体と、
前記連結具本体の裏面側から突設されて、前記直角巾木の端部どうしの合わせ部分の間に介在される脚状部と、を有し、
前記脚状部は、前記直角巾木の端部に設けられた嵌合凹部に嵌合可能な嵌合突起部を備え、
前記嵌合凹部および前記嵌合突起部は、凹溝形状の溝底部分の幅が広く凹溝形状の開放部分の幅が狭い断面形状になっており、
前記連結具は、前記直角巾木の上端部に対し、前記嵌合突起部を上に突出させた状態で取付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、上記構成によって、現場での施工の手間を少なくすることなどができる。連結具が重複部分を有する連結具本体を備えることで、連結具本体の重複部分を直角巾木どうしの合わせ部分に対する調整代とすることができる。連結具が脚状部を有することで、直角巾木の端部の位置を規制するストッパにすることができる。連結具が脚状部に嵌合突起部を有することで、嵌合突起部を嵌合凹部に嵌合することで連結具を直角巾木に簡単に連結固定できる。そして、嵌合凹部および嵌合突起部が、凹溝形状の溝底部分の幅が広く凹溝形状の開放部分の幅が狭い断面形状になっていることで、嵌合凹部と嵌合突起部とを面外方向に外れ難くすることができる。更に、連結具を、直角巾木の上端部に対し、嵌合突起部を上に突出させた状態で取付けて一部品化しておくことにより、直角巾木を上から下へ動かして嵌合突起部に凹部嵌合を嵌合させるだけで直角巾木を簡単に下から順番に連結して行くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施の形態にかかる階段巾木構造を示す階段の部分的な斜視図である。
図2図1の直角巾木および突出部下部片を示す側方から見た図である。
図3図2の連結具を示す拡大側面図である。
図4】連結具を備えた直角巾木の部分的な背面図である。
図5】階段巾木構造の施工手順を示す工程図である。
図6図5に続く階段巾木構造の施工手順を示す工程図である。
図7図6に続く階段巾木構造の施工手順を示す工程図である。
図8図7に続く階段巾木構造の施工手順を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施の形態を、図面を用いて詳細に説明する。
図1図8は、この実施の形態を説明するためのものである。
【実施例1】
【0011】
<構成>以下、この実施例の構成について説明する。
【0012】
2階建て以上の多階建ての建物1に、下階から上階へ上るための階段4を設ける。
【0013】
建物1は、木造、コンクリート造り、鉄骨造りなど、どのようなものでも良いが、例えば、ユニット建物とすることができる。ユニット建物は、工場で予め製造した建物ユニットを建築現場へ搬送して建築現場で組立てることによって、短期間のうちに構築できるようにした建物1である。建物1を多階建てにする場合、建物ユニットは、建築現場で上下に積重ねて構築される。そして、下側の建物ユニットが建物1の下階となり、上側の建物ユニットが建物1の上階となる。
【0014】
階段4は、建物1の階層間移動手段である。階段4は、直進部分のみによって構成された真っ直ぐな直線階段や、方向変更ができるように曲がるための部分を有する曲がり階段など、各種のものが存在している。
【0015】
階段4は、建物1の内部や外部に設けることができるが、この実施例では建物1の内部(の階段スペース)に設けられるもの(内階段)を対象としている。建物1がユニット建物の場合、階段4は、主に、下階の建物ユニットの内部に設けられる。下階の建物ユニットに対し、階段4は、工場で予め設置することができる。そして、階段4が設けられた下階の建物ユニットの上に、建築現場で上階の建物ユニットを積重ねた後で、下階の建物ユニットの階段4は、上階の建物ユニットに繋げられる。なお、ユニット建物では、階段4のための専用の階段ユニットを設けて、階段ユニットに階段4を設置するようにしても良い。
【0016】
上記のような基本的な構成に対し、この実施例の階段巾木構造では、以下のような構成を備えることができる。
【0017】
(1)縦向きの蹴込板11と、横向きの踏板12とを有する段差部13を、斜め上下方向14へ延びるように複数段連ねて成る階段4に対し、
階段4の側部に、階段4に沿った繰返し段差形状の巾木15が取付けられる。
巾木15は、蹴込板11の手前面16に沿って縦に延びる縦巾木17と、
踏板12の上面18に沿って横に延びる横巾木19とを、交互に複数有するものとされる。
そして、縦巾木17および横巾木19は、予め一体化されて段差部13の一つに沿ったL字型の直角巾木21となっている。
【0018】
ここで、蹴込板11は、階段4を構成する縦向きの板材(厚板)であり、階段4の一段ずつの段差(段差部13)の高さをほぼ規定するものとなる。蹴込板11は、水平線に対して垂直な状態に立設するのが好ましいが、僅かであれば傾斜していても良い。
【0019】
蹴込板11は、階段4の横幅に応じた長さと、階段4の段差部13の高さに応じた幅とを有する横長の長方形状をしている。蹴込板11は、階段4が直線階段の場合には、階段4の横幅と同じ長さとされ、曲がり階段の場合には、曲がり部分の状況に合わせた長さとされる。蹴込板11は、階段4の高さに応じた枚数の分だけ設置される。
【0020】
踏板12は、階段4を構成する横向きの板材(厚板)であり、昇降の際に直接踏まれるものである。踏板12は、水平な状態に設置するのが好ましいが、僅かであれば傾斜していても良い。
【0021】
踏板12は、階段4が直線階段の場合には、階段4の横幅に応じた長さと所要の幅とを有する横長の長方形状のものとされる。踏板12は、階段4が曲がり階段の場合には、曲がり部分の状況に合わせた横長の長方形状以外の形状(例えば、ほぼ台形状やほぼ三角形状)のものが、少なくとも一部(曲がり部分)に設置される。踏板12は、蹴込板11とほぼ同じ枚数設置される。
【0022】
段差部13は、一枚の蹴込板11と一枚の踏板12とによって階段4に形成される小さな高低差のことである。段差部13は、下階と上階との間に多数形成される。多数の段差部13は、ほぼ均一な高さとされる。段差部13は昇降に無理のない高さに設定される。段差部13の高さは、蹴込板11の幅に、踏板12の板厚を足した寸法となる。
【0023】
上下方向14は、上階と下階とを面直に結ぶ方向(鉛直上下方向)である。斜め上下方向14は、階段4の傾斜に沿った傾きの方向である。
【0024】
階段4は、上階と下階との間を上り下りするための斜面を、複数の段差部13によって構成することで、上り下りをし易くした構造物である。階段4は、多数の段差部13を繰返しながらほぼ斜め上下方向14に延びるものとなる。
【0025】
階段4は、蹴込板11と、踏板12とを交互に連ねるようにしながら斜め上下方向14に延ばされる。階段4では、蹴込板11の上端部に踏板12の手前側の端部周辺が載置され、この踏板12の奥側の端部周辺に別の蹴込板11の下端部が載置されるようにしながら、交互に連ねられる。
【0026】
階段4の側部は、階段4の幅方向22の一端部または両端部のことである。階段4が建物1の内部の壁際に設けられる場合には、階段4の側部は、階段4の一端部または両端部に位置する縦向きの側壁23となる。そして、階段4が側壁23に沿って形成される場合には、必要に応じて、側壁23に対して巾木15が設置される。
【0027】
なお、階段4が側壁23に沿って形成されない場合、例えば、階段4の側部が空間などになっている場合には、巾木15は特に設置する必要がない。階段4の幅方向22は、階段4の横幅を規定する水平な方向である。直線階段の場合、階段4の幅方向22は、蹴込板11と踏板12の長辺が延びる方向となる。
【0028】
階段巾木構造は、階段4の側部(の側壁23)に設置される巾木15の構造のことである。
【0029】
巾木15は、階段4の幅方向22の端部と側壁23との境界部分を覆い隠す化粧材である。巾木15は、側壁23に対し、階段4の段差部13に沿うように繰返し段差形状に取付けられる。巾木15は、面の向きが側壁23と同じで、ほぼ一定の厚みおよびほぼ一定の幅を有する縦巾木17と横巾木19とによって主に構成される。
【0030】
繰返し段差形状の巾木15の場合、縦巾木17と横巾木19は、長手方向(長辺の方向)の向きを90度異ならせて、ほぼ直角に組み合わせた状態で側壁23に対して交互に取付けられる。
【0031】
(蹴込板11の)手前面16は、下階側から階段4に正対したときに、手前側となる面(手前に向いた面)のことである。手前面16は、階段4の奥行方向24に対して、蹴込板11の手前側に位置する。これに対し、階段4の奥行方向24に対し、蹴込板11の奥側に位置する隠れた面は、蹴込板11の奥面となる。
【0032】
階段4の奥行方向24は、直線階段においては蹴込板11の面直方向であり、幅方向22および上下方向14と直交する。この場合、階段4の奥行方向24は、蹴込板11の厚み方向、および、踏板12の幅方向となる。
【0033】
縦巾木17は、蹴込板11の手前面16に沿うように蹴込板11の側部に設置される化粧材である。縦巾木17は、側方(階段4の幅方向22)から見てほぼ長方形状またはほぼ平行四辺形状などをした縦長の板材(帯板材)でできており、板面を階段4の幅方向22に向けて側壁23と面接触された状態で側壁23に設置(または当接配置)される。直線階段の場合、縦巾木17の長手方向は上下方向14となる。
【0034】
(踏板12の)上面18は、踏板12の上に向いた面のことである。これに対し、踏板12の下に向いて隠れる面は、踏板12の下面となる。
【0035】
横巾木19は、踏板12の上面18に沿うように踏板12の側部に設置される化粧材である。横巾木19は、側方から見てほぼ長方形状またはほぼ平行四辺形状などをした横長の板材(帯板材)でできており、板面を階段4の幅方向22に向けて側壁23と面接触された状態で側壁23に設置(または当接配置)される。直線階段の場合、横巾木19の長手方向は階段4の奥行方向24となる。
【0036】
そして、直角巾木21は、主に、L字型または直角形状の部分を有する巾木15の構成部品(巾木構成部品)である。直角巾木21は、少なくとも一枚の縦巾木17と一枚の横巾木19とをほぼ直角の角形状に組合わせて、互いに接合し、一体化した複合部品である。直角巾木21は、巾木15を構成する一つの単位部品として使われる。
【0037】
縦巾木17と横巾木19とは、例えば、接着剤によって一体に接合することができる。直角巾木21は、工場などで縦巾木17と横巾木19とを接合して予め一体部品として組立てられた後に、製品として出荷される。
【0038】
これにより、部品としての直角巾木21は、階段4の一つの段差部13に沿った角形状(出隅形状)を有して、一つの段差部13に対し一つを取付けるものとなる。
【0039】
直角巾木21は、階段4を構成するほぼ全ての段差部13に設置して、巾木15の全体をほぼ直角巾木21のみによって構成するのが好ましい。しかし、状況によっては、階段4の一部の段差部13に対して直角巾木21を取付けることで、巾木15は、一部のみを直角巾木21で構成するようにしても良い。即ち、巾木15は、少なくとも一箇所以上または複数箇所に直角巾木21を設置したものとすることができる。
【0040】
より具体的には、図2に示すように、巾木15を構成する縦巾木17および横巾木19は、両端部またはその周辺に、側方から見て互いに線接触状態で合致する合わせ部分をそれぞれ有している。この合わせ部分は、合わせたときの角度が90度となるように構成される。
【0041】
合わせ部分は、縦巾木17および横巾木19の一方の端部と、他方の端部近傍の側面とを突き合わせるようにしても良いが、この実施例では、端部どうしを突き合わせるようにしている。そのために、縦巾木17および横巾木19の端部には、互いに同じ長さの傾斜部分が形成される。
【0042】
即ち、縦巾木17は、側方から見てほぼ平行四辺形状の板材とされる。ほぼ平行四辺形状の縦巾木17は、手前側と奥側の縁部が、ほぼ上下方向14に延びる互いに平行な辺17a,17b(長辺)とされている。また、ほぼ平行四辺形状の縦巾木17は、上端部と下端部が、手前側が高く奥側が低くなるように傾斜された互いに平行な斜辺17c,17d(短辺)とされている。
【0043】
また、横巾木19は、側方から見てほぼ平行四辺形状の板材とされる。ほぼ平行四辺形状の横巾木19は、上側と下側の縁部が、ほぼ水平方向に延びる互いに平行な辺19a,19b(長辺)とされる。また、ほぼ平行四辺形状の横巾木19は、手前側と奥側の端部が、上端が手前に位置し下端が奥側に位置するように傾斜された互いに平行な斜辺19c,19d(短辺)とされている。
【0044】
このうち、縦巾木17の斜辺17c,17dと、横巾木19の斜辺19c,19dが、上記した合わせ部分となる。
【0045】
そして、直角巾木21における縦巾木17と横巾木19との組合わせ方は、例えば、縦巾木17と横巾木19の近接する端部どうしを互いに突き合わせるようにする。
【0046】
この実施例では、直角巾木21は、縦巾木17の上端部(の斜辺17d)と横巾木19の手前側の端部(斜辺19c)とを突き合わせた状態で接合することで一体化するようにしている。この場合、上記した縦巾木17と横巾木19の合計4つの合わせ部分のうち、斜辺17d,19cが接合部となり、これらは、直角巾木21にとっては、直角巾木21の中間に位置する屈曲部となる。
【0047】
また、一つの部品となった直角巾木21では、その一端部が縦巾木17の下端部(斜辺17c)となり、他端部が横巾木19における縦巾木17とは反対側に位置する先端部(奥側の端部(斜辺19d))となっている。これらの斜辺17c,19d(残った合わせ部分)は、他の直角巾木21に対する連結部分となる。
【0048】
縦巾木17の斜辺17c,17dと横巾木19の斜辺19c,19dの傾斜角度は、合わせたときに角度が90度となるようにする。この実施例では、斜辺17c,17d、および、斜辺19c,19dは、その角度をそれぞれ45度にしているが、これに限るものではない。
【0049】
なお、例えば、図5図8に示すように、階段4が上記した曲がり階段の場合、曲がるための方向変更部26や踊場27などが備えられる。そして、方向変更部26や踊場27を構成する段差部13には、上記したように、直線階段の踏板12とは形状の異なる(例えば、平面視でほぼ台形状やほぼ三角形状などをした)異形の踏板12(A),12(B)が使われる。
【0050】
そのため、異形の踏板12(A),12(B)が使われる部分については、異形の踏板12(A),12(B)に合った専用の直角巾木21(A),21(B)を用いるようにする。
【0051】
例えば、この実施例の場合、方向変更部26を構成する段差部13のための直角巾木21(A)は、縦巾木17の上端部に、異形の踏板12(A)の奥行寸法に合わせた長さの横巾木19(A)を予め取付けて一体化したものとしている。
【0052】
また、踊場27のための直角巾木21(B)は、縦巾木17の上端部に、異形の踏板12(B)における側壁23に沿った各辺の寸法に合わせた長さの第1の横巾木19(B)および第2の横巾木19(C)を予め取付けて一体化したものとしている。
【0053】
(2)図3に示すように、直角巾木21には、互いに連結可能な連結具31が取付けられても良い。
【0054】
ここで、連結具31は、直角巾木21の連結部分となる端部どうしを合わせることで、直角巾木21どうしを簡単に繋げる(連結する)ための補助具(継手部材)である。連結具31は、樹脂または金属などによって構成される。
【0055】
連結具31は、直角巾木21とは別の部品として提供されるようにしても良いが、連結具31と直角巾木21を組み合わせて一部品となるように構成するのが好ましい。
【0056】
連結具31は、直角巾木21の製品出荷前に、工場などで各直角巾木21に予め1つずつ取付けられる。連結具31は、直角巾木21のどちらか一方の端部(同じ側)に設置しておくことで、隣接する直角巾木21の対向する端部をワンタッチで連結できるようになる。
【0057】
この実施例では連結具31は、直角巾木21の他端部(横巾木19の先端部の斜辺19d)に、斜辺19dに沿って傾斜した状態で取付けられている。連結具31は、横巾木19の先端部の斜辺19dに対し、斜辺19dの全域に亘るように設置される。
【0058】
これにより、連結具31は、下側の直角巾木21の他端部(または上端部)に対し安定して設置され、上側の直角巾木21の一端部(または下端部)を順番に接合して行く場合に、接合し易く便宜の良いものとなる。
【0059】
より詳細には、連結具31は、側方(階段4の幅方向22の内側)から見た場合に、一定の幅寸法を有して、直角巾木21の上端部(の斜辺19d)とほぼ等しい長さで、斜辺19dに沿って連続的に延びる連結具本体32を有している。
【0060】
連結具本体32は、直角巾木21の表面側に位置して、階段4の内側に露出される部分であり、巾木15と同じ表面意匠の化粧面を有している。連結具本体32は、両側縁部に直角巾木21の端部(の斜辺19d)に沿って延びる、互いに平行な辺を有しており、この両側縁部が直角巾木21の端部(の斜辺19d)と重複する重複部分33になる。
【0061】
即ち、連結具本体32の下側に位置する側縁部は、連結具31が組み合わされた直角巾木21の上端部(斜辺19d)周辺の表面側に所要量だけ重複されている。そして、この直角巾木21の上端部に別の直角巾木21を連結することで、連結具本体32の上側に位置する側縁部は、別の直角巾木21の下端部(斜辺17c)周辺の表面側に所要量だけ重複される。
【0062】
そして、連結具本体32の両側縁部と直角巾木21の端部との重複部分33は、直角巾木21どうしを連結する際における、連結状態に対する調整代となる。この重複部分33による調整代は、連結具本体32の幅寸法のほぼ半分程度以下となる。
【0063】
連結具本体32の幅方向は、上下の側縁部と垂直な方向であり、連結具本体32の長手方向は、上下の側縁部の延設方向である。
【0064】
そして、連結具本体32の長手方向の上端は、連結具本体32の幅方向、または、連結具本体32の長手方向と直交する方向に延びる平坦部32aになっている。この実施例では、平坦部32aは、45度の傾斜部になっている。
【0065】
また、連結具本体32の長手方向の下端は、尖った先細部になっている。この実施例では、尖った先細部は、直角二等辺三角形の等辺32b,32cを成している。
【0066】
また、図4の背面図に示すように、連結具本体32の裏面側からは、直角巾木21どうしの連結部分(合わせ部分)の間に介在設置される脚状をした脚状部34が、連結具本体32から一体に突設されている。脚状部34は、連結具本体32を裏面側から補強する補強リブとして機能する。また、脚状部34は、直角巾木21の端部の位置を規制するストッパとして機能する。
【0067】
脚状部34は、連結具本体32の幅方向の中間部の位置(例えば、幅中央部など)に、連結具31の長手方向に沿って、連結具本体32とほぼ面直な状態で単数または複数本立設されている。この実施例のように、脚状部34が1本の場合には、連結具本体32と脚状部34とを合わせた連結具31の断面形状は、T字型となる。
【0068】
脚状部34の、連結具本体32の裏面からの突出量は、側壁23と干渉しないように、巾木15の板厚とほぼ同じか、それよりも若干短くなっている。脚状部34の突出量は、全長に亘ってほぼ一定とするのが好ましい。
【0069】
脚状部34は、連結具本体32の裏面に沿って連続的に延ばされる。脚状部34の、連結具31の長手方向に対する長さは、連結具本体32と同じか、連結具本体32よりも若干短くなっている。連結具31を連結具本体32よりも短くする場合、脚状部34の長手方向の上端部および下端部は、連結具本体32の長手方向の上端部および下端部の位置に僅かに達しないようにする。
【0070】
そして、直角巾木21は、連結具31により、重複部分33の幅の範囲内で、脚状部34に直角巾木21の端部が直接突き当たったり、脚状部34から直角巾木21の端部がクリアランスを有して離れたりした状態で連結される。
【0071】
このクリアランスは、階段4の状態に合わせて直角巾木21どうしの連結状態を調整することによって形成されるものである。このクリアランスは、連結具本体32によって隠されて外部からは見えないので、直角巾木21どうしの連結部分の見栄えに悪影響を与えることはない。
【0072】
そして、脚状部34の長手方向の中間部の位置には、直角巾木21の端部に設けられた嵌合凹部41に嵌合可能な嵌合突起部42が備えられる。嵌合突起部42と嵌合凹部41とは、連結具31と直角巾木21との間を連結固定する連結部となる。
【0073】
嵌合突起部42を嵌合凹部41に嵌合することで、連結具31は、直角巾木21に着脱可能(または抜き挿し可能)に保持される。また、嵌合凹部41に対する嵌合突起部42の嵌合度合いによって、上記したクリアランス、および、直角巾木21どうしの連結状態が調整され、直角誤差が修正される。
【0074】
嵌合凹部41は、直角巾木21の両端部(の嵌合突起部42と合致する位置)に開口するように、直角巾木21を構成する縦巾木17および横巾木19に対してそれぞれ設けられる。嵌合凹部41は、少なくとも嵌合突起部42が嵌合できる大きさや形状を有していれば良い。この実施例では、嵌合凹部41は、直角巾木21を構成する縦巾木17および横巾木19に対し、それぞれ長手方向の全域に亘って連続した状態で、互いに交差し得るように延設されている。
【0075】
嵌合突起部42は、脚状部34の両面の同じ位置に一対設けられている。一対の嵌合突起部42は、連結具本体32の側縁部よりも外方へ突出するように、それぞれ連結具本体32の面と平行な方向へ向けて、脚状部34から互いに異なる角度で斜めに突設されている。一対の嵌合突起部42は、連結具本体32の下端部の先細部を構成する二つの等辺32b,32cとそれぞれ平行な方向へ向けて、互いに90度の角度を成すように脚状部34から一体的に突設されている。
【0076】
そして、このような連結具31を備えた直角巾木21を階段4に設置したときに、連結具31の連結具本体32は、直角巾木21(を構成する横巾木19)の先端部の斜辺19dの全域に及ぶように傾斜した状態で、巾木15の表面側(階段4の内側)に配置される。
【0077】
このとき、連結具本体32の上端の平坦部32aは、巾木15の上縁部に位置して、巾木15の上縁部の横巾木19と縦巾木17とが成すコーナー部分(入隅部分)の角取りを行う。
【0078】
また、連結具本体32の下端の先細部は、直交する二つの等辺32b,32cが、巾木15の下縁部に位置して、それぞれ水平および垂直な方向(上下方向14)に向けられ、踏板12と、蹴込板11などとの間に形成されるコーナー部分(入隅部分)と合致する。そして、先細部は、このコーナー部分にほぼ隙間なく装着される。
【0079】
そして、連結具31の嵌合突起部42も水平および垂直な方向に向けられて、上側の直角巾木21を真上から真下へ向けて取付ける際に、上側の直角巾木21の嵌合凹部41を下側から受けるものとなる。
【0080】
縦巾木17および横巾木19は、木製としても良いが、例えば、樹脂製や、アルミ(またはアルミ合金)などの軽金属製(または金属製)などで形成することができる。縦巾木17および横巾木19を樹脂製や金属製などとする場合、縦巾木17および横巾木19は、それぞれ表板45(図3)と裏板46(図4)とに分けて、表板45と裏板46とを貼合わせて一体化する合わせ構造にすることができる。
【0081】
この場合、表板45は、縦巾木17および横巾木19における、階段4の内側へ向いた面となり、巾木15の化粧面となる。表板45は、例えば、蹴込板11や踏板12と同じ色、同じ柄(例えば、木目柄など)にするのが好ましい。
【0082】
表板45には、必要に応じて、凹凸模様47を単数または複数形成することができる。凹凸模様47は、例えば、表板45に形成された、全体として、長手方向にほぼ一定幅で、表板45の両端部に達するまで表板45の長手方向へ連続的に延びて、裏板46の側へほぼ一定深さに凹む凹溝などとしても良い。
【0083】
なお、連結具本体32にも、凹凸模様47と同様の凹凸模様48を、凹凸模様47と連続するように設けても良い。この場合、凹凸模様48は、縦巾木17および横巾木19の2つの凹凸模様47が合流するように、直角に屈曲した屈曲形状となる。
【0084】
裏板46は、縦巾木17および横巾木19における、階段4の外側へ向いた面であり、縦巾木17および横巾木19の芯材となる。
【0085】
裏板46は、長手方向に対し、表板45と同じ長さに形成することができるが、表板45よりも僅かに短くして、裏板46の端部が、表板45の端部よりも若干(例えば、脚状部34の厚みのほぼ半分程度)引っ込んだ長さとするのが好ましい。
【0086】
これにより、例えば、直角巾木21どうしの連結を行う際に、表板45と裏板46とがそれぞれ連結具31に当たるまでの間に時間差が生じるようになる。そのため、表板45と裏板46が同時に連結具31に当たるようにした場合と比べて、嵌合突起部42に対する嵌合凹部41の挿入性が向上されて、直角巾木21どうしの連結作業が容易になる。
【0087】
裏板46には、上記した嵌合凹部41を単数または複数形成することができる。嵌合凹部41は、例えば、裏板46に形成された、全体として、長手方向にほぼ一定幅で、裏板46の両端部に達するまで裏板46の長手方向へ連続的に延びて、表板45の側へほぼ一定深さに凹む凹溝としても良い。
【0088】
嵌合凹部41は、嵌合突起部42とほぼ同じ断面形状とするのが好ましい。嵌合凹部41と嵌合突起部42の断面形状は、例えば、矩形断面や台形断面や三角断面などとすることができる。
【0089】
嵌合凹部41は、面外方向に対して外れ難くなるような断面形状(相互拘束形状)にすることもできる。そのためには、嵌合凹部41と嵌合突起部42は、凹溝の溝底部分の幅が広く、凹溝の開放部分の幅が狭い断面形状などにする。
【0090】
嵌合突起部42は、嵌合凹部41に嵌合した状態で、連結状態を保持可能で、嵌合突起部42の突出方向に対して嵌り易くかつ抜け難くなるような適度な長さに形成する。例えば、嵌合突起部42の長さは、連結具本体32の幅寸法とほぼ同程度か、または、それよりも若干長くするのが好ましい。
【0091】
そして、縦巾木17および横巾木19の表面の凹凸模様47と裏面の嵌合凹部41とは、同じ凹凸模様47どうし、嵌合凹部41どうしについては、縦巾木17と横巾木19との間で互いに連続するように、互いに幅方向の同じ位置に形成するのが好ましい。
【0092】
また、凹凸模様47と嵌合凹部41とについては、縦巾木17および横巾木19の内部で重なったり干渉したりしないように、互いに幅方向にズレた位置に形成するのが好ましい。
【0093】
この実施例では、凹凸模様47は、縦巾木17および横巾木19の幅方向の縁部寄りの位置(例えば、下縁部寄りの位置)に形成されている。また、嵌合凹部41は、縦巾木17および横巾木19の幅方向の中央寄りの位置に(例えば、幅中央部よりも若干下側の位置)形成されている。なお、縦巾木17および横巾木19が表板45と裏板46とを貼合わせた構造ではない、一体構造の物の場合でも、凹凸模様47や嵌合凹部41は、上記と同様に形成することができる。
【0094】
(3)図1に示すように、踏板12が、蹴込板11に対して手前側に突出する突出部51を有している場合には、
縦巾木17は、突出部51の下側に位置する突出部下部片52と、
突出部51の先端部よりも手前側に位置する本体部53とに分けて設けるようにしても良い。
【0095】
ここで、突出部51は、蹴込板11を踏板12の先端部よりも所要量(例えば、数センチ程度)だけ奥側に位置させることによって、踏板12の先端部およびその周辺に形成された部分である。突出部51は、蹴込板11の表面(手前面16)よりも階段4の奥行方向24の手前側に突出する。
【0096】
このように、踏板12の先端部およびその周辺を突出部51にすることで、蹴込板11が踏板12の先端部よりも奥側へ引込んだ状態になるので、階段4を上る際に、誤って蹴込板11を爪先で蹴ってしまうような不具合を防止することができる。
【0097】
突出部下部片52は、突出部51の下側に、蹴込板11の端部の表面に沿うように側壁23に設置される縦巾木17の一部分である。突出部下部片52は、突出部51の(蹴込板11の手前面16からの)突出量と同じ幅、および、蹴込板11の高さと同じ長さを有して上下方向14に延びる小片であり、側方から見てほぼ長方形状をした細長い部材とされる。
【0098】
これにより、図1図2に示すように、突出部下部片52は、手前側の縦の辺52aが、踏板12の先端部の位置と面一になる。また、突出部下部片52は、奥側の縦の辺52bが、蹴込板11の手前面16に対し、上下方向14に線接触する。そして、突出部下部片52は、下端部を構成する辺52cが踏板12の上面18に接し、上端部を構成する辺52dが突出部51の下面に接する。
【0099】
(踏板12の)先端部は、踏板12の奥行方向24の手前側となる縁部である。
【0100】
(突出部51の)手前側は、踏板12の先端部よりも奥行方向24の手前側となる位置のことである。縦巾木17の本体部53は、奥側の縦の辺(図2の辺17b)が踏板12の先端部および突出部下部片52の手前側の縦の辺52aと線接触するように配置される。
【0101】
なお、突出部下部片52(の手前側の縦の辺52a)と本体部53(の奥側の縦の辺17b)とが線接触状態となって隙間なく合わされることで、突出部下部片52と本体部53との合わせ線を目立たなくする効果が期待できる。また、巾木15に縦巾木17および横巾木19の長手方向に延びる上記凹凸模様47を設けることなどによっても、突出部下部片52と本体部53との合わせ線を、凹凸模様47にまぎれさせて目立たなくする効果が期待できる。
【0102】
本体部53は、縦巾木17の主要部を形成する板材である(縦巾木本体)。本体部53と突出部下部片52とを合わせることで縦巾木17が完成される。直角巾木21では、本体部53は、横巾木19の幅寸法とほぼ同じ幅寸法に形成される。そして、本体部53と横巾木19の対向する傾斜した端部(斜辺17d,19c)どうしが、同じ長さとされて、位置ズレがない状態で正確に接合される。
【0103】
なお、踏板12が突出部51を有することで、縦巾木17を突出部下部片52と本体部53とに分けた場合には、連結具本体32の下端の先細部(の等辺32b,32c)は、踏板12の上面18と、突出部下部片52(の縦の辺52aの下部)との間に形成されるコーナー部分(入隅部分)に対して合致されることになる。
【0104】
(4)上記したように、突出部51を有する踏板12に対して、縦巾木17を突出部下部片52と本体部53とに分けた場合には、
直角巾木21は、本体部53と、横巾木19とを一体化したものとしても良い。
そして、突出部下部片52は、直角巾木21から独立した部品として、突出部51の下側に設置された状態で、直角巾木21の本体部53と隣接されるようにしても良い。
【0105】
<作用>以下、この実施例の作用について説明する。
【0106】
多階建ての建物1の場合、建物1の内部には、下階から上階へ移動するため、または、上階から下階へ移動するために階段4が設けられる。
【0107】
例えば、建物1がユニット建物の場合、階段4は、下階の建物ユニットの内部に設置される。この実施例では、ユニット建物を、工場において、下階の建物ユニットの内部に階段4を設置したユニット建物としている。
【0108】
そして、この実施例では更に、工場において、建物ユニットに階段4を設置した後に、階段4の側部(の側壁23)に、巾木15を設置する。
【0109】
巾木15の設置は、図5図8に示すように、階段4の各段差部13に対し、最も下側の段差部13から順番に直角巾木21を取付けるようにする。この際、直角巾木21は、側壁23に沿って上側から落し込むようにして、下側の直角巾木21の上端部に取付けられた連結具31にて連結させる。
【0110】
隣接する直角巾木21は、嵌合突起部42と嵌合凹部41とが嵌合することによって連結される。そして、この直角巾木21どうしの連結作業を、最も上側の段差部13に達するまで繰返しながら行うようにする。
【0111】
縦巾木17を突出部下部片52と本体部53とに分けた場合には、突出部下部片52を先に各段差部13の突出部51の下側に取付けてから、上記した直角巾木21どうしの連結作業を行うようにする。
【0112】
階段4に方向変更部26や踊場27がある場合、方向変更部26や踊場27の部分については、方向変更部26や踊場27の形状や大きさなどに合わせて作った直角巾木21(A),21(B)を取付ける。
【0113】
この実施例では、方向変更部26のための直角巾木21(A)は、縦巾木17の上端部に、異形の踏板12(A)の奥行寸法に合わせた長さの横巾木19(A)を予め取付けて一体化したものとなっている。
【0114】
踊場27のため直角巾木21(B)は、縦巾木17の上端部に、踊場27の側壁23に沿った辺の寸法に合わせた長さの第1の横巾木19(B)と第2の横巾木19(C)とを予め取付けて一体化したものとなっている。
【0115】
これにより、階段4の側部に沿った繰返し段差形状の巾木15が完成する。側壁23に対する巾木15の設置は、直角巾木21を単位部品として、各段差部13に直角巾木21を設置して連結具31で連結して行くだけで良いので、巾木15の設置を簡単に行うことが可能になる。
【0116】
<効果>この実施例によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0117】
(効果 1)巾木15を構成する一つの縦巾木17と一つの横巾木19とを一体化して、階段4の一つの段差部13に沿った側面視ほぼL字型(直角形状または角形状)の直角巾木21を設ける。これにより、直角巾木21が巾木15を構成する単位部品となり、直角巾木21を直角精度の高い部品として工場生産することが可能になる。
【0118】
また、直角巾木21を巾木15の単位部品として用いるようにする。これにより、縦巾木17と横巾木19とをそれぞれ単独部品として別々に用意して、建築現場で階段4の側部に縦巾木17と横巾木19とを一つずつ交互に取付けて行く場合と比べて、施工が容易になり、有利となる。即ち、直角巾木21を用いることで、部品点数を減らすことや、部品の取扱いを容易化することや、階段4の側部に対する施工の手間や設置工数を減らして、短時間かつ少ないコストで巾木15を完成させることができる。
【0119】
即ち、直角巾木21は、一つの段差部13を構成する蹴込板11の手前側の位置と踏板12の上側の位置とに対し、例えば、階段4の側部(の側壁23)にほぼ沿うようにして嵌込む、または、上から落し込むように設置するだけで簡単に設置できる。この際、直角巾木21はL字型をしているので、階段4の各段差部13に対して自己保持させることができる。また、階段4に沿って斜め上下方向14に隣接するように直角巾木21を順に設置して行くことで、直角巾木21どうしは、互いに相互拘束し合うように組合わされて、連接されるので、巾木15の施工が容易になる。
【0120】
そして、これまでのように横巾木19と直角巾木21とを別部品として構成していた場合には、横巾木19または直角巾木21を側壁23に取付ける度に、階段4の精度に合わせて、横巾木19または直角巾木21の側壁23に対する留め付け加工をそれぞれ個別に行わなければならなかった。そして、上記した留め付け加工が多くなるため、巾木15の施工には、多大な手間がかかっていた。これに対し、直角巾木21を取付ける場合には、上記した留め付け加工などのような手間のかかる作業を大幅に削減し、または、ほとんど不要にすることができ、その分、手間をなくすことができる。
【0121】
(効果 2)上記において、直角巾木21に対し連結具31を取付けて、直角巾木21と連結具31とを一部品化しても良い。これにより、直角巾木21どうしを連結する際に、直角巾木21にいちいち連結具31を装着する手間をなくすことができる。また、隣接する直角巾木21どうしを、一方の直角巾木21に予め備えられた連結具31を介して簡単かつ迅速に連結して行くことができる。そのため、階段4の側壁23に沿って、複数の直角巾木21を順番に設置して行く作業を、素早く手軽に行えるようになる。
【0122】
直角巾木21どうしを連結具31によって連結することで、直角巾木21どうしの連結部分を連結具31で覆い隠して見栄え良く仕上げることができる。
【0123】
連結具31は、直角巾木21に対する連結具31の連結状態(嵌合凹部41と嵌合突起部42との嵌合度合いなど)を調整することによって、階段4(の蹴込板11と踏板12との間)の直角誤差を簡単に吸収することができる。そのため、直角巾木21どうしの繋ぎ部分などに対する調整加工を、連結具31を用いることによって不要化できるようになる。
【0124】
また、上記したように直角巾木21どうしの繋ぎ部分に対する調整加工がいらなくなることで、工場にても階段4に巾木15を予め取付けることが可能になる。よって、建築現場での階段4の側部に対する巾木15の取付け作業をなくして、建築現場における作業量を削減することができる。
【0125】
特に、例えば、建物1が、工場で予め製造した建物ユニットを建築現場へ搬送して建築現場で組立てるようにしたユニット建物の場合、工場で建物ユニットの内部に予め階段4および巾木15を精度良く取付けておくことが可能になる。よって、工場段階での建物ユニットの完成度を高めて、建物ユニットの生産性を向上することができる。
【0126】
(効果 3)上記において、踏板12が蹴込板11に対して手前側に突出する突出部51を有している場合に、縦巾木17を、突出部下部片52と、本体部53とに分けても良い。このようにすることで、突出部51の周辺の複雑な形状を、単純な形状の部品を組合せて再現できるようになり、工場でも突出部51廻りの加工ができるようになる。
【0127】
突出部下部片52を、本体部53とは別部材に分けることで、突出部下部片52は、小型で形状が単純で取扱い易い部品となるため、突出部下部片52を、階段4の実際の状態(直角精度など)に合わせた形状に加工、調整することが容易になる。これにより、突出部下部片52の形状を突出部51の下側の形状に合わせることで、階段4(の蹴込板11部分)の直角誤差を容易に吸収することができる。
【0128】
そして、突出部下部片52と本体部53とは、突出部51の下側と、突出部51の先端部よりも手前側とに対して、それぞれ別々に取付けるだけで良い。よって、踏板12が突出部51を有していても、突出部51に合った突出部下部片52を最初に突出部51の下側に設置し、後から本体部53を突出部51の先端部よりも手前側の位置に取付けるだけの単純な作業となる。そのため、縦巾木17の施工の手間を削減することができる。
【0129】
(効果 4)上記において、直角巾木21を、縦巾木17の本体部53と横巾木19とを一体化したものとしても良い。このようにすることで、突出部51を有する踏板12に対して、縦巾木17を突出部下部片52と本体部53とに分けて構成した場合に、直角巾木21の形状を単純化できる。これにより、直角巾木21の部品精度を上げることが容易になる。
【0130】
突出部下部片52を、直角巾木21から分離、独立した別の部品にすることで、突出部下部片52の部品精度を上げることが容易になる。また、突出部下部片52は、直角巾木21に先行して踏板12の突出部51の下側に取付けることが可能なものとなる。
【0131】
そして、突出部51の下側に突出部下部片52を取付けた後に、突出部下部片52と突出部51の先端部との手前側、および、踏板12の上側に本体部53および横巾木19を有する直角巾木21を取付ける。これによって、段差部13に直角巾木21が設置されると共に、突出部下部片52に直角巾木21の本体部53が隣接されて互いに隙間なく線接触して合致した状態となる。そのため、踏板12に突出部51を形成した階段4に対して、縦巾木17または直角巾木21を容易に施工することができる。また、踏板12が突出部51を有していても、突出部下部片52と直角巾木21とを設置することで、巾木15を見栄え良く仕上げることが可能になる。
【符号の説明】
【0132】
4 階段
11 蹴込板
12 踏板
13 段差部
14 上下方向
15 巾木
16 手前面
17 縦巾木
18 上面
19 横巾木
21 直角巾木
23 側壁
31 連結具
51 突出部
52 突出部下部片
53 本体部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8