(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】生体情報モニタ装置及び磁気共鳴イメージング装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20241218BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
A61B5/055 390
A61B5/11 110
(21)【出願番号】P 2021042231
(22)【出願日】2021-03-16
【審査請求日】2024-01-30
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大石 崇文
(72)【発明者】
【氏名】冨羽 貞範
【審査官】清水 裕勝
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-151458(JP,A)
【文献】特開2020-178805(JP,A)
【文献】特開2010-283500(JP,A)
【文献】特開2008-035987(JP,A)
【文献】特開2014-116812(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0316539(US,A1)
【文献】米国特許第06453189(US,B1)
【文献】RongLin Li, Terence Wu, Bo Pan, Kyutae Lim, Joy Laskar, and Manos M. Tentzeris,Equivalent-Circuit Analysis of a Broadband Printed Dipole With Adjusted Integrated Balun and an Array for Base Station Applications,IEEE Transactions on Antennas and Propagation,2009年07月09日,Vol. 57, No. 7,pp. 2180-2184
【文献】Kun-Mu Chen, Yong Huang, Jianping Zhang, and Adam Norman,Microwave Life-Detection Systems for Searching Human Subjects Under Earthquake Rubble or Behind Barrier,IEEE Transactions on Biomedical Engineering,2000年01月,Vol. 27, No. 1,pp. 105-114
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/398
G01R 33/00-33/64
G01N 24/00-24/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に近接して配設される少なくとも1つのアンテナからなるアンテナ装置と、
高周波信号を生成する信号生成部と、
前記高周波信号を用いて、前記被検体の物理的変位を検出する変位検出部と、を備え、
前記アンテナは、
前記高周波信号が給電される給電部が中央に設けられたダイポールアンテナと、
前記給電部に前記高周波信号を給電する同軸線路と、
一方の端部が前記同軸線路の外導体に短絡される1/4波長の導体素子
であって、線状導体又は帯状導体の平面構造として構成される導体素子と、
を有して構成される、
生体情報モニタ装置。
【請求項2】
前記導体素子は、L字形状に形成される、
請求項1に記載の生体情報モニタ装置。
【請求項3】
前記導体素子は、前記ダイポールアンテナの給電部に近い方の端部が開放され、前記給電部に遠い方の端部が前記外導体に短絡される、
請求項1または2に記載の生体情報モニタ装置。
【請求項4】
前記導体素子の開放端部と、前記ダイポールアンテナの給電部との間の距離は、1/4波長よりも短くなるように設定される、
請求項3に記載の生体情報モニタ装置。
【請求項5】
前記導体素子は、前記同軸線路と略平行になるように配設され、前記導体素子と前記同軸線路との間の間隔は、1/10波長よりも短くなるように設定される、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の生体情報モニタ装置。
【請求項6】
前記ダイポールアンテナと、前記導体素子は、同一の基板の上に形成される、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の生体情報モニタ装置。
【請求項7】
前記同軸線路の先端部は、前記基板の上に形成された前記ダイポールアンテナの給電部に接続され、前記同軸線路の外導体は、前記基板の上に形成された前記導体素子の所定部位に短絡される、
請求項6に記載の生体情報モニタ装置。
【請求項8】
前記導体素子の所定部位は、前記ダイポールアンテナの前記給電部から遠い方の端部である、
請求項7に記載の生体情報モニタ装置。
【請求項9】
前記ダイポールアンテナは面状ダイポールアンテナとして構成され、前記面状ダイポールアンテナの導体は、前記高周波信号が給電される給電部から前記面状ダイポールアンテナの両端に向かう所定位置までの領域はメアンダ形状に形成され、前記所定位置から前記両端までの領域は、ベタ面に形成される、
請求項6乃至請求項8のいずれか1項に記載の生体情報モニタ装置。
【請求項10】
前記導体素子は、ボウタイ形状に形成される、
請求項1に記載の生体情報モニタ装置。
【請求項11】
前記導体素子は、スパイラル形状に形成される、
請求項1に記載の生体情報モニタ装置。
【請求項12】
前記導体素子は、前記ダイポールアンテナの給電部に近い方の端部が開放され、前記給電部に遠い方の端部が前記外導体に短絡される、
請求項10または11に記載の生体情報モニタ装置。
【請求項13】
前記導体素子の開放端部と、前記ダイポールアンテナの給電部との間の距離は、1/4波長よりも短くなるように設定される、
請求項12に記載の生体情報モニタ装置。
【請求項14】
前記導体素子は、L字形状の長軸部の長さが互いに異なる複数の導体素子を備えて構成される、又は、
前記導体素子は、ボウタイ形状の大きさが互いに異なる複数の導体素子を備えて構成される、
請求項1に記載の生体情報モニタ装置。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか1項に記載の生体情報モニタ装置を具備する、
磁気共鳴イメージング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、生体情報モニタ装置及び磁気共鳴イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング装置を用いた撮像では、心臓の拍動(心拍)や呼吸などによる人体の動きによって収集するデータが変動する。そこで、例えば、心拍に関しては、人体に心電計の電極を貼り付け、心電計から出力される信号を用いて撮像タイミングを調整したり、収集したデータを心電計の信号に基づいて補正したりする手法が用いられている。
しかしながら、人体に電極を貼り付けることは患者にとって負担であり、また、撮像技師にとっても作業効率の低下の要因となる。
【0003】
また、診断画像を生成するためのデータの収集とは別に、呼吸による体動をモニタするためのデータ(ナビゲーションデータと呼ばれる)を収集し、ナビゲーションデータを用いて、呼吸に起因する体動の影響を補正する技術も知られている。しかしながら、この手法では、ナビゲーションデータの収集に余分な時間がかかるため、撮像時間が長くなってしまう。このような観点から、患者に負担をかけることのない、非接触型の体動モニタ装置が要望されている。
【0004】
非接触型の体動モニタ装置は、磁気共鳴イメージング装置を用いた撮像の場面のみならず、広くヘルスケアの分野でも要望されている。例えば、睡眠中や、車両の運転中における心拍数や呼吸の監視を、人体に負担をかけることなく非接触で行うことができるような体動モニタ装置も要望されている。
【0005】
一方、従来から、電波を用いて被検体の動きを検出し、心拍数や呼吸数を検出する装置も提案されている。アンテナから被検体に向けて電波を送信し、被検体からの反射波の変動を検出して被検体の動きを検出しようというものである。
【0006】
しかしながら、従来の電波を用いた検出装置では、被検体からの反射波だけではなく、被検体の周囲の種々の構造物からの反射波も同時に受信されるためにフェージングが発生し、被検体の心拍や呼吸を高い信頼性で安定に検出するのは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、被検体に負担をかけることなく、被検体の心拍や呼吸などの生体情報を、高い信頼性で安定に検出できるようにすることである。
【0009】
ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を、他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施形態の生体情報モニタ装置は、被検体に近接して配設される少なくとも1つのアンテナからなるアンテナ装置と、高周波信号を生成する信号生成部と、前記高周波信号を用いて、前記被検体の物理的変位を検出する変位検出部と、を備え、前記アンテナは、前記高周波信号が給電される給電部が中央に設けられたダイポールアンテナと、前記給電部に前記高周波信号を給電する同軸線路と、一方の端部が前記同軸線路の外導体に短絡される1/4波長の導体素子と、を有して構成される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施形態に係る生体情報モニタ装置の全体構成を示すブロック図。
【
図2】第1の実施形態に係る生体情報モニタ装置の動作概念を説明する図。
【
図3】(a)はアンテナからの反射信号の実測値の一例を示すグラフ、(b)は反射信号から抽出された呼吸の波形を示すグラフ、(c)は反射信号から抽出された心拍の波形を示すグラフ。
【
図4】生体情報モニタ装置で使用するアンテナとして、ループアンテナとダイポールアンテナを比較した図。
【
図5】第1の実施形態で使用されるアンテナの配置例を示す図。
【
図6】第2の実施形態に係る生体情報モニタ装置の全体構成を示すブロック図。
【
図7】第2の実施形態に係る生体情報モニタ装置の動作概念を説明する図。
【
図8】(a)は送信アンテナから受信アンテナへの透過信号の実測値の一例を示すグラフ、(b)は透過信号から抽出された呼吸の波形を示すグラフ、(c)は透過信号から抽出された心拍の波形を示すグラフ。
【
図9】第2の実施形態で使用される送信アンテナと受信アンテナの配置例を示す図。
【
図10】第3の実施形態に係る生体情報モニタ装置の全体構成を示すブロック図。
【
図11】ダイバーシティ処理を行うための4つのアンテナの配置例を示す図。
【
図12】生体情報モニタ装置を備える磁気共鳴イメージング装置の構成例を示す図。
【
図13】(a)は、磁気共鳴イメージング装置で使用される生体情報モニタ装置の構成例を示す図、(b)は、生体モニタ用の高周波信号の送受信期間の一例を示す図。
【
図14】アンテナの位置を示す局所コイルや天板のマーキングの一例を示す図。
【
図16】第1の実施形態のアンテナの外観例および構造例を示す図。
【
図17】第1の実施形態のアンテナの作用効果を説明する図。
【
図18】第1の実施形態のアンテナの構造に関する制約を説明する図。
【
図19】第1の実施形態のアンテナの技術的効果を示すグラフ。
【
図20】第2の実施形態のアンテナの構造例を示す第1の図。
【
図21】第2の実施形態のアンテナの構造例を示す第2の図。
【
図22】その他の実施形態のアンテナの構造例を示す図。
【
図23】異なる長さの複数の導体素子(L字素子)を有するアンテナの構造例を示す図。
【
図24】異なる大きさの複数の導体素子(ボウタイ形状)を有するアンテナの構造例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は、第1の実施形態に係る生体情報モニタ装置1の全体構成を示すブロック図である。生体情報モニタ装置1は、アンテナ10と生体情報モニタ装置本体20(以下、単に本体20と呼ぶ)とを備える。アンテナ10はアンテナ装置(図示せず)の構成である。第1の実施形態では、生体情報モニタ装置本体20は基本的には1つのアンテナを有する構成であるため、アンテナ装置は1つのアンテナから構成されることになる。一方、後述する他の実施形態では生体情報モニタ装置本体20が複数のアンテナを有することがあり、その場合は、アンテナ装置は複数のアンテナから構成されることになる。
【0014】
アンテナ10は人体である被検体に近接して配設される。アンテナ10は心電計の電極のように、被検体の肌に直接密着させて貼り付ける必要はなく、例えば、被検体の衣服の上に配置してもよい。また、
図1では、寝台の天板510の上に横臥する被検体の胸部にアンテナ10を配設している例を示しているが、アンテナ10を配設する際の被検体の姿勢や、アンテナ10を配設する被検体の部位は、
図1の例示に限定されない。例えば、アンテナ10を立位の被検体の胸部や背部に配設してもよいし、車両運転中の座位の被検体の胸部や背部に配設してもよい。
本体20は、RF信号発生器30、送信回路40、結合量検出回路50、及び、変位検出回路60を備えている。
【0015】
RF信号発生器30は、連続波の高周波信号を生成する。高周波信号の周波数は特に限定するものではないが、アンテナの寸法等から、例えば、VHF帯やUHF帯の周波数が選択される。
【0016】
送信回路40は、高周波信号をバンドパスフィルタ(BPF)41を通過させた後、電力増幅器(PA)42によって所定の電力まで増幅し、方向性結合器(DC)43を介してアンテナ10に出力する。
【0017】
結合量検出回路50は、被検体とアンテナ10との間の電界による近傍界結合の結合量を検出する機能を有しており、例えば、バンドパスフィルタ(BPF)51、自動利得調整機能付きの低雑音増幅器(LNA/AGC)52、及び、検波回路53を備えて構成されている。
RF信号発生器30、送信回路40、及び、結合量検出回路50は、例えば、1つのケーシングに収納される印刷基板の上に実装することができる。
【0018】
送信回路40の方向性結合器43から出力された高周波信号はアンテナ10に入力されるが、この高周波信号の一部は被検体に向かわず、アンテナ10の入力端で跳ね返されて(反射して)方向性結合器43に戻り、結合量検出回路50に分岐入力される。
【0019】
結合量検出回路50は、方向性結合器43の分岐端から出力される信号を、検波回路53で検波することにより、アンテナ10からの反射信号の大きさを測定する。そして、反射信号の大きさに基づいて近傍界結合の結合量を検出している。
【0020】
送信回路40からアンテナ10に出力される電力が一定値であることを考慮すると、結合量検出回路50は、アンテナ10の反射損失(即ち、リターンロス)を示すS11パラメータを等価的に検出していることになる。
【0021】
図2は、第1の実施形態に係る生体情報モニタ装置1の動作概念を説明する図である。
図2(a)は被検体とアンテナ10との距離Dが小さい場合における動作、
図2(b)は被検体とアンテナ10との距離Dが大きい場合における動作を模式的に説明する図である。被検体(人体)は、導電率を有する物体であるため、アンテナ10が被検体に近づくと、アンテナ10からのエネルギを吸収し易くなる。
【0022】
したがって、
図2(a)に示すように、被検体とアンテナ10との距離Dが小さい場合は、被検体に吸収されるエネルギが大きくなる。このことは、被検体とアンテナ10との近傍界結合の結合量が大きいことを意味している。アンテナ10に入力される電力Sinは、主に、被検体に吸収される電力Sbと、アンテナ10のアンテナ端10aから反射される電力Srに分けられるが、距離Dが小さい場合は、被検体に吸収される電力Sbが大きくなり、その分だけ、アンテナ端10aから反射される電力Srが小さくなる。例えば、アンテナ10に入力される電力Sinを100とした場合、被検体に吸収される電力Sbは70で、アンテナ端10aから反射される電力Srは30となる。
【0023】
このことは、被検体とアンテナ10との距離Dが小さい場合は、アンテナ端10aからの反射信号が低下し、アンテナ10の反射損失(リターンロス)も小さくなることを意味している。言い換えると、アンテナ10の不整合の程度の指標である、S11パラメータが小さな値を示すことになる。S11パラメータは、アンテナ10への入力電力に対する反射電力の比の平方根で表される指標である。
【0024】
これに対して、
図2(b)に示すように、被検体とアンテナ10との距離Dが大きい場合は、被検体に吸収されるエネルギが小さくなる。このことは、被検体とアンテナ10との近傍界結合の結合量が小さいことを意味している。この結果、距離Dが大きい場合は、被検体に吸収される電力Sbは小さくなり、その分だけ、アンテナ端10aから反射される電力Srが大きくなる。例えば、アンテナ10に入力される電力Sinを100とした場合、被検体に吸収される電力Sbは30で、アンテナ端10aから反射される電力Srは70となる。
【0025】
このことは、被検体とアンテナ10との距離Dが大きい場合は、アンテナ端10aからの反射信号が増加し、アンテナ10の反射損失(リターンロス)が大きくなることを意味している。言い換えると、アンテナ10の不整合の程度の指標である、S11パラメータが大きな値を示すことになる。
【0026】
このように、アンテナ10への入力電力を一定としたときのアンテナ端10aからの反射信号は、被検体とアンテナ10との距離Dに依存して変化する。言い換えれば、アンテナ10の不整合の程度、或いは、S11パラメータの値も、被検体とアンテナ10との距離Dに依存して変化する。そして、被検体とアンテナ10との距離Dは、心拍や呼吸等の体動によって変化するため、アンテナ端10aからの反射信号の大きさ、或いは、S11パラメータの値は、心拍や呼吸等の体動の変化に応じて変化することになる。
【0027】
第1の実施形態の生体情報モニタ装置1は、このような特性を利用するものであり、被検体の近傍に配設したアンテナ10からの反射信号の大きさ、或いは、S11パラメータの値を検出することにより、心拍や呼吸等の体動を検出する。
【0028】
図3(a)は、アンテナ10からの反射信号の実測値の一例を示すグラフである。グラフの横軸は時間を、縦軸は反射信号の振幅である。
図3(a)に示すように、アンテナ10からの反射信号は、比較的長い周期の振動波形(呼吸の動きに相当する波形)の上に、短い周期の振動波形(心拍に相当する波形)が重畳された波形となっている。アンテナ10からの反射信号は、結合量検出回路50の検波回路53で検出され、変位検出回路60に出力される。
【0029】
変位検出回路60は、例えば、プロセッサを備えた専用の印刷基板として構成してもよいし、ディスプレイを備えたパーソナルコンピュータやタブレット端末装置などの情報処理装置として構成してもよい。
【0030】
変位検出回路60は、呼吸の動きに相当する周波数成分と、心拍に相当する周波数成分を夫々抽出するフィルタリング処理を、検波回路53で検出された反射信号に対して施すことにより、
図3(b)に示す呼吸の波形や、
図3(c)に示す心拍の波形を生成する。或いは、変位検出回路60は、アンテナ10からの反射信号をフーリエ変換した後、呼吸の動きに相当する周波数成分と、心拍に相当する周波数成分とを周波数上で抽出し、抽出した夫々の周波数成分を逆フーリエ変換して、
図3(b)に示す呼吸の波形や、
図3(c)に示す心拍の波形を生成してもよい。
【0031】
変位検出回路60は、生成した呼吸波形や心拍波形を、適宜のディスプレイに表示させてもよいし、生成した呼吸波形や心拍波形を解析してもよい。例えば、変位検出回路60は、呼吸波形や心拍波形を解析して、呼吸数や呼吸周期、或いは、心拍数や心拍周期等を求めてもよいし、呼吸数や心拍数等から、呼吸や心拍の異常の有無を検出してもよい。
図4は、生体情報モニタ装置1で使用するアンテナ10として、ループアンテナとダイポールアンテナを比較した図である。
【0032】
図4(a)は、ループ長が共振長のループアンテナ、即ち、1波長ループアンテナを示している。1波長ループアンテナは、対向する辺の電流分布が逆位相となるため、電界は打ち消されない。このため、近傍界は電界成分が磁界成分より大きくなる。使用する周波数にもよるが、アンテナ形状としては、比較的大型となる。
【0033】
図4(b)は、ループ長が共振長より短いループアンテナを示している。このタイプのループアンテナは対応する辺の電流分布が逆位相にならないため、電界の打消しが発生する。このため、近傍界では磁界成分が電界成分より大きくなる。したがって、近傍界における人体との結合は磁界結合となる。磁界結合は、体の内部を通り易い傾向を示す。
図4(c)は、半波長ダイポールアンテナを示している。半波長ダイポールアンテナは、電界の打消しがないため、近傍界では電界成分が大きい。
【0034】
図4(d)は、素子長が共振長よりも短いダイポールアンテナを示している。素子長が共振長(即ち、半波長)よりも短くても、電流分布形状は変化しない。したがって、半波長ダイポールアンテナと同様に、近傍界では電界成分が大きい。また、当然、半波長ダイポールアンテナよりも小型化が可能である。近傍界では電界成分が大きくなるため、近傍界における人体との結合は電界結合となる。電界結合は、体の表面を伝搬し易い傾向を示す。
【0035】
小型化の観点からは、ループ長が共振長より短いループアンテナ(
図4(b))や、半波長より短いダイポールアンテナ(
図4(d))が好ましく、生体情報モニタ装置1は、どちらのタイプのアンテナも使用することができる。ただし、ループアンテナと対比した場合、ダイポールアンテナの方が、より細かな心電波形を抽出することができる傾向が認められる。
【0036】
通信などの用いられる通常のアンテナは、アンテナからの反射信号をできるだけ少なくし、空間に出ていく電力をできるだけ多くすることが求められる。このため、アンテナの電圧定在波比(VSWR)はできるだけ1.0に近い値が良いとされている。これに対して、第1の実施形態の生体情報モニタ装置1では、アンテナ10からの反射信号を検出することにより、心拍や呼吸の動きを検出している。このため、アンテナ10からの反射信号がある程度有った方がむしろ好ましい。そこで、第1の実施形態の生体情報モニタ装置1で使用されるアンテナ10の電圧定在波比(VSWR)は、例えば、2.0から5.0に設定するのが好ましい。
【0037】
図5は、第1の実施形態の生体情報モニタ装置1で使用されるアンテナ10の配置例を示す図である。第1の実施形態で使用するアンテナ10の数は、原則、1つであるが、その配置や、アンテナ10の向きに関しては、種々のバリエーションが考えられる。基本的な考え方としては、体動の動きがなるべく顕著に現れる部位に配設するのが好ましく、心拍を検出する場合には、なるべく心臓に近い場所に配設するのが好ましい。
【0038】
図5はアンテナ10の種類としては、いずれもダイポールアンテナを例示している。心臓は、被検体の左右方向よりも頭足方向の方が動きの幅が大きいと言われている。そこで、
図5(a)では、ダイポールアンテナの長手方向が被検体の頭足方向となるように、かつ、被検体の背腹方向については腹側において、心臓の近傍にアンテナ10を配置している。一方、
図5(b)では、被検体の背側の心臓の近傍にアンテナ10を配置している(ダイポールアンテナの長手方向が被検体の頭足方向)。
【0039】
アンテナ10の配置に関しては、何らかの物理的な制約を受ける場合が考えられる。例えは、磁気共鳴イメージング装置での被検体の撮像時に、生体情報モニタ装置1を用いて心拍を測定する場合には、磁気共鳴イメージング装置100の局所コイル200が被検体の上に載置される。局所コイル200が胸部コイルである場合、例えば、
図5(c)に示すように、胸部コイルを避けた位置で、かつ、なるべく心臓に近い位置にアンテナ10が配置される。また、例えば、アンテナ10を背側に配置する場合であって、局所コイル200がスパインコイルである場合、例えば、
図5(d)に示すように、スパインコイルを避けた位置で、かつ、なるべく心臓に近い位置にアンテナ10が配置される。
【0040】
上述したように、第1の実施形態に係る生体情報モニタ装置1では、心拍や呼吸等の体動を、アンテナ10と人体との間の近傍界結合の結合量の変化として検出している。そして、この近傍界結合の結合量の変化を、アンテナ10の入力端から反射される反射信号の変化、或いは、アンテナ10の反射損失であるS11パラメータの値の変化として測定している。このため、第1の実施形態に係る生体情報モニタ装置1は、電波を用いた非接触な検出方法でありながら、被検体の周囲の構造物、例えば、磁気共鳴イメージング装置のガントリ構造物や検査室内の種々の装置からの反射波によるフェージングの影響を受けにくく、心拍や呼吸の動きを高い信頼性で検出することができる。
【0041】
(第2の実施形態)
図6は、第2の実施形態に係る生体情報モニタ装置1の全体構成を示すブロック図である。第1の実施形態の生体情報モニタ装置1は原則1つのアンテナ10を具備する形態であるのに対して、第2の実施形態の生体情報モニタ装置1は、送信アンテナ10(第1のアンテナ)と、受信アンテナ11(第2のアンテナ)の少なくとも2つのアンテナを有している。
【0042】
生体情報モニタ装置本体20に関しては第1の実施形態とほぼ同様の構成であり、RF信号発生器30、送信回路40、結合量検出回路50、及び、変位検出回路60を備えている。
【0043】
本体20における第1の実施形態との相違点は、第2の実施形態の送信回路40が方向性結合器(DC)43を有していない点である。送信回路40の電力増幅器(PA)42と送信アンテナ10とは、方向性結合器(DC)43を介することなく直接接続され、結合量検出回路50のバンドパスフィルタ(BPF)51と受信アンテナ11も、方向性結合器(DC)43を介することなく直接接続されている。
【0044】
第2の実施形態の結合量検出回路50は、RF信号発生器30から出力された高周波信号が、送信アンテナ10から受信アンテナ11に透過する透過信号を、検波回路53で検波することにより、透過信号の大きさに基づいて近傍界結合の結合量を検出している。
【0045】
送信回路40から送信アンテナ10に出力される電力が一定値であることを考慮すると、結合量検出回路50は、送信アンテナ10から受信アンテナ11までの挿入損失(即ち、インサーションロス)を示すS21パラメータを等価的に検出していることになる。
【0046】
図7は、第2の実施形態に係る生体情報モニタ装置1の動作概念を説明する図である。
図7(a)は被検体とアンテナ10との距離Dが小さい場合における動作、
図7(b)は被検体とアンテナ10との距離Dが大きい場合における動作を模式的に説明する図である。前述したように、被検体(人体)は、導電率を有する物体であるため、送信アンテナ10と被検体との距離が小さいと、送信アンテナ10からのエネルギを吸収し易くなる。このため、送信アンテナ10から被検体に吸収されるエネルギは大きくなる。このことは、被検体と送信アンテナ10との近傍界結合の結合量が大きいことを意味している。
【0047】
また、同様に、受信アンテナ11が被検体に近づくと、被検体から受信アンテナ11へ入力されるエネルギも大きくなり、このことは、被検体と受信アンテナ11との近傍界結合の結合量が大きいことを意味している。アンテナ10に入力された電力Sinは、電力Sb1として被検体に吸収され、被検体の内部及び表面を伝搬し、電力Sb2として受信アンテナ11に透過する。距離Dが小さい場合は、送信アンテナ10から被検体に吸収される電力Sb1が大きくなり、その分だけ、被検体から受信アンテナ11へ透過する電力Sb2も大きくなる。例えば、送信アンテナ10に入力される電力Sinを100とした場合、送信アンテナ10から被検体に吸収される電力Sbは70、被検体から受信アンテナ11に放出される電力Sb2は60、したがって、受信アンテナ11から出てゆく電力Stも60となる。
【0048】
このことは、被検体と送信アンテナ10、受信アンテナ11との距離Dが小さい場合は、送信アンテナ10から受信アンテナ11への透過信号が増加し、送信アンテナ10から受信アンテナ11への挿入損失が小さくなることを意味している。言い換えると、送信アンテナ10から受信アンテナ11への挿入損失の指標である、S21パラメータ(真数値)が大きな値を示すことになる。
【0049】
これに対して、
図7(b)に示すように、送信アンテナ10と被検体との距離Dが大きくなると、送信アンテナ10からのエネルギを被検体が吸収しにくくなる。このため、送信アンテナ10から被検体に吸収されるエネルギは小さくなる。このことは、被検体と受信アンテナ11との近傍界結合の結合量が小さくなることを意味している。また、同様に、受信アンテナ11と被検体との距離Dが大きくなると、被検体から受信アンテナ11へ入力されるエネルギも小さくなる。このことは、被検体と受信アンテナ11との近傍界結合の結合量も小さくなることを意味している。例えば、送信アンテナ10に入力される電力Sinを100とした場合、送信アンテナ10から被検体に吸収される電力Sbは30、被検体から受信アンテナ11に放出される電力Sb2は20、したがって、受信アンテナ11から出てゆく電力Stも20となる。
【0050】
このことは、被検体と送信アンテナ10との距離D、或いは、被検体と受信アンテナ11との距離Dが大きい場合は、送信アンテナ10から受信アンテナ11への透過信号が減少し、送信アンテナ10から受信アンテナ11への挿入損失が大きくなることを意味している。言い換えると、送信アンテナ10から受信アンテナ11への挿入損失の指標である、S21パラメータ(真数値)が小さな値を示すことになる。
【0051】
図8(a)は、送信アンテナ10から受信アンテナ11への透過信号の実測値の一例を示すグラフである。グラフの横軸は時間を、縦軸は透過信号の振幅である。第2の実施形態における透過信号は、第1の実施形態における反射信号(
図3(a))に類似しており、比較的長い周期の振動波形(呼吸の動きに相当する波形)の上に、短い周期の振動波形(心拍に相当する波形)が重畳された波形となっている。この透過信号も、結合量検出回路50の検波回路53で検出され、変位検出回路60に出力される。
【0052】
変位検出回路60は、第1の実施形態と同様に、呼吸の動きに相当する周波数成分と、心拍に相当する周波数成分を夫々抽出するフィルタリング処理やフーリエ変換処理を、検波回路53で検出された反射信号に対して施すことにより、
図8(b)に示す呼吸の波形や、
図8(c)に示す心拍の波形を生成する。
【0053】
図9は、第2の実施形態の生体情報モニタ装置1で使用される送信アンテナ10と受信アンテナ11の配置例を示す図である。第2の実施形態で使用する送信アンテナ10と受信アンテナ11の配置や、向きに関しては、種々のバリエーションが考えられる。基本的な考え方としては、体動の動きがなるべく顕著に現れる部位を挟むように送信アンテナ10と受信アンテナ11を夫々配設するのが好ましい。例えば、心拍を検出する場合には、心臓を、被検体の背腹方向、左右方向、或いは、頭足方向のいずれかの方向に挟むように配設するのが好ましい。
【0054】
図9(a)、
図9(b)、
図9(c)はアンテナの種類としてダイポールアンテナを例示し、
図9(d)はモノポールアンテナを例示している。
図9(a)は、送信アンテナ10と受信アンテナ11によって、心臓を被検体の背腹方向から挟む配置例を示している。
【0055】
図9(b)は、送信アンテナ10と受信アンテナ11によって、心臓を被検体の左右方向から挟む配置例を示している。
図9(c)は、送信アンテナ10と受信アンテナ11によって、心臓を被検体の頭足方向から挟む配置例を示している。
図9(d)は、ものポールアンテナである送信アンテナ10と受信アンテナ11によって、心臓を被検体の頭足方向から挟む配置例を示している。
【0056】
なお、送信アンテナ10と受信アンテナ11とを特に区別する必要はなく、
図9(a)~
図9(d)のいずれの例においても、送信アンテナ10と受信アンテナ11とを入れ替えた配置とすることができる。
【0057】
第2の実施形態の生体情報モニタ装置1で使用される送信アンテナ10の電圧定在波比(VSWR)も、第1の実施形態のアンテナ10と同様に、例えば、2.0から5.0に設定するのが好ましい。但し、受信アンテナ11に関しては、例えば、2.0以下のVSWRが好ましい。
【0058】
(第3の実施形態)
図10は、第3の実施形態に係る生体情報モニタ装置1の全体構成を示すブロック図である。第3の実施形態の生体情報モニタ装置1は、第1の実施形態と第2の実施形態とを組み合わせた実施形態である。具体的には、第1の実施形態に対応する第1モードと、第2の実施形態に対応する第2モードとを選択可能に構成した実施形態である。
【0059】
第1モードでは、アンテナ11に高周波信号を入力し、アンテナ11からの反射信号(或いは、アンテナ11のS11パラメータ)に基づいて被検体の心拍や呼吸の動き等を測定する。一方、第2モードでは、アンテナ10に高周波信号を入力し、アンテナ10からアンテナ11への透過信号(或いは、アンテナ10からアンテナ11へのS21パラメータ)に基づいて被検体の心拍や呼吸の動き等を測定する。
【0060】
RF信号発生器30と第1送信回路40は、第1モードにおける高周波信号の発生機能に対応する構成である。RF信号発生器30aと第2送信回路40aは、第2モードにおける高周波信号の発生機能に対応する構成である。結合量検出回路50は第1モードと第2モードの双方に共通に用いられる構成である。
【0061】
ダイバーシティ判定回路70は、第1モードで検出される反射信号と、第2モードで検出される透過信号をモニタし、第1モードと第2モードのどちらかを選択する。第1モードで反射信号をモニタするときには、ダイバーシティ判定回路70は、
図10に示している状態、即ち、第1送信回路40のスイッチ44と、結合量検出回路50のスイッチ54をどちらも方向性結合器43側に切り替える。第2モードで透過信号をモニタするときには、スイッチ44とスイッチ54とを、
図10に示している状態の反対側に切り替える。
【0062】
ダイバーシティ判定回路70は、反射信号の変動幅と透過信号の変動幅とを比較し、変化幅の大きい方のモードを選択する。例えば、反射信号の変動幅の方が透過信号の変動幅よりも大きいと判定された場合は、ダイバーシティ判定回路70は第1モードを選択する。また、例えば、ダイバーシティ判定回路70は、反射信号と透過信号を夫々フーリエ変換し、心拍に対応する周波数成分が大きい方のモードを選択してもよいし、呼吸に対応する周波数成分が大きい方のモードを選択してもよい。
【0063】
ダイバーシティ判定回路70は、第1モードと第2モードのずれかを選択した後は、選択したモードに対応する状態にスイッチ44、スイッチ54を設定し、選択したモードを用いて、反射信号或いは透過信号を測定し、心拍や呼吸動等の体動信号を検出する。
(第3の実施形態の変形例)
【0064】
第3の実施形態の変形例の生体情報モニタ装置1は、2つ以上のアンテナ10、11を用いて、ダイバーシティ処理を行う。このダイバーシティ処理では、最も良好に体動信号を検出することができる1つのアンテナを選択する、或いは、最も良好に体動信号を検出することができる2以上のアンテナの組み合わせを選択する。
【0065】
図11は、ダイバーシティ処理を行うための4つのアンテナの配置例を示す図である。この場合、例えば、
図11(a)に示すように、4つのダイポールアンテナ10、11を、心臓を囲むように配置してもよい。また、
図11(b)に示すように、ダイポールアンテナを中央で略直角に折り曲げたタイプのアンテナ10、11を、を用いて心臓を囲むように配置してもよい。
【0066】
第1の実施形態の生体情報モニタ装置1でダイバーシティ処理を行う場合や、第3の実施形態の第1モードでダイバーシティ処理を行う場合には、最も良好に体動信号を検出することができる1つのアンテナを、4つのアンテナの中から選択する。
【0067】
また、第2の実施形態の生体情報モニタ装置1でダイバーシティ処理を行う場合や、第3の実施形態の第2モードでダイバーシティ処理を行う場合には、例えば、1つの送信アンテナ10を選択し、残りの3つの受信アンテナ11の中から、最も良好に体動信号を検出することができる1つのアンテナを選択する、或いは、残りの3つの受信アンテナ11を任意の組み合わせで合成処理を行う。
【0068】
第3の実施形態の変形例では、例えば、
図10に示したダイバーシティ判定回路70と類似の機能を有する回路を設ければよい。そして、この回路が、上述したアンテナの選択処理やアンテナの合成処理を行う。
(磁気共鳴イメージング装置)
図12は、上述した各実施形態に係る生体情報モニタ装置1を具備する磁気共鳴イメージング装置100の構成例を示す図である。
【0069】
磁気共鳴イメージング装置100は、静磁場磁石118、傾斜磁場コイル119、WB(Whole Body)コイル120等を有しており、これらの構成品は円筒状の筐体に収納されている。また、磁気共鳴イメージング装置100は、寝台本体520と天板510とを具備する寝台500、及び、被検体に近接して配設される局所コイル200を有している。
【0070】
さらに、磁気共鳴イメージング装置100は、傾斜磁場電源310、RF受信器320、RF送信器330、及びシーケンスコントローラ340を備えている。また、磁気共鳴イメージング装置100は、処理回路400、記憶回路410、ディスプレイ420、及び入力デバイス430を有するコンピュータ、即ち、コンソールを有している。
【0071】
生体情報モニタ装置1は、
図1、
図6、
図10に示す本体20に加えて、アンテナ10、11を有している。アンテナ10、11は、被検体に近接して配設されるが、被検体の肌に直接貼付する必要はない。アンテナ10、11は、それぞれ単独に被検体の近傍に配設してもよいが、
図12に示すように、局所コイル200の中に内蔵させることもできるし、天板510の中に内蔵させてもよい。
【0072】
図13(a)は、磁気共鳴イメージング装置100で使用される生体情報モニタ装置1の構成例を示す図である。磁気共鳴イメージング装置100は、上述した各実施形態のいずれでも使用可能であるが、
図13は、一例として、第2の実施形態の生体情報モニタ装置1を図示している。磁気共鳴イメージング装置100では、RF送信器330から非常に大きな電力のMR用RFパルスが出力され、このRFパルスがWBコイル120から被検体にむけて放射される。このため、非常に大きなRF電力がアンテナ10、11を介して、生体情報モニタ装置1の本体20に入力される。
【0073】
そこで、磁気共鳴イメージング装置100で使用される生体情報モニタ装置1は、保護用のスイッチ45とスイッチ55が、送信回路40の出力端と、結合量検出回路50の入力端に夫々設けられている。保護用のスイッチ45とスイッチ55は、磁気共鳴イメージング装置100の本体側から送られてくる制御信号を用いて、オンオフされる。
【0074】
図13(b)は、生体モニタ用の高周波信号の送受信期間の一例を示す図である。
図13(b)に示すように、生体モニタ用の高周波信号は、磁気共鳴イメージング装置100と生体情報モニタ装置1の互いの干渉を回避するため、MR用RFパルスの送信期間と、MR信号の受信期間を避けた期間に送受信される。
【0075】
生体モニタ用の高周波信号の送受信期間の繰り返し周期Tは、心拍の周期と呼吸の周期から規定することができる。心拍の周波数は概ね2Hz又はそれ以下と想定でき、また、呼吸の周波数は概ね0.5Hz又はそれ以下と想定することができる。サンプリング定理から、高い方の周波数の2倍、即ち、4Hz以上の周波数でサンプリングすれば、心拍の波形と呼吸の波形を測定することができる。したがって、繰り返し周期Tを250ms(=1/4Hz)以下に設定すればよい。
【0076】
生体モニタ用の高周波信号の周波数は、磁気共鳴イメージング装置100で使用するラーモア周波数より高い周波数が好ましい。生体モニタ用の高周波信号の周波数をラーモア周波数よりも高く設定することにより、生体モニタ用の高周波信号自体のみならずその高調波が、磁気共鳴イメージング装置100のMR信号の受信帯域に入りこむことを避けることができる。
【0077】
図14は、アンテナ10、11の位置を示す局所コイル200や天板510のマーキングの一例を示す図である。前述したように、生体情報モニタ装置1のアンテナ10、11は局所コイル200や寝台500の天板510に埋め込んで実装することができる。心拍を測定する場合、アンテナ10、11は、被検体の心臓の近傍に配設するのが好ましい。そこで、ユーザが、局所コイル200や天板510に埋め込まれたアンテナ10、11を容易に視認できるようにマーキングを付し、このマーキングが被検体の心臓の近傍となるように、被検体の位置や局所コイル200の位置を調整すればよい。
【0078】
(導体素子付きアンテナの第1の実施形態)
ここまでは、
図5、
図9、
図11に示したように、生体情報モニタ装置1に使用するアンテナ10、11のアンテナ素子の典型例として、ダイポールアンテナを用いる構成として説明してきた。
【0079】
アンテナ素子としてダイポールアンテナを用いた従来のアンテナの多くは、ダイポールアンテナに同軸線路(例えば、同軸ケーブル)を介して高周波信号を給電するように構成されている。
【0080】
図15(a)乃至(c)は、このような構成の従来のアンテナの課題を説明する図である。
図15(a)は、生体情報モニタ装置1のアンテナ(従来のアンテナ)を被検体の胸部に載置して、被検体の拍動と呼吸動を測定する状況を示す図である。
【0081】
図15(b)は、従来のアンテナの構成例を示す図であり、ダイポールアンテナに同軸線路を介して高周波信号が供給されている。周知のように、ダイポールアンテナは平衡回路であるのに対して、同軸線路は不平衡回路である。このため、平衡回路と不平衡回路との境界、即ち、ダイポールアンテナと同軸線路との境界である給電部で発生する漏洩電流が、同軸線路の外導体に流れる。
【0082】
被検体の拍動や呼吸動を測定するときには、前述したようにアンテナは被検体の上に配置される。このとき、給電部の近傍の同軸線路は、ダイポールアンテナと共に、被検体の上に(例えば、被検体の胸部や腹部の上に)配置されることになる。
【0083】
このため、同軸線路の外導体に流れる漏洩電流は、ダイポールアンテナ上の電流と共に、被検体と結合し、被検体表面の動きに応じてアンテナのリターンロス(S11パラメータ)が変動する。
【0084】
例えば、
図15(a)に例示するように、同軸線路の外導体が被検体の腹部に接近すると、呼吸による腹部の変動は心拍による胸部の変動よりも大きいため、上記の漏洩電流に起因するS11パラメータへの腹部の影響が大きくなる。
【0085】
このため、
図15(c)のグラフに示すように、呼吸によるS11パラメータの変動(周期の長い変動)に、心拍によるS11パラメータの変動(周期の短い変動)が埋もれてしまい、心拍の動きを捉えるのが困難となる。
【0086】
これに対して、生体情報モニタ装置1に使用するアンテナを、1/4波長の導体素子104を設けたアンテナ10として構成することにより、外導体を流れる漏洩電流を低減することが可能であり、これによって、上記の問題を解決し得ることが判ってきた。
【0087】
以下、
図16乃至
図22を参照しつつ、1/4波長の導体素子104付きアンテナ10の各種実施形態について説明する。なお、
図15(a)では、アンテナを、S11パラメータ検出用の送受信アンテナとして図示しているが、S21パラメータ検出用の送信アンテナ10及び受信アンテナ11としても、使用可能である。
【0088】
図16は、1/4波長の導体素子104付きアンテナ10の第1の実施形態のアンテナ10の外観例および構造例を示す図である。このアンテナ10は、ダイポールアンテナ101と、同軸線路103と、導体素子104とを備えて構成されている。
【0089】
ダイポールアンテナ101の中央には給電部102が設けられている。生体情報モニタ装置本体20から供給される高周波信号は、同軸線路103を介して、給電部102に給電される
【0090】
同軸線路103は、例えば、外導体を、編組線と呼ばれる細い導線を編んだもので構成し、その外周をシースと呼ばれるビニルなどの絶縁保護被膜で覆った同軸ケーブルである。或いは、同軸線路103は、無継目金属チューブを外導体として用い、外導体が外部に露出した同軸ケーブル、所謂、セミリジッドケーブルであってもよい。
【0091】
導体素子104は、その長さが概ね1/4波長の線状導体、或いは、帯状導体である。導体素子104の一端は同軸線路103の外導体に短絡された短絡部105として構成され、導体素子104の他端は、開放端(開放端部106)として構成されている。
【0092】
導体素子104は、例えば、L字形状をなすL字素子104として構成することができる。L字素子104は、線状導体、或いは、帯状導体の一方の端部を短く折り曲げた短軸部と、残りの部位の長軸部とを有している。L字素子104の短軸部の先端は同軸線路103の外導体に短絡され、長軸部は、所定の間隔をもって同軸線路103と略並行に配設される。
【0093】
導体素子104は、必ずしも限定するものではないが、
図16に例示されるように、ダイポールアンテナ101の給電部102に近い方の端部が開放され、ダイポールアンテナ101の給電部102に遠い方の端部が同軸線路103の外導体に短絡される。
【0094】
図17は、第1の実施形態に係るアンテナ10の作用効果について説明する図である。
図17は、
図16に示したアンテナ10の図に、破線で電流分布を付加したものである。
図17に示す電流分布は、外導体とL字素子104で形成される矩形部に発生する電流の分布である。
【0095】
ダイポールアンテナ101の共振周波数の1/4波長の長さをもつL字素子104と外導体で形成される矩形部には、L字素子104の短絡部105で最大となり、開放端部106で最小となる電流が発生する。
したがって、給電部102から見た、外導体とL字素子104で形成される矩形部のインピーダンスが、L字素子104の開放端部106の位置で最大となる。
この結果、外導体方向への漏洩電流が、開放端部106で遮断されることになり、外導体に流れる漏洩電流を抑制することが可能となる。
従来、ダイポールアンテナから外導体への漏洩電流を抑制する手段として、シュペルトップと呼ばれると手段が知られている。シュペルトップは、ダイポールアンテナの給電点近くで、同軸線路の外周を覆う円筒形状の導体で構成されている。従来のシュペルトップが立体構造であるのに対して、本実施形態のL字素子104は、線状導体や帯状導体等の平面構造である。このため、シュペルトップを用いた従来のアンテナに対して、本実施形態のアンテナ10の製造工程は簡素化される。
【0096】
図18は、第1の実施形態に係るアンテナ10の構造に関する制約を説明する図である。このうち、
図18(a)は、L字素子104の高さH(即ち、L字素子104と同軸線路103の外導体との間の間隔)に関する制約を示す図である。
【0097】
図18(a)に示すように、L字素子104の高さHは、1/10波長以下であるのが好ましい。何故なら、L字素子104の高さHを1/10波長以下とすることにより、L字素子104がモノポールアンテナとして電波を放射することを防止することができるからである。
図18(b)は、L字素子104の開放端106と給電部102との間の距離Dに関する制約を示す図である。
【0098】
図18(b)に示すように、L字素子104の開放端106と給電部102との間の距離Dは、1/4波長以下であるのが好ましい。何故なら、距離Dを1/4波長以下とすることにより、同軸線路103に定在波が発生することを防止し、この結果、同軸線路103と被検体との近傍界結合を防ぐことができるからである。
【0099】
図19は、第1の実施形態のアンテナ10の技術的効果を示すグラフである。
図19(a)、(b)に示す各グラフは、生体情報モニタ装置1で測定したS11パラメータの時間変動を示す実測データの一例である。実施形態のアンテナ10と比較のため、
図19(a)は、L字素子104のない従来のアンテナを用いて測定したS11パラメータの時間変動を示している。一方、
図19(b)は、L字素子104を有する、実施形態のアンテナ10を用いて測定したS11パラメータの時間変動を示している。
【0100】
図19(a)、(b)に示すS11パラメータの時間変動のうち、5秒から10秒程度の長い周期の時間変動が腹部等の呼吸動に起因する時間変動である。これに対して、1秒以下の短い周期の時間変動が、心拍による動き(拍動)に起因する時間変動である。
【0101】
図19(a)に示すように、L字素子104のない従来のアンテナを用いて測定したS11パラメータでは、呼吸動による信号変動に埋もれて、心拍による信号変動が検出困難となっている。
【0102】
これに対して、
図19(b)から明らかなように、L字素子104を有する実施形態のアンテナ10を用いて測定したS11パラメータでは、呼吸動による影響が低減され、心拍による信号変動が容易に検出可能となっている。
【0103】
上述したように、導体素子104(例えば、L字素子104)を有する実施形態のアンテナ10によれば、ダイポールアンテナ101と同軸線路103との境界である給電部102で発生する漏洩電流が抑制される。この結果、呼吸動による影響が低減され、心拍による信号変動を容易に検出することができる。
【0104】
(導体素子付きアンテナの第2の実施形態)
図20及び
図21は、導体素子付きアンテナの第2の実施形態の構造例を示す図である。第2の実施形態のアンテナ10は、
図20(a)に示すように、同軸線路103以外の部分、即ち、ダイポールアンテナ101と導体素子104(例えば、L字素子104)とを、基板107の上に形成するように構成されている。
【0105】
一方、
図20(b)は、基板107に固定されるべき同軸線路103を示している。同軸線路103は、中心に内導体109を有しており、外周に外導体110を有している。外導体110は、
図20(b)に示す同軸ケーブル(例えば、セミリジッドケーブル)のように外部に露出しているものでもよいし、外導体の外周にビニル等で形成される絶縁保護被膜を設けたものでもよい。
基板107は、ダイポールアンテナ101の位置に対応する横部材と、導体素子104の位置に対応する縦部材とのT字状に形成されている。
【0106】
ダイポールアンテナ101及び導体素子104は、基板107の一方の面に設けられた銅箔を、例えば、エッチング処理を施すことにより、それぞれ形成される。
【0107】
ダイポールアンテナ101は、全面をベタ面として形成することもできるが、
図20(a)に示すように、給電部102からダイポールアンテナ101の両端に向かう所定位置までの領域は、ダイポールアンテナ101の導体(例えば、銅箔)が、メアンダ形状に形成されており、所定位置から両端までの領域は、ダイポールアンテナ101の導体(例えば、銅箔)がベタ面に形成されている。
【0108】
ここで、メアンダ形状に形成された導体の領域とは、ダイポールアンテナ101の短手方向の導体の幅よりも十分細い幅の細導体が、複数回クランク状に折り曲げられたパタン、即ち、導体が所謂メアンダラインとして形成されたパタンの領域のことである。また、ベタ面とは、基板107の表面の全域に亘って導体層がすき間なく覆われている面、又は、基板107の表面の全域に亘って導体層が広く連続的に覆われている面のことである。
【0109】
一方、導体素子104は、基板107の縦部材に形成される導体パタンである。導体素子104は、その長さ(ダイポールアンテナ101に直交する方向の導体素子104の長さ)が、ダイポールアンテナ101の共振周波数の1/4波長となるように形成されている。
【0110】
導体素子104の給電部102に近い方の端部は、ダイポールアンテナ101と絶縁された開放端部となっている。また、導体素子104の、給電部102から遠い方の端部は、短く直角に折れている。そして、この折れ領域と同軸線路103の外導体とを、例えば、半田等によって電気的に接続することにより、同軸線路103の外導体110と導体素子104とを短絡させることができる。
【0111】
なお、導体素子104の中央部付近に設けられているランド108は、同軸線路103を基板107に固定するために設けられている。ランド108と同軸線路103と外導体110とを、例えば、半田等によって接着することにより、同軸線路103を基板107に固定することができる。
【0112】
図21は、基板107の上に形成されたダイポールアンテナ101及び導体素子104と、同軸線路103とを接合したアンテナ10の外観例を示す図である。同軸線路103の内導体と外導体は、給電部102において、ダイポールアンテナ101の左側のアンテナ素子と右側のアンテナ素子に夫々接続され、高周波信号がダイポールアンテナ101に給電される。
【0113】
また、同軸線路103の外導体110は、導体素子104の、給電部102から遠い方の端部において導体素子104に短絡され、短絡部105が形成される。この他、
図20に示したランド108と、同軸線路103の外導体110とを半田等で接着することにより、同軸線路103と基板107との接合を強化してもよい。
【0114】
なお、同軸線路103が、外導体110の外周に絶縁保護被膜を有するタイプである場合には、短絡部105における絶縁保護被膜や、ランド108との接合部位における絶縁保護被膜を除去した上で、同軸線路103と基板107とを接合すれば良い。
【0115】
上述した第2の実施形態のアンテナ10によれば、ダイポールアンテナ101と導体素子104とが同一の基板107の上に形成されるため、実装の容易性を高めることができ、製造時間を短縮できる。また、この結果、製造コストを低減することができる。
【0116】
(導体素子付きアンテナのその他の実施形態)
図22は、導体素子付きアンテナのその他の実施形態を例示する図である。
図22(a)は、導体素子104として、ボウタイ形状の素子を用いた実施形態を示す図である。ボウタイ形状の導体素子104は、短絡部105を底辺とし、開放端部106を頂点とする縦長の三角形状に形成されている。ボウタイ形状の導体素子104の長さは、略1/4波長となるように形成されるが、導体素子104が面状形状に形成されることにより、導体素子104の効果を広帯域に亘って及ぼすことが可能となる。
【0117】
例えば、導体素子104の形状を直角三角形とするとき、斜辺の長さをL2、対辺と底辺の長さの和をL1(L1>L2)とすることで、長さL1で規定される下限周波数と、長さL2で規定される上限周波数とで定まる広帯域特性を、導体素子104は実現することができる。
【0118】
図22(b)は、導体素子104をスパイラル形状とした実施形態を示す図である。この実施形態では、導体素子104を線状素子とし、この線状素子を同軸線路103の外周をらせん状に巻き付ける。この実施形態では、導体素子104の外周と線状素子の外周の少なくとも一方は絶縁被膜によって覆われ、短絡部105以外の部位では、互いに絶縁される。
【0119】
この実施形態では、導体素子104の短絡部105から開放端部106までの長さL3を、1/4波長よりも短くすることが可能であり、アンテナ10の小型化を実現することができる。
【0120】
図23は、
図21に示したアンテナ10の導体素子104の変形例を示す図である。この変形例では、導体素子104を、異なる長さの複数の、例えば、3つの導体素子104a、104b、104cで構成している。
【0121】
図23(a)は、3つの導体素子(L字素子)104a、104b、104cを基部で一体化した形状とし、同軸線路103の外導体110と1点で短絡する構造の導体素子104を例示している。一方、
図23(b)は、3つの導体素子(L字素子)104a、104b、104cを、夫々独立に、同軸線路103の外導体110と3点で短絡する構造の導体素子104を例示している。
【0122】
導体素子104の長さが単一の場合は、被検体の体型によっては、最適な長さにならない場合も考えられる。これに対しては、
図23に例示した実施形態では、3つの導体素子(L字素子)の長さを、短、中、長のように異ならせることにより、導体素子(短)104aを痩せ体型の被検体に、導体素子(中)104bを標準体型の被検体に、また、導体素子(長)104cを肥満体型の被検体に、夫々に対応させることができる。
【0123】
図23(a)、(b)に示した実施形態のアンテナ10は、導体素子104が平面構造であることにより容易に実現できるものであり、従来の立体構造のシュペルトップでは実現が難しいと考えられる。
【0124】
図24は、
図22(a)に示した、ボウタイ形状の導体素子104を有するアンテナ10の変形例を示す図である。この変形例では、導体素子104を、概ね相似形状を有しつつ、互いに異なる大きさの複数の、例えば、3つの導体素子104a、104b、104cで構成している。
【0125】
ボウタイ形状の導体素子104は広帯域特性を有するものの、その大きさが単一の場合は、被検体の体型によっては、最適な大きさにならない場合も考えられる。これに対して、
図24に例示した実施形態では、3つのボウタイ形状の導体素子の大きさを、小、中、大のように異ならせることにより、導体素子(小)104aを痩せ体型の被検体に、導体素子(中)104bを標準体型の被検体に、また、導体素子(大)104cを肥満体型の被検体に、夫々に対応させることができる。
【0126】
図24に示した実施形態のアンテナ10も、導体素子104が平面構造であることにより容易に実現できるものであり、従来の立体構造のシュペルトップでは実現が難しいと考えられる。
【0127】
以上説明してきた各実施形態の生体情報モニタ装置1によれば、被検体に負担をかけることなく、被検体の心拍や呼吸などの生体情報を、高い信頼性で安定に検出できる。
【0128】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせ、を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
以上の実施形態に関し、発明の一側面及び選択的な特徴として以下の付記を開示する。
(付記1)
被検体に近接して配設される少なくとも1つのアンテナからなるアンテナ装置と、
高周波信号を生成する信号生成部と、
前記高周波信号を用いて、前記被検体の物理的変位を検出する変位検出部と、
を備え、
前記アンテナは、
前記高周波信号が給電される給電部が中央に設けられたダイポールアンテナと、
前記給電部に前記高周波信号を給電する同軸線路と、
一方の端部が前記同軸線路の外導体に短絡される1/4波長の導体素子と、
を有して構成される、
生体情報モニタ装置。
(付記2)
前記導体素子は、L字形状に形成されてもよい。
(付記3)
前記導体素子は、線状形状の導体により形成されてもよい。
(付記4)
前記導体素子は、帯状形状の導体により形成されてもよい。
(付記5)
前記導体素子は、前記ダイポールアンテナの給電部に近い方の端部が開放され、前記給電部に遠い方の端部が前記外導体に短絡されてもよい。
(付記6)
前記導体素子の開放端部と、前記ダイポールアンテナの給電部との間の距離は、1/4波長よりも短くなるように設定されてもよい。
(付記7)
前記導体素子は、前記同軸線路と略平行になるように配設され、前記導体素子と前記同軸線路との間の間隔は、1/10波長よりも短くなるように設定されてもよい。
(付記8)
前記ダイポールアンテナと、前記導体素子は、同一の基板の上に形成されてもよい。
(付記9)
前記同軸線路の先端部は、前記基板の上に形成された前記ダイポールアンテナの給電部に接続され、前記同軸線路の外導体は、前記基板の上に形成された前記導体素子の所定部位に短絡されてもよい。
(付記10)
前記導体素子の所定部位は、前記ダイポールアンテナの前記給電部から遠い方の端部でもよい。
(付記11)
前記ダイポールアンテナは面状ダイポールアンテナとして構成され、前記面状ダイポールアンテナの導体は、前記高周波信号が給電される給電部から前記面状ダイポールアンテナの両端に向かう所定位置までの領域はメアンダ形状に形成されてもよく、前記所定位置から前記両端までの領域は、ベタ面に形成されてもよい。
(付記12)
前記導体素子は、ボウタイ形状に形成されてもよい。
(付記13)
前記導体素子は、スパイラル形状に形成されてもよい。
(付記14)
前記導体素子は、前記ダイポールアンテナの給電部に近い方の端部が開放され、前記給電部に遠い方の端部が前記外導体に短絡されてもよい。
(付記15)
前記導体素子の開放端部と、前記ダイポールアンテナの給電部との間の距離は、1/4波長よりも短くなるように設定されてもよい。
(付記16)
前記導体素子は、L字形状の長軸部の長さが互いに異なる複数の導体素子を備えて構成されてもよい。
(付記17)
前記導体素子は、ボウタイ形状の大きさが互いに異なる複数の導体素子を備えて構成されてもよい。
(付記18)
上述した夫々の生体情報モニタ装置を具備する、
磁気共鳴イメージング装置。
【符号の説明】
【0129】
1 生体情報モニタ装置
10 アンテナ、送信アンテナ
11 受信アンテナ
20 生体情報モニタ装置本体(本体)
30、30a RF信号発生器
40 送信回路、第1送信回路
40a 第2送信回路
43 方向性結合器
50 結合量検出回路
53 検波回路
60 変位検出回路
70 ダイバーシティ判定回路
100 磁気共鳴イメージング装置
101 ダイポールアンテナ
102 給電部
103 同軸線路
104 導体素子(L字素子)
105 短絡部
106 開放端部
107 基板
109 内導体
110 外導体