(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】蓄電制御システム及び蓄電制御方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/00 20060101AFI20241218BHJP
G01R 31/50 20200101ALI20241218BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
G01R31/00
G01R31/50
H02J7/00 A
H02J7/00 Y
(21)【出願番号】P 2021046499
(22)【出願日】2021-03-19
【審査請求日】2023-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】竹井 英俊
(72)【発明者】
【氏名】上野 敬章
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 正夫
(72)【発明者】
【氏名】植杉 淳司
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-125322(JP,A)
【文献】国際公開第2017/043238(WO,A1)
【文献】特開2015-097461(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0245970(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/00
G01R 31/36-31/396
G01R 31/50-31/74
H02J 7/00
H01M 10/42-10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池ユニットに用いられる蓄電池を構成する電池モジュールの充放電の制御を行う
蓄電制御システムであり、
前記電池モジュールへ又は前記電池モジュールから蓄電エネルギーを充電又は放電する充放電ラインの電圧から第1電圧を検出する第1電圧検出部と、
前記電池モジュールのセル電圧の合計値から第2電圧を検出する第2電圧検出部と、
前記第1電圧と前記第2電圧とを比較して、前記充放電ラインを評価する評価部と
を備え
、
前記評価部は、
前記第1電圧と前記第2電圧との電圧を比較し、前記第1電圧と前記第2電圧との電圧差が所定値より大きい場合には、前記充放電ラインが劣化していると評価する、
蓄電制御システム。
【請求項2】
前記第1電圧検出部は、
前記電池モジュールとの間で前記蓄電エネルギーを充電又は放電するための電力経路における前記充放電ライン中で前記電池モジュールから
より離れた位置で電圧を検出する請求項1に記載の蓄電制御システム。
【請求項3】
前記第2電圧検出部は、電池モジュールのセル電圧を管理するアナログフロントエンド回路で計測されるセル電圧の合計値を演算して電圧を検出する請求項1または2に記載の蓄電制御システム。
【請求項4】
前記評価部は
、前記第1電圧と前記第2電圧との電圧差が所定値より大きい場合には、前記充放電ラインの抵抗値が増大したと判定する請求項1乃至3の何れかに記載の蓄電制御システム。
【請求項5】
蓄電池ユニットに用いられる蓄電池を構成する電池モジュールの充放電の制御を行う
蓄電制御方法であり、
前記電池モジュールへ又は前記電池モジュールから蓄電エネルギーを充電又は放電する充放電ラインの電圧から第1電圧を検出する工程と、
前記電池モジュールのセル電圧の合計値から第2電圧を検出する工程と
を有し、
前記第1電圧と前記第2電圧とを比較して、
前記第1電圧と前記第2電圧との電圧差が所定値より大きい場合には、前記充放電ライン
が劣化
していると評価する
ようにした蓄電制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電制御システム及び蓄電制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅の屋根等にソーラーパネルを設置し、ソーラーパネルが発電した電力を家庭用の電力として利用するような電源システムが普及している。このような電源システムで使用する蓄電ユニットとして、複数のバッテリーセルを直列接続してバッテリースタックを構成し、所望の電圧を得られるようにした構成のものが提案されている(例えば特許文献1)。例えば、リチウムイオン電池のバッテリーセルの電圧は、2V~4V程度である。これに対して、家庭用の電源の電圧は、数百Vである。この場合、バッテリーセルを数十個直列に接続することで、家庭で使用する数百Vの電圧が確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数のバッテリーセルを直列に接続して生成される電圧は数百Vの高電圧であり、パワーコンディショナーから蓄電池ユニットへ、又は蓄電池ユニットからパワーコンディショナーへ電力を充放電する充放電ラインには、高電圧の電流が流れている。このような高電圧が流れる充放電ラインでは、経年劣化等による問題が危惧される。
【0005】
上述の課題を鑑み、本発明は、高電圧が流れる充放電ラインの状態を評価できる蓄電制御システム及び蓄電制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る蓄電制御システムは、蓄電池ユニットに用いられる蓄電池を構成する電池モジュールの充放電の制御を行う蓄電制御システムであり、前記電池モジュールへ又は前記電池モジュールから蓄電エネルギーを充電又は放電する充放電ラインの電圧から第1電圧を検出する第1電圧検出部と、前記電池モジュールのセル電圧の合計値から第2電圧を検出する第2電圧検出部と、前記第1電圧と前記第2電圧とを比較して、前記充放電ラインを評価する評価部とを備え、前記評価部は、前記第1電圧と前記第2電圧との電圧を比較し、前記第1電圧と前記第2電圧との電圧差が所定値より大きい場合には、前記充放電ラインが劣化していると評価する。
【0007】
本発明の一態様に係る蓄電制御方法は、蓄電池ユニットに用いられる蓄電池を構成する電池モジュールの充放電の制御を行う蓄電制御方法であり、前記電池モジュールへ又は前記電池モジュールから蓄電エネルギーを充電又は放電する充放電ラインの電圧から第1電圧を検出する工程と、前記電池モジュールのセル電圧の合計値から第2電圧を検出する工程とを有し、前記第1電圧と前記第2電圧とを比較して、前記第1電圧と前記第2電圧との電圧差が所定値より大きい場合には、前記充放電ラインが劣化していると評価する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、充放電ラインの計測電圧と、セル電圧の計測値の合計値とを比較することにより、充放電ラインの劣化を評価できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る電源システムの概要を示すブロック図である。
【
図2】本発明に係る電源システムで用いられる蓄電池ユニットの概要の説明図である。
【
図3】電池モジュールのコネクタと制御管理モジュールのコネクタとを接続する中継ケーブルの概要の説明図である。
【
図4】電池モジュールのコネクタと制御管理モジュールのコネクタとを接続する中継ケーブルの概要の説明図である。
【
図6】制御管理モジュールの構成を示すブロック図である。
【
図7】BMS基板に配置されるAFE回路素子の概要を示すブロック図である。
【
図8】電池モジュールに対応させてAFE回路素子を配置したときの説明図である。
【
図9】本発明の実施形態にかかる蓄電制御システムの説明図である。
【
図10】本発明の実施形態にかかる蓄電制御システムの説明に用いるフローチャートである。
【
図11】本発明に係る電源システムの他の構成例の概要を示すブロック図である。
【
図12】本発明に係る電源システムの他の構成例の概要を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
<全体システム>
図1は、本発明に係る電源システム10の概要を示すブロック図である。
図1に示すように、本発明の実施形態に係る電源システム10は、パワーコンディショナー1と、ソーラーパネル2と、蓄電池ユニット3とを含んで構成される。
【0011】
パワーコンディショナー1は、直流電源と交流電源との変換、電源電圧の制御、買電及び売電などの処理を行う。すなわち、商用電源5では交流電源を用いているのに対して、太陽光発電や蓄電には直流電源を用いる。また、商用電源5の電圧と、ソーラーパネル2や蓄電池ユニット3で用いるバッテリーの電圧は異なっている。パワーコンディショナー1は、商用電源5、ソーラーパネル2、蓄電池ユニット3との間で、直流電源と交流電源との変換及び電源電圧の制御を行っている。そして、パワーコンディショナー1は分電盤6に電力を供給し、分電盤6は各部屋のコンセントに電力を分配する。
【0012】
ソーラーパネル2は、昼間の太陽が現れる時間には発電を行えるが、夜間、太陽が沈むと発電が行えず、発電量が安定しない。蓄電池ユニット3は、昼間、商用電源5とパワーコンディショナー1を介して系統から充電を行うことが可能であり、ソーラーパネル2とパワーコンディショナー1を介して充電を行うことが可能であり、パワーコンディショナー1を介して電力の供給を補うことも可能である。蓄電池ユニット3は、夜間、商用電源5とパワーコンディショナー1を介して系統から充電を行うことが可能であり、パワーコンディショナー1を介して電力の供給を補うことも可能である。
【0013】
また、パワーコンディショナー1は、電力が不足している場合には、商用電源5から電源を買い取り、ソーラーパネル2による電力が余剰になるときには、商用電源5に電源を売るような、買電及び売電などの処理を行っている。
【0014】
また、電源システム10には、EV(Electric Vehicle)スタンド4を組み込むことができる。EVスタンド4は、電気自動車への充電を行う他、電気自動車に搭載されているバッテリーを利用して、電力を蓄積するのに用いることができる。また、EVスタンド4は、パワーコンディショナー1を介して電力の供給を補うことも可能である。
【0015】
図2は、本発明に係る電源システム10で用いられる蓄電池ユニット3の概要の説明図である。
図2に示すように、蓄電池ユニット3は、例えば7個の電池モジュール11-1~11-7と、制御管理モジュール12とから構成される。電池モジュール11-1~11-7には、複数のバッテリーセルからなるバッテリースタックが設けられている。また、電池モジュール11-1~11-7には、それぞれ、コネクタ13-~13-7及びコネクタ14-1~14-7が備えられている。
【0016】
制御管理モジュール12は、電池モジュール11-1~11-7の充放電状態を管理している。制御管理モジュール12には、コネクタ45-~45-7及びコネクタ56-1~56-7が備えられている。
【0017】
電池モジュール11-1~11-7のコネクタ13-1~13-7と、制御管理モジュール12のコネクタ45-1~45-7とは、
図3に示すような中継ケーブル60-1~60-7により接続される。電池モジュール11-1~11-7のコネクタ14-1~14-7と、制御管理モジュール12のコネクタ56-1~56-7とは、
図4に示すような中継ケーブル70-1~70-7により接続される。
【0018】
図3は、電池モジュール11-1~11-7のコネクタ13-1~13-7と、制御管理モジュール12のコネクタ45-1~45-7とを接続する中継ケーブル60(60-1~60-7)の概要の説明図である。
【0019】
図3に示すように、中継ケーブル60は、電池モジュール11-1~11-7側のコネクタ61(61-1~61-n)と、制御管理モジュール12側のコネクタ62(62-1~62-n)と、その間のケーブル63(63-1~63-n)とからなる。ケーブル63(63-1~63-n)は、正極の配線と負極の配線との2線になる。
【0020】
図4は、電池モジュール11-1~11-7のコネクタ14-1~14-7と、制御管理モジュール12のコネクタ56-1~56-7とを接続する中継ケーブル70(70-1~70-7)の概要の説明図である。
【0021】
図4に示すように、中継ケーブル70(70-1~70-7)は、電池モジュール11-1~11-7側のコネクタ71(71-1~71-7)と、制御管理モジュール12側のコネクタ72(72-1~72-7)と、その間のケーブル73(73-1~73-7)とからなる。ケーブル73(73-1~73-7)は、バッテリースタックを構成するバッテリーセルに応じた数の配線からなる。
【0022】
図5は、電池モジュール11(11-1~11-7)の一例の説明図である。なお、電池モジュール11-1~11-7は、全て、同様に構成されている。
【0023】
図5に示すように、電池モジュール11(11-1~11-7)には、直列接続されたバッテリーセル20-1、20-2、…、20-nからなるバッテリースタックが設けられている。バッテリーセル20-1、20-2、…、20-nとしては、例えば、リン酸鉄リチウムイオン電池が用いられる。リン酸鉄リチウムイオン電池は、リン酸鉄リチウムを正極に使用するもので、電池内部で発熱があっても結晶構造が崩壊しにくく、安全性が高いという特徴がある。1つのバッテリーセル20-1、20-2、…、20-nのセル電圧は、セル構造により異なる。リチウムイオン電池の場合、セル電圧は、2V~4Vである。リン酸鉄リチウムイオン電池では、セル電圧は、例えば3.3V程度である。
【0024】
電池モジュール11(11-1~11-7)には、コネクタ13(13-1~13-7)及びコネクタ14(14-1~14-7)が設けられる。コネクタ13(13-1~13-7)は、電池モジュール11の充放電を行うためのコネクタである。コネクタ14(14-1~14-7)は、バッテリーセル20-1、20-2、…、20-nのセル電圧を監視するためのコネクタである。
【0025】
図6は、制御管理モジュール12の構成を示すブロック図である。
図6に示すように、制御管理モジュール12には、端子台31と、ブレーカ33と、HV(High-Voltage)基板40と、BMS(Battery Management System)基板50とが実装されている。
【0026】
端子台31は、パワーコンディショナー1からの配線を接続するコネクタである。端子台31には、正極端子31aと、負極端子31bと、接地端子31cとが配設されている。この例では、接地端子31cは0電位として筐体に接続している。端子台31の正極端子31a及び負極端子31bから伸びる配線が充放電ライン35a及び35bを形成する。ブレーカ33は、大電流が流れたときの保護用である。
【0027】
通信コネクタ32は、パワーコンディショナー1からの通信用のシールド線を接続するコネクタである。通信コネクタ32は、BMS基板50上の通信コネクタ51と接続される。パワーコンディショナー1からのデータは、通信コネクタ32を介して受信され、マイクロプロセッサ54に送られる。また、マイクロプロセッサ54からのデータが通信コネクタ32を介してパワーコンディショナー1に送られる。
【0028】
HV基板40は、電池モジュール11-1~11-7の充放電を行うための基板である。HV基板40には、リレー41と、電流センサ42と、通信コネクタ43と、コネクタ45-1~45-7と、通信コネクタ46とが実装されている。
【0029】
リレー41は、蓄電池ユニット3の動作を開始/停止させるスイッチとなる。電流センサ42は、電池モジュール11-1~11-7への充放電電流を検出している。通信コネクタ43は、BMS基板50上の通信コネクタ52と接続される。通信コネクタ43は、例えば電流センサ42の検出電流をマイクロプロセッサ54に送信している。
【0030】
コネクタ45-1~45-7は、それぞれ、電池モジュール11-1~11-7側のコネクタ13-1~13-7と接続する端子である。電池モジュール11-1~11-7側のコネクタ13-1~13-7は充放電用のコネクタであり、コネクタ13-1~13-7からは、バッテリースタックを構成するバッテリーセル20-1、20-2、…、20-nの両端からの配線が導出されている。コネクタ45-1~45-7は直列接続して、所望の充放電電圧が得られるようにしている。
【0031】
通信コネクタ46は、充放電ライン35a及び35bの電圧検出用の端子である。
【0032】
BMS基板50は、電池モジュール11-1~11-7の状態を監視及び制御するための基板である。BMS基板50には、通信コネクタ51及び52、AFE(Analog Front End)53、マイクロプロセッサ54、フォトカップラ55、コネクタ56-1~56-7、通信コネクタ57、A/Dコンバータ58、光絶縁素子であるフォトカプラ59が実装されている。光絶縁素子としては、フォトカプラやディジタルアイソレータ等の素子である。
【0033】
通信コネクタ51は、通信コネクタ32と接続され、パワーコンディショナー1との間でデータの送受を行う。通信コネクタ52は、通信コネクタ43と接続され、HV基板40との間でデータの送受を行う。
【0034】
AFE53は、電池モジュール11-1~11-7のそれぞれのセル電圧を検出し、ディジタルデータに変換する。
【0035】
マイクロプロセッサ54は、パワーコンディショナー1からのデータ、HV基板40からのデータ、AFE53からのデータ等を基に、各種の制御を行う。
【0036】
フォトカップラ55は、AFE53とマイクロプロセッサ54との間を接続する。AFE53には高電圧が印加されるので、AFE53とマイクロプロセッサ54との間は、フォトカップラ55でアイソレーションを行っている。
【0037】
コネクタ56-1~56-7は、それぞれ、電池モジュール11-1~11-7側のコネクタ14-1~14-7と接続する端子である。コネクタ14(14-1~14-7)は、バッテリーセル20-1、20-2、…、20-nのセル電圧を監視するためのコネクタである。コネクタ56-1~56-7は、それぞれ、電池モジュール11-1~11-7のセル電圧をBMS基板50側に伝達している。
【0038】
通信コネクタ57は、HV基板40の通信コネクタ46と接続される。通信コネクタ57には、充放電ライン35a及び35bの電圧が供給される。
【0039】
A/Dコンバータ58は、HV基板40の充放電ライン35a及び35b間の電圧をディジタルデータに変換し、アイソレーション用のフォトカプラ59を介して、マイクロプロセッサ54に送信する。
【0040】
図7は、BMS基板50に配置されるAFE回路素子530の概要を示すブロック図である。本実施形態では、電池モジュール11-1~11-7に対応させた数だけ、
図7に示すようなAFE回路素子530を配置して、AFE53の機能を実現している。なお、ここでは、AFE回路素子530の機能の中で、本発明の説明に必要な部分に限定して説明する。
【0041】
図7において、端子A1、A2、…、Am(mは任意の整数)は、バッテリースタックのセル電圧を検出するための測定端子である。バッテリースタックのセル電圧を検出する場合、端子A1から端子Amの順に、最も高い電位の電極から最も電位の低い電極となるように、バッテリーセルを接続する。
【0042】
端子A1、A2、…、Amの段間の抵抗Ra及びスイッチ回路Saは、バッテリーセルをバランスさせるためのものである。すなわち、スイッチ回路Saをオンすると、バッテリーセルの両極が抵抗Raを介して接続され、バッテリーセル内のエネルギーがジュール熱により消費される。これにより、バッテリーセルの中で充電量が多いセルのエネルギーを消費させ、各バッテリーセルの充電量を均一化することができる。
【0043】
端子D1及び端子D2は、データの入出力の端子である。AFE53とマイクロプロセッサ54との間は、端子D1及び端子D2を通じて、データが入出力される。
【0044】
図8は、電池モジュール11-1~11-7に対応させて、AFE回路素子530-1~530-7を配置したときの説明図である。
【0045】
図5に示したように、電池モジュール11-1~11-7には、バッテリーセル20-1、20-2、…、20-nからなるバッテリースタックが設けられている。各バッテリーセル20-1、20-2、…、20-nの両端及び段間は、それぞれ、AFE回路素子530-1~530-7の端子A1、A2、…、Amに接続される。また、各AFE回路素子530-1~530-7は直列に接続される。
【0046】
図8に示した構成により、各電池モジュール11-1~11-7のバッテリースタックを構成するバッテリーセルのセル電圧は、AFE回路素子530-1~530-7により検出される。そして、各電池モジュール11-1~11-7のバッテリースタックを構成するバッテリーセルのセル電圧は、AFE回路素子530-1~530-7によりディジタル値に変換され、フォトカップラ55を介して、マイクロプロセッサ54に送られる。
【0047】
<実施形態>
本発明の実施形態にかかる蓄電制御システムは、上述のように構成される蓄電池ユニット3における充放電ライン35a及び35bの劣化を判定するのに用いられる。
【0048】
図9は、本発明の実施形態にかかる蓄電制御システムの説明図である。
図9に示すように、本発明の実施形態にかかる蓄電制御システムでは、充放電ライン35a及び35bの計測電圧は、通信コネクタ46、通信コネクタ57を介して、HV基板30からBMS基板40側に送られる。これは、充放電ライン35a及び35bの電圧を検出することで、充放電ライン35a及び35bの劣化を判定するためである。なお、通信コネクタ46は、充放電ライン35a及び35bの中で、電池モジュール11-1~11-7から離れた側からの配線の電圧が検出できるように導出することが望ましい。
【0049】
充放電ライン35a及び35bの計測電圧Vdetは、充放電ライン35a及び35bに抵抗成分がないとすると、直列接続した電池モジュール11-1~11-7の電圧と等しくなる。
【0050】
VdetV1+V2+…+V7 … (1)
【0051】
ところが、充放電ライン35a、35bと、コネクタ45-1から45-7と、コネクタ60-1から60-7と、コネクタ13-1から13-7とが劣化すると、
図9に示すように、抵抗成分Rda及びRdbが発生する。これにより、充放電ライン35a及び35bの計測電圧Vdetは、以下のようになる。
【0052】
Vdet=VL=V1+V2+…+V7±Ve … (2)
【0053】
ここで、電圧Veは、抵抗成分Rda及び抵抗成分Rdbの両端に発生する電圧による変動成分である。抵抗成分Rda及びRdbの両端に発生する電圧は、充放電ライン35a及び35bを流れる電流をIとすると、(I×Ra)及び(I×Rb)となる。充放電ライン35a及び35bと、コネクタ45-1から45-7と、コネクタ60-1から60-7と、コネクタ13-1から13-7とには、充放電電流が流れることから、電流Iは大きく、これに伴い、抵抗成分Rda及びRdbによる変動成分の電圧Veは大きくなる。
【0054】
一方、
図8に示すように、各電池モジュール11-1~11-7の電圧V1~V7は、各電池モジュール11-1のバッテリーセル20-1~20-nのセル電圧の加算値となる。すなわち、各電池モジュール11-1のバッテリーセル20-1~20-nのセル電圧をVcl_1~Vcn_1、Vcl_2~Vcn_2、…、Vcl_7~Vcn_7とすると、各電池モジュール11-1~11-7の電圧V1~V7は、以下のようになる。
【0055】
V1=Vc1_1+Vc2_1+…+Vcn_1
V2=Vc1_2+Vc2_2+…+Vcn_2
…
V7=Vc1_7+Vc2_7+…+Vcn_7 … (3)
【0056】
各電池モジュール11-1~11-7のバッテリーセル20-1~20-nのセル電圧の計測値の合計値Vtotalは、以下のようになる。
【0057】
Vtotal=(Vc1_1+Vc2_1+…+Vcn_1)+Vc1_2+Vc2_2+…+Vcn_2)+…+(Vc1_7+Vc2_7+…+Vcn_7)
=V1+V2+…+V7 … (4)
【0058】
なお、電池モジュール11-1~11-7からAFE53までの経路に流れる電流は僅かであるから、その経路の抵抗成分で発生する電圧は無視できる。
【0059】
(2)で示した、充放電ライン35a及び35bと、コネクタ45-1から45-7と、コネクタ60-1から60-7と、コネクタ13-1から13-7とにおける計測電圧Vdetと、(4)式で示した各電池モジュール11-1~11-7のバッテリーセル20-1~20-nのセル電圧の計測値の合計値Vtotalとを比較すると、以下のようになる。
【0060】
Vdet-Vtotal
=(V1+V2+…+V7±Ve)-(V1+V2+…+V7)
=±Ve … (5)
【0061】
上式で示すように、通信コネクタ46から通信コネクタ57を介して送られ、A/Dコンバータ58(第1電圧検出部)でディジタルデータに変換された、充放電ライン35a及び35bと、コネクタ45-1から45-7と、コネクタ60-1から60-7と、コネクタ13-1から13-7とにおける計測電圧Vdet(第1検出電圧)と、AFE回路素子530-1~530-7(第2電圧検出部)から取得され、マイクロプロセッサ54で求められた各電池モジュール11-1~11-7のバッテリーセル20-1~20-nのセル電圧の計測値の合計値Vtotal(第2検出電圧)との差電圧(Vdet-Vtotal)により、抵抗成分Rda及び抵抗成分Rdbの両端に発生する変動成分の電圧±Veを取得できる。充放電ライン35a及び35bと、コネクタ45-1から45-7と、コネクタ60-1から60-7と、コネクタ13-1から13-7との劣化が進むと、抵抗成分Rda及び抵抗成分Rdbが大きくなり、変動成分の電圧±Veが大きくなる。このことから、マイクロプロセッサ34(評価部)は、充放電ライン35a及び35bの計測電圧Vdetと、各電池モジュール11-1~11-7のバッテリーセル20-1~20-nのセル電圧の計測値の合計値Vtotalとの差電圧を比較することで、充放電ライン35a及び35bと、コネクタ45-1から45-7と、コネクタ60-1から60-7と、コネクタ13-1から13-7との劣化を評価できる。
【0062】
なお、上述の例では、送られる充放電ライン35a及び35bと、コネクタ45-1から45-7と、コネクタ60-1から60-7と、コネクタ13-1から13-7とにおける計測電圧Vdetは、通信コネクタ46から、通信コネクタ57を介して、A/Dコンバータ58でディジタルデータに変換してマイクロプロセッサ54に送っているが、充放電ライン35a及び35bと、コネクタ45-1から45-7と、コネクタ60-1から60-7と、コネクタ13-1から13-7とにおける計測電圧VdetをAFE53では、ディジタルデータに変換してマイクロプロセッサ54に送るようにしても良い。
【0063】
図10は、本発明の実施形態にかかる蓄電制御システムの説明に用いるフローチャートである。
【0064】
(ステップS101)マイクロプロセッサ54は、充放電ライン35a及び35bの計測電圧Vdetを取得する。
【0065】
(ステップS102)マイクロプロセッサ54は、電池モジュール11-1~11-7のバッテリーセル20-1~20-nのセル電圧の計測値の合計値Vtotalを算出する。
【0066】
(ステップS103)マイクロプロセッサ54は、充放電ライン35a及び35bの計測電圧Vdetと、各電池モジュール11-1~11-7のバッテリーセル20-1~20-nのセル電圧の計測値の合計値Vtotalとの差電圧を算出する。
【0067】
(ステップS104)マイクロプロセッサ54は、計測電圧Vdetと合計値Vtotalとの差電圧が所定値Vthより大きいか否かを判定する。マイクロプロセッサ54は、計測電圧Vdetと合計値Vtotalとの差電圧が所定値Vthより小さければ(ステップS104:No)、処理を終了し、計測電圧Vdetと合計値Vtotalとの差電圧が所定値Vthより大きければ(ステップS104:Yes)、処理をステップS105に進める。
【0068】
(ステップS105)マイクロプロセッサ54は、充放電ライン35a及び35bと、コネクタ45-1から45-7と、コネクタ60-1から60-7と、コネクタ13-1から13-7との充放電の経路が劣化していると判定して、警告を出力する。
【0069】
以上説明したように、本実施形態では、充放電ライン35a及び35bと、コネクタ45-1から45-7と、コネクタ60-1から60-7と、コネクタ13-1から13-7とにおける計測電圧Vdetと、各電池モジュール11-1~11-7のバッテリーセル20-1~20-nのセル電圧の計測値の合計値Vtotalとを比較することにより、充放電ライン35a及び35bと、コネクタ45-1から45-7と、コネクタ60-1から60-7と、コネクタ13-1から13-7との充放電の経路における劣化を評価できる。
【0070】
上述した実施形態における電源システム10の全部または一部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0071】
また、上述した実施形態において、電源システムを
図11に示す構成としてもよい。
図11は、本発明に係る電源システムの他の構成例の概要を示すブロック図である。
図11の電源システム10Aにおいて、ソーラーパネル2、蓄電池ユニット3及びEVスタンド4の各々は、パワーコンディショナー1A、1B、1Cのそれぞれに独立して接続されている。
図11において、パワーコンディショナー1A、1B及び1Cの各々は、分電盤6を介して、ソーラーパネル2、蓄電池ユニット3、EVスタンド4のそれぞれの間における電力(電気エネルギー)の供給または需給を行っている。
図11における、蓄電池ユニット3の構成及び動作については、すでに説明した本実施形態における蓄電池ユニット3と同様である。
【0072】
また、上述した実施形態において、電源システムを
図12に示す構成としてもよい。
図12は、本発明に係る電源システムの他の構成例の概要を示すブロック図である。
図12の電源システム10Bにおいて、ソーラーパネル2及び蓄電池ユニット3の各々はパワーコンディショナー1Dに接続され、EVスタンド4は、パワーコンディショナー1Cに接続されている。
図12において、パワーコンディショナー1C及び1Dの各々は、分電盤6を介して、ソーラーパネル2、蓄電池ユニット3、EVスタンド4のそれぞれの間における電力(電気エネルギー)の供給または需給を行っている。
図12における、蓄電池ユニット3の構成及び動作については、すでに説明した本実施形態における蓄電池ユニット3と同様である。
【0073】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0074】
1…パワーコンディショナー、2…ソーラーパネル、3…蓄電池ユニット、11(11-1~11-7)…電池モジュール、12…制御管理モジュール、35a,35b…充放電ライン、40…HV基板、50…BMS基板、53…AFE、54…マイクロプロセッサ、530-1~530-7…AFE回路素子