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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】医療用容器
(51)【国際特許分類】
   A61J 1/18 20230101AFI20241218BHJP
   A61J 1/05 20060101ALI20241218BHJP
   B65D 81/24 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
A61J1/18
A61J1/05 315B
A61J1/05 315A
B65D81/24 A
B65D81/24 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021052480
(22)【出願日】2021-03-25
(65)【公開番号】P2022150064
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2023-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003111
【氏名又は名称】あいそう弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】石川 貴史
【審査官】村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-149036(JP,A)
【文献】特開2018-149037(JP,A)
【文献】特開2019-042468(JP,A)
【文献】特開2018-138083(JP,A)
【文献】特開2011-078810(JP,A)
【文献】特開2018-134315(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/18
A61J 1/05
B65D 81/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体と、前記容器本体内に収容された医療用液体と、前記容器本体に設けられ、医療用具が穿刺可能なポート部とを有する医療用容器であって、
前記ポート部は、上面が第1の色を有するゴム製の弾性変形性シール部材と、前記弾性変形性シール部材の上面に剥離不能に固着された塑性変形性シートとを備え、
前記塑性変形性シートは、前記弾性変形性シール部材の前記第1の色と異なる色相または異なる色調を有する第2の色を有し、かつ、前記塑性変形性シートは、前記医療用具の穿刺により、穿刺痕が形成され、かつ、前記穿刺痕において、前記弾性変形性シール部材の前記上面の前記第1の色を直接視認可能であり、
前記ポート部は、前記容器本体に設けられた管状開口部と、前記弾性変形性シール部材を収納し、かつ前記管状開口部に固着されたキャップとを備え、前記塑性変形性シートは、ゴム製の前記弾性変形性シール部材を周方向から圧縮しながらラミネートされており、前記塑性変形性シートには前記弾性変形性シール部材を形成するゴムの反発力によるテンションが付けられていることを特徴とする医療用容器。
【請求項2】
前記塑性変形性シートは、前記キャップと接触しておらず、かつ、前記塑性変形性シートの外縁の外側にて、前記弾性変形性シール部材が環状に露出し、露出部分にて、前記弾性変形性シール部材の色を視認可能である請求項1に記載の医療用容器。
【請求項3】
前記塑性変形性シートは、透明性を有し、前記塑性変形性シートを介して、前記弾性変形性シール部材の上面を視認可能である請求項1または2に記載の医療用容器。
【請求項4】
前記塑性変形性シートは、透明性を有し、前記弾性変形性シール部材の前記第1の色は、前記弾性変形性シール部材の上面に前記塑性変形性シートが積層された状態における第3の色の色相または色調と相違する請求項1からのいずれかに記載の医療用容器。
【請求項5】
前記弾性変形性シール部材の前記第1の色および前記塑性変形性シートの前記第2の色の一方は、白色系または青色系であり、他方は、赤色系または黄色系である請求項1からのいずれかに記載の医療用容器。
【請求項6】
前記弾性変形性シール部材の前記第1の色は、明度が3以上で、彩度が1以下の白色もしくは灰色系であり、前記塑性変形性シートの前記第2の色は、赤色系、青色系、緑色系、黄色系のいずれかである請求項1からのいずれかに記載の医療用容器。
【請求項7】
前記ポート部は、医療用液体排出ポートである請求項1からのいずれかに記載の医療用容器。
【請求項8】
前記ポート部は、混注用ポートである請求項1からのいずれかに記載の医療用容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポートとポートに剥離可能に固着されたシートを備え、内部に医療用液体が収納された医療用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
薬液容器や輸液容器等の医療用容器は、収納している液体の排出、容器内への薬剤の混注などのためにポートを備えている。ポートには、弾性材料(ゴム材、エラストマー材)からなり、医療用具(例えば、輸液セットの接続針、注射針)の穿刺が可能な栓体が収納されている。また、ポートには、内側に栓体を保持するキャップを備えるものが一般的である。さらに、ポートには、栓体の上面を覆うように保護シートが剥離可能に固着されているものがある。この保護シートは、栓体の使用前の汚染防止、使用済みかどうかの確認指標として機能する。このような剥離可能なシートを備えるものとしては、特許第5122878号公報(特許文献1)、実公平3-24186号公報(特許文献2)が提案されており、また、本願出願人は、特開2018-134315号公報(特許文献3)、特開2018-138083号公報(特許文献4)を提案している。また、特許2582134号公報(特許文献5)、特開2011-78810号公報(特許文献6)には、剥離不能なプラスチックフィルムのラミネート膜が密着結合されたものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5122878号公報
【文献】実公平3-24186号公報
【文献】特開2018-134315号公報
【文献】特開2018-138083号公報
【文献】特許2582134号公報
【文献】特開2011-78810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
最近、複数の病院で発生した輸液剤への異物混入による被害が報道等で報告されている。これは、保護シート上から針で穿刺し、医療用容器内に異物を混入した犯行とされている。
保護シートが貼付されている輸液剤では、輸液剤の保護シートが剥離されていない状態では、未使用であると医療従事者は考える。このため、投与時に、保護シートへの針刺しの有無の確認、保護シート剥離後の栓体への針刺しの有無の確認は、行われていない。また、上記の保護シートへの針刺しの有無の確認自体も容易ではない。投与時に、医療従事者が、混注の事実に気付くことは困難である。この点において、特許文献3および特許文献4のものは、医療従事者が、混注の事実に気付くことは容易であり、有効である。しかし、保護シートが貼付されていない輸液剤もあり、保護シートが貼付されていない状態の輸液剤は、慎重な確認が必要となっている。
また、特許文献4のものでは、プラスチックフィルムのラミネート膜が密着結合されており、剥離に不能である。しかし、特許文献4のものでは、異物混入の可能性についての視認は必ずしも容易なものではなかった。
また、輸液容器では、患者への投与前に他の薬剤を注入する作業が行われることがある。このため、輸液容器の排出ポートには、複数回の穿刺が行われることがある。複数回の穿刺が行われる場合、同じ部位の複数回穿刺すると液漏れを生じる可能性がある。
本願発明の目的は、ポートの弾性部材の上面に剥離不能に固着されたシートに医療用具が穿刺された場合、その確認が容易であり、混注された可能性があることを確実に認識すること、また、正規の混注の場合においては、同じ部位へ医療用具の穿刺を避けることができる医療用容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
(1) 容器本体と、前記容器本体内に収容された医療用液体と、前記容器本体に設けられ、医療用具が穿刺可能なポート部とを有する医療用容器であって、
前記ポート部は、上面が第1の色を有するゴム製の弾性変形性シール部材と、前記弾性変形性シール部材の上面に剥離不能に固着された塑性変形性シートとを備え、
前記塑性変形性シートは、前記弾性変形性シール部材の前記第1の色と異なる色相または異なる色調を有する第2の色を有し、かつ、前記塑性変形性シートは、前記医療用具の穿刺により、穿刺痕が形成され、かつ、前記穿刺痕において、前記弾性変形性シール部材の前記上面の前記第1の色を直接視認可能であり、
前記ポート部は、前記容器本体に設けられた管状開口部と、前記弾性変形性シール部材を収納し、かつ前記管状開口部に固着されたキャップとを備え、前記塑性変形性シートは、ゴム製の前記弾性変形性シール部材を周方向から圧縮しながらラミネートされており、前記塑性変形性シートには前記弾性変形性シール部材を形成するゴムの反発力によるテンションが付けられている医療用容器。
(2) 前記塑性変形性シートは、前記キャップと接触しておらず、かつ、前記塑性変形性シートの外縁の外側にて、前記弾性変形性シール部材が環状に露出し、露出部分にて、前記弾性変形性シール部材の色を視認可能である上記(1)に記載の医療用容器。
【0006】
) 前記塑性変形性シートは、透明性を有し、前記塑性変形性シートを介して、前記弾性変形性シール部材の上面を視認可能である上記(1)または(2)に記載の医療用容器。
) 前記塑性変形性シートは、透明性を有し、前記弾性変形性シール部材の前記第1の色は、前記弾性変形性シール部材の上面に前記塑性変形性シートが積層された状態における第3の色の色相または色調と相違する上記(1)から()のいずれかに記載の医療用容器。
) 前記弾性変形性シール部材の前記第1の色および前記塑性変形性シートの前記第2の色の一方は、白色系または青色系であり、他方は、赤色系または黄色系である上記(1)から()のいずれかに記載の医療用容器。
) 前記弾性変形性シール部材の前記第1の色は、明度が3以上で、彩度が1以下の白色もしくは灰色系であり、前記塑性変形性シートの前記第2の色は、赤色系、青色系、緑色系、黄色系のいずれかである上記(1)から()のいずれかに記載の医療用容器。
) 前記ポート部は、医療用液体排出ポートである上記(1)から()のいずれかに記載の医療用容器。
) 前記ポート部は、混注用ポートである上記(1)から()のいずれかに記載の医療用容器。
【発明の効果】
【0007】
本発明の医療用容器は、容器本体と、容器本体内に収容された医療用液体と、容器本体に設けられ、医療用具が穿刺可能なポート部とを有する。ポート部は、上面が第1の色を有する弾性変形性シール部材と、弾性変形性シール部材の上面に剥離不能に固着された塑性変形性シートとを備える。塑性変形性シートは、弾性変形性シール部材の第1の色と異なる色相または異なる色調を有する第2の色を有し、かつ、塑性変形性シートは、医療用具の穿刺により、穿刺痕が形成され、かつ、穿刺痕において、弾性変形性シール部材の上面の第1の色を直接視認可能となっている。
【0008】
このため、弾性変形性シール部材の上面の色が穿刺痕において露出すること、さらに、露出した弾性変形性シール部材の上面の色と、その周縁部における塑性変形性シート部分の色との相違により、塑性変形性シートにおける穿刺痕を確実に視認することができ、混注された可能性があることの認識、また、正規の混注の場合においては、同じ部位へ医療用具の穿刺を回避可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の医療用容器の一実施例の正面図である。
図2図2は、図1に示した医療用容器の平面図である。
図3図3は、図1に示した医療用容器の底面図である。
図4図4は、図1のA-A線断面図である。
図5図5は、図4に示した医療用容器のポート部の拡大図である。
図6図6は、図1に示した医療用容器のポート部の拡大平面図である。
図7図7は、図5の医療用容器のポート部の有色透明塑性変形性シート付近における拡大図である。
図8図8は、図1に示した医療用容器の作用を説明するための説明図である。
図9図9は、本発明の他の実施例の医療用容器の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の医療用容器を図面に示す実施例を用いて説明する。
本発明の医療用容器1は、容器本体2と、容器本体2内に収容された医療用液体と、容器本体2に設けられ、医療用具が穿刺可能なポート部3とを有する。ポート部3は、上面が第1の色を有する弾性変形性シール部材6と、弾性変形性シール部材6の上面に剥離不能に固着された塑性変形性シート8とを備える。塑性変形性シート8は、弾性変形性シール部材6の第1の色と異なる色相または異なる色調を有する第2の色を有し、かつ、塑性変形性シート8は、医療用具の穿刺により、穿刺痕83が形成され、かつ、穿刺痕83において、弾性変形性シール部材6の上面の第1の色を直接視認可能となっている。
【0011】
この実施例の医療用容器1は、本体部20と管状開口部21を一体に有する容器本体2を備え、ポート部3は、穿刺部材の穿刺が可能な排出ポート部3であり、さらに、医療用容器1は、容器本体2内に充填された薬剤7を備えている。
容器本体2は、図1ないし図4に示すように、上端に開口を有するほぼ円筒状の管状開口部21と、管状開口部21と連続し、かつ下方に延びる扁平筒状上部22と、筒状上部22と連続し、かつ下方に延びる扁平筒状胴部23と、筒状胴部23と連続し、かつ下方に延びる扁平筒状下部24とを備える。
【0012】
管状開口部21は、ほぼ同一内径にて所定長延びる筒状部である。この実施例では、管状開口部21は、後述する封止部材と共同して、ポート部3を構成する。また、容器本体2は、閉塞した下面部28を有しており、この下面部28には、下方に突出する突出部29が形成されている。突出部29は、吊下用部材4の装着保持部として機能する。この実施例の吊下用部材4では、折り曲げることにより、医療用容器の吊下が可能となる。
【0013】
そして、この実施例の容器本体2は、扁平筒状上部22の長軸側の両端部に設けられた2つの上部側部27a,27bを備えている。2つの上部側部27a,27bは、管状開口部21に向かって急激に近接するものとなっている。また、上部側部27a,27bは、外方に向かって略円弧状に突出する湾曲部となっている。
さらに、容器本体2は、筒状上部22の長軸側(長軸を挟んで対向する)の正面および裏面にそれぞれ設けられた上部中央部22a、22bを備え、上部中央部は、上端から下端に向かって肉厚が徐々に薄くなっている。
【0014】
また、容器本体2は、扁平筒状上部22の下端と連続し、かつ下方に延びる扁平筒状胴部23を備える。また、扁平筒状胴部23は、上部側部27a,27bの下端と連続し、下方にのびる2つの胴部側部26a,26bを備えている。胴部側部26a,26bは、外方に向かって略円弧状に突出する湾曲部となっている。
【0015】
また、容器本体2は、扁平筒状胴部23の下端と連続し、かつ下方に延びる扁平筒状下部24を備える。また、扁平筒状下部24は扁平筒状下部24の長軸の両端に設けられた2つの下部側部25a,25bと連続し、下部側部25a,25bは胴部側部26a,26bの下端と連続し、閉塞した下面部28まで延びるものとなっている。扁平筒状下部24は、図4に示すように、下方(下面部28)に向かって幅が減少するとともに、厚さも徐々に薄くなるように形成されている。
【0016】
容器本体2は、熱可塑性樹脂により形成されている。容器本体2の形成材料である熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレンコポリマー、ポリプロピレンとポリエチレンもしくはポリブテンの混合物)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリアミド、ポリ塩化ビニリデン、 ポリフッ化ビニリデンなど等が挙げられる。この中でも、耐熱性に優れたポリプロピレン系樹脂が最も好ましい。
【0017】
容器本体2の内容積としては、50~1600mlが好ましく、突出部29の直径は2~5mm程度が好ましい。また、容器本体2の本体部20の厚さは、0.1~0.5mmが好ましく、容器本体2の本体部20の幅は、60~150mm、容器本体2の本体部20の長さは110~250mmであることが好ましい。
【0018】
次に、ポート部3について、説明する。
この実施例の医療用容器1では、ポート部3は、排出ポート部である。
ポート部3は、上述した容器本体2の管状開口部21と、これに固着された封止部材により構成されている。
封止部材は、図4ないし図6に示すように、管状開口部21の封止部材固着部(環状平坦部)75に固着された熱可塑性樹脂製のキャップ(環状キャップ)5と、キャップ(環状キャップ)5に装着され、かつ穿刺部材の穿刺が可能な弾性変形性シール部材6とからなる。
【0019】
弾性変形性シール部材6は、穿刺部材(例えば、薬液排出用針管)の穿刺が可能なものが用いられており、さらに、穿刺部材の抜去後に刺通部がシールされるものとなっている。
弾性変形性シール部材6は、弾性材料により形成されている。弾性変形性シール部材6の形成材料としては、シリコーンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、天然ゴム等の各種ゴム類、ポリウレタン、ポリアミドエラストマー、ポリブタジエン、軟質塩化ビニル等の各種樹脂が用いられる。
【0020】
そして、弾性変形性シール部材6の上面には、図5ないし図8に示すように、剥離不能に固着された塑性変形性シート8が設けられている。塑性変形性シート8は、弾性変形性を持たず、医療用具(輸液用接続針、注射針など)が穿刺されると、図8に示すように、貫通孔が形成され、穿刺された医療用具が抜去されると、貫通孔は復元せず、穿刺痕83となる。そして、穿刺痕83において、弾性変形性シール部材6の上面の一部が露出するため、穿刺痕83部分にて、弾性変形性シール部材6の第1の色を直接視認可能である。そして、穿刺痕が、通常の穿刺部位ではない場合、異物混入の可能性があることを認識できる。また、穿刺痕が、正規の混注の場合においては、同じ部位へ医療用具の穿刺を避けることができる。
【0021】
そして、塑性変形性シート8は、弾性変形性シール部材6の上面に剥離不能に固着されている。このため、穿刺された医療用具が抜去されても、塑性変形性シート8は、医療用具とともに、弾性変形性シール部材6の上面より離脱することはない。したがって、穿刺痕83は確実に、弾性変形性シール部材6の上面上に残る。
【0022】
塑性変形性シート8の形成材料としては、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレンコポリマー、ポリプロピレンとポリエチレンもしくはポリブテンの混合物)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリアミド、ポリ塩化ビニリデン、 ポリフッ化ビニリデン、ポリアミド、ポリブタジエン、塩化ビニル等など等が挙げられる。好ましくは、弾性変形性シール部材6の形成材料と熱接着性を有するものが好ましい。また、塑性変形性シート8は、弾性変形性シール部材6の上面にラミネートすることにより形成してもよい。
塑性変形性シート8としては、穿刺跡が大きくなるようなものであることが好ましい。例えば、ゴム栓を周方向から圧縮しながらラミネートしたものは、ゴムの反発力により、塑性変形性シート8にテンションが付けられているので、刺通後穿刺跡が広がりやすい。塑性変形性シート8の厚さとしては、20~150μmが好ましく、特に、30~100μmが好ましい。塑性変形性シート8の曲げ弾性は、100~500MPaが好ましい。
【0023】
そして、弾性変形性シール部材6は、少なくとも上面が第1の色を有するものとなっている。また、塑性変形性シート8は、弾性変形性シール部材6の第1の色と異なる色相または異なる色調を有する第2の色を有している。さらに、塑性変形性シート8は、医療用具の穿刺により、穿刺痕83が形成され、かつ、穿刺痕において、弾性変形性シール部材6の上面の第1の色を直接視認可能となっている。
ここでいう異なる色相とは色違いを指し、異なる色調とは明度または/および彩度が異なること、色の調子の違いをいう。
【0024】
また、この実施例の医療用容器1では、塑性変形性シート8は、透明性を有し、塑性変形性シート8を介して、弾性変形性シール部材6の上面(上面の形態)を視認可能である。
さらに、この実施例の医療用容器1では、塑性変形性シート8は、透明性を有し、弾性変形性シール部材の第1の色は、弾性変形性シール部材の上面に塑性変形性シートが積層された状態における第3の色(混合色)の色相または色調と相違するものとなっている。このため、穿刺痕における第1の色との識別が容易であり、穿刺痕を確実に認識できる。塑性変形性シート8の透明性は、完全透明ではなく、ヘイズ値が、20~80%であることが好ましく、特に、30~60%が好ましい。
【0025】
弾性変形性シール部材6の第1の色および塑性変形性シート8の第2の色の組み合わせ(色相または色調が異なる組み合わせ)としては、第1の色が第2の色に対し膨張色となっていることが好ましい。特には、第1の色が膨張色であり、第2の色が収縮色であることが好ましい。なお、膨張色とは、一般的に、実態より大きく見える感じの色をいい、収縮色は、逆に、実態より小さく見える感じの色をいう。
また、弾性変形性シール部材6の第1の色および塑性変形性シート8の第2の色の組み合わせ(色相または色調が異なる組み合わせ)としては、弾性変形性シール部材の第1の色を濃い目のもの(濃色系)とし、塑性変形性シートの第2の色を薄目の色(淡色系)とすることが好ましい。この場合、穿刺痕は、例えば白や淡いグレーといった薄い地色(淡色系)に、赤等の濃い目の色(濃色系)が出現するものとなり、変化を把握しやすく穿刺痕の視認が容易である。
また、上述した第1の色および上記第3の色(混合色)の組み合わせとしては、一方が、白色系または青色系であり、他方が、赤色系または黄色系であるパターンも好ましい。また、弾性変形性シール部材の第1の色は、明度が3以上で、彩度が1以下の白色もしくは灰色系であり、塑性変形性シートの第2の色は、赤色系、青色系、緑色系、黄色系のいずれかであるものも好ましい。
いずれにしろ、弾性変形性シール部材6の第1の色および塑性変形性シート8の第2の色ともに、黒色でないことが好ましい。
【0026】
そして、この実施例の医療用容器1では、弾性変形性シール部材6は、図4図5に示すように、略円柱状のシール部材本体61と、シール部材本体61の側面を被包するように設けられた側部(環状側部)62と、シール部材本体61および側部(環状側部)62の中央部を連結する連結部(環状連結部)64とを備えている。このため、弾性変形性シール部材6は、連結部(環状連結部)64の上面、側部(環状側部)62の上部62aとシール部材本体61の上部により形成された凹部(環状凹部)を備えている。また、弾性変形性シール部材6は、図5に示すように、連結部(環状連結部)64の下面、側部(環状側部)62の下部62bとシール部材本体61の下部により形成された凹部(環状凹部)を備えている。
【0027】
シール部材本体61は、ほぼ円柱状に形成されており、図4および図5に示すように、上面に穿刺の指標と成る凹部66a,66b,66cを備えている。そして、この実施例の医療用容器1では、塑性変形性シート8は、透明性を有し、塑性変形性シート8を介して、弾性変形性シール部材の上面に形成されている上記凹部66a,66b,66cを視認可能である。このため、塑性変形性シート8は、凹部66a,66b,66cへの医療用具の穿刺を阻害しない。さらに、この実施例の医療用容器1では、図7に示すように、塑性変形性シート8は、弾性変形性シール部材6の上面に隙間なく密着している。このため、塑性変形性シート8は、図6および図7に示すように、上記凹部66a,66b,66cに対応した凹部82a,82b,82cを備えている。
【0028】
また、弾性変形性シール部材6の下面には、下面の周縁部に形成され、端部に向かって肉薄となるスカート状突出部65が設けられている。このスカート状突出部65は、図5に示すように、管状開口部21内(円筒部73の小径先端部74内)に侵入している。また、スカート状突出部65は、図5に示すように、下端に向かって肉薄となるとともに、内径が拡径するものとなっている。このため、スカート状突出部65の内面は、下端に向かって拡径する傾斜面(具体的には、下端に向かって拡径する湾曲傾斜面)となっている。
【0029】
ポート部3(封止部材)は、管状開口部21の封止部材固着部(環状平坦部)75に固着された熱可塑性樹脂製のキャップ(環状キャップ)5を備えている。
キャップ(環状キャップ)5は、弾性変形性シール部材装着部を有する筒状本体部51と、筒状本体部51の下端側部より外方に突出する突出部(環状突出部)52と、突出部(環状突出部)52の下面より下方に突出する融着用突出部55とを備える。
【0030】
キャップ(環状キャップ)5は、図5に示すように、筒状本体部51および突出部(環状突出部)52の下面が、フランジ部71の封止部材固着部75の上面環状平坦部と向かい、かつ、融着用突出部55が溶融し、フランジ部71の上面環状平坦部(封止部材固着部)75に固着している。
キャップ(環状キャップ)5は、図5ないし図8に示すように、開口部を備え、弾性変形性シール部材6の本体61の上面が、開口部にて、露出する状態にて弾性変形性シール部材6を収納している。
【0031】
キャップ(環状キャップ)5は、筒状本体部51と、この筒状本体部51と同心的に配置され、かつ上部にて連結部54により連結された内筒部53と、筒状本体部51の下端外面より外方に突出する突出部(環状突出部)52とを備える。連結部54の上面には、波状に形成された突起部58が形成されており、本実施例では環状に形成されている。
【0032】
突出部(環状突出部)52は、その外縁より若干内側となる位置より、下方に延びる融着用突出部55を備えている。融着用突出部55は、本実施例では環状リブとなっており、かつ、下端に向かって内径、外径ともに縮径するものとなっている。さらに、この実施例のものでは、図5に示すように、融着用突出部55の下端は、本実施例では環状平坦面となっている。
筒状本体部51は、所定長軸方向に延び、実質的に円筒状のものとなっている。
【0033】
キャップ(環状キャップ)は、熱可塑性樹脂により形成されている。キャップ(環状キャップ)の形成材料である熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレンコポリマー、ポリプロピレンとポリエチレンもしくはポリブテンの混合物)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリアミド、ポリ塩化ビニリデン、 ポリフッ化ビニリデンなど等が挙げられる。また、キャップ(環状キャップ)は、管状開口部21の形成材料(この実施例では、容器本体2)と相溶性の高いもの、特に好ましくは、同じもしくは同系統の樹脂を用いることが好ましい。さらには、キャップ(環状キャップ)の形成材料は、筒状開口部21の形成材料(この実施例では、容器本体2)の形成材料より、融点の低いものが好ましい。
【0034】
そして、この弾性変形性シール部材6では、略円柱状のシール部材本体61の上部は、外径は、上述したキャップ(環状キャップ)5の開口部の口径(内筒部53の内径)とほぼ同じものとなっている。そして、シール部材本体61の上部は、図5に示すように、キャップ(環状キャップ)5の開口部内に進入している。また、この実施例の弾性変形性シール部材6では、図5に示すように、側部(環状側部)62の上部(環状上部)62aは、キャップ(環状キャップ)5の凹部(環状凹部)内に収納されている。
【0035】
さらに、弾性変形性シール部材6の側部(環状側部)62の下部(環状下部)62bは、図5に示すように、キャップ(環状キャップ)5の筒状本体部51と本体部20の小径先端部74間に収納されている。図5に示すように、キャップ(環状キャップ)5の内筒部53の下端と本体部20の小径先端部74の上端は向かい合っており、弾性変形性シール部材6の連結部(環状連結部)64は、キャップ(環状キャップ)5の内筒部53と本体部20の小径先端部74により挟圧されている。これにより、管状開口部21と封止部材間は、液密となっている。
【0036】
そして、この実施例の医療用容器1では、上述したように、ポート部3は、容器本体2に設けられた管状開口部21と、弾性変形性シール部材6を収納し、かつ管状開口部21に固着されたキャップ5を備え、かつ、塑性変形性シート8は、キャップ5と接触していない。このため、キャップ5による弾性変形性シール部材6の押圧時に、塑性変形性シート8が障害となることがなく、また、塑性変形性シート8が、キャップ5により変形されることもない。また、この実施例の医療用容器1では、塑性変形性シート8では、その外縁81の外側にて、弾性変形性シール部材6が環状に露出しており、この部分にて、弾性変形性シール部材6そのものの色(第1の色)を視認可能である。この部分における色と、穿刺痕83における色との対比により、穿刺痕83に弾性変形性シール部材6が露出してることを容易に認識できる。
【0037】
本発明の医療用容器としては、図9に示すような軟質バッグタイプの医療用容器100であってもよい。
そして、この実施例の医療用容器100としては、排出ポート3として、管状開口部21と封止部材とからなるものが用いられている。また、この実施例の医療用容器100では、混注ポート104として、管状開口部21と封止部材とからなるものが用いられている。排出ポート3および混注ポート104は、上述した弾性変形性シール部材6を備え、さらに、上述した弾性変形性シール部材6の上面(表面)に剥離不能に固着された塑性変形性シート8を備えている。
【0038】
ポート3,104の封止部材については、上述した医療用容器1と実質的に同じである。
なお、この実施例の医療用容器100では、軟質容器102が用いられている。管状開口部21は、軟質容器102と別部材により形成され、固着部127、128により、軟質容器102に固定されている。
【0039】
また、この実施例の軟質容器(容器本体)102は、シート状筒状体により形成されている。容器本体102には、内部収納部を区画し、解除可能な区画部を構成する仕切部109が形成されており、第1の薬液室121と第2の薬液室122に区画されている。また、この医療用容器100は、容器本体102の第1の薬液室121に、薬剤排出ポート3が取り付けられている。そして、第1の薬液室121には、第1の薬液が収納され、第2の薬液室122には第2の薬液が、収納されている。また、この実施例の容器本体102は、上部シール部105,下部シール部106,側部シール部107,108を備えている。
【0040】
仕切部109は、容器本体102を横方向全体に横切る剥離可能な仕切用弱シール部109aと、弱シール部109aの両端部の分岐部内に設けられた実質的に剥離不能な強シール部109bを備えている。また、医療用容器100の容積は、内部に収納する薬剤の種類等によって異なるが、通常は、第1の薬液室の容積が、50~5000ml程度であることが好ましく、第2の薬液室の容積が、50~5000ml程度であることが好ましい。
【0041】
それぞれの薬液室に収納される薬剤としては、薬液、散剤などが考えられる。特に、本発明の医療用容器では、第1の薬液は、薬液であることが好ましい。第2の薬液は、薬液もしくは散剤いずれであってもよい。好ましくは、薬液である。第1の薬液および第2の薬液の組合せとしては、例えば、アミノ酸電解質液とブドウ糖液、ブドウ糖液と重曹液等の組み合わせが挙げられる。
【0042】
そして、この実施例の医療用容器100では、排出ポート3と容器本体102内との連通を阻害する剥離可能な連通阻害弱シール部110が設けられている。このため、排出ポート3は、容器本体102内の空室123と連通するものの、第1の薬液室121と連通しないものとなっている。上述した弱シール部109a、110は、シート材を帯状に熱シール(熱融着、高周波融着、超音波融着等)することにより形成される。
【符号の説明】
【0043】
1 医療用容器
2 容器本体
3 ポート部
5 キャップ(環状キャップ)
6 弾性変形性シール部材
8 塑性変形性シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9