(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】車両の走行制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 30/16 20200101AFI20241218BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20241218BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20241218BHJP
【FI】
B60W30/16
G08G1/16 C
B60W60/00
(21)【出願番号】P 2021053868
(22)【出願日】2021-03-26
【審査請求日】2024-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】工藤 新也
【審査官】吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-184464(JP,A)
【文献】特開2010-095220(JP,A)
【文献】特開2010-167994(JP,A)
【文献】特開2006-027456(JP,A)
【文献】特開2019-059360(JP,A)
【文献】特開2019-093807(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 - 60/00
B60L 1/00 - 3/12
7/00 - 13/00
15/00 - 58/40
B60T 7/12 - 8/1769
8/32 - 8/96
F02D 29/00 - 29/06
G05D 1/00 - 1/12
G08G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周辺環境情報を取得する周辺環境情報取得装置と、
自車両状況を取得する自車両状況情報取得装置と、
外部機器から少なくとも道路地図情報を取得する外部情報受信装置と、
走行制御を行う際の目標車両速度値を設定するセット車速値設定部と、
前記周辺環境情報取得装置、前記自車両状況情報取得装置、前記外部情報受信装置を用いて取得された複数の情報に基づいて、周辺他車両を考慮して自車両の車速値を制御して当該自車両の走行を制御する走行制御ユニットと、
を備え、
前記走行制御ユニットは、
自車両の前方に先行車両が認識されており、
自車両の車速値が走行中の道路の制限速度値又は当該制限速度値を基準として一定の値が増減設定された所定の速度値を超えていて、
運転者により予め設定されたドライバセット車速値が前記先行車両の車速値以上であり、
自車両の後方に後続車両が所定時間以上継続して認識されていないことが確認された場合には、
自車両の車速値を前記先行車両の車速値よりも所定値だけ減じた車速値を仮セット車速値として設定し、当該仮セット車速値を用いて走行制御を行うことを特徴とする車両の走行制御装置。
【請求項2】
前記仮セット車速値を用いて走行制御中に、先行車両を認識できなくなった場合には、現在設定されている前記仮セット車速値を登録セット車速値として登録し、当該登録セット車速値を用いた走行制御を継続することを特徴とする請求項1に記載の車両の走行制御装置。
【請求項3】
前記仮セット車速値が走行中の道路の前記制限速度値を基準とした所定の速度値未満である場合には、前記制限速度値を基準とした所定の速度値を新たな仮セット車速値として設定することを特徴とする請求項1に記載の車両の走行制御装置。
【請求項4】
前記仮セット車速値を用いて走行制御中に、現在設定されている前記仮セット車速値が現在設定されている前記ドライバセット車速値を超えている場合には、現在設定されている前記ドライバセット車速値を新たな仮セット車速値として設定することを特徴とする請求項1に記載の車両の走行制御装置。
【請求項5】
前記登録セット車速値を用いて走行制御中に、左右いずれかの隣接車線上を自車両の近傍で併走する他車両が認識された場合であって、
前記他車両の車速値が自車両の車速値と略同等であることが検出された場合、
前記他車両が走行車線上を併走している場合には、自車両は前記ドライバセット車速値を用いた走行制御に切り換え、
前記他車両が追越車線上を併走している場合には、自車両は前記登録セット車速値から所定値だけ減じた車速値を新たな仮セット車速値として設定し、当該新たな仮セット車速値を用いた走行制御に切り換える
ことを特徴とする請求項2に記載の車両の走行制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、周辺他車両を考慮して車両の走行を制御する走行制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等の車両においては、運転者の運転操作を必要とせずに車両を自動的に走行させる自動運転制御技術の開発が進められている。また、このような自動運転制御技術を利用することによって、運転者の運転操作の負担を軽減すると共に、車両を走行させる際の安全性を向上させることを目的として、運転者の運転操作を支援するための車両の走行制御装置についての提案が、種々なされており、一般に実用化されつつある。
【0003】
例えば、従来の車両の走行制御装置においては、カメラやレーダ装置、ソナー装置等の自律センサデバイスを用いた周辺環境認識装置を具備している。従来のこの種の走行制御装置は、これらの自律センサデバイスを用いて、自車両の周辺領域を走行する他車両(先行車両、後続車両、併走車両等)を認識する。そして、当該走行制御装置は、走行中の車線内に設定した目標走行経路に沿って自車両を走行させる車線維持支援(ALK;Active Lane Keeping)制御機能や、運転者が予め設定する目標車両速度値に応じて自車両を走行させつつ、先行車両が認識された場合は、自車両と当該先行車両との車間距離を維持しながら自車両を同先行車両に追従させて走行させる制御機能いわゆる車間距離制御機能付クルーズコントロール(ACC;Adaptive Cruise Control)機能を備えたものが、例えば、特開2009-184464号公報、特開2019-59360号公報等によって種々提案され、また一般に実用化されつつある。
【0004】
上記特開2009-184464号公報等によって開示されている車両の走行制御装置は、走行中の自車両の車速と走行中の道路の制限速度とに基づいて、自車両の車速が制限速度以下である場合には、ACC機能の上限セット速度を制限速度に設定する制御を行って追従走行を行う。また、自車両の車速が制限速度を超えている場合には、ACC機能の上限セット速度を自車両の車速に設定する制御を行って追従走行を行う。
【0005】
上記特開2019-59360号公報等によって開示されている車両の走行制御装置は、自車両と他車両(先行車両や後続車両等)との車間距離や相対速度に応じて、自車両の速度を制限速度まで増速又は減速する制御を行う際の加速度又は減速度を適宜設定する制御を行って追従走行を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-184464号公報
【文献】特開2019-59360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記特開2009-184464号公報、上記特開2019-59360号公報等によって開示されている従来の車両の走行制御装置においては、自車両の周辺を走行する他車両との車間距離や相対速度に応じて自車両の速度を適宜設定する制御を行うのが基本である。このことから、自車両の挙動(例えば車両速度、加減速等)は、他車両の挙動に依存して変化することになる。
【0008】
したがって、他車両の挙動に不安定な傾向がある場合等(例えば、一定速度の走行が維持されていない他車両や、加減速が繰り返される他車両等)には、他車両の挙動に伴って自車両の挙動も不安定になってしまう可能性がある。そして、例えば不自然な加減速が生じる等、自車両の挙動が不安定になると、乗り心地が悪化し、燃料消費率が低下する等の悪影響を被る可能性がある。また、挙動が不安定な他車両に追従して走行を継続した場合、自車両の安全走行を確保することができなくなる可能性もある。
【0009】
本発明は、周辺他車両を考慮して車両の走行を制御する際に、良好な乗り心地を得ることができると共に、燃料消費率の向上に寄与し、かつ安全走行に寄与することのできる車両の走行制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の一態様の車両の走行制御装置は、車両の周辺環境情報を取得する周辺環境情報取得装置と、自車両状況を取得する自車両状況情報取得装置と、外部機器から少なくとも道路地図情報を取得する外部情報受信装置と、走行制御を行う際の目標車両速度値を設定するセット車速値設定部と、前記周辺環境情報取得装置、前記自車両状況情報取得装置、前記外部情報受信装置を用いて取得された複数の情報に基づいて、周辺他車両を考慮して自車両の車速値を制御して当該自車両の走行を制御する走行制御ユニットとを備え、前記走行制御ユニットは、自車両の前方に先行車両が認識されており、自車両の車速値が走行中の道路の制限速度値又は当該制限速度値を基準として一定の値が増減設定された所定の速度値を超えていて、運転者により予め設定されたドライバセット車速値が前記先行車両の車速値以上であり、自車両の後方に後続車両が所定時間以上継続して認識されていないことが確認された場合には、自車両の車速値を前記先行車両の車速値よりも所定値だけ減じた車速値を仮セット車速値として設定し、当該仮セット車速値を用いて走行制御を行う。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、周辺他車両を考慮して車両の走行を制御する際に、良好な乗り心地を得ることができると共に、燃料消費率の向上に寄与し、かつ安全走行に寄与することのできる車両の走行制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態の走行制御装置の概略構成を示すブロック構成図、
【
図2】本発明の一実施形態の走行制御装置において実行されるACC制御の処理の流れを示すフローチャート(前段部)、
【
図3】本発明の一実施形態の走行制御装置において実行されるACC制御の処理の流れを示すフローチャート(中段部)、
【
図4】本発明の一実施形態の走行制御装置において実行されるACC制御の処理の流れを示すフローチャート(後段部)、
【
図5】
図2のステップS11~
図3のステップS26の処理シーケンスを具体的な例示によって説明する概念図、
【
図6】
図4のステップS27~ステップS29の処理シーケンスを具体的な例示によって説明する概念図、
【
図7】
図4のステップS30~ステップS32の処理シーケンスを具体的な例示によって説明する概念図、
【
図8】
図4のステップS35の処理シーケンスを具体的な例示によって説明する概念図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図示の実施の形態によって本発明を説明する。以下の説明に用いる各図面は模式的に示すものであり、各構成要素を図面上で認識できる程度の大きさで示すために、各部材の寸法関係や縮尺等を構成要素毎に異ならせて示している場合がある。したがって、本発明は、各図面に記載された各構成要素の数量や各構成要素の形状や各構成要素の大きさの比率や各構成要素の相対的な位置関係等に関して、図示の形態のみに限定されるものではない。
【0014】
本発明の一実施形態の走行制御装置は、自動車等の車両に搭載され、当該車両の運転者による運転操作を支援するための走行制御を行なう装置である。本実施形態の走行制御装置は、例えば車載カメラユニットやレーダ装置等のセンシングデバイスを用いて車両の前方環境及び周辺環境に関する情報(例えば、前方及び周辺を走行する先行車両、後続車両、対向車両、併走車両等の他車両や自転車、歩行者等の移動体、若しくは建造物、各種構築物等や立体的な障害物等のほか、走行中の道路の路面状況等を含む車両の周辺環境に関する情報等;以下、単に周辺環境情報等という)を取得する。
【0015】
また、本実施形態の走行制御装置は、上述のようにして取得された周辺環境情報等のほか、通信を行って外部機器である高精度道路地図データベース等から取得される道路地図情報等に基づいて、先行車両や後続車両及び各種構築物や立体的な障害物等に関する情報を含む道路状況等を認識する。そして、本実施形態の走行制御装置は、これら各種の情報(周辺環境情報等、地図情報等、認識情報等)を、運転者の運転操作を支援するための走行制御を実行する際の情報として適宜利用する。
【0016】
本実施形態の走行制御装置は、車線維持支援(ALK;Active Lane Keeping)制御と、車間距離制御機能付クルーズコントロール(ACC;Adaptive Cruise Control)とを少なくとも実行し得る構成を有する。
【0017】
ここで、車線維持支援制御(以下、単にALK制御という)は、車両の走行中に取得された各種情報(周辺環境情報等)に基づいて、走行車線内に設定した目標走行経路に沿って車両を走行させ、当該走行車線を維持しながら車両の走行を安全に継続させる制御機能である。
【0018】
また、車間距離制御機能付クルーズコントロール(以下、単にACC制御という)は、運転者が予め設定した目標車両速度値に応じて自車両を走行させつつ、先行車両が認識された場合は、当該先行車両の車速を考慮して自車両の車速を増減し、自車両と先行車両との車間距離を維持しつつ自車両を先行車両に追従走行させる制御機能である。
【0019】
本実施形態の走行制御装置は、さらに、車両がALK制御とACC制御を実行しながら道路上を走行しているときに、自車両の近傍を走行する周辺他車両(先行車両、後続車両、併走車両等)を認識した場合には、自車両とこれらの他車両との位置関係等を考慮して、自車両の走行制御を行う機能を有する。
【0020】
この場合において、自車両と周辺他車両との位置関係等を考慮した車両の走行制御とは、自車両を先行車両に追従走行させる通常のACC制御(以下、通常ACC制御という)とは若干異なる制御を行う。
【0021】
簡略に言えば、例えば、本実施形態の走行制御装置は、自車両と周辺他車両との車間距離(又は相対的な距離)を拡げることで、自車両ができるだけ単独で走行し得る状態を確保して、他車両の挙動に影響されない効率的な走行を行い得ると同時に、安全性にも配慮した走行を実現するACC制御を行う。このような走行制御を、以下の説明においては、「エコACC制御」と呼称する。
【0022】
本実施形態の走行制御装置において実行されるエコACC制御は、例えば、道路の制限速度、走行中の自車両の速度、自車両において運転者により予め設定される目標車両速度(ドライバセット車速値;詳細後述)、自車両と同一走行車線上の先行車両の速度等の各種情報と、自車両と同一走行車線上の後続車両の存在及びその後続車両の車速、自車両の走行車線の左右に隣接する左右隣接車線上の後続車両又は併走車両の存在及びそれら後続車両又は併走車両の車速、先行車両の挙動、対向車線の渋滞状況等の周辺状況を考慮したACC制御を実行するための仮の目標車両速度値(仮セット車速値)を自動的に適宜所定のタイミングで仮設定し、この仮セット車速値を用いて車両の走行制御等を行う。
【0023】
そして、周辺状況等による各種条件が整った場合には、当該仮セット車速値は、以降のエコACC制御モードでのACC制御実行時に参照するためのセット車速値として登録する(以下、登録セット車速値という)。
【0024】
まず、本発明の一実施形態の走行制御装置の概略構成について、
図1を用いて、以下に説明する。
図1は、本発明の一実施形態の走行制御装置の概略構成を示すブロック構成図である。
【0025】
なお、本実施形態の走行制御装置の基本的な構成は、従来の形態の同種の走行制御装置の構成と略同様である。したがって、本実施形態の走行制御装置の構成を説明するのに際しては、本発明に関わる主要構成のみについて説明するものとする。そして、本実施形態の走行制御装置の細部の構成については、従来の走行制御装置と略同様であるものとし、本発明に直接関連する構成以外についての詳細な説明は省略する。また、
図1においては、本実施形態の走行制御装置の主要構成のみを図示するに留め、本発明に直接関連しない構成については図示を省略している。
【0026】
なお、本実施形態の以下の説明においては、車両の通行区分が左側である左側通行を基本とする道路システムの場合を例示している。したがって、右側通行を基本とする道路システムに、本発明の構成を適用するには、左右を入れ替えて考慮するのみで容易に応用することができる。
【0027】
本実施形態の走行制御装置1は、
図1に示すように、ロケータユニット11と、周辺監視ユニット20と、カメラユニット21と、走行制御部としての走行制御ユニット22と、エンジン制御ユニット23と、パワーステアリング制御ユニット24と、ブレーキ制御ユニット25等を、主な構成ユニットとして具備している。
【0028】
ここで、ロケータユニット11と、周辺監視ユニット20と、カメラユニット21とは、車両の内外の走行環境を認識するためのセンサユニットであり環境認識装置として機能する構成ユニットである。これらの各ユニット(11、20、21)は、互いに依存することなく、完全に独立した構成ユニットとして存在している。
【0029】
走行制御ユニット22と、エンジン制御ユニット23と、パワーステアリング制御ユニット24と、ブレーキ制御ユニット25の各制御ユニットは、ロケータユニット11、周辺監視ユニット20、カメラユニット21と共に、CAN(Controller Area Network)などの車内通信回線10を通じて互いに接続され、適宜必要に応じてデータ共有を行っている。
【0030】
ロケータユニット11は、道路地図上の自車両の位置(自車位置)を推定すると共に、推定された自車位置の主に前方の道路地図情報等を取得する情報取得装置である。
【0031】
ロケータユニット11は、地図ロケータ演算部12と、加速度センサ13と、車輪速センサ14と、ジャイロセンサ15と、GNSS受信機16と、道路情報受信機17と、地図情報記憶部としての高精度道路地図データベース(DB;Data Base:
図1においては道路地
図DBと略記している)18と、ルート情報入力部19等を具備している。
【0032】
このうち、加速度センサ13、車輪速センサ14、ジャイロセンサ15は、自車両の位置(自車位置)を推定するのに際して必要とする各種センサ類である。例えば、加速度センサ13は自車両の前後加速度を検出するセンサである。車輪速センサ14は(四輪車の場合の)前後左右の各車輪の回転速度を検出するセンサである。この車輪速センサ14の検出結果により、自車両の車速を検出することができる。ジャイロセンサ15は、自車両の角速度または角加速度を検出するセンサである。これらの各センサ(13、14、15)は、運転状態取得部として機能する自律走行センサ群であり、地図ロケータ演算部12の入力側に接続されている。
【0033】
なお、上記自律走行センサ群(各センサ13、14、15)は、例えば、トンネル内走行等において、GNSS受信機16(詳細後述)が受信するGNSS衛星(不図示)からの受信感度が低下して測位信号を有効に受信することのできない状況となったときに、自律走行を可能にするために設けられるセンサ群である。自律走行センサ群としては、上述の各センサ(13、14、15)のほかに、図示されていないが、例えば、車速センサ、ヨーレートセンサ等を有している。
【0034】
GNSS受信機16は、自車位置取得部として機能し、例えばGNSS(Global Navigation Satellite System;全球測位衛星システム)からの各種情報を受信する受信装置である。つまり、このGNSS受信機16は、複数の測位衛星から発信される測位信号を受信する。GNSS受信機16は、取得した測位信号を、ロケータユニット11の地図ロケータ演算部12へと出力する。地図ロケータ演算部12は、GNSS受信機16が受信した複数の測位衛星からの測位信号に基づいて自車位置(緯度、経度)を推定する。そのため、このGNSS受信機16は、地図ロケータ演算部12の入力側に接続されている。
【0035】
さらに、地図ロケータ演算部12には、道路情報受信機17と、記憶装置としての高精度道路地図データベース18と、ルート情報入力部19等が接続されている。
【0036】
道路情報受信機17は、所定の基地局(不図示)若しくはインターネットを介して接続されるクラウドサーバ(不図示)等に蓄積された各種情報、例えば自動運転に必要な情報や地図情報等を受信して取得する外部情報受信装置である。この道路情報受信機17は、取得した各種情報を、ロケータユニット11の地図ロケータ演算部12へと出力する。なお、道路情報受信機17は、さらに、自車両が有する各種情報を上記基地局やクラウドサーバ(不図示)等へと送信する機能を備えた形態の道路情報送受信装置の形態であってもよい。
【0037】
地図ロケータ演算部12は、道路情報受信機17が受信した地図情報等に基づいて自車位置を地図上にマップマッチングしたり、入力された目的地と自車位置とを結ぶ目標とする走行ルートを構築する。さらに、地図ロケータ演算部12は、構築された目標走行ルート上に、自動運転を実行させるための目標走行ルートを自車両の前方数キロメートル先まで設定する。ここで、目標走行ルートとして設定する項目は、自車両を走行させる車線(例えば、車線が3車線の場合に何れの車線を走行させるか)、先行車を追い越すため車線変更及び車線変更を開始するタイミング等の各種の項目がある。
【0038】
高精度道路地図データベース18は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等の大容量記憶媒体等によって主に構成されている。この高精度道路地図データベース18には、周知の高精度な道路地図情報(ローカルダイナミックマップ)が記憶されている。ここで高精度道路地図情報は、例えばクラウドサーバ等(不図示)に備えられているグローバルダイナミックマップと同じ層構造を有しており、基盤とする最下層の静的情報階層において、自動走行をサポートするために必要な付加的地図情報等が重畳された階層構造をなしている。
【0039】
ここで、付加的地図情報としては、道路の種別(一般道路、高速道路等)、道路形状、左右区画線(例えば車道中央線、車道外側線、車線境界線等)、高速道路やバイパス道路等の出口、ジャンクションやサービスエリア、パーキングエリア等に繋がる分岐車線や合流車線の出入口長さ(開始位置と終了位置)等の静的な位置情報のほか、渋滞情報や事故或いは工事による通行規制等の動的な位置情報が含まれている。
【0040】
そして、この付加的地図情報は、地図ロケータ演算部12によって目標走行ルートが設定された際には、設定された目標走行ルートに沿って自車両を自律走行させるために必要とする周辺情報として、グローバルダイナミックマップから継続的に取得されかつ順次更新される。
【0041】
また、高精度道路地図情報は、自動運転を行う際に必要とする車線データとして、車線幅データ、車線中央位置座標データ、車線の進行方位角データ、制限速度情報などをも保有している。これらの車線データ等の情報は、道路地図上の各車線に数メートル間隔で格納されている。
【0042】
ルート情報入力部19は、例えば運転者又は搭乗者等、車両に搭乗している人員が操作する端末装置である。このルート情報入力部19は、目的地や経由地(高速道路において立ち寄りたいサービスエリア等)の設定等、地図ロケータ演算部12において目標走行ルートを設定する際に必要とする一連の情報を集約して入力することができる。
【0043】
ルート情報入力部19は、具体的には、カーナビゲーションシステムの入力部(例えば、モニタのタッチパネル等)、スマートフォン等の携帯端末、パーソナルコンピュータ等である。そして、ルート情報入力部19は、地図ロケータ演算部12に対して有線接続或いは無線接続されている。これにより、運転者又は搭乗者がルート情報入力部19を操作して、目的地や経由地の情報(施設名、住所、電話番号等)の入力を行うと、その入力情報が地図ロケータ演算部12に読み込まれる。地図ロケータ演算部12は、ルート情報入力部19から入力された目的地や経由地について、その位置座標(緯度、経度)を設定する。
【0044】
地図ロケータ演算部12は、自車位置推定部12aと、地図情報取得部12b等を備えている。
【0045】
自車位置推定部12aは、自車位置を推定する機能を有する構成部である。自車位置推定部12aは、GNSS受信機16で受信した測位信号に基づき自車両の位置座標(緯度、経度)を取得する。そして、自車位置推定部12aは、取得した位置座標をルート地図情報上にマップマッチングして、道路地図上の自車位置(現在位置)を推定する。
【0046】
また、自車位置推定部12aは、トンネル内走行などのようにGNSS受信機16の感度低下により測位衛星からの有効な測位信号を受信することができない環境においては、車輪速センサ14で検出した車輪速に基づき求めた車速データ、ジャイロセンサ15で検出した角速度データ、加速度センサ13で検出した前後加速度データ等の各種データに基づいて自車位置を推定する自律航法に切り換えて、道路地図上の自車位置(緯度、経度)を推定する。
【0047】
地図情報取得部12bは、自車位置推定部12aで推定した自車位置の位置情報(緯度、経度)と、運転者等によりルート情報入力部19から入力された目的地や経由地の位置情報(緯度、経度)とに基づき、現在地から目的地までの目標とする走行ルート情報(高精度道路地図情報上での自車位置と目的地(経由地が設定されている場合は経由地を経由した目的地)とを結ぶ目標走行ルート情報)を、予め設定されているルート条件(推奨ルート、最速ルート等)に従って構築する。このとき、自車位置推定部12aは、自車両の走行している走行車線を特定し、道路地図データに記憶されている走行車線や合流車線等の道路形状を取得して、これらの情報を逐次記憶する。また、地図情報取得部12bは、目標走行ルート情報を自車位置推定部12aへ送信する。
【0048】
このようにして、地図ロケータ演算部12は、自車位置推定部12aにより推定された自車位置を道路地図上にマップマッチングして自車両の現在地を特定し、その周辺の状況に関する情報を含む道路地図情報を取得する。また、地図情報取得部12bにより自車両の目標とする目標走行ルートを設定する。
【0049】
カメラユニット21は、自車両の主に進行方向(前方)の環境を認識し、画像情報として取得する周辺環境情報取得装置であり周辺環境認識装置の一部を成す。
【0050】
カメラユニット21は、具体的には、例えば、自車両の前方及び前側方を走行する他車両(先行車両両、対向車両、併走車両等)のほか、併走する自転車、自動二輪車等の移動体を含む立体物、信号現示(点灯色、点滅状態、矢印方向等)や道路標識、停止線や区画線(例えば車道中央線、車道外側線、車線境界線等)等の道路標示等のほか、道路表面状況(例えば路面上の水溜まりの有無、形状、大きさ等の状況)等を含む各種の道路周辺環境等を認識する。
【0051】
カメラユニット21は、自車両の車室内前部の上部中央等に固定されており、車幅方向中央を挟んで左右対称な位置に配設されているメインカメラ21a及びサブカメラ21bからなる車載カメラ(ステレオカメラ)と、画像処理ユニット(IPU;Image Processing Unit)21cと、走行環境認識部21d等を有して構成されている。
【0052】
そして、カメラユニット21は、画像取得装置であるメインカメラ21aで基準画像データを撮像し、画像取得装置であるサブカメラ21bで比較画像データを撮像する。これら2つのカメラ(21a、21b)によって取得された2つの画像データは、IPU21cにて所定の画像処理が施される。
【0053】
走行環境認識部21dは、IPU21cで画像処理された基準画像データと比較画像データとを読込んで、両画像間の視差に基づいて両画像中の同一対象物を認識すると共に、両画像内の物体の位置ズレ量から距離データ(自車両から対象物までの距離情報)を三角測量の原理を利用して算出すると共に、この距離情報を含む前方走行環境画像情報(距離画像情報)を生成する。
【0054】
また、走行環境認識部21dは、カメラユニット21によって取得され、IPU21cにより処理済みの距離画像情報等に基づいて、例えば自車両の走行している走行車線の左右を区画する区画線(例えば車道中央線、車道外側線、車線境界線等)等を含む各種さまざまな道路標示を、周辺環境情報として認識する。この場合、走行環境認識部21dは、走行車線の区画線等を検出する区画線検出部として機能する。
【0055】
また、走行環境認識部21dは、自車両が走行する走行路(自車走行レーン)の左右区画線(車線境界線等)の中央の道路曲率[1/m]、左右区画線間の幅(車線幅)等を求める。
【0056】
なお、区画線間中央の道路曲率や車線幅の求め方は種々知られているが、例えば、走行環境認識部21dは、道路曲率を前方走行環境画像情報に基づき輝度差による二値化処理にて、左右の区画線を認識し、最小二乗法による曲線近似式などにて左右区画線の曲率を所定区間毎に求め、さらに、両区画線間の曲率の差分から車線幅を算出する。そして、当該走行環境認識部21dは、自車線の左右区間線の曲率と車線幅とに基づき車線中央の道路曲率を求める。
【0057】
また、走行環境認識部21dは、距離画像情報に対して所定のパターンマッチングなどを行い、道路に沿って存在するガードレール、縁石、各種立体物(自車両周辺に存在する歩行者、二輪車、二輪車以外の車両等)の認識を行う。ここで、走行環境認識部21dにおける立体物の認識では、例えば、立体物の種別、立体物までの距離、立体物の移動速度、立体物と自車両との相対速度などの認識が行われる。
【0058】
なお、カメラユニット21には、上述の2つのカメラ(21a、21b)のほかに、さらに、車両の後方を走行する他車両(後続車両等)を認識するための画像取得装置としてのカメラ(不図示;後方カメラ)を備えていてもよい。この後方カメラは、車両の後方に向けて設置され、主に車両の後方画像を取得する。カメラユニット21を、このような形態とすれば、2つのカメラ(21a、21b)によって、車両の主に前方及び前側方を走行する他車両を認識し、後方カメラによって、車両の主に後方及び後側方を走行する他車両を認識することができるように構成できる。
【0059】
周辺監視ユニット20は、自車両の周辺状況を認識し情報として取得する周辺環境情報取得装置であり周辺状況認識装置の一部を成す。この周辺監視ユニット20は、周辺環境認識センサ20aと、周辺環境認識部20b等を有して構成されている。
【0060】
周辺環境認識センサ20aは、例えば、超音波センサ、ミリ波レーダ、ライダー(LIDAR;Light Detection and Ranging)、カメラ等のセンシングデバイスと、これらを組み合せてなる周辺環境検出手段としての自律センサ群である。
【0061】
具体的には、例えば、周辺環境認識センサ20aとしての複数のミリ波レーダが、車両の四隅部分(例えば、左前側方、右前側方、左後側方、右後側方等)にそれぞれ配設される。このうち、左右前側方のミリ波レーダは、例えばフロントバンパの左右側部に設けられ、カメラユニット21の2つのカメラ21a、21bにより取得される画像によって認識することの困難な車両周辺の一部領域(車両の左右斜め前方及び側方の領域)を監視するのに用いられる。
【0062】
また、左右後側方のミリ波レーダは、例えばリヤバンパの左右側部に設けられ、上記左右前側方のミリ波レーダでは監視し得ない車両周辺の一部領域(車両の側方から後方にかけての領域)を監視するのに用いられる。
【0063】
周辺環境認識部20bは、周辺環境認識センサ20aからの出力信号に基づいて自車両の周辺の移動体(例えば、併走車両、後続車両、対向車両等)に関する情報である周辺環境情報を取得する。
【0064】
周辺監視ユニット20とカメラユニット21とによって、本実施形態の走行制御装置1における周辺環境情報取得装置であり周辺状況認識装置が構成されている。ここで、カメラユニット21の走行環境認識部21dと、周辺監視ユニット20の周辺環境認識部20bとは、車内通信回線10を通じて走行制御ユニット22の入力側に接続されている。また、走行制御ユニット22と地図ロケータ演算部12との間は、車内通信回線10を通じて双方向通信自在に接続されている。
【0065】
そして、走行制御ユニット22の入力側には、車両内部環境情報(自車両状況情報)を検知する複数の各種スイッチ類若しくは複数のセンサ群として、モード切換スイッチ33と、ハンドルタッチセンサ34と、操舵トルクセンサ35と、ブレーキセンサ36と、アクセルセンサ37等が接続されている。
【0066】
モード切換スイッチ33は、運転者が各種の運転モードの選択や、運転支援制御に関わる複数の制御機能を選択するためのオンオフ切換等を行うスイッチ群を指す。運転者は、モード切換スイッチ33を操作することによって、例えば、所望の運転支援制御モードの切り換えや、後述するACC制御の各制御モード(例えば、通常ACC制御モード、エコACC制御モード等)の切り換え等、本実施形態の走行制御装置1が実行し得る各種の走行制御のうち所望する走行制御のオンオフ切り換えを、適宜、所望のときに、任意に選択的に行うことができる。
【0067】
さらに、モード切り換えスイッチ33には、例えば、ACC制御を実行する際に参照する目標車両速度値(セット車速値)を、車両の運転者等が予め設定するための入力操作部材などを含む。なお、この入力操作部材を用いて運転者が能動的に入力して設定される目標車両速度値(セット車速値)を、以下の説明においてはドライバセット車速値というものとする。
【0068】
ハンドルタッチセンサ34は、運転者がステアリング装置におけるステアリングホイール(不図示;以下、単にステアリングと略記する)を把持している状態、即ち運転者の保舵状態を検知するためのセンサである。ハンドルタッチセンサ34は、車両のステアリングの所定の部位に設けられている。ハンドルタッチセンサ34は、運転者がステアリングの所定の部位を把持しているとき(保舵状態にあるとき)オン信号を出力する。
【0069】
操舵トルクセンサ35は、運転者による運転操作量としての操舵トルクを検出するセンサである。操舵トルクセンサ35は、車両のステアリング装置におけるステアリングシャフト(不図示)に設けられている。
【0070】
なお、ハンドルタッチセンサ34と操舵トルクセンサ35とは、自車両の運転者によるステアリングの保舵状態を認識するためのセンサであって保舵状態認識部として機能する。これら両センサ(34、35)の出力信号は走行制御ユニット22へと出力される。
【0071】
ブレーキセンサ36は、運転者による運転操作量としてのブレーキペダルの踏込量を検出するセンサである。
【0072】
アクセルセンサ37は、運転者による運転操作量としてのアクセルペダルの踏込量を検出するセンサである。
【0073】
一方、走行制御ユニット22の出力側には、モニタパネルやスピーカ等を備えた報知装置38等が接続されている。この報知装置38は、走行制御ユニット22が走行環境認識部21dや周辺環境認識部20b等によって取得された周辺環境情報、周辺環境情報等に基づいて認識される周辺環境に応じた警報(例えばモニタパネル等の表示装置への視覚的な警報表示や、スピーカ等の発音装置への音声や警笛等による聴覚的な警報表示等)を、運転者に対して報知する装置である。
【0074】
また、報知装置38は、運転者に対して、運転者が行うべき操作を示唆する表示(具体的には、例えば「ブレーキペダルを踏み込んでください」、「アクセルを離してください」、「ステアリングの修正操作を行ってください」等の示唆報知等)等を、聴覚的に若しくは視覚的に知覚させる各種の表示を必要に応じて行う。
【0075】
走行制御ユニット22は、車両の走行制御を統括的に行う構成ユニットである。例えば、走行制御ユニット22は、ALK制御やACC制御等を実行する際の走行制御に寄与する。
【0076】
この場合において、本実施形態の走行制御装置1における走行制御ユニット22は、ALK制御及びACC制御を実行しながら走行中の車両が認識した周辺他車両や周辺状況、自車両状況等に応じて、ACC制御のためのセット車速値を自動的に設定変更し、変更されたセット車速値に基づく走行制御を行う走行制御部として機能する。
【0077】
そのために、走行制御ユニット22は、操舵支援制御部22aと、目標走行経路設定部22bと、セット車速値設定部22c等を具備して構成されている。
【0078】
操舵支援制御部22aは、車両を走行車線内において安定させて走行させるためのステアリング操作に加え、車両が走行中に遭遇する危険等や走行経路上の障害物等との衝突又は接触を回避する際に、運転者によって行われるステアリング操作を支援する等、本実施形態の走行制御装置1が実行し得る各種制御のうち操舵操作を伴う走行制御を支援する制御を行う。
【0079】
例えば、操舵支援制御部22aは、設定された目標走行経路に沿って車両を走行させるためのALK制御の実行中において適宜必要に応じて操舵支援制御を行う。
【0080】
目標走行経路設定部22bは、カメラユニット21の走行環境認識部21dにより認識された周辺環境情報に基づいて求められた自車両の走行車線(自車走行レーン)の左右区画線に関する情報等に基づいて、走行車線の中央位置を、車線幅データ等に基づいて目標走行経路として設定する。
【0081】
そして、目標走行経路設定部22bは、設定された目標走行経路を含む領域を自車両が走行する走行車線として認識する。こうして認識された走行車線の中央位置に引かれた目標走行経路は、自車線内に設定されており、ALK制御を実行して自車両を走行させる際の目標とする仮想的な走行線となる。
【0082】
セット車速値設定部22cは、ACC制御を実行する際に走行の目安とする車速値を設定する構成部である。このセット車速値設定部22cは、例えば、走行制御ユニット22内に設けられる回路部等によって構成されている。セット車速値設定部22cは、例えばACC制御を実行するのに先立って車両の運転者等によって設定されるドライバセット車速値と、ACC制御時に参照される登録セット車速値と、エコACC制御モードでの走行制御時に自動的に設定される仮セット車速値等を設定する。
【0083】
ドライバセット車速値は、運転者が、例えばモード切り換えスイッチ33に含まれる入力操作部材(不図示)を操作することによって入力される目標車両速度値である。このドライバセット車速値は、例えば走行制御ユニット22内の所定の内部記憶領域(内部メモリ;不図示)に記憶される。
【0084】
仮セット車速値は、エコACC制御モードでの走行制御時に、自車両状況、周辺他車両、周辺状況等と所定の条件とに基づいて、設定済みの登録セット車速値に対する増減変更により仮に設定されるセット車速値である。仮セット車速値は、ACC制御時において一時的に利用される設定値である。
【0085】
登録セット車速値は、ACC制御を継続的に実行する際に参照し、走行の目安として登録される車速値である。そして、セット車速値設定部22cは、例えば、ドライバセット車速値を、ACC制御時の走行制御において用いる登録セット車速値として登録する。また、セット車速値設定部22cは、例えば、エコACC制御モードでの走行制御時に適宜設定された仮セット車速値を、自車両状況、周辺他車両、周辺状況等を考慮して所定のタイミングに新たな登録セット車速値として登録する。
【0086】
また、走行制御ユニット22は、カメラユニット21(の走行環境認識部21d)や周辺監視ユニット20(の周辺環境認識部20b)からの出力情報のほか、地図ロケータ演算部12を通じて得られる各種情報に加えて、モード切換スイッチ33や各種センサ(34、35、36、37)等の自車両状況情報取得装置により取得される車両内部環境情報(自車両状況情報)等に基づいて、各種所定の状況判定等を行い、それらの判定結果に基づいて、エンジン制御ユニット23、パワーステアリング制御ユニット24、ブレーキ制御ユニット25等を通じて自車両の走行制御を行う。
【0087】
なお、走行制御ユニット22は、地図ロケータ演算部12によって設定された目標走行ルート中に、自動運転制御が許可された自動運転区間が設定されている場合には、当該自動運転区間において自動運転制御を行うための走行ルートを設定する。そして、自動運転区間においては、エンジン制御ユニット23、パワーステアリング制御ユニット24、ブレーキ制御ユニット25等を適宜制御して、各種情報に基づき推定された自車位置から設定された目標走行ルートに沿って自車両を自動走行させる機能を有する。
【0088】
その際、走行制御ユニット22は、走行環境認識部21dで認識した周辺環境情報に基づいて、例えばALK制御及びACC制御等により、先行車両が認識されている場合は、適宜、選択され設定されているACC制御の制御モードに応じて先行車両に追従させる等、周辺他車両等を考慮した走行制御を行う。また、このとき先行車両が認識されていない場合には、ドライバセット車速値又は登録セット車速値による自車両の走行制御を行う。これと同時に、ALK制御のほか、車線逸脱抑制制御、車線変更制御等、適宜選択された操舵支援制御を実行し、さらに、場合によっては運転者異常時対応制御を実行する等の各種の走行制御を行う。
【0089】
また、走行制御ユニット22は、上述したように、エンジン制御ユニット23と、パワーステアリング制御ユニット24と、ブレーキ制御ユニット25等の各制御ユニットとの間で、車内通信回線10を通じて互いに接続されている。これにより、走行制御ユニット22は、各制御ユニット(23、24、25)等を制御する。
【0090】
エンジン制御ユニット23の出力側には、スロットルアクチュエータ27が接続されている。このスロットルアクチュエータ27は、エンジンのスロットルボディに設けられている電子制御スロットルのスロットル弁を開閉動作させるものである。走行制御ユニット22は、エンジン制御ユニット23からの駆動信号によりスロットルアクチュエータ27を制御することにより、スロットル弁を開閉動作させて吸入空気流量を調整する。これにより、所望のエンジン出力を発生させることができる。
【0091】
パワーステアリング制御ユニット24の出力側には、電動パワステモータ28が接続されている。この電動パワステモータ28は、ステアリング機構に電動モータの回転力で操舵トルクを付与するものである。走行制御ユニット22は、所定の運転モードが選択されているときには、パワーステアリング制御ユニット24からの駆動信号により電動パワステモータ28を制御動作させることで、ステアリングの操作を支援する各種の操舵支援制御が実行される。また、操舵トルクセンサ35は、電動パワステモータ28の駆動量の変化、若しくはステアリング機構の駆動量等を検知することによって操舵トルク値を提示する。
【0092】
ブレーキ制御ユニット25の出力側には、ブレーキアクチュエータ29が接続されている。このブレーキアクチュエータ29は、各車輪に設けられているブレーキホイールシリンダに対して供給するブレーキ油圧を調整するものである。走行制御ユニット22は、ブレーキ制御ユニット25からの駆動信号によりブレーキアクチュエータ29を駆動する。これにより、ブレーキホイールシリンダにより各車輪に対してブレーキ力が発生し、車両を強制的に減速させることができる。
【0093】
なお、地図ロケータ演算部12、周辺環境認識部20b、走行環境認識部21d、走行制御ユニット22、エンジン制御ユニット23、パワーステアリング制御ユニット24、ブレーキ制御ユニット25等の全部又は一部は、ハードウエアを含むプロセッサにより構成されている。
【0094】
ここで、プロセッサは、例えば、中央処理装置(CPU;Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)や、不揮発性メモリ(Non-volatile memory)、不揮発性記憶装置(Non-volatile storage)等のほか、非一過性の記録媒体(non-transitory computer readable medium)等を備える周知の構成、及びその周辺機器等によって構成されている。
【0095】
ROMや不揮発性メモリ、不揮発性記憶装置等には、CPUが実行するソフトウエアプログラムやデータテーブル等の固定データ等が予め記憶されている。そして、CPUがROM等に格納されたソフトウエアプログラムを読み出してRAMに展開して実行し、また、当該ソフトウエアプログラムが各種データ等を適宜参照等することによって、上記各構成部や構成ユニット(12、20b、21d、22、23、24、25)等の各機能が実現される。
【0096】
なお、プロセッサは、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの半導体チップなどにより構成されていてもよい。また、上記各構成部や構成ユニット(12、20b、21d、22、23、24、25)等は電子回路によって構成してもよい。
【0097】
さらに、ソフトウエアプログラムは、コンピュータプログラム製品として、フレキシブルディスク、CD-ROM、DVD-ROM等の可搬型板媒体や、カード型メモリ、HDD(Hard Disk Drive)装置、SSD(Solid State Drive)装置等の非一過性の記憶媒体(non-transitory computer readable medium)等に、全体あるいは一部が記録されている形態としてもよい。
【0098】
このように構成された本発明の一実施形態の走行制御装置1を搭載した車両が、ACC制御を実行して道路を走行するときの作用を、以下に説明する。
図2~
図4は、本実施形態の走行制御装置において実行されるACC制御の処理の流れを示すフローチャートである。なお、
図2はACC制御のフローチャートの前段部を示し、
図3はACC制御のフローチャートの中段部を示し、
図4はACC制御のフローチャートの後段部を示している。
【0099】
本実施形態の走行制御装置1を搭載した自車両が運転者によって起動されることにより、カメラユニット21、周辺監視ユニット20、走行制御ユニット22等の各構成ユニットの作動が開始され、当該自車両は、運転者の所定の操作を受けることで道路上での走行を開始する。
【0100】
ここで、運転者は、車両の起動後で、車両の走行開始前に、例えばモード切換スイッチ33等に含まれる各種操作部材を適宜操作することによって、所望の走行制御に関する選択操作を行う。なお、本発明に関わる走行制御は、主にACC制御に関するものである。そこで、運転者は、まず、ACC制御のオン操作と、ACC制御における制御モードの選択操作を行う。また、運転者は、ACC制御時において走行制御の目安とするドライバセット車速値を所定の操作部材を用いて操作入力して、当該走行制御装置1に設定する。ここで設定されたドライバセット車速値等の設定値情報は、例えば走行制御ユニット22の内部メモリ(不図示)等に記憶される。
【0101】
これらの操作が行われると、当該走行制御装置1は、選択され設定された制御モード(通常ACC制御モード、エコACC制御モード等)によるACC制御を開始する。そして、運転者が所定の運転操作を行うと、当該車両は道路上での走行を開始する。
【0102】
なお、以下の説明においては、説明の簡略化のために、本発明に直接関連する事項(ACC制御)についてのみ言及するものとし、本発明に関連しない事項に関する操作、作用、制御等についての説明は省略する。
【0103】
まず、
図2のステップS11において、走行制御ユニット22は、現在設定されているACC制御の制御モードが「エコACC制御モード」であるか否かの確認を行う。ここで、エコACC制御モードに設定されている場合には、次のステップS12の処理に進み、エコACC制御モードに対応する処理シーケンスを開始する。一方、エコACC制御モード以外に設定されている場合には、ステップS41の処理に進む。
【0104】
ステップS41において、走行制御ユニット22は、通常ACC制御モードに対応する処理シーケンスを開始する。この通常ACC制御モードは、基本的には、運転者が予め設定したドライバセット車速値によって車両を走行させる制御である。そして、その走行制御中に、先行車両を認識した場合には、自車両と先行車両との車間距離を維持しながら、自車両を先行車両に追従走行させる制御を行う。このような通常ACC制御モードに対応する走行制御は、従来の走行制御装置によって行われる周知の制御である。したがって、これ以上の説明は省略する。
【0105】
そして、上述のステップS41の処理にて実行される通常ACC制御モードの制御処理は、例えば、運転者によるモード切り換え操作などのほか、車両の停止(エンジンオフ操作)等によって終了する(リターン)。
【0106】
なお、本実施形態の走行制御装置1においては、エコACC制御モード以外の制御モードとして「通常ACC制御モード」のみを例示しているが、それ以外の制御モードが存在する場合もある。しかしながら、本実施形態の走行制御装置1を説明するのに際しては、エコACC制御モード以外のACC制御に関する制御モードは、本発明に直接関連しない部分であるので、その説明は省略する。そして、以下に、本実施形態の走行制御装置1におけるエコACC制御モードに対応する処理シーケンスの詳細を説明する。
【0107】
上述のステップS11の処理において、エコACC制御モードが設定されていることが確認されて、
図2のステップS12の処理に進むと、このステップS12において、走行制御ユニット22は、周辺環境認識部20b、走行環境認識部21d等のほか、ロケータユニット11等を通じて自車両の周辺環境認識処理及び自車両自身の自車両状況認識処理を開始する。その後、ステップS13に進む。
【0108】
なお、ここで行われる自車両の周辺環境認識処理は、例えば自車両が走行している走行車線や隣接車線等の左右区画線や道路標識(制限速度標識等)等を含む情報や周辺他車両等の情報であって、自車両の前方及び周辺環境を認識するための処理である。
【0109】
また、自車両自身の自車両状況認識処理は、例えば自車両の現在の車速値、設定済みの走行制御の種別、設定されているドライバセット車速値又は登録セット車速値等の各種情報等を認識するための処理である。なお、ここで行われる周辺環境認識処理及び自車両状況認識処理は、当該走行制御装置1の起動中は常時継続して行われているものである。
【0110】
この時点においては、少なくとも走行中の道路の制限速度に関する情報が取得されているものとする。この制限速度に関する情報は、例えば、カメラユニット21によって取得される画像データに基づいて認識することのできる道路標識や道路標示等により取得できる。さらに、当該制限速度に関する情報は、ロケータユニット11によって取得される地図情報等に含まれている場合もある。また、この時点において、自車両の状況に関する情報としては、少なくとも自車両の速度値情報と、設定済みのドライバセット車速値又は登録セット車速値等の情報が取得されているものとする。
【0111】
次に、ステップS13において、走行制御ユニット22は、先行車両を認識したか否かの確認を行う。ここで、先行車両が認識されない場合には、ステップS12の処理に戻る。ここで、先行車両が認識されていない状態では、現在設定されている登録セット車速値(ドライバセット車速値又は後述する制御処理によって自動設定された仮セット車速値等)を目安として、自車両の車速を維持して走行する通常のACC制御と同様の走行制御が行われる。そして、ステップS12の処理に戻る。
【0112】
一方、上述のステップS13の処理にて先行車両が認識された場合には、次のステップS14の処理に進む。
【0113】
続いて、ステップS14において、走行制御ユニット22は、上述のステップS12の処理にて認識された自車両の車速が走行中の道路の制限速度を超えているか否か(自車両車速>道路の制限速度)の確認を行う。自車両の車速は、走行制御ユニット22において、例えば、車輪速センサ14等によって検出されたデータに基づいて車輪速が算出された後、算出された当該車輪速データと自車両の車輪データ等(タイヤ径等の数値情報等)に基づいて算出される。このような車速算出技術は周知の技術が用いられる。
【0114】
ステップS14の処理にて、自車両の車速が走行中の道路の制限速度以下である場合は、ステップS12の処理に戻る。このとき、自車両は、制限速度以下の車速値で走行しており、かつ先行車に追従して走行している状態にあると考えられる。このような自車両の走行状況は、一般的には、安全に走行が継続されている状態にあると判断できる。したがって、自車両が、このような状況下にあると判断できる場合には、通常のACC制御と同様に、自車両と先行車との間に所定の車間距離を維持しつつ、当該先行車に追従走行させる制御を行う。その後、ステップS12の処理に戻る。
【0115】
一方、上述のステップS14の処理にて、自車両の車速が走行中の道路の制限速度を超えている場合には、次のステップS15の処理に進む。なお、このとき、自車両の車速が制限速度を超えているものとすると、ドライバセット車速値も制限速度を超える車速値に設定されているものと推測できる。
【0116】
次のステップS15において、走行制御ユニット22は、現在設定されている登録セット車速値(ドライバセット車速値又は自動設定された仮セット車速値)が先行車両の車速以上であるか否かの確認を行う。ここで、先行車両の車速は、例えばカメラユニット21によるステレオ画像認識の結果に基づいて算出する周知の技術によって求めることができる。
【0117】
ステップS15の処理にて、現在の登録セット車速値が先行車両の車速未満である場合には、ステップS12の処理に戻る。ここで、現在の登録セット車速値が先行車両の車速未満であるときには、自車両は登録セット車速以上の速度で走行制御されることはない。したがって、このとき、自車両が現在の登録セット車速値に基づく車速を維持する走行制御を継続すれば、自車両の車速よりも先行車両の車速の方が速いので、自車両と先行車両との車間距離は次第に拡がることになる。このことは、自車両が先行車の影響を受けることがないことを意味する。そのため、現在の登録セット車速値が先行車両の車速未満である状況下では、自車両は現状の登録セット車速値に基づく車速を維持する走行を継続する制御を行う。その後。ステップS12の処理に戻る。
【0118】
一方、上述のステップS15の処理にて、現在の登録セット車速値が先行車両の車速以上である場合には、次のステップS16の処理に進む。ここで、現在の登録セット車速値が先行車両の車速以上であるときには、自車両は先行車両に接近しつつあり、やがて自車両は先行車両に追い付いてしまう可能性がある。また、このとき自車両は、上述したように、制限速度を超える車速で走行していることがわかっている(ステップS14参照)。したがって、このような状況下では、自車両は、安全な走行が確保されている状態であるとは言えず、かつ周辺他車両のうち特に先行車両の車速以上の高速走行を行っており、燃料消費率の低下も懸念される。
【0119】
そこで、本実施形態の走行制御装置1においては、このような状況が確認された場合には、後述のステップS17以降の処理において、先行車両の車速よりも低い車速値での走行制御を適宜行うようにしている(詳細後述)。
【0120】
しかしながら、このとき、自車両の走行している同一車線(以下、自車線という)上の後方に当該自車両に追従する後続車両が走行していたり、若しくは自車線上の後方から後続車両が自車両に向かって接近してきている可能性がある。そのような状況にある場合において、自車両が現在の車速値から先行車両の車速よりも低い車速値となるように減速制御を行った場合、自車両の後方にある後続車両の円滑な走行を乱したり阻害してしまう可能性がある。
【0121】
このようなことを考慮して、本実施形態の走行制御装置1においては、まず、上述のステップS15の処理の後、次のステップS16において、自車線上の後方を走行する後続車両の存在を確認するようにしている。
【0122】
即ち、ステップS16において、走行制御ユニット22は、自車線内の後続車両が所定時間以上継続して検出されているか否かの確認を行う。ここで、後続車両が所定時間以上継続して検出されている状況とは、自車線上の後方に自車両に追従する後続車両が走行している場合、若しくは自車線上の後方から後続車両が自車両に向かって接近してきている場合等が考えられる。
【0123】
そこで、ステップS16の処理にて、自車線内に後続車両が所定時間以上継続して検出されていることが確認された場合には、当該後続車両に配慮して、ステップS12の処理に戻る。これにより、エコACC制御モードでのACC制御は、後続車両が存在するときには開始されないようにしている。
【0124】
一方、ステップS16の処理にて、自車線内に後続車両が所定時間以上継続して検出されていないことが確認された場合には、次のステップS17の処理に進み、エコACC制御モードでのACC制御を開始する。
【0125】
まず、ステップS17において、走行制御ユニット22は、先行車両の車速よりも低い所定の速度値を仮のセット車速値(以下、仮セット車速値という)として設定する。ここで、設定される仮セット車速値は、現在認識されている先行車両の車速に対して低い車速値、例えば先行車両の車速値よりも仮に1割の値を減じた速度値等とする。
【0126】
次に、ステップS18において、走行制御ユニット22は、上述のステップS17の処理にて設定した仮セット車速値が、現在自車両が走行中の道路の制限速度を基準とする所定の速度値(以下、制限速度基準の所定値という)未満であるか否かの確認を行う。
【0127】
ここで、制限速度基準の所定値とは、自車両が現在走行している道路の制限速度を基準として規定される所定の速度値をいうものとする。この制限速度基準の所定値は、具体的には、例えば自車両が走行中の道路の制限速度と等しい速度値、若しくは当該制限速度に対して1~5割の値を減じた速度値を目安として設定される。
【0128】
例えば、制限速度基準の所定値を、制限速度から2割の値を減じた速度値に設定するものと規定する場合には、走行中の道路の制限速度が80km/hのとき、制限速度基準の所定値は64km/hに設定される。また、走行中の道路の制限速度が100km/hのとき、制限速度基準の所定値は80km/hに設定される。
【0129】
ここで、制限速度基準の所定値を規定するのに際して、制限速度に対して如何ほどの値を減じるかの設定は、個々の走行制御装置1や、当該走行制御装置1を搭載する車両の種別等のほか、走行中の道路状況(高速道路であるか一般道路であるか等)等の各種の条件を勘案して適宜設定すればよい。
【0130】
なお、制限速度基準の所定値としては、走行中の道路の制限速度と等しい速度値に設定してもよい。しかしながら、走行中の道路の制限速度を超える設定値が設定されることのないようにするのが望ましい。つまり、制限速度基準の所定値は、制限速度値以下となるように設定されるのが望ましい。詳細は後述するが、この制限速度基準の所定値は、エコACC制御モードでのACC制御を行う際に自動設定される仮セット車速値の下限値として規定される。制限速度基準の所定値を、このような設定とすることによって、当該走行制御装置1は、後述するように、自車両の車速を制限速度以内に抑えることができると共に、先行車から離れるように自車両の走行制御を行うことができる。したがって、これにより、本実施形態の走行制御装置1においては、円滑で安全な走行制御を維持できる。
【0131】
ステップS18の処理において、上述のステップS17の処理にて設定された仮セット車速値が、制限速度基準の所定値未満である場合は、ステップS19の処理に進む。
【0132】
続いて、ステップS19において、走行制御ユニット22は、道路の制限速度基準の所定値を新たな仮セット車速値として設定する。その後、
図3のステップS20の処理に進む(
図2、
図3の丸数字(3)参照)。
【0133】
一方、上述のステップS18の処理において、上述のステップS17の処理にて設定された仮セット車速値が、制限速度基準の所定値を超えている場合には、
図3のステップS20の処理に進む(
図2、
図3の丸数字(3)参照)。
【0134】
ステップS18~S19の処理について、さらに詳述する。ステップS18の時点で設定されている仮セット車速値は、先行車両の車速より低い車速値である(ステップS17)。また、制限速度基準の所定値は、上述したように、制限速度と等しい速度値を上限値とする所定値である。
【0135】
したがって、上述のステップS18の処理にて、仮セット車速値(=先行車両の車速より低い車速値)が、制限速度基準の所定値(上限値は制限速度値)未満である場合、自車両は、たとえ、現在の仮セット車速値を超える制限速度基準の所定値の車速で走行したとしても、先行車両の車速値より低い車速値が維持されるので、先行車両に追い付く可能性はない。
【0136】
なぜなら、この時点においては、先行車両は制限速度を超える速度で走行していることが推測されるからである。ここで、仮に、先行車両の車速が制限速度と同等である場合、ステップS17の処理にて設定される仮セット車速値は先行車両の車速より低い車速値であるから、仮セット車速値は制限速度以下となる。また、仮に、先行車両が制限速度を超える速度で走行している場合、ステップS17の処理にて設定される仮セット車速値は先行車両の車速より低い車速値であるから、仮セット車速値は制限速度より若干高い車速値か、又は制限速度以下となる。
【0137】
そこで、このような状況では、ステップS19の処理にて、仮セット車速値を制限速度基準の所定値にまで引き上げる設定をしている。この場合の仮セット車速値は、制限速度を超えることがないので、先行車両に追い付くことがなく、かつ安全な走行を維持できる。
【0138】
一方、上述のステップS18の処理にて、仮セット車速値(=先行車両の車速より低い車速値)が、制限速度基準の所定値(上限値は制限速度値)を超えている場合は、自車両は、現在の仮セット車速値(=先行車両の車速より低い車速値)を維持していれば、先行車両に追い付く可能性はない。そこで、この場合は、ステップS19の処理を経ずに、現在の仮セット車速値を維持したまま、ステップS20の処理に進む。
【0139】
次に、
図3のステップS20において、走行制御ユニット22は、上述のステップS15の処理以降において、運転者の操作によるドライバセット車速値の変更操作が行われたか否かを確認する。ここで、運転者がドライバセット車速値の変更操作を行う可能性があるのは、次のような状況が考えられる。上述のように、ステップS15の処理以降の所定の時点において、自車両の運転者は、自車両が先行車両に接近しつつあることを認識する可能性がある。このような場合には、自車両の運転者は、任意にドライバセット車速値を下げる方向に設定変更する可能性がある。したがって、本実施形態の走行制御装置1においては、このステップS20の処理にて、ドライバセット車速値に変更が加えられたか否かの確認をしている。
【0140】
ステップS20の処理にて、ドライバセット車速値の変更操作が確認された場合には、ステップS21の処理に進む。
【0141】
そして、ステップS21において、走行制御ユニット22は、変更操作に応じたドライバセット車速値を新たに設定する(ドライバセット車速値の設定変更)。その後、ステップS22の処理に進む。
【0142】
一方、ステップS20の処理にて、ドライバセット車速値の変更操作が確認されない場合には、ステップS21の処理を経ずに、ステップS22の処理に進む。この場合、ドライバセット車速値の設定は、例えば
図2の走行開始前に設定された値が維持されたままである。
【0143】
そして、ステップS22において、走行制御ユニット22は、現在設定されているドライバセット車速値(例えば
図2の走行開始前に設定された値又は
図3のステップS21で更新された値)が、現在設定されている仮セット車速値(
図2のステップS17又は同
図2のステップS19のいずれかの処理にて設定された値)未満であるか否かの確認を行う。ここで、現在のドライバセット車速値が現在の仮セット車速値未満である場合には、ステップS23の処理に進む。
【0144】
続いて、ステップS23において、走行制御ユニット22は、現在設定されているドライバセット車速値を新たな仮セット車速値として設定する。その後、ステップS24の処理に進む。
【0145】
一方、ステップS22の処理にて、現在のドライバセット車速値が現在の仮セット車速値を超えている場合には、ステップS23の処理を経ずに、現在の仮セット車速値を維持したまま、ステップS24の処理に進む。
【0146】
そして、ステップS24において、走行制御ユニット22は、現在設定されている仮セット車速値に基づくACC制御を開始する。
【0147】
ステップS22~S23の処理について、さらに詳述する。ステップS22の時点で設定されている仮セット車速値は、先行車両の車速より低い車速値である。また、ドライバセット車速値は、上述したように、ステップS20~S21にて下げる方向に変更されている可能性がある。
【0148】
つまり、上述のステップS22の処理にて、現在のドライバセット車速値が現在の仮セット車速値(=先行車両の車速より低い車速値)未満である場合は、現在のドライバセット車速値は、上述のステップS20~S21の処理にて下げる変更がなされているものと推測できる。
【0149】
したがって、この時点において、自車両は、現在のドライバセット車速値を超える現在の仮セット車速値(先行車両の車速より低い車速値)の車速で走行したとしても、先行車両の車速値より低い車速値が維持されるので、先行車両に追い付く可能性はない。そこで、この場合は、ステップS23の処理にて、仮セット車速値を現在のドライバセット車速値にまで引き上る設定をしている。この場合、仮セット車速値の車速で走行しても、制限速度を超えることがなく、かつ先行車両に追い付くこともないので、安全な走行を維持できる。
【0150】
一方、上述のステップS22の処理にて、現在のドライバセット車速値が現在の仮セット車速値を超えている場合は、ドライバセット車速値への変更がなく、例えば
図2の走行開始前に設定されたドライバセット車速値が維持されているものと推測できる。
【0151】
したがって、このとき、自車両は、現在の仮セット車速値を維持して走行すれば、先行車両に追い付く可能性はない。そこで、この場合は、ステップS23の処理を経ずに、現在の仮セット車速を維持したまま、ステップS24の処理に進む。
【0152】
そして、ステップS24の処理にてACC制御が開始されると、その後、ステップS25において、走行制御ユニット22は、先行車両を認識しなくなったか否かの確認を行う。ここで、先行車両が認識しなくなった場合には、次のステップS26の処理に進む。また、先行車両を認識している場合は、上述のステップS24の処理にて開始されたACC制御を継続しながら、先行車両が認識されなくなるまで当該処理を繰り返す。このようにして、先行車両が認識なくなったことが確認されると、次のステップS26の処理に進む。
【0153】
ステップS26において、走行制御ユニット22は、現在設定されている仮セット車速値を、ACC制御のための登録セット車速値として登録する。そして、当該登録セット車速値に基づくACC制御を継続する。その後、
図4のステップS27の処理に進む(
図3、
図4の丸数字(4)参照)。
【0154】
これまで述べたように(
図2のステップS11~
図3のステップS26)、本実施形態の走行制御装置1において、エコACC制御モードが選択された場合に実行されるACC制御は、次のような条件が揃った場合に実行される。即ち、
(1)先行車両が存在しており(ステップS13)、
(2)自車両の車速が道路の制限速度を超えていて(ステップS14)、
(3)現在の登録セット車速値が先行車両の車速値以上である場合(ステップS15)であって、
(4)かつ後続車両が所定時間以上継続して検出されていない場合(ステップS16)、
である。
【0155】
この場合に、本実施形態の走行制御装置1は、先行車両の車速よりも低い所定の速度値を仮セット車速値として設定する(ステップS17)。この場合に設定される仮セット車速値は、道路の制限速度基準の所定値を下限とし(ステップS19)、ドライバセット車速値を上限とする(ステップS22)所定の範囲内で自動的に設定される。
【0156】
ここで、道路の制限速度基準の所定値を、仮セット車速値の下限とするのは、円滑な通行に配慮するための措置である。このときの状況では、自車両及び先行車両を含む周辺車両は、道路の制限速度を超える車速で走行しているものと推測できる。したがって、このような状況下において、自車両が、例えば制限速度を順守した走行制御を行ったとすると、当該自車両は、周辺車両の交通の流れに逆らう走行を行うことになってしまい、その結果、かえって危険な状況を現出させてしまう可能性がある。そこで、本実施形態の走行制御装置1においては、たとえ、走行中の道路の制限速度を超える車速値での走行制御を行うことになったとしても、周辺車両の交通の流れを阻害することなく、交通の流れに従って円滑な走行制御を行うことができる制御としている。また、ドライバセット車速値を、仮セット車速値の上限とするのは、運転者の意志を反映させるための措置である。
【0157】
このようにして自動的に設定された仮セット車速値に基づくACC制御が開始される(ステップS24)。この自動設定される仮セット車速値は、制限速度基準の所定値を下回ることがないので、自車両は周囲車両の交通の流れに乗って走行制御される。よって、自車両が減速したとしても円滑な交通を阻害することはない。
【0158】
また、ドライバセット車速値を超える速度での走行制御が行われることはないので、効率的かつ安全な走行制御とすることができる。同時に、走行速度を抑えた制御とすることができるので、燃料消費率の向上に寄与することもできる。さらに、先行車両の車速値よりも低い速度となるように仮セット車速値を設定して、自車両と先行車両との車間距離を拡げる走行制御としているので、先行車両に追い付くことがなく、よって、先行車両等に接近することに起因する危険性を予め回避することができる。
【0159】
こうして、自車両と先行車両との間の車間距離が次第に拡がることにより、先行車両は自車両の前方へと遠ざかることになるので、やがて、自車両は先行車両の存在を認識しなくなる。すると、自車両の走行制御装置1は、設定されている仮セット車速値を登録セット車速値に設定し、この登録セット車速に基づいて以降のACC制御を継続することになるので、安全な走行を維持できるようになる。
【0160】
本実施形態の走行制御装置1において、エコACC制御モードが選択された場合に実行されるACC制御の基本的な作用は以上である(
図2のステップS11~
図3のステップS26)。
【0161】
ここで、本実施形態の走行制御装置1によるエコACC制御モード選択時のACC制御の基本的な作用について、具体的な例示を用いて、以下に改めて簡単に説明する。
図5は、
図2のステップS11~
図3のステップS26の処理シーケンスを具体的な例示によって説明する概念図である。
【0162】
図5において、符号Mは、本実施形態の走行制御装置1が搭載されている自車両を示している。この自車両Mは、走行制御装置1を起動させた状態で、道路100上を走行しているものとする。ここで、
図5に示す道路100は、例えば片側三車線道路として例示している。なお、この場合において、当該道路の対向車線側は、図示を省略している。
【0163】
自車両Mは、当該道路100上における三車線のうちの中央車線を自車線として走行しているものとする。また、この道路100の制限速度は、速度制限標識110によって、制限速度=80km/hであることが示されているものとする。
【0164】
このような状況下において、
図5に示す自車両Mは、例えば、ドライバセット車速値DS=90km/hに設定した状態でACC制御を実行して走行しているものとする。つまり、自車両Mは、制限速度を超える速度であり、車速V1=90km/hで走行しているものとする(ステップS14の「Y」の場合)。
【0165】
このとき、自車両Mの前方には、
図5に示すように、自車線上に先行車両M2が存在しており、自車両Mは当該先行車両M2を認識しているものとする(ステップS13の「Y」の場合)。ここで、
図5において、二点鎖線で示される符号VAで指し示す範囲は、周辺環境認識装置であるカメラユニット21による認識範囲を概念的に示すものとする。
【0166】
この場合において、自車両Mによって先行車両M2が認識される状況としては、例えば、自車両Mが先行車両M2に接近している場合が考えられる。このように、自車両Mが先行車両M2に接近する状況においては、認識された先行車両M2は、自車両Mの車速V1(ドライバセット車速値DS=90km/h)よりも低い車速(例えば、先行車両M2の車速V2=85km/h)で走行していると推測できる(ステップS15の「Y」の場合)。
【0167】
また、自車両Mが先行車両M2を認識する別の状況としては、自車両Mの前方の自車線上に他車両が隣接車線から車線変更によって割り込んできた場合が考えられる(不図示)。このとき、自車両Mは、当該割り込み他車両を新たな先行車両M2として認識する。例えば、
図5に示す状態は、先行車両M2が隣接車線から車線変更によって自車両Mの前方に割り込んできた後、自車線の前方を走行している状態に相当する。
【0168】
このような状況において、自車両Mはドライバセット車速値DS=90km/hに基づいて巡航しているものとする。この場合において、当該先行車両M2(割り込んできた他車両)の車速V2が、自車両Mの車速(ドライバセット車速値DS=90km/h)に対して、速い場合には(例えばV2=100km/h等)、当該先行車両M2は、自車両Mから前方へ次第に遠ざかることが予想される。一方、自車両Mに対して、先行車両M2の車速V2が遅い場合(例えばV2=85km/h等)には、自車両Mは当該先行車両M2に接近し、やがて追い付いてしまうことが予想される(ステップS15)。なお、
図5においては、先行車両M2の車速V2=85km/hの場合を例示している。
【0169】
そこで、自車両Mの現在のセット車速値(ドライバセット車速値DS=90km/h)と、先行車両M2の車速値とを比較し、自車両Mの車速が先行車両M2の車速より速い場合に(ステップS15の「Y」の場合)、自車両Mは後続車両(不図示)の有無を確認して、後続車両が存在しないことを確認した上で(ステップS16の「N」の場合)、エコACC制御モードでのACC制御を開始する(ステップS17)。
【0170】
なお、自車両Mの現在のセット車速値と先行車両M2の車速値との比較の結果、自車両Mの車速が先行車両M2の車速より遅い場合は、自車両Mの車速を維持して走行を継続する(ステップS15の「N」の場合)。
【0171】
こうして、エコACC制御モードでのACC制御を開始すると、まず、自車両Mは、先行車両M2の車速値(V2=85km/h)よりも低い車速値を仮セット車速値TSに設定する(ステップS17)。
【0172】
ここで、この場合の仮セット車速値TSとして、例えば先行車両M2の車速値(V2=85km/h)より1割の値を減じた速度値を設定するものとすると、仮セット車速値TS=76.5km/hとなる。
【0173】
そして、この仮セット車速値TS=76.5km/hが、制限速度基準の所定値SL未満であれば(ステップS18の「Y」の場合)、制限速度基準の所定値SLを新たな仮セット車速値TSに設定する(ステップS19)。
【0174】
ここで、例えば、制限速度基準の所定値SLとして、制限速度(80km/h)より1割の値を減じた速度値を設定するものとすると、制限速度基準の所定値SL=72km/hとなる。
【0175】
この場合には、仮セット車速値TS=76.5km/hが、制限速度基準の所定値SL=72km/h以上となるので(ステップS18の「N」の場合)、仮セット車速値TS=76.5km/hはそのまま維持される。
【0176】
また、例えば、制限速度基準の所定値SLの別の例示として、
図5に示すように、制限速度(80km/h)と等しい速度値を設定するものとすると、制限速度基準の所定値SL=80km/hとなる。
【0177】
この別の例示の場合には、仮セット車速値TS=76.5km/hが、制限速度基準の所定値SL=80km/h未満であるので、制限速度基準の所定値SLを新たな仮セット車速値TSとして設定する(ステップS19)。つまり、ここで、仮セット車速値TSは、76.5km/hから80km/hに更新される。
【0178】
また、この時点においてドライバセット車速値DSが変更されている場合は、ドライバセット車速値DSを変更する。ここで、例えば、ドライバセット車速値DSの変更操作がなければ、ドライバセット車速値DS=90km/hは維持される(ステップS20の「N」の場合)。
【0179】
一方、ここで、例えばドライバセット車速値DSが下げる方向に変更されている場合は、変更後のドライバセット車速値DSが設定される。
【0180】
例えば、現在のドライバセット車速値DS=90km/hが、下げる方向へ設定変更されて、新たなドライバセット車速値DS=70km/hに設定変更されたものとする(ステップS20の「Y」の場合)。
【0181】
ここで、現在の仮セット車速値TS=76.5km/h又は80km/hと、現在のドライバセット車速値DS=90km/h又は70km/hとを比較し、現在のドライバセット車速値DSが、現在の仮セット車速値TS以上であれば(ステップS22の「N」の場合)、現在の仮セット車速値TSを維持し、現在のドライバセット車速値DSが、現在の仮セット車速値TS未満であれば(ステップS22の「Y」の場合)、ドライバセット車速値DSを仮セット車速値TSとして新たに設定する(ステップS23)。
【0182】
ここで、上述の例示のうち、現在の仮セット車速値TS=76.5km/h、ドライバセット車速値=90km/hの場合(ステップS22の「N」の場合)は、現在の仮セット車速値TS=76.5km/hが維持される。
【0183】
また、上述の例示のうち、現在の仮セット車速値TS=76.5km/h、ドライバセット車速値=70km/hの場合(ステップS22の「Y」の場合)は、ドライバセット車速値DSを仮セット車速値TSとして設定する(ステップS23)。つまり、ここで、仮セット車速値TSは、76.5km/hから70km/hに更新される。
【0184】
また、上述の例示のうち、現在の仮セット車速値TS=80km/h、ドライバセット車速値DS=90km/hの場合(ステップS22の「N」の場合)は、現在の仮セット車速値TS=80km/hが維持される。
【0185】
また、上述の例示のうち、現在の仮セット車速値=TS80km/h、ドライバセット車速値DS=70km/hの場合(ステップS22の「Y」の場合)は、ドライバセット車速値DSを仮セット車速値TSとして設定する(ステップS23)。つまり、ここで、仮セット車速値TSは、80km/hから70km/hに更新される。
【0186】
そうして、現在の仮セット車速値TS=76.5km/h又は70km/h又は80km/hによって、以降のエコACC制御が開始される。こうして設定される仮セット車速値TSは、いずれの場合も、先行車両の車速V2よりも低い車速値となっている。したがって、自車両Mは、やがて、先行車両M2を認識しない状態になる。
【0187】
そして、自車両Mが先行車両M2を認識しない状態になったら、当該走行制御装置1は、現在の仮セット車速値TSを登録セット車速値として登録して、エコACC制御を継続する。これにより、安全な走行を維持したまま走行が継続される。
【0188】
このように、
(1)先行車両が存在しており(ステップS13)、
(2)自車両の車速が道路の制限速度を超えていて(ステップS14)、
(3)現在の登録セット車速値が先行車両の車速値以上である場合(ステップS15)であって、
(4)かつ後続車両が所定時間以上継続して検出されていない場合(ステップS16)、
という条件が揃ったときに、自車両Mの登録セット車速値を、所定の条件で引き下げた仮セット車速値を適宜設定して走行制御することによって、自車両Mは、先行車両M2との車間距離を拡げることができる。
【0189】
ところで、本実施形態の走行制御装置1におけるエコACC制御モードでのACC制御においては、上述の処理シーケンス(ステップS11~S26)による基本的な作用に加えて、さらに、
図4のステップS27の処理以降に示す処理シーケンスによる制御が行われる。このステップS27の処理以降の処理シーケンスでは、自車両の近傍を走行する他車両のうち、上述した先行車両及び後続車両以外の他車両、即ち左右車線の併走車両等を考慮した走行制御を例示している。これに加えて、さらに対向車線状況を考慮した走行制御も例示している。
【0190】
まず、上述の
図3のステップS26の処理にて設定された登録セット車速値に基づくACC制御が継続されているものとする。このとき、
図4のステップS27において、走行制御ユニット22は、左隣接車線において自車両の近傍に他車両が認識されているか否かの確認を行う。
【0191】
この場合において、自車両は、例えば、
図5等に示すような複数車線の道路において、最左端車線以外の車線を走行しているものとする。
図6に示す例は、自車両が片側三車線道路の中央車線を走行している場合に、左隣接車線の自車両近傍に他車両が走行している状況を示している。なお、
図6の例示に限られることはなく、例えば自車両が二車線道路の右側車線を走行している状況であってもよい。
【0192】
図4のステップS27の処理において、自車線の左隣接車線の自車両の近傍に他車両が認識されている場合には、ステップS28の処理に進む。
【0193】
続いて、ステップS28において、走行制御ユニット22は、認識された左隣接車線の他車両の車速値を検出し、当該左隣接車線の他車両の車速値と、自車両の現在の登録セット車速値(即ち自車両の現在の車速)とが略同等の車速であるか否かの確認を行う。なお、左隣接車線の他車両の車速の検出は、例えば周辺監視ユニット20に含まれるミリ波レーダ等の周辺環境認識センサ20aの検出結果に基づいて算出する周知の技術によって求めることができる。
【0194】
このステップS28の処理にて、左隣接車線の他車両の車速値と、自車両の仮セット車速値とが略同等車速であることが確認された場合には、ステップS29の処理に進む。
【0195】
そして、ステップS29において、走行制御ユニット22は、現在の登録セット車速値に代えて現在設定されているドライバセット車速値を用いて走行制御を行う。これにより、自車両は、左隣接車線の他車両に対して速い速度で走行することになる。したがって、自車両は、左隣接車線の他車両に対して前方に向けて遠ざかり、自車両と当該他車両との距離を拡げることができる。その後、
図2のステップS12の処理に戻る。
【0196】
なお、ステップS28の処理にて、左隣接車線の他車両の車速値と、自車両の仮セット車速値とが略同等車速ではない場合には、ステップS29の処理を経ずに、現在の登録セット車速値による制御を継続し、
図2のステップS12の処理に戻る。
【0197】
一方、上述のステップS27の処理にて、左隣接車線の自車両の近傍に他車両が認識されていない場合は、ステップS30の処理に進む。
【0198】
続いて、
図4のステップS30において、走行制御ユニット22は、右隣接車線において自車両の近傍に他車両が認識されているか否かの確認を行う。
【0199】
この場合において、自車両は、例えば、
図5等に示すような複数車線の道路において、最右端車線以外の車線を走行しているものとする。
図7に示す例は、自車両は片側三車線道路の中央車線を走行している場合に、右隣接車線の自車両近傍に他車両が走行している状況を示している。なお、
図7の例示に限られることはなく、例えば自車両が二車線道路の右側車線を走行している状況であってもよい。
【0200】
図4のステップS30の処理にて、自車線の右隣接車線の自車両の近傍に他車両が認識されている場合には、ステップS31の処理に進む。
【0201】
続いて、ステップS31において、走行制御ユニット22は、認識された右隣接車線の他車両の車速値を検出し、当該右隣接車線の他車両の車速値と、自車両の現在の登録セット車速値(即ち自車両の現在の車速)とが略同等の車速であるか否かの確認を行う。なお、右隣接車線の他車両の車速の検出は、上述の左隣接車線の他車両の車速の検出と同様に、例えば周辺監視ユニット20に含まれるミリ波レーダ等の周辺環境認識センサ20aの検出結果に基づいて算出する周知の技術によって求めることができる。
【0202】
このステップS31の処理にて、右隣接車線の他車両の車速値と、自車両の登録セット車速値とが略同等車速であることが確認された場合には、ステップS32の処理に進む。
【0203】
そして、ステップS32において、走行制御ユニット22は、現在の登録セット車速値を所定値だけ下げた新たな仮セット車速値を設定し、この新たな仮セット車速値に基づく走行制御を行う。これにより、自車両は、右隣接車線の他車両に対して遅い速度で走行することになる。したがって、自車両は、右隣接車線の他車両に対して後方に向けて遠ざかり、自車両と当該他車両との距離を拡げることができる。その後、
図2のステップS12の処理に戻る。
【0204】
なお、この場合における登録セット車速値の下げ幅は、例えば2~3割程度の大幅な下げ幅とするのが望ましい。
【0205】
また、
図4の処理シーケンスでは省略しているが、登録セット車速値を大幅に下げて走行制御を実行する場合には、自車両は、上述のステップS16(
図2参照)と同様に、後続車両の存在を確認する処理を加えて行ってもよい。この場合に、自車両の後方の自車線上に後続車両の接近等の状況が確認された場合には、車速値の下げ幅を少なくする等の処理を適宜行うようにすればよい。
【0206】
また、ステップS32の処理にて、右隣接車線の他車両の車速値と、自車両の仮セット車速値とが略同等車速ではない場合には、ステップS32の処理を経ずに、現在の登録セット車速値による制御を継続し、
図2のステップS12の処理に戻る。
【0207】
一方、上述のステップS30の処理にて、右隣接車線の自車両の近傍に他車両が認識されていない場合は、ステップS33の処理に進む。
【0208】
続いて、
図4のステップS33において、走行制御ユニット22は、自車両の前方において、自車線上の先行車両のブレーキランプの点灯頻度についての確認を行う。ここで、ブレーキランプの点灯頻度とは、ブレーキランプが点灯と消灯との変化が繰り返される頻度のことを指している。一般に、ブレーキランプの点灯頻度が高いほど、例えば急加速や急減速を繰り返し行うといった煩雑な運転が行われているものと推測される。
【0209】
そこで、本実施形態の走行制御装置1においては、
図4のステップS33の処理にて、先行車両のブレーキランプの点灯頻度を確認している。ここで、先行車両のブレーキランプの点灯頻度が高いことが確認された場合には、ステップS32の処理に進む。
【0210】
そして、このステップS32の処理にて、現在の登録セット車速値を所定値だけ下げた新たな仮セット車速値を設定し、この新たな仮セット車速値に基づく走行制御を行う。その後、
図2のステップS12の処理に戻る。
【0211】
なお、この場合における登録セット車速値を下げる設定は、先行車両のブレーキランプの点灯頻度が高いほど、登録セット車速値の下げ幅を大きくするように設定するのが望ましい。
【0212】
一方、上述のステップS33の処理にて、先行車両のブレーキランプの点灯頻度が正常である(点灯頻度が高くない)ことが確認された場合は、ステップS34の処理に進む。
【0213】
続いて、
図4のステップS34において、走行制御ユニット22は、先行車両の横位置変化を確認し、その先行車両の横位置変化が所定の閾値以上であるか否かの確認を行う。ここで、先行車両の横位置変化とは、例えば蛇行走行等の場合に見られる挙動である。したがって、先行車両の横位置変化が所定の閾値を超えている場合には、当該先行車両は危険な運転を継続して行っているものと推測できる。
【0214】
そこで、本実施形態の走行制御装置1においては、
図4のステップS34の処理にて、先行車両の横位置変化を確認し、その横位置変化が所定の閾値以上であることが確認された場合には、ステップS32の処理に進む。この場合における横位置変化の所定の閾値とは、例えば、先行車両の車両幅を目安とし、当該車両幅の2分の1程度以上の横位置変化を繰り返すような場合を想定している。
【0215】
そして、このステップS32の処理にて、現在の登録セット車速値を所定値だけ下げた新たな仮セット車速値を設定し、この新たな仮セット車速値に基づく走行制御を行う。その後、
図2のステップS12の処理に戻る。
【0216】
なお、この場合における登録セット車速値を下げる設定は、先行車両の横位置変化が大きいほど、登録セット車速値の下げ幅を大きくするように設定するのが望ましい。
【0217】
一方、上述のステップS34の処理にて、先行車両の横位置変化が少ない(若しくは、ほとんど横方向の変化がない)ことが確認された場合は、先行車両は正常に走行しているものとして、ステップS35の処理に進む。
【0218】
続いて、ステップS35において、走行制御ユニット22は、自車線を含む道路に対向して並設されている対向車線の渋滞状況を確認する。このような周囲状況の確認は、例えば、カメラユニット21によって取得される画像データに基づいて周囲状況を認識する周知の技術が用いられる。
【0219】
ここで、対向車線が渋滞状況にあると確認された場合には、ステップS32の処理に進む。また、対向車線が渋滞していなければ、
図2のステップS12の処理に戻る。
【0220】
そして、このステップS32の処理にて、現在の登録セット車速値を所定値だけ下げた新たな仮セット車速値を設定し、この新たな仮セット車速値に基づく走行制御を行う。その後、
図2のステップS12の処理に戻る。
【0221】
以上述べたように、
図4のステップS27~S32の処理シーケンスにおいては、自車線の左右の隣接車線を走行する他車両を考慮した走行制御を行っている。また、同
図4のステップS33、S34の各処理においては、先行車両の異常な挙動を考慮した走行制御を行っている。さらに、同
図4のステップS35の処理においては、自車両の周囲状況のうち特に対向車線の渋滞状況を考慮した走行制御を行っている。
【0222】
一般に、複数車線の道路を走行する際には、自車両は、隣接車線を走行する他車両との長時間にわたる併走を回避したいという要望がある。道路上を走行中の車両において、自車両と他車両とが接近した状態で長時間継続して併走することは、接触等の危険性が常に存在する。このことから、自車両と他車両とが接近した状態で併走するような状況は、できるだけ避けることが望ましい。
【0223】
また、通常の場合、左側通行を基本とする道路システムにおいては、左寄り車線(走行車線)を走行する車両が、右寄り車線(追越車線)を走行する車両よりも速い速度で追い抜いていくという状況は、円滑な交通を阻害する要因になり、好ましい状況ではない。
【0224】
そこで、本実施形態の走行制御装置1は、
図4のステップS27~S29の処理シーケンスにおいて、自車両が最左端車線以外の車線を走行している状況で、かつ自車両と略同等の車速で左隣接車線を他車両が走行している状況を確認した場合には、自車両と左隣接車線の他車両との併走を回避する制御を行う。そのために、自車両は、上述のステップS26(
図3)にて登録された登録セット車速値に基づく走行制御から、現在設定されているドライバセット車速値に基づく走行制御に切り換える。これにより、自車両は、左隣接車線の他車両に対して増速されるので、自車両は、左隣接車線の他車両よりも前方へ離れることができる。
【0225】
図6は、複数車線を有する道路(片側三車線道路を例示)を走行中の自車両がエコACC制御モードでの走行制御中に、左隣接車線の自車両近傍に他車両を認識した場合の状況を示している。この
図6は、
図4のステップS27~ステップS29の処理シーケンスを具体的な例示によって説明する概念図である。
【0226】
図6に示す状況は、
図2~
図3で示す処理シーケンスが実行された後、
図3のステップS26の処理において登録された登録セット車速値に基づくACC制御が継続して行われている状況であるものとする。
【0227】
即ち、
図6において、符号Mは、本実施形態の走行制御装置1が搭載されている自車両を示している。この自車両Mは、走行制御装置1を起動させた状態で、道路100上を走行しているものとする。ここで、
図6に示す道路100は、例えば片側三車線道路として例示している。なお、この場合において、当該道路の対向車線側は、図示を省略している。
【0228】
自車両Mは、当該道路100上における三車線のうちの中央車線を自車線として走行しているものとする。また、この道路100の制限速度は、速度制限標識110によって、制限速度=80km/hであることが示されているものとする。
【0229】
このような状況下において、
図6に示す自車両Mは、上述した処理シーケンスのうち、
図3のステップS26の処理にて登録された登録セット車速値RS=80km/hでのACC制御を実行して走行しているものとする。したがって、自車両Mは、このとき車速V1=80km/hで走行しているものとする。また、ドライバセット車速値DSは90km/hが設定されているものとする。
【0230】
このとき、自車両Mは、
図3のステップS25の処理にて先行車両を認識していない状態である(ステップS25の「Y」の場合)。したがって、自車両Mの前方には、自車線上に先行車両は存在していない。なお、
図6において、符号Maを付して点線で示す車両の図示は、後述するように、自車両Mが他車両M3よりも高い速度値に切り換えて(RS→DS)走行を継続した結果、自車両(Ma)が他車両M3から離れた位置関係となることを示している。
【0231】
一方、このとき、自車両Mは、左隣接車線に自車両近傍の他車両M3を認識している状態である(
図4のステップS27の「Y」の場合)。ここで、左隣接車線の自車両近傍の他車両M3の認識は、上述したように、例えば周辺監視ユニット20の周辺環境認識センサ20aを用いて検出することができる。
【0232】
なお、
図6において、二点鎖線で示される符号FR、FL、RR、RLで指し示す各範囲は、各周辺環境認識センサ20aによる認識範囲を概念的に示すものとする。具体的には、符号FRで示す範囲は、自車両Mの前部右側方位置に配置された周辺環境認識センサ20aの認識範囲を示している。同様に、符号FLで示す範囲は、自車両Mの前部左側方位置に配置された周辺環境認識センサ20aの認識範囲を示している。同様に、符号RRで示す範囲は、自車両Mの後部右側方位置に配置された周辺環境認識センサ20aの認識範囲を示している。同様に、符号RLで示す範囲は、自車両Mの後部左側方位置に配置された周辺環境認識センサ20aの認識範囲を示している。
【0233】
したがって、
図6においては、自車両Mは、後部左側方位置に配置された周辺環境認識センサ20aによって、左隣接車線上において自車両近傍の他車両M3を認識している状況を示している。そして、このとき、自車両Mは、左隣接車線の他車両M3の車速をも検出している。この場合において、当該他車両M3の車速V3は、自車両Mの車速V1と略同等の車速であるものとする(
図4のステップS28の「Y」の場合)。
図6においては、自車両Mは、登録セット車速値RS=80km/sにて巡航しているものとされている。したがって、左隣接車線の他車両M3の車速はV3≒80km/hであるものとする。
【0234】
このような状況になったとき、自車両Mは、左隣接車線の他車両M3との併走状態を避けるために、登録セット車速値RS=80km/hに代えてドライバセット車速値DS=90km/hを用いる走行制御に切り換える(
図4のステップS29)。これにより、自車両Mは左隣接車線の他車両M3に対して前方に向けて遠ざかり、やがて自車両Mと当該他車両M3との距離が拡がる。このときの自車両の位置を、
図6の符号Maで示している。
【0235】
次に、本実施形態の走行制御装置1は、
図4のステップS30~S32の処理シーケンスにおいて、自車両が最右端車線以外の車線を走行している状況で、かつ自車両と略同等の車速で右隣接車線を他車両が走行している状況を確認した場合には、自車両と右隣接車線の他車両との併走を回避する制御を行う。そのために、自車両は、上述のステップS26(
図3)にて登録された登録セット車速値を所定値だけ下げた新たな仮セット車速値を設定し、この新たな仮セット車速値に基づく走行制御に切り換える。これにより、自車両は、右隣接車線の他車両よりも後方に離れることができる。
【0236】
図7は、複数車線を有する道路(片側三車線道路を例示)を走行中の自車両がエコACC制御モードでの走行制御中に、右隣接車線の自車両近傍に他車両を認識した場合の状況を示している。この
図7は、
図4のステップS30~ステップS32の処理シーケンスを具体的な例示によって説明する概念図である。
【0237】
図7に示す状況は、上述の
図6で説明した状況と略同様である。したがって、
図6と同様の状況については、その説明を省略し、異なる部分についてのみ、以下に説明する。
【0238】
ここで、
図7の状況は、
図2~
図3で示す処理シーケンスが実行された後、
図3のステップS26の処理において登録された登録セット車速値に基づくACC制御が継続して行われている状況であるのは、
図6の状況と同様である。
【0239】
ここで、
図7に示す自車両Mは、登録セット車速値RS=80km/hでのACC制御を実行して走行している。したがって、このときの自車両Mの車速V1=80km/hである。なお、ドライバセット車速値DS=90km/hが設定されている。
【0240】
そして、このとき、自車両Mの前方には、
図7に示すように、自車線上に先行車両は存在していない。
【0241】
一方、このとき、自車両Mは、右隣接車線に自車両近傍の他車両M4を認識している状態である(
図4のステップS30の「Y」の場合)。ここで、右隣接車線の自車両近傍の他車両M4の認識は、
図6の場合と同様に、例えば周辺監視ユニット20の周辺環境認識センサ20aを用いて検出することができる。
【0242】
したがって、
図7においては、自車両Mは、前部右側方位置に配置された周辺環境認識センサ20aによって、右隣接車線上において自車両近傍の他車両M4を認識している状況を示している。そして、このとき、自車両Mは、右隣接車線の他車両M4の車速をも検出している。この場合において、当該他車両M4の車速V4は、自車両Mの車速V1と略同等の車速であるものとする(
図4のステップS31の「Y」の場合)。
図7においては、自車両Mは、登録セット車速値RS=80km/sにて巡航しているものとされている。したがって、右隣接車線の他車両M4の車速はV4≒80km/hであるものとする。
【0243】
このような状況になったとき、自車両Mは、右隣接車線の他車両M4との併走状態を避けるために、登録セット車速値RS=80km/hを所定値だけ下げた仮セット車速値TS=70km/hを設定し、この仮セット車速値TSを用いる走行制御に切り換える(
図4のステップS32)。これにより、自車両Mは右隣接車線の他車両M4に対して後方に向けて遠ざかり、やがて自車両Mと当該他車両M4との距離が拡がる。このときの他車両M4の位置を、
図7の符号M4aで示している。
【0244】
次に、本実施形態の走行制御装置1は、
図4のステップS33、S34の各処理において、自車両が自車線上の前方の先行車両に追従して走行している状況で、かつ先行車両の異常な挙動を確認した場合には、自車両の車速を減速させて先行車両に追従する走行を解除し、当該先行車両から離れる走行制御を行う。
【0245】
ここで、先行車両の異常な挙動とは、例えば、先行車両のブレーキランプの点灯頻度が多い場合(ステップS33)や、先行車両の横位置変化が大きい場合(ステップS34)等である。
【0246】
そのために、自車両は、上述の
図3のステップS26にて登録された登録セット車速値を所定値だけ下げた新たな仮セット車速値を設定し、この新たな仮セット車速値に基づく走行制御に切り換える。これにより、自車両は、先行車両よりも後方に離れることができる。
【0247】
なお、
図5において示す符号BLによって、先行車両M2のブレーキランプの点灯状態を概念的に示している。
【0248】
さらに、本実施形態の走行制御装置1は、
図4のステップS35の処理において、自車両が自車線上の前方の先行車両に追従して走行している状況で、かつ対向車線が渋滞している状況を確認した場合には、自車両の車速を減速させて先行車両に追従する走行を解除して、速度を抑えた走行制御を行う。
【0249】
そのために、自車両は、上述の
図3のステップS26にて登録された登録セット車速値を所定値だけ下げた新たな仮セット車速値を設定し、この新たな仮セット車速値に基づく走行制御に切り換える。これにより、自車両は、歩行者等の飛び出しがあったとしても、いつでも停止可能な速度で走行するので、安全な走行を維持できる。
【0250】
図8は、自車線を走行中の自車両がエコACC制御モードでの走行制御中に、対向車線が渋滞している状況を示している。この
図8は、
図4のステップS35の処理を具体的な例示によって説明する概念図である。
【0251】
一般に、自車両が走行している自車線側では交通が円滑に流れていても、対象車線側が渋滞しているといった状況がよくみられる。このような状況の場合、対向車線側の渋滞している車列の間を歩行者等が歩行して、自車線側の道路を横断しようとする可能性がある。このような場合において、自車両が自車線側を比較的高い速度で走行していたとすると、当該横断歩行者を回避することができない可能性も考えられる。
【0252】
そこで、本実施形態の走行制御装置1においては、対向車線が渋滞している状況では、当該渋滞車列の間から飛び出してくる歩行者等の存在を想定して、自車両の車速をいつでも停車できる速度まで予め大きく下げた仮セット車速値の設定を行っている。これにより、渋滞車列の間から飛び出してくる歩行者等を回避することができる。
【0253】
図8に示す状況は、
図2~
図3で示す処理シーケンスが実行された後、
図3のステップS26の処理において登録された登録セット車速値に基づくACC制御が継続して行われている状況であるものとする。この点において、上述の
図6、
図7に示す状況と略同様である。ただし、
図8においては、自車両の走行している道路の環境は、
図6、
図7で示した環境とは、以下の点で異なる。
【0254】
即ち、
図8において、符号Mは、本実施形態の走行制御装置1が搭載されている自車両を示しているのは、
図6、
図7と同様である。この自車両Mは、走行制御装置1を起動させた状態で、道路100A上を走行しているものとする。ここで、
図8に示す道路100Aは片側一車線道路の例示である。つまり、
図8の道路100Aは、自車両Mが走行している自車線101と、この自車線101と平行に設置され、対向車両が走行する対向車線102とによって構成される一般的な道路である。この道路100Aの制限速度は、速度制限標識110によって、制限速度=40km/hであることが示されているものとする。そして、この道路100Aにおいて、自車両Mが走行している自車線101側は、比較的交通が流れている一方、対向車線102側には、複数の対向車Mxが車列を形成して渋滞している状況にあるものとする。
【0255】
このような状況下において、
図8に示す自車両Mは、上述した処理シーケンスのうち、
図3のステップS26の処理にて、例えば、登録セット車速値RS=40km/hでのACC制御を実行して走行しているものとする。したがって、自車両Mは、このとき車速V1=40km/hで走行しているものとする。
【0256】
このとき、自車両Mは、
図3のステップS25の処理にて先行車両を認識していない状態とする(ステップS25の「Y」の場合)。したがって、自車両Mの前方には、
図6に示すように、自車線上に先行車両は存在していない。
【0257】
一方、このとき、自車両Mは、対向車線102が渋滞している状況を認識しているものとする(
図4のステップS35の「Y」の場合)。ここで、対向車線102の状況認識は、例えばカメラユニット21や周辺監視ユニット20等を用いて周囲状況を認識する周知の技術が用いられる。
【0258】
このような状況になったときには、対向車線102側の車列の間から歩行者等が飛び出してくる可能性がある。例えば、
図8に示す例は、道路100Aにおける対向車線102側にいる歩行者(符号H0参照)が当該対向車線102の渋滞車列の間を通って歩行しており(符号H参照)、さらに当該歩行者Hは対向車線102を横断し(符号H1参照)、やがて、自車線101側に至り(符号H2参照)、最終的に自車線101を横断する(符号H3参照)ものとする。
【0259】
この場合において、自車両Mは走行しながら、例えばカメラユニット21等によって前方の環境認識を常に行っている。ここで、歩行者が、
図8の符号Hで示す位置にあるときには、当該歩行者(H)は対向車線102の車列に遮られていると共に、自車両Mのカメラユニット21による認識範囲VAの外に存在している。したがって、この時点において、自車両Mは、当該歩行者(H)を認識できていない。
【0260】
その後、歩行者が移動して、例えば
図8の符号H1で示す位置に至ったとする。この時点で、歩行者(H1)は、自車両Mのカメラユニット21の認識範囲VA内に入る。したがって、このとき、自車両Mと歩行者(H1)との間に、遮蔽物等が存在しなければ、自車両Mは当該歩行者(H1)を認識できる。
【0261】
しかしながら、歩行者が符号Hで示す位置から符号H1で示す位置に至るまでの間にも、自車両Mは前方に進んでいる。したがって、自車両Mが歩行者を認識できる時点における自車両Mと歩行者との距離は、自車両Mの車速V1が速いほど接近し、自車両Mは飛び出し歩行者等を回避できずに衝突してしまう可能性が大きくなる。
【0262】
そこで、本実施形態の走行制御装置1においては、渋滞中の対向車線102側の車列の間から歩行者等が飛び出してくることを想定して、予め自車両の車速V1(
図8の例では40km/h)を、いつでも停止することのできる程度の速度(例えば自車両Mの車速の5割減程度;V1=20km/h程度)まで、予め大きく下げた仮セット車速値の設定を行う。
【0263】
これにより、自車両Mは、対向車線102が渋滞している際に、対向車線102側の車列の間から歩行者等が飛び出してきた際にも、緊急制動制御等を行って、容易に回避対応することができる。
【0264】
なお、本実施形態の走行制御装置1において、先行車両、後続車両、左右隣接車線の併走車両の各車速(V2~V4)を検出するのに際し、上述の説明においては、車速の絶対値を検出する例示により説明しているが、このような例に限られることはない。他車両の車速を検出する際には、例えば自車両と対象他車両との相対速度を検出する構成であってもよい。
【0265】
なお、上述したように、本実施形態を説明するのに際しては、左側通行を基本とする道路システムに対応する場合を例示して説明している。したがって、本実施形態の説明において、左隣接車線というときには、主に走行車線を指すものとしている。また、本実施形態の説明において右隣接車線というときには、主に追越車線を指すものとしている。したがって、右側通行システムに応用するためには、左隣接車線を追越車線とし、右隣接車線を走行車線として考慮すればよい。
【0266】
以上説明したように上記一実施形態によれば、車間距離制御機能付クルーズコントロール(ACC制御)機能を備えた車両の走行制御装置において、運転者が予め設定したドライバセット車速値を用いてACC制御による走行制御中に、先行車両を認識し、自車両の車速が道路の制限速度を超えていて、現在の登録セット車速値(ドライバセット車速値)が先行車両の車速値以上である場合であって、かつ後続車両が所定時間以上継続して検出されていない場合には、先行車両の車速値より低い車速値(先行車両の車速値から所定値だけ減じた車速値)を仮セット車速値として設定して走行制御を行う。この場合において、仮セット車速値は、自車両が走行中の道路の制限速度基準の所定値を下限とし、仮セット車速値(先行車両の車速値より低い車速値)を上限とする範囲内で設定する。
【0267】
これにより、本実施形態の走行制御装置1は、自車両と先行車両との車間距離を大きく広げることができる。また、このとき後続車両が存在していないことを確認しているので、自車両は、ほぼ単独状態での走行を、設定された一定の車速値によって継続することができる。したがって、自車両は、先行車両及び後続車両に接近して走行することを回避でき、よって自車両の安全走行を確保することができる。
【0268】
この場合において、自車両は、交通の流れに逆らうことなく、自車両の車速値を抑えつつ、自車両を先行車両から離す走行制御を行う。これによって、自車両は当該先行車両の挙動に影響されることなく、設定された一定の車速値での安定した走行を維持することができる。このことは、先行車両の挙動に大きく影響されることに起因して生じる頻繁な加減速等を抑止することができるので、良好な乗り心地と安全な走行を維持することができる。これと同時に、速度を抑えて安定した走行制御を維持することができるので、燃料消費率の向上に寄与することもできる。
【0269】
さらに加えて、本実施形態の走行制御装置1は、自車両の左右隣接車線を走行する併走車両に対しても、適宜自車両の車速値を制御することで、自車両と併走車両との併走状体を回避する。即ち、走行車線の併走車両に対しては、自車両を先に進める車両速度の制御を行う一方、追越車線の併走車両に対しては、自車両を遅らせるべく自車両の車両速度の制御を行う。これにより、自車両と併走車両とが接近して併走する状態を回避することができるので、自車両の安全走行を確保できる。
【0270】
なお、本実施形態においては、先行車両の車速値より低い車速値を仮セット車速値として設定する制御を行う条件の一つとして、自車両の車速値が走行中の道路の制限速度値を超えている場合を例示しているが、これに限られることはない。例えば、このような条件に代えて、道路の制限速度値を基準として一定の値が増減設定された所定の速度値を超えている場合などとしてもよい。つまり、当該制御を行うための条件としては、例えば制限速度を必ず超えていなければならないわけではなく、当該制限速度を基準とする増減した速度値の範囲内であればよい。したがって、例えば、制限速度と全く同等速度値の場合であっても、また、制限速度より少し低い速度値の場合であっても(たとえ、1km/hだけ低い速度値であっても)、当該制御を作動し得るようにするのが望ましい。
【0271】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用を実施することができることは勿論である。さらに、上記実施形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせによって、種々の発明が抽出され得る。例えば、上記一実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題が解決でき、発明の効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。この発明は、添付のクレームによって限定される以外にはそれの特定の実施態様によって制約されない。
【符号の説明】
【0272】
1…走行制御装置
10…車内通信回線
11…ロケータユニット
12…地図ロケータ演算部
12a…自車位置推定部
12b…地図情報取得部
13…加速度センサ
14…車輪速センサ
15…ジャイロセンサ
16…GNSS受信機
17…道路情報受信機
18…高精度道路地図データベース
19…ルート情報入力部
20…周辺監視ユニット
20a…周辺環境認識センサ
20b…周辺環境認識部
21…カメラユニット
21a…メインカメラ
21b…サブカメラ
21c…画像処理ユニット(IPU)
21d…走行環境認識部
22…走行制御ユニット
22a…操舵支援制御部
22b…目標走行経路設定部
22c…セット車速値設定部
23…エンジン制御ユニット
24…パワーステアリング制御ユニット
25…ブレーキ制御ユニット
27…スロットルアクチュエータ
28…電動パワステモータ
29…ブレーキアクチュエータ
33…モード切換スイッチ
34…ハンドルタッチセンサ
35…操舵トルクセンサ
36…ブレーキセンサ
37…アクセルセンサ
38…報知装置
100,100A…道路
101…自車線
102…対向車線
110…速度制限標識
H…歩行者
M…自車両
M2…先行車両
M3…左隣接車線の他車両
M4…右左隣接車線他車両
Mx…対向車
V1…自車両の車速
V2…先行車両の車速
V3…左隣接車線の他車両の車速
V4…右隣接車線の他車両の車速
DS…ドライバセット車速値
RS…登録セット車速値
SL…制限速度基準の所定値
TS…仮セット車速値