(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】リプログラミングシステムおよびリプログラミングツール
(51)【国際特許分類】
H04L 69/00 20220101AFI20241218BHJP
F02D 29/02 20060101ALI20241218BHJP
G06F 13/42 20060101ALI20241218BHJP
H04L 67/142 20220101ALI20241218BHJP
【FI】
H04L69/00
F02D29/02 H
G06F13/42 320A
H04L67/142
(21)【出願番号】P 2021059194
(22)【出願日】2021-03-31
【審査請求日】2024-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小松 優祐
(72)【発明者】
【氏名】小田原 健太
(72)【発明者】
【氏名】松本 秀司
(72)【発明者】
【氏名】飯波 久太郎
【審査官】吉田 歩
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-196158(JP,A)
【文献】国際公開第2020/259956(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/075865(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/039796(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 67/142
H04L 69/00
F02D 29/02
G06F 13/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リプログラミング用のデータが記憶された記憶媒体と、
車両に設けられ、前記記憶媒体を接続可能なリプログラミング対象ユニットと、
前記リプログラミング対象ユニットに対して通信可能に接続されるリプログラミングツールと、
を備え、
前記リプログラミングツールと、前記リプログラミング対象ユニットとは、第1のプロトコルを用いた第1の通信方法により通信可能であり、
前記記憶媒体と、前記リプログラミング対象ユニットとは、前記第1のプロトコルと異なる第2のプロトコルを用いた第2の通信方法により通信可能であり、
前記リプログラミングツールは、所定の契機に基づいて前記リプログラミング対象ユニットへ開始要求メッセージを送信し、
前記リプログラミング対象ユニットは、前記開始要求メッセージを受信すると、前記リプログラミングツールへ開始応答メッセージを送信した後に、前記記憶媒体に記憶された前記リプログラミング用のデータを取得して、リプログラミングを開始し、
前記リプログラミングツールは、前記開始応答メッセージを受信すると、前記リプログラミング対象ユニットからのリクエストメッセージを受信可能なリクエスト受信モードに切り替えを行い、
前記リプログラミング対象ユニットは、前記リプログラミングが終了すると、前記リプログラミングツールへ前記リクエストメッセージとしてリプログラミング完了通知を送信し、
前記リプログラミングツールは、前記リプログラミング完了通知を受信すると、前記リクエスト受信モードを終了する、リプログラミングシステム。
【請求項2】
車両に設けられ、リプログラミング用のデータが記憶された記憶媒体を接続可能なリプログラミング対象ユニットに対して、通信可能に接続されるリプログラミングツールであって、
前記リプログラミングツールと、前記リプログラミング対象ユニットとは、第1のプロトコルを用いた第1の通信方法により通信可能であり、
前記記憶媒体と、前記リプログラミング対象ユニットとは、前記第1のプロトコルと異なる第2のプロトコルを用いた第2の通信方法により通信可能であり、
前記リプログラミングツールは、
所定の契機に基づいて前記リプログラミング対象ユニットへ開始要求メッセージを送信し、
前記リプログラミング対象ユニットから、前記開始要求メッセージに対する応答として開始応答メッセージを受信すると、前記リプログラミング対象ユニットからのリクエストメッセージを受信可能なリクエスト受信モードに切り替えを行い、
前記リプログラミング対象ユニットから、前記リクエストメッセージとしてリプログラミング完了通知を受信すると、前記リクエスト受信モードを終了する、リプログラミングツール。
【請求項3】
前記リプログラミングツールは、前記リクエスト受信モードへの切り替えを行う前、および、前記リクエスト受信モードを終了した後には、前記リクエストメッセージを受信不可能な通常モードに設定される、請求項2に記載のリプログラミングツール。
【請求項4】
前記第1のプロトコルは、UDSプロトコルである、請求項2または3に記載のリプログラミングツール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リプログラミングシステムおよびリプログラミングツールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両に設けられる各種電子機器のプログラムを更新する(以下、「リプログラミング」とも呼ぶ)技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、リプログラミングを実施するために外部装置を車両に接続して、車両に搭載された制御装置のリプログラミングを実施することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば、リプログラミングを実施する対象の制御装置(以下、「リプログラミング対象ユニット」とも呼ぶ)と、リプログラミングを実施するために外部装置(以下、「リプログラミングツール」とも呼ぶ)との通信に係るリプログラミングを実施し、リプログラミングツールとリプログラミング対象ユニットとの通信が途切れた場合、例えば、通信に係るプロトコルの制約により、リプログラミングの実施中にリプログラミングツールがリプログラミング対象ユニットの状態確認を継続的に実施できずに、リプログラミングを正常に実施できないおそれがあった。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑み、通信に係るプロトコルの制約にかかわらず、リプログラミングツールとリプログラミング対象ユニットとの通信に係るリプログラミングを正常に実施可能とすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一実施形態に係るリプログラミングシステムは、
リプログラミング用のデータが記憶された記憶媒体と、
車両に設けられ、前記記憶媒体を接続可能なリプログラミング対象ユニットと、
前記リプログラミング対象ユニットに対して通信可能に接続されるリプログラミングツールと、
を備え、
前記リプログラミングツールと、前記リプログラミング対象ユニットとは、第1のプロトコルを用いた第1の通信方法により通信可能であり、
前記記憶媒体と、前記リプログラミング対象ユニットとは、前記第1のプロトコルと異なる第2のプロトコルを用いた第2の通信方法により通信可能であり、
前記リプログラミングツールは、所定の契機に基づいて前記リプログラミング対象ユニットへ開始要求メッセージを送信し、
前記リプログラミング対象ユニットは、前記開始要求メッセージを受信すると、前記リプログラミングツールへ開始応答メッセージを送信した後に、前記記憶媒体に記憶された前記リプログラミング用のデータを取得して、リプログラミングを開始し、
前記リプログラミングツールは、前記開始応答メッセージを受信すると、前記リプログラミング対象ユニットからのリクエストメッセージを受信可能なリクエスト受信モードに切り替えを行い、
前記リプログラミング対象ユニットは、前記リプログラミングが終了すると、前記リプログラミングツールへ前記リクエストメッセージとしてリプログラミング完了通知を送信し、
前記リプログラミングツールは、前記リプログラミング完了通知を受信すると、前記リクエスト受信モードを終了する。
【0008】
また、上記課題を解決するために、本発明の一実施形態に係るリプログラミングツールは、
車両に設けられ、リプログラミング用のデータが記憶された記憶媒体を接続可能なリプログラミング対象ユニットに対して、通信可能に接続されるリプログラミングツールであって、
前記リプログラミングツールと、前記リプログラミング対象ユニットとは、第1のプロトコルを用いた第1の通信方法により通信可能であり、
前記記憶媒体と、前記リプログラミング対象ユニットとは、前記第1のプロトコルと異なる第2のプロトコルを用いた第2の通信方法により通信可能であり、
前記リプログラミングツールは、
所定の契機に基づいて前記リプログラミング対象ユニットへ開始要求メッセージを送信し、
前記リプログラミング対象ユニットから、前記開始要求メッセージに対する応答として開始応答メッセージを受信すると、前記リプログラミング対象ユニットからのリクエストメッセージを受信可能なリクエスト受信モードに切り替えを行い、
前記リプログラミング対象ユニットから、前記リクエストメッセージとしてリプログラミング完了通知を受信すると、前記リクエスト受信モードを終了する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、通信に係るプロトコルの制約にかかわらず、リプログラミングツールとリプログラミング対象ユニットとの通信に係るリプログラミングを正常に実施可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るリプログラミングシステムを説明するための機能ブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係るリプログラミングシステムの処理を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す具体的な寸法、材料、数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0012】
図1は、本実施形態に係るリプログラミングシステム10を説明するための機能ブロック図である。
図1に示すように、リプログラミングシステム10は、リプログラミング用のデータが記憶された記憶媒体100と、記憶媒体100を接続可能なリプログラミング対象ユニット200を備える車両202と、車両202に接続するリプログラミングツール300と、を備える。
【0013】
車両202は、例えば、走行駆動源としてエンジンとモータとを備えるハイブリッド車両である。
【0014】
記憶媒体100は、リプログラミング用のデータが記憶可能であればよく、具体的には、例えば、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD、DVD、BD、USBメモリ、SDカード等を採用することができる。本実施形態では、記憶媒体100として、USBメモリを用いた場合について詳述する。
【0015】
また、リプログラミング対象ユニット200は、1つまたは複数のプロセッサ210と、プロセッサ210に接続される1つまたは複数のメモリ212と、を有する。プロセッサ210は、例えば、CPU(Central Processing Unit)を含む。メモリ212は、例えば、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などを含む。ROMは、CPUが使用するプログラムおよび演算パラメータ等を記憶する記憶素子である。RAMは、CPUにより実行される処理に用いられる変数およびパラメータ等のデータを一時記憶する記憶素子である。
【0016】
なお、リプログラミング対象ユニット200は、具体的には、例えば、エンジンの制御を行うエンジン制御部200a、モータの制御を行うモータ制御部200b、バッテリの制御を行うバッテリ制御部200c、車両202の外部のデータセンタと無線により通信を行う無線通信部200d、カーナビゲーションシステムの制御を行うカーナビゲーションシステム制御部200e、車両202の自動運転を制御する自動運転制御部200f等である。
【0017】
また、リプログラミングツール300は、1つまたは複数のプロセッサ310と、プロセッサ310に接続される1つまたは複数のメモリ312と、を有する。プロセッサ310は、例えば、CPUを含む。メモリ312は、例えば、ROMおよびRAMなどを含む。
【0018】
リプログラミングツール300と、リプログラミング対象ユニット200とは、CAN(Controller Area Network)により接続され、UDS(Unified Diagnostic Services)プロトコル(第1のプロトコル)を用いた第1の通信方法300aにより通信を行う(UDS on CAN)。UDSプロトコルは、ISO 14229-1で定められるカーエレクトロニクス内のECU環境における診断通信プロトコルである。
【0019】
UDSプロトコルは、例えば、K-LINEおよびCANの標準診断通信プロトコルに準拠する。なお、第1の通信方法300aとしてはこれに限定されず、リプログラミングツール300と、リプログラミング対象ユニット200とを、例えば、LIN(Local Interconnect Network)により接続して、UDSプロトコルを用いて通信を行う(UDS on LIN)こととしてもよい。
【0020】
いずれにしても、リプログラミングツール300と、リプログラミング対象ユニット200との間の通信プロトコル(第1のプロトコル)として、例えば、UDSプロトコルを用いることが好ましい。UDSプロトコルは、一般的に車載ECUが使用するCANやLIN上で使用でき、また、開発用のライブラリなどが豊富にあるため、導入コストや開発コストを抑えられることが可能となる。また、第1のプロトコルとして、UDSプロトコルを用いることで、車両202のセキュリティレベルを高い水準で維持することが可能となる。
【0021】
第1のプロトコルは、UDSプロトコルに限らず、通常、クライアント側からの信号を契機に通信を開始する制約がある通信プロトコルであればよい。すなわち第1のプロトコルはクライアントであるリプログラミングツール300がリプログラミング対象ユニット200へリクエストメッセージを送信していない場合、リプログラミング対象ユニット200からリプログラミングツール300へのメッセージを受信不可能な通常モードに設定されるという制約がある通信プロトコルであればよい。本発明はこのような通信に係るプロトコルの制約にかかわらず、リプログラミングツール300とリプログラミング対象ユニット200との通信に係るリプログラミングの実施を可能にする。
【0022】
また、記憶媒体100と、リプログラミング対象ユニット200とは、UDSプロトコル(第1のプロトコル)とは異なる第2のプロトコル(例えば、USBプロトコルやEthernetプロトコル)を用いた第2の通信方法100aにより通信を行う。なお、第2の通信方法100aは、従来の一般的なCANを用いた通信方法よりも高速であることが好ましい。例えば、第2の通信方法100aとして、USB(Universal Serial Bus)やEthernetを採用することができる。本実施形態では、第2の通信方法100aとしてUSBを用いた場合について説明する。
【0023】
近年、リプログラミング用のデータの容量が大きくなる傾向にある。そのため、第2の通信方法100aは、第1の通信方法300aよりも高速であることが好ましい。一方で、車両202のセキュリティは車両202全体で同等のセキュリティレベルであることが望ましい。
【0024】
そこで、リプログラミングツール300とリプログラミング対象ユニット200との間で後述する認証処理を行った後に、記憶媒体100に記憶されているリプログラミング用のデータへのアクセスを行うことによって、車両202全体で同等のセキュリティレベルの維持を図っている。
【0025】
ここで、リプログラミングツール300とリプログラミング対象ユニット200との通信に係るリプログラミングが実施されると、実施中のシーケンスが途切れてしまう。上述の通り、第1のプロトコルはクライアント側からしか通信を開始できない制約があるため、当該シーケンスが途切れてしまうと、リプログラミングツール300はリプログラミング対象ユニット200の状態確認を継続的に実施できずに、リプログラミングを正常に実施できないおそれがある。
【0026】
そこで、本実施形態では、リプログラミングツール300は、後述するように所定の契機に基づいてリプログラミング対象ユニット200へ開始要求メッセージを送信し、リプログラミング対象ユニット200から、開始要求メッセージに対する応答として開始応答メッセージを受信すると、リプログラミング対象ユニット200からのリクエストメッセージを受信可能なリクエスト受信モードに切り替えを行い、リプログラミング対象ユニット200から、リクエストメッセージとしてリプログラミング完了通知を受信すると、リクエスト受信モードを終了するように構成される。
【0027】
これにより、リプログラミングツール300は、リプログラミング対象ユニット200との通信が一時的に行えなくなるような種別のリプログラミングが実施された場合にも、リプログラミングツール300はリプログラミング対象ユニット200の状態確認を継続的に実施し、リプログラミングを正常に実施することができる。
【0028】
図2は、本実施形態に係るシーケンス図である。なお、以下で説明する処理を含む各種処理は、リプログラミング対象ユニット200のプロセッサ210またはリプログラミングツール300のプロセッサ310によって実行され得る。詳細には、リプログラミング対象ユニット200のメモリ212に記憶されているプログラムをプロセッサ210が実行すること、または、リプログラミングツール300のメモリ312に記憶されているプログラムをプロセッサ310が実行することにより、各種処理が実行される。
【0029】
リプログラミング対象ユニット200は、リプログラミングの実行を行う前に、まず、リプログラミングツール300を認証するリプログラミング対象ユニット側の認証処理(S200)を行う。これにより、不正な手段でリプログラミング対象ユニット200のリプログラミングが実施されることを防止することができる。
【0030】
リプログラミングツール300は、通常、リプログラミング対象ユニット200からのリクエストメッセージを受信不可能な通常モードに設定されている。通常モードに設定されているリプログラミングツール300は、リプログラミング対象ユニット200から認証を受けてリプログラミングツール側の認証処理(S300)が終了すると、リプログラミング対象ユニット200へリプログラミングの開始要求メッセージを送信する(S301)。換言すれば、リプログラミングツール300は、所定の契機に基づいてリプログラミング対象ユニット200へ開始要求メッセージを送信する。
【0031】
リプログラミング対象ユニット200は、リプログラミングツール300から開始要求メッセージを受信すると、リプログラミングツール300へ開始要求メッセージを受信したことを示す開始応答メッセージを送信する(S201)。
【0032】
リプログラミングツール300は、リプログラミング対象ユニット200から開始応答メッセージを受信すると、設定中の動作モードをリプログラミング対象ユニット200からのリクエストメッセージを受信不可能な通常モードから、リプログラミング対象ユニット200からのリクエストメッセージを受信可能なリクエスト受信モードに切り替えを行う(S302)。
【0033】
なお、リプログラミングツール300は、リプログラミング対象ユニット200から後述するリプログラミング完了通知を受信するまで、リクエスト受信モードを維持したまま待機する。
【0034】
このようにして、UDSプロトコルを用いた通信を行うリプログラミングツール300において、リプログラミング対象ユニット200にCANを用いた通信で継続的に状態確認を実施できない場合に、リプログラミング対象ユニット200からリプログラミング完了通知の通知を受け取ることができるようにする。
【0035】
また、リプログラミング対象ユニット200は、リプログラミングツール300へ開始応答メッセージを送信すると、記憶媒体100に記憶されているリプログラミング用のデータへのアクセスを行う(S202)。
【0036】
記憶媒体100は、リプログラミング対象ユニット200からのアクセスに基づき、リプログラミング用のデータをリプログラミング対象ユニット200へ送信する(S100)。
【0037】
リプログラミング対象ユニット200は、記憶媒体100からリプログラミング用のデータを受信すると、受信したリプログラミング用のデータに基づいて、リプログラミングの実施を開始する(S204)。
【0038】
リプログラミング対象ユニット200は、リプログラミングが終了すると、リプログラミングツール300へ、リプログラミングが終了したことを示すリクエストメッセージであるリプログラミング完了通知を送信する(S205)。
【0039】
リプログラミングツール300は、リプログラミング対象ユニット200からリプログラミング完了通知を受信すると、リクエスト受信モードを終了(S303)し、設定中の動作モードを通常モードに切り替えを行う。
【0040】
その後、リプログラミングツール300は、リプログラミングツール側のリプログラミング終了処理(S304)を行う。また、リプログラミング対象ユニット200は、リプログラミング対象ユニット側のリプログラミング終了処理(S206)を行う。
【0041】
上記のステップS206およびS304のリプログラミング終了処理では、リプログラミングによって書き込まれたプログラムが正常であるか否かの検証、および、リプログラミングが正規のリプログラミングツール300によって行われたか否かを検証し、これらの検証結果を示す識別子をリプログラミング対象ユニット200へ書き込む処理が実施される。
【0042】
このように、リプログラミングツール300は、リプログラミング対象ユニット200との通信が一時的に行えなくなるような種別のリプログラミングが実施された場合にも、リプログラミング完了通知を受け取ることができるため、リプログラミングの完了を判断し、リプログラミング終了処理に遷移することができる。
【0043】
上記のように、本実施形態のリプログラミングシステム10は、リプログラミング用のデータが記憶された記憶媒体100と、車両202に設けられ、記憶媒体100を接続可能なリプログラミング対象ユニット200と、リプログラミング対象ユニット200に対して通信可能に接続されるリプログラミングツール300と、を備え、リプログラミングツール300と、リプログラミング対象ユニット200とは、第1のプロトコルを用いた第1の通信方法300aにより通信可能であり、記憶媒体100と、リプログラミング対象ユニット200とは、第1のプロトコルと異なる第2のプロトコルを用いた第2の通信方法100aにより通信可能であり、リプログラミングツール300は、所定の契機に基づいてリプログラミング対象ユニット200へ開始要求メッセージを送信し、リプログラミング対象ユニット200は、開始要求メッセージを受信すると、リプログラミングツール300へ開始応答メッセージを送信した後に、記憶媒体100に記憶されたリプログラミング用のデータを取得して、リプログラミングを開始し、リプログラミングツール300は、開始応答メッセージを受信すると、リプログラミング対象ユニット200からのリクエストメッセージを受信可能なリクエスト受信モードに切り替えを行い、リプログラミング対象ユニット200は、リプログラミングが終了すると、リプログラミングツール300へリクエストメッセージとしてリプログラミング完了通知を送信し、リプログラミングツール300は、リプログラミング完了通知を受信すると、リクエスト受信モードを終了する。
【0044】
また、上記のように、本実施形態のリプログラミングツール300は、車両202に設けられ、リプログラミング用のデータが記憶された記憶媒体100を接続可能なリプログラミング対象ユニット200に対して、通信可能に接続されるリプログラミングツール300であって、リプログラミングツール300と、リプログラミング対象ユニット200とは、第1のプロトコルを用いた第1の通信方法300aにより通信可能であり、記憶媒体100と、リプログラミング対象ユニット200とは、第1のプロトコルと異なる第2のプロトコルを用いた第2の通信方法100aにより通信可能であり、リプログラミングツール300は、所定の契機に基づいてリプログラミング対象ユニット200へ開始要求メッセージを送信し、リプログラミング対象ユニット200から、開始要求メッセージに対する応答として開始応答メッセージを受信すると、リプログラミング対象ユニット200からのリクエストメッセージを受信可能なリクエスト受信モードに切り替えを行い、リプログラミング対象ユニット200から、リクエストメッセージとしてリプログラミング完了通知を受信すると、リクエスト受信モードを終了する。
【0045】
このような本実施形態のリプログラミングシステム10およびリプログラミングツール300では、リプログラミングによってリプログラミング対象ユニット200のリプログラミングの実施中に、リプログラミング対象ユニット200とリプログラミングツール300との通信が行えなくなる状態が発生したとしても、リプログラミングの終了後にリプログラミングツール300がリプログラミング完了通知を受信することができる。
【0046】
これにより、リプログラミングツール300は、リプログラミング対象ユニット200によるリプログラミングの完了を判断することが可能となるため、その後にリプログラミング終了処理へと移行を正常に実施することが可能となる。
【0047】
このように、本実施形態のリプログラミングシステム10およびリプログラミングツール300では、通信に係るプロトコルの制約にかかわらず、リプログラミングツール300とリプログラミング対象ユニット200との通信に係るリプログラミングの実施を可能にする。
【0048】
また、本実施形態のリプログラミングシステム10およびリプログラミングツール300では、リプログラミングツール300は、リクエスト受信モードへの切り替えを行う前、および、リクエスト受信モードを終了した後には、リクエストメッセージを受信不可能な通常モードに設定されてもよい。このような、通常、リプログラミング対象ユニット200からのリクエストメッセージを受信不可能な通常モードに設定されているリプログラミングツール300の場合に、本発明が特に有効となる。
【0049】
また、本実施形態のリプログラミングシステム10およびリプログラミングツール300では、第1のプロトコルは、UDSプロトコルであることが好ましい。UDSプロトコルは、一般的に車載ECUが使用するCANやLIN上で使用でき、また、開発用のライブラリなどが豊富にあるため、導入コストや開発コストを抑えられることが可能となる。また、第1のプロトコルとして、UDSプロトコルを用いることで、車両202のセキュリティレベルを高い水準で維持することが可能となる。上記したように、UDSプロトコルを用いた通信を行う場合、通常、リプログラミングツール300がリプログラミング対象ユニット200からのリクエストメッセージを受信不可能な通常モードに設定されるという制約がある。本発明はこのような通信に係るプロトコルの制約が生じる場合に特に有効となる。
【0050】
以上、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0051】
なお、上記実施例では、車両202がハイブリッド方式の場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、ガソリン車、電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、非プラグインハイブリッド車(ハイブリッド車)等、様々な車種に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0052】
10 リプログラミングシステム
100 記憶媒体
100a 第2の通信方法
200 リプログラミング対象ユニット
202 車両
300 リプログラミングツール
300a 第1の通信方法