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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】スターラ装置
(51)【国際特許分類】
   B01F 33/452 20220101AFI20241218BHJP
   B01F 35/90 20220101ALI20241218BHJP
   H02K 9/06 20060101ALI20241218BHJP
   B01F 35/32 20220101ALI20241218BHJP
【FI】
B01F33/452
B01F35/90
H02K9/06 E
B01F35/32
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021062248
(22)【出願日】2021-03-31
(65)【公開番号】P2022157808
(43)【公開日】2022-10-14
【審査請求日】2023-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100135862
【弁理士】
【氏名又は名称】金木 章郎
(72)【発明者】
【氏名】堀岡 悟
(72)【発明者】
【氏名】前田 駿太
【審査官】瀧澤 佳世
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-249271(JP,A)
【文献】実開昭54-133478(JP,U)
【文献】特開2019-097238(JP,A)
【文献】実開昭55-021006(JP,U)
【文献】特開平11-244681(JP,A)
【文献】特開2020-065317(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 33/452
B01F 35/90
H02K 9/06
B01F 35/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の中の試料中に配置された撹拌子を駆動する駆動用磁石と、
前記駆動用磁石を回転させるための回転力を発生する駆動源と、
前記駆動源が収容された駆動部と、
前記容器を載置するための載置面を有するプレート部と、
空気を流動させるためのフィンを有し、前記プレート部と前記駆動部との間に配置され、前記載置面の背面側に空気を流動させるファンと、を備え
前記ファンは、前記フィンによって前記ファンの外部から吸入された空気を、前記ファンの外部に放出するために案内する案内部を有するスターラ装置。
【請求項2】
前記ファンは、
前記ファンの外部から吸入された空気を流動させる吸入側空間と、
前記ファンの外部に放出するために、吸入された空気を流動させる放出側空間と、
を有する請求項1に記載のスターラ装置。
【請求項3】
前記ファンがファン磁石を備え、前記駆動用磁石と前記ファン磁石の間の磁力を介して前記ファンを回転させる請求項1又は2に記載のスターラ装置。
【請求項4】
前記案内部は、前記ファンとともに回転する請求項3に記載のスターラ装置。
【請求項5】
前記フィンは、前記載置面と前記案内部との間に位置する、請求項1ないし4のいずれかに記載のスターラ装置。
【請求項6】
前記プレート部が、前記ファンが収容されるファンケースに形成され、
前記ファンが水平方向に回転して遠心方向に空気を流動させることが可能であり、
前記ファンケースに、前記ファンの回転に伴い流動する空気を通過させる気体通過穴が形成されている請求項1ないし5のいずれかに記載のスターラ装置。
【請求項7】
前記気体通過穴が複数設けられ、複数の前記気体通過穴が互いに異なる高さで配置されている請求項に記載のスターラ装置。
【請求項8】
前記フィンが一段に形成され、
前記ファンが、前記一段の前記フィンにより空気を流動させる請求項1ないし7のいずれかに記載のスターラ装置。
【請求項9】
前記フィンが複数段に形成され、
前記ファンが、前記複数段の前記フィンにより空気を流動させる請求項1ないし7のいずれかに記載のスターラ装置。
【請求項10】
前記複数段のうち少なくとも一部の段の前記フィンが、他の段の前記フィンと逆向きに形成されている請求項に記載のスターラ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、磁石を内蔵した撹拌子を容器中で回転させるスターラ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、医学、薬学、生化学、及び、化学等の各種の研究分野においては、実験用や検査用等の器具として撹拌装置が用いられている。撹拌装置は、一般に、磁石(マグネット)を内蔵した撹拌子と、この撹拌子に磁力を作用させるスターラ(マグネティックスターラ)とを有している(特許文献1、特許文献2)。
【0003】
スターラは、駆動源となるモータや、モータにより回転させられる駆動用磁石を備えている。また、スターラには、溶液試料(以下では「試料」と称する)を収容した容器が載せられる。試料中には、磁石(撹拌子用磁石)を内蔵した撹拌子(スターラーバー)が沈められて配置される。そして、スターラが、駆動用磁石を回転させると、撹拌子の磁石に駆動用磁石の磁力が作用し、撹拌子が駆動用磁石とともに回転して、試料が撹拌される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-76788号公報
【文献】特開2014-240038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来のスターラにおいては、内蔵されたモータが、駆動用磁石を回転させ続けるのに伴って熱を発生させる。また、例えば細胞培養などに際しては、撹拌装置は、一定温度(例えば37±1℃など)の環境を保つよう温度管理が行われたインキュベータ内で使用されることがある。そして、撹拌が長時間(例えば数時間以上)に亘り行われたような場合には、モータ(駆動源)の熱が試料に伝わり、試料の温度(試料温度)を上昇させてしまうという技術的課題が生じ得る。
【0006】
本発明は、駆動源の熱が容器内の試料に伝わるのを防止することが可能なスターラ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る一実施形態のスターラ装置は、
容器の中の試料中に配置された撹拌子を駆動する駆動用磁石と、
前記駆動用磁石を回転させるための回転力を発生する駆動源と、
前記駆動源が収容された駆動部と、
前記容器を載置するための載置面を有するプレート部と、
空気を流動させるためのフィンを有し、前記プレート部と前記駆動部との間に配置され、前記載置面の背面側に空気を流動させるファンと、を備え
前記ファンは、前記フィンによって前記ファンの外部から吸入された空気を、前記ファンの外部に放出するために案内する案内部を有する
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、駆動源の熱が容器内の試料に伝わるのを防止することが可能なスターラ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態のスターラ装置を示す斜視図である。
図2】第1実施形態のスターラ装置から容器台を取り外した状態示す斜視図である。
図3図2の状態から1段ファンを取り外した状態示す斜視図である。
図4図3の状態から伝達機構部ケースを取り外した状態示す斜視図である。
図5】1段ファンを示す斜視図である。
図6】1段ファンから第3円板を取り外した状態を斜め下方から示す斜視図である。
図7図6の状態から第2円板を取り外した状態を斜め下方から示す斜視図である。
図8】1段ファンによる空気の流れを模式的に示す説明図である。
図9】容器台への温度上昇防止対策に係る実験装置を模式的に示す説明図である。
図10】(a)は温度上昇防止対策前の温度変化を示すグラフ、(b)は温度上昇防止対策後の温度変化を示すグラフである。
図11】第2実施形態に係る2段ファンを示す斜視図である。
図12】2段ファンから第3円板を取り外した状態を斜め下方から示す斜視図である。
図13】(a)は2段ファンを時計回りに回転させた場合における空気の流れを模式的に示す説明図であり、(b)は同じく2段ファンを反時計回りに回転させた場合における空気の流れを模式的に示す説明図である。
図14】第2実施形態のスターラ装置の空気の流れを模式的に示す説明図である。
図15】第3実施形態のスターラ装置を示す斜視図である。
図16】第3実施形態に係る3段ファンを示す斜視図である。
図17】3段ファンから第4円板を取り外した状態を斜め下方から示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の各実施形態に係る撹拌装置11や、この撹拌装置11を構成するスターラ装置(以下では「スターラ」と称する)12について、図面に基づき説明する。図1は第1実施形態に係るスターラ12を示している。このスターラ12には、例えば、円筒形の容器(試料容器)13が載置され、二点鎖線により仮想的に示す容器13の中の試料14に沈められた撹拌子15を、磁力により回転させることができる。そして、撹拌子15は、図中に示す直交座標系のXY面に平行な面内で回転する。ここで、容器13としては、円筒状のものに限らず種々のものを適用できる。
【0011】
スターラ12は、積層状態で配置された駆動部16、回転力伝達機構部17、及び、温度上昇防止部18を有しており、全体として直方体の箱状に形成されている。図2は、スターラ12から、温度上昇防止部18のケースである容器台19(ファンケース)を取り外し、1段ファン20を露出させた状態を示している。ここで、「1段ファン」の用語は、備えているフィンの段数に基づくものであるが、「1段ファン」の詳細については後述する。
【0012】
また、図3は、図2の状態から1段ファン20を取り外し、ファン支持軸21を露出させた状態を示している。さらに、図4は、図3の状態から、回転力伝達機構部17のケースである伝達機構部ケース22を取り外し、回転力伝達機構部17の駆動用磁石保持体23を露出させた状態を示している。
【0013】
図4に示すように、駆動部16にはモータ26(駆動源)が収容されており、上向きに延びるモータ26の出力軸26aには、駆動用磁石保持体23が装着されている。ここで、モータ26としては、ステッピングモータなどの一般的な種々のモータを採用できる。
【0014】
駆動用磁石保持体23は、断面が矩形な棒状に形成されており、図4中のXY面に平行となるよう倒された状態で、モータ26に連結されている。さらに、駆動用磁石保持体23は、その長手方向の中央部で、モータ26の出力軸26aに固定されている。駆動用磁石保持体23における長手方向の両端部には、それぞれ駆動用磁石28、29が固定されている。
【0015】
駆動用磁石28、29は、丸棒状の形状を有しており、長手方向を上下方向に向けている。駆動用磁石28、29における上側の端部は、駆動用磁石保持体23の表面から幾分突出している。そして、モータ26が作動すると、駆動用磁石保持体23が横向きのまま回転し、駆動用磁石28、29が、同一円(同心円)上において180度離間した状態で回転変位する。ここで、図4に符号27で示すのは、モータ26のための電気配線等を通すことが可能な導出管である。
【0016】
図3に示すように、駆動部16に、前述の伝達機構部ケース22を装着すると、駆動用磁石保持体23が伝達機構部ケース22により覆われる。駆動部16への伝達機構部ケース22の固定は、伝達機構部ケース22を、駆動部16のケースである駆動部ケース30にねじ止めすることにより行われている。
【0017】
伝達機構部ケース22からは、丸棒状のファン支持軸21が上向きに突出している。このファン支持軸21の中心(軸心)は、モータ26の出力軸26aの軸心や、駆動用磁石保持体23の回転中心にほぼ一致している。
【0018】
ファン支持軸21には、図2に示すように、1段ファン20が同心的に装着されている。1段ファン20とファン支持軸21との間には、ベアリング(図7の符号44、後述する)が介在し、1段ファン20は、ファン支持軸21を中心として滑らかに水平回転できる。この1段ファン20の構造や機能については後述する。
【0019】
伝達機構部ケース22に容器台19を装着すると、1段ファン20が容器台19により覆われる。図1に示すように、容器台19の側面には、気体通過穴31、32が設けられている。これらの気体通過穴31、32は、横長な矩形に開口し、容器台19の側壁を貫通している。また、気体通過穴31、32は、各々、容器台19において90度をなす側面に形成されている。
【0020】
気体通過穴31、32は、異なる高さで(Z方向に関して異なる位置に)形成されている。本実施形態では、図中における右側に描かれた気体通過穴32のほうが、他方の気体通過穴31よりも高い位置に開口している。ここで、下段に位置する気体通過穴31は、容器台19に設けられた矩形の切り欠きを、伝達機構部ケース22と組み合わせることで、矩形に開口して形成できる。
【0021】
また、図1では背後に隠れているが、各気体通過穴31、32から180度離間して向かい合う位置(Z方向に関して同じ高さ)にも、ほぼ同一な形状やサイズを有する気体通過穴(不図示)が形成されている。そして、これらの気体通過穴31、32は、後述するように1段ファン20により流動させられた空気の通過経路となる。
【0022】
容器台19は、試料用の容器13が載せられるプレート33(プレート部)を有している。プレート33の上面(載置面)33aには、載置マーク34が刻まれている。載置マーク34は、十字マークと、十字マークの交点を中心として直径が異なる2つの円マークとを有する。載置マーク34の中心は、駆動用磁石保持体23の回転中心や、ファン支持軸21の中心(軸心)に対して、ほぼ真上に位置している。
【0023】
ここで、容器台19の材質として、鉄や、アルミ、ステンレスといった金属や、合成樹脂を採用することが考えられる。さらに、伝達機構部ケース22や駆動部ケース30の材質にも、同様に金属や合成樹脂を採用することが考えられる。
【0024】
図5は、1段ファン20を拡大して示している。この1段ファン20は、第1円板36~第3円板38の3枚の円板を有している。第1円板36~第3円板38は、上下方向に沿ってほぼ等間隔に配置され、互いに同心的且つ平行に並んでいる。第1円板36~第3円板38のうち、中段の第2円板37と下段の第3円板38の厚みはほぼ同一であるが、上段の第1円板36の厚みは、第2円板37や第3円板38よりも幾分厚くなっている。
【0025】
さらに、1段ファン20には、丸棒状のファン磁石39、40が取り付けられている。これらのファン磁石39、40は、軸心を、第1円板36~第3円板38が並んだZ方向に向けて(各円板36~38の厚さ方向に向けて)、取り付けられている。ファン磁石39、40は、第1円板36と第2円板37を貫通しており、ファン磁石39、40における上側の端部(上端部)は、第1円板36の上面から幾分突出している。
【0026】
なお、本実施形態では、ファン磁石39、40の下側の端部(下端部)における端面(下端面)は、第3円板38から突出も露出もしていない。しかし、これに限定されず、ファン磁石39、40の下端面を、第3円板38から露出させたり、突出させたりすることも可能である。また、ファン磁石39、40は、1本が第2円板37を貫通するものに限らず、例えばZ方向に2本に分割され、第1円板36と第2円板37の間の部分と、第2円板37と第3円板38の間の部分とに分割され、同軸に配置されたものであってもよい。
【0027】
ファン磁石39、40は、第1円板36~第3円板38の回転軸(軸心)を挟んで、直径上に配置されている。さらに、ファン磁石39、40は、第1円板36~第3円板38の回転軸(軸心)を中心とした同一円上に配置されている。
【0028】
また、ファン磁石39、40の向きは、磁極が互いに逆向きになるように決められている。具体的には、ファン磁石39、40の向きは、例えば、一方のファン磁石39における上端部の磁極がS極であれば、他方のファン磁石40の上端部の磁極はN極となるように決められている。さらに、ファン磁石39、40の磁極の向きは、ファン磁石39、40の下端部と、前述した駆動用磁石保持体23(図4)の駆動用磁石28、29の上端部における端面(上端面)との間に、吸引力が発生するように決められている。
【0029】
図6は、1段ファン20から第3円板38を取り外した状態を示しており、図7は、図6の状態から更に第2円板37を取り外して第1円板36のみを示している。図6に示すように、第2円板37は環状に形成されており、中央部に丸穴41を有している。そして、この丸穴41からは、第1円板36に設けられた円筒状のボス部42が同心的に突出している。ここで、第3円板38の位置決めは、ファン磁石39、40の下端部の端面(下端面)に第3円板38を接触させて行うことが可能である。また、丸穴41に代えて、他の形状(四角形等の多角形や楕円形など)の孔を形成してもよい。
【0030】
図7に示すように、第1円板36における下面43の中央部からは、上述のボス部42が下方に突出している。ボス部42の下端部における内周面に、前述したベアリング44が装着されており、このベアリング44は、前述した伝達機構部ケース22(図3)におけるファン支持軸21の外周面に装着されるようになっている。ベアリング44は、ボス部42の内部において、上下に離間して2つ設けられているが、図7(及び図6)では1つのみ示されている。
【0031】
さらに、第1円板36における下面43には、矩形な断面を有する長尺な板状のフィン45が、複数(ここでは8枚)形成されている。フィン45は、第1円板36の中央部を中心として放射状に配置されているが、各フィン45の長手方向は、第1円板36の半径方向(遠心方向)に対して斜めに傾斜している。このような各フィン45の向きや配置については、例えば渦状などと称することも可能である。そして、隣り合ったフィン45同士の間隔は、第1円板36の内周側から外周側へ行くほど、徐々に広がっている。
【0032】
このようなフィン45を有する1段ファン20において、第1円板36と第3円板38との間隔は、第1円板36のボス部42を介して一定に確保されている。また、第1円板36と第2円板37との間隔は、フィン45によって一定に確保されている。そして、第1円板36と第2円板37との間には、第1空間部46が形成されており、第2円板37と第3円板38との間には、第2空間部47が形成されている。また、第1空間部46は、フィン45により、周方向に区画されている。
【0033】
この1段ファン20は、第1空間部46及び第2空間部47の2段の空間部のうち、フィン45が設けられているのは1段の空間部(第1空間部46)のみである。また、1段ファン20における第1円板36~第3円板38の材質としては、合成樹脂を採用することが考えられる。
【0034】
ここで、図5に示すように、1段ファン20には、2つの補助用ファン磁石48、49が組み込まれている。これらの補助用ファン磁石48、49は、前述したファン磁石39、40を結ぶ直線上(一の直径上)において、ファン磁石39、40の間に位置するよう配置されている。そして、補助用ファン磁石48、49は、第1円板36の円の中心部からほぼ等距離となる部位に配置されている。
【0035】
このような1段ファン20は、伝達機構部ケース22(図3)のファン支持軸21に装着されており、前述したように、ファン支持軸21を中心として滑らかに水平回転できる。そして、モータ26が作動し、駆動用磁石保持体23(図4)の駆動用磁石28、29が回転変位すると、駆動用磁石28、29とファン磁石39、40と間の吸引力を介して、1段ファン20が水平回転する。
【0036】
図8は、1段ファン20の回転に伴い発生する気流を矢印Aにより模式的に示している。図8には、1段ファン20を横方向から(外周側から)見た状態が示されている。この1段ファン20の回転に伴い、フィン45が回転変位して気流が発生する。図8においては、前述した第2空間部47の空気が、フィン45の作用によりボス部42の周りから第1空間部46に吸い上げられている。
【0037】
さらに、第1空間部46に吸い上げられた空気は、フィン45により、第1空間部46の内周側から外周側へ案内される。そして、1段ファン20の内部の空気は、フィン45の向きに応じて遠心方向に流動し、1段ファン20から連続して放出される。
【0038】
上述のような空気の流れが連続して発生することにより、容器台19の気体通過穴31、32(図1には1組のみ図示している)のうち、一方(ここでは下段の気体通過穴31)を吸気口として容器台19(図1)の内部に流入し、他方(ここでは上段の気体通過穴32)を排気口として容器台19から外に出る空気の流れが発生する。このように、容器台19の内部に気流を形成することにより、前述したプレート33の下面に空気の流れを接触させることができる。
【0039】
また、1段ファン20にはファン磁石39、40が設けられており、1段ファン20が回転すると、ファン磁石39、40が同一円上において180度離間した状態で回転変位する。図1に示すように、容器台19のプレート33に試料用の容器13が載せられ、容器13の底には撹拌子15が配置されている。
【0040】
撹拌子15は、例えば、丸棒状に成型された合成樹脂(ここではテフロン(登録商標))製の本体50に、2つの撹拌子用磁石(不図示)を内蔵している。そして、撹拌子磁石(不図示)は、本体50における軸方向(長手方向)の両端部にそれぞれ配置されている。さらに、撹拌子15は、撹拌子磁石(不図示)の磁極の向きが、ファン磁石39、40との間に吸引力を生じるように、容器13の底に配置されている。
【0041】
前述のように1段ファン20が回転するとファン磁石39、40が回転変位し、これに伴い、撹拌子15が水平回転する。そして、この撹拌子15の回転により、容器13の中の試料14が撹拌される。ここで、本実施形態では、撹拌子15とスターラ12との組み合わせにより、撹拌装置11が構成されている。
【0042】
撹拌装置11が、例えば、細胞培養に用いられる場合などには、撹拌装置11が、恒温装置となるインキュベータの中に設置されることがある。インキュベータにおいては、内部の温度や湿度(温湿度)の管理が行われている。そして、インキュベータの庫内では、例えば、温度が37±1℃に保たれ、湿度が100%程度に保たれる。湿度が100%程度に保たれることにより、撹拌される試料の蒸発が防止される。
【0043】
インキュベータのように厳密な温度管理が行われている環境下では、管理下にある空気の熱以外の熱が加わると、温度管理が困難になったり、試料14の温度が上がったりすることが考えられる。そして、スターラ12には、モータ26が備えられていることから、モータ26の熱がプレート33を介して容器13の中の試料14に伝わり、実験結果に影響を及ぼすことも考えられる。
【0044】
そこで、本実施形態のスターラ12のように、容器13が載せられるプレート33の下面側に空気を導いて流動させることで、モータ26から発生した熱を送風により外部に放出でき、プレート33の温度上昇を防止することが可能となる。
【0045】
図9は、このような送風による温度上昇防止対策が有効であることを確認するために行った実験装置の構成を模式的に示している。実験装置は、インキュベータ56の庫内63に、従来の一般的なスターラ57とファン装置58を設置し、スターラ57の上に、側面に気体通過穴を開口し内側が中空な容器設置台59を置いて構成されている。
【0046】
容器設置台59の上には、試料60を収容した容器61が設置され、容器61の中には撹拌子62が沈められている。また、図示は省略するが、インキュベータ56の庫内63、スターラ57の上面64、及び、容器設置台59の上面であるプレート65には、温度センサが装着されている。
【0047】
スターラ57には、モータ66や駆動用磁石保持体67が内蔵されており、駆動用磁石保持体67が水平回転すると、撹拌子62も回転して試料60を撹拌する。また、ファン装置58は、容器設置台59に向けて送風を行い、矢印Bで示すように、容器設置台59の内側に空気の流れを形成する。
【0048】
図10は、図9の実験装置について、送風の有無による各部の温度変化を表している。図10(a)は、送風を行わなかった場合における各部の温度変化を示しており、図10(b)は、送風を行った場合における各部の温度変化を示している。図10(a)、(b)の横軸は時間(経過時間)を示しており、縦軸は温度を示している。
【0049】
また、実線の曲線は、プレート65の温度変化を示しており、一点鎖線の曲線は、スターラ57の上面64(スターラ上)における温度変化を示している。さらに、二点鎖線の曲線は、インキュベータ56の庫内63における温度変化を示している。
【0050】
図10(a)、(b)に一点鎖線で示すように、スターラ上(スターラ57の上面64)の温度は、スターラ57の作動開始後に上昇を開始し、数時間後からは45℃付近で推移している。二点鎖線で示す庫内63の温度は、温度管理の下、37℃付近で一定に保たれている。これらに対して、実線で示すプレート65の温度は、図10(a)に示す送風を行わなかった場合には、スターラ57の作動開始後、数時間後に約43℃に達し、その後も約43℃で推移している。しかし、図10(b)に示す送風を行った場合、プレート65の温度は、スターラ57の作動開始後、数時間後に38℃近辺に達した後には一定の温度を保っている。
【0051】
このように、スターラ57の上部に空間を形成し、この空間に連続して送風を行うことにより、容器の載置面となるプレート65の温度を、庫内63と同程度の温度に保つことができた。さらに、実験では、プレート65の温度は36℃以上38℃未満の範囲の温度に収まっていることから、庫内63の許容温度範囲が37±1℃である場合には、この許容温度範囲に収まるという結果が得られた。
【0052】
そして、空気の流れの有無により、スターラ上(スターラ57の上面64)の温度は変わらないが、試料60の温度に直接的に影響するプレート65の温度は、インキュベータ56の庫内63と同程度の温度になる、という結果が得られた。前述した本実施形態のスターラ12においても、伝達機構部ケース22の上に容器台19が備えられ、この容器台19の内側に対して送風が行われるため、実験装置と同様の温度特性が得られる。
【0053】
以上説明したような本実施形態のスターラ12によれば、容器が載置される容器台19の内側に対して送風が行われることから、モータ26から発生した熱が送風により外部に放出されるためプレート33に熱が伝わらず、容器の載置面における温度が適正に保たれる。したがって、試料を撹拌する際、モータ26から発生している熱が試料に伝わるのを防止できる。そして、試料14の温度上昇や、試料14の蒸発による乾固、といったことが生じるのを防止できる。
【0054】
また、本実施形態のスターラ12によれば、1段ファン20が、駆動用磁石28、29とファン磁石39、40との間の磁力を利用して回転駆動されることから、1段ファン20の駆動源としてモータ26を利用できる。そして、1段ファン20の駆動源を別途備える必要がないため、スターラ12を、その分小型化することが可能である。
【0055】
つまり、例えば、図9に示す実験装置のようにファン装置58を、スターラ57や容器設置台59と分離して設置することも考えられる。ただ、このようにした場合には、モータ66とは別に、ファン装置58の電源や制御(制御機器や制御プログラムなど)が必要となる。また、ファン装置58にはモータも備えられる。
【0056】
しかし、本実施形態のスターラ12のように、モータ26を、1段ファン20及び撹拌子15の駆動に兼用することで、電源やモータ、及び、これらの制御に係る構成を省略でき、全体の構成を簡素化することが可能になる。このような簡素化された構成については、例えば、撹拌力を送風に利用した構成にもできる。
【0057】
また、本実施形態のスターラ12によれば、1段ファン20が容器台19に内蔵されていることから、横方向に対しての小型化が可能である。そして、このことによっても、スターラ12の小型化が可能である。
【0058】
さらに、1段ファン20が、駆動用磁石28、29とファン磁石39、40との間の磁力を利用して回転駆動されることに加え、ファン磁石39、40を用いて撹拌子15を回転させている。このため、1段ファン20を、回転力伝達機構として利用しながら送風を行うことが可能である。そして、このことにより、スターラ12の縦方向についても、サイズを抑制して小型化することが可能である。
【0059】
さらに、気体通過穴31、32は、異なる高さで形成されていることから、気体通過穴31、32を、上下2段に並んだ第1空間部46及び第2空間部47の位置(高さに)合わせて配置することが容易である。
【0060】
なお、駆動部ケース30に気密的な密閉構造を採用してもよい。密閉構造としては、駆動部ケース30にシール材やパッキンを用いて隙間がないようにしたものを例示できる。このように密閉構造を採用することにより、インキュベータ内の高湿度な空気が、駆動部ケース30の内部に進入して、モータ26や、モータ26等に係る電気機器や電子機器に触れるのを防止できる。これにより、駆動部ケース30内における各機器の故障を防止できる。
【0061】
また、本実施形態のスターラ12においては、駆動用磁石28、29とファン磁石39、40との間の磁力を利用して回転力の伝達が行われているが、これに限定されず、例えば、1段ファン20とモータ26にプーリを装着し、両プーリをベルト(無端ベルト)で連結して回転力の伝達を行ってもよい。
【0062】
次に、図11図14に基づき、本発明の第2実施形態に係るスターラ81について説明する。なお、第2実施形態のスターラ81においては、内蔵したファン(2段ファン82)以外の構成は、第1実施形態のスターラ12と同様である。このため、第2実施形態については、主に2段ファン82について説明し、その他の構成については適宜説明を省略する。また、2段ファン82についても、第1実施形態に係る1段ファン20(図5)と同様の構成については同一符号を付し、その説明は適宜省略する。
【0063】
図11は、2段ファン82を示している。この2段ファン82は、第1円板36、第2円板83、及び、第3円板38の3枚の円板を有している。第1円板36及び第3円板38は、第1実施形態に係る1段ファン20と同様である。この2段ファン82においては、第2円板83にもフィン84が設けられている。このため、第1円板36と第2円板83との間の第1空間部46のみでなく、第2円板83と第3円板38との間に形成された第2空間部85も、フィン84により周方向に区画されている。
【0064】
図12は、2段ファン82から第3円板38を取り外し、第2円板83のフィン84を露出させた状態を示している。第2円板83における下面86には、矩形な断面を有する板状のフィン84が、複数(ここでは8枚)形成されている。
【0065】
フィン84は、第1実施形態の1段ファン20に係るフィン45と同様に、第2円板83の中央部を中心として放射状に配置されている。そして、隣り合ったフィン84同士の間隔は、第2円板83の内周側から外周側へ行くほど、徐々に広がっている。さらに、各フィン84の向きは、第2円板83の半径方向(遠心方向)に対して傾斜している。ただし、第1円板36のフィン45とは、傾斜の向きが逆になっている。
【0066】
つまり、第1円板36と第2円板83とを同じ方向(ここでは斜め下方向)から見た場合、第1円板36のフィン45においては、図7を援用して示すように、最も手前のフィン(ここでは符号45aを付して示している)が内周側から外周側へ右向きに傾いて見えるよう、それぞれのフィン45が形成されている。
【0067】
これに対し、第2円板83のフィン84においては、図12に示すように、最も手前のフィン(ここでは符号84aを付して示している)が内周側から外周側へ左向きに傾いて見えるよう、それぞれのフィン84が形成されている。このような、第1円板36のフィン45と、第2円板83のフィン84との向きの関係については、例えば、互いに逆向きの渦状に形成されている、と捉えることも可能である。このように、2段ファン82のように2段のフィン45、84を有するファンや、後述するように3段以上のフィンを有する場合には、複数段のうち少なくとも一部の段のフィンが、他の段のフィンと逆向きに形成されているものであるということができる。そして。ここでいう「逆向き」の態様としては、奇数段と偶数段が逆向きであるものなどが例示される。
【0068】
上述のような2段ファン82は、第1実施形態と同様に、伝達機構部ケース22(図3)のファン支持軸21に装着されている。そして、駆動用磁石保持体23(図4)の駆動用磁石28、29が回転変位すると、駆動用磁石28、29とファン磁石39、40と間の吸引力を介して、2段ファン82が水平回転する。
【0069】
図13(a)、(b)は、2段ファン82の回転に伴い発生する気流を矢印C、Dにより模式的に示している。図13(a)、(b)には、停止した2段ファン82を横方向から(外周側から)見た状態が示されている。この2段ファン82の回転に伴い、フィン84が回転変位し、回転方向に応じた向きの気流が発生する。
【0070】
図13(a)は、2段ファン82の回転方向を、上方から見て時計回り(CW)となるようにした場合の気流を模式的に示している。このように2段ファン82を時計回りに回転させた場合には、矢印Cで示すように、第2空間部85に外周側から吸い込まれた空気が内周側に向かい、ボス部42の周りを通って、第1空間部46に向かうよう上昇している。
【0071】
さらに、第1空間部46に流入した空気は、第1円板36のフィン45により、第1空間部46の内周側から外周側へ案内される。そして、2段ファン82の内部の空気は、第2空間部85ではフィン84の向きに応じて求心方向に流動し、第1空間部46ではフィン45の向きに応じて遠心方向に流動する。
【0072】
一方、図13(b)は、2段ファン82の回転方向を、上方から見て反時計回り(CCW)となるようにした場合の気流を模式的に示している。このように2段ファン82を反時計回りに回転させた場合には、時計回りの場合とは逆向きの矢印Dで示すように、第1空間部46に外周側から吸い込まれた空気が内周側に向かう。そして、この空気は、ボス部42の周りを通って、第2空間部85に向かうよう下降する。
【0073】
さらに、第2空間部85に流入した空気は、第2円板83のフィン84により、第2空間部85の内周側から外周側へ案内される。そして、2段ファン82の内部の空気は、第1空間部46ではフィン45の向きに応じて求心方向に流動し、第2空間部85ではフィン84の向きに応じて遠心方向に流動する。
【0074】
図10(a)又は図10(b)に示すような空気の流れが連続して発生することにより、第1実施形態のスターラ12と同様に、容器台19(図1)の内部に流入し、容器台19の内部から外に出る空気の流れが発生する。そして、容器13が載せられるプレート33の下面側に空気を導いて流動させることで、モータ26から発生した熱を送風により外部に放出でき、プレート33の温度上昇を防止することが可能となる。
【0075】
さらに、2段ファン82を時計回り又は反時計回りのいずれの方向に回転させた場合であっても、図14に両方向の白抜き矢印E、Fで示すように、気体通過穴31、32を介して外気を流動させることができる。そして、第1実施形態において説明したように、気体通過穴31、32は、異なる高さ(Z方向に関して異なる位置に)で形成されていることから、上下2段に並んだ第1空間部46及び第2空間部85の位置(高さに)合わせた配置を、容易に行うことができる。したがって、空気の流動抵抗が極力低減され、効率の良い送風が行われる。
【0076】
以上説明したような第2実施形態のスターラ81によれば、第1実施形態と同様な発明の効果を奏するほか、2段のフィン45、84を有する2段ファン82が用いられていることから、送風量を増大でき、プレート33の温度上昇防止を効率よく行うことが可能となる。
【0077】
また、2段ファン82において、第1空間部のフィン45と第2空間部85のフィン84が逆向きの傾きや広がりをもって形成されていることから、撹拌子15の回転方向を時計回り(CW)とする場合であっても、反時計回り(CCW)とする場合であっても、2段のフィン45、84により、効率よく試料の温度上昇を防止できる。
【0078】
次に、図15図17に基づき、本発明の第3実施形態に係るスターラ91(図15)について説明する。なお、第3実施形態のスターラ91においては、内蔵したファン(3段ファン92、図16)や、容器台93(ファンケース)以外の構成は、第1実施形態のスターラ12や、第2実施形態のスターラ81と同様である。このため、第3実施形態については、主に3段ファン92と、容器台93について説明し、その他の構成については適宜説明を省略する。また、3段ファン92についても、第1実施形態に係る1段ファン20(図5)や、第2実施形態に係る2段ファン82と同様の構成については同一符号を付し、その説明は適宜省略する。
【0079】
図16は、3段ファン92を示している。この3段ファン92は、第1円板36、第2円板83、第3円板94、及び、第4円板96の4枚の円板を有している。第1円板36は、第1実施形態に係る1段ファン20や、第2実施形態に係る2段ファン82と同様である。また、第2円板83は、第2実施形態に係る2段ファン82と同様である。さらに、第4円板96は、第1実施形態及び第2実施形態に係る第3円板38と同様のものを採用することが可能である。
【0080】
この3段ファン92においては、第3円板94にもフィン97が設けられている。このため、第1円板36と第2円板83との間の第1空間部46や、第2円板83と第3円板94との間の第2空間部85のみでなく、第3円板94と第4円板96との間に形成された第3空間部98も、フィン97により周方向に区画されている。
【0081】
ここで、3段ファン92には、ファン磁石101、102が設けられているが、これらのファン磁石101、102の軸方向の長さは、第1実施形態や第2実施形態におけるファン磁石39、40よりも軸方向に長くなっている。そして、ファン磁石101、102は、第3空間部98から第2空間部85及び第1空間部46を経て第1円板36の上面から突出している。ここで、ファン磁石101、102は、長さ方向において複数に分割された構造のものであってもよい。
【0082】
図17は、3段ファン92から第4円板96を取り外し、第3円板94のフィン97を露出させた状態を示している。第3円板94における下面95には、矩形な断面を有する板状のフィン97が、複数(ここでは8枚)形成されている。
【0083】
フィン97は、第1円板36のフィン45や、第2円板83のフィン84と同様に、第3円板94の中央部を中心として放射状に配置されている。そして、隣り合ったフィン97同士の間隔は、第3円板94の内周側から外周側へ行くほど、徐々に広がっている。さらに、各フィン97の向きは、第3円板94の半径方向(遠心方向)に対して斜めに傾斜している。そして、第3円板94における各フィン97の傾斜の向きは、第1円板36のフィン45と同じであり、第2円板83のフィン84とは逆である。
【0084】
このような3段ファン92は、第1実施形態や第2実施形態と同様に、伝達機構部ケース22(図3)のファン支持軸21に装着されている。そして、駆動用磁石保持体23(図4)の駆動用磁石28、29が回転変位すると、駆動用磁石28、29とファン磁石101、102と間の吸引力を介して、3段ファン92が水平回転する。
【0085】
ここで、伝達機構部ケース22(図3)のファン支持軸21については、3段ファン92の厚み(軸方向の大きさ)が、1段ファン20や2段ファン82の厚みよりも大きくなることから、3段ファン92の厚みに合わせ、必要に応じて長さ(伝達機構部ケース22からの突出量)が変更される。ただし、3段ファン92の厚みを、1段ファン20や2段ファン82の厚みと同程度となるように変更した場合には、ファン支持軸21の長さを変更する必要がない。
【0086】
また、図15に示す容器台93の側面には、気体通過穴105~107が設けられている。これらの気体通過穴105~107は、横長な矩形に開口し、容器台93の側壁を貫通している。また、気体通過穴105~107は、互いに異なる高さ(Z方向に関して異なる位置に)で形成されている。
【0087】
図15では、最上段の気体通過穴105及び最下段の気体通過穴107の組が、図中における左側の側面に描かれており、中段の気体通過穴106が、図中における右側の側面に描かれている。そして、最上段の気体通過穴105及び最下段の気体通過穴107の組と、中段の気体通過穴106とは、容器台93において90度をなす側面に形成されている。ここで、最下段に位置する気体通過穴107については、容器台93に設けられた矩形の切り欠きを、伝達機構部ケース22と組み合わせることで、矩形に開口する気体通過穴107が形成されている。
【0088】
また、図15では背後に隠れているが、最上段の気体通過穴105及び最下段の気体通過穴107の組から180度離間して向かい合う位置(Z方向に関して同じ高さ)にも、ほぼ同一な形状やサイズを有する気体通過穴(不図示)が形成されている。さらに、中段の気体通過穴106から180度離間して向かい合う位置にも、ほぼ同一な形状やサイズを有する気体通過穴(不図示)が形成されている。
【0089】
そして、これらの気体通過穴105~107は、3段ファン92の水平回転により発生した空気の通過経路となる。前述のように3段ファン92においては、第1円板36のフィン45と、第3円板のフィン97とが同じ向きに傾斜しており、第2円板83のフィン84が、第1円板36のフィン45や第3円板のフィン97とは逆向きに傾斜している。
【0090】
このため、空気の流動方向については、3段ファン92の回転方向により、第1空間部46と第3空間部98に空気が吸い込まれる場合には、第2空間部85から空気が吐き出される。一方、第2空間部85に空気が吸い込まれる場合には、第1空間部46と第3空間部98から空気が吐き出される。
【0091】
そして、気体通過穴105~107のうち、最上段の気体通過穴105と最下段の気体通過穴107は、第1空間部46と第3空間部98に対応した気体通過穴となり、中段の気体通過穴106は、第2空間部85に対応した気体通過穴となる。
【0092】
また、容器台93の高さを増やさずに気体通過穴105~107を形成するために、気体通過穴105~107を介した吸気量と排気量のバランスを考慮して、気体通過穴105~107の開口面積の関係を定めることが望ましい。
【0093】
以上説明したような第3実施形態のスターラ91によれば、第1実施形態や第2実施形態と同様な発明の効果を奏するほか、3段ファン92が用いられていることから、吸気或いは排気に係る送風量を一層増やすことができ、プレート33の温度上昇防止をより効率よく行うことが可能となる。
【0094】
なお、本発明は、各実施形態に係るスターラ12、81、91に限定されず、要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。例えば、3段以上の空間部を有し一部の空間部にはフィンを備えないタイプの多段ファン(複数段のファン)なども採用が可能である。
【0095】
(発明の実施態様)
本発明の第1の実施の態様は、駆動用磁石を回転させるための回転力を発生する駆動源(モータなど)と、
前記駆動源が収容された駆動部と、
試料の容器を載置するための載置面を有するプレート部(プレートなど)と、
空気を流動させるためのフィンを有し、前記プレート部と前記駆動部との間に配置され、前記載置面の背面側に空気を流動させるファン(1段ファン、2段ファン、3段ファンなど)と、を備えたスターラ装置である。
これにより、プレート部の温度上昇を防止でき、駆動源から発生する熱が試料に伝わるのを防止できるという効果を奏する。
【0096】
本発明の第2の実施の態様は、第1の実施の態様において、前記ファンがファン磁石を備え、前記駆動用磁石と前記ファン磁石の間の磁力を介して前記ファンを回転させることである。
これにより、駆動源をファンの駆動源として兼用でき、ファン専用の駆動源が不要であるという効果を奏する。
【0097】
本発明の第3の実施の態様は、第1の実施の態様又は第2の実施の態様において、前記プレート部が、前記ファンが収容されるファンケース(容器台など)に形成され、
前記ファンが水平方向に回転して遠心方向に空気を流動させることが可能であり、
前記ファンケースに、前記ファンの回転に伴い流動する空気を通過させる気体通過穴が形成されていることである。
これにより、気体通過穴を介し空気を流動させて、効率よくプレート部の温度上昇を防止できるという効果を奏する。
【0098】
本発明の第4の実施の態様は、第3の実施の態様において、前記気体通過穴が複数設けられ、複数の前記気体通過穴が互いに異なる高さで配置されていることである。
これにより、ファンにおけるフィンの位置に合わせて気体通過穴を配置することが容易になるという効果を奏する。
【0099】
本発明の第5の実施の態様は、第1の実施の態様から第4の実施の態様のいずれか一つの態様において、前記フィンが一段に形成され、
前記ファンが、前記一段の前記フィンにより空気を流動させることである。
これにより、プレート部の温度上昇防止を、簡素な構成で効率よく行うことが可能となるという効果を奏する。
【0100】
本発明の第6の実施の態様は、第1の実施の態様から第4の実施の態様のいずれか一つの態様において、前記フィンが複数段に形成され、
前記ファンが、前記複数段の前記フィンにより空気を流動させることである。
これにより、送風量を増大でき、プレート部の温度上昇防止を効率よく行うことが可能となるという効果を奏する。
【0101】
本発明の第7の実施の態様は、第6の実施の態様において、前記複数段のうち少なくとも一部の段の前記フィンが、他の段のフィンと逆向きに形成されていることである。
これにより、フィンの向きに応じて逆の方向へ空気を流動させることができる。
【符号の説明】
【0102】
11…撹拌装置、12、81、91…スターラ、13…容器、14…試料、16…駆動部、19、93…容器台(ファンケース)、20…1段ファン(ファン)、28、29…駆動用磁石、26…モータ(駆動源)、31、32、105~107…気体通過穴、33…プレート(プレート部)、33a…載置面、39、40、101、102…ファン磁石、45、84、97…フィン、82…2段ファン(ファン)、92…3段ファン(ファン)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17