(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】下窓保持構造
(51)【国際特許分類】
E02F 9/16 20060101AFI20241218BHJP
B60J 1/00 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
E02F9/16 F
E02F9/16 E
B60J1/00 F
(21)【出願番号】P 2021097120
(22)【出願日】2021-06-10
【審査請求日】2024-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】390001579
【氏名又は名称】プレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】内田 泰
(72)【発明者】
【氏名】丸岡 夕朔
【審査官】坪内 優佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-17065(JP,A)
【文献】特開2009-161092(JP,A)
【文献】特開2009-214558(JP,A)
【文献】特開2018-21354(JP,A)
【文献】特開平7-1957(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/38076(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00 - 9/28
B60J 1/00 - 1/20
B60J 10/00 -10/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械のキャビン前面に設けられる下窓を保持するための下窓保持構造であって、
前記下窓の車幅方向両端部にそれぞれ設けられ、車幅方向外側に向けて延出された一対の膨出部と、
前記膨出部に対して室内側にそれぞれ設けられ、上方から下方に向かって前方に傾斜し、前記下窓を上方から下方に移動させた際に当該膨出部に当接して当該下窓を前方に向けて押し出す一対のスロープ部と、
前記キャビン前面の室外側に設けられ、前記スロープ部によって押し出された前記下窓の室外側面が接触する室外側シールラバーと、
前記キャビン前面の下側に設けられ、前記下窓の下端部を支持する受け部と、
前記キャビン前面の室内側において、前記室外側シールラバーに対して下方よりも上方の隙間が大きくなるように設けられ、前記下窓が前記受け部に支持された状態で当該下窓の室内側面が接触する室内側シールラバーと、を備える下窓保持構造。
【請求項2】
前記室外側シールラバーは、車幅方向に間隔を隔てて上下方向に延在する一対の縦ラバー部を有し、
前記室内側シールラバーは、車幅方向に沿って延在する横ラバー部を有し、
室外側から室内側に向かう視点において前記縦ラバー部の下部と前記横ラバー部の外縁部は重なっていて、前記受け部に支持された前記下窓は当該下部と当該外縁部で挟持される、請求項1に記載の下窓保持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械のキャビン前面に設けられる下窓を保持するための下窓保持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械のキャビン前面に設けられる窓は、例えばオペレータが周囲の作業者と言葉を交しながら作業を行うことができるように、キャビンに対して開閉できるように構成されている。
【0003】
例えば特許文献1には、上部フロントガラスを開閉し保持するための構造が示されている。この構造では、フロントガラスの上部に左右一対の固定用ロックピンが設けられるともにフロントガラスの下部には左右一対のローラが設けられる。またキャビンの室内側の左右には、ローラが走行するためのガイドレールと、上記ロックピンが挿入されるピン孔を有する部材と、ローラを下方で受け止める下部ストッパーとが設けられる。
【0004】
また特許文献1以外の構造としては、横断面形状がC形になるCチャンネル材をキャビンの室内側の左右に配置するとともに、Cチャンネル材の内側にガラスランを配置し、ガラスランの溝に沿って窓を上下方向に動かすことができる構造も知られている。
【0005】
また、上述した特許文献1のロックピンやピン孔の如き構造を用いるとともにキャビンの室外側にシールラバーを配置し、室内側からシールラバーに押し付けた窓を、ピン孔にロックピンを係合させることによって保持する構造も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで特許文献1に示された構造では、ロックピンやローラ、ガイドレール、下部ストッパーといった部材が必要になるため、部品点数が多くなりコストアップにつながっている。またCチャンネル材を使用した構造においては、ガラスランに対して窓を摺動させる際に力を要するうえ、開閉回数が増えるに従って摺動抵抗が大きくなって操作時により大きな力が必要になることがある。そして、シールラバーに押し付けた窓をロックピンによって保持する構造は、まずシールラバーに窓を押し付け、その状態でロックピンとピン孔とを係合させなければならず、操作性の点で難がある。
【0008】
本発明はこのような従来の問題点を解決することを目的とするものであって、従来に比してコストを削減することができ、また操作性にも優れる下窓保持構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、建設機械のキャビン前面に設けられる下窓を保持するための下窓保持構造であって、前記下窓の車幅方向両端部にそれぞれ設けられ、車幅方向外側に向けて延出された一対の膨出部と、前記膨出部に対して室内側にそれぞれ設けられ、上方から下方に向かって前方に傾斜し、前記下窓を上方から下方に移動させた際に当該膨出部に当接して当該下窓を前方に向けて押し出す一対のスロープ部と、前記キャビン前面の室外側に設けられ、前記スロープ部によって押し出された前記下窓の室外側面が接触する室外側シールラバーと、前記キャビン前面の下側に設けられ、前記下窓の下端部を支持する受け部と、前記キャビン前面の室内側において、前記室外側シールラバーに対して下方よりも上方の隙間が大きくなるように設けられ、前記下窓が前記受け部に支持された状態で当該下窓の室内側面が接触する室内側シールラバーと、を備えることを特徴とする。
【0010】
このような下窓保持構造において、前記室外側シールラバーは、車幅方向に間隔を隔てて上下方向に延在する一対の縦ラバー部を有し、前記室内側シールラバーは、車幅方向に沿って延在する横ラバー部を有し、室外側から室内側に向かう視点において前記縦ラバー部の下部と前記横ラバー部の外縁部は重なっていて、前記受け部に支持された前記下窓は当該下部と当該外縁部で挟持されることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の下窓保持構造では、従来使用していたロックピンやローラ、ガイドレール、下部ストッパーといった部材が不要になるため、コスト削減を図ることができる。また下窓を保持するにあたっては、膨出部がスロープ部に当接するようにして下窓を下方に移動させるだけでよく、従来のようにシールラバーに窓を押し付けた状態でロックピンとピン孔とを係合させるといった方法に比して簡単な作業で済むため、操作性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る下窓保持構造の一実施形態を用いた建設機械のキャビン前面を室内側から示した斜視図とその部分拡大図である。
【
図2】(a)は
図1に示したA-Aに沿う断面図であり、(b)はB-Bに沿う断面図である。
【
図3】(a)は
図1に示した矢印Cに沿う視点での矢視図であり、(b)は矢印Dに沿う視点での矢視図である。
【
図4】下窓を下方に向けて移動させる途中の状態を示した図であって、(a)は室内側から室外側に向かう視点で示した図であり、(b)は下窓の車幅方向中央から車幅方向外側に向かう視点で示した図であり、(c)はE-Eに沿う断面図である。
【
図5】下窓が下方へ移動完了した状態を示した図であって、(a)は室内側から室外側に向かう視点で示した図であり、(b)は下窓の車幅方向中央から車幅方向外側に向かう視点で示した図であり、(c)はF-Fに沿う断面図である。
【
図6】(a)は本実施形態のにおける室外側シールラバーの斜視図であり、(b)は本実施形態のにおける室内側シールラバーの斜視図である。
【
図8】本実施形態のにおけるガイド部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明に係る下窓保持構造を具現化した一例について説明する。
【0014】
図1は、本発明に係る下窓保持構造の一実施形態を用いた建設機械のキャビン10における前面を室内側から示した図である。なお、図示したキャビン10の左右方向が車幅方向である。本実施形態の下窓保持構造には、下窓1、室外側シールラバー2(
図2(a)、
図4参照)、室内側シールラバー3、ガイド部材4、受け部材5(
図3(a)参照)が含まれる。
【0015】
また本実施形態のキャビン10は、
図2(a)、
図3(b)、
図4(c)に示すように、室外側プレート11と室内側プレート12を備えている。室外側プレート11と室内側プレート12は、キャビン10の左側と右側においては、
図2(a)に示すように車幅方向外側から内側に向かって延在し、キャビン10の下側においては、
図3(b)、
図4(c)に示すように下方から上方に向かって延在している。またキャビン10は、
図1に示すように下窓1の上方に上窓13を備えている。
【0016】
下窓1は、透明な板ガラスやアクリル板により形成されている。本実施形態の下窓1は、
図7に示すように全体的に矩形状になるものであって、左右両端部の上部には、車幅方向外側に向けて延出された一対の膨出部1aが設けられている。
【0017】
室外側シールラバー2は、弾性を有する素材(例えばゴムや熱可塑性エラストマー)によって形成されていて、室外側プレート11によってキャビン10の室外側に取り付けられる。本実施形態の室外側シールラバー2は、室外側プレート11に取り付けられた状態において、
図6(a)に示すように車幅方向に沿って延在する室外側横ラバー部2aと、室外側横ラバー部2aの左右両端部から下方に向けてそれぞれ延在する一対の縦ラバー部(室外側縦ラバー部2b)を備える形態になる。なお、室外側縦ラバー部2bの下部2cは、車幅方向外側から内側に向かって湾曲する。そして室外側シールラバー2をキャビン10に取り付けた状態において、室外側横ラバー部2aは、上窓13における上端部に室外側から接触し、室外側縦ラバー部2bの上側半部は、上窓13における左端部と右端部に室外側から接触し、室外側縦ラバー部2bの下側半部は、下窓1における左端部と右端部に室外側から接触する。
【0018】
また室外側シールラバー2は、
図2(a)、
図3(b)、
図4(c)に示すように、横断面形状がU字状であって、室外側プレート11に挿入される基部2dと、基部2dの内周面に複数設けられ、基部2dを室外側プレート11に挿入した際に室外側プレート11に接触して室外側プレート11に挿入した基部2dの抜け止めとして機能する抜け止めリブ2eと、基部2dに対して室内側に位置する弾性部2fとを備えている。弾性部2fの横断面形状は、図示したように基本的に輪状であって、その輪状になる部分の室内側には、車幅方向内側から外側に向かって(又は上方から下方に向かって)突出する部分が設けられた形となっている。
【0019】
室内側シールラバー3は、室外側シールラバー2と同様に弾性を有する素材(例えばゴムや熱可塑性エラストマー)によって形成されている。なお、室外側シールラバー2と室内側シールラバー3の素材は同一でもよいし異なっていてもよい。本実施形態の室内側シールラバー3は、室内側プレート12に取り付けられた状態において、
図6(b)に示すように車幅方向に沿って延在する横ラバー部(室内側横ラバー部3a)と、室内側横ラバー部3aの左右両側から円弧状に延在する一対の外縁部3bと、車幅方向に間隔をあけてそれぞれの外縁部3bにつながる一対の室内側縦ラバー部3cを備える形態になる。なお、
図4(a)に示すように室内側縦ラバー部3cの上部は、車幅方向外側に広がるように延在している。
【0020】
また室内側シールラバー3は、
図2(a)、
図3(b)、
図4(c)に示すように、横断面形状がU字状であって、室内側プレート12に挿入される基部3dと、基部3dの内周面に複数設けられ、基部3dを室内側プレート12に挿入した際に室内側プレート12に接触して室内側プレート12に挿入した基部3dの抜け止めとして機能する抜け止めリブ3eと、基部3dに対して室外側に位置し、横断面形状が輪状になる弾性部3fとを備えている。なお弾性部3fは、
図2(a)に示したように、室内側縦ラバー部3cの上部では省略されている。
【0021】
このような室外側シールラバー2と室内側シールラバー3は、キャビン10に対して
図4(a)、(b)に示す状態で取り付けられている。すなわち室外側シールラバー2と室内側シールラバー3は、室外側から室内側に向かう視点において、室外側縦ラバー部2bとその下部2cが室内側縦ラバー部3cと外縁部3bに重なるように取り付けられている。なお、
図4(a)に示したように室外側縦ラバー部2bの下部2cは、外縁部3bと交差するように延在していて、下部2cの下端部は外縁部3bよりも下方に位置している。また室外側シールラバー2に対して室内側シールラバー3は、
図4(b)に示したように下方よりも上方の隙間が大きくなるように(側方からの視点において室外側シールラバー2に対して室内側シールラバー3が室内側に傾くように)取り付けられている。なお、室外側シールラバー2と室内側シールラバー3との下方における隙間は、下窓1の厚みよりも小さくなるか、又は室外側シールラバー2と室内側シールラバー3とは下方において接触する。本実施形態においては、
図4(b)に示すように下部2cと外縁部3bが位置するところにおいて、室外側シールラバー2と室内側シールラバー3は接触している。
【0022】
ガイド部材4は、合成樹脂で形成されていて、キャビン10の室外側に取り付けられる。
図8に示すようにガイド部材4は、全体的に直方体状であってねじ等でキャビン10に取り付けられる取り付け部4aと、取り付け部4aから室内側に突出する断面視L字状の連結部4bと、連結部4bの室外側に設けられ、上方から下方に向かって室外側に突き出すように傾斜するスロープ部4cとを備えている。なお、
図2(b)に示すように取り付け部4aとスロープ部4cの下端部との隙間は、下窓1の厚みと略同一、又はそれよりも若干大きくなっている。
【0023】
このようなガイド部材4は、
図1、
図2に示すように下窓1の膨出部1aに対してスロープ部4cが室内側に位置する状態で、キャビン10の左右にそれぞれ設けられている。
【0024】
受け部材5は、
図3(a)に示すように円柱状をなしていて、下窓1の下端部を支持する受け部5aと、雄ねじ状をなしていて、キャビン10に対して受け部5aの高さを調整することが可能な雄ねじ部5bとを備えている。
【0025】
このような部材によって構成される下窓保持構造においては、例えばオペレータが周囲の作業者と言葉を交しながら作業を行う場合には、下窓1を上方に向けて引き上げれば、キャビン10から下窓1を取り外すことができる。
【0026】
また取り外した下窓1を取り付けるにあたっては、膨出部1aが上方に位置する姿勢で、下窓1を、
図4に示すように室外側シールラバー2と室内側シールラバー3との間に挿入し、下方に向けて移動させる。なお、室外側シールラバー2と室内側シールラバー3の隙間は上方において下窓1の厚みよりも大きくなっているため、下窓1を抵抗なく下方に向けて移動させることができる。
【0027】
そして
図2(b)に示すように膨出部1aがスロープ部4cに接触すると、下窓1は、スロープ部4cによって室外側に押し出されるため、
図2(a)に示すように室外側シールラバー2が下窓1の室外側面に接触する。室外側シールラバー2の室内側には弾性部2fが設けられているため、弾性部2fが弾性変形した状態で室外側シールラバー2が下窓1に接触する。また下窓1が下方に移動していくと、
図5(a)に示すように下窓1の下端部は、室外側シールラバー2の下部2cと室内側シールラバー3の外縁部3bの間に挿入される。上述したように、室外側シールラバー2の室内側には弾性部2fが設けられていて、室内側シールラバー3の室外側には弾性部3fが設けられているため、
図5(c)に示すように下窓1の下端部は、弾性部2fと弾性部3fがともに弾性変形して挟持される。なお下窓1の下端部は、
図3(a)に示すように高さ調整された受け部5aによって支持されるため、所定の位置で保持される。そして下窓1の下端部が受け部5aによって支持された際、下窓1の上部に位置する膨出部1aは、
図2(b)に示すように取り付け部4aとスロープ部4cの下端部の間に入り込むため、下窓1の上部が室外側や室内側にぐらつくことがない。
【0028】
このように本実施形態の下窓保持構造においては、室外側シールラバー2と室内側シールラバー3が下窓1に接触するのは下窓1を下方に移動させる際の後半のみであるため、下窓1を取り付けるにあたって大きな力を加え続ける必要はなく、操作性に優れる。また室外側から室内側に向かう視点において、室外側シールラバー2の下部2cと室内側シールラバー3の外縁部3bは重なっているため、下窓1における視覚不能な領域が最小限に抑えられ、キャビン10で操作を行うオペレータの視認性を確保することができる。そして下窓1を取り付けた状態において、下窓1の室外側面は室外側シールラバー2によって止水され、室内側面は室内側シールラバー3によって止水されるため、外部からの雨水等の浸入を防止することができる。また、従来使用していたロックピンやローラ、ガイドレール、下部ストッパーといった部材が必要になるため、コストを削減することも可能である。
【0029】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、上記の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。また、上記の実施形態における効果は、本発明から生じる効果を例示したに過ぎず、本発明による効果が上記の効果に限定されることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0030】
1:下窓
1a:膨出部
2:室外側シールラバー
2b:室外側縦ラバー部(縦ラバー部)
2c:下部
3:室内側シールラバー
3a:室内側横ラバー部(横ラバー部)
3b:外縁部
4c:スロープ部
5a:受け部
10:キャビン