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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】退避走行支援装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20241218BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20241218BHJP
【FI】
G08G1/16 F
B60W60/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021107927
(22)【出願日】2021-06-29
(65)【公開番号】P2023005759
(43)【公開日】2023-01-18
【審査請求日】2023-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】石田 翔也
(72)【発明者】
【氏名】熊野 俊也
(72)【発明者】
【氏名】高藤 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】谷川 右京
(72)【発明者】
【氏名】井上 直哉
【審査官】西堀 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-032786(JP,A)
【文献】特開2020-166667(JP,A)
【文献】特開2017-077823(JP,A)
【文献】特開2020-032963(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
B60W 60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
路肩のスペースと、車線形態または車線周辺の物体によって生じる道路内の非通行部分であるフリースペースと、自車の周辺の車両の存在とを少なくとも認識できる周辺環境認識部(11)と、
前記自車が退避走行を継続する制限時間を設定する制限時間設定部(12)と、
前記周辺環境認識部が認識した前記路肩のスペースに基づいて、前記自車が路肩に退避して停車できるか否かについての路肩退避可否を判定する路肩退避可否判定部(16)と、
前記周辺環境認識部によって認識された前記路肩のスペースと前記フリースペースとの少なくともいずれか一方を前記自車の退避先である退避場所に設定する退避場所設定部(17)と、
設定された前記制限時間と、判定された前記路肩退避可否と、設定された前記退避場所とに基づいて、前記自車の状態が、退避走行を継続すべき状態、車線内停車を実施すべき状態、または、路肩停車を実施すべき状態のうちのいずれであるかを判定する状態判定部(18)と、
前記状態判定部により判定された前記自車の状態に基づいて、前記自車を制御する制御部(19)と、を備え、
前記退避場所設定部は、前記自車の走行する道路における車線数の増減を判定可能な車線数増減判定部(17a)を備え、前記車線数増減判定部により前記車線数が増減すると判定された場合に、前記車線数の増減により生じる車線増加スペース又は車線減少スペースである前記フリースペースを前記退避場所として設定し、
前記状態判定部は、
設定された前記制限時間の経過前であり、かつ前記車線数増減判定部により前記車線数が増減すると判定された場合に、前記路肩退避可否判定部により前記自車が路肩に退避して停車できるか否かの判定結果にかかわらず、前記自車の状態が、車線内停車を実施すべき状態であると判定し、かつ前記車線増加スペース又は前記車線減少スペースである前記フリースペースを前記退避場所として選択する第1判定部と、
設定された前記制限時間の経過前であり、かつ前記車線数増減判定部により前記車線数が増減すると判定されておらず、かつ前記路肩退避可否判定部により前記自車が路肩に退避して停車できると判定された場合に、前記自車の状態が、路肩停車を実施すべき状態であると判定する第2判定部と、
を有する、退避走行支援装置(10)。
【請求項2】
前記車線数増減判定部は、撮像装置またはレーダ装置の検出結果から認識される前記自車の走行する道路の形状に基づいて、前記車線数の増減を判定する請求項に記載の退避走行支援装置。
【請求項3】
前記車線数増減判定部は、前記自車が走行する道路の路面標示と、看板標識との少なくともいずれか一方を認識することにより、前記車線数の増減を判定する請求項1または2に記載の退避走行支援装置。
【請求項4】
前記周辺環境認識部は、前記自車が走行する道路の横方向の端部である道路端を認識し、前記道路端と、前記自車の先行車の走行軌跡とに基づいて推定される前記道路内の非通行部分をフリースペースとして認識する請求項1~のいずれかに記載の退避走行支援装置。
【請求項5】
前記周辺環境認識部は、前記自車が走行する道路の中央分離帯の周囲の導流帯をフリースペースとして認識する請求項1~のいずれかに記載の退避走行支援装置。
【請求項6】
前記周辺環境認識部は、前記自車が走行する道路において、複数の区画線と、前記複数の区画線の間に存在する静止物とを認識した場合に、前記複数の区画線と前記静止物との距離に基づいて推定される前記複数の区画線間における前記静止物の周囲の前記非通行部分を前記フリースペースとして認識する請求項1~のいずれかに記載の退避走行支援装置。
【請求項7】
前記退避場所設定部は、前記フリースペースの大きさおよび前記自車に対する相対位置と、前記自車の走行速度および大きさとに基づいて、前記自車が前記フリースペースに停車できると判定できる場合に、前記フリースペースを退避場所として設定する請求項4~6のいずれかに記載の退避走行支援装置。
【請求項8】
前記退避場所設定部(17)は、前記自車の走行する道路内に存在する障害物を判定可能な障害物判定部(17b)を備え、前記障害物判定部により前記障害物が存在すると判定された場合に、前記障害物の周囲に生じる前記フリースペースを前記退避場所として設定する請求項1~のいずれかに記載の退避走行支援装置。
【請求項9】
前記退避場所設定部は、前記路肩のスペースまたは前記フリースペースが、前記自車の走行状態および前記自車の周辺の車両の走行状態に基づいて、前記自車が安全に移動し停車できるスペースであると判定される場合に、前記路肩のスペースまたは前記フリースペースを前記退避場所に設定する請求項1~のいずれかに記載の退避走行支援装置。
【請求項10】
路肩のスペースと、車線形態または車線周辺の物体によって生じる道路内の非通行部分であるフリースペースと、自車の周辺の車両の存在とを少なくとも認識できる周辺環境認識処理と、
前記自車が退避走行を継続する制限時間を設定する制限時間設定処理と、
前記周辺環境認識処理において認識された前記路肩のスペースに基づいて、前記自車が路肩に退避して停車できるか否かについての路肩退避可否を判定する路肩退避可否判定処理と、
前記周辺環境認識処理において認識された前記路肩のスペースと前記フリースペースとの少なくともいずれか一方を前記自車の退避先である退避場所に設定する退避場所設定処理と、
設定された前記制限時間と、判定された前記路肩退避可否と、設定された前記退避場所とに基づいて、前記自車の状態が、退避走行を継続すべき状態、車線内停車を実施すべき状態、または、路肩停車を実施すべき状態のうちのいずれであるかを判定する状態判定処理と、
前記状態判定処理において判定された前記自車の状態に基づいて、前記自車を制御する制御処理と、
をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記退避場所設定処理は、前記自車の走行する道路における車線数の増減を判定可能な車線数増減判定処理を含み、前記車線数増減判定処理において前記車線数が増減すると判定された場合に、前記車線数の増減により生じる車線増加スペース又は車線減少スペースである前記フリースペースを前記退避場所として設定するものであり、
前記状態判定処理は、
設定された前記制限時間の経過前であり、かつ前記車線数増減判定処理において前記車線数が増減すると判定された場合に、前記路肩退避可否判定処理において前記自車が路肩に退避して停車できるか否かの判定結果にかかわらず、前記自車の状態が、車線内停車を実施すべき状態であると判定し、かつ前記車線増加スペース又は前記車線減少スペースである前記フリースペースを前記退避場所として選択する第1判定処理と、
設定された前記制限時間の経過前であり、かつ前記車線数増減判定処理において前記車線数が増減すると判定されておらず、かつ前記路肩退避可否判定処理において前記自車が路肩に退避して停車できると判定された場合に、前記自車の状態が、路肩停車を実施すべき状態であると判定する第2判定処理と、
を含む、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、退避走行支援装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
運転者が意識レベルの低下などにより運転不能となった場合等に、車両を退避先に退避させる退避走行支援装置が提案されている。特許文献1に記載の技術では、安全に退避走行を実行するために、見通しの良好でない領域(例えば、曲線路およびその前後の直線路)を停止禁止領域に設定し、この領域内で退避走行のために自車を減速または停止させることを禁止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-190048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、退避走行を実行する危険性の高い領域を停止禁止領域に設定する技術であり、停止禁止領域以外で、自車が安全に退避走行を実行する技術を提供するものではない。自車が安全に退避走行を実行するためには、自車が走行する道路の状況に応じて、自車が安全に退避できる退避場所を設定することが好ましい。
【0005】
上記に鑑み、本発明は、自車が走行する道路の状況に応じて、自車が安全に退避できる退避場所を設定し、より安全な退避走行を実現できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る退避走行支援装置は、路肩のスペースと、車線形態または車線周辺の物体によって生じる道路内の非通行部分であるフリースペースと、自車の周辺の車両の存在とを少なくとも認識できる周辺環境認識部と、前記自車が退避走行を継続する制限時間を設定する制限時間設定部と、前記周辺環境認識部が認識した前記路肩のスペースに基づいて、前記自車が路肩に退避できるか否かについての路肩退避可否を判定する路肩退避可否判定部と、前記周辺環境認識部によって認識された前記路肩のスペースとフリースペースとの少なくともいずれか一方を前記自車の退避先である退避場所を設定する退避場所設定部と、設定された前記制限時間と、判定された前記路肩退避可否とに基づいて、前記自車の状態を、退避走行を継続する状態、車線内停車を実施する状態、または、路肩退避を実施する状態のうちのいずれかに判定する状態判定部と、前記状態判定部により判定された前記自車の状態に基づいて、前記自車を制御する制御部と、を備える。
【0007】
本発明に係る退避走行支援装置によれば、周辺環境認識部は、路肩のスペースのみならず、車線形態や車線周辺の物体によって道路内に生じるフリースペースについても認識する。例えば、車線の形態としての車線数の増減、車線周辺の物体としての車線内の障害物によって、道路内に非通行部分が生じる場合に、この非通行部分をフリースペースとして認識する。退避場所設定部は、周辺環境認識部によって認識された路肩のスペースとフリースペースとの少なくともいずれか一方を自車の退避先である退避場所に設定する。このため、自車が走行する道路の状況に応じて、自車が安全に退避できる退避場所を設定できる。状態判定部は、設定された退避場所(路肩のスペースまたはフリースペース)と、制限時間と、路肩退避可否とに基づいて、自車の状態を、退避走行を継続する状態、車線内停車を実施する状態、または、路肩退避を実施する状態のうちのいずれかに判定する。状態判定部は、自車の状態を判定するに際して、自車の走行する道路の状況に応じて設定された安全な退避場所に関する情報を参照するため、自車が走行する道路の状況に基づいて自車の状態を判定できる。その結果、制御部によって、自車が走行する道路の状況に基づく、より安全な退避走行が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る退避走行支援装置を示すブロック図。
図2】第1実施形態に係る退避走行支援処理のフローチャート。
図3】退避走行支援処理における車線増減スペース処理のフローチャート。
図4】退避走行支援処理における路肩退避処理のフローチャート。
図5】退避走行支援処理における障害物スペース処理のフローチャート。
図6】車線増加スペースに自車が退避した状態を示す図。
図7】障害物スペースに自車が退避した状態を示す図。
図8】中央分離帯スペースに自車が退避した状態を示す図。
図9】複数の区画線によって区画された中央分離帯内に静止物が設置されている場合の非通行部分の推定について説明する図。
図10】車線減少スペースに自車が退避した状態を示す図。
図11】自車が路肩退避を実行する状態を示す図。
図12】障害物が停車車両である場合のフリースペースを説明する図。
図13】障害物が複数の停車車両である場合のフリースペースについて説明する図。
図14】自車の停車後に追加的に実行可能な退避再開判定処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
図1に示す退避走行支援装置10は、車両等に搭載され、運転者が意識レベルの低下などにより運転不能となった場合等に、車両を安全な退避先に走行させ、停車させることを支援する機能を有する装置である。退避走行支援装置10は、周辺環境認識部11と、制限時間設定部12と、受信部13と、退避再開判定部14と、車線変更可否判定部15と、路肩退避可否判定部16と、退避場所設定部17と、状態判定部18と、制御部19と、を備えている。退避走行支援装置10は、例えば、CPU、ROM、RAM、I/O等を備えるECUとして車両に搭載され、CPUが、ROMにインストールされているプログラムを実行することでこれら各機能を実現する。
【0010】
周辺環境認識部11は、路肩のスペースと、道路内のフリースペースと、自車の周辺の車両の存在とを少なくとも認識可能に構成されている。フリースペースとは、車線形態または車線周辺の物体によって道路内に生じる非通行部分(車両が通行しない部分)である。なお、路肩のスペースは、道路の横方向の端部である道路端の外側(道路外)のスペースであるのに対し、フリースペースは、道路の両側の端部の間(道路内)のスペースである。
【0011】
周辺環境認識部11は、例えば、車載のレーダ装置、撮像装置などの物体検出装置から取得した物体検出情報から、自車の周辺に存在する物体の種別や大きさ、自車との距離や相対速度を認識できる。図1に示すように、周辺環境認識部11は、周辺監視装置類30から物体検出情報を取得できる。周辺監視装置類30は、撮像装置の一例である画像センサ31と、レーダ装置の一例であるミリ波レーダ32とを備えている。図1には図示していないが、周辺環境認識部11は、例えば、車載のGNSS受信装置により地図情報等を取得可能に構成されていてもよい。取得した地図情報等から、自車の走行する道路や、その周辺の道路についての道路情報を取得することができる。道路情報としては、道路形状情報、車線情報、接続点情報、道路境界情報などが含まれる。路肩のスペースおよびフリースペースは、物体検出情報から認識することもできるし、地図情報から認識することもできる。自車の周辺の車両等は、物体検出情報から認識することができる。周辺環境認識部11は、各種センサ等から物体検出情報や地図情報等を周辺環境情報として取得する機能に加えて、周辺環境情報から路肩を検出する路肩検出部としての機能、周辺環境情報から道路内の障害物を検出する障害物検出部としての機能、周辺環境情報からフリースペースを認識するフリースペース認識部としての機能を有する。
【0012】
周辺環境認識部11は、道路内の車両が走行しない非通行部分を推定し、この非通行部分をフリースペースとして認識する。例えば、周辺環境認識部11は、道路情報に基づいて自車が走行する道路の横方向の端部である道路端を認識する。さらに、周辺環境認識部11は、道路端と、自車の先行車の走行軌跡とに基づいて、非通行部分を推定し、推定した非通行部分をフリースペースとして認識する。先行車の走行軌跡を考慮して非通行部分を推定することにより、車線の合流により車線が広がっている場合に、合流車線を非通行部分と判定することを回避できる。
【0013】
また、例えば、周辺環境認識部11は、自車が走行する道路の中央分離帯の周囲の導流帯(ゼブラゾーン)をフリースペースとして認識する。道路の中央分離帯は、道路の路面標示であり、物体検出情報から認識できるが、地図情報から認識されてもよい。導流帯は、撮像装置から取得された画像情報について、例えば、セマンティックセグメンテーション(Semantic Segmentation)により認識してもよい。セマンティックセグメンテーションは、画像内の全画素にラベルやカテゴリを関連付けるディープラーニング(Deep Learning)のアルゴリズムであり、特徴的なカテゴリを形成する画素の集まりを認識するために使用される。
【0014】
また、例えば、周辺環境認識部11は、自車が走行する道路において、複数の区画線と、複数の区画線の間に存在する静止物とを認識した場合に、複数の区画線と静止物との距離に基づいて、複数の区画線間における静止物の周囲の非通行部分を推定してもよい。具体的には、複数の区画線のそれぞれと静止物との距離を測定し、いずれの区画線と静止物との間の距離も、車両が通行可能な距離に満たない(例えば、車両の横幅よりも短い)場合には、車線内の静止物の前方や後方を非通行部分として推定してもよい。さらには、推定した非通行部分をフリースペースとして認識してもよい。例えば、2本の区画線により分離帯が構成されているような場合にも、適切に非通行部分を推定できる。
【0015】
制限時間設定部12は、自車が退避走行を継続する制限時間を設定する。制限時間は、運転者が運転不能であると判定された時点から、自車が退避走行を完了して停車するまでの時間である。制限時間は、救助要請が遅くなり過ぎないことを考慮して、所定の時間に設定される。制限時間設定部12は、周辺環境認識部11から取得した道路情報や物体検出情報に基づいて、制限時間を設定するように構成されていてもよい。
【0016】
受信部13は、退避走行支援装置10の外部に設置された外部通信装置類20からの情報を受信し、退避再開判定部14に受信した情報を送信する。外部通信装置類20としては、例えば、通信センター21、人間と機械との間の情報伝達手段であるHMI22(Human Machine Interface)、スマートフォン23などの携帯通信機器を使用できる。
【0017】
退避再開判定部14は、自車が走行中の自車線内で車線内停車を実施した場合に、所定の条件に基づいて、自車の退避走行再開の可否を判定する。退避再開判定部14における退避再開の判定は、車載のECU等に記憶された車載ソフトウェアにより判定された退避再開可否の判定結果に基づいて行われてもよいし、外部通信装置類20から受信部13を介して退避再開判定部14が取得した退避再開可否の判定結果に基づいて行われてもよい。
【0018】
車線変更可否判定部15は、自車の車線変更の可否を判定する。車線変更可否判定部15は、周辺環境認識部11により路肩のスペースやフリースペースの存在が認識され、路肩のスペース側またはフリースペース側に自車の走行する車線(自車線)に隣接車線が存在する場合に、その隣接車線への車線変更が可能か否かを判定する。
【0019】
路肩退避可否判定部16は、周辺環境認識部11が認識した路肩のスペースに基づいて、自車が路肩に退避できるか否か、すなわち、自車の路肩退避可否を判定する。具体的には、周辺環境認識部11が認識した路肩のスペースの位置および大きさと、自車の位置、大きさ、および走行速度等に基づいて、その路肩のスペースが、自車が安全に停車できる路肩のスペースであると判定できる場合に、自車の路肩退避は可能であると判定する。
【0020】
退避場所設定部17は、周辺環境認識部11によって認識された路肩のスペースまたはフリースペースに基づいて、自車の退避先である退避場所を設定する。退避場所としては、路肩のスペース、フリースペースのうちのいずれか一方または双方が設定される。一般道等の路肩の狭い道路では、路肩のスペースが狭く、自車の退避場所として十分な大きさでない場合がある。路肩のスペースが狭い一方で、道路内に十分な大きさのフリースペースが存在する場合には、フリースペースを退避場所として、車線内停車をする方が安全である。フリースペースを目的地として退避走行することにより、路肩のスペースが狭い場合にも、安全に退避走行を実行でき、渋滞を招くことを回避できる。
【0021】
複数の退避場所が設定された場合には、後述する状態判定部18により、設定された複数の退避場所から実際に退避走行を行う目的地が選択されるようにしてもよい。また、退避場所設定部17において、所定の条件に基づいて、実際に退避走行を行う目的地を選択して、1つの退避場所を設定するようにしてもよい。例えば、退避場所設定部17は、フリースペースの大きさおよび自車に対する相対位置、自車の走行速度および大きさ等に基づいて、自車がフリースペースに停車できると判定できる場合に、フリースペースを退避場所として設定するように構成されていてもよい。また、例えば、退避場所設定部17は、路肩のスペースまたはフリースペースが、自車の走行状態および自車の周辺の車両の走行状態に基づいて、自車が安全に移動し停車できるスペースであると判定される場合に、路肩のスペースまたはフリースペースを退避場所に設定するように構成されていてもよい。
【0022】
例えば、フリースペースのうち、自車の進行方向に存在し、自車が停止するのに十分な大きさを有するスペースをフリースペースとすることが好ましい。なお、自車が停止するのに十分な大きさのスペースとは、車線方向の長さ(縦幅)が自車の前後方向の長さよりも長く、車線方向に直行する幅方向の長さ(横幅)が自車の幅方向の長さよりも長いスペースであり、縦方向および横方向に、それぞれマージンが設定されていることが好ましい。さらには、自車の走行速度(自車速)と、フリースペースと自車との距離に基づいて、フリースペースを退避場所に設定するか否かを判定してもよい。例えば、現在のフリースペースと自車との距離が、現在の自車速から所定の減速度で減速を開始して停車するまでに自車走行する距離よりも短い場合には、そのフリースペースは安全に停止できないものとして退避場所に設定しないようにしてもよい。また、例えば、駐停車禁止の場所は退避場所に設定しないようにしてもよい。一方で、運転者が意識不明である等により緊急性が高い場合には、駐停車禁止を退避場所に設定してもよい。
【0023】
退避場所設定部17は、車線数増減判定部17aと、障害物判定部17bと、路肩判定部17cとを備えている。車線数増減判定部17aにより車線数が増減すると判定された場合に、退避場所設定部17は、車線数の増減により生じるフリースペースを退避場所として設定するように構成されていてもよい。障害物判定部17bにより道路内に障害物が存在すると判定された場合に、退避場所設定部17は、障害物の周囲に生じるフリースペースを退避場所として設定するように構成されていてもよい。路肩判定部17cにより自車が走行する道路に路肩が存在すると判定された場合に、路肩のスペースを退避場所として設定するように構成されていてもよい。
【0024】
車線数増減判定部17aは、自車の走行する道路における車線数の増減を判定可能に構成されている。車線数増減判定部17aは、例えば、画像センサ31またはミリ波レーダ32の検出結果から認識される自車の走行する道路の形状に基づいて、車線数の増減を判定するように構成されていてもよい。また、車線数増減判定部17aは、例えば、自車が走行する道路の路面標示と、看板標識との少なくともいずれか一方を認識することにより、車線数の増減を判定するように構成されていてもよい。道路の路面標示および看板標識は、主として、画像センサ31の検出結果から認識することができる。車線数増減判定部17aを備えることにより、車線数の増減により生じるフリースペースを退避場所として有効活用できるという従来にはない顕著な効果を得ることができる。また、車線数の増減により生じるフリースペースを退避場所とすることにより、退避走行する自車が工事による交通規制区域へ進入することを回避することができる。
【0025】
障害物判定部17bは、自車の走行する道路内に存在する障害物を判定可能に構成されている。画像センサ31またはミリ波レーダ32の検出結果から、障害物が道路内に存在するか否かを判定することができる。障害物判定部17bは、交差点で一時的に停車している車両等を障害物から除外するように構成されていてもよい。障害物判定部17bは、道路端から、その内側に、所定距離以内に所定以上の大きさの物体が存在する場合に、道路内に障害物が存在すると判定するように構成されていてもよい。所定距離は、例えば、車線幅である。所定の大きさは、車線方向の長さ(縦幅)、車線方向に直行する幅方向の長さ(横幅)、および高さにより規定できる。例えば、縦幅、横幅、高さについてそれぞれ閾値を設定し、縦幅、横幅、高さのいずれも閾値を超えた場合に、障害物が存在すると判定するように構成してもよい。各閾値は、車両の通行を阻害するのに十分な値に設定されることが好ましい。退避場所設定部17は、障害物判定部17bにより認識された障害物が存在する車線内において、障害物の前方の所定の大きさの領域をフリースペースとして退避場所に設定するように構成されていてもよい。障害物の前方のフリースペースを退避場所に設定すると、退避場所に停車した自車の後方に障害物が存在する状態となるため、障害物によって、自車が後続車から衝突されることを回避することができる。この観点から、障害物の大きさは、後続車の衝突を抑制または回避できる程度に十分大きいことが好ましい。
【0026】
退避場所設定部17は、障害物判定部17bにより認識された障害物が存在する車線内において、障害物の前方における他の物体が存在しない所定の大きさの領域をフリースペースとして退避場所に設定するように構成されていることが好ましい。所定の大きさとは、自車が停車するのに十分な大きさである。障害物の周囲に、歩行者などの回避すべき対象が検出される場合には、歩行者を避けるために十分なスペースを確保して、障害物から離れた位置のフリースペースを退避場所に設定してもよい。
【0027】
路肩判定部17cは、自車の走行する道路に路肩が存在するか否かを判定する。路肩判定部17cは、周辺環境認識部11により認識された路肩の横幅が、自車を停車するのに十分な横幅を有している場合に、路肩が存在すると判定するように構成されていてもよい。例えば、路肩の横幅が所定の閾値以上である場合には、路肩が存在すると判定し、所定の閾値以下である場合には、路肩が存在しないと判定するように構成されていてもよい。
【0028】
状態判定部18は、自車の状態を、退避走行を継続する状態、車線内停車を実施する状態、または、路肩退避を実施する状態のうちのいずれかに判定する。状態判定部18は、制限時間設定部12により設定された制限時間と、路肩退避可否判定部16により判定された自車の路肩退避可否と、退避場所設定部17により設定された退避場所とに基づいて、自車の状態を判定する。車線内停車を実施する状態は、フリースペースに停車する状態と、フリースペースとして認識されていない車線内に停車する状態とを含む。
【0029】
例えば、退避場所が路肩のスペースであり、直ちに路肩のスペースに退避できる場合には、自車の状態は、路肩退避を実施する状態に判定される。また、例えば、退避場所が路肩のスペースであり、直ちに路肩のスペースに退避はできないが、制限時間内に退避できる場合には、自車の状態は、退避走行を継続する状態に判定される。また、例えば、退避場所がフリースペースであり、直ちにフリースペースに退避できる場合には、自車の状態は、車線内停車を実施する状態に判定される。また、例えば、制限時間内に退避場所に到達できない場合には、自車の状態は、車線内停車を実施する状態に判定される。
【0030】
状態判定部18は、例えば、路肩のスペースとフリースペースとの双方が退避場所として設定されている場合には、実際に退避走行を実行する目的先を選定し、選定した目的地に基づいて、自車の状態を判定するように構成されていることが好ましい。例えば、自車の走行状態および自車の周辺の車両の走行状態に基づいて、退避走行における迅速性や安全性を考慮して目的先を選定して、自車の状態を判定するように構成されていてもよい。より具体的には、退避完了までの時間が短い退避場所に向かって退避するように、自車の状態を判定してもよい。または、より安全に退避できる退避場所に向かって退避するように、自車の状態を判定してもよい。
【0031】
制御部19は、状態判定部18により判定された自車の状態に基づいて、自車を制御する。退避走行を継続する状態と判定された場合には、自車線内での走行や車線変更を実行する等により、退避走行を継続する制御を実行する。車線内停車を実施する状態であると判定された場合には、後続車に停車を知らせる報知や、減速を実行して、車線内に停車する制御を実行する。車線内のフリースペースに停車する場合には、フリースペースを目的地とする退避走行を実行して停車する。路肩退避を実施する状態と判定された場合には、退避先である路肩に向かって移動し、減速して、退避先である路肩のスペースに停車させる制御を実行する。
【0032】
図2に、退避走行支援装置10により実行される退避走行支援処理のフローチャートを示す。図2に示す処理は、所定の時間間隔で繰り返し事項される。
【0033】
ステップS101では、自車の周辺環境認識が実施される。具体的には、物体検出装置から物体検出情報を取得することにより、自車の周辺の路肩のスペースおよび車両の存在を認識する。その後、ステップS102に進む。
【0034】
ステップS102では、制限時間TL1を設定する。制限時間TL1は、自車が退避走行を継続する時間の上限値である。自車の退避走行が制限なく継続されることは、運転者の救助を阻害する要因となる。このため、制限時間TL1は、運転者の救助を考慮した所定の時間に設定される。その後、ステップS103に進む。
【0035】
ステップS103では、運転者が運転不能であると判定された時点から現在までの時間を示す現在時間Tと、制限時間TL1とを比較する。T<TL1である場合には、ステップS104に進む。T≧TL1である場合には、ステップS110に進み、自車の状態は、自車が走行する車線内で停車する状態、すなわち、自車線停車の状態であると判定し、処理を終了する。
【0036】
ステップS104では、車線数の増減があるか否かを判定する。車線数の増減は、周辺監視装置類30から認識される自車の走行する道路の形状、路面標示、看板標識等により判定することができる。ステップS101により取得した周辺環境情報から、車線数の増減があると判定される場合には、ステップS105に進み、車線増減によって生じるフリースペース(車線増減スペース)を退避走行の目的地に選択する。ステップS105の処理は、車線増減スペースを退避走行の目的地に選択して、自車の状態が、車線内停車の状態であると判定された場合の処理である。その後、処理を終了する。
【0037】
ステップS106では、路肩のスペースがあるか否かを判定する。路肩のスペースがあると判定される場合には、ステップS107に進み、路肩のスペースを退避走行の目的地に選択する。後述するように、ステップS107の処理において、自車の状態は、路肩退避を実施する状態もしくは退避走行を継続する状態のいずれかに判定される。路肩のスペースがないと判定される場合には、ステップS108に進む。
【0038】
ステップS108では、自車が走行する道路内に障害物が存在するか否かを判定する。障害物が存在すると判定される場合には、ステップS109に進み、障害物によって生じるフリースペース(障害物スペース)を退避走行の目的地に選択する。ステップS109の処理は、障害物スペースを退避走行の目的地に選択して、自車の状態が、車線内停車の状態であると判定された場合の処理である。その後、処理を終了する。
【0039】
ステップS105、S107,S109に示す処理を、それぞれ、図3~5に示す。図3に示す車線増減スペース処理において、ステップS201では、車線数が増加するか否かを判定する。車線数が増加する場合には、ステップS202に進む。車線数が減少する場合には、ステップS205に進み、車線数減少によって生じるフリースペース(車線減少スペース)を退避走行の目的地に設定することを決定し、処理を終了する。
【0040】
ステップS202では、自車の移動する側(移動側)に車線が存在するか否かについて判定する。自車の移動側車線とは、自車に対し路肩側にある車線である。移動側車線が存在する場合には、ステップS204に進み、中央分離帯によって生じるフリースペース(中央分離帯スペース)を退避走行の目的地に設定することを決定し、処理を終了する。移動側車線が存在しない場合には、ステップS203に進み、車線増加スペースを退避走行の目的地に設定することを決定し、処理を終了する。
【0041】
図4に示す路肩退避処理において、ステップS301では、自車の移動する側(移動側)に車線が存在するか否かについて判定する。自車の移動側車線とは、自車に対して路肩側にある車線であり、路肩のスペースと自車線との間に存在する車線である。移動側車線が存在する場合には、ステップS302に進む。移動側車線が存在しない場合には、ステップS305に進む。
【0042】
ステップS302では、移動側車線への車線変更が可能であるか否かを判定する。例えば、図2に示すステップS101において取得した、自車の周辺の道路について道路情報、自車の周辺の物体(特に車両)についての物体検出情報、自車の走行速度などに基づいて、車線変更が可能であるか否かを判定することができる。車線変更が可能である場合にはステップS303に進み、車線変更を実行して処理を終了する。車線変更が可能でない場合には、ステップS304に進み、自車線の走行を継続することを決定した後、処理を終了する。ステップS301~S303に示すように、移動側車線が存在し、移動車線への車線変更が可能な場合には、車線変更が実施され、退避走行が継続される。自車の状態は、退避走行を継続する状態に判定される。
【0043】
ステップS305では、路肩退避が可能であるか否かについて判定する。路肩退避が可能である場合には、ステップS306に進み、路肩退避を実行する。ステップS301,S305,S306に示すように、移動側車線が存在しない場合には、路肩退避を実施する状態であると判定されて、実行される。
【0044】
図5に示す障害物スペース退避処理において、ステップS401では、認識した障害物の前後に、他の物体が存在しない所定の大きさのフリースペースが存在するか否かを判定する。所定の大きさとは、自車が停止するのに十分な大きさであり、より具体的には、車線方向の長さ(縦幅)が自車の前後方向の長さよりも長く、車線方向に直行する幅方向の長さ(横幅)が自車の幅方向の長さよりも長いスペースである。所定の大きさは、自車の縦幅および横幅に対して、それぞれマージンを加えた値に設定されていることが好ましい。該当するフリースペースが存在する場合には、ステップS402に進む。該当するフリースペースが存在しない場合には、ステップS404に進み、自車線のフリースペースではない場所に自車を停車させて、処理を終了する。
【0045】
ステップS402では、ステップS401において存在すると判定された障害物スペースに自車が退避できるか否かを判定する。退避できる場合には、ステップS403に進み、障害物スペースを目的地とする退避走行を実行する。退避できない場合には、ステップS404に進み、自車線のフリースペースではない場所に自車を停車させる。その後、処理を終了する。
【0046】
自車が路肩のスペースまたはフリースペースに退避した状態について、図を用いてさらに具体的に説明する。図6は、車線増加スペースに自車が退避した状態を示す図である。自車41が走行する自車線である車線61は、地点P1において、その左側に車線62が増加し、2車線になっている。車線61,62の路肩側には擁壁65が存在し、地点P1以前における擁壁65と車線61の左白線との間の路肩、および、地点P1以降における擁壁65と車線62の左白線との間の路肩は狭く、自車41を安全に駐車させるのに十分な路肩のスペースを確保できない。しかしながら、地点P1において車線が増加することにより、フリースペースS1が生じる。自車が走行する道路の横方向の端部である道路端を認識し、道路端と、自車の先行車の走行軌跡とに基づいて推定される道路内の非通行部分をフリースペースS1として認識できる。なお、車線61の路肩側の白線もしくは擁壁65を道路端として認識できる。フリースペースS1は、地点P1から自車の前方に存在する、車両が通行しない非通行部分である。フリースペースS1を退避場所として目的地に設定し、自車41を停車位置41aに退避させて停車させることによって、路肩が存在しない道路においても、安全に自車41を車線内で停車させることができる。
【0047】
図7は、障害物スペースに自車が退避した状態を示す図である。路肩側である擁壁65の直近に車線62が存在し、車線62に対して路肩に対して逆側である右側に車線61が隣接している。障害物66は三角コーンであり、車線幅方向に2つずつ3列並べて車線62内に設置されている。道路端である車線62の路肩側の白線から所定の距離内に、車両の通行を阻害するのに十分な大きさの障害物66が設置されている。自車42は車線61を走行している。擁壁65と車線62の左白線との間の路肩は狭く、自車41を安全に駐車させるのに十分な路肩のスペースを確保できない。しかしながら、車線62内に障害物66が存在する場合には、障害物66によって車線62における車両の走行が阻害されるため、障害物66の前端である地点P2よりも前方に、フリースペースS2が生じる。フリースペースS2は、地点P2から自車の前方に存在する、車両が通行しない非通行部分であって、他の物体が存在しない領域である。フリースペースS2を退避場所として目的地に設定し、自車42を停車位置42aに退避させて停車させることによって、路肩が存在しない道路においても、安全に自車42を車線内で停車させることができる。
【0048】
図8は、中央分離帯スペースに自車が退避した状態を示す図である。自車43が走行する車線61と、他車50が走行する車線62とは、中央分離帯72によって互いに分離されている。中央分離帯72の車線62の近傍に分離壁70は、地点P31まで存在し、地点P31より前方には、導流帯(ゼブラゾーン)71が存在している。地点P31において車線62は車線61側である右側に傾斜し、自車43の進行方向に向かって縮小する導流帯71の終点において、車線61と車線62とは、白線を介して隣接する隣接車線となる。図8に示すように、路肩が狭く、さらに、自車線である車線61に対して路肩側に中央分離帯72と、中央分離帯72を介して分離された車線62が存在する場合には、路肩のスペースに自車43を退避させることは困難である。しかしながら、中央分離帯72の前方に導流帯71が存在する場合には、導流帯は基本的に非通行部分であるため、導流帯71をフリースペースS3として退避場所に設定できる。フリースペースS3を退避場所として目的地に設定し、自車43を停車位置43aに退避させて停車させることによって、路肩への退避が困難な道路においても、安全に自車43を道路内で停車させることができる。
【0049】
複数の区画線によって中央分離帯が構成されており、中央分離帯内に静止物が設置されている場合には、静止物と、複数の区画線との距離に基づいて非通行部分が推定され、フリースペースが認識されるようにしてもよい。複数の区画線の近傍に、中央分離帯であることを示す看板標識が存在している場合には、看板標識を認識することによっても、中央分離帯の存在を認識できる。
【0050】
図9に示すように、路肩側である擁壁65の直近に車線62が存在し、車線62に対して路肩に対して逆側である右側に車線61が隣接している。車両44,45が走行する車線61の右側には中央分離帯73が存在している。中央分離帯73の白線L1と白線L2との間に、静止物74,75が設置されている。
【0051】
静止物74は、中央分離帯73を区画する左側の白線L1に近接する位置に設置されている。静止物74は、左側の白線L1からの距離が近い一方で、右側の白線L2からの距離が遠い位置に設置されている。領域R4は、車両44と同じ縦幅および横幅を有する略長方形の領域であり、領域S4は、静止物74と白線L2との間に領域R4を移動させたものである。図9に示すように、領域S4は、静止物74と白線L2との間に収まる。このため、静止物74の周囲は、車両44が通過でき、非通行部分に該当しない。静止物74の周囲は、フリースペースではないため、退避場所として設定することもできない。
【0052】
静止物75は、中央分離帯73の横幅方向の中央に設置されている。すなわち、左側の白線L1からの距離と、右側の白線L2からの距離とが同程度となる位置に設置されている。領域R5は、車両45と同じ縦幅および横幅を有する略長方形の領域であり、領域S5は、静止物75の左右に領域R5を移動させたものである。図9に示すように、静止物75の左側に移動させた領域S51は、白線L1から突出する。静止物75の右側に移動させた領域S52は、白線L2から突出する。このため、静止物75の周囲は、車両45が通過できる非通行部分に該当する。中央分離帯73内かつ静止物75の周囲の領域は、フリースペースとして認識される。フリースペースの大きさが、自車の大きさに対して十分な大きさである場合には、退避場所として設定することができる。フリースペースは、静止物75の前方または後方に設定できる。フリースペースの車線方向の長さ(縦幅)は、自車の前後方向の長さよりも長く、車線方向に直行する幅方向の長さ(横幅)は、自車の幅方向の長さよりも長いことが好ましく、さらには、その縦幅および横幅に対して、それぞれマージンを加えた値に設定されていることが好ましい。
【0053】
図10は、車線減少スペースに自車が退避した状態を示す図である。自車46が走行する自車線である車線61は、擁壁65の直近の車線であり、擁壁の逆側である右側において隣接車線である車線63と接している。地点P6において、車線61が車線63に合流するように減幅して無くなり、2車線から1車線になっている。地点P6以前における擁壁65と車線61の左白線との間の路肩、および、地点P6以降における擁壁65と車線63の左白線との間の路肩は狭く、自車46を安全に駐車させるのに十分な路肩のスペースを確保できない。しかしながら、地点P6において車線が増加することにより、フリースペースS6が生じる。フリースペースS1は、地点P6から自車側(手前側)に存在する、車両が通行しない非通行部分である。自車46を停車位置46aに退避させて停車させることによって、路肩が存在しない道路においても、安全に自車46を車線内で停車させることができる。
【0054】
図11は、自車47が路肩64を目的地として路肩退避を実行する状態を示す。自車47が車線61を走行中に、自車位置47aにおいて車線変更が可能であると判定されると、自車線である車線61から移動側車線である車線62aへの車線変更が実行され、自車47は、自車位置47aから自車位置47bに移動する。同様の処理が実行されて、自車線である車線62aから移動側車線である車線62bへの車線変更が実行され、自車47は、自車位置47bから自車位置47cに移動する。
【0055】
自車位置47cでは、自車線である車線62bと路肩64との間に車線は存在しないため、自車線である車線62bから路肩64への退避が実行される。自車47は、自車位置47cから自車位置47dに移動して、停車する。図11に示すように、路肩64に自車を安全に停車させるために十分な大きさのスペースが存在し、路肩64まで安全に車線変更により移動できる場合には、自車47を路肩64まで安全に退避させることができる。路肩64のスペースに停車中の車両は、道路内のフリースペースに停車中の車両よりも、後続車等から衝突される危険性が低いため、安全に停車できる。
【0056】
図12に示すように、障害物は、車線62内に停車する他車51であってもよい。停車中の他車51が障害物であると判定し、他車51の前方における他の物体が存在しない所定の大きさ以上の領域をフリースペースS8として認識する。そして、フリースペースS8を退避場所として目的地に設定し、自車48を停車位置48aに退避させて停車させることによって、路肩が存在しない道路においても、安全に自車48を車線内で停車させることができる。
【0057】
図13に示すように、車線62内に複数の停車車両として前方に他車52が存在し、後方に他車53が存在する場合には、他車52と他車53との間にフリースペースS91を認識するようにしてもよい。他車52の前方かつ他車53の後方のフリースペースS91と、他車53の前方のフリースペースS92との双方を退避場所として設定し、自車49を、停車位置49aまたは停車位置49bに停車させるようにしてもよい。複数の停車車両が連続している場合には、フリースペースS92のように、先頭の停車車両の前方のフリースペースを目的地として退避走行を実行することが安全性の点から好ましいが、自車の状況や自車の周囲の状況に応じて、フリースペースS91を目的地として退避走行を実行してもよい。
【0058】
図2~5に示すフローチャートにおいて、自車を自車線内で停止させる処理を実行した後に、退避再開判定処理を実行してもよい。図14は、退避再開判定処理を示すフローチャートである。ステップS501に示すように自車線停車状態となった後、ステップS502に進む。ステップS502では、退避再開情報を取得する。具体的には、外部通信装置類20を介して取得した退避再開可否判定結果や、車載のソフトウェアにより計算された退避再開可否判定結果を取得する。その後、ステップS503に進む。
【0059】
ステップS503では、退避走行を再開できるか否かを判定する。退避走行を再開できると判定した場合には、ステップS504に進む。退避走行を再開できないと判定した場合には、ステップS501に戻り、自車について、自車線内での停車が継続される。
【0060】
ステップS504では、自車が路肩に退避できるか否かについて判定する。退避できると判定した場合には、ステップS505に進み、自車は、退避先である路肩に退避するように制御される。その後、処理を終了する。
【0061】
図14に示す退避走行支援処理によれば、自車が自車線において車線内停車中に自車の周辺環境情報から路肩への退避が可能であると判定された場合には、退避走行を再開して、車線内よりも安全な路肩に自車を退避させることができる。
【0062】
上記の各実施形態によれば、下記の作用効果を得ることができる。
【0063】
退避走行支援装置10は、周辺環境認識部11と、制限時間設定部12と、路肩退避可否判定部16と、退避場所設定部17と、状態判定部18と、制御部19と、を備えている。
【0064】
周辺環境認識部11は、路肩のスペースと、車線形態または車線周辺の物体によって生じる道路内の非通行部分であるフリースペースと、自車の周辺の車両の存在とを少なくとも認識できる。制限時間設定部12は、自車が退避走行を継続する制限時間を設定する。
【0065】
路肩退避可否判定部16は、周辺環境認識部11が認識した路肩のスペースに基づいて、自車が路肩に退避できるか否かについての路肩退避可否を判定する。退避場所設定部17は、周辺環境認識部11によって認識された路肩のスペースとフリースペースとの少なくともいずれか一方を自車の退避先である退避場所に設定する。状態判定部18は、設定された制限時間と、判定された路肩退避可否と、設定された退避場所とに基づいて、自車の状態を、退避走行を継続する状態、車線内停車を実施する状態、または、路肩退避を実施する状態のうちのいずれかに判定する。制御部19は、状態判定部18により判定された自車の状態に基づいて、自車を制御する。
【0066】
退避走行支援装置10によれば、周辺環境認識部11は、路肩のスペースのみならず、車線形態や車線周辺の物体によって道路内に生じるフリースペースについても認識する。退避場所設定部17は、周辺環境認識部11によって認識された路肩のスペースとフリースペースとの少なくともいずれか一方を自車の退避先である退避場所に設定する。このため、自車が走行する道路の状況に応じて、自車が安全に退避できる退避場所を設定できる。状態判定部18は、設定された退避場所(路肩のスペースまたはフリースペース)と、制限時間と、路肩退避可否とに基づいて、自車の状態を、退避走行を継続する状態、車線内停車を実施する状態、または、路肩退避を実施する状態のうちのいずれかに判定する。状態判定部18は、自車の状態を判定するに際して、自車の走行する道路の状況に応じて設定された安全な退避場所に関する情報を参照するため、自車が走行する道路の状況に基づいて自車の状態を判定できる。その結果、制御部19によって、自車が走行する道路の状況に基づく、より安全な退避走行が実現できる。
【0067】
退避場所設定部17は、自車の走行する道路における車線数の増減を判定可能な車線数増減判定部17aを備えていてもよい。この場合、退避場所設定部17は、車線数増減判定部17aにより車線数が増減すると判定された場合に、車線数の増減により生じるフリースペースを退避場所として設定するように構成されていてもよい。車線数の増減により生じるフリースペースを退避場所として有効活用できるという従来にはない顕著な効果を得ることができる。また、車線数の増減により生じるフリースペースを退避場所とすることにより、退避走行する自車が工事による交通規制区域へ進入することを回避することができる。
【0068】
車線数増減判定部17aは、撮像装置またはレーダ装置の検出結果から認識される自車の走行する道路の形状に基づいて、車線数の増減を判定するように構成されていてもよい。車線数増減判定部17aは、自車が走行する道路の路面標示と、看板標識との少なくともいずれか一方を認識することにより、車線数の増減を判定するように構成されていてもよい。
【0069】
周辺環境認識部11は、自車が走行する道路の横方向の端部である道路端を認識し、道路端と、自車の先行車の走行軌跡とに基づいて推定される道路内の非通行部分をフリースペースとして認識するように構成されていてもよい。先行車の走行軌跡を考慮して非通行部分を推定することにより、車線の合流により車線が広がっている場合に、合流車線を非通行部分と判定することを回避できる。
【0070】
周辺環境認識部11は、自車が走行する道路の中央分離帯の周囲の導流帯をフリースペースとして認識するように構成されていてもよい。
【0071】
周辺環境認識部11は、自車が走行する道路において、複数の区画線と、複数の区画線の間に存在する静止物とを認識した場合に、複数の区画線と静止物との距離に基づいて推定される複数の区画線間における静止物の周囲の非通行部分をフリースペースとして認識するように構成されていてもよい。例えば、2本の区画線により分離帯が構成されているような場合にも、適切に非通行部分を推定できる。
【0072】
退避場所設定部17は、フリースペースの大きさおよび自車に対する相対位置と、自車の走行速度および大きさとに基づいて、自車がフリースペースに停車できると判定できる場合に、フリースペースを退避場所として設定するように構成されていてもよい。
【0073】
退避場所設定部17は、自車の走行する道路内に存在する障害物を判定可能な障害物判定部17bを備えていてもよい。この場合、退避場所設定部17は、障害物判定部17bにより障害物が存在すると判定された場合に、障害物の周囲に生じるフリースペースを退避場所として設定するように構成されていてもよい。
【0074】
周辺環境認識部11は、自車が走行する道路の横方向の端部である道路端を認識し、障害物判定部17bは、道路端から所定距離以内に所定以上の大きさの物体が存在する場合に、障害物が存在すると判定するように構成されていてもよい。道路端から所定距離以内に所定以上の大きさの物体が存在することにより、車両の通行が阻害されて非通行部分が生じる。また、所定以上の大きさの障害物によって、自車が後続車から衝突されることを回避することができる。
【0075】
退避場所設定部17は、障害物判定部17bにより認識された障害物が存在する車線内において、障害物の前方における他の物体が存在しない所定の大きさ以上の領域をフリースペースとして退避場所に設定するように構成されていてもよい。障害物の前方のフリースペースを退避場所に設定すると、退避場所に停車した自車の後方に障害物が存在する状態となるため、障害物によって、自車が後続車から衝突されることを回避することができる。
【0076】
退避場所設定部17は、路肩のスペースまたはフリースペースが、自車の走行状態および自車の周辺の車両の走行状態に基づいて、自車が安全に移動し停車できるスペースであると判定される場合に、路肩のスペースまたはフリースペースを退避場所に設定するように構成されていてもよい。退避走行の安全性を向上させることができる。
【0077】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0078】
10…退避走行支援装置、11…周辺環境認識部、12…制限時間設定部、16…路肩退避可否判定部、17…退避場所設定部、18…状態判定部、19…制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14