(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】電子部品
(51)【国際特許分類】
H01G 2/08 20060101AFI20241218BHJP
H01C 1/084 20060101ALI20241218BHJP
H01F 27/08 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
H01G2/08 A
H01C1/084
H01F27/08 101
(21)【出願番号】P 2021123253
(22)【出願日】2021-07-28
【審査請求日】2024-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】増田 朗丈
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 信弥
(72)【発明者】
【氏名】安藤 ▲徳▼久
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 智之
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 伸也
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-070162(JP,A)
【文献】実開昭61-097851(JP,U)
【文献】特開2020-107872(JP,A)
【文献】特開2010-109333(JP,A)
【文献】特開2022-079393(JP,A)
【文献】特開2019-121552(JP,A)
【文献】特開平02-108560(JP,A)
【文献】特開平08-017679(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 2/08
H01C 1/084
H01F 27/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのチップ部品を有する電子部品であって、
前記電子部品が、第1表面と、前記第1表面に交差する第2表面とを有し、
前記第1表面には、形状記憶板の接合部が接合してあり、
前記形状記憶板の前記接合部に連続している形状変化部が、前記第2表面の少なくとも一部を覆っており、
前記形状変化部が、所定温度以上で前記第2表面から離れる方向に変化する形状を、前記形状記憶板に記憶してある電子部品。
【請求項2】
前記形状記憶板の前記接合部は、接着剤または導電性接着剤により前記第1表面に接合、または前記所定温度以下では剥がれない接合手段で前記第1表面に接合してある請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記形状記憶板の接合部の外面には、前記電子部品を実装する際の接合部材との濡れ性が向上する処理層が形成してある請求項1または2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記形状記憶板は、導電性に優れた金属を含む合金板である請求項1~3のいずれかに記載の電子部品。
【請求項5】
前記形状記憶板が記憶している形状は、前記所定温度以上で前記形状変化部が前記電子部品の実装される実装面に対して略垂直な方向である請求項1~4のいずれかに記載の電子部品。
【請求項6】
前記電子部品が、前記第1表面または前記第2表面に交差する第3表面をさらに有し、
前記第3表面には、別形状記憶板の別接合部が接合してあり、
前記別形状記憶板の前記別接合部に連続している別形状変化部が、前記第2表面の少なくとも一部を覆っており、
前記別形状変化部が、前記所定温度以上で前記第2表面から離れる方向に形状を、前記別形状記憶板に記憶してある請求項1~5のいずれかに記載の電子部品。
【請求項7】
前記別形状変化部と前記形状変化部とが組み合わされ、オーバラップさせずに、またはオーバラップさせて前記第2表面を覆っている請求項6に記載の電子部品
【請求項8】
前記チップ部品は、素子本体と、前記素子本体の端面に形成してある端子電極とを有し、
前記第1表面は、前記チップ部品の端子電極の主表面であり、
前記第2表面は、前記素子本体の側面である請求項1~7のいずれかに記載の電子部品。
【請求項9】
前記チップ部品を収容する収容凹部を持つケースをさらに有する電子部品であって、
前記第1表面は、前記ケースの複数の表面の少なくともいずれか一つであり、前記第2表面は、その他の少なくともいずれか一つである請求項1~8のいずれかに記載の電子部品。
【請求項10】
前記チップ部品は、複数のチップ部品を有し、
複数の前記チップ部品の端子電極の外面が第1の方向に沿って露出して連続して配列されるように、前記チップ部品を保持する開放型のケースを、前記電子部品がさらに有し、
前記第1表面は、複数の前記チップ部品の端子電極の外面が第1の方向に沿って露出して連続して繋がっている集合面であり、
前記第2表面は、前記開放型のケースの少なくとも一面である請求項1~8のいずれかに記載の電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱性に優れしかもハンドリングが容易である電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の放熱性を高めるために、たとえば下記の特許文献1に示すようなヒートシンク付き電子部品が開発されている。
【0003】
しかしながら、従来のヒートシンク付きの電子部品では、放熱性に優れたヒートシンクを取り付けるために、電子部品が大型化すると共に、ヒートシンクが邪魔になり、ピックアップ装置などで搬送することが困難であり、ハンドリング性に難点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、放熱性に優れ、且つ小型であり、しかもハンドリング性に優れた電子部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る電子部品は、
少なくとも一つのチップ部品を有する電子部品であって、
前記電子部品が、第1表面と、前記第1表面に交差する第2表面とを有し、
前記第1表面には、形状記憶板の接合部が接合してあり、
前記形状記憶板の前記接合部に連続している形状変化部が、前記第2表面の少なくとも一部を覆っており、
前記形状変化部が、所定温度以上で前記第2表面から離れる方向に変化する形状を、前記形状記憶板に記憶してある。
【0007】
本発明に係る電子部品では、回路基板などに実装する前の状態では、形状記憶板の接合部および形状変化部は、チップ部品の外面(第1表面および第2表面)に沿って折り曲げられているため、電子部品の小型化を図ることができる。また、これらの形状記憶板は、電子部品をピックアップ装置などで搬送する時の邪魔にならない。形状変化部の外面または接合部の外面に、ピックアップ装置の吸着部で着脱自在に保持して搬送してもよい。
【0008】
すなわち、本発明の電子部品では、ハンドリング性に優れている。また、電子部品を回路基板などに実装する際には、実装のためのリフロー時の熱処理などのために、形状記憶板に熱が伝達し、形状記憶板は、記憶された形状に回復するように変形し、形状記憶板の形状変化部は、電子部品の第2表面から離れる方向に変形する。
【0009】
したがって、形状記憶板の形状変化部は、その周囲の雰囲気に曝される放熱面積が大きくなり、ヒートシンクなどと同様に、放熱性に優れた部分となる。したがって、電子部品、それ自身に発生する熱や、回路基板などから電子部品に伝達される熱が、接合部から形状変化部に伝達し、そこで放熱される。そのため、電子部品の実装後には、放熱性が向上する。実装後の形状変化部には、強制冷却風などを当ててもよい。
【0010】
なお、所定温度とは、電子部品をハンドリングする際に生じる温度の最高温度よりも高い温度であり、電子部品をハンドリングする際に生じる温度では、形状記憶板の記憶している形状が回復しない程度の温度である。この所定温度は、電子部品をハンドリングする際に生じる温度の最高温度より高く、接合部が第2表面から剥がれ落ちてしまう温度より低い温度となるように決定される。
【0011】
好ましくは、前記形状記憶板の前記接合部は、接着剤または導電性接着剤により前記第1表面に接合、または前記所定温度以下では剥がれない接合手段で前記第1表面に接合してある。
【0012】
形状記憶板の接合部が電子部品の絶縁部分に接合される場合には、接合部と第1表面とが電気的に導通する必要はない。しかしながら、形状記憶板の接合部が電子部品の端子電極などに接続される場合には、これらは電気的に導通されることが好ましい。電子部品の実装時に、形状記憶板の前記接合部の外面にハンダフィレットなどが形成される場合があり、そのハンダフィレットが端子電極にも電気的に導通されることが好ましいからである。
【0013】
好ましくは、前記形状記憶板の接合部の外面には、前記電子部品を実装する際の接合部材(たとえばハンダ)との濡れ性が向上する処理層(たとえばスズを含むメッキ層)が形成してある。形状記憶板の前記接合部の外面にハンダフィレットなどが形成され易くなるからである。
【0014】
好ましくは、前記形状記憶板は、導電性に優れた金属を含む合金板である。
【0015】
好ましくは、前記形状記憶板が記憶している形状は、前記所定温度以上で前記形状変化部が前記電子部品の実装される実装面に対して略垂直な方向である。このように構成することで、放熱性が特に向上する。
【0016】
前記電子部品が、前記第1表面または前記第2表面に交差する第3表面をさらに有してもよい。また、前記第3表面には、別形状記憶板の別接合部が接合してあってもよい。さらに、前記別形状記憶板の前記別接合部に連続している別形状変化部が、前記第2表面の少なくとも一部を覆っていてもよく、好ましくは、前記別形状変化部が、前記所定温度以上で前記第2表面から離れる方向に形状を、前記別形状記憶板に記憶してある。
【0017】
このように構成することで、実装後に形状が変化する形状変化部の数を増大させることが可能になり、放熱性が特に向上する。また、実装後に形状が変化する形状変化部を複数にすることで、形状変化部の変化後の高さや幅を制限することが可能になり、実装後に電子部品が占める空間の大きさを制限することができる。
【0018】
前記別形状変化部と前記形状変化部とは、組み合わされ、オーバラップさせずに前記第2表面を覆ってもよく、またはオーバラップさせて前記第2表面を覆ってもよい。オーバラップさせることで、実装後の形状変化部の形状変化を大きくすることができる。また、オーバラップさせずに第2表面を覆う場合には、実装前の電子部品の小型化を確保しつつ、実装後の形状変化部の形状変化を小さくすることができると共に、放熱される箇所を増大させることができる。
【0019】
前記チップ部品は、素子本体と、前記素子本体の端面に形成してある端子電極とを有していてもよい。また、第1表面は、前記チップ部品の端子電極の主表面であってもよく、前記第2表面は、前記素子本体の側面であってもよい。
【0020】
あるいは、電子部品は、前記チップ部品を収容する収容凹部を持つケースをさらに有していてもよい。その場合に、第1表面は、ケースの複数の表面の少なくともいずれか一つであってもよく、第2表面は、その他の少なくともいずれか一つであってもよい。
【0021】
また、前記チップ部品は、複数のチップ部品を有していてもよい。本発明の電子部品は、複数のチップ部品の端子電極の外面が第1の方向に沿って露出して連続して配列されるように、前記チップ部品を保持する開放型のケースを、前記電子部品がさらに有してもよい。
【0022】
前記第1表面は、複数の前記チップ部品の端子電極の外面が第1の方向に沿って露出して連続して繋がっている集合面であってもよい。また、前記第2表面は、前記開放型のケースの少なくとも一面であってもよい。このように構成することで、複数のチップ部品からの熱を、形状記憶板の形状変化部を通して効率的に外部に放熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1A】
図1Aは本発明の一実施形態に係る電子部品の概略斜視図である。
【
図2A】
図2Aは本発明の他の実施形態に係る電子部品の概略斜視図である。
【
図3A】
図3Aは本発明のさらに他の実施形態に係る電子部品の概略斜視図である。
【
図4A】
図4Aは本発明のさらに他の実施形態に係る電子部品の概略斜視図である。
【
図4C】
図4Cは
図4Aに示す電子部品の別の角度から見た概略斜視図である(ケースは省略されている)。
【
図5A】
図5Aは本発明のさらに他の実施形態に係る電子部品の概略斜視図である。
【
図5C】
図5Cは
図5Aに示す電子部品に含まれるケースを斜め下方から見た概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0025】
第1実施形態
図1Aに示すように、本発明の実施形態に係る電子部品10は、コンデンサチップ20と、形状記憶板100とを有する。
【0026】
図1Aに示すように、コンデンサチップ20は、略直方体形状である。
図1Cに示すように、コンデンサチップ20は、素体本体21と、第1および第2端子電極22,24を有する。なお、
図1C(
図1B)では、
図1Aとは異なり、回路基板70などに実装し、形状記憶板100が、記憶している形状に変形した状態を表している。
【0027】
図1Cに示すように、第1および第2端子電極22,24は、素体本体21の第1端面21aおよび第2端面21bに形成してあり、第1端面21aおよび第2端面21bは、相互にX軸方向に沿って反対側に位置している。
【0028】
素体本体21は、内部電極層26と誘電体層28とがZ軸方向に沿って積層してある。第1および第2端子電極22,24は、それぞれ、積層方向に隣り合ういずれかの内部電極層26に接続してある。
【0029】
コンデンサチップ20における誘電体層28の材質は、特に限定されず、たとえばチタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムまたはこれらの混合物などの誘電体材料で構成される。各誘電体層28の厚みは、特に限定されないが、1μm~数百μmのものが一般的である。
【0030】
内部電極層26に含有される導電体材料は特に限定されないが、誘電体層28の構成材料が耐還元性を有する場合には、比較的安価な卑金属を用いることができる。卑金属としては、NiまたはNi合金が好ましい。Ni合金としては、Mn、Cr、CoおよびAlから選択される1種以上の元素とNiとの合金が好ましく、合金中のNi含有量は95重量%以上であることが好ましい。内部電極層26は、市販の電極用ペーストを使用して形成してもよい。内部電極層26の厚みは用途等に応じて適宜決定すればよい。
【0031】
第1および第2端子電極22,24の材質も特に限定されず、通常、銅や銅合金、ニッケルやニッケル合金などが用いられるが、銀や銀とパラジウムの合金なども使用することができる。端子電極22,24の厚みも特に限定されない。なお、第1および第2端子電極22,24の表面には、Ni、Cu、Sn等から選ばれる少なくとも1種の金属被膜が形成されていてもよい。たとえば、Cu焼付層とNiめっき層とSnめっき層からなる端子電極でもよい。
【0032】
コンデンサチップ20の形状やサイズは、目的や用途に応じて適宜決定すればよい。なお、図面において、X軸とY軸とZ軸とは、相互に垂直である。
【0033】
図1Aに示すように、形状記憶板100は、接合部104と、接合部104に連続している形状変化部102と、を有する。接合部104のZ軸方向下側は、チップ部品20の第2側面21d付近まで延びており、Y軸に平行な形状をしている。接合部104は、第1端子電極22のX軸方向の主面22a(第1表面)の大部分を覆っている。
【0034】
形状記憶版100の接合部104は、第1端子電極22の主面22a(第1表面)に、電気的に導通するように接合している。
【0035】
接合部104と主面22aとは、たとえば、接着剤または導電性接着剤などを用いて接合することができるがこれに限定されない。接合部104と主面22aとの接合手段は、接合部104と主面22aとが、電子部品10をリフローする際の所定温度で剥がれないことが好ましい。たとえば高温ハンダを用いることで、電子部品10をリフローする際の所定温度以下で剥がれないように、接合部104と主面22aとを接合することができる。
【0036】
形状変化部102は、台形状の平板部を有し、形状変形前の状態で、素体本体21の第1側面21c(第2表面)の一部(略半分)を覆っている。
【0037】
形状記憶板100は、記憶されている形状に所定温度以上で、変化する性質を有している。形状記憶板100に記憶されている形状とは、
図1Cに示すように、形状変化部102が第1側面21cから離れて回路基板70に対して垂直になる方向である。この形状変化部102が変形する所定温度は、電子部品10をハンドリングする際に生じる温度の最高温度(環境温度の最高温度)よりも高い温度(たとえば60℃)以上である。
【0038】
したがって、本実施形態では、形状変化部102が変形する所定温度は、電子部品10をハンドリングする際に生じる温度の最高温度より高く、接合部が第2表面から剥がれ落ちてしまう温度以下の温度で設定される。
【0039】
本実施形態の形状記憶板100は、導電性に優れた金属を含む合金板である。導電性に優れた金属を含む合金板としては、たとえば銅を60重量%以上含む銅合金の形状記憶合金であることが好ましい。銅合金の形状記憶合金としては、たとえばCu-Zn、Cu-Al-Ni、Cu-Al-Ni-Mn-Tiなどが例示される。また、銅合金以外の形状記憶合金としては、Ni-Tiなどが例示される。
【0040】
図1Aに示すように、電子部品10は、さらに別形状記憶板100aを有している。別形状記憶板100aは、形状記憶板100と同じ構成を有しているが、異なる構成であってもよい。別形状記憶板100aの材質、大きさおよび形状は、形状記憶板100の材質、大きさおよび形状と、同じであることが好ましいが、異なっていてもよい。たとえば、形状記憶板100と別形状記憶板100aとで異なる温度で、形状が回復するようにしてもよい。
【0041】
別形状記憶板100aの接合部104aは、第2端子電極24の主面24a(第3表面)に電気的に導通するように接合している。別接合部104aと主面24aとは、接合部104と主面22aの接合と同様の方法で接合することができる。
【0042】
別形状変化部102aは、台形状の平板部を有し、形状変形前の状態で、素体本体21の第1側面21c(第2表面)の一部(略半分)を覆っている。
【0043】
形状記憶板100の端部106と、別形状記憶板100aの端部106aとは、オーバラップせずに向かい合って配置されている。形状変化部102と別形状変化部102aは、端部106,106a同士の隙間の部分を除いて、第1側面21cに沿う面に対して平行な外面を有している。
【0044】
本実施形態では、形状変化部102の端部106と、別形状変化部102aの端部106aとの隙間は、一定の幅で、X-Y平面上に一直線状になるように設定されているが、これに限定されない。たとえば、形状変化部102の端部106と、別形状変化部102aの端部106aとの隙間は一定ではなく、変化する幅でもよく、あるいは、端部106,106aの形状を変えて、櫛歯状にして、それぞれの山と谷が噛み合うようにしてもよい。
【0045】
図1Cに示すように、電子部品10は、たとえば、回路基板70に実装して使用することができる。回路基板70には、回路パターン72,72が形成してある。本実施形態では、接合部104(別接合部104a)は、主面22a(主面24a)に、電気的に導通するように接合している。電子部品10の実装時に、接合部104を介してハンダフィレットが形成されている場合であっても、第1端子電極22(第2端子電極24)に回路パターン72,72を電気的に導通することができる。
【0046】
本実施形態では、
図1Aに示すように、電子部品10では、回路基板などに実装する前の状態では、形状記憶板100(別形状記憶板100a)の形状変化部102(別形状変化部102a)は、チップ部品20の第1側面21cに沿って折り曲げられているため、電子部品10の小型化を図ることができる。
【0047】
また、形状記憶板100(別形状記憶板100a)は、電子部品10をピックアップ装置などで搬送する時の邪魔にならない。形状記憶板100(別形状記憶板100a)の外面または接合部104(別接合部104a)の外面に、ピックアップ装置の吸着部で着脱自在に保持して搬送してもよい。
【0048】
すなわち、本実施形態の電子部品10では、ハンドリング性に優れている。また、電子部品10を回路基板などに実装する際には、実装のためのリフロー時の熱処理などのために、形状記憶板100(別形状記憶板100a)に熱が伝達する。その結果、
図1Cに示すように、形状記憶板100(別形状記憶板100a)は、記憶された形状に回復するように変形し、形状変化部102(別形状変化部102a)は、電子部品10の第2表面から離れる方向に変形する。
【0049】
したがって、
図1Bおよび
図1Cに示すように、形状変化部102(別形状変化部102a)は、その周囲の雰囲気に曝される放熱面積が大きくなり、ヒートシンクなどと同様に、放熱性に優れた部分となる。したがって、電子部品10、それ自身に発生する熱や、回路基板などから電子部品10に伝達される熱が、接合部104(別接合部104a)から形状変化部102(別形状変化部102a)に伝達し、そこで放熱される。そのため、電子部品10の実装後には、放熱性が向上する。実装後の形状変化部102(別形状変化部102a)には、強制冷却風などを当ててもよい。
【0050】
本実施形態では、形状記憶板100(別形状記憶板100a)が記憶している形状は、形状変化部102(別形状変化部102a)が電子部品10の実装される実装面に対して略垂直な方向(
図1CのZ軸方向上側)である。このように構成することで、ハンダリフロー時の熱などで、形状記憶板100(別形状記憶板100a)が所定温度以上になった際に、
図1Bおよび
図1Cに示すように、形状記憶板100が変形し、Z軸上側方向に延びることで、放熱面積を増大させ、放熱性が特に向上する。
【0051】
本実施形態では、接合部104(別接合部104a)の外面には、電子部品10を実装する際の接合部材(たとえばハンダ)との濡れ性が向上する処理層(たとえばスズを含むメッキ層)が形成してある。接合部104(別接合部104a)の外面にハンダフィレットなどが形成され易くなるからである。処理層は、第1および第2端子電極22,24の金属被膜と同じ材質であってもよい。
【0052】
図1Aに示すように、本実施形態の電子部品10では、形状記憶板100に加えて、別形状記憶板100aが形成されている。このように構成することで、実装後に形状が変化する形状変化部の数を増大させることが可能になり、放熱性が特に向上する。また、実装後に形状が変化する形状変化部を複数にすることで、形状変化部の変化後の高さや幅を制限することが可能になり、実装後に電子部品が占める空間の大きさを制限することができる。
【0053】
本実施形態では、
図1Aに示すように、形状変化部102と別形状変化部102aは、オーバラップさせずに第1側面21cを覆っており、実装前の電子部品10の小型化を確保しつつ、実装後の形状変化部の形状変化を小さくすることができると共に、放熱される箇所を増大させることができる。なお、本実施形態では、別形状記憶板100aの別接合部104aは、第2端子電極24の主面24aではなく、たとえば、第3側面21eなど、他の面に形成されていてもよい。
【0054】
本実施形態では、形状が記憶された形状記憶板100および別形状記憶板100aを第1および第2端子電極22,24に取り付けた後に、第1側面21c側に、それぞれ折り曲げることで形成することができる。また、形状が記憶された形状記憶板100および別形状記憶板100aを折り曲げた状態で、第1および第2端子電極22,24に取り付けてもよい。
【0055】
第2実施形態
図2Aおよび
図2Bに示すように、本実施形態の電子部品10aでは、形状変化部112および別形状変化部112aの構造が異なる以外は、第1実施形態の電子部品10と同様な構成を有し、同様な作用効果を有する。以下の説明では、重複する部分の説明は可能な限り省略し、相違する部分について重点的に説明する。また、図面において共通する部材には、共通の部材の符号を付してある。
【0056】
図2Bに示すように、本実施形態では、形状変化部112は、直方形状の平板部を有している。また、別形状変化部112aも同様に、直方形状の平板部を有している。なお、
図2Bでは、
図2Aとは異なり、回路基板などに実装し、形状記憶板110が、記憶している形状に変形した状態を表している。
【0057】
図2Aに示すように、形状変化部112は、形状変形前の状態で、素体本体21の第1側面21c(第2表面)の大部分を覆っている。さらに、別形状変化部112aは、形状変化部112と組み合わされ、オーバラップさせて第1側面21cを覆っている。このようにオーバラップさせることで、実装後の
図2Bに示すように、形状変化部112および別形状変化部112aの形状変化を大きくすることができる。
【0058】
第3実施形態
図3Aおよび
図3Bに示すように、本実施形態の電子部品10bでは、形状変化部132の構造が異なる以外は、第1または第2実施形態の電子部品と同様な構成を有し、同様な作用効果を有する。以下の説明では、重複する部分の説明は可能な限り省略し、相違する部分について重点的に説明する。また、図面において共通する部材には、共通の部材の符号を付してある。
【0059】
本実施形態では、
図3Bに示すように、形状変化部122の端部126は、櫛歯状に成形されている。また、別形状変化部122aの端部126aも同様に、櫛歯状に成形されている。なお、
図3Bでは、
図3Aとは異なり、回路基板などに実装し、形状記憶板120が、記憶している形状に変形した状態を表している。
【0060】
実装後の
図3Bに示すように、形状変化部122および別形状変化部122aの端部126,126aが櫛歯状であることで、表面積が増え放熱性がより向上する。
【0061】
なお、形状変化部122と別形状変化部122aは、オーバラップせずに、端部126,126aの櫛歯が噛み合うように構成してもよい。
【0062】
第4実施形態
図4Aに示すように、本実施形態の電子部品10cは、2つのコンデンサチップ20aおよび20bと、一対の個別金属端子30および40と、共通金属端子50と、囲繞型絶縁ケース60と、形状記憶板130とを有する以外は第1~3実施形態の電子部品と同様な構成を有し、同様な作用効果を有する。以下の説明では、重複する部分の説明は可能な限り省略し、相違する部分について重点的に説明する。また、図面において共通する部材には、共通の部材の符号を付してある。
【0063】
図4Aに示すように、コンデンサチップ20aおよび20bは、それぞれ略直方体形状であり、互いに略同一の形状およびサイズを有している。コンデンサチップ20a,20bの厚さ(
図4Aに示すY軸寸法)が、コンデンサチップ20と比べて薄い。なお、
図4Bでは、
図4Aとは異なり、回路基板などに実装し、形状記憶板130が、記憶している形状に変形した状態を表している。
【0064】
コンデンサチップ20aおよび20bの素体本体には、X軸方向(長手方向)に互いに対向する第1および第2端面には、それぞれ第1および第2端子電極22,24が形成してあり、積層方向に隣り合ういずれかの内部電極層に接続してある。
【0065】
図4Cに示すように、本実施形態では、囲繞型絶縁ケース60は、直方体形状の筐体で構成され、Z軸の上方向に向けて開口する複数の収容凹部62a,62bを囲む外壁61と底壁63を有している。Y軸方向に隣り合う収容凹部62a,62bは、仕切壁64により大部分が仕切られているが、仕切壁64に設けられた連絡溝65,65により、相互に連通している。
【0066】
図4Dに示すように、連絡溝65は、各収容凹部62a,62bにおけるX軸方向の両側の内壁面に沿って形成してある。
図4Cに示すように、一方の連絡溝65を通して、共通金属端子50の内側電極部52が各収容凹部62a,62bを跨ぐように内壁面に沿って収容凹部62a,62bの内部に取り付けてある。
【0067】
図4Dに示すように、本実施形態では、連絡溝65のX軸方向の幅は、共通金属端子50の内側電極部52が差し込まれて固定できる程度の幅である。また、連絡溝65のZ軸方向の深さは、各収容凹部62a,62bのZ軸方向の深さよりも浅く形成してある。
【0068】
図4Dに示すように、共通金属端子50は、一対の内側電極部52を有する。これらは、Z軸方向に延びるスリット53により分離され、連絡片525および開口縁電極部54により連結してある。開口縁電極部54には、囲繞型絶縁ケース60の第2外側面61bに沿うように側面電極部56が連続して形成してある。各内側電極部52は、収容溝62a,62bの内壁面に挿入され、連絡片525は、連絡溝65に係合する。内側電極部52は、双方のコンデンサチップ20a,20bの第2端子電極24,24に接触して電気的に接続してある。
【0069】
図4Dに示すように、本実施形態では、囲繞型絶縁ケース60の各収容凹部62a,62bの開口面は、Z軸方向の上面のみであり、各収容凹部62a,62bの外壁61と底壁63とには、ケース60の外部と通じる孔、切り欠き、溝、または開口が何ら形成されていない。囲繞型絶縁ケース60の各収容凹部62a,62bの開口面に沿って、ケース60には、開口縁面66が、外壁61のZ軸方向の上面に具備してある。本実施形態では、開口縁面66は、仕切壁64のZ軸方向の上面に対して面一であるが、異なっていてもよい。
【0070】
図4Dに示すように、第1個別金属端子30は、囲繞型絶縁ケース60の一方の収容凹部62aのX軸方向の他方の内側壁に沿って差し込まれる内側電極部32を有する。内側電極部32は、Y軸方向の一方のコンデンサチップ20aの第1端子電極22に接触して電気的に接続される。内側電極部32に連続して開口縁面66に沿って開口縁電極部34が形成してある。
【0071】
また、開口縁電極部34に連続して、囲繞型絶縁ケース60の外壁61の第1外側面61aに沿って、側面電極部36が開口縁電極部34と一体に形成してある。本実施形態では、側面電極部36は、外壁61の第1外側面61aに沿ってZ軸方向に延びるように形成してある。なお、
図4Aに示すように、側面電極部36は、外壁61の第1外壁面61aに接触している必要はなく、外壁61の第1外壁面61aに所定の隙間で平行に配置してもよい。また、開口縁電極部34は、外壁の開口縁面66に接触していることが好ましいが、多少の隙間があってもよい。
【0072】
図4Dに示すように、第2個別金属端子40は、囲繞型絶縁ケース60の他方の収容凹部62bのX軸方向の他方の内側壁に沿って差し込まれる内側電極部42を有する。内側電極部42は、Y軸方向の他方のコンデンサチップ20bの第1端子電極22に接触して電気的に接続される。内側電極部42に連続して開口縁面66に沿って開口縁電極部44が形成してある。
【0073】
また、開口縁電極部44に連続して囲繞型絶縁ケース60の外壁61の第1外側面61aに沿って側面電極部46が開口縁電極部44と一体に形成してある。本実施形態では、側面電極部46は、外壁61の第1外側面61aに沿ってZ軸方向に延びるように形成してある。
【0074】
なお、
図4Aに示すように、側面電極部46は、側面電極部36と同様に、外壁61の第1外壁面61aに接触している必要はなく、外壁61の第1外壁面61aに所定の隙間で平行に配置してもよい。また、開口縁電極部44は、外壁の開口縁面66に接触していることが好ましいが、多少の隙間があってもよい。第1個別金属端子30と第2個別金属端子40とは、囲繞型絶縁ケース60に対して、Y軸方向に所定間隔(仕切壁64のY軸方向の厚みに対応)で離れて取り付けられて絶縁される。
【0075】
図4Dに示すように、本実施形態では、各収容凹部62a,62bのX軸方向の長さは、囲繞型絶縁ケース60に端子30,40,50が取り付けられた状態で、各コンデンサチップ20a,20bの端子電極22,24が内側電極部32,42,52に圧接するように決定される。
【0076】
本実施形態では、内側電極部32,42には、コンデンサチップ20a,20bに向けてスプリング力で押し付けられる湾曲部320(420)が具備してある。このように構成することで、内側電極部32(42)と第1端子電極22とが圧接状態で接続されると共に、共通金属端子50の内側電極部52と第2端子電極24とが圧接状態で接続される。そのため、これらをハンダや導電性接着剤などの接続部材で接続する必要がなくなる。
【0077】
また、各収容凹部62a,62bのY軸方向の幅は、コンデンサチップ20a,20bが各収容凹部62a,62bの内部に入り込めるように決定してある。また、各収容凹部62a,62bのZ軸方向の深さは、各収容凹部62a,62bの内部にコンデンサチップ20a,20bを収容した場合に、チップ20a,20bのZ軸方向の上端が、開口縁面66からZ軸方向の上部に飛び出さないように決定される。ただし、チップ20a,20bのZ軸方向の上端は、開口縁面66からZ軸方向の上部に多少飛び出してもよい。囲繞型絶縁ケース60は、セラミック、ガラスあるいは合成樹脂などの絶縁体で構成されており、絶縁体は難燃性の材料で構成されていてもよい。
【0078】
本実施形態では、コンデンサチップ20aおよび20bを収容凹部62a,62b内に容易に収容することが可能となっている。このように、収容凹部62a,62b内にコンデンサチップ20aおよび20bを収容することにより、コンデンサチップ20aおよび20bを衝撃などから有効に保護することができる。
【0079】
本実施形態では、各収容凹部62a,62bを樹脂の充填空間としても使用することができる。本実施形態では、囲繞型絶縁ケース60に貫通孔などが形成されておらずコンデンサチップ20a,20bが収容してあるケース60の収容凹部62a,62bの内部に溶融樹脂を充填しても、樹脂が貫通孔などからはみ出すことを有効に防止することができる。
【0080】
本実施形態では、共通金属端子50は、金属端子30,40と対向する位置で、異なるコンデンサチップ20a,20bの第2端子電極24,24同士を接続する。第1個別金属端子30および第2個別金属端子40は、異なるコンデンサチップ20a,20bの第1個別金属端子22,22にそれぞれ接続してある。その結果、第1個別金属端子30と第2個別金属端子40との間では、コンデンサチップ20a,20bが直列に接続してある。
【0081】
第1個別金属端子30および第2個別金属端子40は、同一の構成を有し、それぞれ一枚の導電性板片(たとえば、金属板)を略C字形状に折曲成形して形成される。金属板の板厚としては、特に限定されない。共通金属端子50を構成する金属板の厚みも、第1個別金属端子30および第2個別金属端子40と同程度である。
【0082】
図4Aに示すように、囲繞型絶縁ケース60には、形状記憶板130が取り付けられている。形状記憶板130は、囲繞型絶縁ケース60の底壁63(第1表面)を覆う接合部134と、接合部134に連続している4つの形状変化部132と、を有する。
【0083】
接合部134と底壁63とは、接着剤などを用いて接合することができるが、接合方法はこれに限定されない。接合部134と底壁63との接合手段は、接合部134と底壁63とが、電子部品10をリフローする際の所定温度以下で剥がれないことが好ましい。
【0084】
図4Aに示すように、4つの形状変化部132は、それぞれ、囲繞型絶縁ケース60の外壁61の外側面61a~61d(第2表面)に沿う方向に延びており、一部を覆っている。本実施形態では、形状変形部132と外壁との間には所定の隙間があるが、形状変形部132と外壁とが接触していてもよい。
【0085】
本実施形態では、形状記憶板130が記憶している形状は、形状変化部132が電子部品10cの実装される実装面に対して略平行な方向(
図4AのX-Y平面に沿う方向)である。
【0086】
図4Aに示すように、本実施形態では、電子部品10cでは、回路基板などに実装する前の状態では、形状記憶板130の形状変化部132は、囲繞型絶縁ケース60の外壁の外側面61a~61dに沿って折り曲げられているため、電子部品10cの小型化を図ることができる。また、これらの形状記憶板130は、電子部品10cをピックアップ装置などで搬送する時の邪魔にならない。接合部130の外面は、平面であり、接合部134の外面に、ピックアップ装置の吸着部で着脱自在に保持して搬送してもよい。
【0087】
すなわち、本実施形態の電子部品10cでは、ハンドリング性に優れている。また、電子部品10cを回路基板などに実装する際には、実装のためのリフロー時の熱処理などのために、形状記憶板130に熱が伝達し、形状記憶板130は、記憶された形状に回復するように変形し、形状変化部132は、電子部品10cの第2表面から離れる方向に変形する。
【0088】
したがって、
図4Bに示すように、形状変形後では、形状変化部132は、その周囲の雰囲気に曝される放熱面積が大きくなり、ヒートシンクなどと同様に、放熱性に優れた部分となる。したがって、電子部品10c、それ自身に発生する熱や、回路基板などから電子部品10cに伝達される熱が、接合部134から形状変化部132に伝達し、そこで放熱される。そのため、電子部品10cの実装後には、放熱性が向上する。実装後の形状変化部132には、強制冷却風などを当ててもよい。
【0089】
第5実施形態
本実施形態の電子部品10dは、
図5Aに示すように、5つのコンデンサチップ(チップ部品)20c,20d,20e,20f,20gと、コンデンサチップ20c,20d,20e,20f,20gが固定される開放型絶縁ケース90と、形状記憶板140と、を有する。以外は第1~4実施形態の電子部品と同様な構成を有し、同様な作用効果を有する。以下の説明では、重複する部分の説明は可能な限り省略し、相違する部分について重点的に説明する。また、図面において共通する部材には、共通の部材の符号を付してある。
【0090】
なお、電子部品10dの説明においては、
図5Aに示すように、複数のコンデンサチップ20c~20gの配列方向(第1の方向)をY軸方向、電子部品10dの上部に配置される開放型絶縁ケース90から実装面である下方に向かう方向をZ軸方向、Y軸方向およびZ軸方向に垂直な方向をX軸方向として説明を行う。なお、X軸、Y軸およびZ軸は互いに垂直であり、電子部品10dの説明においては、これらの第X軸方向およびY軸方向を水平方向という場合がある。なお、
図5Bでは、
図5Aとは異なり、回路基板などに実装し、形状記憶板140が、記憶している形状に変形した状態を表している。
【0091】
図5Aに示すように、電子部品10dにおける複数のコンデンサチップは、5つのコンデンサチップ20c~20gにより構成される。5つのコンデンサチップ20c~20gは、Y軸方向に沿って配列される。
【0092】
ここで、複数のコンデンサチップ20c~20gの数は、
図5Aに示す5つのみには限定されず、電子部品10dは、2つ以上の任意の数のコンデンサチップ20c~20gを含み得る。コンデンサチップ20c~20gは、互いに略同一の形状、サイズおよび構造を有している。ただし、各コンデンサチップ20c~20gは、
図5Aに示すように同一のもののみには限られず、互いに異なる形状およびサイズを有するものが含まれていてもよい。本実施形態では、コンデンサチップ20c~20gは、第1実施形態のコンデンサチップ20と同じ構成のコンデンサチップであるが、異なる構成であってもよい。
【0093】
図5Dに示すように、コンデンサチップ20cは、略直方体の外形状を有しており、素子本体21の第2側面21bが、開放型絶縁ケース90のZ軸方向に沿って開放している方向に向き、第2側面21bの反対側にある第1側面が、開放型絶縁ケース90の板状部下面94に向き合うように配置される。電子部品10dに含まれるコンデンサチップ20cは、チップコンデンサであるが、コンデンサチップ20c~20gとしてはチップコンデンサのみには限定されず、チップインダクタやチップバリスタなど、チップコンデンサ以外のコンデンサチップであっても構わない。
【0094】
図5Cに示すように、開放型絶縁ケース90は、板状部92と、第1の突出部97と、第2の突出部98とを有する。板状部92は、略矩形平板状の外形状を有しており、複数のコンデンサチップの第1側面に向き合うように配置される。
【0095】
図5Cに示すように、板状部92は、Z軸方向から見て略矩形の外形状を有する。板状部92の板状部下面94に対して、複数のコンデンサチップの第1側面が、接着剤が硬化した接着剤を介して固定される。
【0096】
図5Cに示すように、第1の突出部97は、板状部92におけるY軸方向に平行な板状部第1辺94aに沿って形成されている。第1の突出部97は、板状部92からY軸方向とは垂直なZ軸方向に突出する。第1の突出部97は、Y軸方向に延びる四角柱状の外形状を有するが、第1の突出部97の形状はこれに限定されない。また、
図5Cに示すようなY軸方向に連続する第1の突出部97とは異なり、Y軸方向に沿って断続的に形成される突起で構成されていてもよい。
【0097】
図5Cに示すように、第2の突出部98は、第1の突出部97に対して、X軸方向に形成されており、板状部92からZ軸方向に突出する。第2の突出部98は、板状部92における板状部第1辺94aとは垂直な板状部第2辺94bに沿って形成されている。
【0098】
第2の突出部98は、X軸方向に延びる四角柱状の外形状を有するが、第2の突出部98の形状はこれに限定されない。また、第2の突出部98は、
図5Cに示すようなX軸方向に連続する第2の突出部98とは異なり、第1の突出部97からX軸方向に離れて形成される孤立した突起であってもよい。
【0099】
図5Cに示すように、第1の突出部97と第2の突出部98とは、板状部92における板状部第1辺94aと板状部第2辺94bとが接続する隅で略垂直に接続し、L字状の突起をなす。
【0100】
図5Cに示すように、板状部下面94の板状部第1辺94aには第1の突出部97が形成されており、板状部下面94の板状部第2辺94bには第2の突出部98が形成されているのに対して、板状部下面94の他の2つの辺には、突出部や突起が形成されていない。
【0101】
すなわち、
図5Cに示すように、板状部92における板状部第1辺94aに平行な板状部第3辺94cおよび板状部第2辺に平行な板状部第4辺94dには、突起の形成されていない非突起縁部94ca、94daが形成されている。したがって、板状部第3辺94cおよび板状部第4辺94dは、開放型絶縁ケース90の外縁となっている。
【0102】
図5Dに示すように、コンデンサチップ20cは、X軸方向を向く第1端子電極22の主面22aが第1の突出部97に接触し、Y軸方向側を向く第3側面21eが第2の突出部98に接触する。また、
図5Aに示すコンデンサチップ20d、20e、20f、20gは、コンデンサチップ20cと同様に、
図5Dに示すように、X軸方向を向く第1端子電極22の主面22aが第1の突出部97に接触する。
図5Aに示すコンデンサチップ20d、20e、20f、20gは、コンデンサチップ20cとは異なり、Y軸方向側を向く第3側面が第2の突出部98には接触せず、Y軸方向に隣接する他のコンデンサチップ20c、20d、20e、20fに接触する。
【0103】
すなわち、複数のコンデンサチップ20c~20gの全てが、
図5Dに示す第1の突出部97に接しているのに対して、
図5Aに示すコンデンサチップ20c~20gのうちY軸方向の一方の端部に位置する1つのコンデンサチップ20cのみが第2の突出部98に接触する。電子部品10dのコンデンサチップ20c~20gは、第1の突出部97、板状部下面94、第2の突出部98および隣接する他のコンデンサチップ20c、20d、20e、20fにより、開放型絶縁ケース90に対して位置合わせされる。
【0104】
図5Cに示すように、第1の突出部97の板状部92からの下方への突出長さh1と、第2の突出部98の板状部92からのZ軸方向への突出長さh2とは、
図5Aに示すコンデンサチップ20c、20d、20e、20f、20gの板状部92からZ軸方向への突出長さh3より短い。
【0105】
これにより、コンデンサチップ20c~20gは、第1の突出部97や第2の突出部98に邪魔されることなく、コンデンサチップ20c~20gの第2側面21dを実装面として、回路基板等に表面実装される。
【0106】
図5Cに示す開放型絶縁ケース90は、たとえば樹脂成型や、板材の機械加工によって作製することができる。開放型絶縁ケース90の材質としては、絶縁性の材質であれば特に限定されないが、応力緩和の観点から、開放型絶縁ケース90は樹脂製であることが好ましい。
【0107】
図5Aに示すコンデンサチップ20c~20gにおいて第2側面21dは、板状部92に平行な仮想平面に沿って配置されている。したがって、第2側面21dが配置される仮想平面が、電子部品10dの実装面となり、電子部品10dは、回路パターンが形成される回路基板などに実装される。
【0108】
図5Aに示す開放型絶縁ケース90における第2の突出部98の板状部92からZ軸方向への突出長さh2は、複数のコンデンサチップの板状部92からZ軸方向への突出長さh3より短ければ特に限定されないが、複数のコンデンサチップの突出長さh3の1/2以下であることが好ましい。第2の突出部98の突出長さh2を、複数のコンデンサチップの突出長さh3の1/2以下とすることにより、第2の突出部98から回路基板までの間に十分な間隔が形成され、端子電極へのはんだフィレットの形成を、開放型絶縁ケース90が阻害する問題を、好適に防止できる。また、第1の突出部97の突出長さh1についても、第2の突出部98と同様に、複数のコンデンサチップの突出長さh3の1/2以下とすることが好ましい。
【0109】
図5Aに示すように、少なくとも2つのコンデンサチップ20c~20g(実施形態では任意の隣接する2つのコンデンサチップ)は、互いの端子電極22、24が接触している。これにより、電子部品10dに含まれる複数のコンデンサチップは、互いに並列に接続される。このような電子部品10dは、仮にコンデンサチップ20c~20gの一部のみしか直接回路基板に接続されていない場合でも、電子部品10dに含まれる全てのコンデンサチップ20c~20gは回路基板に電気的に接続され、コンデンサとして適切に機能する。また、このような電子部品10dは、すべてのコンデンサチップ20c~20gが、はんだ等により直接基板に接続されなくてもよいため、実装不良等の問題を防止できる。
【0110】
図5Aに示すように、複数のコンデンサチップ20c~20gのそれぞれの第2端子電極24の主面24aは、板状部92における板状部第3辺94cを介して、一部が板状部92からはみ出している。すなわち、
図5Dに示す板状部第1辺94aから板状部第3辺94cまでの長さは、第1端子電極22の主面から第2端子電極24の主面24aまでの長さより短い。このように、板状部92のX軸方向の長さを、コンデンサチップ20c~20gのX軸方向の長さより短くすることにより、板状部92を小さくして小型化が可能であるとともに、実装面積を狭くすることができる。
【0111】
図5A示す形状記憶板140は、形状変化部142と、接合部144と、を有する。形状記憶板140は、第1実施形態の形状記憶板100と同様な材質の金属を含む合金板である。
【0112】
本実施形態では、
図5Aに示すように、接合部144は、コンデンサチップ20c~20gのそれぞれの第2端子電極24の主面24aが形成する1の平面(第1表面)の大部分を覆うように接合している。接合部104のZ軸方向下側は、コンデンサチップ20c~20gのそれぞれの第2側面21b付近まで延びており、X軸方向に略平行な形状をしている。接合部144は、第1実施形態と同様な方向で、コンデンサチップ20c~20gのそれぞれの第2端子電極24の主面24aと接合することができる。
【0113】
図5Aに示すように、形状変化部142の端部146は、直方形状の平板部を有している。形状変化部142は、形状変形前の状態で、開放型絶縁ケース90の板状部上面96(第2表面)の大部分を覆っている。
【0114】
本実施形態では、形状記憶板140が記憶している形状は、形状変化部142が電子部品10dの実装される実装面に対して略垂直な方向(
図5AのZ軸方向上側)である。
【0115】
本実施形態では、
図5Aに示すように、電子部品10dでは、回路基板などに実装する前の状態では、形状変化部142は、開放型絶縁ケース90の板状部上面96に沿って折り曲げられているため、電子部品10dの小型化を図ることができる。また、これらの形状記憶板140は、電子部品10dをピックアップ装置などで搬送する時の邪魔にならない。形状変化部142の外面は、平面であり、形状変化部142の外面に、ピックアップ装置の吸着部で着脱自在に保持して搬送してもよい。
【0116】
すなわち、本実施形態の電子部品10dでは、ハンドリング性に優れている。また、電子部品10dを回路基板などに実装する際には、実装のためのリフロー時の熱処理などのために、形状記憶板140に熱が伝達し、形状記憶板140は、記憶された形状に回復するように変形し、形状変化部142は、電子部品10dの第2表面から離れる方向に変形する。
【0117】
したがって、
図5Bに示すように、形状変化部142は、その周囲の雰囲気に曝される放熱面積が大きくなり、ヒートシンクなどと同様に、放熱性に優れた部分となる。したがって、電子部品10d、それ自身に発生する熱や、回路基板などから電子部品10dに伝達される熱が、接合部144から形状変化部142に伝達し、そこで放熱される。そのため、電子部品10dの実装後には、放熱性が向上する。実装後の形状変化部142には、強制冷却風などを当ててもよい。
【0118】
図5Aに示すように、本実施形態では、複数のコンデンサチップ20c~20gを板状部92と第1の突出部97に接触させながら配置することにより、上下方向やX軸方向に関して、複数のコンデンサチップ20c~20gを開放型絶縁ケース90に対して容易に位置合わせすることができる。また、Y軸方向の位置合わせについては、第2の突出部98に接触して位置合わせするか、または、隣接するコンデンサチップ20d、20e、20f、20gに接触するなどして、位置合わせすることができる。このため、このような電子部品10dは、複数のコンデンサチップ20c~20gを開放型絶縁ケース90に対して容易かつ効率的に位置合わせして組み立てることが可能である。
【0119】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【0120】
たとえば上記各実施形態では、コンデンサチップの一例としてコンデンサチップを例示したが、コンデンサチップ以外のコンデンサチップを用いてもよい。
【0121】
また、形状記憶板は、コンデンサチップまたは、絶縁ケースの任意の側面に、3以上取り付けることができる。
【0122】
また、形状記憶板の変形は、リフロー時の熱以外にも、別途加熱して変形させてもよい。
【符号の説明】
【0123】
10,10a~10d…電子部品
20,20a~20g…コンデンサチップ
21…素体本体
21a…第1端面
21b…第2端面
21c…第1側面
21d…第2側面
21e…第3側面
21f…第4側面
22,24…端子電極
22a,24a…主面
26…内部電極層
28…誘電体層
30…第1個別金属端子(個別導電性端子)
32…内側電極部
320…湾曲部
34…開口縁電極部
36…側面電極部
40…第2個別金属端子(個別導電性端子)
42…内側電極部
420…湾曲部
44…開口縁電極部
46…側面電極部
50…共通金属端子(共通導電性端子)
52…内側電極部
525…連絡片
53…スリット
54…開口縁電極部
56…側面電極部
60…囲繞型絶縁ケース
61…外壁
61a…第1外側面
61b…第2外側面
61c…第3外側面
61d…第4外側面
62a,62b…収容凹部
63…底壁
64…仕切壁
65…連絡溝
66…開口縁面
67…係合凸部
70…回路基板
72…回路パターン
80…接合部材(ハンダ)
90…開放型絶縁ケース
92…板状部
94…板状部下面
94a…板状部第1辺
94b…板状部第2辺
94c…板状部第3辺
94ca、94da…非突起縁部
94d…板状部第4辺
96…板状部上面
100,110,120,130,140…形状記憶板
102,112,122,132,142…形状変形部
104,114,124,134,144…接合部
106,116,126,136,146…端部
100a,110a,120a,…別形状記憶板
102a,112a,122a…別形状変形部
104a,114a,124a…別接合部
106a,116a,126a…端部