IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カワサキモータース株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-乗物 図1
  • 特許-乗物 図2
  • 特許-乗物 図3
  • 特許-乗物 図4
  • 特許-乗物 図5
  • 特許-乗物 図6
  • 特許-乗物 図7
  • 特許-乗物 図8
  • 特許-乗物 図9
  • 特許-乗物 図10
  • 特許-乗物 図11
  • 特許-乗物 図12
  • 特許-乗物 図13
  • 特許-乗物 図14
  • 特許-乗物 図15
  • 特許-乗物 図16
  • 特許-乗物 図17
  • 特許-乗物 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】乗物
(51)【国際特許分類】
   B60R 3/00 20060101AFI20241218BHJP
   B61K 1/00 20060101ALI20241218BHJP
   B62D 31/02 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
B60R3/00
B61K1/00
B62D31/02 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021123514
(22)【出願日】2021-07-28
(65)【公開番号】P2023019051
(43)【公開日】2023-02-09
【審査請求日】2024-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小切間 仁人
(72)【発明者】
【氏名】蕨野 洋継
(72)【発明者】
【氏名】志村 拡俊
(72)【発明者】
【氏名】寺井 昭平
(72)【発明者】
【氏名】伊吹 樹一郎
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-060016(JP,A)
【文献】特開2009-298272(JP,A)
【文献】特開2009-254801(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 3/00 - 3/04
B61K 1/00
B62D 31/02
B61B 1/00 - 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者が留まる利用者エリアを有する乗物本体と、
地面に対して前記乗物本体を移動させる移動装置と、
前記乗物本体に搭載される少なくとも1つの支援装置であって、前記利用者エリアと前記地面との間で移動する利用者を支えながら、移動中の前記乗物本体に対して、前記地面に対する前記乗物本体の移動方向と反対方向に変位可能なサポート部を有する支援装置と、を備える、乗物。
【請求項2】
前記支援装置は、
前記乗物本体の移動方向と反対方向に前記サポート部を変位させる駆動装置と、
前記駆動装置を制御する支援制御器と、を更に有する、請求項1に記載の乗物。
【請求項3】
前記サポート部は、利用者を下方から支える載置面を有する、請求項1または2に記載の乗物。
【請求項4】
前記支援制御器は、前記乗物本体の対地速度に基づいて、前記サポート部の変位速度を決定する、請求項2に記載の乗物。
【請求項5】
前記支援制御器は、前記サポート部の対地速度の絶対値がゼロより大きく且つ前記乗物本体の対地速度の絶対値より小さくなるように設定された速度で前記サポート部が変位するように、前記駆動装置を制御する、請求項2または4に記載の乗物。
【請求項6】
前記乗物本体は、前記利用者エリアにおいて利用者を下方から支持する床面を有し、
利用者が、前記床面および前記地面のうちの一方である第1面から、前記床面および前記地面のうちの他方である第2面へ移動する際に、前記支援制御器は、
前記利用者が前記サポート部に接触したか否かを判定し、
前記利用者が前記サポート部に接触していないと判定する場合、前記第1面に対する前記サポート部の速度が、前記第1面に対する前記第2面の速度より低い速度となるように、前記駆動装置を制御し、
前記利用者が前記サポート部に接触したと判定する場合、前記第2面に対する前記サポート部の速度が低減されるように前記駆動装置を制御する、請求項2、4、5のいずれか1項に記載の乗物。
【請求項7】
前記支援装置は、前記サポート部が、前記利用者からの荷重を駆動力として、前記乗物本体の移動方向とは反対方向に受動的に変位するように構成されている、請求項1に記載の乗物。
【請求項8】
前記少なくとも1つの支援装置は、
前記地面から前記利用者エリアへ移動する利用者を支える前記サポート部としての第1サポート部と、前記乗物本体の移動方向と反対方向に前記第1サポート部を変位させる第1駆動装置と、前記第1駆動装置を制御する第1支援制御器と、を有する、乗車用の第1支援装置と、
前記利用者エリアから前記地面へ移動する利用者を支える前記サポート部としての第2サポート部と、前記乗物本体の移動方向と反対方向に前記第2サポート部を変位させる第2駆動装置と、前記第2駆動装置を制御する第2支援制御器と、を有する、降車用の第2支援装置と、を含み、
前記第1支援制御器による前記第1駆動装置の制御方法と、前記第2支援制御器による前記第2駆動装置の制御方法とが、互いに異なる、請求項1に記載の乗物。
【請求項9】
前記乗物本体は、前記移動装置による前記乗物本体の移動方向に沿った方向である前後方向に延びる縦長形状である、請求項1~8のいずれか1項に記載の乗物。
【請求項10】
前記サポート部は、前記前後方向に垂直な左右方向における前記乗物本体の一端部に配置されている、請求項9に記載の乗物。
【請求項11】
前記移動装置は、複数の車輪を有し、
前記サポート部は、前記車輪の上端部より低い位置に配置された、利用者を下方から支える載置面を有する、請求項1~10のいずれか1項に記載の乗物。
【請求項12】
前記乗物本体は、前記利用者エリアにおいて利用者を下方から支持する床面を有し、
前記サポート部は、利用者を下方から支える載置面を有し、
前記床面と前記載置面が、色、表面形状および模様の少なくとも1つの点で互いに異なる、請求項1~11のいずれか1項に記載の乗物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、都市間や地域間を移動する乗物の研究開発が進められている。例えば特許文献1には、複数の停留所(ステーション)間を移動することにより、人の搬送を可能とする乗物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-166715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の乗物を利用するには、利用者は、現在地から停留所まで移動したり、停留所から目的地まで移動したりする必要があり、乗物の利便性が低い。
【0005】
そこで、本発明は、利便性を向上させることができる乗物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る乗物は、利用者が留まる利用者エリアを有する乗物本体と、地面に対して前記乗物本体を移動させる移動装置と、前記乗物本体に設けられた少なくとも1つの支援装置であって、前記利用者エリアと前記地面との間で移動する利用者を支えながら、移動中の前記乗物本体に対して、前記地面に対する前記乗物本体の移動方向と反対方向に変位可能なサポート部を有する支援装置と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、利便性を向上させることができる乗物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態に係る乗物を管理する乗物管理システムの全体構成を概略的に示す図である。
図2図2は、図1に示す乗物の概略側面図である。
図3図3は、図2に示す乗物の概略III-III矢視断面図である。
図4図4は、図2に示す乗物の概略正面図である。
図5図5は、図1に示す乗物管理システムの制御系統を模式的に示すブロック図である。
図6図6は、図5に示す第1支援装置により利用者が乗物に乗り込む様子を示す図である。
図7図7は、図5に示す第1支援装置による制御の流れを示すフローチャートである。
図8図8は、図5に示す第2支援装置により利用者が乗物から降りる様子を示す図である。
図9図9は、図8に示す第2支援装置による制御の流れを示すフローチャートである。
図10図10は、乗物管理システムにより管理される乗物の走行ルートマップの一例を示す図である。
図11図11は、2つの乗物の並走状態を概略的に示す図である。
図12図12は、2つの乗物の縦走状態を概略的に示す図である。
図13図13は、変形例1に係る支援装置によって利用者が乗物に乗り込む様子を示す図である。
図14図14は、変形例1に係る支援装置の概略斜視図である。
図15図15は、変形例1に係る支援装置の概略分解図である。
図16図16は、変形例2に係る支援装置によって利用者が乗物に乗り込む様子を示す図である。
図17図17は、変形例2に係る支援装置を備える乗物の概略背面図である。
図18図18は、変形例3に係る支援装置によって利用者が乗物に乗り込む様子および乗物から降りる様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0010】
図1は、一実施形態に係る乗物1を管理する乗物管理システム100の全体構成を概略的に示す図である。乗物管理システム100は、1以上の乗物1と、1以上の乗物1を一括管理する管理装置2とを備える。乗物1は、地面の上を走行する車両である。1以上の乗物1は、特定の区域内を走行する。特定の区域は、例えば、テーマパークやスマートシティなどである。各乗物1の走行ルートは、特定の区域において予め定められている。乗物1は、通信器23を備えており(図5参照)、通信器23を介して管理装置2と互いに通信する。管理装置2は、走行ルートを走行する1以上の乗物1の運行を集中制御する。
【0011】
走行ルート上の乗物1の姿勢は、その走行ルートに沿った乗物1の移動方向に対して予め定められている。本明細書において、説明の便宜上、方向を説明するときは、乗物1が移動する方向を「前」とし、その反対方向を「後」として乗物1の前後方向を定義する。また、乗物1の前後方向に直交する水平方向を「左右方向」と定義し、乗物1の前後方向および左右方向の双方に直交する方向を「上下方向」と定義する。
【0012】
図2は、図1に示す乗物1の概略側面図である。図3は、図2に示す乗物1の概略III-III矢視断面図である。図4は、図2に示す乗物1の概略正面図である。図2に示すように、乗物1は、乗物本体10を備える。乗物本体10は、前後方向に延びる縦長形状である。乗物本体10は、全体として前後方向に延びる略直方体状である。
【0013】
乗物本体10は、前部10a、後部10b、左部10c、右部10d、屋根部10eおよび床部10fを有する。前部10aおよび後部10bは、前後方向に互いに対向する。左部10cおよび右部10dは、左右方向に互いに対向する。左部10cは、前後方向に延びて前部10aおよび後部10bの左端部同士を接続する。右部10dは、前後方向に延びて前部10aおよび後部10bの右端部同士を接続する。屋根部10eおよび床部10fは、上下方向に互いに対向する。屋根部10eは、前後方向に延びて前部10aおよび後部10bの上端部同士を接続し、床部10fは、前後方向に延びて前部10aおよび後部10bの下端部同士を接続する。
【0014】
乗物本体10は、利用者が留まる利用者エリアRを有する。利用者エリアRは、前部10a、後部10b、左部10c、右部10d、屋根部10e、および床部10fにより周囲を覆われている。床部10fの上面である床面11は、利用者エリアRに面している。床面11は、利用者エリアRに位置する利用者を下方から支持する。利用者エリアRには、椅子12、手摺13、吊革14などが配置されている。
【0015】
乗物本体10の左部10cおよび右部10dには、それぞれ開口15が形成されている。2つの開口15は、利用者エリアRの左右両側にそれぞれ位置する。開口15の前後方向の幅寸法は、開口15の高さ寸法に比べて大きい。前後方向における各開口15の中央には、上下方向に延びる仕切部16が配置されている。各仕切部16は、各開口15を、2つのゲートに前後方向に仕切る。2つのゲートは、乗車口15aと降車口15bである。すなわち、乗車口15aと降車口15bとは、利用者エリアRの左右両側で前後方向に並んでいる。乗車口15aと降車口15bの各ゲートの前後方向の幅寸法は、当該ゲートの高さ寸法に比べて大きい。降車口15bは、乗車口15aの後側に位置する。本実施形態では、仕切部16は、前後方向に垂直な板状であるが、ポール状であってもよい。
【0016】
乗物本体10には、複数の車載センサ20が搭載されている。複数の車載センサ20は、乗物本体10の周りの状況や、乗物本体10の位置および状態を検知するためのセンサである。例えば車載センサ20は、カメラ21、赤外線センサ22などを含む。なお、図例では、カメラ21および赤外線センサ22が、乗物本体10の前部10aおよび後部10bに配置されているが、カメラ21および赤外線センサ22は、前部10aおよび後部10bに加え、左部10cおよび右部10dにも配置されてよい。また、車載センサ20は、ミリ波レーダーやGPS(Global Positioning System)装置などを含み得る。車載センサ20により検知された情報は、例えば後述の移動装置30により用いられる。
【0017】
乗物1は、地面Gに対して乗物本体10を移動させる移動装置30を備える。移動装置30は、複数(本例では4つ)の車輪31を含む。複数の車輪31は、乗物本体10を下方から支持する。
【0018】
図5は、乗物管理システム100の制御系統を模式的に示すブロック図である。移動装置30は、トルク発生装置32と、操舵装置33と、移動制御器34とを含む。
【0019】
トルク発生装置32は、複数の車輪31のうちの少なくとも1つにトルクを発生させる。トルク発生装置32は、車輪31に駆動力を付与する駆動装置と、車輪31に制動力を付与する制動装置とを含む。トルク発生装置32における駆動装置は、例えば正逆回転可能な電気モータである。トルク発生装置32における駆動装置は、エンジンであってもよい。トルク発生装置32における制動装置は、例えばディスクブレーキ装置である。
【0020】
操舵装置33は、複数の車輪31のうちの少なくとも1つを操舵する。操舵装置33により複数の車輪31のうちの少なくとも1つが操舵されることにより、乗物1の進行方向が制御される。
【0021】
移動制御器34は、トルク発生装置32および操舵装置33を制御する。移動制御器34は、演算処理器および記憶器などを有する。演算処理器は、例えばプロセッサなどを含む。記憶器は、揮発性メモリ、不揮発性メモリなどを含む。本実施形態の乗物1は、運転者の操作を要さずに走行ルートに沿って自律的に走行する完全自動運転機能を有する自動運転車である。移動制御器34は、前記記憶器に記憶したプログラムを演算処理器が読み出し実行することにより、自動運転を実現する。移動制御器34は、管理装置2から通信器23を介して受信した情報および車載センサ20から受信した情報に基づき、乗物1が走行ルートに沿って自動走行するようにトルク発生装置32および操舵装置33を制御する。
【0022】
本実施形態において、乗物1は、走行ルートを所定の徐行速度で走行する。徐行速度は、10km/h以下の速度である。乗物1の速度は、管理装置2からの指令値に基づくmのであってもよいし、移動制御器34の記憶器に予め記憶された情報に基づくものであってもよい。本実施形態では、徐行速度で走行ルートを走行中に、利用者が乗物1に乗ったり乗物1から降りたりすることが可能となっている。
【0023】
乗物1は、移動中の乗物本体10に利用者が乗ったり降りたりするのを支援する複数の支援装置40を備える。本実施形態では、4つの支援装置40が、乗物本体10における2つの乗車口15aおよび2つの降車口15bの4つのゲートにそれぞれ設けられている。各支援装置40は、サポート部41と、駆動装置42と、支援制御器43を含む。
【0024】
乗車口15aに設けられた支援装置40は、移動中の乗物本体10に利用者が乗るのを支援する乗車用の支援装置である。降車口15bに設けられた支援装置40は、移動中の乗物本体10に利用者が降りるのを支援する降車用の支援装置である。本明細書では、説明の便宜上、乗車用の支援装置40を、第1支援装置40aと称し、降車用の支援装置40を、第2支援装置40bと称する。また、第1支援装置40aが含む構成要素とその符号には、それぞれ、「第1」という文字と「a」を付し、第2支援装置40bが含む構成要素とその符号には、それぞれ、「第2」という文字と「b」を付して、第1支援装置40aおよび第2支援装置40bの各構成要素を区別することとする。
【0025】
また、本実施形態において、第1支援装置40aと第2支援装置40bとで、制御方法は互いに異なるが、構造は互いに同じである。第1支援装置40aと第2支援装置40bをまとめて説明するときは、支援装置40と総称して説明する。
【0026】
サポート部41は、利用者エリアRと地面Gとの間で移動する利用者を支える。サポート部41は、利用者が乗降する際の利用者の移動経路に配置されている。サポート部41は、移動中の乗物1に乗る動作を行っている利用者が、乗物1が含む構成要素の中で最初に接触する構成要素であり得る。あるいは、サポート部41は、移動中の乗物1から降りる動作を行っている利用者が、乗物1が含む構成要素の中で最後に離れる構成要素、言い換えれば利用者に対し最後に接触した状態にある構成要素であり得る。
【0027】
また、サポート部41は、移動中の乗物本体10に対して、地面Gに対する乗物本体10の移動方向と反対方向に変位可能である。駆動装置42は、乗物本体10の移動方向と反対方向にサポート部41を変位させる。
【0028】
支援制御器43は、駆動装置42を制御する。支援制御器43は、駆動装置42を制御して、サポート部41の変位を開始させたり停止させたりする。また、支援制御器43は、駆動装置42を制御して、サポート部41の変位速度を変更する。支援制御器43は、演算処理器および記憶器などを有する。演算処理器は、例えばプロセッサなどを含む。記憶器は、揮発性メモリ、不揮発性メモリなどを含む。
【0029】
本実施形態において、支援装置40は、前後方向に延びるベルトと、当該ベルトを回転可能に支持する複数のローラとを含むベルトコンベア装置である。支援装置40は、乗車口15aまたは降車口15bであるゲートの下部に配置されている。すなわち、支援装置40は、利用者が乗物1に乗るとき、または乗物1から降りるときに踏まれる床構造を構成する。サポート部41は、支援装置40であるベルトコンベア装置のベルトの一部である。本実施形態において、サポート部41は、複数のローラによって回転するベルトのうちの、当該複数のローラより上方に位置する部分であるベルト上面部である。すなわち、サポート部41は、利用者を下方から支える載置面を有している。
【0030】
図2に示すように、サポート部41は、利用者が乗物1に乗ったり乗物1から降りたりしやすいよう、車輪31の上端部より低い位置に配置されている。また、図4に示すように、サポート部41は、左右方向における乗物本体10の一端部に配置されており、サポート部41の一部が、乗物本体10の側面から乗物本体10の外方に向かって突き出ている。これにより、地面Gに立っている利用者が、移動中の乗物1に乗る際に、サポート部41に足を載せやすい。
【0031】
また、図4に示すように、サポート部41の載置面と、床面11とは、同じ高さに配置されている。床面11と、サポート部41の載置面は、色、表面形状および模様の少なくとも1つの点で互いに異なる。利用者が、乗物本体10に対して変位するサポート部41と、乗物本体10に対して固定された床面11とを即座に見分けられるようにするためである。例えば、床面11が平滑な面であるのに対し、サポート部41の載置面が細かな凹部または凸部を含む面であってもよい。
【0032】
図5に戻って、乗物1は、支援装置40と同じ数の接触検知器44を備える。各接触検知器44は、各支援装置40に配置されている。接触検知器44は、利用者がサポート部41に接触したことを検知する。接触検知器44は、サポート部41としてのベルトの下方に配置されて、ベルトに載った利用者の荷重を検知する荷重検知器である。荷重検知器は、例えば歪ゲージである。ただし、接触検知器44は、光電センサなど別のタイプの検知器であってもよい。
【0033】
接触検知器44による検知信号は、支援制御器43により使用される。利用者が、床面11および地面Gのうちの一方である第1面から、床面11および地面Gのうちの他方である第2面へ移動する場合における支援制御器43の制御について説明する。すなわち、第1支援制御器43aと第2支援制御器43bの制御を一般化して説明する。
【0034】
支援制御器43は、接触検知器44から受信した検知信号に基づき、利用者がサポート部41に接触したか否かを判定する。支援制御器43は、利用者がサポート部41に接触していないと判定する場合、第1面に対するサポート部41の速度が、第1面に対する第2面の速度より低い速度となるように、駆動装置42を制御する。支援制御器43は、利用者がサポート部41に接触したと判定する場合、第2面に対するサポート部41の速度が低減されるように駆動装置42を制御する。
【0035】
次に、第1支援制御器43aによる制御と第2支援制御器43bによる制御とを個別に詳しく説明する。
【0036】
(第1支援制御器による制御)
まず第1支援制御器43aによる制御の概要について、図6を参照して説明する。図6は、図5に示す第1支援装置40aにより利用者が、移動中の乗物1に乗り込む様子を示す図である。なお、図6において、第1サポート部41aに最初に接触した状態の利用者Uを実線で示す。また、図6において、第1サポート部41aの変位によって、乗物本体10に対して第1サポート部41aに最初に接触した位置より後方に移動した利用者Uを二点鎖線で示す。
【0037】
乗物1が徐行速度で移動中、第1サポート部41aであるベルト上面部が、乗物1の移動方向に対して反対方向に変位するよう、第1支援装置40aは作動している。このとき、地面Gに対する第1サポート部41aの相対速度が、地面Gに対する乗物本体10の床面11の相対速度と比べて遅い。図6の実線で示す利用者Uのように、利用者Uが乗物1に乗る場合に、地面G上に立っている利用者は、第1サポート部41aに足を載せる。このとき、地面Gに対する第1サポート部41aの相対速度が、地面Gに対する乗物本体10の床面11の相対速度と比べて遅いため、利用者が乗物1、つまり第1サポート部41aの載置面から受ける力を緩和できる。
【0038】
第1サポート部41aに利用者が載置されると、第1サポート部41aは減速する。第1サポート部41aの減速中にまたは停止した後に、利用者は、利用者エリアRに移る。
【0039】
図7は、図5に示す第1支援装置40aによる制御の流れを示すフローチャートである。図7に示すように、乗物1が所定の徐行速度で移動しているとき、第1支援制御器43aは、乗物本体10に対して第1サポート部41aが設定速度で後方に変位するよう第1駆動装置42aを制御する(ステップS1)。
【0040】
設定速度は、第1サポート部41aの対地速度の絶対値が、ゼロより大きく且つ乗物本体10の対地速度の絶対値より小さくなるように設定されている。例えば、設定速度は、第1サポート部41aの対地速度の絶対値が、乗物本体10の対地速度の絶対値の半分となるように設定されている。具体的に、乗物本体10が地面Gに対し時速7kmで移動しているとき、地面G上の利用者から見て第1サポート部41aが時速3.5kmで前方へ移動するように、設定速度は設定される。つまり、第1支援制御器43aは、第1サポート部41aが乗物本体10に対して後方に時速3.5kmで変位するように第1駆動装置42aを制御する。このように、地面Gに対する第1サポート部41aの相対速度は、地面Gに対する乗物本体10の床面11の相対速度と比べて遅い。
【0041】
第1支援制御器43aは、接触検知器44から受信した検知信号に基づき、利用者がサポート部41に接触したか否かを判定する(ステップS2)。第1支援制御器43aは、サポート部41に利用者が接触していないと判定している間は(ステップS2:No)、乗物本体10に対する第1サポート部41aの設定速度での変位が継続するよう第1駆動装置42aを制御する。
【0042】
第1支援制御器43aは、利用者が第1サポート部41aに接触したと判定した場合(ステップS2:Yes)、床面11に対する第1サポート部41aの速度を下げるように第1駆動装置42aを制御する(ステップS3)。
【0043】
減速中、第1支援制御器43aは、接触検知器44から受信した検知信号に基づき、利用者が第1サポート部41aから離れたか否かを判定する(ステップS4)。利用者が第1サポート部41aから離れていないと判定される間は(ステップS4:No)、第1支援制御器43aは、床面11に対する第1サポート部41aの速度がゼロになるまで、床面11に対する第1サポート部41aの速度の低減を継続する。
【0044】
利用者が第1サポート部41aから離れたと判定された場合(ステップS4:Yes)、ステップS1に戻って、第1支援制御器43aは、乗物本体10に対して第1サポート部41aが設定速度で乗物1の移動方向と反対方向に変位するよう第1駆動装置42aを制御する。
【0045】
(第2支援制御器による制御)
次に第2支援制御器43bによる制御の概要について、図8を参照して説明する。図8は、図5に示す第2支援装置40bにより利用者が、移動中の乗物1から降りる様子を示す図である。なお、図8において、利用者エリアRから第2サポート部41b上に移った直後の利用者Uを二点鎖線で示す。また、図8において、第2サポート部41bの変位によって、乗物本体10に対して第2サポート部41bに最初に接触した位置より後方に移動した利用者Uを実線で示す。
【0046】
乗物1が徐行速度で移動中、第2サポート部41bであるベルト上面部は、乗物本体10に対して変位していない。すなわち、第2駆動装置42bは停止状態にある。乗物本体10に対する第2サポート部41bの相対速度は0であるため、利用者Uが乗物1から降りる場合に、床面11上に立っている利用者は、第2サポート部41bに容易に足を載せることができる。
【0047】
第2サポート部41bに利用者が載置されると、第2サポート部41bは加速する。その後、利用者Uは、第2サポート部41b上から地面Gに降り立つ。
【0048】
図9は、図8に示す第2支援装置40bによる制御の流れを示すフローチャートである。図9に示すように、乗物1が所定の徐行速度で移動しているとき、第2支援制御器43bは、第2駆動装置42bを停止させている(ステップT1)。床面11と第2サポート部41bの載置面との相対速度はゼロである。
【0049】
第2支援制御器43bは、接触検知器44から受信した検知信号に基づき、利用者が第2サポート部41bに接触したか否かを判定する(ステップT2)。第2支援制御器43bは、第2サポート部41bに利用者が接触していないと判定している間は(ステップT2:No)、第2駆動装置42bの停止状態を維持する。
【0050】
第2支援制御器43bは、利用者が第2サポート部41bに接触したと判定した場合(ステップT2:Yes)、床面11に対する第2サポート部41bの速度を上げるように第2駆動装置42bを制御する(ステップT3)。
【0051】
加速中、第2支援制御器43bは、接触検知器44から受信した検知信号に基づき、利用者が第2サポート部41bから離れたか否かを判定する(ステップT4)。利用者が第2サポート部41bから離れていないと判定される間は(ステップT4:No)、第2支援制御器43bは、床面11に対する第2サポート部41bの速度が設定速度になるまで、床面11に対する第2サポート部41bの加速を継続する。
【0052】
利用者が第2サポート部41bから離れたと判定された場合(ステップT4:Yes)、ステップT1に戻って、第2支援制御器43bは、第2駆動装置42bを停止させる。
【0053】
図5に戻って、乗物管理システム100は、給電装置3を備える。乗物1は、当該給電装置3から電力が供給される受電装置51を備える。給電装置3および受電装置51は、給電装置3が受電装置51に対して非接触な状態で給電する非接触給電システムを構成する。例えば、給電装置3は、送電コイルを含み、受電装置51は、給電装置3の送電コイルから電力が供給される受電コイルを含む。受電装置51は、バッテリ52を含む。バッテリ52には、給電装置3から供給される電力が蓄積される。バッテリ52に蓄積された電力は、移動装置30や支援装置40などの乗物1の各種機器に送られ消費される。
【0054】
図10は、乗物管理システム100により管理される乗物1の走行ルートマップの一部である。図10には、2つの走行ルート4a,4bが示されている。各走行ルート4a,4bを複数の乗物1が運行している。図10において、走行ルート4aを走行する乗物1に、符号1aを付し、走行ルート4bを走行する乗物1に、符号1bを付している。なお、本実施形態において、乗物1a,1bは互いに同じ構成であるが、互いに異なる構成でもよい。
【0055】
複数の給電装置3が、走行ルート4a,4bに沿って所定の間隔おきに敷設されている。複数の給電装置3は、例えば管理装置2により制御される。例えば管理装置2は、各乗物1a,1bの位置に応じて、給電の開始および停止に関する指令を複数の給電装置3に送信してもよい。
【0056】
走行ルート4a,4bには、所定の間隔をあけて互いに平行に延び、2つの乗物1a,1bが並んで同じ方向に走行可能な区間5がある。本実施形態では、この区間5において、2つの乗物1a,1bが並走状態で走行する間に、2つの乗物1a,1bのうちの一方から他方へ乗り換えることが可能となっている。以下、区間5を、乗換区間5と称する。
【0057】
図11は、2つの乗物1a,1bの並走状態を概略的に示す図である。管理装置2は、乗物1a,1bが同タイミングで乗換区間5に入るよう、乗物1a,1bの運行を制御する。管理装置2は、乗物1a,1bの互いのゲートを接近させた状態で移動するよう、乗物1a,1bの移動を制御する。これにより、移動中の乗物1から、移動中の別の乗物1への乗り換えが可能となる。なお、乗物1a,1bは、並走状態で乗換区間5を走行する場合に、互いに機械的に連結してもよいし、連結しなくてもよい。
【0058】
なお、図12に示すように、乗物1c,1dにおける乗物本体10の前部および後部にゲート17がある場合、縦走状態で走行中の2つの乗物1c,1d間での乗り換えも可能である。乗物1c,1dは互いに異なる走行ルート4c,4dを走行する。走行ルート4c,4dには、互いに重なる部分である乗換区間がある。管理装置2は、乗換区間において乗物1c,1dが互いに縦走状態で走行するように、乗物1c,1dの運行を制御する。すなわち、管理装置2は、乗物1c,1dの互いのゲート17を接近させた状態で移動するよう、乗物1c,1dの移動を制御する。
【0059】
以上に説明したように、本実施形態に係る乗物1によれば、サポート部41は、利用者を支えながら、移動中の乗物本体10に対して、地面Gに対する乗物本体10の移動方向と反対方向に変位可能である。このため、利用者が乗降元から乗降先に移る際に、利用者を支えた状態のサポート部41が乗物1の移動方向と反対方向に変位することで、利用者と乗降先との間の相対速度差が減り、利用者が乗降先から受ける力を緩和できる。なお、「乗降先」について、利用者が乗物1に乗車する場合の乗降先は、乗物1を意味し、利用者が乗物1から降車する場合の乗降先」は、地面Gを意味する。
【0060】
従って、移動中の乗物1に対する利用者の乗降動作を行いやすくすることができ、乗物1の利便性が向上する。なお、利用者の乗降動作とは、乗車動作と降車動作のいずれか一方の場合も含むものとする。
【0061】
また、本実施形態では、駆動装置42が、乗物本体10の移動方向と反対方向にサポート部41を能動的に変位させるため、利用者がサポート部41に接触する前から、乗物本体10の移動方向と反対方向にサポート部41を能動的に変位させることができる。このため、利用者がサポート部41に接触したときの力でサポート部41を受動的に変位させる場合に比べて、利用者がサポート部41に接触した際に、サポート部41から利用者が受ける力を緩和できる。従って、利用者の負担を減らして、利便性を向上できる。
【0062】
また、サポート部41が利用者の手で把持されるタイプのものである場合、乗降に際して、利用者にはサポート部41を把持する動作が必要となる。本実施形態では、サポート部41が、利用者を下方から支える載置面を有するため、サポート部41が利用者の手で把持されるタイプのものである場合に比べて、利用者が、より自然な姿勢で乗降できる。
【0063】
また、本実施形態では、支援制御器43は、サポート部41の対地速度の絶対値がゼロより大きく且つ乗物本体10の対地速度の絶対値より小さくなるように設定された速度でサポート部41が変位するように、駆動装置42を制御する。このため、例えば利用者が乗物に乗車する場合に、サポート部41とともに変位する利用者が利用者エリアRの床などから受ける力を、サポート部41の対地速度の絶対値がゼロである場合に比べて緩和することができる。例えば利用者が乗物1から降車する場合に、利用者エリアRにいる利用者が、サポート部41に接触する際にサポート部41から受ける力を、サポート部41の対地速度の絶対値がゼロである場合に比べて緩和することができる。
【0064】
また、本実施形態では、乗車用の支援装置40と降車用の支援装置40とで制御方法が異なるため、乗車と降車のそれぞれに適した制御方法でサポート部41を変位できる。
【0065】
また、本実施形態では、乗物本体10が、移動装置30による乗物本体10の移動方向に延びる縦長形状であるため、サポート部41が変位可能な範囲を大きくできる。
【0066】
また、本実施形態では、サポート部41が、前後方向に延びる乗物本体10の左右部分に配置されているため、サポート部41が変位する範囲を広げやすい。
【0067】
また、本実施形態では、サポート部41の載置面が車輪31の上端部より低い位置にあるため、利用者にとって乗り降りが容易となる。
【0068】
また、本実施形態では、サポート部41の載置面と床面11とが、色、表面形状および模様の少なくとも1つの点で互いに異なる。これにより、乗物本体10に対して固定である床面11と、乗物本体10に対して変位する載置面とを、利用者が見分けられるため、乗降しないにもかかわらず、利用者が誤って載置面を踏むのを防ぐことができる。
【0069】
なお、支援装置40の構成は、種々の変形が可能である。以下に、支援装置40の変形例を説明する。
【0070】
(支援装置の変形例1)
図13~15を参照して、変形例1に係る支援装置60を説明する。図13は、変形例1に係る支援装置60によって利用者が乗物1に乗り込む様子を示す図である。図14は、変形例1に係る支援装置60の概略斜視図である。図15は、変形例1に係る支援装置60の概略分解図である。
【0071】
本変形例1において、支援装置60は、サポート部61が、利用者からの荷重を駆動力として、乗物本体10の移動方向とは反対方向に受動的に変位するように構成されている。図13に示すように、支援装置60は、乗車口15aの上部に配置されている。支援装置60は、吊革であるサポート部61と、サポート部61に固定され、サポート部61とともに変位する変位体62と、変位体62をガイドするガイド孔63aを有する筒状体63と、筒状体63に支持されたシャフト64と、付勢部材65を備える。
【0072】
図14に示すように、筒状体63は、中心軸線が前後方向に沿うように配置される。筒状体63は、乗物本体10に固定されている。図15に示すように、シャフト64は、筒状体63の中心軸線に沿って前後方向に延びるように筒状体63の内部に配置されている。変位体62は、前後方向に垂直な棒状体である。変位体62をガイドするガイド孔63aは、筒状体63の側面に設けられている。変位体62は、筒状体63の内部にてシャフト64に接続されている。また、変位体62は、ガイド孔63aから突き出ており、筒状体63の外部にて吊革であるサポート部61に接続されている。
【0073】
ガイド孔63aは、変位体62を前後方向に変位可能に形成されている。付勢部材65は、筒状体63の内部にて変位体63を前方に付勢している。このため、利用者がサポート部61aに触れていないときは、付勢部材65の付勢力により変位体63は、ガイド孔63aの前端部に配置されている。例えば付勢部材65は、コイルスプリングである。
【0074】
ガイド孔63aの前端部は、筒状体63の中心軸線から乗物本体10の車幅方向外方を向いている。ガイド孔63aの後端部は、筒状体63の中心軸線から下方を向いている。ガイド孔63aは、ガイド孔63aの前端部から後端部へ変位体62が移動するにしたがって、変位体62の延在方向が車幅方向外方から下方へと徐々に変化するように形成されている。
【0075】
変形例1によれば、地面G上の利用者から見て、移動中の乗物本体10と同速度でサポート部61も移動している。地面G上の利用者がサポート部61を把持すると、サポート部61は、利用者からの荷重を駆動力として、付勢部材65の付勢力に抗して、乗物本体10の移動方向とは反対方向に受動的に変位する。サポート部61とともに変位する変位体62は、ガイド孔63aにガイドされ後方へと変位するにしたがって、車幅方向に延びた状態から下方へ延びた状態へと移行する。これにより、サポート部61を把持する利用者は、乗物本体10の車幅方向内側へと移動し、利用者エリアR内に入る。利用者が、床面11に足をつけ、サポート部61を放すと、付勢部材65の付勢力により変位体63は、ガイド孔63aの前端部へと戻る。なお、図13に示すように、床面11は、サポート部61を把持する地面Gの高さに比べて低い位置にあってもよい。
【0076】
本変形例1でも、移動中の乗物1に対して利用者が乗降しやすくなり、乗物1の利便性が向上する。
【0077】
(支援装置の変形例2)
図16および17を参照して、変形例2に係る支援装置70を説明する。図16は、変形例2に係る支援装置70によって利用者が乗物1に乗り込む様子を示す図である。図17は、変形例2に係る支援装置70を備える乗物1の概略背面図である。
【0078】
本変形例2において、支援装置70は、サポート部71が、利用者からの荷重を駆動力として、乗物本体10の移動方向とは反対方向に受動的に変位するように構成されている。図13に示すように、支援装置70は、乗車口15aに配置されている。支援装置70は、吊革であるサポート部71と、サポート部71を支持する回動体72と、回動体72を上下方向に延びる軸線の周りに回動可能に支持する支持構造73を備える。
【0079】
支持構造73は、乗物本体10に固定されている。支持構造73は、乗車口15aにおいて上下方向に延びるポールである。回動体72は、支持構造73の中心軸線の周りに回動可能に支持構造73により支持されている。回動体72は、支持構造73の中心軸線に直交する複数のアームを有する。各アームの先端部に吊革であるサポート部71が取り付けられている。複数のサポート部71のうち、支持構造73よりも乗物本体10の車幅方向外側に位置する少なくとも1つのサポート部71は、利用者エリアRの外に配置されている。
【0080】
変形例2によれば、地面G上の利用者から見て、移動中の乗物本体10と同速度でサポート部71も移動している。地面G上の利用者がサポート部71を把持すると、利用者に把持されたサポート部71は、利用者からの荷重を駆動力として、支持構造73の中心軸線を中心に受動的に回転する。これにより、利用者に把持されたサポート部71は、乗物本体10の移動方向とは反対方向に変位しつつ、乗物本体10の車幅方向内側へと変位する。こうして、利用者は利用者エリアR内に入る。
【0081】
本変形例2でも、移動中の乗物1に対して利用者が乗降しやすくなり、乗物1の利便性が向上する。
【0082】
(支援装置の変形例3)
図18を参照して、変形例3に係る支援装置80を説明する。図18は、変形例3に係る支援装置によって利用者が乗物1に乗り込む様子および乗物から降りる様子を示す図である。変形例3に係る支援装置80は、移動中の乗物本体10に車いすユーザが乗ったり降りたりするのを支援する。
【0083】
変形例3の支援装置80は、前部に車いすユーザのための乗車口18aが配置され、後部に車いすユーザのための降車口18bが配置された乗物本体10Aに適用される。
乗車口18aと降車口18bにそれぞれ支援装置80が設けられている。乗車用の支援装置80を、第1支援装置80aと称し、降車用の支援装置80を、第2支援装置80bと称することとする。
【0084】
支援装置80は、上記実施形態で説明された支援装置40と同様に、ベルトコンベア装置である。すなわち、支援装置80は、前後方向に延びるベルトと、当該ベルトを回転可能に支持する複数のローラとを含むベルトコンベア装置であり、この支援装置80のサポート部は、複数のローラより上方に位置する部分であるベルト上面部である。ただし、この支援装置80のサポート部は、支援装置40のサポート部41と異なり、地面Gから、地面Gより高い床面11に向かって傾斜している。
【0085】
本変形例3でも、上記実施形態で説明された支援装置40と同様に、支援装置80が、乗物本体10の移動方向と反対方向にサポート部を能動的に変位させる駆動装置を含む。支援装置80の制御方法は、支援装置40の制御方法と同様のものが採用され得る。本変形例3では、移動中の乗物1に対する車いすユーザの乗降動作を行いやすくすることができ、乗物1の利便性が向上する。
【0086】
<その他の実施形態>
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0087】
例えば乗物の形状は、上記実施形態で説明されたものに限定されない。例えば、乗物本体は、屋根部を有さないバスケット型であってもよい。
【0088】
上記実施形態では、乗物は、完全自動運転する自動運転車であったが、乗物を走行させるために必要な運転者の運転動作の一部だけ自動化された一部自動運転を行う自動運転車でもよい。乗物は、手動運転車でもよい。
【0089】
また、支援装置の制御は、上記実施形態で説明された態様に限定されない。例えば、上記実施形態では、乗車用の第1支援装置40aと降車用の第2支援装置40bとで制御方法が、互いに異なっていたが、第1支援装置40aと第2支援装置40bとで同じ制御方法を採用してもよい。例えば、第1支援装置40aと第2支援装置40bの双方ともにおいて、支援制御器43は、サポート部41に利用者が載置されているか否かにかかわらず、サポート部41が定速で変位するよう駆動装置42を制御してもよい。例えば、支援制御器は、乗物本体10の対地速度に基づいて、サポート部41の変位速度を決定してもよい。
【0090】
また、乗物は、利用者が接近したことを検出する接近センサを備えてもよい。支援制御器は、乗物に乗るために利用者が接近したことが接近センサにより検出した場合に、接近センサによる検出信号に基づき、駆動装置の駆動を開始させてもよい。
【0091】
サポート部の変位速度を利用者が設定できてもよい。例えば、乗物は、利用者が携帯する情報端末装置と通信可能な通信器を備えており、支援制御器は、利用者が有する情報端末装置から、利用者が予め設定した速度情報を受信してもよい。情報端末装置から支援制御器への速度情報の送信は、情報端末装置に対する利用者の操作により手動で実行されてもよいし、乗物から所定の距離まで利用者が接近した場合に自動的に実行されてもよい。
【0092】
また、上記実施形態では、支援装置40が、サポート部41を能動的に変位させる駆動装置42を備えたが、支援装置はサポート部を能動的に変位させるものに限られない。支援装置は、サポート部が、利用者からの荷重を駆動力として、乗物本体の移動方向とは反対方向に受動的に変位するように構成されていてもよい。
【0093】
また、サポート部は、利用者エリアと地面との間で移動する利用者の全体重を支えるものに限定されない。サポート部は、利用者の体重の一部を支えるものでもよい。サポート部は、移動中の乗物1に乗る動作を行っている利用者が、乗物が含む構成要素の中で最初に接触する構成要素でなくてもよく、移動中の乗物から降りる動作を行っている利用者が、乗物が含む構成要素の中で最後に離れる構成要素でなくてもよい。
【0094】
乗物1は、同じ走行ルートを走行する別の乗物と通信可能であってもよい。乗物1は、異なる走行ルートを走行する別の乗物と通信可能であってもよい。乗物1は、乗物1を利用する利用者が所有する携帯型の情報端末装置と通信する通信器を備えてもよい。情報端末装置は、例えばスマートフォンである。
【0095】
サポート部の位置を変更する位置変更装置を備えてもよい。例えば位置変更装置は、サポート部の高さを変更可能でもよい。位置変更装置は、乗物の地理的位置に応じて、利用者が乗降しやすい高さにサポート部の高さを調整してもよい。また、例えば位置変更装置は、サポート部の左右方向の位置を変更可能でもよい。例えば、位置変更装置は、乗物本体10の側面から出没自在にサポート部の位置を調節可能でもよい。
【0096】
また、乗物は、上記実施形態で説明されたものに限定されない。乗物は、レールを走行する鉄道車両でもよい。また、乗物は、船、リニアモーターカー、ホバークラフトなどであってもよい。
【0097】
本明細書で開示する要素の機能は、開示された機能を実行するよう構成またはプログラムされた汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、従来の回路、または、それらの任意の組み合わせ、を含む回路または処理回路を使用して実行できる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路または回路と見なされる。本開示において、回路、ユニット、または手段は、列挙された機能を実行するハードウエアであるか、または、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウエアである。ハードウエアは、本明細書に開示されているハードウエアであってもよいし、あるいは、列挙された機能を実行するようにプログラムまたは構成されているその他の既知のハードウエアであってもよい。ハードウエアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、回路、手段、またはユニットはハードウエアとソフトウエアの組み合わせであり、ソフトウエアはハードウエアまたはプロセッサの構成に使用される。
【0098】
本発明の一態様に係る乗物は、利用者が留まる利用者エリアを有する乗物本体と、地面に対して前記乗物本体を移動させる移動装置と、前記乗物本体に設けられた少なくとも1つの支援装置であって、前記利用者エリアと前記地面との間で移動する利用者を支えながら、移動中の前記乗物本体に対して、前記地面に対する前記乗物本体の移動方向と反対方向に変位可能なサポート部を有する支援装置と、を備える。
【0099】
サポート部は、利用者を支えながら、移動中の乗物本体に対して、地面に対する乗物本体の移動方向と反対方向に変位可能である。このため、利用者が乗降元から乗降先に移る際に、利用者を支えた状態のサポート部が乗物移動方向と反対方向に変位することで、利用者と乗降先との間の相対速度差が減り、利用者が乗降先から受ける力を緩和できる。なお、「乗降先」について、利用者が乗物に乗車する場合の乗降先は、乗物を意味し、利用者が乗物から降車する場合の乗降先」は、地面を意味する。
【0100】
従って、上記構成によれば、移動中の乗物に対する乗降動作を行いやすくすることができ、乗物の利便性が向上する。なお、利用者の乗降動作とは、乗車動作と降車動作のいずれか一方の場合も含むものとする。
【0101】
上記の構成において、前記支援装置は、前記乗物本体の移動方向と反対方向に前記サポート部を変位させる駆動装置と、前記駆動装置を制御する支援制御器と、を更に有してもよい。この構成によれば、利用者がサポート部に接触する前から、乗物本体の移動方向と反対方向にサポート部を能動的に変位させることができる。このため、利用者がサポート部に接触した際に、サポート部から利用者が受ける力を緩和できる。従って、利用者の負担を減らして、利便性を向上できる。
【0102】
上記の構成において、前記サポート部は、利用者を下方から支える載置面を有してもよい。サポート部が利用者の手で把持されるタイプのものである場合、乗降に際して、利用者にはサポート部を把持する動作が必要となる。上記の構成によれば、サポート部が利用者の手で把持されるタイプのものである場合に比べて、利用者が、より自然な姿勢で乗降できる。
【0103】
上記の構成において、前記支援制御器は、前記乗物本体の対地速度に基づいて、前記サポート部の変位速度を決定してもよい。この構成によれば、サポート部の変位速度を、利用者の乗降に適した速度に調整できる。
【0104】
上記の構成において、前記支援制御器は、前記サポート部の対地速度の絶対値がゼロより大きく且つ前記乗物本体の対地速度の絶対値より小さくなるように設定された速度で前記サポート部が変位するように、前記駆動装置を制御してもよい。この構成によれば、例えば利用者が乗物に乗車する場合に、サポート部とともに変位する利用者が利用者エリアの床などから受ける力を、サポート部の対地速度の絶対値がゼロである場合に比べて緩和することができる。例えば利用者が乗物から降車する場合に、利用者エリアにいる利用者が、サポート部に接触する際にサポート部から受ける力を、サポート部の対地速度の絶対値がゼロである場合に比べて緩和することができる。
【0105】
上記の構成において、前記乗物本体は、前記利用者エリアにおいて利用者を下方から支持する床面を有し、利用者が、前記床面および前記地面のうちの一方である第1面から、前記床面および前記地面のうちの他方である第2面へ移動する際に、前記支援制御器は、前記利用者が前記サポート部に接触したか否かを判定し、前記利用者が前記サポート部に接触していないと判定する場合、前記第1面に対する前記サポート部の速度が、前記第1面に対する前記第2面の速度より低い速度となるように、前記駆動装置を制御し、前記利用者が前記サポート部に接触したと判定する場合、前記第2面に対する前記サポート部の速度が低減されるように前記駆動装置を制御してもよい。この構成によれば、第2面に対する前記サポート部の速度が低減されるため、サポート部とともに変位する利用者が第2面に接触した際に、利用者が第2面から受ける力を緩和できる。
【0106】
上記の構成において、前記支援装置は、前記サポート部が、前記利用者からの荷重を駆動力として、前記乗物本体の移動方向とは反対方向に受動的に変位するように構成されていてもよい。この構成によれば、能動的にサポート部を変位させる場合に比べて、電力を削減できる。
【0107】
上記の構成において、前記少なくとも1つの支援装置は、前記地面から前記利用者エリアへ移動する利用者を支える前記サポート部としての第1サポート部と、前記乗物本体の移動方向と反対方向に前記第1サポート部を変位させる第1駆動装置と、前記第1駆動装置を制御する第1支援制御器と、を有する、乗車用の第1支援装置と、前記利用者エリアから前記地面へ移動する利用者を支える前記サポート部としての第2サポート部と、前記乗物本体の移動方向と反対方向に前記第2サポート部を変位させる第2駆動装置と、前記第2駆動装置を制御する第2支援制御器と、を有する、降車用の第2支援装置と、を含み、前記第1支援制御器による前記第1駆動装置の制御方法と、前記第2支援制御器による前記第2駆動装置の制御方法とが、互いに異なってもよい。この構成によれば、乗車用の支援装置と降車用の支援装置とで制御方法が異なるため、乗車と降車のそれぞれに適した制御方法でサポート部を変位できる。
【0108】
上記の構成において、前記乗物本体は、前記移動装置による前記乗物本体の移動方向に沿った方向である前後方向に延びる縦長形状であってもよい。乗物本体は、移動装置による乗物本体の移動方向に延びる縦長形状であるため、サポート部が変位可能な範囲を大きくできる。
【0109】
上記の構成において、前記サポート部は、前記前後方向に垂直な左右方向における前記乗物本体の一端部に配置されてもよい。サポート部が、前後方向に延びる乗物本体の左右部分に配置されているため、サポート部が変位する範囲を広げやすい。
【0110】
上記の構成において、前記移動装置は、複数の車輪を有し、前記サポート部は、前記車輪の上端部より低い位置に配置された、利用者を下方から支える載置面を有してもよい。サポート部の載置面が車輪の上端部より低い位置にあるため、利用者にとって乗り降りが容易となる。
【0111】
上記の構成において、前記乗物本体は、前記利用者エリアにおいて利用者を下方から支持する床面を有し、前記サポート部は、利用者を下方から支える載置面を有し、前記床面と前記載置面が、色、表面形状および模様の少なくとも1つの点で互いに異なってもよい。乗物本体に対して固定である床面と、乗物本体に対して変位する載置面とを、利用者が見分けられるため、乗降しないにもかかわらず、利用者が誤って載置面を踏むのを防ぐことができる。
【0112】
乗物管理システムは、特定の区域内における第1ルートを移動する第1乗物と、前記特定の区域内における第2ルートを移動する第2乗物と、前記第1乗物および第2乗物の移動を制御する管理装置と、を備える、乗物管理システムであって、前記第1ルートおよび前記第2ルートは、前記第1ルートと前記第2ルートとが互いに部分的に重なるまたは所定の間隔をあけて互いに平行に延びる共通ルートを含み、前記管理装置は、前記共通ルートにおいて移動中の前記第1乗物および前記第2乗物の一方から他方へと利用者が移動可能に、前記第1乗物および前記第2乗物の互いの通用口を接近させた状態で移動するよう、前記第1乗物および前記第2乗物の移動を制御する。上記の構成によれば、利用者は、乗物の移動中に乗物の乗り換えることが可能となるため、利用者は予め定めた停留所で乗り換える必要がない。
【符号の説明】
【0113】
100 :乗物管理システム
1,1a,1b,1c,1d :乗物
10 :乗物本体
11 :床面
15a :乗車口
15b :降車口
23 :通信器
30 :移動装置
31 :車輪
32 :トルク発生装置
33 :操舵装置
34 :移動制御器
40 :支援装置
40a :第1支援装置
40b :第2支援装置
41 :サポート部
41a :第1サポート部
41b :第2サポート部
42 :駆動装置
42a :第1駆動装置
42b :第2駆動装置
43 :支援制御器
43a :第1支援制御器
43b :第2支援制御器
44 :接触検知器
G :地面
R :利用者エリア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18