IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ビーダーマン・テクノロジーズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディートゲゼルシャフトの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】骨固定装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/70 20060101AFI20241218BHJP
【FI】
A61B17/70
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021126661
(22)【出願日】2021-08-02
(65)【公開番号】P2022031194
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2023-11-27
(31)【優先権主張番号】20189703
(32)【優先日】2020-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】63/061,475
(32)【優先日】2020-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511211737
【氏名又は名称】ビーダーマン・テクノロジーズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】BIEDERMANN TECHNOLOGIES GMBH & CO. KG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルッツ・ビーダーマン
(72)【発明者】
【氏名】ティモ・ビーダーマン
(72)【発明者】
【氏名】ベルトホルト・ダネッカー
(72)【発明者】
【氏名】ベルント・フィッシャー
【審査官】木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-519649(JP,A)
【文献】特開2015-131110(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨固定装置であって、
固定要素(1,1′)を備え、
前記固定要素は、骨に固定するためのシャンク(2)と、頭部(3,3′)とを含み、
前記シャンク(2)は、第1の端部(2a)と、反対側の第2の端部(2b)とを有し、
前記頭部は、球状外面(30)を有し、
前記シャンク(2)および前記頭部(3,3′)は、互いに連結されるように構成された別個の部品であり、
前記シャンク(2)は、前記第1の端部(2a)に設けられ、前記頭部と係合するための係合部(24)を含み、前記係合部(24)は、ドライブ工具と係合するように構成され、
前記頭部(3,3′)は、ドライブ工具と係合するためのドライブ構造(31,31′)を含む第1の端部(3a,30a)と、前記シャンクの前記係合部(24)と協働するための相手側係合部(34)を含む反対側の第2の端部(3b)とを含む、骨固定装置。
【請求項2】
前記頭部(3,3′)を旋回可能に受け入れるための収容スペース(50,52;500,52′)を有する受け部(5,5′)をさらに備え、
前記頭部(3,3′)は、前記シャンク(2)に連結する前に、前記受け部(5,5′)に連結可能である、請求項1に記載の骨固定装置。
【請求項3】
前記受け部(5、5000、5′)は、前記シャンク(2)を前記頭部(3,3′)に連結するために前記シャンク(2)の少なくとも一部の通過を可能にするように構成された開口(51、51′)を含、請求項に記載の骨固定装置。
【請求項4】
前記シャンク(2)は、前記開口(51、51′)の直径よりも小さい最大外径を有する、
あるいは、前記シャンク(2)は、前記開口(51、51′)の直径よりも大きい最大外径を有する、請求項3に記載の骨固定装置。
【請求項5】
前記頭部(3,3′)は、前記受け部(5,5000,5′)において、前記シャンクを挿入方向に沿って前記頭部(3,3′)に連結する挿入位置をとるように構成され、
前記挿入方向に沿った前記頭部(3,3′)の軸方向の移動は、ストッパ(64,4;521,520)によって直接的または間接的に止められる、請求項またはに記載の骨固定装置。
【請求項6】
固定部材(7)によって加えられた圧力を前記頭部(3)に伝達し、前記頭部を前記収容スペースにロックするように構成された加圧部材(6)をさらに備える、請求項からのいずれか一項に記載の骨固定装置。
【請求項7】
前記加圧部材(6)は、前記頭部(3)を少なくとも部分的に囲み、
前記加圧部材(6)は、前記頭部に設けられた凹部(33)と解放可能に係合することによって、前記頭部(3)を前記加圧部材(6)に一時的に取り付けるための突起(68)を含む、請求項に記載の骨固定装置。
【請求項8】
前記突起(68)は、前記加圧部材(6)に対する前記頭部(3)の所定の旋回位置のみで、前記頭部(3)と係合するように構成される、請求項に記載の骨固定装置。
【請求項9】
前記ドライブ構造(31)は、星形状の凹部を含、請求項からのいずれか一項に記載の骨固定装置。
【請求項10】
前記星形状はトルクス(登録商標)形状である、請求項9に記載の骨固定装置。
【請求項11】
前記凹部は、前記頭部(3)の自由端面(32)の全体に実質的に延在する、請求項9に記載の骨固定装置。
【請求項12】
前記頭部(3′)は、固定部材(7)またはロッドのような単一の中間部材によって、前記収容スペース(500)に直接にロックされるように構成される、請求項からのいずれか一項に記載の骨固定装置。
【請求項13】
前記頭部(3)は、前記シャンク(2)の反対側に丸みを帯びた自由端面(30a)を含み、
前記ドライブ構造(31′)は、前記自由端面(30a)の中心の周りに配置され、そこから発散する複数の湾曲したウィング(36)の形状にした溝を含む、請求項からのいずれか一項に記載の骨固定装置。
【請求項14】
前記挿入位置では、前記頭部(3′)は、さらに摩擦力によって前記受け部(5′)に保持される、請求項に記載の骨固定装置。
【請求項15】
前記収容スペース(50;500)は、前記頭部(3,3′)の旋回を可能にするように、前記頭部を直接に支持するための座部(52,5200,52′)を含む、請求項から14のいずれか一項に記載の骨固定装置。
【請求項16】
前記頭部(3′)は、摩擦力によって前記座部(52′)に保持されるように、前記座部(52′)に対するサイズが決められている、請求項15に記載の骨固定装置。
【請求項17】
前記頭部(3,3′)は、長手中心軸(C)を含み、
前記頭部(3,3′)の少なくとも一部は、長手中心軸に沿って圧縮可能である、請求項1から16のいずれか一項に記載の骨固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、整形外科手術および外傷手術、より具体的には脊椎手術に一般的に適用可能な骨固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
脊椎手術の場合、脊椎の1つまたはいくつかの運動関節は、ロッドによって連結される。ロッドは、一軸または多軸骨固定装置によって椎骨に固定される。このような骨固定装置は、典型的には、例えば椎骨の椎弓根に固定される骨固定要素を含む。多軸骨固定装置の場合、骨固定要素は、受け部に旋回可能に連結される。受け部は、ロッドを受け入れるための凹部と、構造体を固定またはロックするための固定部材とを含む。
【0003】
例えば、US6835196B2は、ねじ部と球状頭部とを有するねじと、当該ねじをロッドに連結するための受け部とを有する多軸骨固定装置を記載している。ねじのねじ部および球状頭部は、別個の部品である。この装置の場合、装置を挿入する前または挿入した後にねじ部を所望の長さに短くし、その後、ねじ部を頭部および受け部に連結することができる。
【0004】
US2008/0132957A1は、骨または椎骨に固定されるシャンクと、頭部と、頭部を受け入れ且つシャンクをロッドに連結するための受け部とを含む骨固定装置を記載している。シャンクおよび頭部は、別個の部品である。シャンクおよび頭部が別個の部品であるため、骨固定装置の使用時に、用途に応じて適切なシャンクを選択して、頭部に連結することによって、骨固定装置を形成することができる。具体的には、異なる長さのシャンクを頭部と組み合わせることができる。
【0005】
US2014/0277158A1は、骨アンカー組立体を記載している。この骨アンカー組立体は、骨アンカーのシャンクを底部から受け部材に装入することを可能にするように構成された多要素骨アンカーを含む。骨アンカー組立体は、遠位のねじ部および近位頭部を有するシャンクと、球状外面を有し、シャンクの頭部を受け入れるサイズを有する中央内腔を有するボールと、頭部とボールとの間に係合することによって、シャンクと係合しているボールをロックするように構成されたクリップとを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】US6835196B2
【文献】US2008/0132957A1
【文献】US2014/0277158A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、様々な整形外科手術、特に脊椎障害、病気および/または疾患を治療する手術を改善するおよび/または骨固定装置の適用可能性をさらに広がる骨固定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1の骨固定装置によって解決される。さらなる展開例は、従属請求項に記載される。
【0009】
一実施形態によれば、骨固定装置は、固定要素を備え、固定要素は、骨に固定するためのシャンクと、頭部とを含み、頭部は、球状外面を有し、シャンクおよび頭部は、互いに連結されるように構成された別個の部品であり、頭部は、ドライブ工具と係合するためのドライブ構造を含む。
【0010】
ドライブ構造は、球状頭部を有する公知の固定要素に比べて、より大きなサイズを有する。これによって、より大きなトルクで骨固定要素を骨に挿入することができ、ねじ込むことができる。
【0011】
さらなる展開例において、頭部を受け入れ、骨固定要素をロッドに連結するための受け部が提供される。したがって、骨固定要素および受け部は、受け部に対してシャンクを様々な角度で旋回することができ、特定の角度位置で固定することができる多軸骨固定装置を形成することができる。固定要素によって加えられた圧力を頭部に伝達するために、加圧部材を設けてもよい。代替的には、圧力は、ロッドを介して頭部に直接に伝達されてもよい。
【0012】
シャンクは、ドライブ工具と係合するための係合部を含む。したがって、まず、シャンクを骨に挿入し、その後、頭部を取り付けた受け部をシャンクに配置することができる。シャンクを受入部に連結せずに挿入できるため、手術部位の視認性および利用スペースが改善され、挿入工程が容易になる。また、シャンクの挿入深さを調整する必要があるまたは骨固定装置を取り外す必要がある場合、頭部のドライブ構造に係合することによって、必要な工程を効果的に行うことができる。
【0013】
特定の実施形態において、シャンクは、大きな外径を有してもよい。また、シャンクの係合部は、高いトルクの適用を可能にするように設計されてもよい。
【0014】
さらに、骨固定装置は、頑丈であり、頭部を挿入した受け部は、シャンクに容易に連結することができる。
【0015】
別の使用方法として、頭部を受け部に連結する前に、頭部およびシャンクを組み立てることができる。
【0016】
異なるドライブ構造を備えた様々な頭部を特定のシャンクと組み合わせることができる。異なるドライブ構造は、例えば、トルクス(登録商標)形状のドライブ構造であってもよく、モートルク(登録商標)ドライブ構造であってもよい。さらに、様々な頭部を、異なる長さ、異なる直径、異なるねじまたは骨係合構造、または異なる別の特性を有する様々なシャンクと組み合わせることができるモジュールシステムを提供することができる。
【0017】
さらなる具体的な実施形態において、骨固定装置は、受け部に対して頭部およびシャンクの角度位置が特定の角度位置、例えばゼロ角度位置であることを示す位置表示構造を備える。
【0018】
また、骨固定装置は、骨プレートを含んでもよい。骨プレートは、骨固定要素の頭部を着座させるための穴、必要に応じて、頭部を穴内にロックするためのロック部材とを含む。
【0019】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の図面を参照して、実施形態の記載から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1の実施形態の骨固定装置を示す斜視分解図である。
図2】組み立てられた図1の骨固定装置を示す斜視図である。
図3】受け部および頭部の中心を通って延在し且つシャンク軸を含む平面に沿った図1および2の多軸骨固定装置の断面を示す断面図である。
図4図1~3の骨固定装置の骨固定要素のシャンクの上方から見た斜視図である。
図5図4のシャンクの上部を示す側面図である。
図6図4および5のシャンクを示す上面図である。
図7図1~3の骨固定装置の頭部の上方から見た斜視図である。
図8図7の頭部の下方から見た斜視図である。
図9図7および8の頭部を示す上面図である。
図10図9のA-A線に沿った図7~9の頭部を示す断面図である。
図11図1~3の骨固定装置の受け部の上方から見た斜視図である。
図12図11の受け部の下方から見た斜視図である。
図13図11および12の受け部を示す上面図である。
図14図13のB-B線に沿った図11~13の受け部を示す断面図である。
図15図1~3の骨固定装置の加圧部材の上方から見た斜視図である。
図16図15の加圧部材の下方から見た斜視図である。
図17図15および16の加圧部材を示す上面図である。
図18a図17のD-D線に沿った図15~17の加圧部材を示す断面図である。
図18b図18aの詳細を示す拡大図である。
図19a】骨固定要素の頭部をシャンクに取り付ける工程の上方から見た斜視図である。
図19b】骨固定要素の頭部をシャンクに取り付ける工程の上方から見た斜視図である。
図19c】骨固定要素の頭部をシャンクに取り付ける工程の上方から見た斜視図である。
図20a】シャンク軸および頭部の中心軸を含む平面に沿った図19aの工程を示す断面図である。
図20b】シャンク軸および頭部の中心軸を含む平面に沿った図19bの工程を示す断面図である。
図20c】シャンク軸および頭部の中心軸を含む平面に沿った図19cの工程を示す断面図である。
図21a】頭部を加圧部材および受け部に組み立てる工程を示す断面図である。
図21b】頭部を加圧部材および受け部に組み立てる工程を示す断面図である。
図21c図21bの詳細を示す拡大図である。
図21d】頭部を加圧部材および受け部に組み立てる工程を示す断面図である。
図21e】頭部を加圧部材および受け部に組み立てる工程を示す断面図である。
図22a】予め組み立てられた頭部、加圧部材および受け部をシャンクに取り付ける工程を示す断面図である。
図22b】予め組み立てられた頭部、加圧部材および受け部をシャンクに取り付ける工程を示す断面図である。
図22c】予め組み立てられた頭部、加圧部材および受け部をシャンクに取り付ける工程を示す断面図である。
図22d】予め組み立てられた頭部、加圧部材および受け部をシャンクに取り付ける工程を示す断面図である。
図23a】固定要素が旋回位置に配置され、ロッドが挿入されていない図1~3の骨固定装置を示す断面図である。
図23b】ロッドおよび固定部材が受け部に挿入され、旋回位置がロックされた図23aの多軸骨固定装置を示す断面図である。
図24】ロッドおよび固定部材が挿入された骨固定装置の変形例を示す断面図である。
図25】骨固定装置の骨固定要素を形成するためのシャンクおよび2つの交換可能な頭部を含むシステムの一実施形態を示す斜視図である。
図26】第2の実施形態に係る骨固定装置を示す分解斜視図である。
図27】組み立てられた図26の骨固定装置を示す斜視図である。
図28図26および27の骨固定装置の頭部の上方から見た斜視図である。
図29図28の頭部の下方から見た斜視図である。
図30図28および29の頭部を示す上面図である。
図31図30のF-F線に沿った図28~30の頭部を示す断面図である。
図32図26および27の骨固定装置の受け部の上方から見た斜視図である。
図33図32の受け部の下方から見た斜視図である。
図34図32および33の受け部を示す上面図である。
図35a図34のG-G線に沿った図34の受け部を示す断面図である。
図35b図35aの詳細を示す拡大図である。
図36a図26および27の骨固定装置を組み立てる工程を示す断面図である。
図36b図26および27の骨固定装置を組み立てる工程を示す断面図である。
図36c図26および27の骨固定装置を組み立てる工程を示す断面図である。
図36d図26および27の骨固定装置を組み立てる工程を示す断面図である。
図37a】受け部に対して骨固定要素を旋回させ、ロッドを挿入した後に固定部材で旋回位置をロックすることを示す断面図である。
図37b】受け部に対して骨固定要素を旋回させ、ロッドを挿入した後に固定部材で旋回位置をロックすることを示す断面図である。
図37c】受け部に対して骨固定要素を旋回させ、ロッドを挿入した後に固定部材で旋回位置をロックすることを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1~3を参照して、第1の実施形態の骨固定装置は、骨固定要素1を備え、骨固定要素1は、シャンク2と、別個の頭部3とを含む。骨固定要素1は、頭部3を介して受け部5に旋回可能に連結される。受け部5は、固定部材7によって加えられた圧力を頭部3に伝達するための加圧部材6を受け入れる。ロッド100は、少なくとも2つの骨固定装置を一体に連結するために使用される。骨固定装置は、多軸タイプである。すなわち、骨固定要素は、受け部に対するシャンク軸の様々な角度位置をとることができ、いずれかの角度位置にロックされてもよい。
【0022】
図4図6により詳細に示すように、シャンク2は、第1の端部2aと、反対側の端部2bと、シャンクの長さの少なくとも一部に位置する骨ねじ21とを含む。骨ねじは、骨と係合するように構成される。図示の実施形態において、骨ねじ21は、第2の端部2bの先端22から頚部23までシャンクのほぼ全長にわたって延在する。第1の端部2aには係合部24が形成される。係合部24は、ドライブ工具と係合するように構成された外面、例えば星形状、トルクス形状、または多角形の外面を有する。係合部24の最大外径は、骨ねじ部21の最大外径よりも小さくてもよい。したがって、この実施形態において、シャンクは、比較的大きな直径を有する。より具体的には、骨ねじ部21の最大外径は、頭部3の最大外径よりも大きくてもよい。係合部24は、ドライブ工具のストッパとして機能する環状リングを形成するための実質的な円筒形部分25によって制限されてもよい。
【0023】
図7~10を参照して、頭部3は、第1の端部3aと、反対側の第2の端部3bと、第1の端部と第2の端部との間の球状外面30とを含む。球状とは、頭部3をシャンク2に取り付けたときにシャンク軸と重なる中心軸Cに対して垂直な方向に、外面30が頭部の最大径Eを含むような形状である。また、最大径Eと第1の端部3aとの間の距離は、最大径Eと第2の端部3bとの間の距離よりも短くてもよい。より具体的には、頭部3の上部の軸方向の高さ、すなわち、最大径Eと第1の端部3aとの間の部分の高さは、旋回を可能にすると共に、第1の端部上にドライブ構造31を形成するするための十分に大きなスペースを提供するように、できるだけ小さい。この実施形態において、ドライブ構造31は、第1の端部3aから、軸方向に沿って第2の端部3bに向かって最大径Eを超える距離まで延在する凹部を含む。凹部は、星形状の内側輪郭、より詳しくは、6つの径方向に延在する長手溝31aを含むトルクス形状の内側輪郭を含む。6つの長手溝31aは、丸みを帯びた端部を有し、一定の距離で配置される。中心軸Cから見た場合、溝31aの径方向の最外端の距離は、ドライブ構造31が第1の端部3aのほぼ全面にわたって延在し、球状外面30に小さな周縁32のみを残すように構成される。このような設計によって、ドライブ構造31は、頭部と係合することができ、シャンク2により大きなトルクを加えることができる。
【0024】
第1の端部3aから離れた球状外面30には、周方向溝33が形成される。溝33は、中心軸Cの全周に延在してもよい。また、溝33は、最大径Eの軸方向の位置よりも第1の端部3aの近くに位置してもよい。図7および10に示すように、溝33の径方向の深さは、溝33がドライブ構造31の溝31aまで延在するように構成される。
【0025】
第2の端部3bには、相手側係合部34が形成されている。相手側係合部34は、シャンク2の係合部24を受け入れるように構成された凹部である。換言すれば、相手側係合部34の内側輪郭は、シャンクの係合部24の外側輪郭と実質的に同様である。また、相手側係合部34を形成する凹部の深さは、係合部24の軸方向の長さと実質的に同様である。さらに、凹部は、第2の端部3bに向かって先細になる僅かに先細内壁を有する。ドライブ構造31と相手側係合部とは、連通してもよい。凹部とドライブ構造31との間の肩部34aは、シャンクの係合部24の挿入を止めるためのストッパを形成する。
【0026】
頭部3は、第2の端部3bに隣接する領域において、少なくとも部分的な可撓性を有する。この部分的な可撓性は、第2の端部3bに開口し、少なくとも最大径Eまで延在し、好ましくは周方向溝33まで延在する複数の長手スリット35によって達成される。スリット35の数および幅は、第2の端部3bに隣接する頭部3の下部が、スナップオン方式で係合部24の挿入を可能にし且つ係合部24を凹部に保持するのに十分な可撓性を示すように選択される。凹部の先細内壁は、係合部24との緊密な係合を可能にする。
【0027】
図11図14を参照して、受け部5をより詳細に説明する。受け部5の外形は、略円筒状であってもよい。受け部5は、第1の端部または上端5aと、第2の端部または下端5bと、受け部5を完全に貫通して第1の端部5aから第2の端部5bまで延在する通路50とを有する。頭部2が受け部5においてゼロ位置に配置されると、受け部5の長手中心軸Cは、頭部3の長手中心軸Cと重なる。第2の端部5bに設けられた開口51は、頭部3の下端の少なくとも一部が当該開口を通過できるサイズを有してもよい。第2の端部5bに隣接する通路50は、頭部3の少なくとも一部を収容するための収容スペースを形成する。より具体的には、頭部3を支持するための座部52が、第2の端部5bに隣接して形成される。座部52は、頭部3の球面形状と同様である中空の球面形状を有してもよい。頭部3は、第2の端部5bに隣接する受け部の下部に収容されると、座部52に支持され、受け部の中でボールソケット継手のように旋回するように構成される。この機能を提供する座部は、任意の他の形状を有してもよい。
【0028】
座部52に隣接する通路50は、実質的に一定の内径を有する主要部分53に広がる。実質的にU字形の凹部54が、第1の端部5aから始まって形成され、2つの自由脚部55を形成する。実質的にU字形の凹部54は、ロッド100を受け入れるように構成されたチャネルを形成する。さらに、第1の端部5aに隣接する脚部55aには、内側ねじ山が形成される。この内側ねじ山は、固定部材7、例えば止めねじと協働するように構成される。内側ねじ山は、任意のねじ山であってもよい。好ましくは、内側ねじ山は、脚部55の広がりを低減するねじ山、例えば正方形ねじ山または平坦ねじ山である。各脚部55の周方向の中央には、横方向貫通孔57が形成されている。横方向貫通孔57は、軸方向に沿って、略U字状の凹部54の底面の上方且つねじ山56の下方の位置に形成される。貫通孔57は、貫通孔57を貫通して通路50内に延在するように構成されたピン4を受け入れるように構成される。内側ねじ山56の最下端の各脚部55には、周方向溝58またはアンダーカットが形成される。この周方向溝58またはアンダーカットの上面58aは、加圧部材6の一部分と当接する。工具と係合するための追加の凹部59が、各脚部55の外面に設けられてもよい。
【0029】
図15~18bを参照して、加圧部材6は、第1の端部6aと、反対側の第2の端部6bとを備え、第2の端部6bが受け部の第2の端部5bに面するよう、受け部5内に配置されるように構成される。加圧部材6の上部60は、実質的に円筒形である。これによって、上部60は、受け部の通路50の円筒部分53に嵌合することができ、円筒部分53の中で軸方向に沿ってある程度動くことができる。したがって、加圧部材6が受け部5に配置されたときに、円筒の中心軸Cは、受け部5の長手中心軸と重なる。180°で対向する2つの脚部62は、円筒部60の上面61から離れるように直立する。脚部62は、互いに向かい合う平坦な内壁と、円筒部60の形状に対応する円筒形の外壁とを有することができる。各脚部は、第1の端部6aにおいて、径方向に円筒部60の外面を超えて延在する外側に突出する縁部63を含む。脚部62は、自由端の領域において少なくとも部分的な可撓性を有し、互いに向かって圧縮され、可撓性で直立位置に戻ることができるような長さおよび厚さを有する。突出縁部63の上面は、加圧部材6の第1の端部6aを形成する。各脚部62には、ピン4の一部を受け入れるための軸方向に細長い長孔64が設けられている。
【0030】
加圧部材6は、ロッド100を支持するようにさらに構成され、円筒部60の中心軸Cに対して垂直に延在する凹部65を含む。凹部65は、挿入されたロッド100を支持するための支持面を形成する。凹部65の断面は、特に図18aに示すように、実質的にV字状であってもよく、好ましくは丸みを帯びた底部を有する実質的にV字状であってもよい。これによって、異なる直径のロッドを安全に支持することができ、ロッド軸の横方向へのロッドの移動を実質的に阻止することができる。円筒部60の中心軸と同軸であるボア66は、円筒部の上面61から第2の端部6bまで延在し、頭部3へのアクセスをドライブ工具に提供する。したがって、ボア66の内径は、ドライブ工具がボア66を通ってドライブ構造31と係合することができるように、頭部のドライブ構造31を含む凹部の最大径と少なくとも同じであるように構成される。実質的に球状凹部67が、第2の端部6bから離れて形成される。球状凹部67の形状は、頭部3の外部球面形状と同じである。球状凹部67の軸方向の高さは、頭部3が加圧部材6および受け部5に挿入され、シャンク2のゼロ角度位置で受け部の座部52に着座したときに、溝33と第1の端部3aとの間の頭部3の上部が球状凹部67内に位置するように構成される。さらに、特に図23および24に示すように、球状凹部67および座部52は、共に頭部3を支持するための球状旋回支持体を形成する。
【0031】
加圧部材6は、球状凹部67と第2の端部との間に、内周に沿って延在し且つ中心軸Cの内側に向かって突出する突起68を含む。突起68は、頭部3を加圧部材の球状凹部67に挿入したときに、頭部3の周方向溝33の位置および形状に適合する位置および形状を有する。溝33との係合および溝からの離脱を可能にするために、突起68は、丸みを帯びてもよい。また、頭部3が受け部5の座部52に支持されたときに、突起68は、溝33と係合するように構成される。溝33および突起68が中心軸Cに対して垂直に延在するため、頭部3が受け部5に対してシャンクのゼロ角度位置に配置されたときに、係合が達成される。係合時に、可聴または触覚フィードバックを生成することができる。したがって、溝および突起は、受け部に対してシャンクの特定位置を示すように構成された位置表示構造を形成する。具体的な例として、特定位置は、シャンク2が受け部5と同軸であるときのゼロ位置である。頭部3を加圧部材6に挿入することを容易にするために、突起68と第2の端部6bとの間には、外側に向かって先細になる先細部68aを設けてもよい。先細部68aは、頭部3のための傾斜を形成する。したがって、頭部3を旋回するときに、突起68は、溝33から容易に抜け出すことができる。
【0032】
第2の端部6bと球状凹部67から上方へ一定の距離で離れた位置との間の外面69を、第2の端部6bに向かって僅かに先細にすることによって、段差69aを形成することができる。これによって、壁の厚さを僅かに薄くすることができ、突起68をより容易に溝33に嵌合することができる。
【0033】
骨固定装置およびロッドの部材および部品は、任意の材料から作製されてもよいが、好ましくは、チタンもしくはステンレススチール、または任意の生体適合性金属もしくは生体適合性金属合金もしくは生体適合性プラスチック材料から作製されてもよい。生体適合性合金は、NiTi合金、例えばニチノールを含むことができる。他の材料は、マグネシウムまたはマグネシウム合金を含むことができる。生体適合性プラスチック材料は、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、またはポリ-L-ラクチド酸(PLLA)であってもよい。これらの部材は、別の部材と同じ材料から作製されてもよく、または別の部材と異なる材料から作製されてもよい。
【0034】
図19a~20cを参照して、頭部をシャンクに取り付ける工程を説明する。なお、骨固定要素は、多くの用途に使用されてもよい。例えば、組み立てられた骨固定要素を、多軸骨アンカーの受け部にまたは固定ねじを含む骨プレートに一体的に挿入することができる。図示のように、まず、頭部3の相手側係合部34とシャンク2の係合部24とが互いに対向し、両者の凹部が回転方向に沿って整列するように、頭部3の方向を決める(図19aおよび20a)。次に、凹部34内の頭部3の下部を広げて係合部24を凹部34に進入させるように、頭部3をシャンク2の係合部24に押し付ける(図19b、図20b)。その後、係合部24は、端面2aが凹部34aの肩部34aに当接するまで凹部内で移動し、相手側係合部34は、係合部24の周囲を閉鎖する。頭部3は、シャンクの係合部と頭部の係合部との形状嵌合によって、回転しないように固定される。シャンク2は、軸方向の摩擦力によって凹部においてある程度保持される。
【0035】
図21a~21eは、加圧部材6および頭部3を受け部5に組み立てる工程を示す。図21a~21cに示すように、頭部3の溝33が加圧部材6の突起68に係合するまで、第2の端部6bから頭部3の先端の第1の端部3aを加圧部材6内に挿入する。したがって、突起68と溝33とは、加圧部材6と頭部3とを保持するための保持構造を構成する。その後、頭部3の第2の端部3bを開口51に向けて、第1の端部5aから、組み立てられた加圧部材6および頭部3を受け部5に挿入する。ロッドを受け入れるための受け部5の凹部54と加圧部材6の凹部65とは、整列される。
【0036】
頭部3と組み立てられた加圧部材6を挿入するときに、外側縁部63が受け部5の内側ねじ山56の頂部に当接することによって、加圧部材6の脚部62は、互いに向かって僅かに圧縮される。図21eに示すように、外側縁部63が溝58の真上のねじ山の頂部に位置するときに、長孔64が貫通孔57と重なるため、ピン4を挿入することができる。また、ピン4は、加圧部材が受け部の中で回転することを阻止する阻止構造を形成する。この位置では、頭部3は、収容スペース内に収容されているが、まだ座部52に配置されていない。この位置は、加圧部材6の最上部に定義され、加圧部材6がピン4によって形成されたストッパを抗して長孔64の下端に当接する挿入位置である。頭部3の下部が広がることによって、頭部3の外側球面30と座部との間のスペースは、シャンク2の係合部24の挿入を可能にするのに十分である。頭部は、開口51から僅かに突出してもよい。
【0037】
図22a~22dを参照して、図22a~22dは、予め組み立てられた加圧部材6、頭部3および受け部をシャンク2に取り付ける工程を示している。図22aでは、シャンク2の係合部24を頭部3の相手側係合部34(図22b)の凹部に挿入できるように、シャンク2の係合部24と受け部5は、互いに対して回転方向に整列される。頭部3の下部は、可撓性を有するため、係合部24の挿入を可能にするように広がることができる。ピン4は、挿入工程中に加圧部材6の上方移動を防止する。図22cは、係合部24が肩部34aに当接するまで相手側係合部34の凹部に完全に挿入される工程を示す。
【0038】
最後に、図22dに示すように、頭部3が受け部の座部52に接触し、座部52に支持されるように、加圧部材6を受け部の第2の端部5bに向かって移動する。同時に、外側縁部63は、溝58にスナップ嵌合する。溝の上面58aは、脚部62で加圧部材の上面6aに当接する。これによって、頭部3は、座部52に保持される。加圧部材の球状凹部67は、頭部3の上部の一部に当接することによって、摩擦力で頭部3を当該位置に保持することができる。部品の寸法に応じて、頭部3を保持するための摩擦力の強さが変わる。好ましくは、手動で摩擦力を克服して、頭部3およびシャンク2に対して受け部5を旋回することができる。同時に、頭部3の下部は、座部52内で圧縮され、シャンクの係合部24をしっかりと保持する。
【0039】
図23aに示すように、シャンク2に対して受け部5を旋回すると、突起68は、溝33から抜け出し、球状凹部67の一部によって保持された球状座部52内で頭部3を旋回することができる。受け部5に対するシャンク2の旋回位置がゼロ角度位置、すなわち、シャンクの軸が受け部の長手中心軸Cと同軸である位置に変更されると、突起68は、溝33にスナップ嵌合する。これによって、定義された位置、この場合、ゼロ角度位置に達したことを示す可聴または触覚フィードバックを生成する。
【0040】
所望の角度位置に達すると、ロッド100は、挿入され、加圧部材6の支持面65によって保持される。図23bに示すように、固定部材7は、受け部の脚部55間に挿入され、締め付けられる。したがって、固定部材7は、ロッドに圧力を与え、加圧部材を介して頭部に圧力を与えることによって、受け部に対して頭部を角度位置にロックする。固定部材7は、突出部71を有してもよい。脚部62が固定部材に接触していない場合、突出部71は、ロッドを押圧する。
【0041】
臨床使用の場合、少なくとも2つの骨固定装置は、骨に挿入され、ロッドを介して連結される。骨固定装置は、いくつかの方法で使用される。例えば、シャンク2は、既に骨に挿入されており、加圧部材6および頭部3と予め組み立てられた受け部5を既に挿入されたシャンクの係合部に取り付けることができる。別の方法として、シャンク2を骨に挿入する前に、頭部3および加圧部材6を受け部5に予め組み立て、頭部をシャンク2に取り付けることができる。シャンクが開口51を通過することができない大径シャンクである場合に、両方の方法を使用することができる。使用されるシャンクが開口51を通過することができる小さい外径を有する場合、図19a~20cに示すように、頭部3およびシャンク2を予め組み立て、頭部3が座部52に着座するまで、受け部5の上端から組み立てられた頭部3およびシャンク2を受け部5に挿入することができる。その後、加圧部材6を挿入して、ピン4で固定することができる。
【0042】
なお、様々なシャンクを使用することができ、様々なシャンクを頭部および受け部に連結することができる。したがって、骨固定装置は、頭部および受け部と組み合わせられた多くの異なるシャンクを使用することを可能にするモジュールシステムを提供することができる。
【0043】
加圧部材および頭部が組み立てられた受け部を取り付ける前に、シャンクを骨に挿入する場合、シャンク2の係合部24は、ドライブ工具と係合するためのドライブ構造を提供する。係合部が比較的大きいため、より高いトルクを加えることができる。他方では、図22dに示すように、骨固定装置が完全に組み立てられると、頭部3のドライブ構造31が比較的大きいため、頭部3を介してより高いトルクを加えることができる。これは、図22dの骨固定装置を骨に挿入する場合、または骨に挿入されたシャンクの位置を調整する場合、または最終的に骨固定装置を完全に取り外す場合に、有用である。
【0044】
図24は、骨固定装置の変形例を示している。変形例の骨固定装置は、骨固定要素が受け部に対して対向側に比べて、より大きな最大角度で一方側に旋回することができるという点で、図1~23bに示された第1の実施形態と異なる。受け部5000は、下端5b′を有する。開口5100によって画定された平面Pが、中心軸Cに対して傾斜して延在する。この平面は、例えば、一定の角度で受け部の端部を切断することによって作ることができる。頭部を支持するための座部5200は、軸方向に増大され、より大きな旋回角度で頭部3を支持する十分な支持面を形成する。図24に示すように、骨固定器具1は、より大きい最大角度で一方側に旋回される。この旋回は、シャンクの一部と受け部の下端5b′との当接によって制限される。なお、シャンクが他の方向に比べて1つ以上の方向により大きな角度で旋回することを可能にするように、受け部および/またはシャンクを他の幾何学的形状に形成しててもよい。
【0045】
異なる頭部を使用して、モジュールシステムを形成することもできる。図25に示すように、上述した頭部3のほかに、異なるドライブ構造を有する別の頭部3′をシャンク2に組み付けることができる。骨固定装置の組み立て方法および使用方法が多くあるため、異なる特性を有する様々な頭部、例えば異なるドライブ構造、異なる材料、異なる可撓性、または他の特性を有する様々な頭部をシャンクに選択的に組み付けることができる。
【0046】
図25に示された頭部3′は、モートルク(登録商標)ドライブと同一または類似のドライブ構造31′を含む。ドライブ構造31′のサイズに応じて、頭部3′は、頭部3の代わりに、第1の実施形態の受け部5および加圧部材6と共に使用することができる。
【0047】
また、図26~37cに示すように、頭部3′は、第2の実施形態の骨固定装置の一部であってもよい。なお、第1の実施形態と同一または非常に類似する部分には、同一の符号を付し、その説明は、繰り返さない。この骨固定装置は、骨固定要素1′を備え、骨固定要素1′は、第1の実施形態と同様のシャンク2または別のシャンクと、頭部3′と、受け部5′とを含む。第2の実施形態の骨固定装置は、加圧部材を設けておらず、ロッド100が固定部材7によって加えられた圧力を頭部3′に直接に伝達する点で、第1実施形態とは異なる。
【0048】
図28~31を参照して、頭部3′の上部は、実質的に中実であり、上部で球状外面30aを有する。上部の球状外面30aは、下部の球状外面30と同様の半径を有してもよい。換言すれば、頭部3′は、実質的に平坦である第2の端部3bを除いて、完全な球状外面を有してもよい。上部外面30aに設けられたドライブ構造31′は、頂点と重なる中心、すなわち、上部の球状外面30aの最高点から、湾曲しながら広がるウィングまたはローブを形成する溝31a′の形で設けられる。より詳しくは、溝31aは、4つのウィング36を形成し、4つのウィング36の全ては、同一側に向かって湾曲し、同様の形状およびサイズおよび規則的な距離を有する。このような設計は、モートルク(登録商標)ドライブとして知られている。溝の各ウィングは、実質的に垂直または僅かに斜めの部分36aおよび丸い部分36bを含み、2つの部分は、ウィングの先端で接続される。溝31a′は、特に図28に示すように、ウィング36の先端で外面に向かって開口する。このようなドライブ構造は、様々な他のドライブ構造と同様により高いトルクを伝達するように構成される。溝33および係合部34は、第1の実施形態と同様である。頭部3′の可撓性を強化するために、球状上面30aに向かう方向に、係合凹部34に続く第2の中心凹部37を設けてもよい。肩部34aを形成するように、中心凹部37は、係合凹部34よりも小さい内径を有する。また、可撓性を増加するために、スリット35′は、溝33から一定の距離で終端してもよく、内側の横スリット35aに続いてもよい。しかしながら、スリット35および中心凹部37が頭部3の最大外径Eを含む領域に設けられているため、頭部3′の全体は、中心軸Cに向かって僅かに圧縮可能である。
【0049】
図32~35bを参照して、受け部5′は、頭部3′を収容するための収容スペース500を有する。頭部3′は、収容スペース500において、挿入位置および旋回するための最終位置をとることができる。これを達成するために、収容スペース500は、第2の端部5bの近くに下方座部52′、より具体的には、頭部3′の下方球状外面30の半径と同様の半径を有する中空球状部を含む。下方球状座部52′の高さは、頭部3′の球状外面30を下方座部52′に着座させたときに、下方座部52′が頭部3′の最大外径Eを僅かに超えて延在するように構成される。これによって、頭部3′は、摩擦力によって下方座部52′内で旋回位置に保持される。したがって、頭部3′が旋回位置に配置され、ロッドおよび固定部材がまだ挿入されておらず、固定されていないときに、頭部3′が不用意に下方座部52′から抜け出すことが防止される。頭部3′の挿入を容易にするために、第2の端部5bに向かって小さい部分52a′で下方座部52′を広げることができる。第2の端部5bの開口51′は、頭部3′を僅かに圧迫することによって、第2の端部から頭部3′を導入できるようなサイズを有する。また、収容スペース500は、頭部3′の最大径Eよりも大きい直径を有する内側周溝510によって下方座部52′から隔離される上方座部520を含む。内側周溝510は、頭部3′が上方座部520を通過して下方座部52′の旋回位置に到達することを可能にする。上方座部520は、頭部3′の外面30a、30と同様の球面形状を有し、頭部が上方座部520内にあるときに、溝33から最大径Eの下方のある程度まで広がる頭部3′の外面の一部を受け入れるように構成される。頭部3がある程度圧縮可能であるため、摩擦力によって頭部3を上方座部520内に保持することができる。第1の端部5aに向かう上方座部520の端部には、通路50′を狭める環状の内側突起521が形成されている。突起521は、頭部3′が上方座部520内にあるときに、溝33と係合するように構成される。また、突起521は、第2の端部5bに面する平坦底面を有してもよい。突起521が頭部3′の溝33と係合するときに、平坦底面は、ストッパを形成する。周方向突起521は、頭部の挿入位置を規定する。通路50′は、突起521から広がり、実質的に一定の直径を有する。
【0050】
この実施形態において、より大きな固定部材を受け入れるために、第1の実施形態に比べて内側ねじ山56の直径をより大きくしてもよい。この実施形態は、加圧部材を有しないため、第1の実施形態のように、ねじ山の下方の内壁に溝を設ける必要がない。なお、ロッド100を受け入れるための凹部54′は、ロッド100を凹部54′に案内するように、ロッドの直径と実質的に同様であるまたは僅かに大きいチャネル径を有する。収容スペース500のサイズおよび実質的にU字形の凹部54′の深さは、頭部3′が旋回位置で下方座部52′内に着座し、上部球面30aの頂点が軸方向において実質的にU字形凹部54′の底部よりも上方に位置するように構成される。これによって、例えば、図37bおよび37cに示すように、頭部3′は、ロッド100の底面と係合し、ロッド100は、頭部3′に圧力を与えることができる。
【0051】
頭部3′および受け部5′の組み立ては、図36a~36dに示されている。まず、図36aに示すように、上部球面30aが受け部5′の開口51′に面するように、頭部3′の方向を決める。その後、開口51′から頭部3′を収容スペース500に挿入する。これを達成するために、開口51′を通過するように頭部3′を僅かに圧縮する。図36bに示すように、頭部3′は、環状突起521が溝33の下部と係合するまで、上方座部520に移動することができる。この係合は、上方へのさらなる移動を防止する。これは、シャンクの挿入位置である。頭部3′は、摩擦力によって上方座部520に保持される。これによって、頭部3′自身は、挿入位置から旋回位置に移動することができない。その後、図36cに示すように、係合部24で頭部3′の下部を広げることによって、シャンク2を相手側係合部34の凹部に挿入することができる。最後に、図36dに示すように、シャンク2の係合部24は、ストッパ34aに当接し、シャンク2は、摩擦力によって頭部3′に保持される。環状突起521によって形成されたストッパによって、シャンクを挿入するときに、頭部は、第1の端部5aに向かう方向に沿って、受け部から離脱しない。
【0052】
図37a~図37cを参照して、頭部3′および受け部5′をシャンク2に取り付けると、頭部3′は、挿入位置から下方座部52′に移動される。突起521は、第1の端部5aに向かって丸みを帯びているため、容易に溝33から抜け出すことができる。図37aにおいて、シャンク2の軸と受け部5′の長手中心軸Cとは、同軸である。次いで、図37bに示すように、シャンク2に対して受け部5′を旋回することができ、摩擦力によって受け部5′を下方座部52′内の旋回位置に保持することができる。最後に、図37cに示すように、ロッドを実質的にU字形のチャネル54′に挿入し、固定部材7を受け部5′の脚部55の間にねじ込む。固定部材7を締め付けると、固定部材7は、ロッドを押圧し、その結果、ロッド100は、頭部3′の球面30aを押圧し、ロッドと頭部とをロックする。
【0053】
第1の実施形態と同様に、臨床使用の場合、まずシャンクを骨に挿入し、その後、予め組み立てられた受け部5′および頭部3′をシャンクに取り付けることができる。または、代替的に、シャンク2、頭部3′および受け部5′を含む骨固定装置を予め組み立て、その後骨に挿入することができる。いずれかの場合に、ドライブツールは、通路50′を通ってドライブ構造31′にアクセスすることができ、ドライブ構造31′は、高いトルクを印加するための大きなドライブ面を提供する。
【0054】
上記の実施形態の変形例が考えられる。受け部および加圧部材は、単一部材として示されているが、2つ以上の部品から形成されてもよい。シャンクとして、全ての種類のシャンク、例えば部分ねじ山付きシャンク、釘、カニューレシャンク、および様々な他のシャンクを使用することができる。シャンクの係合部が凹部を備え、頭部の相手側係合部がシャンクの凹部に係合する突起を備えることが考えられる。シャンクの係合部または頭部のドライブ構造は、様々な他のドライブ構造であってもよい。
【0055】
位置表示構造は、ゼロ角度以外の所定の角度を示すように設計することができる。
加圧部材は、2つの部品の固定部材を使用できるように、ロッドの上方に延在する脚部を有してもよい。2つの部品の固定部材を使用する場合、例えば、内側固定部材は、ロッドに作用し、外側固定部材は、加圧部材の脚部に作用する。
【0056】
ロッドは、円筒形ロッドとして示されているが、ロッドは、任意の他の断面を有してもよい。ロッド支持面は、ロッドを支持するために、円筒形輪郭もしくは平坦な輪郭または任意の他の適切な輪郭を有することができる。
【0057】
さらに、一実施形態の特定の特徴、構造または性質は、任意の適切な方法で他の実施形態と組み合わせることによって、多数のさらなる実施形態を作り出すことができる。要素の特定の形状は、図面に示される特定の形状に限定されず、別の形状を有してもよい。
【符号の説明】
【0058】
1,1′ 骨固定要素、2 シャンク、2a 第1の端部、2b 第2の端部、3,3′ 頭部、3a 第1の端部、3b 第1の端部、5,5′ 受け部、6 加圧部材、7 固定部材、24 係合部、30 球状外面、31,31′ ドライブ構造、32 周縁、33 溝、34 相手側係合部、36 ウィング、50,500 収容スペース、51、51′ 開口、52,52′ 座部、100 ロッド。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18a
図18b
図19a
図19b
図19c
図20a
図20b
図20c
図21a
図21b
図21c
図21d
図21e
図22a
図22b
図22c
図22d
図23a
図23b
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35a
図35b
図36a
図36b
図36c
図36d
図37a
図37b
図37c