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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】空気調和装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/79 20180101AFI20241218BHJP
   F24F 11/46 20180101ALI20241218BHJP
   F24F 11/61 20180101ALI20241218BHJP
   F24F 11/59 20180101ALI20241218BHJP
【FI】
F24F11/79
F24F11/46
F24F11/61
F24F11/59
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021146937
(22)【出願日】2021-09-09
(65)【公開番号】P2023039692
(43)【公開日】2023-03-22
【審査請求日】2024-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】薄田 健太
(72)【発明者】
【氏名】下沢 一仁
(72)【発明者】
【氏名】大石 剛久
(72)【発明者】
【氏名】新開 優美
【審査官】佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-061446(JP,A)
【文献】特開2013-040724(JP,A)
【文献】特表2020-504279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/79
F24F 11/46
F24F 11/61
F24F 11/59
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調した風を室内に送る送風部と、
前記送風部の風向を調節する風向調節部と、
前記室内に存在する生体の位置を検出するレーダと、
記レーダによる検出結果に基づいて、空調用のリモートコントローラで所定のボタンが押されたときの前記リモートコントローラの位置を対象位置として記憶する記憶部と、
所定モードでの空調運転時に、ユーザ操作による設定に基づいて、前記風向調節部を制御することで、前記生体の位置にかかわらず前記対象位置に向かう方向に風向を制御する風あて制御、および、前記生体の位置にかかわらず前記対象位置を避けた方向に風向を制御する風よけ制御の少なくとも一方を実行できる制御部と、
を備える空気調和装置。
【請求項2】
前記レーダは、前記リモートコントローラを操作している人を検出し、
前記制御部は、前記人の位置を前記対象位置として設定する、請求項1に記載の空気調和装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記対象位置として、複数の位置を設定する、請求項1に記載の空気調和装置。
【請求項4】
ユーザ操作に基づいて、予約運転時に前記対象位置に対する風あて制御または風よけ制御を設定する風向設定を含むタイマ設定を行うタイマ設定部を、さらに備える、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の空気調和装置。
【請求項5】
前記空調した風が通過可能な通風口が複数開口した通風部材を備え、
前記通風部材が、前記送風部から送られる風が通る流路の少なくとも一部に挿入され、前記通風部材を介して前記空調した風が前記室内に送られる無風感運転を実行可能であり、
前記制御部は、前記風よけ制御において、前記風向調節部による風向の制御に代えて、または、前記風向調節部による風向の制御と合わせて、前記無風感運転を実行する、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気調和装置から出る風の方向は、例えば、リモコン(リモートコントローラ)操作などによって、空気調和装置のルーバ(複数の羽板)の向きを動かすことにより、変えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-141104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術の空気調和装置では、ユーザがルーバの向きを見ながらリモコンを操作する必要があるので、操作性の観点で改善の余地がある。
【0005】
そこで、本発明が解決する課題の一例は、ユーザの希望する風向を簡易に実現可能な空気調和装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの実施形態に係る空気調和装置は、空調した風を室内に送る送風部と、前記送風部の風向を調節する風向調節部と、前記室内に存在する生体の位置および前記生体の特徴に関する情報を検出するレーダと、前記情報に基づいて前記生体の特徴を判定するとともに、前記レーダによる検出結果に基づいて、空調用のリモートコントローラで所定のボタンが押されたときの前記リモートコントローラの位置を対象位置として設定し、所定モードでの空調運転時に、ユーザ操作による設定に基づいて、前記風向調節部を制御することで前記対象位置に向かう方向に風向を制御する風あて制御、および、前記対象位置を避けた方向に風向を制御する風よけ制御の少なくとも一方を実行できる制御部と、を備える。
【0007】
また、前記レーダは、前記リモートコントローラを操作している人を検出し、前記制御部は、前記人の位置を前記対象位置として設定するようにしてもよい。
【0008】
また、前記制御部は、前記対象位置として、複数の位置を設定するようにしてもよい。
【0009】
また、ユーザ操作に基づいて、予約運転時に前記対象位置に対する風あて制御または風よけ制御を設定する風向設定を含むタイマ設定を行うタイマ設定部を、さらに備えるようにしてもよい。
【0010】
また、前記空調した風が通過可能な通風口が複数開口した通風部材を備え、前記通風部材が、前記送風部から送られる風が通る流路の少なくとも一部に挿入され、前記通風部材を介して前記空調した風が前記室内に送られる無風感運転を実行可能であり、前記制御部は、前記風よけ制御において、前記風向調節部による風向の制御に代えて、または、前記風向調節部による風向の制御と合わせて、前記無風感運転を実行するようにしてもよい。
【0011】
以上の空気調和装置によれば、まず、レーダによる検出結果に基づいて、空調用のリモートコントローラで所定のボタンが押されたときのリモートコントローラの位置を対象位置として設定する。そして、所定モードでの空調運転時に、ユーザ操作による設定に基づいて対象位置に対する風あて制御または風よけ制御を実行する。これにより、ユーザが希望する風向での送風を簡易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、第1実施形態の空気調和装置の室内機の構成を模式的に示す断面図である。
図2図2は、第1実施形態の運転中の室内機の構成を模式的に示す断面図である。
図3図3は、第1実施形態の風向板と通風部材の一部を模式的に示す正面図である。
図4図4は、第1実施形態の通風部材の構成を模式的に示す断面図である。
図5図5は、第1実施形態の空気調和装置の室内機の機能構成を示すブロック図である。
図6図6は、第1実施形態におけるリモートコントローラの外観を模式的に示す図である。
図7図7は、第1実施形態におけるスマートフォン画面を模式的に示す図である。
図8図8は、第1実施形態における自動風あて制御例の説明図である。
図9図9は、第1実施形態における自動風よけ制御例の説明図である。
図10図10は、第1実施形態の空気調和装置による制御例を示すフローチャートである。
図11図11は、第2実施形態の空気調和装置の室内機の動作状態の構成を示す例示的かつ模式的な断面図である。
図12図12は、第2実施形態の通風部材の構成を示す例示的かつ模式的な斜視図である。
図13図13は、第2実施形態の空気調和装置の室内機の動作状態で放出される風の状態を示す例示的かつ模式的な部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、実施形態(第1実施形態、第2実施形態)について、図1図13を参照して説明する。なお、本明細書においては基本的に、鉛直上方を上方向、鉛直下方を下方向と定義する。また、本明細書において、実施形態に係る構成要素及び当該要素の説明が、複数の表現で記載されることがある。構成要素及びその説明は、一例であり、本明細書の表現によって限定されない。構成要素は、本明細書におけるものとは異なる名称でも特定され得る。また、構成要素は、本明細書の表現とは異なる表現によっても説明され得る。
【0014】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の空気調和装置10の室内機11の構成を模式的に示す断面図である。図1に示すように、空気調和装置10は、室内機11を有する。室内機11は、建造物の室内に配置されるとともに、冷媒配管及び電気配線を介して室外に配置された室外機に接続される。なお、空気調和装置10は、この例に限られない。
【0015】
室内機11は、筐体21と、熱交換器22と、ファン23と、フィルタ24と、二つの風向板25と、二つの通風部材26と、を有する。風向板25及び通風部材26は、ルーバとも称され得る。
【0016】
各図面に示されるように、本明細書において、便宜上、X軸、Y軸及びZ軸が定義される。X軸とY軸とZ軸とは、互いに直交する。X軸は、室内機11の幅に沿って設けられる。Y軸は、室内機11の奥行に沿って設けられる。Z軸は、室内機11の高さに沿って設けられる。
【0017】
さらに、本明細書において、X方向、Y方向及びZ方向が定義される。X方向は、X軸に沿う方向であって、X軸の矢印が示す+X方向と、X軸の矢印の反対方向である-X方向とを含む。Y方向は、Y軸に沿う方向であって、Y軸の矢印が示す+Y方向と、Y軸の矢印の反対方向である-Y方向とを含む。Z方向は、Z軸に沿う方向であって、Z軸の矢印が示す+Z方向と、Z軸の矢印の反対方向である-Z方向とを含む。第1実施形態において、+Z方向は上方向であり、-Z方向は下方向である。
【0018】
筐体21は、X方向に延びた略直方体状に形成される。なお、筐体21は、他の形状に形成されてもよい。筐体21は、例えば、建造物の室内の壁等に架けられる。筐体21は、上面21aと、下面21bとを有する。上面21aは、筐体21の上方向の端部またはその近傍に設けられ、略上方向に向く。下面21bは、筐体21の下方向の端部またはその近傍に設けられ、略下方向に向く。
【0019】
筐体21に、通風路31、吸込み口32、及び吹出し口33が設けられる。通風路31は、筐体21の内部に設けられる。吸込み口32は、例えば、筐体21の上面21aに開口する。吹出し口33は、例えば、筐体21の下面21bに開口する。吸込み口32及び吹出し口33は、筐体21の他の部分に開口してもよい。
【0020】
室内機11は、通風路31に風を通すことができる。風は、空気の流れである。吸込み口32は、通風路31の一方の端に設けられ、通風路31を室内機11の外部に連通する。吹出し口33は、通風路31の他方の端に設けられ、通風路31を室内機11の外部に連通する。言い換えると、通風路31は、筐体21の内部において、吸込み口32と吹出し口33との間に設けられる。
【0021】
熱交換器22は、通風路31に設けられる。熱交換器22は、例えば冷媒配管と複数のフィンとを有する。熱交換器22は、通風路31において周囲の気体と熱交換を行う。これにより、熱交換器22は、冷房運転時に通風路31を流れる風を冷却し、暖房運転時に通風路31を流れる風を加熱する。
【0022】
ファン23は、空調した風を室内に送る送風部の例である。ファン23は、通風路31に設けられる。ファン23は、X方向に延びる回転軸Axfまわりに回転することで、通風路31において吸込み口32から吹出し口33へ風を送る。これにより、室内機11は、吸込み口32から室内の空気を通風路31へ吸い込み、吹出し口33から通風路31の空気(風)を吹き出す。このため、本明細書では、通風路31において吸込み口32に近い側を上流、吹出し口33に近い側を下流と称する。
【0023】
ファン23は、熱交換器22の下流に位置する。このため、ファン23が風を生じさせると、吸込み口32から吸い込まれた空気が熱交換器22のフィンを通過する。これにより、通風路31を流れる空気が熱交換器22と熱交換を行う。なお、ファン23は、上述したように空気(風)を吸込み口32から吹出し口33に向けて流す「順方向運転」と空気(風)を吹出し口33から吸込み口32に向けて流す「逆方向運転」との切り替えが可能である。順方向運転は、室内機11が通常運転(除菌運転、非除菌運転を含む)を行う際に実行される。逆方向運転は、例えば、室内機11内部のクリーニングを行う際に実行される。
【0024】
フィルタ24は、吸込み口32、または通風路31における吸込み口32の近傍に設けられる。フィルタ24は、熱交換器22の上流に位置する。フィルタ24は、筐体21の内部から吸込み口32を覆う。フィルタ24は、例えば、吸込み口32から吸い込まれた空気を濾過し、当該空気中の塵埃を捕捉する。
【0025】
図2は、第1実施形態の運転中の室内機11の構成を模式的に示す断面図である。二つの風向板25は、吹出し口33、または吹出し口33の近傍に設けられる。風向板25は、ファン23の下流に位置する。二つの風向板25は、例えば、下面21bに沿う略Y方向に並んで配置される。
【0026】
二つの風向板25はそれぞれ、図1に示す第1の閉じ位置Pc1と、図2に示す第1の開き位置Po1との間で移動可能である。なお、二つの風向板25は個別に、第1の閉じ位置Pc1と第1の開き位置Po1との間で移動することができる。
【0027】
図1に示すように、第1の閉じ位置Pc1に位置する風向板25は、吹出し口33の一部を覆う。二つの風向板25がともに第1の閉じ位置Pc1に位置する場合、二つの風向板25は吹出し口33のほぼ全域を覆う。
【0028】
図2に示すように、第1の開き位置Po1に位置する風向板25は、吹出し口33の一部を開放する。二つの風向板25がともに第1の開き位置Po1に位置する場合、二つの風向板25は吹出し口33のほぼ全域を開放する。
【0029】
第1の開き位置Po1は、風向板25が吹出し口33の一部を開放する種々の位置を含む。例えば、第1の開き位置Po1は、図2のように風向板25が略水平方向に向く位置と、風向板25が下方に向く位置と、これら二つの位置の間の複数の位置とを含む。すなわち、風向板25は、略水平方向に向く位置と、下方に向く位置との間で回動可能である。第1の開き位置Po1に位置する風向板25は、当該風向板25の向きにより、吹出し口33から放出された風の上下方向における向きを調整する。すなわち、図2のように風向板25が略水平方向に向くことで、室内機11は略水平方向に風を放出する。一方、風向板25が下方に向くことで、室内機11は下方向に風を放出する。
【0030】
風向板25は、例えば、合成樹脂により作られる。また、風向板25は、金属のような他の材料により作られてもよい。二つの風向板25はそれぞれ、軸部41と、板部42とを有する。
【0031】
軸部41は、X方向に延びる略円柱状に形成される。軸部41は、X方向に延びる回転軸Axlまわりに回転可能に筐体21に支持される。なお、複数の風向板25はそれぞれ、個別の回転軸Axlを有する。板部42は、軸部41から回転軸Axlと略直交する方向に突出する。板部42は、X方向に延びる略矩形の板状に形成される。軸部41が回転軸Axlまわりに回転することで、風向板25は第1の閉じ位置Pc1と第1の開き位置Po1との間で移動することができる。
【0032】
以下の記載において、二つの風向板25は、風向板25A,25Bと個別に称されることがある。言い換えると、二つの風向板25は、風向板25Aと風向板25Bとを含む。なお、風向板25A,25Bに共通する説明は、風向板25についての説明として記載される。
【0033】
風向板25Aは、Z方向において、吹出し口33の上方向の端部33aと、吹出し口33の下方向の端部33bとの間に位置する。風向板25Bは、吹出し口33の下方向の端部33bの近傍に位置する。風向板25Aは、風向板25Bよりも吹出し口33の上方向の端部33aに近い。風向板25Bは、風向板25Aよりも吹出し口33の下方向の端部33bに近い。
【0034】
第1の開き位置Po1に位置する風向板25A,25Bは、吹出し口33を二つの流路C1,C2に区画する。流路C1は、吹出し口33の一部であって、風向板25Aと吹出し口33の上方向の端部33aとの間に位置する。流路C2は、吹出し口33の一部であって、風向板25Aと吹出し口33の下方向の端部33bとの間に位置する。言い換えると、流路C2は、風向板25Aと風向板25Bとの間に位置する。
【0035】
風向板25Aは、第1の開き位置Po1において流路C1を開放し、第1の閉じ位置Pc1において流路C1を覆う。風向板25Bは、第1の開き位置Po1において流路C2を開放し、第1の閉じ位置Pc1において流路C2を覆う。
【0036】
二つの通風部材26は、吹出し口33、または吹出し口33の近傍に設けられる。通風部材26は、ファン23の下流に位置する。二つの通風部材26は、例えば、略Y方向に並んで配置される。
【0037】
二つの通風部材26はそれぞれ、図2に実線で示す第2の閉じ位置Pc2と、図2に二点鎖線で示す第2の開き位置Po2との間で移動可能である。言い換えると、通風部材26は第2の閉じ位置Pc2に配置可能である。なお、二つの通風部材26は個別に、第2の閉じ位置Pc2と第2の開き位置Po2との間で移動することができる。
【0038】
以下の記載において、二つの通風部材26は、通風部材26A,26Bと個別に称されることがある。言い換えると、二つの通風部材26は、通風部材26Aと通風部材26Bとを含む。なお、通風部材26A,26Bに共通する説明は、通風部材26についての説明として記載される。
【0039】
例えば、通風部材26Aは、吹出し口33の上方向の端部33aの近傍に位置する。通風部材26Bは、Z方向において、吹出し口33の上方向の端部33aと、吹出し口33の下方向の端部33bとの間に位置する。通風部材26Aは、通風部材26Bよりも吹出し口33の上方向の端部33aに近い。通風部材26Bは、通風部材26Aよりも吹出し口33の下方向の端部33bに近い。なお、通風部材26A,26Bの位置は、この例に限られない。
【0040】
第2の閉じ位置Pc2に位置する通風部材26は、第1の開き位置Po1に位置する風向板25によって開放された吹出し口33の一部を覆う。第1実施形態では、第2の閉じ位置Pc2に位置する通風部材26Aは、第1の開き位置Po1に位置する風向板25Aによって開放された流路C1を覆う。さらに、第2の閉じ位置Pc2に位置する通風部材26Bは、第1の開き位置Po1に位置する風向板25Bによって開放された流路C2を覆う。
【0041】
二つの通風部材26がともに第2の閉じ位置Pc2に位置する場合、二つの通風部材26は全ての流路C1,C2を覆う。なお、第2の閉じ位置Pc2に位置する二つの通風部材26は、吹出し口33を完全に塞ぐ必要はない。例えば、吹出し口33は、X方向において通風部材26に覆われずに室内に連通していてもよいし、風が通風部材26と風向板25との間の隙間を通行可能であってもよい。第1実施形態では、風の進行方向に見た場合に、流路C1,C2の大部分が通風部材26A,26Bに覆われていればよい。なお、通風部材26が吹出し口33を覆う態様は、この例に限られない。
【0042】
第2の開き位置Po2に位置する通風部材26は、第1の開き位置Po1に位置する風向板25によって開放された吹出し口33の一部を開放する。第1実施形態では、第2の開き位置Po2に位置する通風部材26Aは、第1の開き位置Po1に位置する風向板25Aによって開放された流路C1を開放する。さらに、第2の開き位置Po2に位置する通風部材26Bは、第1の開き位置Po1に位置する風向板25Bによって開放された流路C2を開放する。
【0043】
通風部材26は、例えば、合成樹脂により作られる。また、通風部材26は、金属のような他の材料により作られてもよい。二つの通風部材26はそれぞれ、軸部51と、板部52とを有する。
【0044】
軸部51は、X方向に延びる略円柱状に形成される。軸部51は、X方向に延びる回転軸Axcまわりに回転可能に筐体21に支持される。なお、複数の通風部材26はそれぞれ、個別の回転軸Axcを有する。板部52は、軸部51から回転軸Axcと略直交する方向に突出する。板部52は、X方向に延びる略矩形の板状に形成される。軸部51が回転軸Axcまわりに回転することで、通風部材26は第2の閉じ位置Pc2と第2の開き位置Po2との間で移動することができる。
【0045】
通風部材26の軸部51は、第1の開き位置Po1に位置する風向板25の板部42から上方向に離間している。第2の閉じ位置Pc2に位置する通風部材26の板部52は、軸部51から、風向板25の板部42に向かって延びている。
【0046】
第2の閉じ位置Pc2に位置する通風部材26の板部52の先端52aは、風向板25の板部42に当接し、または板部42の近傍に配置される。これにより、第2の閉じ位置Pc2に位置する通風部材26は、第1の開き位置Po1に位置する風向板25によって開放された吹出し口33の一部を覆う。先端52aは、軸部51の反対側に位置する板部52の端部である。
【0047】
X方向における板部52の長さは、X方向における吹出し口33の長さに略等しい。これにより、第2の閉じ位置Pc2に位置する通風部材26A,26Bは、流路C1,C2の大部分を覆うことができる。
【0048】
板部52が軸部51から突出する方向における板部52の長さは、Z方向における流路C1,C2のそれぞれの最大の長さよりも短い。これにより、通風部材26が、第2の閉じ位置Pc2と第2の開き位置Po2との間で移動するときに、風向板25に干渉することを抑制される。
【0049】
板部52は、内面52bと、外面52cとを有する。内面52bは、第2の閉じ位置Pc2において通風路31に向く。外面52cは、内面52bの反対側に位置する。外面52cは、第2の閉じ位置Pc2において室内機11の外部に向く。
【0050】
二つの通風部材26がともに第2の開き位置Po2に位置する場合、二つの通風部材26は、第1の開き位置Po1に位置する風向板25によって開放された吹出し口33のほぼ全域を開放する。なお、二つの通風部材26が第2の開き位置Po2に位置していても、風向板25が第1の閉じ位置Pc1に位置する場合、流路C1,C2は対応する風向板25に覆われる。
【0051】
図1に示すように、第2の開き位置Po2に位置する通風部材26Aは、吹出し口33の近傍に設けられた筐体21の窪み21cに収容される。窪み21cは、通風路31の一部を形成する筐体21の内面21dから窪んでいる。第2の開き位置Po2に位置する通風部材26Aは、窪み21cに収容されることで、通風路31を流れる風を妨げることを抑制される。
【0052】
通風部材26Bは、吹出し口33の近傍で、通風路31に設けられる。第2の開き位置Po2に位置する通風部材26Bの板部52は、通風路31における風の流れに沿う方向に延びている。これにより、第2の開き位置Po2に位置する通風部材26Bは、通風路31を流れる風を妨げることを抑制される。なお、第2の開き位置Po2に位置する通風部材26A,26Bの配置は、以上の例に限られない。
【0053】
なお、図示や詳細な説明を省略するが、室内機11は、吹出し口33から放出された風の左右方向における向きを調整する左右風向板をさらに有するものとする。左右風向板は、例えば、通風路31に設けられる。室内機11は、左右風向板が向く方向へ風を放出することができる。風向板25と左右風向板は、ファン23から出る風の向きを調節する風向調節部の例である。以下、風向板25と左右風向板を総称する場合、「風向板」と称する場合がある。
【0054】
図3は、第1実施形態の風向板25と通風部材26の一部を模式的に示す正面図である。図4は、第1実施形態の通風部材26の構成を模式的に示す断面図である。図3に示すように、通風部材26のそれぞれに、複数の第1の通風口55と複数の第2の通風口56とが設けられる。なお、通風部材26のそれぞれに、一つの第1の通風口55と一つの第2の通風口56とが設けられてもよい。
【0055】
図4に示すように、複数の第1の通風口55及び複数の第2の通風口56はそれぞれ、板部52を貫通する貫通孔である。このため、複数の第1の通風口55及び複数の第2の通風口56はそれぞれ、板部52の内面52b及び外面52cに開口する。
【0056】
複数の第1の通風口55と複数の第2の通風口56とは、配置方向Dpに交互に配置される。このため、第1の通風口55と第2の通風口56とは、配置方向Dpに並んで設けられる。配置方向Dpは、板部52の外面52cに沿う方向である。
【0057】
第1実施形態では、配置方向Dpは、板部52が軸部51から延びる方向に略等しい。また、通風部材26が第2の閉じ位置Pc2に位置する場合、配置方向DpはZ方向に略等しい。なお、配置方向Dpはこの例に限られず、X方向のような他の方向であってもよい。
【0058】
図3に示すように、第1の通風口55は、X方向に延びる例えば略矩形のスリットである。X方向は、板部52の外面52cに沿うとともに配置方向Dpと交差する方向である。なお、第1の通風口55は、円形、四角形、三角形、または他の形状の断面を有する孔であってもよい。複数の第1の通風口55は、配置方向Dpに並べられる。
【0059】
第2の通風口56は、円形の断面を有する孔である。なお、第2の通風口56は、四角形、三角形、または他の形状の断面を有する孔であってもよい。第1実施形態において、第1の通風口55及び第2の通風口56の断面は、第1の通風口55及び第2の通風口56が板部52を貫通する方向と直交する断面である。
【0060】
複数の第2の通風口56は、X方向に並べられる。言い換えると、複数の第2の通風口56は、X方向に互いに間隔を介して配置される。このため、複数の第2の通風口56は、X方向に並ぶ複数の第2の通風口56の列58を形成する。板部52において、複数の列58が配置方向Dpに並べられる。複数の第2の通風口56は、格子状に配置されてもよいし、千鳥状に配置されてもよい。
【0061】
第1実施形態において、スリット状の複数の第1の通風口55と、第2の通風口56の列58とが、配置方向Dpに交互に配置される。このため、複数の第1の通風口55と複数の第2の通風口56は、配置方向Dpに並ぶ第1の通風口55と第2の通風口56との列59を形成する。
【0062】
配置方向Dpに並ぶ第1の通風口55と第2の通風口56との列59における両端に、第1の通風口55が配置される。このため、配置方向Dpにおいて、複数の第2の通風口56は、複数の第1の通風口55のうち二つの間に位置する。なお、第1実施形態の第1の変形例の通風部材26においては、配置方向Dpに並ぶ第1の通風口55と第2の通風口56との列59における端に、第2の通風口56が配置されてもよい。この場合、配置方向Dpにおいて、複数の第1の通風口55は、複数の第2の通風口56のうち二つの間に位置する。
【0063】
図3に示すように、第2の通風口56のそれぞれの断面は、第1の通風口55のそれぞれの断面よりも小さい。また、複数の列58のそれぞれに含まれる複数の第2の通風口56の断面の合計は、複数の第1の通風口55のうち一つの断面よりも小さい。
【0064】
図4に示すように、複数の第1の通風口55はそれぞれ、拡大部61と、直部62とを有する。拡大部61及び直部62はそれぞれ、第1の通風口55の一部である。拡大部61と直部62とは、板部52の内面52bから外面52cへ向かう厚さ方向に連続する。
【0065】
拡大部61は、板部52の外面52cに開口するとともに、外面52cに近づくにしたがって断面が拡大する部分である。言い換えると、拡大部61は、外面52cから内面52bに向かうにしたがって断面が縮小する部分である。また、拡大部61は、外面52cに近づくに従って隣接する第2の通風口56に近づく。
【0066】
直部62は、内面52bに開口するとともに、拡大部61に接続される。直部62は、内面52bと拡大部61との間で断面の大きさが一定の部分である。直部62の断面の大きさは、拡大部61の最小の部分における断面の大きさに略等しい。
【0067】
拡大部61の最大の部分における直径は、例えば、3~5mmに設定される。さらに、拡大部61の最小の部分及び直部62の直径は、例えば、拡大部61の最大の部分における直径の50~90%に設定される。なお、第1の通風口55の大きさは、この例に限られない。
【0068】
複数の第2の通風口56もそれぞれ、拡大部65と、直部66とを有する。拡大部65及び直部66はそれぞれ、第2の通風口56の一部である。拡大部65と直部66とは、板部52の内面52bから外面52cへ向かう厚さ方向に連続する。
【0069】
拡大部65は、板部52の外面52cに開口するとともに、外面52cに近づくにしたがって断面が拡大する部分である。言い換えると、拡大部65は、外面52cから内面52bに向かうにしたがって断面が縮小する部分である。また、拡大部65は、外面52cに近づくに従って隣接する第1の通風口55に近づく。
【0070】
直部66は、内面52bに開口するとともに、拡大部65に接続される。直部66は、内面52bと拡大部65との間で断面の大きさが一定の部分である。直部66の断面の大きさは、拡大部65の最小の部分における断面の大きさに略等しい。
【0071】
なお、第1実施形態の別の変形例では、第1の通風口55は、直部62の代わりに縮小部を有してもよい。縮小部は、板部52の内面52bに開口するとともに、拡大部61に接続される。縮小部は、拡大部61に近づくにしたがって断面が縮小する部分である。また、第2の通風口56は、直部62の代わりに縮小部を有してもよい。縮小部は、板部52の内面52bに開口するとともに、拡大部65に接続される。縮小部は、拡大部65に近づくにしたがって断面が縮小する部分である。
【0072】
第1の通風口55及び第2の通風口56は、これらの例に限られない。例えば、第1の通風口55は、拡大部61、直部62、及び縮小部のうち一つを有してもよい。同様に、第2の通風口56は、拡大部65、直部66、及び縮小部のうち一つを有してもよい。
【0073】
図5は、第1実施形態の空気調和装置10の室内機11の機能構成を示すブロック図である。図5に示すように、室内機11は、制御装置80(制御部)と、第1の駆動回路81と、第2の駆動回路82と、第3の駆動回路83と、ファンモータ84と、二つの風向板モータ85,86と、二つの切替モータ87,88と、報知部90と、ドップラーレーダ91(レーダの一例)と、受信装置94と、を有する。なお、図示や詳細な説明を省略するが、室内機11は、左右風向板に対応する駆動回路や風向板モータも備えている。また、室内機11は、その他の構成を有していてもよい。
【0074】
制御装置80、第1の駆動回路81、第2の駆動回路82、第3の駆動回路83、ファンモータ84、風向板モータ85,86、切替モータ87,88、報知部90、ドップラーレーダ91、受信装置94は、筐体21に収容される。
【0075】
制御装置80は、例えば、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサと、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及びフラッシュメモリのような記憶装置とを備える。なお、制御装置80はこの例に限られない。
【0076】
プロセッサが記憶装置からプログラムを読み出して実行することにより、制御装置80は、空気調和装置10の動作を制御する。制御装置80は、例えば、第1の駆動回路81、第2の駆動回路82、第3の駆動回路83、報知部90及び受信装置94に接続される。また、制御装置80は、ドップラーレーダ91等の各種センサからの検出結果を受け付ける。
【0077】
第1の駆動回路81は、ファンモータ84の駆動回路である。ファンモータ84は、ファン23を回転軸Axfまわりに回転駆動させる。制御装置80は、第1の駆動回路81を制御することで、ファンモータ84及びファン23を順方向回転制御(吹出し口33から風を放出する制御)または逆方向制御を実行する。
【0078】
第2の駆動回路82は、二つの風向板モータ85,86の駆動回路である。風向板モータ85,86はそれぞれ、対応する風向板25を回転軸Axlまわりに回転駆動させる。第1実施形態では、風向板モータ85は、風向板25Aを当該風向板25Aの回転軸Axlまわりに回転駆動させる。風向板モータ86は、風向板25Bを当該風向板25Bの回転軸Axlまわりに回転駆動させる。制御装置80は、第2の駆動回路82を制御することで、風向板モータ85,86及び風向板25A,25Bを制御する。
【0079】
第3の駆動回路83は、二つの切替モータ87,88の駆動回路である。切替モータ87,88はそれぞれ、対応する通風部材26を回転軸Axcまわりに回転駆動させる。第1実施形態では、切替モータ87は、通風部材26Aを当該通風部材26Aの回転軸Axcまわりに回転駆動させる。切替モータ88は、通風部材26Bを当該通風部材26Bの回転軸Axcまわりに回転駆動させる。制御装置80は、第3の駆動回路83を制御することで、切替モータ87,88及び通風部材26A,26Bを制御する。
【0080】
また、制御装置80には、各種センサからの検出結果が逐次入力され、制御装置80は、入力された検出結果を各制御に反映させる。
【0081】
ドップラーレーダ91は、電磁波(光など)、超音波等を発射し、物体(生体等)で反射されて戻ってきた反射波を検出する。第1実施形態におけるドップラーレーダ91は、室内機11の筐体21の表面で室内を臨む位置に設けられ、室内機11が設置されている室内に存在する生体の位置(空気調和装置10からの方向、距離など)および生体に関する特徴を検出する。詳しくは、ドップラーレーダ91は、室内に存在する生体の位置および生体の特徴に関する情報を検出し、制御装置80は、この情報に基づいて生体の特徴を判定する。制御装置80は、生体に関する特徴として、例えば、室内に存在する生体ごとの種類と姿勢を判定する。第1実施形態の制御装置80は、生体の種類として、生体の大きさに基づく種別、例えば、大人、子供、人間以外の動物(例えば、犬、猫などのペット)などの種別のいずれに該当するかを判定する。なお、第1実施形態において、「大人」とは人間の大人を指し、「子供」とは人間の子供を指す。
【0082】
より詳しくは、第1実施形態におけるドップラーレーダ91は、例えばミリメートル波レーダで、周波数が30G~300GHz程度である。ドップラーレーダ91は、物体の大きさ、物体までの距離・角度・速度などを認識(検出)できる。例えば、ドップラーレーダ91は、生体を認識した場合、生体の高さによって、高いほうから順に、大人、子供、ペットを識別できる。その場合、例えば、110cm以下であれば子供、50cm程度であれば動物と識別するようにすればよいが、これに限定されない。例えば、生体の特定の部分(例えば、頭)の大きさや形状、その他、生体の動き等を検出して、大人、子供、ペット等を識別しても良い。なお、生体か否かの判別は、例えば、ドップラーレーダ91で検出した物体が動くか否かで判断することができる。その他、例えば、赤外線センサ等の種々のセンサを用いて生体の温度、動き、活動量、生体から発せられる音等を検出し、生体か否かを判別しても良い。
【0083】
また、ドップラーレーダ91は、生体の姿勢として、少なくとも、寝ているか否かを検出する。例えば、生体が、立っている状態か、寝ている状態か、うずくまっている状態かなどを検出するようにしてもよいが、これに限定されない。これらの姿勢は、例えば、生体の高さや形状、または、これらの変化を検出することで、判定できる。また、ドップラーレーダ91は、生体に関する特徴として、例えば、生体の運動量などを検出してもよい。ドップラーレーダ91は、検出結果を制御装置80に送信する。
【0084】
報知部90は、ランプや音声によって室内の各種状態等を報知する。
【0085】
受信装置94は、例えば、リモートコントローラ94a(リモコン)から赤外線などの電磁波による無線信号を受信する。受信装置94は、リモートコントローラ94aからの指示信号を制御装置80に送信する。
【0086】
リモートコントローラ94aは、空気調和装置10に対するユーザ操作に用いられる装置である。また、ユーザは、専用のアプリ(アプリケーションプログラム)をインストールした携帯端末(例えば、スマートフォン等)を用いて空気調和装置10に対する操作(予約のための操作、リアルタイム動作指示のための操作など)を行うこともできる。以下において、図6を用いてリモートコントローラ94aについて説明し、図7を用いて携帯端末について説明する。
【0087】
ここで、図6は、第1実施形態におけるリモートコントローラ94aの外観を模式的に示す図である。領域B1は、運転モード(冷房など)、現在の室温、風量、リモートコントローラ94aの電池残量、パワーセレクト切替などを表示する表示画面である。
【0088】
領域B2は、以下の各種ボタンが配置されている。まず、運転モードを指定するための、冷房ボタン、暖房ボタン、除湿ボタン、空清(空気清浄)ボタン、自動(室温を設定温度に近づける制御)ボタン、無風感(登録商標)ボタンである。なお、空清運転は、種々の方式を含んでおり、例えば、空気中のごみなどを取り除く運転に限らず、空気中にイオン等を放出する運転等も含む。また、無風感は、通風部材26を用いて緩やかな風流を実現するモードであり、他のモードと組み合わせて用いられる(例えば、冷房+無風感)。
【0089】
そのほかに、運転を停止させるための停止ボタンと、温度設定ボタンと、位置設定ボタンBと、が配置されている。位置設定ボタンBが押されると、ドップラーレーダ91がリモートコントローラ94aの位置を検出し、制御装置80はその位置を対象位置として設定(記憶)する。対象位置としては、例えば、室内機11(又はドップラーレーダ91)からの方向と距離で特定される。なお、対象位置としては、二次元空間(すなわち、平面)で特定しても良いし、高さ方向を含めた三次元空間で特定しても良い。
【0090】
具体的には、例えば、ドップラーレーダ91がリモートコントローラ94aを操作している人を検出し、制御装置80はその人の位置を対象位置として設定する。なお、直接、リモートコントローラ94aの位置を検出し、その位置を対象位置として設定しても良い。また、リモートコントローラ94aの領域B2には、自動風あてボタンと、自動風よけボタンが配置されている。そして、ユーザが自動風あてボタンを押せば対象位置に対する自動風あて制御(対象位置に向かう方向に風向を制御する風あて制御)が実行され、ユーザが自動風よけボタンを押せば対象位置に対する自動風よけ制御(対象位置を避けた方向に風向を制御する風よけ制御)が実行される。
【0091】
また、制御装置80は、対象位置として、複数の位置を設定するようにしてもよい。その場合、例えば、対象位置1については自動風あて制御、対象位置2については自動風よけ制御などと、対象位置ごとに自動風あて制御または自動風よけ制御を設定することができる。また、例えば、携帯端末において、対象位置ごとに「対象位置1はソファー」、「対象位置1は通路」などといった対象位置ごとの場所を示す情報を入力、表示するようしてもよい。
【0092】
領域B3は、カバーの裏に各種ボタンが配置されている。
【0093】
次に、図7は、第1実施形態におけるスマートフォン画面を模式的に示す図である。表示領域A1は、空気調和装置10における週単位のタイマ機能である「ウィークリータイマ」を表示する。
【0094】
表示領域A2は、日曜日から土曜日までを表示し、現在選択されている曜日(ここでは火曜日)を濃く表示する。
【0095】
表示領域A3は、表示領域A2で選択された曜日に関して、予約運転の「入」と「切」の時刻の選択を受け付けるように表示する。24時間表示のうち、濃い色の時間帯が予約運転の行われる時間帯である。
【0096】
表示領域A4は、運転予約の入力を受け付ける。ここでの運転モードは、冷房、暖房、除湿、空清、自動の5つである。また、温度設定と風量設定を行うための表示を備える。
【0097】
表示領域A6は、表示領域A4で選択した運転に対して無風感(登録商標)運転の追加を受け付ける。無風感は、通風部材26を用いて緩やかな風流を実現する運転モードである。
【0098】
表示領域A5は、風向設定の入力を受け付ける。風向設定は、手動風向設定と、自動風あてと、自動風よけの3つである。手動風向設定を選択すると、ユーザが風向(上下方向の風向と左右方向の風向)を設定する画面が表示される。
【0099】
自動風あてを選択すると、対象位置に対する自動風あて制御が設定される。なお、対象位置を複数設定している場合は、例えば、自動風あてを選択した後、設定されている複数の対象位置から自動風あて制御を行いたい一以上の対象位置を選択する。自動風あて制御では、風向板(風向板25A,25B及び左右風向板)を制御し、一以上の対象位置に対して風向が向くように調整する。なお、風向とは、風の向きを意味する。本明細書では、風向板が向く方向を制御するが、風向板が向く方向と吹出し口33から吹き出された直後の風の向き(風向)とは、おおむね一致する。すなわち、風向板は、その向きで風向を調整可能であり、制御装置80は、風向板の向きを制御することで、風向を制御可能である。なお、第1実施形態における複数の左右風向板は、それぞれ個別にその向きを制御することができる。これにより、吹出し口33全体から風向が一方向にそろえられた風を吹き出すこともできるし、吹出し口33のうち複数の風向板で区画される2以上の領域からそれぞれ風向が異なる2以上の風を吹き出すこともできる。
【0100】
ここで、図8は、第1実施形態における自動風あて制御例の説明図である。図8では、室内を上方から俯瞰した様子を模式的に示している(図9も同様)。図8(a)は、自動風あて制御を行わない場合を示す。この場合、風が対象位置Aに送られていない。
【0101】
一方、図8(b)は、自動風あて制御を行う場合を示す。この場合、風向板を制御することで、対象位置Aに対して風が送られるようにすることができる。すなわち、ドップラーレーダ91によって対象Aの位置を検出し、対象Aに対して風向が向くように風向板を制御する。なお、図8では水平方向の自動風あて制御について示したが、同様に、垂直方向の自動風あて制御を行うこともできる(図9も同様)。
【0102】
図7に戻って、自動風よけを選択すると、対象位置に対する自動風よけ制御が設定される。なお、対象位置を複数設定している場合は、例えば、自動風よけを選択した後、設定されている複数の対象位置から自動風よけ制御を行いたい一以上の対象位置を選択する。自動風よけ制御では、風向板(風向板25A,25B及び左右風向板)を制御し、選択対象を避けるように風向を調整する。
【0103】
ここで、図9は、第1実施形態における自動風よけ制御例の説明図である。図9(a)は、自動風よけ制御を行わない場合を示す。この場合、風が対象位置Bに送られている。
【0104】
一方、図9(b)は、自動風よけ制御を行う場合を示す。この場合、風向板を制御することで、対象位置Bに対して風が送られないようにすることができる。すなわち、ドップラーレーダ91によって対象Bの位置を検出し、対象Bを避ける方向に風向が向くように風向板を制御する。
【0105】
図5に戻って、制御装置80は、ユーザ操作(自動風あて制御と自動風よけ制御の選択操作)に基づいて、予約運転時に対象位置に対する風あて制御または風よけ制御を設定する風向設定を含むタイマ設定を行うタイマ設定部として機能する。
【0106】
図10は、第1実施形態の空気調和装置10による制御例を示すフローチャートである。ステップS1において、ドップラーレーダ91は、リモートコントローラ94aで位置設定ボタンBが押されたか否かを判定し、Yesの場合はステップS2に進み、Noの場合はステップS1に戻る。
【0107】
ステップS2において、制御装置80は、ドップラーレーダ91から、リモートコントローラ94aを操作している人の位置の情報を受信し、その人の位置を対象位置として設定する。
【0108】
次に、ステップS3において、制御装置80は、携帯端末を介して、運転予約を受け付ける(図7)。
【0109】
次に、ステップS4において、制御装置80は、携帯端末を介して、対象位置に関する風向設定を受け付ける(図7)。ここで、ユーザは、対象位置に対する自動風あて制御か自動風よけ制御を設定したものとする。
【0110】
次に、ステップS5において、制御装置80は、予約運転時に、タイマ設定(予約運転設定と風向設定)に基づいて。所定の運転モード(例えば、冷房、暖房など)で風向調節を制御する(対象位置に対する自動風あて制御または自動風よけ制御を実行する)(図8図9)。
【0111】
このように、第1実施形態の空気調和装置10によれば、ドップラーレーダ91による検出結果に基づいてリモートコントローラ94aで位置設定ボタンBが押されたときのリモートコントローラ94aの位置を対象位置として設定し、所定モードでの空調運転時に、ユーザ操作による設定に基づいて対象位置に対する自動風あて制御または自動風よけ制御を実行する。これにより、ユーザの希望する風向を簡易に実現することができる。
【0112】
また、例えばリアルタイムでドップラーレーダ91で検出した生体(人、ペット等)に対して自動風あて制御や自動風よけ制御を実行する場合に比べて、設定した対象位置に対して自動風あて制御や自動風よけ制御を実行すればよいので、ドップラーレーダ91や制御装置80での処理が軽く済む。
【0113】
また、タイマ機能での空調運転時に対象位置に対する自動風あて制御または自動風よけ制御を実行することで、日時や温湿度の状況も考慮した好適な制御を実現できる。
【0114】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。第1実施形態と同様の事項については、説明を適宜省略する。図11図13は、空気調和装置10(室内機11)の第2実施形態の構造を示す例示的かつ模式的な図である。
【0115】
図11に示す空気調和装置10(室内機11)の構成は、基本的には、図2に示す第1実施形態の構成と同じであるが、通風部材26の形状及び通風部材26が2つある流路C1,C2のうち流路C1側のみに配置されている点が異なる。したがって、図2の構成と図11の構成で、実質的に同じ構成には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0116】
第2実施形態における空気調和装置10(室内機11)の流路C1に配置される通風部材26は、図12に示すように、複数の第2の通風口56のみが配列された部品である。第2の通風口56のみが配置された通風部材26を通風部材26Cと称する。つまり、通風部材26Cには、通風部材26Aや通風部材26Bに存在した第1の通風口55が存在しない。通風部材26Cは、通風部材26Aや通風部材26Bと同様に、軸部51によって支持され、第3の駆動回路83によって切替モータが制御され、第2の閉じ位置Pc2と第2の開き位置Po2との間で移動可能である。そして、第2の閉じ位置Pc2の位置に移動した場合に、図13に示すように、ファン23によって通風路31内を移動する風は第2の通風口56を通り、第2の風W2aに変化する。したがって、通風部材26Cでは、第1の風W1(層流)は成されない。
【0117】
一方、流路C2を形成する吹出し口33には、通風部材26Cが設けられない。つまり、流路C2から放出される風は、通風部材26C(第2の通風口56)を通過しない第1の風W1a(層流)となる。その結果、流路C1に設けられた通風部材26C(第2の通風口56)を通過する風(第2の風W2a)と通風部材26C(第2の通風口56)が設けられない流路C2を通過した風(第1の風W1a)が隣接して形成さることになる。この場合、第1実施形態で示した通風部材26A(通風部材26B)で説明したように、第2の風W2aは、流速が早いため、第1の風W1aを引き込む。これにより、第1の風W1aが第2の風W2aに当たる。また、乱流に遷移した第2の風W2aは拡散することで、当該第2の風W2aに隣接して流れる第1の風W1aに当たる。このように、流速や状態(層流または乱流)が異なる第1の風W1a及び第2の風W2aは、隣り合って流れることで、互いに当たる。すなわち、通風部材26C(第2の通風口56)を通過しない第1の風W1aと、通風部材26C(第2の通風口56)を通過した第2の風W2aとが互いに干渉する。
【0118】
第1の風W1aと第2の風W2aとが互いに当たることで、例えば、第1の風W1a及び第2の風W2aの塊が砕かれ、乱流である第2の風W2aが第1の風W1aに運ばれる。第1の風W1a及び第2の風W2aは、このような種々の相互作用を生じて、広範囲に拡散する乱流Wsを発生させる。その結果、第2実施形態における空気調和装置10(室内機11)から放出される乱流Wsは、第1実施形態の空気調和装置10(室内機11)と同様に、吹出し口33から放出された直後の風よりも自然の風(いわゆる、無風感の風)に近い状態になる。この場合、通風部材26Cは、二つの流路C1,C2のいずれか一方にのみ形成すればよいので、部品点数の削減、空気調和装置10(室内機11)の構成の簡略化、コスト軽減に寄与することができる。また、通風部材26Cは、第2の通風口56のみを備えるシンプルな構造になり、コストの軽減や通風部材26Cの強度向上等に寄与することができる。
【0119】
このような図11図13に示すような空気調和装置10を用いて、第1実施形態の場合と同様、ユーザの希望する風向を簡易に実現することができる。
【0120】
以上説明された第1実施形態、第2実施形態に係る空気調和装置10において、通風部材26は、第1の開き位置Po1に位置する風向板25によって開放された吹出し口33の少なくとも一部を覆う第2の閉じ位置Pc2に配置可能である。そして、第2の閉じ位置Pc2において、ファン23により送られてくる風が第2の通風口56を通って外部に放出される第1の吹出流路と、第2の通風口56を通らずに第1の吹出流路に隣接して外部に放出される第2の吹出流路を形成できる。上述したように、第2の通風口56を通過する風と第2の通風口56を通過しない風の流速が互いに異なる。流速の異なる風が並んでいるため、第1の風と第2の風とは、流速差及び乱流への遷移しやすさの差のような種々の要因により、空気調和装置10の外部で互いに当たり、広範囲に拡散する乱流Wsを発生させる。乱流Wsは、第2の通風口56を通過せずに吹出し口33から放出される風よりも自然の風(無風感の風)に近い。従って、本実施形態の空気調和装置10は、利用者に当たる風をより自然の風に近くし、利用者の不快感を低減することが可能となる。
【0121】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0122】
例えば、自動風あて制御を行う場合に、「人を検知しました」、「人に風をあてます」といった音声を報知部90から出力するようにしてもよい。
【0123】
また、室内に複数の人がいて、リモートコントローラ94aの位置設定ボタンBが押されたときに、ドップラーレーダ91がリモートコントローラ94aを操作している人を特定できない場合は、報知部90によって「複数の人がいて位置設定できません」というエラーメッセージを報知するようにしてもよい。
【0124】
また、ユーザが室内の四隅でリモートコントローラ94aの位置設定ボタンBを押すことで、制御装置80がその部屋の形状や大きさを認識し、その認識情報を風量決定時などに使用してもよい。
【0125】
また、自動風あて制御を行っている場合に、ドップラーレーダ91によって室内に生体がいなくなったことを検出したり、制御開始から所定時間(例えば30分)が経過したり、所定時刻になったり、冷房の場合に室温が所定温度まで低下したりした場合に、自動風あて制御を解除(終了)してもよい。
【0126】
また、風向設定は、自動風あて、または、自動風よけの少なくとも一方が設定できればよい。例えば、表示領域A5に自動風あてのみ表示され、風向設定として自動風あて制御のみ設定できるようにしても良い。または、表示領域A5に自動風よけのみ表示され、風向設定として自動風よけ制御のみ設定できるようにしても良い。
【0127】
また、自動風よけ制御として無風感運転を用いてもよい。この場合、対象を避ける方向に風向が向く風向板制御に代えて、無風感運転を実行しても良いし、対象を避ける方向に風向が向く風向板制御と合わせて無風感運転を実行しても良い。
【0128】
また、運転予約の時間幅は、週単位に限定されず、月単位、季節単位、年単位などの別の単位であってもよい。
【0129】
また、空気調和装置10の予約運転設定は、空気調和装置10内の記憶装置で記憶してもよいし、あるいは、携帯端末で空気調和装置10に関する操作を行う場合に通信するサーバなどの外部の記憶装置に記憶してもよい。
【0130】
また、ドップラーレーダ91のほかに、別の生体検出センサ(例えば生体から発する赤外線を検出するセンサ)を併用してもよい。
【0131】
また、上述した第1実施形態、第2実施形態では、例えば住宅用の空気調和装置10を想定して説明したが、各種空気調和装置についても同様に本実施形態の構成が適用可能である。例えば、業務用の空気調和装置や車両や航空機、船舶等設けられる空気調和装置についても本実施形態の構成が適用可能であり、同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0132】
10…空気調和装置、11…室内機、21…筐体、22…熱交換器、23…ファン、25,25A,25B…風向板、26,26A,26B…通風部材、31…通風路、32…吸込み口、33…吹出し口、55…第1の通風口、56…第2の通風口、80…制御装置、90…報知部、91…ドップラーレーダ、94…受信装置、94a…リモートコントローラ。
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