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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】電動自転車
(51)【国際特許分類】
   B62M 6/65 20100101AFI20241218BHJP
   B62J 23/00 20060101ALI20241218BHJP
   B62K 19/30 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
B62M6/65
B62J23/00 F
B62K19/30
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021206630
(22)【出願日】2021-12-21
(65)【公開番号】P2023091825
(43)【公開日】2023-07-03
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000112978
【氏名又は名称】ブリヂストンサイクル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【弁理士】
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【弁理士】
【氏名又は名称】大田黒 隆
(72)【発明者】
【氏名】加茂 裕史
【審査官】三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-142631(JP,A)
【文献】特開2011-189765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 6/55
B62M 6/80
B62K 19/30
B62J 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪のハブまたは後輪のハブの内部にハブモータを有し、前記ハブモータが回り止め部材を介してフレームに固定されている電動自転車において、
前記ハブモータに電力を供給するための配線が、前記回り止め部材と前記フレームとを固定する固定部材と、前記配線を覆う配線カバーと、の間で、前記配線カバーにより前記固定部材に押圧されて挟持されてなる構造を有することを特徴とする電動自転車。
【請求項2】
前記配線カバーの内面側であって前記固定部材の近傍に突出部が設けられている請求項1の電動自転車。
【請求項3】
前記配線が、前記固定部材の近傍で結束部材にて束ねられている請求項1または2記載の電動自転車。
【請求項4】
前輪のハブの内部にハブモータを有する請求項1~3のうちいずれか一項記載の電動自転車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動自転車に関し、詳しくは、ハブ内に備えられたハブモータに電力を供給するための配線を、容易に固定することができる配線固定機構を備えた電動自転車に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、ペダルからの人の踏力による主駆動力をトルクセンサ等のトルク測定手段にて検出し、この主駆動力に応じた補助駆動力をハブモータにより発生させ、主駆動力に補助駆動力を加えることで、運転者がペダルを踏む力を軽減させる電動自転車が知られている。このような電動自転車としては、ハブモータで後輪を回転させる後輪アシストタイプと、ハブモータで前輪を回転させる前輪アシストタイプのものが知られている。このような電動自転車には、バッテリからハブモータに電力を供給するための配線が必要になる。
【0003】
例えば、特許文献1で提案されている電動自転車では、配線を固定バンドでブラケットに固定している。また、特許文献2で提案されている電動自転車では、固定板に固定部材が設けられており、この固定部材にケーブルをくの字に曲げて固定している。さらに、特許文献3では、ハーネスカバーに挟持リブを設け、固定金具により支持板部に固定された電線のシールド部の固定部分を挟持させることでハーネスを固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-179877号
【文献】特開2013-082272号
【文献】特開2011-189765号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1で開示されている配線の固定方法では、固定バンドでフロントフォークに配線を固定しなければならないため、作業性の面で改善の余地があると考えられる。また、特許文献2で開示されている配線の固定方法では、ケーブルをくの字に曲げて固定部材にケーブルを嵌め込む必要があるため、作業性の面でやはり難があると考えられる。さらに、特許文献3で開示されている配線の固定方法では、ハーネスカバーを取り付ける際には電線が見えなくなってしまうため、ハーネスを挟持リブに嵌め込むのが困難であると考えられる。
【0006】
そこで、本発明の目的は、ハブ内に備えられたハブモータに電力を供給するための配線を、容易に固定することができる配線固定機構を備えた電動自転車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解消するために鋭意検討した結果、配線をカバーする配線カバーと、回り止め部材をフレームに固定する固定部材とに着目することで、上記課題を解消することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の電動自転車は、前輪のハブまたは後輪のハブの内部にハブモータを有し、前記ハブモータが回り止め部材を介してフレームに固定されている電動自転車において、
前記ハブモータに電力を供給するための配線が、前記回り止め部材と前記フレームとを固定する固定部材と、前記配線を覆う配線カバーと、の間で、前記配線カバーにより前記固定部材に押圧されて挟持されてなる構造を有することを特徴とするものである。
【0009】
本発明の電動自転車においては、前記配線カバーの内面側であって前記固定部材の近傍に突出部が設けられていることが好ましい。また、本発明の電動自転車においては、前記配線が、前記固定部材の近傍で結束部材にて束ねられていることが好ましい。さらに、本発明の電動自転車においては、前輪のハブの内部にハブモータを有することが好ましい。すなわち、本発明に係る配線固定機構は、前輪駆動の電動自転車に好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ハブ内に備えられたハブモータに電力を供給するための配線を、容易に固定することができる配線固定機構を備えた電動自転車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一好適な実施の形態に係る電動自転車の概略側面図である。
図2】本発明の一好適な実施の形態に係る電動自転車の配線カバー装着時におけるフロントハブ近傍の概略斜視図である。
図3】本発明の一好適な実施の形態に係る電動自転車の配線カバー未装着時におけるフロントハブ近傍の概略背面斜視図である。
図4】本発明の一好適な実施の形態に係る配線カバーの内部構造を示す概略説明図である。
図5】本発明の他の好適な実施の形態に係る配線カバーを装着した状態における配線カバー内部の状態を説明する概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の電動自転車について、図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の一好適な実施の形態に係る電動自転車の概略側面図である。図示する電動自転車1は、前端部に配置されるヘッドチューブ2と、ヘッドチューブ2から後下方に傾斜して延びるダウンチューブ3と、ダウンチューブ3の後部に結合されたシートチューブ4およびチェーンステイ5と、を備えている。ヘッドチューブ2は、ダウンチューブ3の前端部に前下方に傾斜して配置されている。また、ヘッドチューブ2には、ハンドルステム6が回動可能に保持されており、ハンドルステム6の上端部にはハンドル7が一体に結合されている。さらに、ヘッドチューブ2の下方には、左右一対のフロントフォーク8が結合されている。一対のフロントフォーク8は前下方に傾斜して延び、これらの下端部に前輪9が回転自在に支持されており、チェーンステイ5の後端部には、後輪10が回転自在に支持されている。
【0013】
本発明の電動自転車1は、前輪9のハブまたは後輪10のハブの内部にアシスト用のハブモータ11を備えている。図2は本発明の一好適な実施の形態に係る電動自転車の配線カバー装着時におけるフロントハブ近傍の概略斜視図であり、図3は、本発明の一好適な実施の形態に係る電動自転車の配線カバー未装着時におけるフロントハブ近傍の概略背面斜視図であり、配線の位置がわかるように簡略化してある。
【0014】
図示する本発明の一好適な実施の形態の電動自転車1は、前輪9のハブにモータが内蔵されてハブモータ11を構成しており、このハブモータ11は、前輪9と一体に回転する回転部11aと、自転車のフレーム(図示する例においては、フロントフォーク8)に支持される固定部11bを有しており、ハブモータ11の左右から突出した軸部がフロントフォーク8の先端部にロックナット12により締結固定されている。そして、ハブモータ11は、ハブモータ11で前輪9を回転させる際に生じる反力による回転を防止するために、回り止め部材13を介してフロントフォーク8に固定されている。
【0015】
また、図示するように、本発明の電動自転車1は、電力を供給するバッテリ14はシートチューブ4の後方に、取り外し自在に取り付けられている。このバッテリ14からハブモータ11に電力を供給するための配線15を有しており、この配線15は、コネクタを介してハブモータ11に連結されており、フロントフォーク8の下方において配線カバー16に覆われている。図示例においては、配線15は、フレームに沿ってシートチューブ4の後方に配置されたバッテリ14に接続されている。なお、配線とは、単一の配線のみを意味するのではなく、複数本の配線が束ねられて構成されたハーネスも含まれる。
【0016】
ここで、バッテリ14からハブモータ11に電力を供給する配線15に引っ張る力が加わると、配線15とハブモータ11とを繋ぐコネクタが外れてしまうおそれがある。そのため、この引っ張る力に耐えられるように配線15を固定しておく必要がある。そこで、本発明の電動自転車1においては、この配線を、回り止め部材13をフレームに固定するための固定部材13aと、配線15を覆う配線カバー16と、の間で挟持している。固定部材としては、図示例においては、回り止め部材13とフロントフォーク8とをボルト13aで固定しており、ボルト13aの軸方向において、このボルト13aの頭部と配線カバー16の内面との間で配線15が挟持されている。このような構造とすることで、配線カバー16を取り付けると同時に配線15を固定することができる。なお、固定部材13aとしては、具体的には例えば、ネジや、ボルト単独、ボルトとナットとの組合せ、リベットやピンと止め輪との組合せ等が挙げられる。
【0017】
本発明の電動自転車1は、このような簡易な方法で配線15を固定しているために、フレームを特殊な構造に加工する必要や、特殊な部材を用いる必要がなく、また、配線15を固定するために所定の位置に配線を嵌め込む等の作業を省くことができるため、配線カバー16の取付作業の作業性が向上する。さらに、配線カバー16を取り付ける際、配線15は見えなくなってしまうが、このような構成とすれば、作業者には配線15が見えなくても、配線カバー16の取り付け前に配線15がボルト13aの頭部に位置していることを確認すればよいため、配線カバー16の取付作業の作業性のさらなる向上が見込まれる。なお、ボルト13aの軸方向から見て、配線カバー16の内側壁面と回り止め部材13とフレームとを固定する固定部材13a(図示例ではボルト13a)との距離は、配線15の径よりも小さくてもよい。かかる構成とすることで、自転車走行中に配線15が固定部材13aからズレることをより確実に防止することができる。また、配線カバー16を装着する際にも配線15のズレをより確実に防止することができる。
【0018】
図4は、本発明の一好適な実施の形態に係る配線カバーの内部構造を示す概略説明図であり、図5は、本発明の他の好適な実施の形態に係る配線カバーを装着した状態における配線カバー内部の状態を説明する概略説明図である。本発明の電動自転車1においては、配線カバー16の内面側に突出部16a(図示例においては、リブ16a)が設けられていることが好ましい。突出部の一実施形態であるリブ16aは、ボルト13aから配線15の延在方向にずれた位置(ボルト13aと平面視で重ならない位置)(図5参照)にて配線カバー16の上面から垂下するように一体的に形成される押圧部16Aと、押圧部16Aから連続して形成されて配線15を嵌め込む略U字の嵌合部16B(後述)と、を有している。そして、押圧部16Aは、配線カバー16が取り付けられた際に配線15におけるボルト13aの頭部と接する側に対してボルト13aの軸方向で反対側から接し、配線15をボルト13aの軸方向に押圧している。このように、配線カバー16内にリブ16aを設けることで、図3に示すように、配線15が配線カバー16内で蛇行することになる。その結果、自転車走行中に配線15を引っ張る力が加わっても、配線カバー16内での配線15の引き抜きに対する抵抗が大きくなる。そのため、自転車走行中に配線15が抜けてしまうような事態をより確実に防止することができる。
【0019】
図4に示す例においては、配線カバー16内に設けられたリブ16aは、固定部材13a(ボルト13a)よりも配線15の入り口側の1カ所であるが、本発明の電動自転車1は、このような構造に限定されるものではない。配線カバー16内部に設ける突出部としてのリブは、複数個であってもよく、例えば、図5に示すように、さらに固定部材13a(ボルト13a)の両隣りにリブ16a、16bを設けて2カ所としてもよい。また、図示するように、リブ16a、16bには配線15を嵌合させるための略U字状の嵌合部16Bを設けてもよい。この嵌合部16Bに配線15を嵌合させることで、配線15の横方向への移動が規制され、配線15が固定部材13aからズレることをより確実に防止することができる。なお、リブ16aには嵌合部16Bは必ずしも設ける必要はない。なお、図面に基づいて、突出部がリブ16a、bである実施形態を説明したが、配線カバー16と別体の部品でもよく、また配線カバー16の内側から突出していればよく、配線15の延在方向における幅についても制限はない。
【0020】
また、本発明の電動自転車1においては、回り止め部材13とフレーム(図示例ではフロントフォーク8)とを固定する固定部材13aの近傍で、配線15が結束部材17にて束ねられていることが好ましい。このように、配線15を回り止め部材13に結束部材17で固定することで、配線のばらけを防止することができるため、配線カバー16の取り付け作業が容易になるとともに、配線15に引き抜きの力が加わったとしても、この結束部材17がリブ16a、bに引っかかることになり、配線15の引き抜けを効果的に防止することができる。なお、結束部材17としては、例えば、熱収縮チューブ、粘着テープや結束バンドを挙げることができる。
【0021】
さらに、本発明の電動自転車1においては、図示するように、前輪9のハブの内部にハブモータ11を有することが好ましい。すなわち、本発明に係る配線固定機構は、前輪駆動の電動自転車に好適に採用することができる。本発明の電動自転車1は、前輪駆動のものであっても後輪駆動のものであっても適用することは可能である。しかしながら、前述したとおり、ハブモータ11に電力を供給する配線15に外部から引っ張る力が働くと、配線15とハブモータ11とを繋ぐコネクタが外れてしまうおそれがある。この配線15を引っ張る力は、ハンドル7を左右に切る際に生じるものである場合が多い。このような観点を考慮すると、本発明の電動自転車1は、図示するような前輪駆動の電動自転車1に好適に適用することができる。
【0022】
本発明の電動自転車1は、バッテリ14からハブモータ11に電力を供給するための配線15を、ハブモータ11の回転を防止する回り止め部材13をフレームに固定するための固定部材13aと、配線15を覆う配線カバー16と、の間で挟持していることのみが重要であり、それ以外の構造については、既知の構造を採用することができる。例えば、図示する自転車1においては、電動システムの電源のオン/オフ、各種情報の表示、前照灯18の点消灯等を行う操作パネル19が、ハンドル7に取り付けられている。
【0023】
本発明の電動自転車1について、ここまで、前輪9にハブモータ11を備えた電動自転車1を例に挙げて説明してきたが、後輪10にハブモータを備えた電動自転車であってもよい。また、図示する本発明の一好適な実施の形態に係る電動自転車1は、前輪9と後輪10を各一輪ずつ備えた電動自転車であるが、前一輪後二輪、若しくは、前二輪後一輪の三つ車輪を備えた三輪車や、四輪以上の車輪を備えた電動自転車であってもよい。
【0024】
また、本発明の電動自転車1においては、配線カバー16の大きさについて、特に制限はなく、配線カバー16と、回り止め部材13をフレームに固定する固定部材13aと、により配線15を挟持できる範囲内であれば、適宜設計・変更することができる。また、配線カバー16の材質についても制限はなく、既知の材料を用いることができるが、軽量性や製造コスト等を総合的に判断すると、樹脂製であることが好ましい。さらに、回り止め部材13、配線15、およびハブについても特に制限はなく、従来から用いられているものを用いることができる。
【0025】
さらに、本発明の電動自転車1においては、図示してはいないが、荷台20、チャイルドシート(図示せず)、バスケット21等を備えていてもよい。この場合も、荷台20、チャイルドシート、バスケット21については特に制限はなく、既知のものを用いることができる。チャイルドシートについては、フロント用のチャイルドシートであっても、リア用のチャイルドシートであっても、いずれでも採用することができる。また、荷台20やバスケット21の形状についても、特に制限はない。
【符号の説明】
【0026】
1 電動自転車
2 ヘッドチューブ
3 ダウンチューブ
4 シートチューブ
5 チェーンステイ
6 ハンドルステム
7 ハンドル
8 フロントフォーク
9 前輪
10 後輪
11 ハブモータ
11a 回転部
11b 固定部
12 ロックナット
13 回り止め部材
13a 固定部材(ボルト)
14 バッテリ
15 配線
16 配線カバー
16a、16b リブ
16A 押圧部
16B 嵌合部
17 結束部材
18 前照灯
19 操作パネル
20 荷台
21 バスケット
図1
図2
図3
図4
図5