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特許7606464光切断リンカーの光切断効率向上方法、光切断リンカー結合磁性粒子、並びに、対象物質を測定する測定方法及びこれに用いるためのキット
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  • 特許-光切断リンカーの光切断効率向上方法、光切断リンカー結合磁性粒子、並びに、対象物質を測定する測定方法及びこれに用いるためのキット 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】光切断リンカーの光切断効率向上方法、光切断リンカー結合磁性粒子、並びに、対象物質を測定する測定方法及びこれに用いるためのキット
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20241218BHJP
【FI】
G01N33/543 541A
G01N33/543 525E
G01N33/543 511F
G01N33/543 515F
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021549063
(86)(22)【出願日】2020-09-25
(86)【国際出願番号】 JP2020036360
(87)【国際公開番号】W WO2021060496
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】P 2019175277
(32)【優先日】2019-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306008724
【氏名又は名称】富士レビオ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】弁理士法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡 朗弘
【審査官】倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/079761(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0038597(KR,A)
【文献】SUCHOLEIKI Irving et al.,Novel magnetic supports for small molecule affinity capture of proteins for use in proteomics,Molecular Diversity,2004年,Vol.8,pp.9-19
【文献】ZHOU Guangchang et al.,Photocleavable Peptide-Conjugated Magnetic Beads for Protein Kinase Assays by MALDI-TOF MS,Bioconjugate Chemistry,2010年09月22日,Vol.21,pp.1917-1924
【文献】HANAYA Kengo et al.,DESIGN AND SYNTHESIS OF PHOTOCLEAVABLE BIOTINYLATED-DOPAMINE WITH POLYETHYLENEOXY PHOTOCLEAVABLE LINKERS,HETEROCYCLES,2011年03月01日,Vol.82, No.2,pp.1601-1615
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/543,
H01F 1/00,
C12Q 1/00,
C12P 1/00,
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性粒子及び光切断リンカーを備える光切断リンカー結合磁性粒子において、
前記磁性粒子と前記光切断リンカーとの間にスペーサーを挿入する、
光切断リンカーの光切断効率向上方法であり、
前記スペーサーが、ポリエチレングリコールからなるものであるか、ポリエチレングリコール及びアビジン類からなるものであるか、又は、デキストランからなるものであり、ここで、ポリエチレングリコールの重量平均分子量は1K~6Kであり、デキストランの質量は5K~75KDaである、
方法
【請求項2】
前記光切断リンカーは溶液中で光切断される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
磁性粒子及び光切断リンカーを備える光切断リンカー結合磁性粒子であり、
前記磁性粒子と前記光切断リンカーとの間にスペーサーを備え、かつ、
前記光切断リンカーの前記スペーサーとは反対側の端にプローブ分子を備え
前記スペーサーが、ポリエチレングリコールからなるものであるか、ポリエチレングリコール及びアビジン類からなるものであるか、又は、デキストランからなるものであり、ここで、ポリエチレングリコールの重量平均分子量は1K~6Kであり、デキストランの質量は5K~75KDaである、
光切断リンカー結合磁性粒子。
【請求項4】
前記プローブ分子が、ポリヌクレオチド及びポリペプチドからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項に記載の光切断リンカー結合磁性粒子。
【請求項5】
試料中の対象物質を測定する測定方法であり、
請求項3又は4に記載の光切断リンカー結合磁性粒子であり、かつ、前記プローブ分子が前記対象物質に特異的に結合可能な分子である光切断リンカー結合磁性粒子と、前記試料と、を接触させ、前記光切断リンカー結合磁性粒子に前記対象物質を捕捉させる捕捉工程と、
前記光切断リンカーを光切断して、前記磁性粒子から、前記対象物質と前記プローブ分子とを含む複合体を遊離させて調製試料を得る遊離工程と、
前記調製試料中の前記複合体を検出することで前記対象物質を測定する測定工程と、
を含む、測定方法。
【請求項6】
前記対象物質に特異的に結合可能な検出用分子が標識物質で標識化された標識化検出用分子に前記対象物質を捕捉させる標識化工程をさらに含み、前記複合体が、前記対象物質と前記プローブ分子と前記標識化検出用分子とを含む複合体であり、かつ、前記複合体の検出が、前記標識物質による検出である、請求項に記載の測定方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の試料中の対象物質を測定する測定方法に用いるためのキットであり、
請求項3又は4に記載の光切断リンカー結合磁性粒子であり、かつ、前記プローブ分子が前記対象物質に特異的に結合可能な分子である光切断リンカー結合磁性粒子
を含む、キット。
【請求項8】
前記対象物質に特異的に結合可能な検出用分子が標識物質で標識化された標識化検出用分子をさらに含む、請求項に記載のキット。
【請求項9】
試料中の対象物質を測定する測定方法であり、
請求項3又は4に記載の光切断リンカー結合磁性粒子であり、かつ、前記プローブ分子が前記対象物質及び前記対象物質の競合物質に特異的に結合可能な分子である光切断リンカー結合磁性粒子と、前記試料と、前記競合物質と、を接触させ、前記対象物質と前記競合物質とを競合させて、前記光切断リンカー結合磁性粒子に前記競合物質を捕捉させる捕捉工程と、
前記光切断リンカーを光切断して、前記磁性粒子から、前記競合物質と前記プローブ分子とを含む複合体を遊離させて調製試料を得る遊離工程と、
前記調製試料中の前記複合体を検出することで前記対象物質を測定する測定工程と、
を含む、測定方法。
【請求項10】
前記競合物質が、標識物質で標識化された標識化競合物質であり、かつ、前記複合体の検出が、前記標識物質による検出である、請求項に記載の測定方法。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の試料中の対象物質を測定する測定方法に用いるためのキットであり、
請求項3又は4に記載の光切断リンカー結合磁性粒子であり、かつ、前記プローブ分子が前記対象物質及び前記対象物質の競合物質に特異的に結合可能な分子である光切断リンカー結合磁性粒子
を含む、キット。
【請求項12】
前記対象物質の競合物質が標識物質で標識化された標識化競合物質をさらに含む、請求項11に記載のキット。
【請求項13】
試料中の対象物質を測定する測定方法であり、
請求項3又は4に記載の光切断リンカー結合磁性粒子であり、かつ、前記プローブ分子が前記対象物質の競合物質である光切断リンカー結合磁性粒子と、前記試料と、前記対象物質及び前記競合物質に特異的に結合可能な検出用分子と、を接触させ、前記検出用分子に前記対象物質と前記プローブ分子とを競合させて、前記光切断リンカー結合磁性粒子に前記検出用分子を捕捉させる捕捉工程と、
前記光切断リンカーを光切断して、前記磁性粒子から、前記検出用分子と前記プローブ分子とを含む複合体を遊離させて調製試料を得る遊離工程と、
前記調製試料中の前記複合体を検出することで前記対象物質を測定する測定工程と、
を含む、測定方法。
【請求項14】
前記検出用分子が、標識物質で標識化された標識化検出用分子であり、かつ、前記複合体の検出が、前記標識物質による検出である、請求項13に記載の測定方法。
【請求項15】
請求項13又は14に記載の試料中の対象物質を測定する測定方法に用いるためのキットであり、
請求項3又は4に記載の光切断リンカー結合磁性粒子であり、かつ、前記プローブ分子が前記対象物質の競合物質である光切断リンカー結合磁性粒子
を含む、キット。
【請求項16】
前記対象物質及び前記競合物質に特異的に結合可能な検出用分子が標識物質で標識化された標識化検出用分子をさらに含む、請求項15に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光切断リンカーの光切断効率向上方法、光切断リンカー結合磁性粒子、並びに、前記光切断リンカー結合磁性粒子を用いて対象物質を測定する測定方法及びこれに用いるためのキットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、試料中に含まれる生体分子等の有無を検出したり、定量したりする測定方法としては、サンドイッチ法、競合法、及び免疫比濁法等の免疫学的測定方法や、これらの原理に準じた測定方法が知られている。前記サンドイッチ法としては、例えば、前記生体分子等の対象物質に特異的に結合可能なプローブ分子をプレートや粒子等の固相に固定化し、これによって前記対象物質を捕捉して検出することで測定する方法が挙げられる。また、前記競合法としては、例えば、前記固相に固定化したプローブ分子に、前記対象物質と該対象物質の競合物質とを競合させて、前記競合物質を捕捉して検出したり、或いは、前記競合物質を前記固相に固定化し、前記対象物質と前記競合物質とを競合させて、検出用のプローブ分子を前記競合物質で捕捉して検出したりすることで、間接的に前記対象物質を測定する方法が挙げられる。
【0003】
前記対象物質や競合物質の検出は、例えば、酵素や発光物質等の標識物質の検出を介して行うことが知られており、さらに、例えば、国際公開第2005/075997号(特許文献1)には、前記固相に固定化したプローブ分子として、被検物質に特異的に結合する物質をスペーサーを介して磁気ビーズに結合してなる標識化特異的結合物質を用い、磁気シグナルの検出を介して前記被検物質(対象物質)の検出を行うことが記載されている。
【0004】
また、前記固相と前記プローブ分子や競合物質との結合には、捕捉した検出対象に与えるダメージを抑制して容易に回収(再遊離)可能なことから、光切断リンカーを用いることが知られている。前記光切断リンカーは、試料中から生体分子等を回収したり、目的物質を特異的に遊離する方法において主に用いられており、例えば、Bioconjug Chem.2010 October 20;21(10):1917-1924(非特許文献1)には、プロテインキナーゼの評価を行うことを目的として、スペーサー、光切断リンカー、及び基質ペプチドが結合した磁気ビーズを用い、反応後の基質ペプチドを光切断リンカーの切断によって遊離し、これをMALDI-TOF MSを用いて測定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2005/075997号
【非特許文献】
【0006】
【文献】Bioconjug Chem.2010 October 20;21(10):1917-1924
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記プローブ分子や競合物質等を固定化する固相としては、マイクロウェルプレート、メンブレン、粒子等を用いることができる。特に、反応効率の観点から粒子を用いることが好ましい。一方、近年、上記の免疫学的測定方法等における標識物質の検出においては、反応効率、測定感度、測定時間の短縮等の利点から、ガラスやプラスチックの基板上に設けられた微細な流路(マイクロチャネル)を利用したマイクロ化学分析法を利用することが検討されている。しかしながら、このようなマイクロ化学分析法を利用するためには、マイクロウェルプレート、メンブレン等から検出対象を分離する必要がある。また、上記粒子についても、その粒径は捕捉した検出対象(対象物質、競合物質等)や、検出のための標識物質に比較してサイズが大きいため、マイクロ化学分析法にそのまま供することは困難であり、かかる粒子と検出対象とを分離する必要がある。
【0008】
前記粒子としては、自動化・短時間化の観点から、磁性粒子を用いることがより好ましい。そこで、本発明者らは、捕捉された検出対象に与えるダメージを抑制しつつ磁性粒子から容易に分離することを目的として、磁性粒子とプローブ分子との結合に前記光切断リンカーを用いることについて検討を行った。しかしながら、磁性粒子に光切断リンカーを組み合わせると、他の粒子やプレートを用いた場合に比較して光切断効率が著しく低下してしまい、また、低下した光切断効率を上げるために光の照射量や時間を多くすると、検出対象によっては光や熱によって変性・分解等を起こしてしまうため、測定精度が低下してしまうという問題が新たに生じることを本発明者らは見い出した。
【0009】
本発明は、上記の本発明者らが新たに見い出した課題に鑑みてなされたものであり、磁性粒子及び光切断リンカーを備える光切断リンカー結合磁性粒子において、前記光切断リンカーの光切断効率を向上させる方法、光切断効率に優れた光切断リンカー結合磁性粒子、並びに、これらを用いて対象物質を測定する測定方法及びこれに用いるためのキットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、本発明者らは、磁性粒子及び光切断リンカーを備える光切断リンカー結合磁性粒子において、前記磁性粒子と前記光切断リンカーとの間にスペーサーを挿入することにより、前記光切断リンカーの光切断効率を著しく向上させることができることを見い出した。また、前記光切断リンカーに検出対象を捕捉可能なプローブ分子を結合させて上記の免疫学的測定方法等に用いることにより、該検出対象に与えるダメージを抑制しつつ、容易にこれを回収(再遊離)できるため、マイクロ化学分析法等を用いた分析等にも適用可能となることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
かかる知見により得られた本発明の態様は次のとおりである。
[1] 磁性粒子及び光切断リンカーを備える光切断リンカー結合磁性粒子において、
前記磁性粒子と前記光切断リンカーとの間にスペーサーを挿入する、
光切断リンカーの光切断効率向上方法。
[2] 前記光切断リンカーは溶液中で光切断される、[1]に記載の方法。
[3] 前記スペーサーの挿入により前記磁性粒子と前記光切断リンカーとの間の距離を4~170nmにする、[1]又は[2]に記載の方法。
[4] 前記スペーサーが、タンパク質、ポリエチレングリコール、及びデキストランからなる群から選択される少なくとも1種である、[1]~[3]のうちのいずれかに記載の方法。
[5] 磁性粒子及び光切断リンカーを備える光切断リンカー結合磁性粒子であり、
前記磁性粒子と前記光切断リンカーとの間にスペーサーを備え、かつ、
前記光切断リンカーの前記スペーサーとは反対側の端にプローブ分子を備える、
光切断リンカー結合磁性粒子。
[6] 前記磁性粒子と前記光切断リンカーとの間の距離が4~170nmである、[5]に記載の光切断リンカー結合磁性粒子。
[7] 前記スペーサーが、タンパク質、ポリエチレングリコール、及びデキストランからなる群から選択される少なくとも1種である、[5]又は[6]に記載の光切断リンカー結合磁性粒子。
[8] 前記プローブ分子が、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、及び低分子化合物からなる群から選択される少なくとも1種である、[5]~[7]のうちのいずれか一項に記載の光切断リンカー結合磁性粒子。
[9] 試料中の対象物質を測定する測定方法であり、
[5]~[8]のうちのいずれか一項に記載の光切断リンカー結合磁性粒子であり、かつ、前記プローブ分子が前記対象物質に特異的に結合可能な分子である光切断リンカー結合磁性粒子と、前記試料と、を接触させ、前記光切断リンカー結合磁性粒子に前記対象物質を捕捉させる捕捉工程と、
前記光切断リンカーを光切断して、前記磁性粒子から、前記対象物質と前記プローブ分子とを含む複合体を遊離させて調製試料を得る遊離工程と、
前記調製試料中の前記複合体を検出することで前記対象物質を測定する測定工程と、
を含む、測定方法。
[10] 前記対象物質に特異的に結合可能な検出用分子が標識物質で標識化された標識化検出用分子に前記対象物質を捕捉させる標識化工程をさらに含み、前記複合体が、前記対象物質と前記プローブ分子と前記標識化検出用分子とを含む複合体であり、かつ、前記複合体の検出が、前記標識物質による検出である、[9]に記載の測定方法。
[11] [9]又は[10]に記載の試料中の対象物質を測定する測定方法に用いるためのキットであり、
[5]~[8]のうちのいずれか一項に記載の光切断リンカー結合磁性粒子であり、かつ、前記プローブ分子が前記対象物質に特異的に結合可能な分子である光切断リンカー結合磁性粒子
を含む、キット。
[12] 前記対象物質に特異的に結合可能な検出用分子が標識物質で標識化された標識化検出用分子をさらに含む、[11]に記載のキット。
[13] 試料中の対象物質を測定する測定方法であり、
[5]~[8]のうちのいずれか一項に記載の光切断リンカー結合磁性粒子であり、かつ、前記プローブ分子が前記対象物質及び前記対象物質の競合物質に特異的に結合可能な分子である光切断リンカー結合磁性粒子と、前記試料と、前記競合物質と、を接触させ、前記対象物質と前記競合物質とを競合させて、前記光切断リンカー結合磁性粒子に前記競合物質を捕捉させる捕捉工程と、
前記光切断リンカーを光切断して、前記磁性粒子から、前記競合物質と前記プローブ分子とを含む複合体を遊離させて調製試料を得る遊離工程と、
前記調製試料中の前記複合体を検出することで前記対象物質を測定する測定工程と、
を含む、測定方法。
[14] 前記競合物質が、標識物質で標識化された標識化競合物質であり、かつ、前記複合体の検出が、前記標識物質による検出である、[13]に記載の測定方法。
[15] [13]又は[14]に記載の試料中の対象物質を測定する測定方法に用いるためのキットであり、
[5]~[8]のうちのいずれか一項に記載の光切断リンカー結合磁性粒子であり、かつ、前記プローブ分子が前記対象物質及び前記対象物質の競合物質に特異的に結合可能な分子である光切断リンカー結合磁性粒子
を含む、キット。
[16] 前記対象物質の競合物質が標識物質で標識化された標識化競合物質をさらに含む、[15]に記載のキット。
[17] 試料中の対象物質を測定する測定方法であり、
[5]~[8]のうちのいずれか一項に記載の光切断リンカー結合磁性粒子であり、かつ、前記プローブ分子が前記対象物質の競合物質である光切断リンカー結合磁性粒子と、前記試料と、前記対象物質及び前記競合物質に特異的に結合可能な検出用分子と、を接触させ、前記検出用分子に前記対象物質と前記プローブ分子とを競合させて、前記光切断リンカー結合磁性粒子に前記検出用分子を捕捉させる捕捉工程と、
前記光切断リンカーを光切断して、前記磁性粒子から、前記検出用分子と前記プローブ分子とを含む複合体を遊離させて調製試料を得る遊離工程と、
前記調製試料中の前記複合体を検出することで前記対象物質を測定する測定工程と、
を含む、測定方法。
[18] 前記検出用分子が、標識物質で標識化された標識化検出用分子であり、かつ、前記複合体の検出が、前記標識物質による検出である、[17]に記載の測定方法。
[19] [17]又は[18]に記載の試料中の対象物質を測定する測定方法に用いるためのキットであり、
[5]~[8]のうちのいずれか一項に記載の光切断リンカー結合磁性粒子であり、かつ、前記プローブ分子が前記対象物質の競合物質である光切断リンカー結合磁性粒子
を含む、キット。
[20] 前記対象物質及び前記競合物質に特異的に結合可能な検出用分子が標識物質で標識化された標識化検出用分子をさらに含む、[19]に記載のキット。
【0012】
なお、本発明の構成によって上記目的が達成される理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、磁性粒子に光切断リンカーを組み合わせると、当該磁性粒子における光の吸収率が高いため、前記光切断リンカーに光を照射してこれを切断する際に、照射した光が磁性粒子に吸収されて光切断リンカーに到達する光量が少なくなってしまう。そのため、光切断リンカーの切断が阻害され、その光切断効率が低下するものと本発明者らは推察する。これに対して、本発明においては、前記磁性粒子と前記光切断リンカーとの間にスペーサーを挿入することにより、前記磁性粒子と前記光切断リンカーとの間の距離が維持されるため、磁性粒子による光切断リンカーの近傍での光の吸収が抑制されて光切断リンカーに到達する光量を十分に確保することができ、優れた光切断効率が達成されるものと本発明者らは推察する。
【0013】
また、磁性粒子に捕捉された検出対象が光や熱に分解されやすい物質であっても、光切断効率が向上したことによって光量や熱を過剰に与える必要がなくなるため、当該検出対象に与えるダメージを十分に抑制することができる。そのため、本発明の光切断リンカー結合磁性粒子を用いて対象物質を測定する測定方法によれば、測定精度を向上させることも可能となる。さらに、磁性粒子による自動化・短時間化の利点を享受しつつ、光によって容易に前記磁性粒子と検出対象とを分離することができるため、マイクロ化学分析法や国際公開第2018/079761号に記載されているような測定方法等、より高精度の測定手段を利用することが容易に可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、磁性粒子及び光切断リンカーを備える光切断リンカー結合磁性粒子において、前記光切断リンカーの光切断効率を向上させる方法、光切断効率に優れた光切断リンカー結合磁性粒子、並びに、これらを用いて対象物質を測定する測定方法及びこれに用いるためのキットを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の対象物質測定方法の第1の態様の一例を示す概略図である。
図2】本発明の対象物質測定方法の第2の態様の一例を示す概略図である。
図3】本発明の対象物質測定方法の第3の態様の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0017】
<光切断リンカーの光切断効率向上方法>
本発明の光切断リンカーの光切断効率向上方法(以下、場合により単に「光切断効率向上方法」という)は、磁性粒子及び光切断リンカーを備える光切断リンカー結合磁性粒子において、前記磁性粒子と前記光切断リンカーとの間にスペーサーを挿入することを特徴とする。
【0018】
本発明において、「光切断リンカー結合磁性粒子」とは、少なくとも磁性粒子及び光切断リンカーを備えるものを示す。
【0019】
〔磁性粒子〕
本発明において、「磁性粒子」とは、少なくとも磁性体を含み、少なくとも外部から磁石を作用させている間は磁化する粒子のことを示す。前記磁性体としては、例えば、鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性金属(例えば、スピネルフェライト、酸化コバルト、ニッケルフェライト)やそれらのうちの少なくとも1種を含む合金が挙げられ、これらのうちの1種を単独であっても2種以上の組み合わせであってもよい。本発明に係る磁性粒子としては、前記磁性体を単独で粒子状に成形したものであっても、前記磁性体を核としてその表面を非磁性体で被覆したものであっても、前記非磁性体を核として前記磁性体で被覆したものであってもよい。
【0020】
前記非磁性体としては、特に制限されないが、例えば、高分子ポリマー(例えば、ポリスチレン、(メタ)アクリル酸エステル、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ナイロン)、ゼラチン、セルロース、ニトロセルロース、ガラス、ラテックス、シリカ、非磁性金属(例えば、金、白金)が挙げられ、これらのうちの1種を単独であっても2種以上の組み合わせであってもよい。
【0021】
また、本発明に係る磁性粒子としては、例えば、カルボキシ基、エポキシ基、トシル基、アミノ基、ヒドロキシ基、イソチオシアネート基、イソシアネート基、アジド基、アルデヒド基、カーボネート基、アリル基、アミノオキシ基、マレイミド基、チオール基、NHSエステル(N-ヒドロキシエステル)基、ピリジルジスルフィド基等のうちの少なくとも1種の活性基で表面修飾されたもの、又は前記活性基と下記のスペーサーとの結合残基を有するものであってもよい。また、ビオチン等による修飾がなされたものであってもよい。
【0022】
本発明に係る磁性粒子の粒子径としては、0.1~10μmの範囲内にあることが好ましく、0.5~8μmの範囲内にあることがより好ましい。前記磁性粒子の粒子径が前記下限未満であると、集磁に必要な磁気及び時間がより多く必要となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、粒子の比表面積が小さくなり、下記のプローブ分子を固定化し、標識物質を用いて対象物質を測定する場合に、標識物質の磁性粒子への結合量が少なくなる傾向にある。
【0023】
このような磁性粒子としては、従来公知のものを適宜用いることができ、例えば、特開平3-115862号公報に記載の磁性粒子(フェライト被覆粒子、カルボキシル化フェライト粒子);ダイナビーズ(サーモフィッシャー社製);Magnosphere(JSR株式会社製);マグラピッド(三洋化成工業株式会社製)等の市販の磁性粒子を適宜用いることもできる。また、本発明に係る磁性粒子としては、これらのうちの1種を単独であっても2種以上の組み合わせであってもよい。
【0024】
〔光切断リンカー〕
本発明において、「光切断リンカー」とは、光照射によって分解される構造(光切断ユニット)を含む化合物を示す。前記光切断ユニットとしては、例えば、3-amino-3-(2-nitrophenyl)propionic acid(ANP)、クマリンが挙げられる。本発明に係る光切断リンカーとしては、前記光切断ユニットに加えて、アルキル鎖、エチレングリコール鎖等の構造を有するものであってもよい。また、例えば、カルボキシ基、エポキシ基、トシル基、アミノ基、ヒドロキシ基、イソチオシアネート基、イソシアネート基、アジド基、アルデヒド基、カーボネート基、アリル基、アミノオキシ基、マレイミド基、チオール基、NHSエステル(N-ヒドロキシエステル)基、ピリジルジスルフィド基等のうちの少なくとも1種の活性基を付加されたもの、又は前記活性基と下記のスペーサー及び/又はプローブ分子との結合残基を有するものであってもよい。また、ビオチン等による修飾がなされたものであってもよい。
【0025】
このような光切断リンカーとしては、従来公知のものを適宜用いることができ、例えば、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)-光切断リンカー(PC)-ビオチン(商品名:PC-Biotin-NHS、Ambergen社製)、Fmoc-aminoethyl photolinker(Novabiochem社製)、PC DBCO-PEG4-NHS ester(BroadPharm社製)、PC Mal-NHS carbonate ester(BroadPharm社製など)等の市販の光切断リンカーを適宜用いることもできる。また、本発明に係る光切断リンカーとしては、これらのうちの1種を単独であっても2種以上の組み合わせであってもよい。
【0026】
〔スペーサー〕
本発明において、「スペーサー」とは、前記磁性粒子と前記光切断リンカーとの間に挿入することができ、その長さ及び/又は分子量若しくは1分子あたりの質量に基づく大きさによって前記磁性粒子と前記光切断リンカーとの間の距離を維持することができるものであればよい。本発明に係るスペーサーを構成する分子としては、タンパク質、ポリエチレングリコール、及びデキストランからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0027】
本発明に係るスペーサーを構成するタンパク質としては、例えば、アビジンD、ストレプトアビジン等のアビジン類;アルブミン、カゼイン、コラーゲンが挙げられ、これらのうちの1種を単独であっても2種以上の組み合わせであってもよい。これらの中でも、前記タンパク質としては、前記磁性粒子と前記光切断リンカーとの間の距離をより好適な範囲内に維持することができ、光切断効率の向上効果により優れる観点から、アビジン類であることが好ましく、ストレプトアビジンであることがより好ましい。
【0028】
本発明に係るスペーサーを構成するポリエチレングリコールとしては、前記磁性粒子と前記光切断リンカーとの間の距離をより好適な範囲内に維持することができ、光切断効率の向上効果により優れる観点から、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて、標準ポリマーとしてポリメタクリル酸メチルを用いることで測定される重量平均分子量(Mw)が、0.5K~21Kであることが好ましく、0.8K~20Kであることがより好ましく、0.8K~10Kであることがさらに好ましく、0.8K~8Kであることがさらにより好ましく、1K~6Kであることが特に好ましい。ポリエチレングリコールの前記重量平均分子量が前記下限未満であると、前記磁性粒子と前記光切断リンカーとの間の距離が短くなってスペーサーによる光切断効率の向上効果が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、下記のプローブ分子を固定化し、標識物質を用いて対象物質を測定する場合に、標識物質の磁性粒子への結合量が少なくなる傾向にある。
【0029】
本発明に係るスペーサーを構成するデキストランとしては、光切断効率の向上効果により優れるという観点から、1分子あたりの質量が、5K~75KDaであることが好ましく、10K~70KDaであることがより好ましく、20K~70KDaであることがさらに好ましい。デキストランの前記質量が前記下限未満であると、スペーサーによる光切断効率の向上効果が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、下記のプローブ分子を固定化し、標識物質を用いて対象物質を測定する場合に、標識物質の磁性粒子への結合量が少なくなる傾向にある。
【0030】
また、本発明に係るスペーサーとしては、例えば、カルボキシ基、エポキシ基、トシル基、アミノ基、ヒドロキシ基、イソチオシアネート基、イソシアネート基、アジド基、アルデヒド基、カーボネート基、アリル基、アミノオキシ基、マレイミド基、チオール基、NHSエステル(N-ヒドロキシエステル)基、ピリジルジスルフィド基等のうちの少なくとも1種の活性基が付加されたもの、又は前記活性基と前記磁性粒子及び/又は光切断リンカーとの結合残基を有するものであってもよい。また、ビオチン等による修飾がなされたものであってもよい。
【0031】
本発明に係るスペーサーとしては、前記タンパク質、前記ポリエチレングリコール、及び前記デキストランのうちの1種からなるものであっても、2種以上からなるものであってもよい。これらの中でも、本発明に係るスペーサーとしては、前記ポリエチレングリコールからなるものであるか、前記ポリエチレングリコール及びアビジン類(より好ましくはストレプトアビジン)からなるものであるか、又は、デキストランからなるものであることが好ましく、前記ポリエチレングリコールからなるものであるか、又は、前記ポリエチレングリコール及びアビジン類(より好ましくはストレプトアビジン)からなるものであることがより好ましい。
【0032】
(光切断効率向上方法)
本発明の光切断効率向上方法では、前記光切断リンカー結合磁性粒子において、前記磁性粒子と前記光切断リンカーとの間に前記スペーサーを挿入する。
【0033】
前記スペーサーの挿入としては、前記スペーサーの挿入後の前記磁性粒子と前記光切断リンカーとの間の距離が、磁性粒子表面から垂直方向の光切断リンカーの前記磁性粒子側の末端までの水溶液中における最長距離で、4~170nmの範囲内とすることが好ましく、5~160nmの範囲内とすることがより好ましく、6~80nmの範囲内とすることがさらに好ましく、6~50nmの範囲内とすることがさらにより好ましい。前記磁性粒子と前記光切断リンカーとの間の距離が前記下限未満であると、光切断効率の向上効果が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、下記のプローブ分子を固定化し、標識物質を用いて対象物質を測定する場合に、標識物質の磁性粒子への結合量が少なくなる傾向にある。このような最長距離は、スペーサーを構成する分子が水溶液中でとりうる構造の最長径を示し、例えば、当該スペーサーを構成する分子の分子量及び構造から公知技術により算出することができる。
【0034】
また、前記スペーサーの挿入としては、当該スペーサーが前記タンパク質及び/又はポリエチレングリコールからなる場合、前記磁性粒子と前記光切断リンカーとの間の距離をより好適な範囲内に維持することができ、光切断効率の向上効果に優れるという観点から、前記タンパク質が前記アビジン類(より好ましくはストレプトアビジン)であることが好ましく、前記磁性粒子と前記光切断リンカーとが、少なくとも1分子(より好ましくは1分子)の前記アビジン類からなるスペーサーとの結合を介して結合されることが好ましい。また、同様の観点から、この場合、当該ポリエチレングリコールが、重量平均分子量(Mw)0.5K~21Kであることが好ましく、0.8K~20Kであることがより好ましく、0.8K~10Kであることがさらに好ましく、0.8K~8Kであることがさらにより好ましく、1~6Kであることが特に好ましい。さらに、この場合、前記磁性粒子と前記光切断リンカーとが、少なくとも1分子(より好ましくは1分子)のポリエチレングリコールからなるスペーサーとの結合を介して結合されることが好ましい。或いは、前記磁性粒子と前記光切断リンカーとが、少なくとも1分子(より好ましくは1分子)の前記アビジン類及び少なくとも1分子(より好ましくは1分子)のポリエチレングリコールからなるスペーサーとの結合を介して結合されることが好ましい。ただし、前記タンパク質及び/又はポリエチレングリコール1分子に対して、前記光切断リンカーは2以上の複数が結合していてよい。
【0035】
また、前記スペーサーの挿入としては、当該スペーサーがデキストランからなる場合、光切断効率の向上効果により優れるという観点から、当該デキストランが、1分子あたりの質量で5K~75KDaであることが好ましく、10K~70KDaであることがより好ましく、20K~70KDaであることがさらに好ましい。さらに、前記磁性粒子と前記光切断リンカーとが、少なくとも1分子(より好ましくは1分子)のデキストランからなるスペーサーとの結合を介して結合されることが好ましい。ただし、デキストラン1分子に対して、前記光切断リンカーは2以上の複数が結合していてよい。
【0036】
本発明の光切断効率向上方法において、前記磁性粒子と前記光切断リンカーとの間に前記スペーサーを挿入する方法としては、特に制限されず、適宜公知の方法を採用することができる。このような方法としては、例えば、前記磁性粒子に、前記スペーサー及び前記光切断リンカーを、この順となるように結合する(固定する)方法が挙げられ、かかる結合方法としては、特に制限されず、適宜従来公知の方法又はそれに準じた方法を採用することができる。このとき、磁性粒子-スペーサー間、スペーサー-光切断リンカー間の各結合は、それぞれ独立に、直接的であっても間接的であってもよい(以下、仮に、「-」の前者を「被結合物」、後者を「結合物」という)。
【0037】
前記磁性粒子、前記スペーサー、及び前記光切断リンカーをそれぞれ直接的に結合する方法としては、例えば、上記の被結合物及び結合物のうちの少なくともいずれかを構成する成分に、例えば、カルボキシ基、エポキシ基、トシル基、アミノ基、ヒドロキシ基、イソチオシアネート基、イソシアネート基、アジド基、アルデヒド基、カーボネート基、アリル基、アミノオキシ基、マレイミド基、チオール基、NHSエステル(N-ヒドロキシエステル)基、ピリジルジスルフィド基等のうちの少なくとも1種の活性基を付与し、或いは、前記成分としてこれらの活性基を有するものを用い、当該活性基による共有結合によって被結合物と結合物とを結合する方法が挙げられる。
【0038】
前記活性基を付与した成分としては、それぞれ、市販のものをそのまま用いてもよいし、適切な反応条件で前記活性基を導入して調製してもよい。一例として、チオール基の導入は、例えば、S-アセチルメルカプト無水コハク酸やN-スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート、2-イミノチオラン等の市販の試薬を用いて行うことができ、アミノ基へのマレイミド基の導入は、例えば、N-(6-マレイミドカプロイロキシ)スクシンイミドやN-(4-マレイミドブチリロキシ)スクシンイミド等の市販の試薬を用いて行うことができる。また、ピリジルジスルフィド基の導入は、例えば、N-{6-[3-(2-Pyridyldithio)propionamido]hexanoyloxy}sulfosuccinimide、sodium salt(Sulfo-AC5-SPDP)等の市販の試薬を用いて行うことができる。
【0039】
前記磁性粒子、前記スペーサー、及び前記光切断リンカーをそれぞれ間接的に結合する方法としては、例えば、上記の被結合物及び結合物のうちの一方を構成する成分に何らかの修飾を行い、その修飾部分を捕捉する物質を他方に固定化して、かかる捕捉を介して結合させてもよい。例えば、前記修飾部分の代表例としてはビオチンが、その修飾部分を捕捉する物質の代表例としてはストレプトアビジンが、それぞれ挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
これらの結合に供する上記の被結合物及び結合物の比率は、例えば、下記の光切断リンカー結合磁性粒子における比率の好ましい範囲を達成するように適宜選択することができる。
【0041】
本発明の光切断効率向上方法においては、前記磁性粒子、前記スペーサー、及び前記光切断リンカーを一度に結合させても、これらを別々に順次結合させてもよいが、操作のしやすさ、並びに、各部の量の制御のしやすさ等の観点からは、別々に順次結合させることが好ましい。さらに、一部の被結合物及び結合物を予め結合させておいてからこれらを組み合わせて結合させることも好ましい。また、このような予め結合された被結合物及び結合物としては、例えば、SA結合ダイナビーズ(商品名:Dynabeads M-280 Streptavidin、サーモフィッシャー社製)、磁性ストレプトアビジンビーズ(商品名:Magnosphere MS300/Streptavidin、JSR社製)等の市販の結合体を適宜用いてもよい。
【0042】
このような本発明の光切断効率向上方法により、前記磁性粒子に前記スペーサーを介さずに前記光切断リンカーを結合させた場合に比較して、光切断リンカーの光切断効率、より好ましくは、溶液中(さらに好ましくは水溶液中)において切断される光切断リンカーの光切断効率(好ましくは、次式:光切断効率(切断率、%)={切断された光切断リンカー/(切断された光切断リンカー+切断されなかった光切断リンカー)}×100で示される)を、十分に向上させることができる。より具体的には、前記磁性粒子に前記スペーサーを介さずに前記光切断リンカーを結合させた場合に比較して約6~30倍以上、前記光切断効率を向上させることが可能となる。
【0043】
<光切断リンカー結合磁性粒子>
本発明の光切断リンカー結合磁性粒子は、前記光切断リンカー結合磁性粒子のうち、
前記磁性粒子と前記光切断リンカーとの間に前記スペーサーを備え、かつ、
前記光切断リンカーの前記スペーサーとは反対側の端に前記プローブ分子を備える、
ものである。すなわち、本発明の光切断リンカー結合磁性粒子は、磁性粒子、スペーサー、光切断リンカー、及びプローブ分子が、この順で結合されてなるものである。好ましくは、前記磁性粒子を核として、その表面に、前記スペーサーからなる層、前記光切断リンカーからなる層、及び前記プローブ分子からなる層が、この順で積層された形態を有するものである。
【0044】
〔プローブ分子〕
本発明において、「プローブ分子」とは、光切断リンカー結合磁性粒子で捕捉する対象(本明細書中、場合により「検出対象」という)に特異的に結合可能な分子のことを示す。前記検出対象としては、例えば、下記の対象物質を測定する測定方法に記載の対象物質、競合物質、及び検出用分子が挙げられる。
【0045】
本発明に係るプローブ分子としては、特に制限されないが、例えば、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、低分子化合物、及びこれらのうちの2種以上の分子を含む複合分子、並びに、これらと同一又は類似の構造を有する分子が挙げられる。
【0046】
本発明において、「ポリヌクレオチド」とは、2以上のヌクレオチドからなるものを示し、本発明に係るポリヌクレオチドには、DNA、RNA、及びこれらの断片が含まれる。
【0047】
本発明において、「ポリペプチド」とは、2以上のアミノ酸からなるものを示し、本発明に係るポリペプチドには、遺伝子にコードされる完全長のポリペプチドの他、その断片や合成したポリペプチドも含まれる。また、前記ポリペプチドには、糖鎖によって修飾された糖ペプチドも含む。前記プローブ分子としてのポリペプチドとしては、例えば、抗体;抗原ペプチド;プロテインA、プロテインG、プロテインL等の結合タンパク質;アビジンD、ストレプトアビジン等のアビジン類;コンカナバリンA、レンチルレクチン、インゲンマメレクチン等の各種レクチン;レクチン結合性糖鎖を有する糖ペプチド(レクチン結合性糖ペプチド);及びレセプタータンパク質、輸送タンパク質、転写調節因子が挙げられる。また、前記ポリペプチドの由来としては特に制限されず、哺乳動物、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、植物、昆虫、微生物、又はウイルス等のいずれの由来であってもよい。
【0048】
前記抗体としては、ポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であってもよい。また、本発明において、「抗体」には、完全抗体の他、抗体断片(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv、単鎖抗体、ダイアボディー等)や抗体の可変領域を結合させた低分子化抗体も含まれる。これらの中でも、光切断リンカーの光切断効率がより向上する傾向にある観点からは、抗体断片であることがより好ましい。
【0049】
本発明に係るプローブ分子としての低分子化合物としては、例えば、ビタミン、補酵素、ホルモン、毒素、抗生物質、抗菌薬剤、抗ウイルス薬剤、抗がん剤、発がん性物質、麻薬、向精神薬、免疫抑制剤が挙げられる。
【0050】
また、本発明において、上記のポリヌクレオチド、ポリペプチド、低分子化合物、複合分子と「同一又は類似の構造を有する分子」とは、前記ポリヌクレオチド、前記ポリペプチド、前記低分子化合物、又は前記複合分子と同様に、前記検出対象に対して結合可能な物質のことを示し、より具体的には、前記ポリヌクレオチド、前記ポリペプチド、前記低分子化合物、又は前記複合分子に対して抗原抗体反応を行う場合に、これと交差反応を生じる物質が挙げられる。
【0051】
また、本発明に係るプローブ分子としては、例えば、カルボキシ基、エポキシ基、トシル基、アミノ基、ヒドロキシ基、イソチオシアネート基、イソシアネート基、アジド基、アルデヒド基、カーボネート基、アリル基、アミノオキシ基、マレイミド基、チオール基、NHSエステル(N-ヒドロキシエステル)基、ピリジルジスルフィド基等のうちの少なくとも1種の活性基が付加されたもの、又は前記活性基と前記光切断リンカーとの結合残基を有するものであってもよい。また、ビオチン等による修飾がなされたものであってもよい。
【0052】
本発明に係るプローブ分子としては、上記のうちの1種を単独であっても2種以上の組み合わせであってもよく、特に制限されず、本発明の光切断リンカー結合磁性粒子を用いた測定方法に採用する原理や測定の対象物質に応じて適宜選択することができるが、例えば、反応の特異性の観点からは、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、ホルモン、及びこれらと同一又は類似の構造を有する分子からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、抗体断片、DNA断片、及びRNA断片からなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0053】
(光切断リンカー結合磁性粒子の構成及び製造方法)
本発明の光切断リンカー結合磁性粒子としては、1つの磁性粒子に対して複数のスペーサーが結合していてよく、1つのスペーサーに対して複数の光切断リンカーが結合していてよく、また、1つのプローブ分子に対して複数の光切断リンカーが結合していてよい。
【0054】
本発明の光切断リンカー結合磁性粒子において、前記スペーサーの含有量としては、1つの磁性粒子に結合するスペーサー数ができるだけ多くなるように設定することが好ましく、前記磁性粒子(好ましくは平均粒子径8μm以下、以下同じ)の質量(磁性粒子が2種以上の組み合わせである場合にはそれらの合計量、以下同じ)1質量部に対する前記スペーサーの質量(2種以上の組み合わせである場合にはそれらの合計、以下同じ)が、0.1~5質量部であることが好ましく、0.2~2質量部であることがより好ましい。
【0055】
前記スペーサーが前記タンパク質(好ましくはアビジン類、以下同じ)である場合の前記磁性粒子の質量1質量部に対する前記タンパク質の質量(タンパク質が2種以上の組み合わせである場合にはそれらの合計量、以下同じ)、前記スペーサーがポリエチレングリコールである場合の前記磁性粒子の質量1質量部に対する前記ポリエチレングリコールの質量(ポリエチレングリコールが2種以上の組み合わせである場合にはそれらの合計量、以下同じ)、前記スペーサーが前記タンパク質とポリエチレングリコールとの組み合わせである場合の前記磁性粒子の質量1質量部に対する前記タンパク質及びポリエチレングリコールの合計質量、前記スペーサーがデキストランである場合の前記磁性粒子の質量1質量部に対するデキストランの質量(デキストランが2種以上の組み合わせである場合にはそれらの合計量、以下同じ)も、同様に0.1~5質量部であることが好ましく、0.2~2質量部であることがより好ましい。
【0056】
本発明の光切断リンカー結合磁性粒子において、前記光切断リンカーの含有量としては、プローブ分子が十分量結合できる量となるように設定することが好ましく、前記スペーサーの質量1質量部に対する前記光切断リンカーの質量(光切断リンカーが2種以上の組み合わせである場合にはそれらの合計量、以下同じ)が、0.001~1質量部であることが好ましく、0.02~1質量部であることがより好ましい。
【0057】
また、例えば、前記スペーサーが前記タンパク質である場合には、前記スペーサーの質量1質量部に対する前記光切断リンカーの質量が、0.001~1質量部であることが好ましく、0.02~1質量部であることがより好ましい。さらに、例えば、前記スペーサーがポリエチレングリコールである場合には、前記スペーサーの質量1質量部に対する前記光切断リンカーの質量が、0.01~1質量部であることが好ましく、0.02~1質量部であることがより好ましい。また、例えば、前記スペーサーが前記タンパク質とポリエチレングリコールとの組み合わせである場合には、前記スペーサーの質量1質量部に対する前記光切断リンカーの質量が、0.01~1質量部であることが好ましく、0.02~1質量部であることがより好ましい。さらに、例えば、前記スペーサーがデキストランである場合には、前記スペーサーの質量1質量部に対する前記光切断リンカーの質量が、0.01~0.5質量部であることが好ましい。
【0058】
本発明の光切断リンカー結合磁性粒子において、前記プローブ分子の含有量としては、光切断リンカーの光切断効率がより向上する傾向にある観点から、1つの粒子におけるプローブ分子の密度が、感度低下が生じない範囲内で、できるだけ少なくなるように設定することが好ましい。
【0059】
なお、磁性粒子、スペーサー、光切断リンカー及びプローブ分子の相互の好適な質量比は、使用する素材、分子量等により大きく異なるため、上記の質量比の範囲とは大きく異なる条件となることもあり得る。
【0060】
本発明の光切断リンカー結合磁性粒子は、前記磁性粒子に、前記スペーサー、前記光切断リンカー、及び前記プローブ分子を、この順となるように結合する(固定する)ことによって製造することができる。かかる製造方法としては、特に制限されず、適宜従来公知の方法又はそれに準じた方法を採用することができる。このとき、磁性粒子-スペーサー間、スペーサー-光切断リンカー間、及び光切断リンカー-プローブ分子間の各結合は、それぞれ独立に、直接的であっても間接的であってもよい(以下、仮に、「-」の前者を「被結合物」、後者を「結合物」という)。
【0061】
前記磁性粒子、前記スペーサー、前記光切断リンカー、及び前記プローブ分子をそれぞれ直接的に結合する方法、並びに、これらをそれぞれ間接的に結合する方法としては、上記の光切断効率向上方法においてスペーサーを挿入する方法として挙げた方法と同様の方法が挙げられる。
【0062】
これらの結合に供する上記の被結合物及び結合物の比率は、上記の光切断リンカー結合磁性粒子における比率の好ましい範囲を達成するように適宜選択することができる。
【0063】
また、光切断リンカー結合磁性粒子の製造においては、前記磁性粒子、前記スペーサー、前記光切断リンカー、及び前記プローブ分子を一度に結合させても、これらを別々に順次結合させてもよいが、製造のしやすさ、並びに、各部の量の制御しやすさ等の観点からは、別々に順次結合させることが好ましい。さらに、一部の被結合物及び結合物を予め結合させておいてからこれらを組み合わせて結合させることも好ましい。また、このような予め結合された被結合物及び結合物としては、上記の光切断効率向上方法において挙げたものと同様の市販の結合体を適宜用いてもよい。
【0064】
<対象物質を測定する測定方法及びこれに用いるためのキット>
本発明の対象物質を測定する測定方法(本明細書中、場合により「対象物質測定方法」という)においては、上記の本発明の光切断リンカー結合磁性粒子を用いて、試料中の対象物質を測定する。
【0065】
〔試料〕
本発明の対象物質測定方法に用いられる「試料」としては、対象物質が存在し得る試料である限り特に制限はない。一般的には、目的の対象物質を測定する対象(ヒト及び動物、好ましくはヒト)から採取された血清、血漿、全血、尿、便、唾液、髄液、口腔粘膜、咽頭粘膜、腸管粘膜;細胞培養液;及び各種生検試料等が挙げられる。本発明に係る試料として好ましくは、水性試料である。これらの試料は、必要に応じて希釈又は懸濁したものであってもよい。
【0066】
〔対象物質〕
本発明において、「対象物質」とは、測定することを所望する物質のことを示す。本発明に係る対象物質としては、特に制限されないが、例えば、生体分子が挙げられ、より具体的には、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、低分子化合物、及びこれらのうちの2種以上の分子を含む複合分子が挙げられ、これらのうちの1種を単独であっても2種以上の組み合わせであってもよい。前記ポリヌクレオチド、前記ポリペプチド、前記低分子化合物、及び前記複合分子としては、それぞれ独立に、その好ましい態様も含めて、上記プローブ分子において挙げたものと同様のものが挙げられる。
【0067】
本発明に係る対象物質としては、特に制限されず、本発明の光切断リンカー結合磁性粒子を用いた測定方法に採用する原理や上記プローブ分子の種類及び下記の競合物質の種類等を適宜選択することによって対象物質とすることができるが、例えば、特異性の観点からは、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、及びホルモンからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、抗原となる物質、相補配列を有するDNA、及び相補配列を有するRNAからなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0068】
〔測定〕
本発明において、「測定」には、試料中の対象物質の存在の有無及び量をシグナルとして取り出す検出の他、前記対象物質の量の定量又は半定量が含まれる。本発明において、前記対象物質の測定は、標識物質によって生じるシグナルを検出し、必要に応じてこれを定量することによって行うことが好ましい。前記「シグナル」には、呈色(発色)、反射光、発光、蛍光、放射性同位体による放射線等が含まれ、肉眼で確認できるものの他、シグナルの種類に応じた測定方法・装置によって確認できるものも含まれる。本発明の対象物質測定方法によれば、前記磁性粒子による自動化・短時間化の利点を享受しつつ、光によって容易かつ高効率で前記磁性粒子と前記検出対象とを分離することができるため、マイクロ化学分析法や、国際公開第2018/079761号に記載されている測定方法等、高精度のシグナル測定手段を容易に利用することが可能となる。
【0069】
前記対象物質を本発明の光切断リンカー結合磁性粒子を用いて測定する方法としては、サンドイッチ法、競合法、及び免疫比濁法等の免疫学的測定方法や、これらの原理に準じた測定方法が挙げられ、特に制限されない。本発明の対象物質測定方法において、前記試料中の対象物質の定量は、前記標識物質の種類に応じた検出・定量を行い、標準試料における測定値との比較をすることによって行うことができる。また、より簡便かつ迅速に対象物質を検出する観点からは、例えば、イムノクロマト等の方法を採用することができる。
【0070】
以下、本発明の対象物質測定方法について、より具体的な態様を挙げて説明する。図面を参照しながら本発明の好ましい実施形態を例に挙げてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下の説明及び図面中、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0071】
(第1の態様)
本発明の対象物質測定方法としては、より感度及び特異度の高い検出システムを構築可能な傾向である観点からは、前記対象物質を捕捉可能な捕捉体を用いて前記対象物質を検出するサンドイッチ法が好ましい。前記サンドイッチ法としては、下記の第1の態様:
本発明の光切断リンカー結合磁性粒子であり、かつ、前記プローブ分子が前記対象物質に特異的に結合可能な分子である光切断リンカー結合磁性粒子と、前記試料と、を接触させ、前記光切断リンカー結合磁性粒子に前記対象物質を捕捉させる捕捉工程と、
前記光切断リンカーを光切断して、前記磁性粒子から、前記対象物質と前記プローブ分子とを含む複合体を遊離させて調製試料を得る遊離工程と、
前記調製試料中の前記複合体を検出することで前記対象物質を測定する測定工程と、
を含む測定方法
が好ましい。
【0072】
第1の態様においては、本発明の光切断リンカー結合磁性粒子として、前記プローブ分子が前記対象物質に特異的に結合可能な分子である光切断リンカー結合磁性粒子を用いる。このような対象物質と前記対象物質に特異的に結合可能な分子(プローブ分子)との組み合わせ、又は前記プローブ分子と前記対象物質との組み合わせとしては、例えば、抗原(抗原ペプチド、低分子化合物等)と抗体、レクチン結合性糖ペプチドとレクチン、核酸と同核酸と相補配列を有する核酸の組み合わせが挙げられる。
【0073】
〔捕捉工程〕
第1の態様の捕捉工程においては、本発明の光切断リンカー結合磁性粒子(以下、場合により「捕捉体」という)と前記試料とを接触させ、前記対象物質と前記プローブ分子との結合を介して前記対象物質を前記捕捉体に捕捉させる。前記捕捉体と前記試料とを接触させる方法としては、特に制限されず、適宜従来公知の方法又はそれに準じた方法を採用することができ、例えば、前記試料中に前記捕捉体を添加する方法又は前記捕捉体液中に前記試料を添加する方法が挙げられる。
【0074】
前記試料としては、試料希釈液で希釈して用いてもよく、また、前記捕捉体の粒子懸濁媒に懸濁して用いてもよく、さらに、前記捕捉体と前記試料との反応系(例えば、抗原抗体反応系)には、他の反応用バッファーを適宜添加してもよい。これらの試料希釈液、粒子懸濁媒、反応用バッファーとしては、特に制限されないが、例えば、それぞれ独立に、公知の緩衝液(ナトリウムリン酸バッファー、MES、Tris、CFB、MOPS、PIPES、HEPES、トリシンバッファー、ビシンバッファー、グリシンバッファー等)が挙げられ、また、前記粒子懸濁媒及び反応用バッファーとしては、それぞれ独立に、BSA等の安定化蛋白や血清等が添加されたものであってもよい。
【0075】
第1の態様の捕捉工程における前記捕捉体と前記試料との反応において、反応系における捕捉体の含有量(終濃度)(捕捉体が2種以上の組み合わせである場合にはそれらの合計量、以下同じ)としては、試料の種類、濃度、検出方法等に応じて適宜調整されるものであるため特に制限されないが、短時間に効率よく捕捉する観点から、例えば、0.005~0.2質量%であることが好ましく、0.01~0.1質量%であることがより好ましい。
【0076】
また、第1の態様の捕捉工程の条件としても特に制限されず、適宜調整することができ、例えば、室温~45℃、好ましくは20~37℃、pH6~9程度、好ましくはpH7~8で、5秒~10分程度、好ましくは30秒~5分程度行うことができるが、これらの条件に限定されるものではない。
【0077】
〔洗浄工程〕
本発明の対象物質測定方法においては、前記捕捉工程の後、かつ、下記の遊離工程の前に、前記捕捉体に結合した対象物質と、それ以外の前記捕捉体に結合していない(捕捉されていない)夾雑物とを分離し、前記夾雑物を除去する洗浄工程をさらに含むことが好ましい。前記夾雑物を除去する方法としては、特に制限されず、適宜従来公知の方法又はそれに準じた方法を採用することができ、例えば、前記捕捉工程の後に前記捕捉体を遠心や集磁によって回収して液相(上清)を除去する方法が挙げられる。また、前記洗浄工程においては、次いで、必要に応じて、洗浄液の注入及び除去を繰り返してもよい。前記洗浄液としては、例えば、中性(好ましくは、pH6~9)の公知の緩衝液(ナトリウムリン酸バッファー、MES、Tris、CFB、MOPS、PIPES、HEPES、トリシンバッファー、ビシンバッファー、グリシンバッファー等)が挙げられ、また、BSA等の安定化蛋白や界面活性剤等が添加されたものであってもよい。
【0078】
〔遊離工程〕
第1の態様の遊離工程においては、前記光切断リンカーを切断して、前記捕捉体に結合した対象物質と前記プローブ分子との複合体を、前記磁気粒子から遊離させ、測定工程に供するための試料として、前記複合体を含有する調製試料を得る。
【0079】
前記光切断リンカーを切断する方法としては、光照射によってこれを切断する方法が挙げられる。前記遊離工程において、照射する光の光源及び光量としては、特に制限されず、前記光切断リンカーの種類に応じて適宜選択することができ、例えば、PC Mal-NHS carbonate esterを用いる場合には、波長300~400nm、好ましくは340~370nmの紫外光を、10~50℃、好ましくは20~37℃で、10秒~10分程度、好ましくは10秒~5分程度照射する条件が挙げられるが、これらの条件に限定されるものではない。ただし、本発明においては、前記磁性粒子に前記スペーサーを介さずに前記光切断リンカーを結合させた場合に比較して、光切断リンカーの光切断効率に優れるため、光の照射時間を短くすることができる。
【0080】
〔測定工程〕
第1の態様の測定工程においては、前記調製試料中の前記複合体を検出することで前記対象物質を測定する。前記複合体の検出は、前記対象物質に特異的に結合可能な検出用分子が標識物質で標識化された標識化検出用分子に前記対象物質を捕捉させ(標識化工程)、前記複合体として、前記対象物質と前記プローブ分子と前記標識化検出用分子とを含む複合体を形成させ、当該複合体を前記標識物質によって検出することが好ましい。
【0081】
第1の態様に係る検出用分子としては、前記対象物質に特異的に結合可能であればよく、前記対象物質の種類に応じて、前記プローブ分子として挙げたものと同様の分子の中から適宜選択することができる。また、前記検出用分子としては、本発明の光切断リンカー結合磁性粒子に含まれるプローブ分子と同種のものであってもよい。
【0082】
本発明において、前記標識物質としては、公知の免疫学的測定において標識物質として用いられているものを特に制限なく用いることができる。かかる標識物質としては、例えば、酵素;アクリジニウム誘導体等の発光物質;ユーロピウム等の蛍光物質;アロフィコシアニン(APC)及びフィコエリスリン(R-PE)等の蛍光蛋白質;125I等の放射性物質;フルオレセインイソチオシアネート(FITC)及びローダミンイソチオシアネート(RITC)等の低分子量標識物質;金粒子;アビジン;ビオチン;ラテックス;ジニトロフェニル(DNP);ジゴキシゲニン(DIG)が挙げられ、これらのうちの1種を単独であっても2種以上の組み合わせであってもよい。例えば、前記標識物質として酵素を用いた場合には、発色基質、蛍光基質、化学発光基質等を基質として添加することにより、前記基質に応じて種々の検出・定量を行うことができる。これらの中でも、本発明に係る標識物質としては、簡便かつ安定性のある試験を可能とする傾向にある観点、及び簡便迅速かつ高感度の測定を行うことが可能である観点からは、酵素が好ましい。前記酵素としては、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリフォスファターゼ(ALP)、β-ガラクトシダーゼ(β-gal)、グルコースオキシダーゼ、ルシフェラーゼを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0083】
第1の態様に係る標識化検出用分子は、前記検出用分子と前記標識物質とを結合することによって製造することができる。かかる結合方法としては、適宜従来公知の方法又はそれに準じた方法を採用することができ、前記検出用分子と前記標識物質とを直接結合させてもよく、間接的に結合させてもよい。このような結合方法としては、本発明の光切断リンカー結合磁性粒子の製造方法として挙げた方法(すなわち、上記の光切断効率向上方法においてスペーサーを挿入する方法として挙げた方法と同様の方法)と同様の方法が挙げられる。また、第1の態様に係る標識化検出用分子としては、市販のものを適宜用いてもよく、例えば、対象物質が抗原となる物質である場合には、それに対する市販の標識化抗体等を適宜用いることができる。
【0084】
前記標識化工程において、前記標識化検出用分子の添加量(終濃度)(標識化検出用分子が2種以上の組み合わせである場合にはそれらの合計量、以下同じ)としては、試料の種類、濃度、検出方法等に応じて適宜調整されるものであるため特に制限されないが、例えば、0.05~1μg/mLであることが好ましく、0.1~0.5μg/mLであることがより好ましい。
【0085】
このようなサンドイッチ法としては、2ステップ法であるフォワードサンドイッチ法(光切断リンカー結合磁性粒子(捕捉体)と試料中の対象物質との反応、捕捉体に結合した対象物質と標識化検出用分子との反応を逐次的に行う)、リバースサンドイッチ法(予め標識化検出用分子と試料中の対象物質とを反応させ、生成した複合体を捕捉体と反応させる)、及び1ステップ法(捕捉体、試料中の対象物質、標識化検出用分子の反応を同時に1ステップで行う)を挙げることができるが、これらのいずれも採用可能である。
【0086】
第1の態様として、例えば、フォワードサンドイッチ法では、先ず、捕捉工程において、前記捕捉体と、前記試料と、を接触させ、前記捕捉体のプローブ分子に前記対象物質を捕捉させる(1次反応)。次いで、前記標識化検出用分子を前記捕捉体に捕捉された対象物質に接触させ、結合させる(2次反応)。この反応により、捕捉体-対象物質-標識化検出用分子を含む複合体(例えば免疫複合体)が形成される。結合しなかった試料及び標識化検出用分子を必要に応じて洗浄工程で洗浄した後、遊離工程で光切断リンカーを光切断して、磁性粒子から、前記複合体を遊離させ、所定の方法で前記標識化検出用分子の標識物質を測定する。例えば、前記標識化検出用分子の標識物質が酵素である場合には、酵素に対応する発色基質や発光基質を添加し、酵素と基質とを反応させることによってシグナルを検出する。これにより、試料中の前記対象物質の存在の有無及び量をシグナルとして検出することができ、また、標準試料における測定値との比較をすることによって試料中の対象物質の量を定量することができる。
【0087】
第1の態様の一例として、より具体的には、例えば、図1に示すように、磁性粒子11と光切断リンカー13とがスペーサー12を介して結合しており、光切断リンカー13に、試料中の対象物質15に特異的に結合可能なプローブ分子14(好ましくは対象物質15に対する抗体)が結合した光切断リンカー結合磁性粒子101を用いる。先ず、捕捉工程において、対象物質15を、プローブ分子14を介して反応系(反応液)中に存在する光切断リンカー結合磁性粒子101に捕捉させる。次いで、洗浄工程において、集磁された光切断リンカー結合磁性粒子101と結合しなかった対象物質15、不純物等を除去した後、対象物質15に特異的に結合可能な検出用分子16(好ましくは対象物質15に対する抗体)が酵素等の標識物質17で標識化された標識化検出用分子102を含む溶液を添加し、標識化検出用分子102を対象物質15に結合させる(a)。次いで、再度の洗浄工程で、未反応の標識化検出用分子102を除去し、対象物質15を介して光切断リンカー結合磁性粒子101に結合した標識化検出用分子102を残存させる。次いで、集磁した光切断リンカー結合磁性粒子101をイオン交換水等で懸濁した後、UVを照射することで、光切断リンカー13を光切断させ、プローブ分子14、対象物質15及び標識化検出用分子102を含む複合体103を遊離させる(b)。次いで、磁性粒子を集磁して、上清のみを取り出すことで、磁性粒子11を含まない、複合体103溶液を得ることができる(c)。複合体103溶液中の標識物質17を検出することで、対象物質15の濃度を測定することが可能となる。なお、かかる具体例は第1の態様の一例を示すものであり、例えば、洗浄工程を1回のみとする、標識物質17やプローブ分子14としての物質を選択する等、条件を適宜変更してもよい。
【0088】
使用する光切断リンカーの種類や、切断条件によっては、図示例のように複合体103に切断後の光切断リンカー断片が残存しない場合もあり得る。また、図示例は模式図であり、上述したように、磁性粒子、スペーサー、光切断リンカー、及びプローブ分子の数は、1:1:1:1の関係になくともよい。これらは他の態様においても同様である。
【0089】
(第1の態様に用いるためのキット)
本発明の第1の態様に用いるためのキットは、構成試薬として、少なくとも、本発明の光切断リンカー結合磁性粒子であり、かつ、前記プローブ分子が前記対象物質に特異的に結合可能な分子である光切断リンカー結合磁性粒子を含むものである。また、前記キットとしては、第1の態様に係る検出用分子、より好ましくは前記標識化検出用分子をさらに含むことが好ましい。
【0090】
これらは、それぞれ独立に、固体(粉末)状であっても緩衝液に溶解された液体状であってもよい。液体状である場合、各溶液(標品)における前記光切断リンカー結合磁性粒子の濃度は、特に限定されないが、過剰に添加すると場合により非特異的なシグナルが増加する傾向にある観点から、0.005~0.2質量%であることが好ましく、0.01~0.1質量%であることがより好ましい。また、前記検出用分子の濃度も、特に限定されないが、同様の観点から、0.05~1μg/mLであることが好ましく、0.1~0.5μg/mLであることがより好ましい。
【0091】
本発明の第1の態様に用いるためのキットとしては、ELISA、CLEIA、イムノクロマト等の通常の免疫学的測定で備えるべき構成をさらに備えていてもよい。例えば、標準試料(標準検体試薬、各濃度)、対照試薬、前記試料希釈液、前記粒子懸濁媒、前記反応用バッファー、前記洗浄液、及び希釈用カートリッジからなる群から選択される少なくとも1種をさらに備えていてもよい。また、第1の態様に係る検出用分子を標識化するための標識物質をさらに備えていてもよい。
【0092】
また、例えば、前記標識物質が酵素である場合には、当該標識物質の検出・定量に必要な基質や反応停止液等をさらに含んでいてもよい。さらに、必要に応じて、試料の前処理を行うための前処理液や当該キットの使用説明書をさらに含んでいてもよい。
【0093】
(第2の態様)
本発明の対象物質測定方法としては、抗原のサイズが小さくエピトープ部が限られる場合等には、対象物質とその競合物質とを競合させて前記競合物質を検出することにより、間接的に対象物質を測定する競合法も好ましい。前記競合法としては、下記の第2の態様:
本発明の光切断リンカー結合磁性粒子であり、かつ、前記プローブ分子が前記対象物質及び前記対象物質の競合物質に特異的に結合可能な分子である光切断リンカー結合磁性粒子と、前記試料と、前記競合物質と、を接触させ、前記対象物質と前記競合物質とを競合させて、前記光切断リンカー結合磁性粒子に前記競合物質を捕捉させる捕捉工程と、
前記光切断リンカーを光切断して、前記磁性粒子から、前記競合物質と前記プローブ分子とを含む複合体を遊離させて調製試料を得る遊離工程と、
前記調製試料中の前記複合体を検出することで前記対象物質を測定する測定工程と、
を含む測定方法
が好ましい。
【0094】
第2の態様においては、本発明の光切断リンカー結合磁性粒子として、前記プローブ分子が前記対象物質及び前記対象物質の競合物質に特異的に結合可能な分子である光切断リンカー結合磁性粒子を用いる。
【0095】
本発明において、「対象物質の競合物質」とは、対象物質に特異的に結合可能な分子に対する結合において、前記対象物質と競合する関係にある物質のことをいい、前記対象物質と同種の物質、又は、前記対象物質と同一又は類似の構造(前記対象物質に特異的に結合可能な分子に認識される該対象物質の部位と同一又は類似の構造)を有する分子のことをいい、前記対象物質の種類に応じて、前記プローブ分子として挙げたものと同様の分子の中から適宜選択することができる。
【0096】
第2の態様における、前記対象物質/前記競合物質/前記対象物質及び前記競合物質に特異的に結合可能な分子(プローブ分子)の組み合わせとしては、例えば、抗原(抗原ペプチド、低分子化合物等)/前記抗原又はこれと同一若しくは類似の抗体認識部位を有する分子/抗体、抗体/前記抗体又はこれと同一若しくは類似の抗原認識部位を有する分子/抗原、レクチン結合性糖ペプチド/前記糖ペプチド又はこれと同一若しくは類似のレクチン認識部位を有する分子/レクチンの組み合わせが挙げられる。
【0097】
〔捕捉工程〕
第2の態様の捕捉工程においては、前記試料に前記競合物質を添加し、本発明の光切断リンカー結合磁性粒子(捕捉体)と前記試料と前記競合物質とを接触させ、前記競合物質と前記プローブ分子との結合を介して前記競合物質を前記捕捉体に捕捉させる。このとき、前記プローブ分子に対しては、前記対象物質との結合と前記競合物質との結合とが競合することになる。前記捕捉体と前記試料と前記競合物質とを接触させる方法としては、特に制限されず、適宜従来公知の方法又はそれに準じた方法を採用することができ、例えば、前記試料中に前記捕捉体及び前記競合物質を添加する方法、又は、前記捕捉体液中若しくは前記競合物質液中に他の2液を添加する方法が挙げられる。
【0098】
前記試料としては、試料希釈液で希釈して用いてもよく、また、前記捕捉体の粒子懸濁媒に懸濁して用いてもよく、さらに、前記捕捉体と前記試料と前記競合物質との反応系(例えば、抗原抗体反応系)には、他の反応用バッファーを適宜添加してもよい。これらの試料希釈液、粒子懸濁媒、反応用バッファーとしては、上記の第1の態様で挙げたものと同様のものが挙げられる。
【0099】
第2の態様の捕捉工程における前記捕捉体と前記試料と前記競合物質との反応において、反応系における捕捉体の含有量(終濃度)としては、試料の種類、濃度、検出方法等に応じて適宜調整されるものであるため特に制限されないが、短時間に効率よく捕捉する観点から、例えば、0.005~0.2質量%であることが好ましく、0.01~0.1質量%であることがより好ましい。また、前記競合物質の添加量(終濃度)としては、主に試料の濃度等に応じて適宜調整することができ、対象物質の測定値の算出方法に応じて適宜段階的濃度にすることもできる。
【0100】
また、第2の態様の捕捉工程の条件としても特に制限されず、適宜調整することができ、例えば、室温~45℃、好ましくは20~37℃、pH6~9程度、好ましくはpH7~8で、5秒~10分程度、好ましくは30秒~5分程度行うことができるが、これらの条件に限定されるものではない。
【0101】
〔洗浄工程〕
本発明の対象物質測定方法の第2の態様においては、前記捕捉工程の後、かつ、下記の遊離工程の前に、前記捕捉体に結合した競合物質と、それ以外の前記捕捉体に結合していない(捕捉されていない)夾雑物とを分離し、前記夾雑物を除去する洗浄工程をさらに含むことが好ましい。このような洗浄工程としては、特に制限されず、適宜従来公知の方法又はそれに準じた方法を採用することができ、上記の第1の態様の洗浄工程として挙げた方法と同様の方法が挙げられる。
【0102】
〔遊離工程〕
第2の態様の遊離工程においては、前記光切断リンカーを切断して、前記捕捉体に結合した競合物質と前記プローブ分子との複合体を、前記磁気粒子から遊離させ、測定工程に供するための試料として、前記複合体を含有する調製試料を得る。
【0103】
前記光切断リンカーを切断する方法としては、光照射によってこれを切断する方法が挙げられる。前記遊離工程において、照射する光の光源及び光量としては、特に制限されず、前記光切断リンカーの種類に応じて適宜選択することができ、例えば、その好ましい条件も含めて、上記の第1の態様の遊離工程で挙げた条件と同様の条件が挙げられる。ただし、本発明においては、前記磁性粒子に前記スペーサーを介さずに前記光切断リンカーを結合させた場合に比較して、光切断リンカーの光切断効率に優れるため、光の照射時間を短くすることができる。
【0104】
〔測定工程〕
第2の態様の測定工程においては、前記調製試料中の前記複合体を検出することで前記対象物質を測定する。前記複合体の検出は、前記競合物質として、標識物質で標識化された標識化競合物質を用い、前記標識物質によって検出することが好ましい。
【0105】
前記標識化競合物質は、前記競合物質が標識物質で標識化されたものである。前記標識物質としては、公知の免疫学的測定において標識物質として用いられているものを特に制限なく用いることができ、好ましい態様も含めて、第1の態様の標識化検出用分子の標識物質として挙げたものと同様のものが挙げられる。
【0106】
前記標識化競合物質は、前記競合物質と前記標識物質とを結合することによって製造することができる。かかる結合方法としては、適宜従来公知の方法又はそれに準じた方法を採用することができ、前記競合物質と前記標識物質とを直接結合させてもよく、間接的に結合させしてもよい。このような結合方法としては、本発明の光切断リンカー結合磁性粒子の製造方法として挙げた方法(すなわち、上記の光切断効率向上方法においてスペーサーを挿入する方法として挙げた方法と同様の方法)と同様の方法が挙げられる。また、前記標識化競合物質としては、市販のものを適宜用いてもよく、例えば、前記対象物質が抗原となる物質である場合には、当該抗原又は当該抗原と同一若しくは類似の抗体認識部位を有する分子が標識化されたもの等を適宜用いることができる。
【0107】
第2の態様としては、例えば、捕捉工程において、前記捕捉体と、前記試料と、前記標識化競合物質と、を接触させ、前記捕捉体のプローブ分子に前記標識化競合物質を捕捉させる。この反応により、捕捉体-標識化競合物質を含む複合体(例えば免疫複合体)が形成される。結合しなかった試料及び標識化競合物質を必要に応じて洗浄工程で洗浄した後、遊離工程で光切断リンカーを光切断して、磁性粒子から、前記複合体を遊離させ、所定の方法で前記標識化競合物質の標識物質を測定する。例えば、前記標識化競合物質の標識物質が酵素である場合には、酵素に対応する発色基質や発光基質を添加し、酵素と基質とを反応させることによってシグナルを検出する。このとき、試料中に対象物質が多く存在する場合には、前記標識化競合物質と前記プローブ分子との結合が、競合する前記対象物質と前記プローブ分子との結合によって阻害されるため、その分シグナルが減少することになる。したがって、前記標識化競合物質のシグナルを検出することで、間接的に、試料中の前記対象物質の存在の有無及び量を検出することができ、また、標準試料における測定値との比較をすることによって試料中の前記対象物質の量を定量することができる。
【0108】
第2の態様の一例として、より具体的には、例えば、図2に示すように、磁性粒子21と光切断リンカー23とがスペーサー22を介して結合しており、光切断リンカー23に、試料中の対象物質25及びその競合物質26に特異的に結合可能なプローブ分子24(好ましくは対象物質25及び競合物質26に対する抗体)が結合した光切断リンカー結合磁性粒子201を用いる。反応系には、競合物質26が標識物質27で標識化された既知濃度の標識化競合物質202が共存する。先ず、捕捉工程において、対象物質25及び競合物質26を競合させて、プローブ分子24を介して反応系(反応液)中に存在する光切断リンカー結合磁性粒子201に捕捉させる(a)。ここで、対象物質25の濃度が高いほど、競合物質26はプローブ分子24に捕捉されにくくなる。次いで、洗浄工程において、集磁された光切断リンカー結合磁性粒子201と結合しなかった対象物質25、標識化競合物質202、不純物等を除去する。次いで、集磁した光切断リンカー結合磁性粒子201をイオン交換水等で懸濁した後、UVを照射することで、光切断リンカー23を光切断させ、プローブ分子24、及び標識化競合物質202を含む複合体203、並びに、プローブ分子24、及び対象物質25を含む複合体をそれぞれ遊離させる(b)。次いで、磁性粒子を集磁して、上清のみを取り出すことで、磁性粒子21を含まない、複合体203を含む溶液を得て、複合体203溶液中の標識物質27を検出する(c)。試料中の対象物質25の濃度が高いほど、検出される標識物質27のシグナルが低くなるため、検量線等を使用して、対象物質25の濃度を算出することができる。なお、かかる具体例は第2の態様の一例を示すものであり、例えば、標識物質27、プローブ分子24、競合物質26としての物質を選択する等、条件を適宜変更してもよい。
【0109】
(第2の態様に用いるためのキット)
本発明の第2の態様に用いるためのキットは、構成試薬として、少なくとも、本発明の光切断リンカー結合磁性粒子であり、かつ、前記プローブ分子が前記対象物質及び前記対象物質の競合物質に特異的に結合可能な分子である光切断リンカー結合磁性粒子を含むものである。また、前記キットとしては、前記競合物質、より好ましくは前記標識化競合物質をさらに含むことが好ましい。
【0110】
これらは、それぞれ独立に、固体(粉末)状であっても緩衝液に溶解された液体状であってもよい。液体状である場合、各溶液(標品)における前記光切断リンカー結合磁性粒子の濃度は、特に限定されないが、過剰に添加すると場合により非特異的なシグナルが増加する傾向にある観点から、0.005~0.2質量%であることが好ましく、0.01~0.1質量%であることがより好ましい。また、前記競合物質の濃度は、特に限定されないが、同様の観点から、0.05~1μg/mLであることが好ましく、0.1~0.5μg/mLであることがより好ましい。
【0111】
本発明の第2の態様に用いるためのキットとしては、ELISA、CLEIA、イムノクロマト等の通常の免疫学的測定で備えるべき構成をさらに備えていてもよい。例えば、標準試料(標準検体試薬、各濃度)、対照試薬、前記試料希釈液、前記粒子懸濁媒、前記反応用バッファー、前記洗浄液、及び希釈用カートリッジからなる群から選択される少なくとも1種をさらに備えていてもよい。また、前記競合物質を標識化するための標識物質をさらに備えていてもよい。
【0112】
さらに、例えば、前記標識物質が酵素である場合には、当該標識物質の検出・定量に必要な基質や反応停止液等をさらに含んでいてもよい。さらに、必要に応じて、試料の前処理を行うための前処理液や当該キットの使用説明書をさらに含んでいてもよい。
【0113】
(第3の態様)
本発明の対象物質測定方法として、前記競合法としては、下記の第3の態様:
本発明の光切断リンカー結合磁性粒子であり、かつ、前記プローブ分子が前記対象物質の競合物質である光切断リンカー結合磁性粒子と、前記試料と、前記対象物質及び前記競合物質に特異的に結合可能な検出用分子と、を接触させ、前記検出用分子に前記対象物質と前記プローブ分子とを競合させて、前記光切断リンカー結合磁性粒子に前記検出用分子を捕捉させる捕捉工程と、
前記光切断リンカーを光切断して、前記磁性粒子から、前記検出用分子と前記プローブ分子とを含む複合体を遊離させて調製試料を得る遊離工程と、
前記調製試料中の前記複合体を検出することで前記対象物質を測定する測定工程と、
を含む測定方法
も好ましい。
【0114】
第3の態様においては、本発明の光切断リンカー結合磁性粒子として、前記プローブ分子が前記対象物質の競合物質である光切断リンカー結合磁性粒子を用いる。
【0115】
また、第3の態様においては、前記試料に前記対象物質及び前記競合物質に特異的に結合可能な検出用分子を添加し、本発明の光切断リンカー結合磁性粒子(捕捉体)と前記試料と前記検出用分子とを接触させる。第3の態様に係る検出用分子としては、前記対象物質及び前記競合物質のいずれにも特異的に結合可能であればよく、前記対象物質の種類に応じて、前記プローブ分子として挙げたものと同様の分子の中から適宜選択することができる。
【0116】
第3の態様における、前記対象物質/前記競合物質(プローブ分子)/前記対象物質及び前記対象物質の競合物質に特異的に結合可能な分子(検出用分子)の組み合わせとしては、例えば、抗原(抗原ペプチド、低分子化合物等)/前記抗原又はこれと同一若しくは類似の抗体認識部位を有する分子/抗体、抗体/前記抗体又はこれと同一又は類似の抗原認識部位を有する分子/抗原、レクチン結合性糖ペプチド/前記糖ペプチド又はこれと同一若しくは類似のレクチン認識部位を有する分子/レクチンの組み合わせが挙げられる。
【0117】
〔捕捉工程〕
第3の態様の捕捉工程においては、前記接触により、前記競合物質と前記検出用分子との結合を介して前記検出用分子を前記捕捉体に捕捉させる。このとき、前記検出用分子に対しては、前記対象物質との結合と前記捕捉体に含まれる競合物質(プローブ分子)との結合とが競合することになる。前記捕捉体と前記試料と前記検出用分子とを接触させる方法としては、特に制限されず、適宜従来公知の方法又はそれに準じた方法を採用することができ、例えば、前記試料中に前記捕捉体及び前記検出用分子を添加する方法、又は、前記捕捉体液中若しくは前記検出用分子液中に他の2液を添加する方法が挙げられる。
【0118】
前記試料としては、試料希釈液で希釈して用いてもよく、また、前記捕捉体の粒子懸濁媒に懸濁して用いてもよく、さらに、前記捕捉体と前記試料と前記検出用分子の反応系(例えば、抗原抗体反応系)には、他の反応用バッファーを適宜添加してもよい。これらの試料希釈液、粒子懸濁媒、反応用バッファーとしては、上記の第1の態様で挙げたものと同様のものが挙げられる。
【0119】
第3の態様の捕捉工程における前記捕捉体と前記試料と前記検出用分子との反応において、反応系における捕捉体の含有量(終濃度)としては、試料の種類、濃度、検出方法等に応じて適宜調整されるものであるため特に制限されないが、短時間に効率よく捕捉する観点から、例えば、0.005~0.2質量%であることが好ましく、0.001~0.1質量%であることがより好ましい。また、前記検出用分子の添加量(終濃度)(検出用分子が2種以上の組み合わせである場合にはそれらの合計量、以下同じ)としては、試料の種類、濃度、検出方法等に応じて適宜調整されるものであるため特に制限されないが、例えば、0.05~1μg/mLであることが好ましく、0.1~0.5μg/mLであることがより好ましい。
【0120】
また、第3の態様の捕捉工程の条件としても特に制限されず、適宜調整することができ、例えば、室温~45℃、好ましくは20~37℃、pH6~9程度、好ましくはpH7~8で、5秒~10分程度、好ましくは30秒~5分程度行うことができるが、これらの条件に限定されるものではない。
【0121】
〔洗浄工程〕
本発明の対象物質測定方法の第3の態様においては、前記捕捉工程の後、かつ、下記の遊離工程の前に、前記捕捉体に結合した検出用分子と、それ以外の前記捕捉体に結合していない(捕捉されていない)夾雑物とを分離し、前記夾雑物を除去する洗浄工程をさらに含むことが好ましい。このような洗浄工程としては、特に制限されず、適宜従来公知の方法又はそれに準じた方法を採用することができ、上記の第1の態様の洗浄工程として挙げた方法と同様の方法が挙げられる。
【0122】
〔遊離工程〕
第3の態様の遊離工程においては、前記光切断リンカーを切断して、前記捕捉体に結合した検出用分子と前記プローブ分子との複合体を、前記磁気粒子から遊離させ、測定工程に供するための試料として、前記複合体を含有する調製試料を得る。
【0123】
前記光切断リンカーを切断する方法としては、光照射によってこれを切断する方法が挙げられる。前記遊離工程において、照射する光の光源及び光量としては、特に制限されず、前記光切断リンカーの種類に応じて適宜選択することができ、例えば、その好ましい条件も含めて、上記の第1の態様の遊離工程で挙げた条件と同様の条件が挙げられる。ただし、本発明においては、前記磁性粒子に前記スペーサーを介さずに前記光切断リンカーを結合させた場合に比較して、光切断リンカーの光切断効率に優れるため、光の照射時間を短くすることができる。
【0124】
〔測定工程〕
第3の態様の測定工程においては、前記調製試料中の前記複合体を検出することで前記対象物質を測定する。前記複合体の検出は、第3の態様に係る検出用分子として、標識物質で標識化された標識化検出用分子を用い、前記標識物質によって検出することが好ましい。
【0125】
第3の態様に係る標識化検出用分子は、前記検出用分子が標識物質で標識化されたものである。前記標識物質としては、公知の免疫学的測定において標識物質として用いられているものを特に制限なく用いることができ、好ましい態様も含めて、第1の態様の標識化検出用分子の標識物質として挙げたものと同様のものが挙げられる。
【0126】
第3の態様に係る標識化検出用分子は、前記検出用分子と前記標識物質とを結合することによって製造することができる。かかる結合方法としては、適宜従来公知の方法又はそれに準じた方法を採用することができ、前記検出用分子と前記標識物質とを直接結合させてもよく、間接的に結合させてもよい。このような結合方法としては、本発明の光切断リンカー結合磁性粒子の製造方法として挙げた方法(すなわち、上記の光切断効率向上方法においてスペーサーを挿入する方法として挙げた方法と同様の方法)と同様の方法が挙げられる。また、第3の態様に係る標識化検出用分子としては、市販のものを適宜用いてもよく、例えば、前記対象物質が抗原となる物質であり、前記競合物質が当該抗原又は当該抗原と同一若しくは類似の抗体認識部位を有する分子である場合には、前記抗原に対する標識化抗体等を適宜用いることができる。
【0127】
第3の態様としては、例えば、捕捉工程において、前記捕捉体と、前記試料と、前記標識化検出用分子と、を接触させ、前記捕捉体のプローブ分子を介して前記捕捉体に前記標識化検出用分子を捕捉させる。この反応により、捕捉体-標識化検出用分子を含む複合体(例えば免疫複合体)が形成される。結合しなかった試料及び標識化検出用分子を必要に応じて洗浄工程で洗浄した後、遊離工程で光切断リンカーを光切断して、磁性粒子から、前記標識化検出用分子と前記プローブ分子とを含む複合体を遊離させ、所定の方法で前記標識化検出用分子の標識物質を測定する。例えば、前記標識化検出用分子の標識物質が酵素である場合には、酵素に対応する発色基質や発光基質を添加し、酵素と基質とを反応させることによってシグナルを検出する。このとき、試料中に対象物質が多く存在する場合には、前記プローブ分子と前記標識化検出用分子との結合が、競合する前記対象物質と前記標識化検出用分子との結合によって阻害されるため、その分シグナルが減少することになる。したがって、前記標識化検出用分子のシグナルを検出することで、間接的に、試料中の前記対象物質の存在の有無及び量を検出することができ、また、標準試料における測定値との比較をすることによって試料中の前記対象物質の量を定量することができる。
【0128】
第3の態様の一例として、より具体的には、例えば、図3に示すように、磁性粒子31と光切断リンカー33とがスペーサー32を介して結合しており、光切断リンカー33に、試料中の対象物質35の競合物質(プローブ分子34)が結合した光切断リンカー結合磁性粒子301を用いる。反応系には、試料中の対象物質35及びその競合物質34に特異的に結合可能な検出用分子36(好ましくは対象物質35及び競合物質34に対する抗体)が標識物質37で標識化された標識化検出用分子302が共存する。先ず、捕捉工程において、対象物質35及び競合物質34を競合させ、競合物質34及び検出用分子36を介して、標識化検出用分子302を反応系(反応液)中に存在する光切断リンカー結合磁性粒子301に捕捉させる(a)。ここで、対象物質35の濃度が高いほど、競合物質34は標識化検出用分子302を捕捉しにくくなる。次いで、洗浄工程において、集磁された光切断リンカー結合磁性粒子301と結合しなかった対象物質35、標識化検出用分子302、不純物等を除去する。次いで、集磁した光切断リンカー結合磁性粒子301をイオン交換水等で懸濁した後(b)、UVを照射することで、光切断リンカー33を光切断させ、プローブ分子34(競合物質)、及び標識化検出用分子302を含む複合体303を遊離させる(c)。次いで、磁性粒子を集磁して、上清のみを取り出すことで、磁性粒子31を含まない、複合体303を含む溶液を得て、複合体303溶液中の標識物質37を検出する(d)。試料中の対象物質35の濃度が高いほど、検出される標識物質37のシグナルが低くなるため、検量線等を使用して、対象物質35の濃度を算出することができる。なお、かかる具体例は第3の態様の一例を示すものであり、標識物質37、プローブ分子34、検出用分子36としての物質を選択する等、条件は適宜変更してもよい。
【0129】
(第3の態様に用いるためのキット)
本発明の第3の態様に用いるためのキットは、構成試薬として、少なくとも、本発明の光切断リンカー結合磁性粒子であり、かつ、前記プローブ分子が前記対象物質の競合物質である光切断リンカー結合磁性粒子を含むものである。また、前記キットとしては、第3の態様に係る検出用分子、より好ましくは前記標識化検出用分子をさらに含むことが好ましい。
【0130】
これらは、それぞれ独立に、固体(粉末)状であっても緩衝液に溶解された液体状であってもよい。液体状である場合、各溶液(標品)における前記光切断リンカー結合磁性粒子の濃度は、特に限定されないが、過剰に添加すると場合により非特異的なシグナルが増加する傾向にある観点から、0.005~0.2質量%であることが好ましく、0.01~0.1質量%であることがより好ましい。また、前記検出用分子の濃度は、特に限定されないが、同様の観点から、0.05~1μg/mLであることが好ましく、0.1~0.5μg/mLであることがより好ましい。
【0131】
本発明の第3の態様に用いるためのキットとしては、ELISA、CLEIA、イムノクロマト等の通常の免疫学的測定で備えるべき構成をさらに備えていてもよい。例えば、標準試料(標準検体試薬、各濃度)、対照試薬、前記試料希釈液、前記粒子懸濁媒、前記反応用バッファー、前記洗浄液、及び希釈用カートリッジからなる群から選択される少なくとも1種をさらに備えていてもよい。また、第3の態様に係る検出用分子を標識化するための標識物質をさらに備えていてもよい。
【0132】
さらに、例えば、前記標識物質が酵素である場合には、当該標識物質の検出・定量に必要な基質や反応停止液等をさらに含んでいてもよい。さらに、必要に応じて、試料の前処理を行うための前処理液や当該キットの使用説明書をさらに含んでいてもよい。
【実施例
【0133】
以下、参考例、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、各参考例、実施例及び比較例において、「%」の表示は、特に記載のない場合、重量/容量(w/v:g/mL)パーセントを示す。また、各実施例及び比較例において、使用した機器、試薬等は、特に記載のない限り、参考例1に使用したものと同様のものである。
【0134】
(参考例1)マイクロプレートに固相化した光切断リンカーの切断率試験
(1)アルカリフォスファターゼ-光切断リンカー-ビオチン結合体の調製
アルカリフォスファターゼ(ALP)(ALP-24、オリエンタル酵母社製)2mgをゲル濾過スピンカラム(PD-10、GE社製)にロードし、緩衝液1(20mM PB(pH7.2))で溶出した。次いで、溶出液にN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)-光切断リンカー(PC)-ビオチン(商品名:PC-Biotin-NHS、Ambergen社製)を50mM含むジメチルホルムアミド(DMF)を2.86μL添加し、25℃で1時間振とうしてアルカリフォスファターゼ-光切断リンカー-ビオチン結合体(ALP-PC-ビオチン結合体)を得た後、再度ゲル濾過スピンカラムにロードし、緩衝液1で溶出した。
【0135】
(2)ALP-PC固相化プレートの調製
96ウェルマイクロウェルプレート(ポリスチレン製、Nunc社製)の各ウェルにストレプトアビジン(SA)を5μg/mL含む緩衝液1を100μL添加し、37℃で1時間振とう混合した。ルミパルス(登録商標)洗浄液(富士レビオ社製)を用いて3回洗浄した後、緩衝液2(50mM Tris、150mM NaCl、1mM EDTA、2% BSA(pH7.2))を100μL添加し、37℃で30分間静置した。ルミパルス洗浄液で3回洗浄した後、ALP-PC-ビオチン結合体を含む緩衝液3(50mM MES、150mM NaCl、1mM MgCl、0.1mM ZnCl、0.5% BSA(pH6.8))を100μL加えて、37℃で30分間反応させた。ここで、緩衝液3は、ALP濃度が0.1μg/mL又は0.01μg/mLとなるように調整した。ルミパルス洗浄液で3回洗浄し、ALP-PC固相化プレートを得た。
【0136】
(3)光切断リンカーの切断
ALP-PC固相化プレートに超純水を100μL加え、10分間UV照射を行った。UV照射は、UV-LED(オプトコード社製)を用いて365nmの光(UV)を15mW/cmの強度で照射することで実施した(特に断りのない限り、以下同じ)。UV照射後のプレートの上清を回収し、20μLを96ウェルマイクロウェルプレートに添加し、次いで基質液(p-ニトロフェニルリン酸ナトリウム(pNPP)、富士フイルム和光純薬社製)を100μL添加した。37℃で15分間反応させた後、反応停止液(0.2mmol/L水酸化ナトリウム)80μLを加え、37℃で1分間振とうした。他方、上清回収後のALP-PC固相化プレート(残存プレート)については、ルミパルス洗浄液で3回洗浄した後、超純水20μLと基質液100μLとを添加した。37℃で15分間反応させた後、反応停止液80μLを加え、37℃で1分間振とうした。
【0137】
次いで、上清及び残存プレートのそれぞれについて、各ウェルの405nmの吸光度を測定した(Varioskan flash(サーモフィッシャー社製)を使用、以下同様)。また、コントロールとして、ALP-PC固相化プレートにUV照射を行わなかったこと以外は上記と同様にして、上清及び残存プレートのそれぞれについて、各ウェルの405nmの吸光度を測定した。
【0138】
各条件におけるプレートの吸光度及び切断率({上清吸光度/(上清吸光度+残存プレート吸光度)}×100(%))を下記の表1に示す。なお、表1中の吸光度は、ブランク(超純水+マイクロウェルプレート)を差し引いた値である。
【0139】
【表1】
【0140】
表1に示したように、ポリスチレン製のマイクロウェルプレートに固相化した光切断リンカーにおいては、UV照射によって、ALPがプレートから上清に効率よく移行し、光切断効率が高いことが確認された。
【0141】
(比較例1)磁性粒子に直接結合させた光切断リンカーの切断率試験
(1)ALP-PC結合磁性粒子の調製
磁性粒子として、アミノ基を有するダイナビーズ(商品名:Dynabeads M-270 Amine、サーモフィッシャー社製)を使用した。磁性粒子10mgをDMFで3回洗浄し、DMF485μL及び50mM NHS-PC-ビオチン/DMF溶液15μLに懸濁した。25℃で2時間振とうした後、DMFで3回洗浄した。DMF1mLで懸濁し、ビオチン-PC結合粒子懸濁液を得た。
【0142】
次いで、ビオチン-PC結合粒子を緩衝液4(20mM PB、0.1%Tween20(pH7.2))を用いて3回洗浄した後、20μg/mL SA結合ALP(Mabtech AB社製)を含む緩衝液4 100μLに懸濁した。37℃で30分間振とうしてALP-PC結合磁性粒子を得た後、緩衝液4で3回洗浄した。
【0143】
(2)光切断リンカーの切断
ALP-PC結合磁性粒子を緩衝液3に懸濁して37℃で5分間振とうした後、ルミパルス洗浄液で3回洗浄した。超純水100μLで磁性粒子を懸濁した後、8mL試験管に全量を移し、0分間、5分間、10分間、15分間のUV照射を行った。
【0144】
次いで、上清を回収して96ウェルマイクロウェルプレートに20μL移した。基質液100μLを加えて、37℃で15分間反応させた後、反応停止液80μLを加え、37℃で1分間振とうした。各ウェルの405nmの吸光度を測定した。他方、上清回収後の残存粒子はルミパルス洗浄液で3回洗浄した後、超純水20μL及び基質液100μLに懸濁した。37℃で15分間反応させた後、反応停止液80μLを加え、37℃で1分間振とうした。反応後の上清150μLをマイクロウェルプレートに移し、各ウェルの405nmの吸光度を測定した。
【0145】
各条件におけるプレートの吸光度及び切断率({上清吸光度/(上清吸光度+残存粒子吸光度)}×100(%)、下記表3~5、7において同じ)を下記の表2に示す。なお、表2中の吸光度は、ブランク(超純水+マイクロウェルプレート)を差し引いた値である。
【0146】
【表2】
【0147】
表2に示したように、磁性粒子にスペーサーを介さずに光切断リンカーを結合させた場合には、UV照射をしても、光切断リンカーはほとんど切断されないことが確認された。なお、UV照射後10分後においても、上清吸光度及び残存粒子吸光度の合計はほとんど一定であり、本試験のUV照射ではALPが分解されていないことが確認された。
【0148】
(実施例1)ストレプトアビジンを介して磁性粒子に結合させた光切断リンカーの切断率試験
(1)ALP-PC-SA結合磁性粒子の調製
磁性粒子としてSA結合ダイナビーズ(商品名:Dynabeads M-280 Streptavidin、サーモフィッシャー社製)を使用した。磁性粒子1mgを8mL試験管中で緩衝液4を用いて3回洗浄した。次いで、参考例1の(1)と同様にして得たALP-PC-ビオチン結合体を20μL/mL含む緩衝液3を100μL添加し、37℃で30分間振とうしてALP-PC-SA結合磁性粒子を得た。緩衝液4で3回洗浄した後、緩衝液1で6回洗浄し、次いで緩衝液2で3回洗浄した。緩衝液2を400μL加えて37℃で1時間振とうした後、緩衝液2で3回洗浄し、さらに緩衝液2を100μL加えてALP-PC-SA結合磁性粒子液とした。
【0149】
(2)光切断リンカーの切断
ALP-PC-SA結合磁性粒子を0.15μg/mL含む緩衝液3 1100μLを8mL試験管に入れ、37℃で5分間静置した。ルミパルス洗浄液で3回洗浄した後、超純水を440μL加えて懸濁し、試験管に100μLずつ分注した。次いで、10分間UV照射を行い、上清を回収して96ウェルマイクロウェルプレートに20μL移した。基質液100μLを加えて、37℃で15分間反応させた後、反応停止液80μLを加え、37℃で1分間振とうした。各ウェルの405nmの吸光度を測定した。
【0150】
他方、上清回収後の残存粒子はルミパルス洗浄液で3回洗浄した後、超純水20μL及び基質液100μLに懸濁した。37℃で15分間反応させた後、反応停止液80μLを加え、37℃で1分間振とうした。反応後の上清150μLをマイクロウェルプレートに移し、各ウェルの405nmの吸光度を測定した。
【0151】
また、コントロールとして、ALP-PC-SA結合磁性粒子にUV照射を行わなかったこと以外は上記と同様にして、上清及び残存粒子のそれぞれについて、各ウェルの405nmの吸光度を測定した。測定は、UV照射あり、なしの各条件について、それぞれ二重測定(それぞれサンプル1及びサンプル2について測定)を行った。
【0152】
各条件におけるプレートの吸光度及び切断率を下記の表3に示す。なお、表3中の吸光度は、ブランク(超純水+マイクロウェルプレート)を差し引いた値である。
【0153】
【表3】
【0154】
表3に示したように、磁性粒子にアビジンを介して光切断リンカーを結合させた場合には、UV照射による光切断リンカーの切断率が20~30%となり、比較例1に比較して向上した。
【0155】
(実施例2)ポリエチレングリコールを介して磁性粒子に結合させた光切断リンカーの切断率試験
(1)ALP-PC-ポリエチレングリコール結合磁性粒子の調製
磁性粒子として、ダイナビーズカルボキシル化粒子(Dynabeads M-270 Carboxylic acid、サーモフィッシャー社製)を使用した。磁性粒子10mgを8mL試験管中で超純水1mLを用いて3回洗浄し、超純水70μL、19mg/mL EDC(1-Ethyl-3-[3-dimethyl amino propyl]carbodiimide Hydrochloride)溶液505μL、20mg/mL NH-ポリエチレングリコール(PEG)-NH(PEGの重量平均分子量:1K、2K、3.4K、5K、10K、又は20K;商品名:SUNBRIGHT DE-010PA(1K)、DE-020PA(2K)、DE-034PA(3.4K)、DE-050PA(5K)、DE-100PA(10K)、DE-200PA(20K);(株)日油社製)425μLを加えて25℃で2時間振とうした。超純水1mLで3回洗浄した後、DMF 1mLで3回洗浄した。
【0156】
次いで、DMF485μL、50mM NHS-PC-ビオチン(Ambergen社製)のDMF溶液15μLを加えて、25℃で2時間振とうした。DMF 1mLで3回洗浄し、DMF1mLに懸濁した。次いで、上記懸濁液0.1mLを試験管中で緩衝液4を用いて3回洗浄し、次いで緩衝液1で6回洗浄した。さらに緩衝液2で3回洗浄した後、緩衝液2で懸濁し、37℃で1時間振とうした。緩衝液2で3回洗浄した後、緩衝液2 100μLに懸濁し、ビオチン-PC-PEG結合磁性粒子液とした。次いで、ビオチン-PC-PEG結合磁性粒子液25μLについて、上清を除去し、SA結合ALP(Mabtech社製)を緩衝液2で10000倍希釈した溶液1667μLに懸濁し、37℃で1時間振とうしてALP-PC-ポリエチレングリコール結合磁性粒子(ALP-PC-PEG結合磁性粒子)液とした。
【0157】
(2)光切断リンカーの切断
ALP-PC-PEG結合磁性粒子をルミパルス洗浄液で3回洗浄した。超純水667μLに懸濁し、8mL試験管に100μLずつ分注し、各粒子についてUV照射を行った。UV照射時間は、重量平均分子量3.4KのPEGを用いた粒子については、5分間、12.5分間、15分間、17.5分間の各条件とし、その他のPEGを使用した粒子については、15分間とした。UV照射後の各溶液について、上清を回収して96ウェルマイクロウェルプレートに20μLずつ移した。各ウェルに基質液100μLを加えて、37℃で15分間反応させた後、反応停止液80μLを加え、37℃で1分間振とうした。各ウェルの405nmの吸光度を測定した。
【0158】
他方、上清回収後の残存粒子はルミパルス洗浄液で3回洗浄した後、超純水20μL及び基質液100μLに懸濁した。37℃で15分間反応させた後、反応停止液80μLを加え、37℃で1分間振とうした。反応後の上清150μLをマイクロウェルプレートに移し、各ウェルの405nmの吸光度を測定した。
【0159】
また、コントロールとして、ALP-PC-PEG結合磁性粒子にUV照射を行わなかったこと以外は上記と同様にして、上清及び残存粒子のそれぞれについて、各ウェルの405nmの吸光度を測定した。
【0160】
各種PEGを使用した条件(UV照射時間:15分間)におけるプレートの吸光度及び切断率を下記の表4に示す。また、重量平均分子量3.4KのPEGを用いた粒子について、各UV照射時間条件において測定した吸光度及び切断率を下記の表5に示す。なお、表4及び表5中の吸光度は、ブランク(超純水+マイクロウェルプレート)を差し引いた値である。
【0161】
【表4】
【0162】
【表5】
【0163】
表4に示したように、磁性粒子にポリエチレングリコールを介して光切断リンカーを結合させた場合には、UV照射による光切断リンカーの切断率が高くなることが確認され、また、重量平均分子量3.4Kのポリエチレングリコールを使用することでより切断率が高くなる傾向にあることが確認された。さらに、表5に示したように、UV照射時間を長くすることで、より切断率が高くなる傾向にあることが確認された。
【0164】
(実施例3)デキストランを介して磁性粒子に結合させた光切断リンカーの切断率試験
(1)ALP-PC-デキストラン結合磁性粒子の調製
磁性粒子として、ダイナビーズカルボキシル化粒子(Dynabeads M-270Carboxylic acid、サーモフィッシャー社製)を使用した。磁性粒子10mgを8mL試験管中で超純水1mLを用いて3回洗浄し、超純水300μL、19mg/mL EDC(1-Ethyl-3-[3-dimethyl amino propyl]carbodiimide Hydrochloride)溶液500μL、10mg/mL NH-デキストラン(Dex)(Dexの1分子あたりの質量:10K、40K、又は70K;サーモフィッシャー社製)200μLを加えて25℃で一晩振とうした。超純水1mLで3回洗浄した後、超純水1mLに懸濁した。
【0165】
次いで、上記懸濁液0.2mLを試験管中でDMFを用いて3回洗浄した後、DMF194μL、50mM NHS-PC-ビオチン(Ambergen社製)のDMF溶液6μLを添加し、25℃で2時間振とうした。DMFで3回洗浄し、緩衝液1で3回洗浄した。さらに緩衝液2で3回洗浄した後、緩衝液2 400μLで懸濁し、37℃で一晩振とうし、ビオチン-PC-Dex結合磁性粒子液とした。次いで、ビオチン-PC-Dex結合磁性粒子液の上清を除去し、SA結合ALP(Mabtech社製)を緩衝液2で10000倍希釈した溶液667μLに懸濁し、37℃で1時間振とうしてALP-PC-デキストラン結合磁性粒子(ALP-PC-Dex結合磁性粒子)液とした。
(2)光切断リンカーの切断
ALP-PC-Dex結合磁性粒子をルミパルス洗浄液で3回洗浄した。緩衝液5(50mM HEPES(pH7.0))に懸濁し、8mL試験管に100μLずつ分注し、15分間のUV照射を行った。UV照射後、各試料をルミパルスプレスト(登録商標)専用キュベットに移し、ルミパルス洗浄液で6回洗浄し、ルミパルス基質液を200μL加えて反応させた。各サンプルの発光量(カウント)をルミネッセンスリーダー BLR-201(アロカ社製)を用いて測定した。また、ALP-PC-Dex結合磁性粒子にUV照射を行わなかったこと以外は上記と同様にして、各試料について、カウントを測定した。
【0166】
各種Dexを使用した条件における発光量及び切断率({(UV照射なしの発光量-UV照射ありの発光量)/UV照射なしの発光量}×100(%))を下記の表6に示す。なお、表6中のカウントは、ブランク(超純水)を差し引いた値である。
【0167】
【表6】
【0168】
表6に示したように、磁性粒子にデキストランを介して光切断リンカーを結合させた場合には、UV照射による光切断リンカーの切断率が高くなることが確認され、また、1分子あたりの質量がより大きいデキストランを使用することでより切断率が高くなる傾向にあることが確認された。
【0169】
(実施例4)光切断リンカー結合磁性粒子を用いたイムノアッセイ
(1)IgG-PC-SA-PEG結合磁性粒子の調製
磁性粒子としてアミノ基を有するダイナビーズ(商品名:Dynabeads M-270 Amine、サーモフィッシャー社製)を使用した。磁性粒子6mgにNHS-PEG(PEGの重量平均分子量:5K)-ビオチン(商品名:SUNBRIGHT BI-050TS、(株)日油社製)を2μmol/mL含むDMF 600μLを加え、25℃で2時間浸透させた。DMF600μLで3回洗浄した後、緩衝液1で3回洗浄した。さらに緩衝液4で3回洗浄した後、緩衝液4に懸濁してビオチン-PEG結合磁性粒子液とした。
【0170】
また、抗アルファフェトプロテイン(AFP)マウスIgG抗体(IgG、富士レビオ社製)2mgをゲル濾過スピンカラム(PD-10、GE社製)にロードし、緩衝液1で溶出した。次いで、NHS-PC-ビオチン(Ambergen社製)を50mM含むDMFを2.86μL添加し、25℃で1時間振とうした後、再度ゲル濾過スピンカラムにロードし、緩衝液1で溶出し、IgG-PC-ビオチン結合体を得た。ストレプトアビジン(SA)を100μg/mL含む緩衝液4 2mLに、IgG-PC-ビオチン結合体を250μg/mL含む緩衝液4を2mL加え、25℃で2時間振とうした。Superdex200を用いたHPLCを用いてIgG-PC-SA結合体を分取した。
【0171】
ビオチン-PEG結合磁性粒子液から上清を除去し、IgG-PC-SA結合体を1μg/mL含む緩衝液4を1600μL添加した。25℃で1時間振とうした後、ルミパルス洗浄液で3回洗浄した後、緩衝液4 1600μLを加えて懸濁し、IgG-PC-SA-PEG結合磁性粒子結合体の懸濁液を得た。
【0172】
(2)AFPの検出
IgG-PC-SA-PEG結合磁性粒子の懸濁液を8mL試験管に250μLずつ小分けした。ルミパルスプレストAFPキャリブレータ(0ng/mL又は2000ng/mL、富士レビオ社製)20μLを各試験管に加え、37℃で10分間反応させた。ルミパルス洗浄液で6回洗浄した後、ALP標識抗AFP抗体(抗AFPマウスIgG抗体)溶液(富士レビオ社製、0.1μg/mL)を250μL加えた。37℃で10分間反応させた後、ルミパルス洗浄液で6回洗浄し、緩衝液4を100μL加えて懸濁した。8mL試験管に懸濁液全量を移し、15分間UV照射を行った。
【0173】
UV照射後の各溶液について、上清を回収して96ウェルマイクロウェルプレートに20μLずつ移した。各ウェルに基質液100μLを加えて、37℃で15分間反応させた後、反応停止液80μLを加え、37℃で1分間振とうした。各ウェルの405nmの吸光度を測定した。
【0174】
他方、上清回収後の残存粒子はルミパルス洗浄液で3回洗浄した後、超純水20μL及び基質液100μLに懸濁した。37℃で15分間反応させた後、反応停止液80μLを加え、37℃で1分間振とうした。反応後の上清150μLをマイクロウェルプレートに移し、各ウェルの405nmの吸光度を測定した。
【0175】
また、コントロールとして、IgG-PC-SA-PEG結合磁性粒子にUV照射を行わなかったこと以外は上記と同様にして、上清及び残存粒子のそれぞれについて、各ウェルの405nmの吸光度を測定した。
【0176】
各条件におけるプレートの吸光度及び切断率を下記の表7に示す。なお、表7中の吸光度は、ブランク(超純水+マイクロウェルプレート)を差し引いた値である。
【0177】
【表7】
【0178】
表7に示したように、本発明の光切断リンカー結合磁性粒子を用いたイムノアッセイににおいては、磁性粒子にストレプトアビジン及びポリエチレングリコールを介して光切断リンカーを結合させたことでUV照射による光切断リンカーの切断率を高められることが確認された。
【0179】
(実施例5)抗体断片(Fab’)を含む光切断リンカー結合磁性粒子を用いたイムノアッセイ
(1)SA-PEG結合磁性粒子の調製
ストレプトアビジン(SA)1.28mgを0.1M炭酸水素ナトリウムバッファー(pH8.5)とともにゲル濾過スピンカラム(PD-10、GE社製)にロードした。イミノチオラン塩酸塩を加えて25℃で1時間振とうした後、緩衝液6(0.1M PB、1mM EDTA2Na、0.1%Tween20(pH6.3))を用いて精製し、SH基修飾ストレプトアビジン(SA-SH)を得た。
【0180】
磁性粒子として、アミノ基を有するダイナビーズ(商品名:Dynabeads M-270 Amine、サーモフィッシャー社製)を使用した。2mgの磁性粒子をDMFで3回洗浄した後、NHS-PEG(PEGの重量平均分子量:5K)-マレイミド基(Mal)(2μmol/mLDMF、商品名:SUNBRIGHT MA-050TS、(株)日油社製)を200μL添加し、25℃で一晩反応させた。DMFで3回洗浄した後、緩衝液6で3回洗浄し、次いで、SA-SH溶液(400μg/mL)200μLを添加した。25℃で一晩振とうした後、緩衝液6で3回洗浄した。5mMシステイン/緩衝液6溶液を添加し、25℃で3時間振とうしてSA-PEG結合磁性粒子を得た。緩衝液7(0.1M PB、1mM EDTA2Na(pH6.3))で6回、緩衝液6で3回洗浄し、洗浄後のSA-PEG結合磁性粒子を緩衝液2に懸濁した。
【0181】
(2)IgG-PC-SA-PEG結合磁性粒子、Fab’-PC-SA-PEG結合磁性粒子の調製
抗IL-6マウスIgG抗体(富士レビオ社製)2mgをゲル濾過スピンカラム(PD-10、GE社製)にロードし、0.1Mクエン酸バッファー(pH3.5)で溶出し、5mg/mLの抗体溶液を得た。1.0mg/mLペプシン溶液(0.1Mクエン酸バッファー(pH3.5))に体積比が1/100となるように加え、37℃で1時間反応させ、2M Tris緩衝液(pH10.0)を体積比1/10で加えた。Superdex200カラムと緩衝液6(0.1M PB、1mM EDTA2Na(pH6.3))とを用いてゲル濾過精製し、5mg/mLのF(ab’)断片溶液を得た。
【0182】
F(ab’)断片溶液に、0.2M 2-メルカプトエチルアミン(2-MEA)を体積比1/20で加え、37℃で1時間反応させた。次いで、ゲル濾過スピンカラムにロードして、緩衝液7を用いて洗浄してFab’溶液を得た。これに25mM Mal-PC-ビオチン結合体溶液(PC-ビオチン-NHS及び2-アミノエチルマレイミドより調製)を0.3μL添加し、25℃で一晩振とうした。次いで、遠心フィルター(Amicon Ultra(3K))にロードし、PBS 500μLを加えて遠心した。遠心を3回繰り返した後、緩衝液2に溶解し、Fab’-PC-ビオチン結合体溶液を得た。
【0183】
また、上記のFab’溶液に代えて、抗IL-6マウスIgG抗体の完全抗体(IgG)溶液を使用したこと以外は上記と同様にして、IgG-PC-ビオチン結合体溶液を得た。
【0184】
SA-PEG結合磁性粒子225μgにFab’-PC-ビオチン結合体溶液又はIgG-PC-ビオチン結合体溶液(いずれも400ng/mL)を1500μL添加し、37℃で30分間反応させ、IgG-PC-SA-PEG結合磁性粒子液、Fab’-PC-SA-PEG結合磁性粒子液をそれぞれ得た。
(3)IL-6の測定
IgG-PC-SA-PEG結合磁性粒子、Fab’-PC-SA-PEG結合磁性粒子をそれぞれルミパルス洗浄液(富士レビオ社製)で3回洗浄した後、緩衝液2を1500μL添加し、ルミパルスカートリッジ(富士レビオ社製)に小分け分注した。ルミパルスIL-6キャリブレータ(0pg/mL又は400pg/mL、富士レビオ社製)50μLを各カートリッジに添加し、37℃で10分間反応させた。ルミパルス洗浄液で6回洗浄した後、ルミパルス標識体液(ALP標識抗IL-6マウスIgG抗体)250μLを添加し、37℃で10分間反応させた。ルミパルス洗浄液で6回洗浄した後、緩衝液3 100μLに懸濁し、UV照射を1分間行った。UV照射は、LIGHTNINGCURE LC-L1V3(浜松ホトニクス社製)を使用し、波長365nm、光量10000mW/cmの条件で、1方向から照射した。UV照射後の磁性粒子を、さらにルミパルス洗浄液で6回洗浄し、ルミパルス基質液 200μLを添加し、37℃で5分間反応させた。各条件における磁性粒子液の発光量(カウント)をルミネッセンスリーダー BLR-201(アロカ社製)を用いて測定した。また、IgG-PC-SA-PEG結合磁性粒子、Fab’-PC-SA-PEG結合磁性粒子のそれぞれにUV照射を行わなかったこと以外は上記と同様にして、各試料について、カウントを測定した。
【0185】
各条件における発光量を表8に示す。表8中の「切断率」は、IL-6濃度400pg/mLのカウント値からブランクを引いた差分に基づいて、同条件のUV照射なしの切断率を0%(残存率100%)として算出したものである。
【0186】
【表8】
【0187】
表8に示したように、完全抗体(IgG)を使用した条件でも、光切断リンカーの切断率は8割程度と優れていたが、抗体断片(Fab’)を使用した条件では、光切断リンカーの切断率がさらに9割にまで向上した。
【産業上の利用可能性】
【0188】
本発明によれば、磁性粒子及び光切断リンカーを備える光切断リンカー結合磁性粒子において、前記光切断リンカーの光切断効率を向上させる方法、光切断効率に優れた光切断リンカー結合磁性粒子、並びに、これらを用いて対象物質を測定する測定方法及びこれに用いるためのキットを提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0189】
11、21、31…磁性粒子、12、22、32…スペーサー、13、23、33…光切断リンカー、14、24…プローブ分子、34…プローブ分子(競合物質)、15、25、35…対象物質、16、36…検出用分子、26…競合物質、17、27、37…標識物質、101、201、301…光切断リンカー結合磁性粒子、102、302…標識化検出用分子、202…標識化競合物質、103、203、303…複合体。
図1
図2
図3