IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立産機システムの特許一覧

特許7606483エアシャワー装置およびエアシャワー装置の制御方法
<>
  • 特許-エアシャワー装置およびエアシャワー装置の制御方法 図1
  • 特許-エアシャワー装置およびエアシャワー装置の制御方法 図2
  • 特許-エアシャワー装置およびエアシャワー装置の制御方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】エアシャワー装置およびエアシャワー装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 9/00 20060101AFI20241218BHJP
   F24F 11/61 20180101ALI20241218BHJP
   B08B 5/02 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
F24F9/00 J
F24F11/61
B08B5/02 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022034768
(22)【出願日】2022-03-07
(65)【公開番号】P2023130220
(43)【公開日】2023-09-20
【審査請求日】2024-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】八木 星弥
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 朋行
(72)【発明者】
【氏名】矢田 洋一
【審査官】広瀬 雅治
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-025691(JP,A)
【文献】特開2020-139670(JP,A)
【文献】特開2021-139621(JP,A)
【文献】特開2000-074437(JP,A)
【文献】特開2010-096382(JP,A)
【文献】特開2009-097775(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0040600(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1333635(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 9/00
F24F 11/61
B08B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前室側扉と清浄室側扉とを備え、入場者に対しエアジェットを噴射する機能を備えたエアシャワー室と、前記エアシャワー室に人が入場したことを検知するセンサと、前記前室側扉の開閉状態を検知する前室側扉スイッチと、前記清浄室側扉の開閉状態を検知する清浄室側扉スイッチと、前記センサ、前記前室側扉スイッチおよび前記清浄室側扉スイッチの検知信号を利用して、前記エアシャワー室内の人が清浄室への入室者である場合に前記エアジェットを作動する制御を行なう制御部と、を備えたエアシャワー装置であって、
前記制御部は、前記前室側扉スイッチが検知する開閉時間を前半と後半に2分した後半時間内に前記センサが入場者を検知した場合、および前記開閉時間を経過後所定時間内に前記センサが前記入場者を検知した場合に、前記入室者と判断し前記エアジェットを作動させるようにしたエアシャワー装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたエアシャワー装置において、
前室側扉スイッチの検知信号を利用し、前記開閉時間をカウントする扉タイマと、前記センサが入場者を検知した場合にカウントが停止し初期化されるセンサタイマとを設け、前記制御部は、前記扉タイマのカウント値と、前記センサタイマのカウント値を用いて、前記入室者を判断し、前記エアジェットを作動させるよう制御することを特徴とするエアシャワー装置。
【請求項3】
請求項2に記載されたエアシャワー装置において、
前記制御部は、前記開閉時間を前半と後半に2分割するための設定値を設定し、前記扉タイマのカウント値を前記設定値で除した値を判定値とし、前記センサタイマのカウント値と前記判定値とを比較し、前記センサタイマの前記カウント値が前記判定値より小さい場合には、前記入室者と判断しエアジェットを作動させることを特徴とするエアシャワー装置。
【請求項4】
請求項1に記載されたエアシャワー装置において、前記エアシャワー室の内部に、動作に関する設定およびガイダンス表示のための表示設定部を設けたことを特徴とするエアシャワー装置。
【請求項5】
前室側扉と清浄室側扉とを備え、入室者に対しエアジェットを噴射する機能を備えたエアシャワー室と、前記エアシャワー室に人が入場したことを検知するセンサと、前記前室側扉の開閉状態を検知する前室側扉スイッチと、前記清浄室側扉の開閉状態を検知する清浄室側扉スイッチとを備え、前記センサ、前記前室側扉スイッチおよび前記清浄室側扉スイッチの検知信号により、前記エアシャワー室内の人が清浄室への入室者である場合に前記エアジェットを作動する制御を行なうエアシャワー装置の制御方法であって、
前記前室側扉スイッチが検知する開閉時間を前半と後半に2分した後半時間内に前記センサが入場者を検知した場合、および前記開閉時間を経過後所定時間内に前記センサが前記入場者を検知した場合に、前記入室者と判断し前記エアジェットを作動させるようにしたエアシャワー装置の制御方法。
【請求項6】
請求項に記載されたエアシャワー装置の制御方法において、
前記前室側扉スイッチの検知信号を利用し、前記開閉時間をカウントする扉タイマと、前記センサが入場者を検知した場合にカウントが停止し初期化されるセンサタイマとを設けておき、前記扉タイマのカウント値と、前記センサタイマのカウント値を用いて、前記入室者を判断し、前記エアジェットを作動させるよう制御することを特徴とするエアシャワー装置の制御方法。
【請求項7】
請求項に記載されたエアシャワー装置の制御方法において、
前記開閉時間を前半と後半に2分割するための設定値を設定し、前記扉タイマのカウント値を前記設定値で除した値を判定値とし、前記センサタイマのカウント値と前記判定値とを比較し、前記センサタイマの前記カウント値が前記判定値より小さい場合には、前記入室者と判断しエアジェットを作動させることを特徴とするエアシャワー装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアシャワー装置およびエアシャワー装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エアシャワー装置は、半導体、精密機械等の製造や、食品の加工などを行うための清浄室の出入口に設置され、清浄室に入退場する人(使用者等)に付着した塵埃や花粉などをエアジェットで除去し、塵埃等を清浄室に持ち込ませないようにするための装置である。
【0003】
一般的なエアシャワー装置は、エアジェットを噴射するためのエアジェット機構を有するエアシャワー室と、エアシャワー室の入口側(清浄室と反対側)に設けた前室側扉と、清浄室への入退室を行なうための清浄室側扉とを備えている。さらに、エアシャワー装置は、エアシャワー室内に人が居ること(入場者有)を検知するための人検知用のセンサと、前室側扉の開閉状態を検出する前室側扉スイッチと、清浄室側扉の開閉状態を検知する清浄室側扉スイッチとを備えている。また、前室側扉スイッチ、清浄室側扉スイッチ、およびセンサの検知信号を用いてエアシャワー室内にいる人が「入室者」(清浄室へ入室する人)であるか、反対にエアシャワー室から外に出ていく「退室者」(清浄室から出てエアシャワー室から外部に退室する人)であるかを判断して、エアジェットの動作制御や扉の開閉制御を実施する制御部を備えている。
【0004】
そもそも、エアシャワー装置は、人に付着した塵埃や、花粉などを清浄室内に持ち込むことを防止するための装置であるため、入室者(清浄室へ入室する人)に対しては、必ずエアジェットを作動させて(エアを噴出させて)塵埃等の除去を行った後に清浄室への入室を許可する制御が必要となる。一方、清浄室からの退室者は、原則として塵埃等を除去する必要がないため、エアジェットを作動させず、そのまま退場を許可しても良い。そのため、通常、エアシャワー装置は、入室者に対してはエアジェットを作動させ、退室者に対してはエアジェットを作動させないように制御している場合が多い。
【0005】
このような制御を行なうエアシャワー装置は、例えば、特開平6-101882号公報(特許文献1)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平6-101882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、一般的なエアシャワー装置の制御では、「入室者」を判定しエアジェットを作動させる(制御部がエアジェット機構を駆動しエアを噴出させる)のは、前室側扉スイッチの開閉時間(扉が開き始めてから完全に閉じるまでの時間)が経過した直後に、センサが人を検知した場合に、その人が入室者であると判断してエアジェットを作動させている。
【0008】
しかしながら、この制御方法では、人(使用者等)が前室側扉からエアシャワー室に入場する際に、前室側扉が完全に閉じる前の時点において、人がセンサの検知範囲を通過して清浄室側扉の前に移動しているような場合には、制御部は正常に「入室者」と判断することができずエアジェットを作動させることができない。つまり、前室側扉の開閉途中にセンサが入場者(人)を検知しても、エアシャワー室内にいる人を入室者であると判定しない状態となり、エアジェットを作動させることはできない。このような場合には、清浄室へ塵埃等を持ち込む、いわゆる「すり抜け動作」となる。
【0009】
そこで、本発明の目的は、このような課題を解決すること、すなわち、前室側扉の開閉終了時前に人がエアシャワー室に入場した場合であっても入室者と判断し確実にエアジェットを作動させることができるエアシャワー装置およびエアシャワー装置の制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、その一例を挙げると、前室側扉と清浄室側扉とを備え、入場者に対しエアジェットを噴射する機能を備えたエアシャワー室と、前記エアシャワー室に人が入場したことを検知するセンサと、前記前室側扉の開閉状態を検知する前室側扉スイッチと、前記清浄室側扉の開閉状態を検知する清浄室側扉スイッチと、前記センサ、前記前室側扉スイッチおよび前記清浄室側扉スイッチの検知信号を利用して、前記エアシャワー室内の人が清浄室への入室者である場合に前記エアジェットを作動する制御を行なう制御部とを、備えたエアシャワー装置であって、前記制御部は、前記前室側扉スイッチが検知する開閉時間を前半と後半に2分した後半時間内に前記センサが入場者を検知した場合、および前記開閉時間を経過後所定時間内に前記センサが前記入場者を検知した場合に、前記入室者と判断し前記エアジェットを作動させるようにしたエアシャワー装置である。
【0011】
また、本発明の他の例を挙げると、前室側扉と清浄室側扉とを備え、入室者に対しエアジェットを噴射する機能を備えたエアシャワー室と、前記エアシャワー室に人が入場したことを検知するセンサと、前記前室側扉の開閉状態を検知する前室側扉スイッチと、前記清浄室側扉の開閉状態を検知する清浄室側扉スイッチとを備え、前記センサ、前記前室側扉スイッチおよび前記清浄室側扉スイッチの検知信号により、前記エアシャワー室内の人が清浄室への入室者である場合に前記エアジェットを作動する制御を行なうエアシャワー装置の制御方法であって、前記前室側扉スイッチが検知する開閉時間を前半と後半に2分した後半時間内に前記センサが入場者を検知した場合、および前記開閉時間を経過後所定時間内に前記センサが前記入場者を検知した場合に、前記入室者と判断し前記エアジェットを作動させるようにしたエアシャワー装置の制御方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、前室側扉の開閉時間内に人がエアシャワー室に入場した場合にも、確実にエアジェットを作動させることができるエアシャワー装置およびエアシャワー装置の制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例におけるエアシャワー装置を示す断面平面図である。
図2】実施例1における入退室判定動作を説明するためのタイムチャートである。
図3】実施例1におけるエアシャワー装置の制御フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を具体的な実施例により詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではない。また、以下の説明に使用する図面において、同一の機器には同じ符号(番号)を用いており、既に説明した機器や動作についての重複する説明を省略する場合がある。また、以下の説明において、エアシャワー室から清浄室に入室する人を「入室者」と称し、清浄室からエアシャワー室内を移動して室外に出ていく人を「退室者」と称する。さらに、エアシャワー室に入場している人は「入場者」と称する。
【0015】
≪実施例≫
図1は、発明の実施例におけるエアシャワー装置の断面平面図である。図2は、実施例1における入退室判定動作を説明するためのタイムチャートである。図3は、実施例1におけるエアシャワー装置の制御フローチャートである。
【0016】
まず、図1を用いて、エアシャワー装置の全体構成を説明する。図1において、エアシャワー室1は、前室側扉3、清浄室側扉4、両側の側壁21および22と天井(図示せず)などにより構成される。エアシャワー室1の側壁21および22には、エアジェット機構21aおよび22aがそれぞれ設置され、制御部8によりエアジェット機構が駆動制御されエアジェットを噴射する。前室側扉スイッチ5は、前室側扉3の開閉状態(開閉時間)を検知するために設置されており、前室側扉3が開き始めてから閉じるまでの開閉時間中はON状態を維持する。同様に、清浄室側扉スイッチ6も、清浄室側扉4の開閉時間を検知するために設置されており、清浄室側扉4が開き始めてから閉じるまでの開閉時間中はON状態を維持する。また、前室側扉3は、ドアノブ30を備えている。人100は、このドアノブ30を操作して前室側扉3を開きエアシャワー室1に入場すること、および反対にエアシャワー室1から退場することができる。同様に、清浄室側扉4にも、ドアノブ40が設けられている。人100は、このドアノブ40を使用して清浄室側扉4を開きエアシャワー室1から清浄室に入室すること、および反対に清浄室から退室のためにエアシャワー室1に入場することができる。
【0017】
センサ7は、エアシャワー室1に入場した人100(入場者)を検知するために設けられている。制御部8は、このセンサ7の検知信号を入力されることで、エアシャワー室1内に人100がいるか否か(入場者の有無)を判断することができる。この実施例におけるセンサ7は、例えば、投光器と受光器で構成され、人100が入場していないとき、側壁21側から投光される光を側壁22側に設けた受光器で受光するようにしており、人がその光を遮ることにより、人100がエアシャワー室1内に入場したことを検知する。なお、センサ7は、光を用いるものに限らず、赤外線を感知するものなどでも良い。つまり、センサ7は、エアシャワー室1内に人が入場した(人が存在する)ことを検知することができるものであればどのようなものでも良い。
【0018】
制御部8は、エアシャワー装置全体を制御するために設けられ、前室側扉スイッチ5、清浄室側扉スイッチ6およびセンサ7の検知信号を入力し、入室者、退室者の判断を行ない、エアジェット機構を駆動制御し、エアジェットを作動させるものである。この実施例では、制御部8は、全体をコンパクト化するために側壁21内に設けた例を示しているが、他の側壁22側に設けても、あるいは外部に設けても良い。この制御部8は、PLCや、マイクロプロセッサなど、通常の計算機の機能を有する機器で実現することができる。
【0019】
この実施例では、制御部8内に、前室側扉スイッチ5の検知信号を利用して、前室側扉3の開放から閉鎖までの開閉時間(開放時間)をカウントする扉タイマ10と、前室側扉3開放中にセンサ7が入場者を検知していない間の時間をカウントするセンサタイマ11とを備えている。そのため、図1では制御部8を示す符号の横に「(10,11)」として記載している。制御部8は、扉タイマ10のカウント値と、センサタイマ11のカウント値とを利用して、エアシャワー室1への入場者が「入室者」であるか否かを判断し、入室者と判断した場合にエアジェットを作動させる。この具体的な判断方法(判定処理動作)については後述する。
【0020】
また、表示設定部9は、エアシャワー室1の側壁21に設置されており、エアシャワー装置の動作に関する設定を行なうこと、および使用者に対する注意事項(ガイダンス)などを表示すること、などのために設けられている。
【0021】
なお、この実施例では、前室側扉3と、清浄室側扉4は、手動式の扉としているが、モータにより扉を自動で開け閉めする自動扉でもシートシャッタ式の扉でも構わない。また、この実施例では、扉は前室側と清浄室側に1枚ずつ設置する場合を示しているが、例えば、前室側扉が2枚以上のエアシャワー室や、清浄室側扉が2枚以上であるようなエアシャワー室の場合でも、本発明を実施することができる。
【0022】
次に、エアシャワー装置の動作について図1および図2を用いて説明する。まず、人100(使用者等)が、前室側扉3からエアシャワー室1に入場する場合の動作について説明する。人100が前室側扉3のドアノブ30に手をかけ扉を開き始めると、前室側扉スイッチ5は、オフ(OFF)状態からオン(ON)状態に変化する。人100は、前室側扉3が一定開度以上開き入場が可能になった時点でエアシャワー室1に入場することができる。ここで、前室側扉スイッチ5は、前室側扉3がわずかでも開いている時間内(開閉時間T)において、ON状態を維持するようになっている。この状態を、図2の(1)に示す。
【0023】
さて、通常の入室の場合は、人100は、前室側扉3が閉じた時点以降(開閉時間経過後)にセンサ7の検知範囲を通過し、清浄室側扉4に向けて移動する。この移動の途中において、センサ7がONになり人(入場者)を検知する。この状態を示しているのが、図2の(2)である。この場合、制御部8は、その人100は、清浄室に入室する人、すなわち「入室者」であると判断し、エアジェットを作動させる。
【0024】
しかし、人100がエアシャワー室1に入場する際に、前室側扉3が閉じる前に急いで清浄室側扉4の前に移動するような場合、前室側扉3が全閉となる前(開閉時間経過前)にセンサ7の検知範囲を通過するので、制御部8は入場者を「入室者」と判断することができず、エアジェットを作動させることができないという不具合が従前からあった。そのため、この発明の実施例では、前室側扉3が開き始めてから全閉となるまでの時間(開閉時間)内にセンサ7が人を検知(ON動作)した場合にも、一定の条件を満たす場合には、その人は清浄室に入室する「入室者」と判断してエアジェットを作動させるよう制御する。
【0025】
ここで、人100が前室側扉3を開いてエアシャワー室1に入場し、その後、清浄室に入室する場合の状況を考察する。清浄室に入室しようとする人100は、前室側扉3を開きエアシャワー室1に入場してくるが、前室側扉3が一定開度以上開いた状態(通常は、全開またはそれに近い状態になった状態)になった後でなければ入場することはできない。すなわち、図2の(1)に示すように、いくら急いで入場しようとしても、前室側扉3の開閉時間Tの内の前半の時間T1での入場は扉の開度が足りないので実質的には不可能であり、開閉時間の後半の時間T2において入場することが可能になる。
【0026】
そこで、この実施例では、図2の(3)に示すように、開閉時間Tの後半時間T2の時間中にセンサ7が人100を感知してONになった場合には、入室者であると判断するように制御する。つまり、制御部8は、図2の(3)のような場合にも、入室者と判断してエアジェットを作動させるように制御する。これにより、前室側扉3の開閉時間T内に人100が入場しセンサ7がONした場合も、入室者と判断することが可能となり、入室者に対し確実にエアジェットを作動させることができる。これにより、従来問題となっていた、すり抜け動作による清浄室への塵埃等の持ち込みを防止することができる。
【0027】
このように、エアシャワー室1内にいる入場者は、従前から行われているように前室側扉3の開閉時間Tを経過後所定時間内にセンサ7がONになった場合(図2の(2)に示す場合)に「入室者」と判断してエアジェットを作動させるだけでなく、前室側扉3の開閉時間の後半部分の時間帯T2においてセンサ7がONになった場合(図2の(3)の場合)にも「入室者」と判断してエアジェットを作動させる。
【0028】
この実施例では、これ以外の場合は、基本的に入室者とは判断せず、エアジェットを作動させないように制御する。入室者と判断しない場合は、いくつかの場合がある。入室者と判断しない場合の具体例を、図2の(4)、(5)に示している。
【0029】
まず、図2の(4)の場合について説明する。図2の(4)の場合は、前室側扉スイッチ5がON動作している時間(開閉時間T)を過ぎて所定時間経過後も、センサ7がONしない場合である。つまり、人100がドアノブ30に手をかけ、前室側扉3を開こうとして前室側扉スイッチ5はONとなったが、何らかの都合で人100がエアシャワー室1に入場せず、開閉時間経過後の所定時間経過後もセンサ7がONしなかった場合などが考えられる。言い換えると、図2の(4)の場合は、エアシャワー室1への入室動作のうち前室側扉3を開け閉めしただけの場合や、入場してから前室側扉3を閉めるまでの間にセンサ7をONさせずに前室側に退室した場合の動作である。この場合は、制御部8は、入室者と判断せずエアジェットは作動させない。
【0030】
次に、図2の(5)の場合について説明する。図2の(5)の場合は、前室側扉スイッチ5がONした直後に、センサ7がON動作している。すでに説明したように、人100が前室側扉3からエアシャワー室1に入場する場合、前室側扉スイッチ5がON動作した直後では、前室側扉3は十分な開度がない(人が通過できるような開度になっていない)ので、センサ7がONしても前室側扉3からの入場者ではないことは明らかであり、入室者とは判断しない。図2の(5)の場合は、清浄室側扉4側からの退室者が、エアシャワー室1内を急ぎ移動し、センサ7の設置位置を通過するのとほぼ同時に前室側扉3を開こうとした場合が考えられる。つまり、前室側扉3の前にいる人の入場は困難なので、退室者が、センサ7のONとほぼ同じか、わずかに後のタイミングで前室側扉3を開こうとした場合しか考えられないためである。なお、退室者であるか否かは、清浄室側扉スイッチ6が作動(ON)した後にセンサ7がONするので、それによってより確実に退室者であることを判断することができる。いずれにしても、この実施例では、制御部8は、図2の(5)のような場合は「入室者」とは判断(判定)せず、エアジェットを作動させない。
【0031】
なお、この実施例では、図2の(5)のような場合、上記した理由により、入室者と判断せずエアジェットを作動させないが、前室側扉3の開閉時間T内であれば、前半の時間T1でセンサ7がONした場合にもエアジェットを作動させるように制御することも可能である。そのように制御すれば、本来の入室者でない場合でもエアジェットを作動させる場合も含まれるため、エアジェットの無駄な作動になる可能性はあるが、すり抜け動作をより確実に防止する効果が期待でき、清浄室への塵埃等の持ち込みをより確実に防ぐことができる。
【0032】
次に、図2の(6)の場合について説明する。図2の(6)は、センサ7が複数回動作する例を示している。これは、入室者と退室者がエアシャワー室1内にほぼ同時期に入場し、すれ違う場合などにおいて生じる。退室者は、図2の(5)と同様に、エアシャワー室1に入場して前室側扉3を押しながら室外に移動することになるので、退室者は前室側扉3を開きながら移動するときセンサ7がONになり、前室側扉の開度が十分開いた状態でセンサ7がOFFになる。前室側扉3からエアシャワー室1に入場しようとする人は、退室者が室外に出た後、退室者が開いた前室側扉3の開度を保持しながら入場する場合がある。その場合、入室しようとする人100は、その後にエアシャワー室1内を移動して清浄室側扉4の方向に移動する。その際、センサ7がONし入場者を検知する。上述したように、センサ7がONするタイミングは、前室側扉3の開閉時間Tの後半の時間T2内になるため、制御部8は、このような場合は入室者と判断し、エアジェットを作動させる。このように、多人数での入退室や、エアシャワー室1内で入場者が動くなど、センサ7が複数回ONしても、センサ7が前室側扉の開閉時間の後半(後半時間T2)にONすれば、エアシャワー室1内にいる人100は「入室者」であると判断し、エアジェットを作動させることができる。
【0033】
次に、前室側扉3が開いている間に人100がセンサ7の検知範囲を通過して清浄室側扉4の直前に移動し、その後に前室側扉3が閉じられた場合でもエアジェットを作動させるための動作、すなわち、図2の(3)の動作を判断するための判定をタイマを用いて実現する方法について説明する。まず、前室側扉3が開かれると、前室側扉スイッチ5がONし、扉タイマ10,センサタイマ11のカウントを開始する。扉タイマ10は前室側扉3の開放時間をカウントするタイマで、センサタイマ11は前室側扉3開放中にセンサ7がOFFしている間の時間をカウントするタイマである。
【0034】
図1で示すように、人100がエアシャワー室1に入場し、センサ7の検知範囲を通過して清浄室側扉4の直前に立つ。この時、センサタイマ11は、センサ7のON、つまり人100の検知によりカウントが停止し初期化される。そして、人100がセンサ7の検知範囲を通過したことにより、再びカウントを開始する。それとほぼ同時あるいはわずかな後に、前室側扉3が閉まる。前室側扉3が閉じたとき、扉タイマ10のカウント値を設定値12で除算し判定値13とする。そして、判定値13とセンサタイマ11のカウント値とを比較し、センサタイマ11のカウント値が判定値13より小さい場合、センサ7をONさせた人100は「入室者」と判断し、エアジェットを作動させる。また、その際、扉タイマ10,センサタイマ11を初期化する。
【0035】
センサタイマ11のカウント値が判定値13以上である場合、入室者と判断せず、エアジェットは作動させない。そして、その際、扉タイマ10,センサタイマ11を初期化させる。センサタイマ11のカウント値が判定値13より小さい場合に、入室者と判断しエアジェットを作動させる。これは、図2の(3)の場合に相当する。つまり、前室側扉3の開閉時間Tにおいて、後半の時間T2内にセンサ7がONしていることになる。
【0036】
ここで、設定値12を設けた理由は、前室側扉3の開閉時間Tを前半時間T1と後半時間T2とに2分割する場合に、その分割の時間割合を変化させるためである。したがって、設定値12を設けず、単純に開閉時間Tを2で割り、T1=T2としても良い。なお、設定値12は、前室側扉3の開放時間を前後半でおおよそ2分割するための値であり、予め定めて制御部8内に記憶しておけば良く、あるいは表示設定部9を使用して制御部8に記憶設定しても良い。
【0037】
次に、人100が扉を開けて入退室するときの動作について説明する。人100の入退室の動作は大きく分けて扉を開ける動作、人が移動する動作、扉を閉める動作の3要素で構成されている。ここで、扉の種類のうち、例えば手動扉の場合は扉に備えつけられているドアクローザ機構により開けた扉は自動で閉められるうえ、油圧により開ける時間と閉める時間はほぼ等しくなる。図2の(1)に示すように、扉を開く際の扉の開きを手で保持・固定する動作を無視し、入退室の時間を扉の開け閉めする時間(開閉時間T)のみとすると、扉を開けて全開するまでを前半時間T1、全開の時点で中間、全開してから全閉までを後半時間T2と分けることができる。エアシャワー室1の手動扉は、一般的にエアシャワー室1に対して扉を室外側へ開いての開閉になるので、入退室どちらの場合でも人100は全開時点でエアシャワー室1の外側にいることになる。通常、前室側扉3の全開またはほぼ全開になった後、人100はエアシャワー室1に入場し、センサ7を検知させることになる。また、退室しようとする人100の場合は、清浄室側扉4を開き清浄室側扉スイッチ6をON動作させた後にセンサ7をONさせ、その後、前室側扉3を開いてからエアシャワー室1の外へと抜けていく。
【0038】
ここで、自動扉やシートシャッタ式扉の場合は、人の移動のために扉の開放を一定時間保持するため、扉の開放時間を前後半で2分割すると入室動作においても後半時間T2の間にセンサ7がONしない場合がある。この場合は、上述した設定値12を表示設定部9にて小さく設定し、前半時間T1を短くすることで、入室者の判断を間違いなく行うことができる。手動扉の場合でも設定値12を変更することで入退室判断の厳しさを変化させることができる。
【0039】
なお、清浄室側扉4を開閉してからエアシャワー室1に入場した際、つまり清浄室からエアシャワー室1を通過して前室に出る際はエアジェットを作動させないが、上記動作においてもエアジェットを作動させたい場合は制御部8の設定の変更によりエアジェットを作動させてもよい。この設定は予め設定しても表示設定部9により変更してもよい。この動作の場合も上記判定の処理を用いてエアジェットを作動させることができる。
【0040】
次に、本発明の実施例における制御部8が実施する入室動作の動作フローを、図3に示すフローチャートを用いて説明する。
【0041】
図3において、先ず、ステップS1の待機状態のエアシャワー装置は、ステップS2にて前室側扉3の開閉状態を検知する。前室側扉3が開いていなければステップS2を繰り返し前室側扉3が開くまで待つ。ステップS2において前室側扉3が開いたと判断した場合、ステップS3に進む。ステップS3にて扉タイマ10,センサタイマ11のカウントを開始させる。
【0042】
前室側扉3が開いている間(開閉時間内)に、人100(使用者)がエアシャワー室1内に入場する。ステップS4では、前室側扉3が開状態、すなわち、前室側扉スイッチ5がON動作しているか否かを判断する。その間、扉タイマ10,センサタイマ11のカウントを継続させる。
【0043】
ステップS5において、人100が入場し、センサ7がONした場合、ステップS6に進み、センサタイマ11のカウントが停止・初期化される。ステップS7では、前室側扉3が開いているか否かを判断し、ステップS8にてセンサ7の検知範囲を通過しセンサ7がOFFになるとステップS9に進む。
【0044】
ステップS9では、センサタイマ11のカウントを再開する。この時、人100がエアシャワー室1に入場していない場合や、入場したがセンサ7がONしていない場合は、ステップS10にて前室側扉3が閉まるまで待ち、入室していない場合は扉タイマ10,センサタイマ11をステップS11にて初期化しステップS1に戻る。
【0045】
前室側扉3が閉まると扉タイマ10,センサタイマ11はリセットされる。ステップS7にて、センサ7がONしているときに前室側扉3が閉まれば、ステップS13にてセンサ7をONさせた人100は「入室者」と判断し、ステップS14にてエアジェットを作動させる。前室側扉3を閉めたがセンサ7をONにしていなかった場合は、前室側扉3が閉まった後にステップS12にてセンサ7がONになることで同様に入室者と判断しステップS14にてエアジェットを作動させる。
【0046】
前室側扉3が閉まる前に使用者2が清浄室側扉4直前に移動し、ステップS5でONしたセンサ7をステップS8にてOFFすると、ステップS6で停止・初期化されたセンサタイマ11がステップS9にて再びカウントを開始する。
【0047】
その後、ステップS10で前室側扉3が閉まったとき、ステップS15にて扉タイマ10の値を設定値12で除算し、判定値13とする。設定値12は扉タイマ10の値、つまり前室側扉3の開放から閉鎖まで時間をおおよそ前半と後半に分割するための値であり、その後半の時間が判定値13となる。
【0048】
判定値13とセンサタイマ11の値をステップS16にて比較し、センサタイマ11の値が判定値13より小さい場合、入室者と判断し、扉タイマ10,センサタイマ11を初期化しエアジェットを作動させステップS1に戻る(ステップS17,S18)。
【0049】
センサタイマ11の値が判定値13以上の場合、入室者とは判断せず扉タイマ10,センサタイマ11を初期化させエアジェットは作動させない。その後ステップS12に戻るがセンサ7がONになればエアジェットが作動する(ステップS14)。
【0050】
このように入室者であるか否かの判断を前室側扉3の開放から閉鎖までの開閉時間とセンサ7が入室者を検知していない間の時間とを比較して行うことにより、エアシャワー室1内にいる人100が「入室者」であるか、そうでないかを判断し、エアジェットを適切に作動させることができる。
【0051】
以上説明した本発明の実施例によれば、前室側扉の開閉時間経過後にセンサがONした場合の他に、開閉時間内にセンサがONした場合であっても入室者と判断してエアジェットを作動させることができるので、エアジェットの無駄な作動を防ぎつつ、すり抜け動作による清浄室への塵埃等の持ち込みを防止することができる。
【符号の説明】
【0052】
1…エアシャワー室、3…前室側扉、4…清浄室側扉、5…前室側扉スイッチ、6…清浄室側扉スイッチ、7…センサ、8…制御部、9…表示設定部、10…扉タイマ、11…センサタイマ、12…設定値、13…判定値、21…側壁、22…側壁、21a…エアジェット機構、22a…エアジェット機構、100…人
図1
図2
図3