(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】ベンディングロール
(51)【国際特許分類】
B21D 5/14 20060101AFI20241218BHJP
G01B 21/20 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
B21D5/14 D
G01B21/20 A
B21D5/14 B
(21)【出願番号】P 2022084468
(22)【出願日】2022-05-24
【審査請求日】2024-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】坪田 勝利
(72)【発明者】
【氏名】志井 里衣
(72)【発明者】
【氏名】樋口 慎伍
(72)【発明者】
【氏名】南 椋介
(72)【発明者】
【氏名】乾 智明
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-51832(JP,A)
【文献】特開昭63-101025(JP,A)
【文献】特開昭61-78518(JP,A)
【文献】特開2014-97515(JP,A)
【文献】特開平7-80555(JP,A)
【文献】米国特許第4232540(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 5/14
G01B 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上ロールと、前記上ロールの下方の前後両側に配された一対の下ロールとを備え、前記上ロールと各下ロールの間で金属板を挾持した状態で、前記各下ロールを回転駆動することにより、金属板を往復移動させながら曲げ成形して円筒状またはR形状の成形物とするベンディングロールにおいて、
前記成形物の板厚tを測定するとともに、前記成形物を前記上ロールと各下ロールとで挾持し、前記上ロールが成形物を押圧する荷重が一定となるように上ロールの上下方向位置を制御しながら、前記各下ロールを回転駆動して、前記成形物の凹円弧面上の任意の2つの第1基準点の間の円周方向に沿った長さL
1と、前記各第1基準点のそれぞれと板厚方向で対向する凸円弧面上の2つの第2基準点の間の円周方向に沿った長さL
2とを測定し、その測定結果からt×L
1/(L
2-L
1)を算出して前記成形物の凹曲面の曲率半径の計測値とすることを特徴とするベンディングロール。
【請求項2】
前記成形物の曲率半径の計測値またはその曲率半径から算出される内外径の計測値が目標値よりも大きいときは、前記上ロールを前記計測値と目標値との差から演算される修正位置に保持して、前記成形物に対する修正成形を行うことを特徴とする請求項1に記載のベンディングロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上ロールと一対の下ロールの間で金属板を往復移動させながら曲げ成形するベンディングロールに関する。
【背景技術】
【0002】
ベンディングロールは、上ロールとこれに平行な一対の下ロールとを備え、上ロールと各下ロールの間で金属板を挾持した状態で、各下ロールを回転駆動することにより、金属板を往復移動させながら曲げ成形する装置である。
【0003】
上記のようなベンディングロールで成形された大きな円筒状成形物(例えば溶接管等)やR形状の成形物は、従来、成形完了後にベンディングロールから取り出して、作業者が内外径または曲率半径の確認を行っていた。その確認方法としては、例えば、円筒状成形物については、外周長を巻き尺で測定して外径を算出する方法がある。また、Rゲージ(ガバリ)を成形物の内側面または外側面に当接させて曲率半径を測定する方法は、円筒状成形物にもR形状の成形物にも適用することができる。なお、このRゲージを用いる方法では、成形物が横向きに置かれると自重によって撓むような場合、成形物を立てて測定作業を行っていた。
【0004】
しかし、円筒状成形物の外周長を巻き尺で測定する方法では、成形物の曲率半径が周方向位置によって異なっていてもほぼ目標値の外径に近い計測結果となることがあり、真円度を評価できないし、成形物が大径のものの場合には計測誤差が大きいうえ、測定作業に多大な時間を費やしていた。
【0005】
また、Rゲージを用い、円筒状成形物を立てて測定する方法では、成形物が大径のもの(4m以上)、重量のあるもの(30トン以上)、軸方向長さの長いもの(3m以上)の場合、反転作業(横向きの成形物を立てたり、測定後の成形物を横向きに戻したりする作業)が重労働となるという難点がある。
【0006】
さらに、いずれの方法でも、計測の結果、内外径や曲率半径が目標範囲内にないことが判明した場合には、成形物を再度ベンディングロールに取り付けて修正成形(リロール)を行うことが必要となり、成形物をベンディングロールに再度取り付ける作業とリロール後に取り外す作業に多大な労務費を費やしていた。
【0007】
これに対し、本出願人が特許文献1において提案している曲率半径計測システムを用いれば、成形完了後に成形物をベンディングロールから取り出すことなく、成形物の内外径や曲率半径の確認を行うことができる。
【0008】
すなわち、特許文献1の曲率半径計測システムは、物品の円弧状の板状部の板厚tと、凹円弧面上の2つの第1基準点の間の円周方向に沿った長さ(以下、「内円弧長」ともいう。)L1と、第1基準点のそれぞれと板厚方向で対向する凸円弧面上の2つの第2基準点の間の円周方向に沿った長さ(以下、「外円弧長」ともいう。)L2を測定して、板状部の凹曲面の曲率半径r=(L1・t)/(L2-L1)を算出するものであり、円筒状の物品であれば、その曲率半径rから容易に内径(2×r)や外径(2×r+2×t)を求められる。したがって、この曲率半径計測システムをベンディングロールに組み込んで、成形完了後に成形物の内外径や曲率半径の計測を行うようにすれば、成形物の内外径や曲率半径を確認する作業の負荷とコストを大幅に低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1の曲率半径計測システムを組み込んだベンディングロールにおいて成形物の曲率半径の計測を行う場合は、成形完了後も成形物を上ロールと各下ロールで挾持したまま各下ロールを回転駆動して、公知の距離センサ等で内円弧長L1と外円弧長L2を測定することになる。このとき、上ロールおよび各下ロールは、成形物を塑性変形させずに挟持できる位置に設定する必要がある。
【0011】
ところが、成形物の内円弧長L1および外円弧長L2の測定中、上ロールおよび各下ロールを設定位置に保持した場合、成形物の周方向位置によって上ロールが成形物を押圧する荷重が変動し、この荷重変動が測定誤差を生じさせる要因となる。そして、その測定誤差は成形物の曲率半径の計測結果の誤差につながる。
【0012】
そこで、本発明は、ベンディングロールにおいて成形物の内外径または曲率半径を精度よく計測できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するため、本発明は、上ロールと、前記上ロールの下方の前後両側に配された一対の下ロールとを備え、前記上ロールと各下ロールの間で金属板を挾持した状態で、前記各下ロールを回転駆動することにより、金属板を往復移動させながら曲げ成形して円筒状またはR形状の成形物とするベンディングロールにおいて、前記成形物の板厚tを測定するとともに、前記成形物を前記上ロールと各下ロールとで挾持し、前記上ロールが成形物を押圧する荷重が一定となるように上ロールの上下方向位置を制御しながら、前記各下ロールを回転駆動して、前記成形物の凹円弧面上の任意の2つの第1基準点の間の円周方向に沿った長さ(内円弧長)L1と、前記各第1基準点のそれぞれと板厚方向で対向する凸円弧面上の2つの第2基準点の間の円周方向に沿った長さ(外円弧長)L2とを測定し、その測定結果からt×L1/(L2-L1)を算出して前記成形物の凹曲面の曲率半径の計測値とする構成を採用した。
【0014】
上記の構成によれば、成形完了後に、成形物をベンディングロールから取り出すことなく、成形物の内外径や曲率半径の確認を行うことができる。しかも、成形物の内円弧長および外円弧長の測定は、上ロールから成形物に一定の荷重が加わるように上ロールの上下方向位置を制御しながら行うので、上下ロール位置を一定に保持して測定を行う場合に比べて、測定誤差が小さく、その測定結果から算出される成形物の凹曲面の曲率半径および内外径の計測精度を向上させることができる。
【0015】
そして、前記成形物の曲率半径の計測値またはその曲率半径から算出される内外径の計測値が目標値よりも大きいときは、前記上ロールを前記計測値と目標値との差から演算される修正位置に保持して、前記成形物に対する修正成形を行う構成とすることにより、成形物の修正作業の負荷も軽減することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のベンディングロールは、上述したように、金属板の成形完了後に、その成形物に上ロールから一定の荷重が加わるように上ロールの上下方向位置を制御しながら、成形物の内円弧長および外円弧長の測定を行い、その測定結果から曲率半径を算出するようにしたものであるから、内円弧長および外円弧長の測定誤差が小さく、成形物の曲率半径や内外径を精度よく計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図4】
図1のベンディングロールにおける測定作業の概略説明図
【
図6】
図1のベンディングロールにおける曲率半径計測および修正成形のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。このベンディングロールは、
図1乃至
図3に示すように、上ロール1と、上ロール1の下方の前後両側に上ロール1と平行に配された一対の下ロール2と、各下ロール2を回転駆動するモータ(図示省略)を内蔵したモータケース3と、上ロール1の両端部を支持する左右の上部フレーム4、5と、各下ロール2の両端部を支持する下部フレーム6とを備えている。また、各下ロール2は、その軸方向中央部を下方の前後両側から図示省略したバックアップロールに支持されている。そして、上ロール1を成形条件に応じた前後方向位置に移動させ、上ロール1と各下ロール2の間で金属板を挾持した状態で、各下ロール2を回転駆動することにより、金属板を往復移動させながら曲げ成形するようになっている。なお、
図1乃至
図3では、後述する曲率半径計測のための測定装置は図示を省略している。
【0019】
前記各上部フレーム4、5は略門型に形成されており、それぞれの脚部が下部フレーム6の上面に設けられた軸受部6aと下部フレーム6の前後面に固定された支持板7との間に配され、その軸受部6aおよび前後の支持板7とともに前後方向に延びる支軸8を通されている。その支軸8は下部フレーム6の軸受部6aおよび支持板7に固定されており、各上部フレーム4、5の脚部は支軸8に対して摺動可能となっている。
【0020】
これにより、
図1における左側の上部フレーム4は、前後移動可能で、かつ、成形後の金属板(以下、「成形物」ともいう。)を取り出すときに、上ロール1の一端部から離れて左側へ回動する(転倒する)転倒フレームとなっている。一方、
図1における右側の上部フレーム5は、上ロール1の他端部が軸方向外側へ延長されているので、上ロール1の他端部から離れて回動することはできず、前後移動のみが可能となっている。
【0021】
また、各上部フレーム4、5の上端部には油圧シリンダ9がロッド9aを下方に向けた姿勢で取り付けられ、そのロッド9aの下端が上ロール1の端部を回転自在に支持する軸受10に接続されており、両油圧シリンダ9の作動によって上ロール1が昇降するようになっている。なお、上ロール1の上昇は、上ロール1の他端部の延長部分1aを跨ぐ状態で下部フレーム6に固定された門型のストッパ11によって規制されている。
【0022】
前記下部フレーム6は、その一端面の下部に、2段式の油圧シリンダ12の閉塞側端部が回動可能に取り付けられている。そして、その油圧シリンダ12の2段目のロッド12aの先端が転倒フレームとしての上部フレーム4に回動可能に接続されており、成形物を取り出す際に、油圧シリンダ12が回動しながら伸縮することにより、上部フレーム4の転倒・復元動作が行われるようになっている。
【0023】
このベンディングロールは上記の構成であり、金属板の成形完了後に成形物を取り出すことなく曲率半径を計測し、その計測結果に基づき必要に応じて修正成形を行うことにより、所望の曲率半径を有する成形物が得られるようにしている。
【0024】
ここで、成形物の曲率半径の計測は、
図4に示すように、成形物Wの板厚tを測定するとともに、成形物Wを上ロール1と各下ロール2とで挾持し、上ロール1が成形物Wを押圧する荷重が一定となるように(成形物Wに一定の荷重が加わるように)、上ロール1の上下方向位置を制御しながら、各下ロール2を回転駆動して、成形物Wの周方向の一部における凹円弧面上の2つの第1基準点A、A’の間の円周方向に沿った長さ(内円弧長)L
1と、各第1基準点A、A’のそれぞれと板厚方向で対向する凸円弧面上の2つの第2基準点B、B’の間の円周方向に沿った長さ(外円弧長)L
2とを測定し、その測定結果からt×L
1/(L
2-L
1)を算出して成形物Wの凹曲面の曲率半径の計測値rとするものである。
【0025】
なお、この実施形態では、成形物Wが円筒状であり、その寸法の確認は、曲率半径の計測値rから算出した内径d(=2×r)または外径D(=2×r+2×t)とその目標値とを比較することによって行われるが、成形物がR形状のものである場合は、曲率半径の計測値rとその目標値とを比較すればよい。
【0026】
また、成形物Wの板厚tは測定工具や公知の板厚計を用いて測定すればよく、内円弧長L1および外円弧長L2の測定には、所定の経路に沿った距離を測定する公知の距離センサを含む測定装置を用いることができる。
【0027】
図5は、実施形態のベンディングロールにおいて成形物Wの円弧長L
1、L
2を測定する測定装置を示す。内円弧長L
1の測定装置は、上ロール1を距離センサとして用いており、上ロール1の軸端部に取り付けられたプーリ13と、図示省略した固定側上部フレーム5に取付台14を介して回転自在に取り付けられたプーリ15と、両プーリ13、15間に巻き掛けられたタイミングベルト16と、上部フレーム5側のプーリ15の回転を検出するパルスエンコーダ17とを備え、そのパルスエンコーダ17の検出結果からL
1を求めるものである。
【0028】
一方、外円弧長L2の測定装置は、一対の下ロール2の間で下部フレーム6に架台18を介して取り付けられるスプリング19と、スプリング19によって成形物Wの凸円弧面に押し付けられる計測ローラ20と、計測ローラ20の回転を検出するパルスエンコーダ21とを備え、そのパルスエンコーダ21の検出結果からL2を求めるものである。
【0029】
次に、このベンディングロールでの円筒状成形物の寸法確認方法および修正成形方法について説明する。この実施形態では、通常の成形作業および成形物の継目部位の仮溶接作業を制御するシーケンサにより、成形物の寸法確認と必要に応じた修正成形を自動的に行うようにしている。そのシーケンサによる制御の具体的な処理手順を
図6に示す。
【0030】
この制御では、成形作業を開始する前に、計測条件すなわち計測中に成形物に負荷する一定の荷重(プリロード荷重)、計測距離、計測箇所数と、成形物の内径目標値d0を設定しておく(ステップS1)。なお、この実施形態では、計測箇所数を3箇所以上、計測距離を1箇所につき100~200mm程度とするが、計測距離は任意に設定できる。
【0031】
そして、通常の成形(ステップS2)が完了し、成形物の継目部位の仮溶接(ステップS3)が行われた後、この制御で実施する修正成形を計測毎に行うか全周計測後に行うかを作業者に選択させ(ステップS4)、その修正成形方法を判別して(ステップS5)、以降の処理手順を決定している。
【0032】
まず、計測毎に修正成形する場合は、成形物の1つ目の計測箇所について、上ロールを測定開始位置に移動させ(ステップS6)、成形物にプリロード荷重を負荷した状態で(ステップS7)、各下ロールを回転させて、設定された計測距離で成形物の内円弧長L1と外円弧長L2を同時に測定し(ステップS8)、その測定値と別途測定した成形物の板厚tとからt×L1/(L2-L1)を算出して成形物の凹曲面の曲率半径の計測値rとし、2×rを成形物の内径の計測値dとする(ステップS9)。
【0033】
ここで、上記のステップS8、S9の計測中は、上ロール昇降用の油圧シリンダに接続された電磁比例制御弁により、上ロールが成形物を押圧する荷重が一定となるように、上ロールの上下方向位置が制御される。これにより、内円弧長L1および外円弧長L2の測定誤差が小さく、成形物の内径dが精度よく計測されるようになっている。
【0034】
次に、ステップS9で算出した内径の計測値dを目標値d0と比較する(ステップS10)。なお、実際の目標値d0はある程度の許容範囲を有するものとする。
【0035】
ステップS10での判断の結果、内径の計測値dが目標値d0よりも大きい場合は、その計測値dと目標値d0の差に基づいて上ロールの修正位置を演算し、その修正位置に上ロールを移動させて成形物に対する修正成形を行う(ステップS11)。なお、計測値dが目標値d0よりも小さい場合は修正成形ができないので、成形物をベンディングロールから取り出した後に修正することになる。修正成形の後は再び内径を計測して(ステップS6~S9)、ステップS10に戻る。そして、ステップS10で内径の計測値dが目標値d0以下となっていれば、次の計測箇所の計測に移る(ステップS6に戻る)。
【0036】
上記の計測および修正成形の処理(ステップS6~S11)を計測箇所数だけ繰り返した後、上ロールを内径目標値d0に最も近い計測値dが得られた計測箇所での修正位置(以下、「最終修正位置」と称する。)に移動させ、全周を修正成形して(ステップS12)、制御を終了する。上ロールを一定位置(最終修正位置)に保持して全周を修正成形することにより、計測毎の修正成形後の計測箇所による内径のむらを低減することができる。
【0037】
一方、全周計測後に修正成形する場合は、成形物の1つ目の計測箇所では、計測毎の修正成形を選択した場合と同じように計測を行うが(ステップS13~S16)、その計測が終われば、計測値dを記憶した後、ステップS15に戻る。すなわち、計測毎の修正成形を行わないので、2つ目以降の計測箇所ではステップS13、S14の処理は不要である。
【0038】
上記の計測処理(ステップS15、S16)を繰り返して、すべての計測箇所の計測が終了すれば、各計測箇所について、順に内径の計測値dと目標値d0を比較し(ステップS17)、計測値dが目標値d0よりも大きい場合のみ修正成形を行う(ステップS18)。その後、ステップS18での修正成形が行われた計測箇所(修正箇所)の有無を判断し(ステップS19)、修正箇所があればステップS13に戻る。
【0039】
上記の計測および修正成形の処理(ステップS13~S19)を繰り返し、修正箇所がなくなれば、上ロールを最終修正位置に移動させ、全周を修正成形して(ステップS20)、制御を終了する。
【0040】
なお、制御装置の画面等に内径の計測結果を表示するときは、通常、全ての計測箇所の計測値dの平均値を表示値とするが、任意に選択した計測箇所についての平均値を表示するようにしてもよい。
【0041】
また、上記の計測および修正成形の制御では、成形物の内径の計測値が目標値以下となるように修正成形を行っているが、制御の対象は成形物の外径としてもよい。また、成形物がR形状のものの場合は、仮溶接(ステップS3)はなくなり、制御の対象は成形物の曲率半径となる。
【0042】
このベンディングロールでは、上述したように、通常成形の完了後に、成形物Wを取り出すことなく、成形物Wの内外径や曲率半径を計測して目標値となっているか否かを確認できる。しかも、成形物Wの内外径や曲率半径の計測において、成形物Wの内円弧長L1および外円弧長L2の測定は、成形物Wに一定の荷重が加わるように上ロール1の上下方向位置を制御しながら行うので、上下ロール位置を一定に保持して測定を行う場合に比べて、測定誤差が小さく、その測定結果から算出される曲率半径や内外径の計測精度も高くなる。
【0043】
ここで、上述した実施形態の内円弧長L1の測定装置には、プーリ13、15とタイミングベルト16で上ロール1から伝達された回転を検出するものを用いたが、これに代えて、上ロールの軸端部の外周面に計測ローラを押し付け、その計測ローラの回転を検出するものを用いることもできる。
【0044】
また、実施形態の外円弧長L2の測定装置は、スプリング19で成形物Wの凸円弧面に押し付けた計測ローラ20の回転を検出するものを用いたが、そのスプリング19の代わりにエアシリンダまたは油圧シリンダで計測ローラ20を成形物Wに押し付けるようにしてもよい。
【0045】
そして、このベンディングロールでは、各計測箇所の計測と平行して、あるいはすべての計測箇所の計測後にまとめて、成形物Wの曲率半径や内外径の計測値が目標値よりも大きい箇所に対する修正成形を行うようにしたので、成形物Wの修正作業の負荷も軽減することができる。
【0046】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0047】
なお、本発明のベンディングロールを用いれば、市場にある溶接管等の円筒状成形物の内外径やR形状の成形物の曲率半径を精度よく計測して、修正成形(リロール)することもできる。
【符号の説明】
【0048】
1 上ロール
2 下ロール
4、5 上部フレーム
6 下部フレーム
9 油圧シリンダ
13、15 プーリ
16 タイミングベルト
17、21 パルスエンコーダ
19 スプリング
20 計測ローラ
W 成形物