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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】電池パック
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6568 20140101AFI20241218BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20241218BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20241218BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20241218BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20241218BHJP
【FI】
H01M10/6568
H01M10/613
H01M10/647
H01M10/6556
H01M10/625
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022164658
(22)【出願日】2022-10-13
(65)【公開番号】P2024057770
(43)【公開日】2024-04-25
【審査請求日】2023-10-16
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】茂木 裕也
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-070386(JP,A)
【文献】特開2015-000593(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/6568
H01M 10/613
H01M 10/647
H01M 10/6556
H01M 10/625
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面、前記上面に対向する底面、および前記上面と前記底面との間に位置する側面を含む角型形状を各々有する複数の電池セルが第1の方向に沿って積層された積層体と、
前記底面と対向する底部および前記側面と対向する側壁部が一体成形された筐体とを備え、
前記底部は、前記積層体を冷却可能な冷却機構を含み、
前記側壁部は、衝撃吸収機構を含み、
前記冷却機構は、前記底部の内部に設けられ、冷却媒体が流通可能な冷却媒体通路を含み、
前記冷却媒体通路は、前記上面と前記底面とが対向する第2の方向から見て、前記積層体および前記側壁部の両方に重なるように配置されている、電池パック。
【請求項2】
前記側壁部には、内部空間が設けられ、
前記側壁部は、前記内部空間の中に配置され、前記内部空間を複数の領域に区画するリブを有し、
前記衝撃吸収機構は、前記内部空間および前記リブによって構成されている、請求項1記載の電池パック。
【請求項3】
上面、前記上面に対向する底面、および前記上面と前記底面との間に位置する側面を含む角型形状を各々有する複数の電池セルが第1の方向に沿って積層された積層体と、
前記底面と対向する底部および前記側面と対向する側壁部が一体成形された筐体とを備え、
前記底部は、前記積層体を冷却可能な冷却機構を含み、
前記側壁部は、衝撃吸収機構を含み、
前記側壁部は、前記複数の電池セルのうちの前記第1の方向の端部に位置する電池セルに対向しており、
前記側壁部は、前記積層体を前記第1の方向に拘束している、電池パック。
【請求項4】
前記側面は、前記第1の方向に直交する第3の方向において互いに対向して配置される第1側面部および第2側面部を含み、
前記底面は、前記底面の中央から前記第1側面部側に位置する第1部分と、前記中央から前記第2側面部側に位置する第2部分とを含み、
前記筐体は、
前記第1部分に対向する第1底部および前記第1側面部に対向して配置される第1側壁部が一体成形された第1筐体部材と、
前記第2部分に対向する第2底部および前記第2側面部に対向して配置される第2側壁部が一体成形された第2筐体部材とを含み、
前記第1筐体部材および前記第2筐体部材は、前記第1底部および前記第2底部の端部同士が接合されている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電池パック。
【請求項5】
前記第1筐体部材および前記第2筐体部材は、押し出し成形によって形成されている、請求項に記載の電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車用バッテリートレイの構成を開示した先行技術文献として、特開2009-105007号公報(特許文献1)がある。特許文献1に記載された電気自動車用バッテリートレイは、フレームと、複数のトレイ部材とを備える。複数のトレイ部材は、フレームの枠内に組み付けられ、バッテリーを装着する収容部が設けられている。複数のトレイ部材は相互に溶接接合される。複数のトレイ部材とフレームとが溶接結合される。フレームおよびトレイ部材は、係合手段を備える。また、トレイ部材は、中空部が設けられ、ケーブルが配線される領域として利用されることがある。
【0003】
電池ケースの構成を開示した先行技術文献として、中国実用新案第208189687号明細書(特許文献2)がある。特許文献2に記載された電池ケースは、ロアケースを備える。ロアケースは、ロアケース左底板と、ロアケース右底板とを含む。ロアケース左底板およびロアケース右底板は、溶接などによって接合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-105007号公報
【文献】中国実用新案第208189687号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された電池セルを収容する筐体は、部品同士を接続する、または、部品の内部に別の部品を挿通させるなど、電池セルを収容する機能に加えて、他の機能を有している。別々の部品にこれらの機能が設けられているため、筐体の部品点数が多い。
【0006】
また、特許文献1および特許文献2に記載された筐体において、筐体が複数の部品から構成される場合、部品同士は接合部により接合される。この接合部を設ける際、接合部の周囲において接合部を形成するためのクリアランスが設けられる。クリアランスを設ける分だけ筐体を大きくする必要があるため、電池パックのエネルギー密度が低くなる。
【0007】
本技術は、上記の課題を解決するためになされたものであって、必要な機能を備えながら部品点数を削減しつつ、エネルギー密度を向上させることができる、電池パックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本技術は、以下の電池パックを提供する。
[1]
上面、前記上面に対向する底面、および前記上面と前記底面との間に位置する側面を含む角型形状を各々有する複数の電池セルが第1の方向に沿って積層された積層体と、
前記底面と対向する底部および前記側面と対向する側壁部が一体成形された筐体とを備え、
前記底部は、前記積層体を冷却可能な冷却機構を含み、
前記側壁部は、衝撃吸収機構を含む、電池パック。
[2]
前記冷却機構は、前記底部の内部に設けられ、冷却媒体が流通可能な冷却媒体通路を含む、[1]に記載の電池パック。
[3]
前記冷却媒体通路は、前記上面と前記底面とが対向する第2の方向から見て、前記積層体および前記側壁部の両方に重なるように配置されている、[2]に記載の電池パック。
[4]
前記側壁部には、内部空間が設けられ、
前記側壁部は、前記内部空間の中に配置され、前記内部空間を複数の領域に区画するリブを有し、
前記衝撃吸収機構は、前記内部空間および前記リブによって構成されている、[1]から[3]のいずれか1つに記載の電池パック。
[5]
前記側壁部は、前記複数の電池セルのうちの前記第1の方向の端部に位置する電池セルに対向している、[1]から[4]のいずれか1つに記載の電池パック。
[6]
前記側面は、前記第1の方向に直交する第3の方向において互いに対向して配置される第1側面部および第2側面部を含み、
前記底面は、前記底面の中央から前記第1側面部側に位置する第1部分と、前記中央から前記第2側面部側に位置する第2部分とを含み、
前記筐体は、
前記第1部分に対向する第1底部および前記第1側面部に対向して配置される第1側壁部が一体成形された第1筐体部材と、
前記第2部分に対向する第2底部および前記第2側面部に対向して配置される第2側壁部が一体成形された第2筐体部材とを含み、
前記第1筐体部材および前記第2筐体部材は、前記第1底部および前記第2底部の端部同士が接合されている、[1]から[5]のいずれか1つに記載の電池パック。
[7]
前記第1筐体部材および前記第2筐体部材は、押し出し成形によって形成されている、[6]に記載の電池パック。
【発明の効果】
【0009】
本技術によれば、冷却機構を有する底部と、衝撃吸収機構を有する側壁部を一体成形して筐体を構成することによって、必要な機能を備えながら部品点数を削減することができる。また、筐体における底部と側壁部とを一体成形することによって、底部と側壁部との接合部を設ける必要がないため、接合部を形成する際に必要なクリアランスを筐体の内部に設ける必要がない。これにより、クリアランスを小さくした分だけ筐体を小さくして、電池パックのエネルギー密度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本技術の実施の形態1に係る電池パックの構成を示す斜視図である。
図2】本技術の実施の形態1に係る電池セルおよびセパレータの構成を示す斜視図である。
図3】本技術の実施の形態1に係る電池セルの構成を示す斜視図である。
図4図1の電池パックをIV-IV線矢印方向から見た断面図である。
図5】比較例に係る電池パックの構成を示す断面図である。
図6】本技術の実施の形態2に係る電池パックの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本技術の実施の形態について説明する。なお、同一または相当する部分に同一の参照符号を付し、その説明を繰返さない場合がある。
【0012】
なお、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本技術の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、以下の実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本技術にとって必ずしも必須のものではない。また、本技術は、本実施の形態において言及する作用効果を必ずしもすべて奏するものに限定されない。
【0013】
なお、本明細書において、「備える(comprise)」および「含む(include)」、「有する(have)」の記載は、オープンエンド形式である。すなわち、ある構成を含む場合に、当該構成以外の他の構成を含んでもよいし、含まなくてもよい。
【0014】
また、本明細書において幾何学的な文言および位置・方向関係を表す文言、たとえば「平行」、「直交」、「斜め45°」、「同軸」、「沿って」などの文言が用いられる場合、それらの文言は、製造誤差ないし若干の変動を許容する。本明細書において「上側」、「下側」などの相対的な位置関係を表す文言が用いられる場合、それらの文言は、1つの状態における相対的な位置関係を示すものとして用いられるものであり、各機構の設置方向(たとえば機構全体を上下反転させる等)により、相対的な位置関係は反転ないし任意の角度に回動し得る。
【0015】
本明細書において、「電池」は、リチウムイオン電池に限定されず、ニッケル水素電池およびナトリウムイオン電池などの他の電池を含み得る。本明細書において、「電極」は正極および負極を総称し得る。
【0016】
また、「電池パック」は、ハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、プラグインハイブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、および電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)などに搭載可能である。ただし、「電池パック」の用途は、車載用に限定されるものではない。
【0017】
なお、図面においては、複数の電池セルが積層される方向を第1の方向としてのY方向、電池セルの上面と底面とが対向する方向を第2の方向としてのZ方向、電池セルの第1側面部と第2側面部とが対向する方向を第3の方向としてのX方向とする。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、本技術の実施の形態1に係る電池パックの構成を示す斜視図である。図2は、本技術の実施の形態1に係る電池セルおよびセパレータの構成を示す斜視図である。
【0019】
図1および図2に示すように、本技術の実施の形態1に係る電池パック1は、積層体10と、筐体20とを備える。積層体10は、複数の電池セル100と、セル間セパレータ101と、エンドセパレータ102とを含む。
【0020】
複数の電池セル100は、第1の方向(Y方向)に沿って積層されている。本実施の形態における複数の電池セル100は、電池セル100同士の間にセル間セパレータ101が介装されつつ、第1の方向(Y方向)に沿って積層されている。セル間セパレータ101は、絶縁性を有するプレートである。
【0021】
エンドセパレータ102は、絶縁性を有するプレートである。エンドセパレータ102は、積層体10における第1の方向(Y方向)の両端に位置するように設けられている。複数の電池セル100は、エンドセパレータ102により第1の方向(Y方向)に挟持される。
【0022】
筐体20は、積層体10を収容する。筐体20は、たとえばアルミニウムまたは鋼によって構成されている。本実施の形態における筐体20は、5つの部品により構成されている。筐体20は、第1筐体部材21と、第2筐体部材22と、第3筐体部材23と、第4筐体部材24と、図示しない蓋部材とを含む。
【0023】
第1~第4筐体部材21~24は、互いが接する箇所において接合されている。第1~第4筐体部材21~24に対し、蓋部材が上方から積層体10を覆うように設けられる。
【0024】
筐体20は、積層体10を第1の方向(Y方向)に拘束する。本実施の形態においては、筐体20における第3筐体部材23および第4筐体部材24によって、積層体10が第1の方向(Y方向)に挟まれることによって拘束される。
【0025】
積層された複数の電池セル100に対して第1の方向(Y方向)の圧縮力を作用させた状態で筐体20に挿入し、その後に圧縮力を解放することにより、第3筐体部材23および第4筐体部材24を接続する第1筐体部材21および第2筐体部材22に引張力が働く。その反作用として、第1筐体部材21および第2筐体部材22は、第3筐体部材23および第4筐体部材24を互いに近づける方向に押圧する。その結果、筐体20は、積層体10をY方向に拘束する。なお、筐体20における他の構成については、後述する。
【0026】
図3は、本技術の実施の形態1に係る電池セルの構成を示す斜視図である。図3に示すように、電池セル100は、たとえばリチウムイオン電池である。電池セル100は、角型形状を有する。
【0027】
本実施の形態に係る電池セル100は、電極端子110と、ケース体120と、ガス排出弁130とを有する。
【0028】
電極端子110は、ケース体120上に形成されている。電極端子110は、第3の方向(X方向)に沿って並ぶ2つの電極端子110として、正極端子111および負極端子112を有する。
【0029】
ケース体120は、直方体形状を有し、電池セル100の外観をなしている。ケース体120には、図示しない電極体および電解液が収容されている。
【0030】
ケース体120は、上面121と、底面122と、側面123とを有する。上面121は、Z方向に直交する平面である。上面121には、電極端子110が設けられている。底面122は、第2の方向(Z方向)に沿って上面121に対向している。側面123は、上面121と底面122との間に位置している。
【0031】
側面123は、第1側面部124と、第2側面部125と、第3側面部126と、第4側面部127とを有する。
【0032】
第1側面部124および第2側面部125は、第1の方向(Y方向)に直交する第3の方向(X方向)において互いに対向して配置されている。第1側面部124および第2側面部125は、X方向から見て、Z方向が長手方向となり、Y方向が短手方向となる矩形形状を有する。
【0033】
第3側面部126および第4側面部127は、Y方向に直交する平面からなる。第3側面部126および第4側面部127は、ケース体120が有する複数の側面のうちで最も大きい面積を有する。第3側面部126および第4側面部127は、Y方向に見て、X方向が長手方向となり、Z方向が短手方向となる矩形形状を有する。
【0034】
底面122は、第1部分128と、第2部分129とを有する。第1部分128は、底面122の中央から第1側面部124側に位置している。第2部分129は、底面122の中央から第2側面部125側に位置している。
【0035】
複数の電池セル100は、Y方向に隣り合う電池セル100,100の間において、第3側面部126同士、第4側面部127同士が向かい合わせとなるように積層されている。これにより、複数の電池セル100が積層されるY方向において、正極端子111と負極端子112とが、交互に並んでいる。
【0036】
ガス排出弁130は、上面121に設けられている。ガス排出弁130は、ケース体120の内部で発生したガスによりケース体120の内圧が所定値以上となった場合に、そのガスをケース体120の外部に排出する。
【0037】
図4は、図1の電池パックをIV-IV線矢印方向から見た断面図である。図4に示すように、筐体20は、底部200と、側壁部210とを含む。
【0038】
本実施の形態においては、筐体20のうちの第1筐体部材21および第2筐体部材22の各々が底部200および側壁部210を含む。具体的には、第1筐体部材21は、第1底部201と、第1側壁部211とを有する。第2筐体部材22は、第2底部202と、第2側壁部212とを有する。
【0039】
底部200は、電池セル100の底面122と対向している。本実施の形態において、第1底部201は、第1部分128に対向している。第2底部202は、第2部分129に対向している。
【0040】
側壁部210は、電池セル100の側面123と対向している。本実施の形態において、第1側壁部211は、第1側面部124に対向している。第2側壁部212は、第2側面部125に対向している。
【0041】
筐体20は、底部200および側壁部210が一体成形されている。本実施の形態において、第1筐体部材21は、第1底部201および第1側壁部211が一体成形されている。第2筐体部材22は、第2底部202および第2側壁部212が一体成形されている。
【0042】
第1筐体部材21および第2筐体部材22は、押し出し成形によって形成されている。なお、第1筐体部材21および第2筐体部材22は、押し出し成形に限定されず、鋳造などによって形成されてもよい。
【0043】
第1筐体部材21および第2筐体部材22は、第1底部201および第2底部202の端部同士が接合されている。これにより、第1底部201および第2底部202の間には、接続部27が形成されている。接続部27は、たとえば摩擦撹拌接合によって形成される。なお、接続部27は、アーク溶接などの他の接合により形成されてもよい。
【0044】
底部200は、積層体10を冷却可能な冷却機構25を含んでいる。冷却機構25は、底部200の内部に設けられている。本実施の形態において、一方の冷却機構25aが第1底部201の内部に設けられている。他方の冷却機構25bが第2底部202の内部に設けられている。
【0045】
冷却機構25は、冷却媒体が流通可能な冷却媒体通路203を含んでいる。冷却媒体通路203は、底部200の内部において互いに間隔をあけながら複数設けられている。本実施の形態において、一方の冷却媒体通路203aが第1底部201の内部に位置している。また、他方の冷却媒体通路203bが第2底部202に位置している。
【0046】
冷却媒体通路203は、上面121と底面122とが対向する第2の方向(Z方向)から見て、積層体10および側壁部210の両方に重なるように配置されている。冷却媒体通路203に流通させる冷却媒体は、たとえば冷却水である。
【0047】
仮に、底部200と側壁部210とを溶接などによって接合する場合、接合の影響を少なくするため、その接合される周囲には冷却機構などの他の構成が配置されない。本実施の形態において、底部200と側壁部210とが接合される周囲には、底部200における第2の方向(Z方向)から見て側壁部210と重なる位置における部分が含まれる。このため、底部200と側壁部210とを接合する場合、底部200における第2の方向(Z方向)から見て側壁部210と重なる位置における部分には、冷却機構などの他の構成が配置されない。
【0048】
一方、本実施の形態における筐体20は、底部200と側壁部210とが一体成形されていることによって、底部200と側壁部210とを溶接などにより接合しない。このため、底部200における第2の方向(Z方向)から見て側壁部210と重なる位置における部分に冷却機構25を配置することができる。これにより、底部200における冷却媒体通路203の占有率を向上させることができるため、電池セル100を効率的に冷却することができる。
【0049】
側壁部210は、衝撃吸収機構26を含んでいる。本実施の形態においては、一方の衝撃吸収機構26aが第1側壁部211に設けられ、他方の衝撃吸収機構26bが第2側壁部212に設けられている。
【0050】
側壁部210には、内部空間213が設けられている。側壁部210は、リブ214を有している。リブ214は、内部空間213の中に配置され、内部空間213を複数の領域に区画している。このように、衝撃吸収機構26は、内部空間213およびリブ214によって構成される。側壁部210に外部から衝撃が加わった際、衝撃吸収機構26が潰れることにより衝撃のエネルギーを吸収し、電池セル100に対する衝撃が低減される。
【0051】
なお、本実施の形態における衝撃吸収機構26は、内部空間213およびリブ214によって構成されているが、衝撃吸収機構はこの構成に限定されない。衝撃吸収機構は、側壁部210の一部に他の部分よりも変形しやすい部材が配置されることによって構成されていてもよいし、リブのない内部空間が形成されることによって構成されていてもよい。
【0052】
第3の方向(X方向)において、電池セル100と側壁部210との間には、隙間L1があいている。隙間L1は、電池セル100を筐体20に挿入する際に干渉しない幅であればよい。エネルギー密度を高めるために、当該隙間L1は、狭い方が望ましい。
【0053】
以下、本技術の実施の形態1の比較例に係る電池パックについて説明する。比較例に係る電池パックは、筐体の構成が本技術の実施の形態1に係る電池パック1と異なるため、本技術の実施の形態1に係る電池パック1と同様である構成については説明を繰り返さない。
【0054】
図5は、比較例に係る電池パックの構成を示す断面図である。なお、図5においては第1筐体部材のみを示しているが、第2筐体部材においても、図5に示す第1筐体部材と同等の構造を適用し得る。
【0055】
図5に示すように、比較例に係る電池パック9においては、筐体90のうちの第1筐体部材91における第1底部901と第1側壁部911とが別々の部材で構成されている。第1底部901および第1側壁部911は、たとえばアーク溶接により接合されている。アーク溶接により接合部92が形成される。接合部92は、第1底部901と第1側壁部911との間の隅部に形成される。
【0056】
本比較例においては、接合部92が第1底部901から電池セル100側に隆起するため、電池セル100が接合部92の直上には配置できない。このため、比較例に係る電池セル100は、接合部92を避けながら配置する必要がある。比較例における電池セル100と第1側壁部911との間には、接合部92を形成する際に必要なクリアランスとして隙間L2があく。
【0057】
一方、図4に示すように、本実施の形態に係る電池パック1においては、第1筐体部材21における第1底部201および第1側壁部211とが一体成形されているため、アーク溶接部などの接合部を第1底部201と第1側壁部211との間の隅部に介在させることがない。このため、本実施の形態に係る隙間L1を比較例に係る隙間L2より小さくすることができる。隙間L1を隙間L2に比べて小さくすることにより、本実施の形態に係る筐体20を比較例と比べて小さくすることができる。その結果、電池パック1における電池セル100の占有率を高くすることができるため、電池パック1のエネルギー密度を向上させることができる。
【0058】
本技術の実施の形態1に係る電池パック1においては、冷却機構25を有する底部200と、衝撃吸収機構26を有する側壁部210を一体成形して筐体20を構成することによって、必要な機能を備えながら部品点数を削減することができる。また、底部200と側壁部210とを一体成形することによって、底部200と側壁部210との接合部を設ける必要がないため、接合部を形成する際に必要なクリアランスを筐体20の内部に設ける必要がない。これにより、クリアランスを小さくした分だけ筐体20を小さくして、電池パック1における電池セル100の占有率を高くすることができるため、電池パック1のエネルギー密度を向上させることができる。
【0059】
本技術の実施の形態1に係る電池パック1においては、底部200および側壁部210を一体成形して筐体20を構成することによって、底部および側壁部を一体成形しない場合と比較して部品点数を削減することができるため、電池パック1を低コスト化することができる。
【0060】
本技術の実施の形態1に係る電池パック1においては、底部200および側壁部210を一体成形して筐体20を構成することによって、底部および側壁部を一体成形しない場合と比較して接合箇所を少なくできるため、接合部に負荷がかからないようにして、筐体20を高強度または高剛性にすることができる。
【0061】
本技術の実施の形態1に係る電池パック1においては、底部200および側壁部210を一体成形して筐体20を構成することによって、底部および側壁部を一体成形しない場合と比較して溶接箇所を最小限にして、溶接時の入熱による筐体20の変形を抑制することができる。
【0062】
本技術の実施の形態1に係る電池パック1においては、底部200および側壁部210を一体成形して筐体20を構成することによって、底部および側壁部を一体成形しない場合と比較して底部200と側壁部210との間の接合部をなくすことができるため、筐体20の防水性を向上させることができる。
【0063】
本技術の実施の形態1に係る電池パック1においては、冷却機構25を冷却媒体が流通可能な冷却媒体通路203を設けることによって、効率的に電池セル100を冷却することができる。
【0064】
本技術の実施の形態1に係る電池パック1においては、底部200と側壁部210とを一体成形することによって、底部200における電池セル100の直下に加えて、側壁部210の直下にも冷却媒体通路203を設けることができる。その結果、底部200における電池セル100の冷却可能範囲を拡げることができるため、効率的に電池セル100を冷却することができる。
【0065】
本技術の実施の形態1に係る電池パック1においては、衝撃吸収機構26を内部空間213およびリブ214により構成することによって、側壁部210に衝撃が加わった際、リブ214が配置された内部空間213が潰れることにより衝撃のエネルギーを吸収し、電池セル100に対する衝撃を低減することができる。
【0066】
本技術の実施の形態1に係る電池パック1においては、筐体20が大型化した場合に、筐体20の一部を2つの部品にすることによって、底部200および側壁部210を一体成形しながら大型の電池パックに対応することができる。
【0067】
本技術の実施の形態1に係る電池パック1においては、第1筐体部材21および第2筐体部材22を押し出し成形することによって、筐体20の構成部材を効率良く製造することができる。
【0068】
(実施の形態2)
以下、本技術の実施の形態2に係る電池パックについて説明する。実施の形態2に係る電池パックは、筐体の構成が本技術の実施の形態1に係る電池パック1と異なるため、本技術の実施の形態1に係る電池パック1と同様である構成については説明を繰り返さない。
【0069】
図6は、本技術の実施の形態2に係る電池パックの構成を示す断面図である。図6に示すように、実施の形態2に係る電池パック1Aが備える筐体20Aは、底部200Aと、側壁部210Aとを含む。
【0070】
側壁部210Aは、複数の電池セル100のうちの第1の方向(Y方向)の端部に位置する電池セル100に対向している。本実施の形態においては、側壁部210Aは、エンドセパレータ102を間に挟んで電池セル100に対向している。
【0071】
第1側壁部211Aおよび第2側壁部212Aが複数の電池セル100である積層体10を第1の方向(Y方向)に挟むように配置されている。筐体20Aは、第1側壁部211Aおよび第2側壁部212Aによって、積層体10を第1の方向(Y方向)に拘束する。第1側壁部211Aおよび第2側壁部212Aは、底部200Aに一体成形されている。
【0072】
本技術の実施の形態2に係る電池パック1Aにおいては、底部200Aと側壁部210Aとが一体成形されることによって、底部と側壁部との間に接合部を有する場合と比較して筐体20Aが高強度または高剛性を有する。側壁部210Aを複数の電池セル100のうちの第1の方向(Y方向)の端部に位置する電池セル100に対向して配置することによって、電池セル100の第1の方向(Y方向)における膨張を筐体20Aにより受けることができる。
【0073】
なお、上述した各実施の形態においては、電極端子が電池セルの上面に設けられているが、この構成に限定されない。電極端子は、電池セルの側面に設けられていてもよい。電極端子が電池セルの側面に設けられる場合、電極端子の配置スペースを確保するために、電池セルの側面と筐体との間には隙間が設けられる。
【0074】
以上、本技術の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本技術の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0075】
1,1A,9 電池パック、10 積層体、20,20A,90 筐体、21,91 第1筐体部材、22 第2筐体部材、23 第3筐体部材、24 第4筐体部材、25,25a,25b 冷却機構、26,26a,26b 衝撃吸収機構、27 接続部、92 接合部、100 電池セル、101 セル間セパレータ、102 エンドセパレータ、110 電極端子、111 正極端子、112 負極端子、120 ケース体、121 上面、122 底面、123 側面、124 第1側面部、125 第2側面部、126 第3側面部、127 第4側面部、128 第1部分、129 第2部分、130 ガス排出弁、200,200A 底部、201,901 第1底部、202 第2底部、203,203a,203b 冷却媒体通路、210,210A 側壁部、211,211A,911 第1側壁部、212,212A 第2側壁部、213 内部空間、214 リブ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6