(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】鞍乗り型車両
(51)【国際特許分類】
B62J 23/00 20060101AFI20241218BHJP
【FI】
B62J23/00 A
B62J23/00 F
B62J23/00 G
B62J23/00 B
(21)【出願番号】P 2022189405
(22)【出願日】2022-11-28
【審査請求日】2023-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】畠山 貴充
(72)【発明者】
【氏名】山岸 一樹
(72)【発明者】
【氏名】黒田 かなえ
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 孝
(72)【発明者】
【氏名】張 秀昊
(72)【発明者】
【氏名】我藤 匠
【審査官】高瀬 智史
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-228553(JP,A)
【文献】特開2011-025891(JP,A)
【文献】特開2015-123872(JP,A)
【文献】特開2017-193336(JP,A)
【文献】特開2012-171375(JP,A)
【文献】特開2009-202670(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102143881(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 23/00
B62J 17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メータ(31)を囲うメータカバー(25)と、前記メータカバー(25)が取り付けられるフロントカバー(23)とを備える鞍乗り型車両において、
前記フロントカバー(23)は、ヘッドライト(27)を囲うヘッドライトカバー(24)を有し、
前記フロントカバー(23)と、前記ヘッドライトカバー(24)と、前記メータカバー(25)に覆われる内部構造と、
前記ヘッドライト(27)の外周部と前記ヘッドライトカバー(24)との間に、前記内部構造への走行風導入口として機能する前方開口部(27K)を有し、
前記メータカバー(25)の後部(25R)
から側部(25S)の範囲に渡って前記メータカバー(25)と前記フロントカバー(23)との間
を連続して開口するスリット(41)
と、
前記内部構造と前記スリット(41)とを連通する隙間(43S)
とにより前記フロントカバー(23)に対して後方に離間し、かつ前記フロントカバー(23)と前後方向で重なる
排風口が形成される
鞍乗り型車両。
【請求項2】
前記メータカバー(25)の側部(25S)は、前記フロントカバー(23)に対して車幅方向外側に離間し、かつ前記フロントカバー(23)と車幅方向で重なる
請求項
1に記載の鞍乗り型車両。
【請求項3】
前記フロントカバー(23)は、前記メータ(31)を露出させ、かつ前記メータカバー(25)で覆われる開口部(24K)を有し、
前記開口部(24K)の縁部(24W)には、前記メータカバー(25)が連結される連結部(24R1~24R3)が間隔を空けて設けられ、
前記連結部(24R1~24R3)の間、かつ、前記メータカバー(25)との間に、前記スリット(41)につながる隙間(42S,43S)が設けられる
請求項
2に記載の鞍乗り型車両。
【請求項4】
前記メータ(31)の下方に、前記メータカバー(25)で囲まれる手動操作部(33)を有し、
前記手動操作部(33)の下縁と前記メータカバー(25)との間の隙間(43)は、前記手動操作部(33)の上縁と前記メータカバー(25)との間の隙間(44)よりも広く開口して、前記スリット(41)と異なる位置の他の排風口として機能する
請求項1に記載の鞍乗り型車両。
【請求項5】
前記メータ(31)の下方に、前記メータカバー(25)で囲まれる手動操作部(33)を有し、
前記手動操作部(33)の下縁と前記メータカバー(25)との間の隙間(43)は、前記手動操作部(33)の上縁と前記メータカバー(25)との間の隙間(44)よりも広く開口して、前記スリット(41)と異なる位置の他の排風口として機能し、
前記スリット(41)は、車体側面視で、前記メータカバー(25)の後部(25R)から、前記他の排風口となる隙間(44)と幅方向で重なる位置まで連続する
請求項
1に記載の鞍乗り型車両。
【請求項6】
前記メータ(31)の前方に、前方からの光の一部を遮光する庇部(23H)を有し、
前記庇部(23H)の下面に、上方に凹む凹み部(23J)を有する
請求項1に記載の鞍乗り型車両。
【請求項7】
前記前方開口部(27K)と前後方向に重なる範囲に、少なくとも前記メータカバー(25)の後部(25R)の前記スリット(41)を有する
請求項1から
6のいずれか一項に記載の鞍乗り型車両。
【請求項8】
前記前方開口部(27K)と前後方向に重なる範囲に前記スリット(41)を有し、前記前方開口部(27K)と前記スリット(41)との間に前記庇部(23H)を有する
請求項
6に記載の鞍乗り型車両。
【請求項9】
前記フロントカバー(23)の前面部(24F)は、前方から走行風を前記前方開口部(27K)にガイドする傾斜断面形状を有する
請求項
8に記載の鞍乗り型車両。
【請求項10】
前記フロントカバー(23)の前面部(24F)は、前記ヘッドライト(27)に近づくにしたがって縮径すると共に車体後方に凹む形状である
請求項
8又は9に記載の鞍乗り型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗り型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車等の鞍乗り型車両には、メータを囲うメータカバーと、メータカバーが取り付けられるハンドルカバーとを備えた構成が広く採用されている。この種の鞍乗り型車両には、フロントカウルの前面に導風口を設け、メータカバーの周囲に、多数の整流板を有する複数の排風口を設けた構成が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の構成は、排風口が目立つ外観となり、かつ、大型の排風口を配置するスペースが必要になるため、例えば小型車両には採用し難い。仮に、排風口の外観への影響を抑えるために排風口を小さくした場合、十分な排風量が得られないおそれが生じる。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、排風口の外観への影響を抑えつつ、走行風を適切に排出し易くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
メータを囲うメータカバーと、前記メータカバーが取り付けられるフロントカバーとを備える鞍乗り型車両において、前記フロントカバーは、ヘッドライトを囲うヘッドライトカバーを有し、前記フロントカバーと、前記ヘッドライトカバーと、前記メータカバーに覆われる内部構造と、前記ヘッドライトの外周部と前記ヘッドライトカバーとの間に、前記内部構造への走行風導入口として機能する前方開口部を有し、前記メータカバーの後部から側部の範囲に渡って前記メータカバーと前記フロントカバーとの間を連続して開口するスリットと、前記内部構造と前記スリットとを連通する隙間とにより前記フロントカバーに対して後方に離間し、かつ前記フロントカバーと前後方向で重なる排風口が形成される鞍乗り型車両を提供する。
【発明の効果】
【0006】
排風口の外観への影響を抑えつつ、走行風を適切に排出し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施の形態に係る鞍乗り型車両の前部の側面図である。
【
図2】鞍乗り型車両の前部を斜め上方から示す図である。
【
図3】ヘッドライトを周辺構成と共に前方から示す図である。
【
図4】メータカバーを取り外した状態のハンドルカバーをメータと共に上方から示す図である。
【
図6】鞍乗り型車両の前部を左斜め後方から示す斜視図である。
【
図7】スリットを車体左側方から周辺構成と共に示す図である。
【
図12】フロントカバーを周辺構成と共に左側方から示す図から示す図である。
【
図13】メータ下方の操作スイッチを周辺構成と共に後方から示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、説明中、前後左右および上下といった方向の記載は、特に記載がなければ車体に対する方向と同一とする。また、各図に示す符号FRは車体前方を示し、符号UPは車体上方を示し、符号LHは車体左方を示す。
【0009】
[実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態に係る鞍乗り型車両10の前部の側面図である。
図2は、鞍乗り型車両10の前部を斜め上方(運転者の視線位置に相当)から示す図である。
図2及び後述する各図の符号CTは、車幅中央(車幅中心とも言う)を示している。
図1に示すように、鞍乗り型車両10は、車体フレームに回動自在に支持されるステアリングシャフト21を備える。ステアリングシャフト21は、車体フレームの前部を構成するヘッドパイプに挿通され、車幅中央位置で後上方に向けて傾斜し、前輪と一体に左右に回動する。ステアリングシャフト21の上部には操舵用のハンドル22が取り付けられている。
【0010】
鞍乗り型車両10の前部は、車体カバーの一部を構成するフロントカバー23で覆われる。フロントカバー23は、ハンドル22周辺を覆うハンドルカバー24と、ハンドルカバー24に取り付けられるメータカバー25と、ハンドルカバー24よりも下方に設けられるレッグシールド26とを備えている。
図1及び
図2に示すように、ハンドル22の左右中央かつ前方には、ヘッドライト27が配置される。ヘッドライト27の高さは、ハンドル22の高さと略同じである。ハンドル22の左右両端には、乗員が把持する左右一対の把持部22Aが設けられ、各把持部22Aの前方にはブレーキ操作用の操作レバー28が設けられる。左右の把持部22Aの車幅方向内側には、左右一対のミラー29の基端部29Aが取り付けられている。
【0011】
本構成のハンドルカバー24は、ハンドル22の左右の把持部22Aよりも内側を覆うと共に前方へ延出し、ヘッドライト27の前面以外を覆うカバー形状に形成されている。つまり、このハンドルカバー24は、ハンドル22を覆う部分、ヘッドライト27を覆う部分とを備えることで、車体前部の上部を覆う。そのため、このハンドルカバー24は、ヘッドライトカバーと称したり、フロントアッパカバーと称したりすることができる。
【0012】
ハンドル22の左右中央かつ上方には、メータ31が配置される。メータ31は、鞍乗り型車両10に関する各種の情報を表示する情報表示部として機能する。メータ31は、その情報表示エリアを、乗員の顔側に相当する後上方に向けて配置され、上方からメータカバー25で囲まれる。なお、本説明におけるメータ31の位置及び向きは、主に情報表示エリアの位置及び向きに相当する。
メータ31の下方には、左右に間隔を空けて操作スイッチ33が設けられる。操作スイッチ33は、メータ31に関わる操作を行うための押下式の操作スイッチである。
【0013】
図3は、ヘッドライト27を周辺構成と共に前方から示す図である。
図3に示すように、ヘッドライト27は、前面視で円形であり、いわゆる一灯の丸目タイプである。ハンドルカバー24の前面部24Fは、ヘッドライト27との間に、ヘッドライト27の外周に沿って延在する環状の隙間27Kを有している。この隙間27Kは、前方に開口するので、以下、「前方開口部27K」と表記する。
図3には、説明を分かり易くするため、前方開口部27Kの範囲にハッチングを付して示している。前方開口部27Kは、前方からの外気からなる走行風を導入する走行風導入口と言うこともできる。
【0014】
ハンドルカバー24の前面部24Fは、前方開口部27Kの外周側(ヘッドライト27側と言うこともできる)に近づくにしたがって縮径すると共に車体後方に凹む形状(いわゆるすり鉢形状)に形成されている。
図3には、説明を分かり易くするため、前方開口部27Kの範囲に、前方開口部27Kに付したハッチングと異なるハッチングを付して示している。
換言すると、前面部24Fは、後方に行くほどヘッドライト27外周に近づく傾斜断面形状に形成されている。そのため、前方からの走行風が、ハンドルカバー24の前面部24Fの表面に沿って流れることで、走行風が前方開口部27Kへガイドされ、前方開口部27Kに走行風が流入し易くなる。特に、本構成では、前面部24Fが、全周に渡って、後方に行くほどヘッドライト27外周に近づく傾斜断面形状に形成されているので、前方開口部27Kに多くの走行風が流入し易くなる。
【0015】
なお、前方開口部27Kは、ヘッドライト27のエイミング(主に上下への光軸調整)の際のヘッドライト27と前面部24Fとのクリアランスとなる隙間でもある。本構成の前方開口部27Kは、上下の隙間が左右の隙間よりも幅広に形成される楕円形状である。なお、ヘッドライト27の正面形状は、楕円形状等の非円形でもよい。また、前方開口部27K及び前面部24Fの形状についても適宜に変更してもよい。
【0016】
図4は、メータカバー25を取り外した状態のハンドルカバー24をメータ31と共に上方から示す図である。
図5は、メータカバー25を裏側から示す図である。
図4に示すように、ハンドルカバー24は、メータ31を露出させる開口部24Kを有している。開口部24Kの外周部分を構成する縁部24Wには、開口部24Kの輪郭に沿って間隔を空けて、メータカバー25が連結される複数の連結部24R1~24R3が設けられている。連結部24R1~24R3は、ハンドルカバー24の前部に設けられた左右一対の前部連結部24R1,24R2と、ハンドルカバー24の後部に設けられた後部連結部24R3とから構成される。 これら連結部24R1~24R3は、メータカバー25に設けられた連結用部材25T1~25T3(
図5)が係合する係合構造を有している。なお、ハンドルカバー24とメータカバー25とを連結する構造は、係合構造に限定されず、例えば、締結部材を利用する締結構造でもよい。
【0017】
図4及び
図5に示すように、メータカバー25は、ハンドルカバー24の開口部24Kを、縁部24Wを含めて覆うカバー形状に形成されている。メータカバー25のうち、メータ31の情報表示エリアに対応する領域は透明部材25Aで形成され、左右の操作スイッチ33に対応する領域はそれぞれ開口部25Bに形成される。各操作スイッチ33が各開口部25Bから突出することによって、乗員が各操作スイッチ33を操作可能である。
【0018】
メータカバー25のうち、透明部材25A及び開口部25Bを除く部分(メータカバー本体)は、有色の材料で形成され、ハンドルカバー24と連結するための連結用部材25T1~25T3(本構成では爪部)が一体に設けられる。なお、ハンドルカバー24、メータカバー25及びレッグシールド26は、樹脂製であるが、樹脂製でなくてもよい。
【0019】
図6は、鞍乗り型車両10の前部を左斜め後方から示す斜視図である。
図6に示すように、メータカバー25は、ハンドルカバー24の上部に取り付けられ、前後方向及び左右方向に延在するカバーに形成されている。そのため、外観視で、メータカバー25とハンドルカバー24との境界部分についても、前後方向及び左右方向に延在する。
本構成では、メータカバー25の後部を含む領域が、フロントカバー23との間に、後方等に開口するスリット41を空けて配置されている。そのため、外部に視認される上記境界部分のうち、メータカバー25の後部を含む範囲がスリット41となっている。
【0020】
図6の符号αは、スリット41の範囲にハッチングを付した図を示している。
図7は、スリット41を車体左側方から周辺構成と共に示した図である。
図7にも、スリット41の範囲にハッチングを付している。
以下の説明において、「メータカバー25の後部」に符号25Rを付して示し、「メータカバー25の側部」に符号25Sを付して示す。
図6及び
図7に示すように、スリット41は、メータカバー25の後部25Rを左右に渡って連続すると共に、メータカバー25の後部25Rから左右の側部25Sの範囲に渡って連続して延在し、
図7に示す車体側面視で、ミラー29の基端部29Aの近傍まで前方に延在する。
【0021】
図8は、
図6のA-A断面を示す図である。
図8に示すように、メータカバー25の側部25Sは、フロントカバー23の開口部24Kの縁部24Wに対して車幅方向外側に離間し、かつ、縁部24Wと車幅方向で重なる。これにより、フロントカバー23内とスリット41をつなぐ隙間42Sが形成され、フロントカバー23内に流入した走行風を、スリット41から外部に排出できる。また、メータカバー25の側部25Sと縁部24Wとが車幅方向で重なるので、スリット41からフロントカバー23内部が外観視されにくくでき、かつ、スリット41から内部へ雨水等が浸入する事態を防止できる。
図8には、メータカバー25側方のスリット41の幅(上下方向に沿う長さに相当)を値WSで示し、メータカバー25の側部25Sとフロントカバー23とが車幅方向に重なる範囲(上下方向に沿う長さ)を値RSで示している。
【0022】
図9は、
図6のB-B断面を示す図である。
図9に示すように、メータカバー25の後部25Rは、フロントカバー23の開口部24Kの縁部24Wに対して後方に離間し、かつ、縁部24Wと前後方向で重なる。これにより、フロントカバー23内とスリット41をつなぐ隙間43Sが形成され、フロントカバー23内に流入した走行風を、スリット41から外部に排出できる。また、メータカバー25の後部25Rと縁部24Wとが車幅方向で重なるので、スリット41からフロントカバー23内部が外観視されにくくでき、かつ、スリット41から内部へ雨水等が浸入する事態を防止できる。
【0023】
図9には、メータカバー25後方のスリット41の幅(上下方向に沿う長さに相当)を値WRで示し、メータカバー25の後部25Rとフロントカバー23とが前後方向に重なる範囲(上下方向に沿う長さ)を値RRで示している。
本構成では、「
図8に示すスリット41の幅WS」=「
図9に示すスリット41の幅WR」であり、「
図8に示す重なる範囲RS」<「
図9に示す重なる範囲RR」である。
【0024】
図10は、フロントカバー23を後方から示す図である。
図10には、上記スリット41を含む隙間42S,43Sの領域をハッチングで示すと共に、前方開口部27Kを二点鎖線で示している。また、
図10には、フロントカバー23の開口部24Kの縁部24Wのうち、連結部24R1~24R3を有する領域を、それぞれ符号AR1,AR2及びAR3を付して示し、領域AR1,AR3間の領域を、符号ARLを付して示し、領域AR2,AR3間の領域を、符号ARRを付して示している。
領域AR1,AR2,AR3は、領域ARL,ARRよりも高い位置まで延びている。少なくとも領域ARL,ARRの幅全体に渡るハッチング箇所が、左右の上記隙間42S(
図8)を形成する部分となっている。これにより、スリット41につながる左右の隙間42Sを前後方向に広い隙間にでき、フロントカバー23内の走行風の排出に有利となる。
【0025】
また、領域ARL,ARRよりも上端が高い領域AR3の左右のハッチング箇所が、後方の上記隙間43S(
図9)を形成する部分である。これにより、スリット41につながる後方の隙間43Sを設けることができ、フロントカバー23内の走行風の排出に有利となる。このようにして、スリット41を含む隙間42S,43Sは、フロントカバー23内の走行風を側方及び後方に排出可能な第1排風口として機能する。
【0026】
図10に示すように、スリット41を含む隙間42S,43Sは、前方開口部27Kと前後方向に重なる。そのため、前方開口部27Kに流入した走行風を、スリット41を含む隙間42S,43Sからスムーズに排出し易くなる。
【0027】
図11は、フロントカバー23を前方から示す図である。
図12は、フロントカバー23を周辺構成と共に左側方から示す図である。
図12には、説明の便宜上、ハンドルカバー24の一部、及び、メータカバー25の一部を二点鎖線で示し、これらによって覆われる内部構造を実線で示している。また、
図12中の矢印は、前方開口部27Kからフロントカバー23に流入した走行風の流れを示している。
図11及び
図12に示すように、フロントカバー23の前上部(
図11中の領域AR1,AR2の間の領域)は、メータ31の前方に位置する庇部23Hに形成されている。この庇部23Hにより、前方からメータ31に向かう光の一部が遮光される。この庇部23Hの下面には、上方に凹む凹み部23Jが設けられる。
【0028】
図12に示すように、凹み部23Jは、前方開口部27Kの後方に位置する。より具体的には、凹み部23Jは、前方開口部27Kの後方、かつ、前方開口部27Kと前後方向に重なる範囲に設けられる。そのため、
図12に示すように、前方開口部27Kの略上部に流入した走行風を、凹み部23Jに通して後方に円滑に流すことができる。そのため、前方からの走行風が庇部23Hで遮断される事態を抑制できる。
また、凹み部23Jの後方には、スリット41を含む隙間42S,43Sが位置する。凹み部23Jを通過した走行風は、メータ31やメータカバー25に沿って後下方に流れる。スリット41を含む隙間42S,43Sは、凹み部23Jの後下方に位置するので、凹み部23Jを通過した走行風を、スリット41を含む隙間42S,43Sから円滑に排出できる。
このように、凹み部23Jは、前方開口部27Kとスリット41との間に位置するので、前方開口部27Kからの走行風を、スリット41を含む隙間42S,43S(第1排風口)に案内するガイドと言うこともできる。
【0029】
図13は、メータ31下方の左側の操作スイッチ33を周辺構成と共に後方から示す図である。
図14は、
図13のC-C断面を示す図である。
図13に示すように、操作スイッチ33は、メータカバー25に設けられた開口部25Bに囲まれる。操作スイッチ33の下縁と開口部25BKとの間には、フロントカバー23内の走行風を排出する第2排風口として機能する隙間44が形成されている。
【0030】
図14に示すように、操作スイッチ33の上縁と開口部24Kとの間の隙間45は、上記隙間44よりも小さい隙間とされ、換言すると、隙間45は可及的に狭い隙間とされることで、排風口としては機能しない。これにより、操作スイッチ33の上縁とメータカバー25との間の隙間45を狭くした外観デザインを採用しながら、操作スイッチ33周辺から、フロントカバー23内の走行風を排出できる。
この隙間44は、車体側面視で、スリット41を含む隙間42Sの範囲(第1排風口の範囲に相当)と幅方向で重なる位置に設けられている。そのため、メータ31下方を後方に流れる走行風を、第1排風口及び第2排風口の双方からスムーズに排出し易くなる。
【0031】
メータ31下方の右側の操作スイッチ33及びその周辺構造は、左側の操作スイッチ33及びその周辺構造と左右対称形状に形成されている。つまり、右側の操作スイッチ33についても、操作スイッチ33の上縁と開口部24Kとの間の隙間45よりも広く開口する隙間44が形成され、この隙間44が、第2排気口として機能する。これにより、右側の操作スイッチ33の上縁とメータカバー25との間の隙間45を狭くした外観デザインを採用しながら、第2排風口として機能する隙間44を設けることができる。
なお、各操作スイッチ33の形状及び数等は適宜に変更してもよい。
【0032】
以上説明したように、メータカバー25の後部25Rは、
図9に示したように、フロントカバー23の一部であるハンドルカバー24との間に、後方に開口するスリット41を含む隙間43Sを空けて、ハンドルカバー24に対して後方に離間し、かつハンドルカバー24と前後方向で重なる。この構成によれば、外観上、目立たないスリット41から後方に走行風を排出でき、前方からの走行風の排出がスムーズになる。また、スリット41からハンドルカバー24内を視認し難くできる。これらにより、外観への影響を抑えつつ、走行風を適切に排出し易くなる。
【0033】
また、スリット41は、
図6に示したように、メータカバー25の後部25Rから側部25Sの範囲に渡ってメータカバー25とハンドルカバー24との間を連続して開口する。この構成によれば、スリット41を幅方向と前後方向に拡げることができ、走行風の排出に有利となる。
【0034】
また、メータカバー25の側部25Sは、
図8に示したように、ハンドルカバー24に対して車幅方向外側に離間し、かつハンドルカバー24と車幅方向で重なる。この構成によれば、外観への影響を抑えつつ、側方のスリット41からも走行風を排出し易くなる。
【0035】
また、フロントカバー23は、
図10に示したように、メータ31を露出させ、かつメータカバー25で覆われる開口部24Kを有し、開口部24Kの縁部24Wには、メータカバー25が連結される連結部24R1~24R3が間隔を空けて設けられ、連結部24R1~24R3の間、かつ、メータカバー25との間に、スリット41につながる隙間42S,43S(
図8,
図9)が設けられる。この構成によれば、連結部24R1~24R3の間の領域を利用してスリット41につながる広い排風空間を形成し易くなる。
【0036】
また、
図14に示したように、メータ31の下方に、メータカバー25で囲まれる操作スイッチ33を有し、操作スイッチ33の下縁とメータカバー25との間の隙間44は、操作スイッチ33の上縁とメータカバー25との間の隙間45よりも広く開口して、スリット41と異なる位置の他の排風口として機能する。この構成によれば、操作スイッチ33の上縁とメータカバー25との間の隙間45を狭くした外観デザインを採用できるので、外観への影響を抑えつつ、操作スイッチ33周辺から走行風を排出できる。なお、操作スイッチ33は、押下式でなくてもよい。この操作スイッチ33は本発明の「手動操作部」に相当している。
【0037】
また、スリット41は、車体側面視で、メータカバー25の後部から、他の排風口として機能する隙間43と幅方向で重なる位置まで連続する。そのため、操作スイッチ33の上縁とメータカバー25とを近接させた外観デザインを採用しつつ、トータルで広い排風口を設けることができる。
【0038】
また、
図11及び
図12に示したように、メータ31の前方に、前方からの光の一部を遮光する庇部23Hを有し、庇部23Hの下面に、上方に凹む凹み部23Jを有する。そのため、メータ31に向かう光の一部を遮光しつつ、凹み部23Jにより前方からの走行風をメータ31後方に流し易くなり、走行風の排出に有利となる。
【0039】
また、
図13に示したように、フロントカバー23は、ヘッドライト27を囲うヘッドライトカバーを兼ねるハンドルカバー24を有し、ヘッドライト27の外周部とハンドルカバー24との間に、走行風導入口として機能する前方開口部27Kを有し、前方開口部27Kと前後方向に重なる範囲に、少なくともメータカバー25の後部に位置するスリット41を有している。この構成によれば、前方開口部27Kと前後方向に重なる範囲にスリット41を有するので、前方開口部27Kに流入した走行風を、スリット41から排出し易くなる。また、前方開口部の空間を設けることで、ヘッドライト27の光軸調整に伴う傾き調整をし易くなる。
さらに、前方開口部27Kとスリット41との間に庇部23Hを有するので、前方開口部27Kに前方から流入する走行風を、庇部23Hの凹み部23Jによりスリット41側に案内し、スリット41から排出し易くなる。
【0040】
また、フロントカバー23の前面部24Fは、前方から走行風を前方開口部27Kにガイドする傾斜断面形状を有する。そのため、走行風が前方開口部27Kに流入しやすくなる。フロントカバー23の前面部24Fを、走行風が前方開口部27Kに流入しやすい形状にしても、スリット41からスムーズに走行風を排出できるので、前面部24Fの形状の自由度が向上する。つまり、本構成の排風構造を採用することで、前面部24Fの形状自由度を向上させることが可能である。
【0041】
本構成では、前面部24Fに、ヘッドライト27に近づくにしたがって縮径すると共に車体後方に凹む形状(すり鉢形状)を採用するので、前面部24Fのデザインを向上させつつ、前面部24Fによって前方開口部27Kにガイドされる走行風を、スリット41からスムーズに排出できる。
【0042】
なお、上述の実施形態は本発明の一態様を示すものである。本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、細部等の構成は適宜に変更してもよい。例えば、本発明を、
図1等に示す自動二輪車に適用する場合を説明したが、これに限定されず、本発明を、任意の鞍乗り型車両に適用してもよい。なお、鞍乗り型車両は、二輪車両に限定されず、三輪車両、及び四輪車両等でもよい。また、鞍乗り型車両のパワーユニットは、内燃機関に限定されず、モーターでもよい。
【0043】
[上記実施の形態によりサポートされる構成]
上記実施の形態は、以下の構成をサポートする。
【0044】
(構成1)メータを囲うメータカバーと、前記メータカバーが取り付けられるフロントカバーとを備える鞍乗り型車両において、前記メータカバーの後部は、前記フロントカバーとの間に、後方に開口するスリットを含む隙間を空けて、前記フロントカバーに対して後方に離間し、かつ前記フロントカバーと前後方向で重なる鞍乗り型車両。
この構成によれば、外観上、目立たないスリットから後方に走行風を排出できるので、排風口の外観への影響を抑えつつ、走行風を適切に排出し易くなる。
【0045】
(構成2)前記スリットは、前記メータカバーの後部から側部の範囲に渡って前記メータカバーと前記フロントカバーとの間を連続して開口する構成1に記載の鞍乗り型車両。
この構成によれば、スリットを幅方向と前後方向に拡げることができ、走行風の排出に有利となる。
【0046】
(構成3)前記メータカバーの側部は、前記フロントカバーに対して車幅方向外側に離間し、かつ前記フロントカバーと車幅方向で重なる構成2に記載の鞍乗り型車両。
この構成によれば、外観への影響を抑えつつ、側方のスリットからも走行風を排出し易くなる。
【0047】
(構成4)前記フロントカバーは、前記メータを露出させ、かつ前記メータカバーで覆われる開口部を有し、前記開口部の縁部には、前記メータカバーが連結される連結部が間隔を空けて設けられ、前記連結部の間、かつ、前記メータカバーとの間に、前記スリットにつながる隙間が設けられる構成1から3のいずれか一項に記載の鞍乗り型車両。
この構成によれば、連結部の間の領域を利用してスリットにつながる広い排風空間を形成し易くなる。
【0048】
(構成5)前記メータの下方に、前記メータカバーで囲まれる手動操作部を有し、前記手動操作部の下縁と前記メータカバーとの間の隙間は、前記手動操作部の上縁と前記メータカバーとの間の隙間よりも広く開口して、前記スリットと異なる位置の他の排風口として機能する構成1から4のいずれか一項に記載の鞍乗り型車両。
この構成によれば、手動操作部の上縁とメータカバーとの間の隙間を狭くした外観デザインを採用できるので、外観への影響を抑えつつ、手動操作部周辺から走行風を排出できる。
【0049】
(構成6)前記メータの下方に、前記メータカバーで囲まれる手動操作部を有し、前記手動操作部の下縁と前記メータカバーとの間の隙間は、前記手動操作部の上縁と前記メータカバーとの間の隙間よりも広く開口して、前記スリットと異なる位置の他の排風口として機能し、前記スリットは、車体側面視で、前記メータカバーの後部から前記他の排風口となる隙間と幅方向で重なる位置まで連続する構成2及び3に記載の鞍乗り型車両。
この構成によれば、手動操作部の上縁とメータカバーとの間の隙間を狭くした外観デザインを採用しつつ、トータルで広い排風口を設けることができる。
【0050】
(構成7)前記メータの前方に、前方からの光の一部を遮光する庇部を有し、前記庇部の下面に、上方に凹む凹み部が設けられる構成1から6のいずれか一項に記載の鞍乗り型車両。
この構成によれば、メータに向かう光の一部を遮光しつつ、凹み部により前方からの走行風をメータ後方に流し易くなり、走行風の排出に有利となる。
【0051】
(構成8)前記フロントカバーは、ヘッドライトを囲うヘッドライトカバーを有し、前記ヘッドライトの外周部と前記ヘッドライトカバーとの間に、走行風導入口として機能する前方開口部を有し、前記前方開口部と前後方向に重なる範囲に、少なくとも前記メータカバーの後部の前記スリットを有する構成1から7のいずれか一項に記載の鞍乗り型車両。
この構成によれば、前方開口部に流入した走行風を、スリットから排出し易くなる。また、前方開口部の空間を設けることで、ヘッドライトの光軸調整に伴う傾き調整をし易くなる。
【0052】
(構成9)前記フロントカバーは、ヘッドライトを囲うヘッドライトカバーを有し、前記ヘッドライトの外周部と前記ヘッドライトカバーとの間に、走行風導入口となる前方開口部を有し、前記前方開口部と前後方向に重なる範囲に前記スリットを有し、前記前方開口部と前記スリットとの間に前記庇部を有する構成7に記載の鞍乗り型車両。
この構成によれば、前方開口部と前後方向に重なる範囲にスリットを有し、前方開口部とスリットとの間に庇部を有するので、前方開口部に前方から流入する走行風を、庇部の凹み部によりスリット側に案内し、スリットから排出し易くなる。また、前方開口部の空間を設けることで、ヘッドライトの光軸調整に伴う傾き調整をし易くなる。
【0053】
(構成10)前記フロントカバーの前面部は、前方から走行風を前記前方開口部にガイドする傾斜断面形状を有する構成9に記載の鞍乗り型車両。
この構成によれば、走行風が前方開口部に流入しやすくなる。フロントカバーの前面部を、走行風が前方開口部に流入しやすい形状にしても、スリットからスムーズに走行風を排出できるので、前面部の形状の自由度が向上する。
【0054】
(構成11)前記フロントカバー23の前面部は、前記ヘッドライトに近づくにしたがって縮径すると共に車体後方に凹む形状である構成9又は10に記載の鞍乗り型車両。
この構成によれば、前面部のデザインを向上させつつ、前面部によって前方開口部にガイドされる走行風を、スリットからスムーズに排出できる。
【符号の説明】
【0055】
10 鞍乗り型車両10
23 フロントカバー
23H 庇部
23J 凹み部
24 ハンドルカバー(ヘッドライトカバー)
24F 前面部
24K 開口部
24W 縁部
24R1~24R3 連結部
25 メータカバー
25R メータカバーの後部
25S メータカバーの側部
27 ヘッドライト
27K 前方開口部
29 ミラー
29A ミラーの基端部
33 操作スイッチ(手動操作部)
41 スリット
42S,43S,44,45 隙間