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特許7606514サーマルカメラアセンブリ、およびサーマルカメラアセンブリを備える工業生産プロセスを制御するための制御システム、およびサーマルカメラアセンブリを備える工業生産プロセスを制御するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】サーマルカメラアセンブリ、およびサーマルカメラアセンブリを備える工業生産プロセスを制御するための制御システム、およびサーマルカメラアセンブリを備える工業生産プロセスを制御するための方法
(51)【国際特許分類】
   G01J 5/04 20060101AFI20241218BHJP
   G01D 11/24 20060101ALI20241218BHJP
   G01J 5/061 20220101ALI20241218BHJP
   G01J 5/48 20220101ALI20241218BHJP
   G08B 21/18 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
G01J5/04
G01D11/24 B
G01J5/061
G01J5/48 F
G08B21/18
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2022529532
(86)(22)【出願日】2020-11-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-24
(86)【国際出願番号】 EP2020082868
(87)【国際公開番号】W WO2021099559
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2023-11-15
(31)【優先権主張番号】102019000021861
(32)【優先日】2019-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(31)【優先権主張番号】102019000021864
(32)【優先日】2019-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】500200708
【氏名又は名称】マーポス、ソチエタ、ペル、アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】MARPOSS S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100158964
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 和郎
(72)【発明者】
【氏名】ダニエーレ、ランツォーニ
(72)【発明者】
【氏名】マッテオ、ベントゥーリ
(72)【発明者】
【氏名】アントニオ、デ、レンツィス
(72)【発明者】
【氏名】ファビオ、ゴレッティ
(72)【発明者】
【氏名】ファビオ、ジャンヌッツィ
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-523138(JP,A)
【文献】特開2019-070668(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0085482(US,A1)
【文献】中国実用新案第206298612(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 5/00 - G01J 5/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーマルカメラアセンブリ(1)であって、
-サーモグラフ画像および/または記録を提供するサーマル画像検出器(3)と、
-前記サーマル画像検出器(3)を収容する保護ケーシング(2)であって、透明スクリーン(6)により閉鎖されるウィンドウ(5)を含む保護ケーシング(2)と、
-前記保護ケーシング(2)に配置された単数または複数のセンサ(15;16;20;32;33)であって、物理量または状態を表す信号を提供するセンサ(15;16;20;32;33)と、
-前記保護ケーシング(2)に配置された単数または複数のアクチュエータ(8;22;28)と、を備え、
-前記サーマルカメラアセンブリ(1)は、前記保護ケーシング(2)に組み込まれた制御ユニット(9)を備え、前記制御ユニット(9)は、前記サーマル画像検出器(3)に直接的に接続されて、前記サーモグラフ画像および/または記録を受信し、かつこれらを外部に伝送し;前記制御ユニット(9)は、単数または複数の前記センサ(15;16;20;32;33)に直接的に接続されて、対応する前記信号を受信し;前記制御ユニット(9)は、単数または複数の前記アクチュエータ(8;22;28)に直接的に接続されて、当該アクチュエータを、受信した前記信号に応じて制御し、
-前記サーマルカメラアセンブリ(1)は、前記制御ユニット(9)を介してのみ実施されるデータのデジタル伝送により外部と通信するように構成される、
ことを特徴とするサーマルカメラアセンブリ(1)。
【請求項2】
前記データのデジタル伝送および前記サーマルカメラアセンブリ(1)の電力供給のための単一の電気ケーブル(11)を備える、
請求項1に記載のサーマルカメラアセンブリ(1)。
【請求項3】
前記データのデジタル伝送は、単数または複数の前記センサ(15;16;20;32;33)から受信した前記信号に応じて、アラーム信号を伝送することを含む、
請求項1または請求項2に記載のサーマルカメラアセンブリ(1)。
【請求項4】
前記制御ユニット(9)は、前記サーマル画像検出器(3)の電力供給を制御する、
請求項1~3のいずれか一項に記載のサーマルカメラアセンブリ(1)。
【請求項5】
前記サーマルカメラアセンブリ(1)は、冷却システム(21)を備え、
前記制御ユニット(9)は、単数または複数の前記アクチュエータ(22)を制御することにより前記冷却システム(21)を作動させるように構成される、
請求項1~4のいずれか一項に記載のサーマルカメラアセンブリ(1)。
【請求項6】
前記冷却システム(21)は、全体的に前記保護ケーシング(2)内部に配置される、
請求項5に記載のサーマルカメラアセンブリ(1)。
【請求項7】
単数または複数の前記センサは、温度センサ(15)を含む、
請求項1~6のいずれか一項に記載のサーマルカメラアセンブリ(1)。
【請求項8】
前記制御ユニット(9)は、前記温度センサ(15)から受信した信号に応じて、前記冷却システム(21)を作動させる、
請求項5または請求項6に従属する請求項7に記載のサーマルカメラアセンブリ(1)。
【請求項9】
前記サーマルカメラアセンブリ(1)は、前記サーマルカメラアセンブリ(1)の内部部品と前記保護ケーシング(2)との間に配置された減衰要素(30)を備え、
前記内部部品は、前記サーマル画像検出器(3)を含む、
請求項1~8のいずれか一項に記載のサーマルカメラアセンブリ(1)。
【請求項10】
前記保護ケーシング(2)の少なくとも一部に、断熱部が設けられる、
請求項1~9のいずれか一項に記載のサーマルカメラアセンブリ(1)。
【請求項11】
前記制御ユニット(9)は、前記保護ケーシング(2)内部に配置される、
請求項1~10のいずれか一項に記載のサーマルカメラアセンブリ(1)。
【請求項12】
前記制御ユニット(9)は、単数または複数の前記センサ(15;16;20;32;33)、および単数または複数の前記アクチュエータ(8;22;28)の電力供給を制御する、
請求項1~11のいずれか一項に記載のサーマルカメラアセンブリ(1)。
【請求項13】
前記サーマルカメラアセンブリ(1)は、前記制御ユニット(9)に接続された少なくとも1つの慣性センサ(32)をさらに備え、
前記慣性センサ(32)は、前記保護ケーシング(2)が受ける加速度値を測定する、
請求項1~12のいずれか一項に記載のサーマルカメラアセンブリ(1)。
【請求項14】
少なくとも1つの前記慣性センサ(32)は、前記制御ユニット(9)に組み込まれる、
請求項13に記載のサーマルカメラアセンブリ(1)。
【請求項15】
少なくとも1つの前記慣性センサ(32)は、3軸加速度センサである、
請求項13または14に記載のサーマルカメラアセンブリ(1)。
【請求項16】
前記制御ユニット(9)は、前記保護ケーシング(2)が受ける瞬間的な加速度の値のうち、その全部または1つが閾値を超えた場合、アラーム信号を送信するように構成される、
請求項13~15のいずれか一項に記載のサーマルカメラアセンブリ(1)。
【請求項17】
前記制御ユニット(9)は、少なくとも1つの前記慣性センサ(32)により提供される信号を処理して、前記保護ケーシング(2)の空間配置に関する情報を得るように構成される、
請求項13~16のいずれか一項に記載のサーマルカメラアセンブリ(1)。
【請求項18】
前記制御ユニット(9)は、前記保護ケーシング(2)がその初期位置に対して不所望な変位をしたことを表すアラーム信号を送信するように構成される、
請求項17に記載のサーマルカメラアセンブリ(1)。
【請求項19】
前記制御ユニット(9)は、前記サーマル画像検出器(3)から受信した前記サーモグラフ画像および/または記録を自律的に処理し、これらを処理した後に、前記サーモグラフ画像および/または記録を外部に伝送する、
請求項1~18のいずれか一項に記載のサーマルカメラアセンブリ(1)。
【請求項20】
工業生産環境において工業生産プロセスをモニタリングおよび制御するための制御システムであって、
-請求項1~19のいずれか一項に記載のサーマルカメラアセンブリ(1)と、
-前記サーマルカメラアセンブリ(1)に接続された電力供給および処理手段と、を備え、
前記電力供給および処理手段は、前記制御ユニット(9)と、前記制御ユニット(9)と通信する外部コントローラ(10)と、を備えることを特徴とする、
制御システム。
【請求項21】
サーマルカメラアセンブリ(1)により、工業生産環境において工業生産プロセスを制御するための制御方法であって、
前記サーマルカメラアセンブリ(1)は、透明スクリーン(6)により閉鎖されるウィンドウ(5)を含む保護ケーシング(2)を備え、前記保護ケーシング(2)は、サーマル画像検出器(3)と;単数または複数のセンサ(15;16;20;32;33)と;単数または複数のアクチュエータ(8;22;28)と;前記サーマル画像検出器(3)と単数または複数の前記センサ(15;16;20;32;33)と単数または複数の前記アクチュエータ(8;22;28)とに直接的に接続された組込型制御ユニット(9)と、を収容し、
前記方法は、
-前記サーマルカメラアセンブリを、前記工業生産環境内において前記サーマルカメラアセンブリが向く必要のあるターゲットに対して位置決めするステップと、
前記サーマル画像検出器(3)により、前記ターゲットに対応する物体または材料の一部であって、前記工業生産プロセス中に使用または処理される一部についての少なくとも1つのサーモグラフ画像または記録を取得するステップと、
-少なくとも1つの前記サーモグラフ画像および/または記録を前記組込型制御ユニットに送信するステップと、
-少なくとも1つの前記サーモグラフ画像または記録を前記組込型制御ユニットにおいて処理して、少なくとも1つの処理されたサーモグラフ画像および/または記録を得るステップと、
-少なくとも1つの前記処理されたサーモグラフ画像および/または記録を、前記組込型制御ユニット(9)を介してのみ実施されるデータのデジタル伝送により外部に伝送するステップと、
-少なくとも1つの前記処理されたサーモグラフ画像および/または記録を使用して、前記工業生産プロセスの少なくとも一部を制御するステップと、
を備える方法。
【請求項22】
前記組込型制御ユニットを介して単数または複数の前記センサにより送られた信号を受信し、前記組込型制御ユニットを介して単数または複数の前記アクチュエータを制御するさらなるステップを備える、
請求項21に記載のチェック方法。
【請求項23】
前記サーマルカメラアセンブリ(1)は、前記組込型制御ユニット(9)に接続された少なくとも1つの慣性センサ(32)を含み、
前記方法は、前記サーマルカメラアセンブリ(1)が受ける加速度の値を測定するさらなるステップを備える、
請求項21または22に記載のチェック方法。
【請求項24】
少なくとも1つの前記慣性センサ(32)により提供される信号を処理して、前記信号に基づいて前記サーマルカメラアセンブリ(1)の空間配置に関する情報を得るさらなるステップを備える、
請求項23に記載のチェック方法。
【請求項25】
前記サーマルカメラアセンブリ(1)が受ける加速度の値が所定の閾値を超えた場合、アラーム信号を生成するさらなるステップを備える、
請求項23および24のいずれか一項に記載のチェック方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルカメラアセンブリまたはサーマルカメラ(サーモグラフカメラとも称される)に関する。サーマルカメラアセンブリは、赤外線放射に感度を有するため、カメラが向く表面の温度マップを示すサーモグラフ画像または記録を得ることができる特定のカメラである。
【0002】
また、本発明は、サーマルカメラアセンブリにより工業生産環境において工業生産プロセスを制御するための制御システムおよび方法に関する。本発明は、異なる種類の工業生産プロセスを制御またはモニタリングするためのサーマルカメラアセンブリまたはサーマルカメラに適用される。本発明は、例えば、鋳造工場における金型等の物体の温度のチェック、熱間成形プロセスおよび圧延プロセスにおいて成形プロセスを受ける金属の温度変化のチェック、慣性溶接プロセスにおける溶接材料の温度のチェック、工業炉工場における溶融金属の温度のチェック、さらにはその他の生産プロセスに適用され得る。
【背景技術】
【0003】
鋳造工場で使用されている既知のサーマルカメラは、例えば、特許出願W02004011891A2号または特許出願第WO2016199057A2号に記載されており、サーマル画像検出器(赤外線照射に感度を有する)と、サーマル画像検出器を収容してこれを機械的にも熱的にも保護する金属製の保護ケーシングと、を備えている。
【0004】
保護ケーシングは、検出ウィンドウを有している。検出ウィンドウは、透明スクリーンにより閉鎖されるとともに、サーマル画像検出器のレンズに配置されている。これにより、サーマル画像検出器は、ケーシングの外を見ることができる。シャッタがケーシングの外部にヒンジ連結されている。シャッタは、検出ウィンドウを覆わない開放位置から、検出ウィンドウを覆う閉鎖位置に回動する。空気圧アクチュエータが、シャッタをサーモグラフ画像または記録を取得するために必要な時間だけ開放するように、シャッタの位置を制御する。
【0005】
保護ケーシングは、圧縮空気の流れを保護ケーシングに導入する圧縮空気冷却システムを含んでいる。好適には、冷却システムは、保護ケーシングの外部に配置された渦管(すなわち、Ranque-Hilschチューブ)を設けられている。渦管は、高圧流体を温度が大きく異なる2つのジェットに分離することができる。最高温度を有するジェットは保護ケーシング外部に向けられ、より低温のジェットは保護ケーシング内部に向けられる。保護ケーシング内部には、単数または複数のセンサ、およびサーマルカメラの動作に寄与する単数または複数のアクチュエータも設置されている。
【0006】
したがって、上述のタイプの既知のサーマルカメラには、圧縮空気供給のための空気圧接続部と電気配線とが必要である。電気配線は、(例えば、サーマル画像検出器および任意のセンサおよびアクチュエータに電力を供給するために必要な)電力を伝達するとともに、両方向における信号(すなわち、サーマルカメラおよびセンサからリモートコントローラへの信号、およびリモートコントローラからサーマルカメラおよびアクチュエータへの信号)を伝達する。このような電気配線は、特に太い多極ケーブル(例えば、30mmに近い直径を有する)を必要とするが、このようなケーブルを鋳造工場等の工場で稼働させることは困難である。これは、多極ケーブルに小さな曲率半径を有する屈曲部となるように屈曲することを強いる複数の近接した障害物が存在するためである。サーマルカメラに収容された各部品(センサおよび/またはアクチュエータ)は、電力供給および信号伝達のために専用の電気接続部を介してリモートコントローラに個々に接続されている。したがって、ケーブルの稼働における困難を克服するために、全ての接続をなすケーブルの太さを小さくすることはできない。太い多極ケーブルを使用することは、ケーブルをサーマルカメラに接続するための、同じように嵩張る電気コネクタを使用することを伴う。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、上述の欠点がないと同時に生産および/または実施が容易で経済的なサーマルカメラ、および工業生産プロセスを制御するための制御システムおよび方法を提供することである。
【0008】
本発明は、添付の特許請求の範囲にクレームされた内容によるサーマルカメラアセンブリ(またはサーマルカメラ)、および前記サーマルカメラアセンブリを備える制御システムを提供する。また、本発明は、添付の特許請求の範囲にクレームされた内容による、サーマルカメラアセンブリを備える工業生産環境において工業生産プロセスを制御するための方法を提供する。特許請求の範囲は、本発明の実施形態を記載し、本明細書の不可欠な一部を形成している。
【0009】
本発明を、実施形態の非限定的な例を示す添付図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明によるサーマルカメラの側面図である。
図2図2は、図1のサーマルカメラの正面図である。
図3図3は、図1のサーマルカメラの背面図である。
図4図4は、保護ケーシングを一部を除いた図1のサーマルカメラの上面図である。
図5図5は、保護ケーシングの一部を除いた図1のサーマルカメラの側面図である。
図6図6は、図5の細部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
添付図面において、参照符号1は、サーマルカメラアセンブリまたはサーマルカメラ1全体を指す。
【0012】
サーマルカメラ1は、例えば、平行六面体であり得る金属製の保護ケーシング2を備えている。保護ケーシング2は、6つの壁:すなわち、互いに平行であるとともに対向する上壁および下壁と、互いに平行であるとともに対向する2つの側壁と、互いに平行であるとともに対向する前壁および後壁を有している。上壁、下壁、および2つの側壁は、2つの対向する開放端部を有する管状体を形成する。2つの対向する開放端部に、前壁および後壁が装着されてそれぞれのネジにより係止されている。保護ケーシング2の平行六面体形状により、内部の空きスペースを最小とし、ひいては保護ケーシング2の外形寸法を最小とすることで、保護ケーシング2内部の部品の配置を最適化することができる。
【0013】
平行六面体形状は全体寸法の点で特に有利であるが、保護ケーシング2は、異なる形状、例えば円筒形状を有することもできる。
【0014】
サーマルカメラ1は、保護ケーシング2の内部に配置された、異なる種類の複数の内部部品を備えている。これらについては以下で詳述する。サーマルカメラ1は、サーマル画像検出器3(図4および図5に部分的に見える)を備えている。サーマル画像検出器3は、保護ケーシング2内部に収容されており、レンズ4を設けられている。レンズ4を介して、サーモグラフ画像が取得される。サーマル画像検出器3は、サーマル画像検出器3が向く表面の温度マップを示す画像および/またはサーモグラフ記録を提供する、特に、このような画像および/または記録を生成するためのデータを提供する。一般に、サーマル画像検出器3のスペクトル領域はSW(短波赤外線、高温の測定に適している)であるが、当然ながらサーマル画像検出器3のスペクトル領域は異なっていてもよい。想定可能な実施形態によれば、サーマル画像検出器3は、フラット・マトリクス・マイクロボロメータタイプの高感度素子を備え得る。
【0015】
サーマル画像検出器3は、それ自体既知の装置、例えば、市販のサーモグラフカメラであり得る。
【0016】
図2に示すように、保護ケーシング2は、透明スクリーン6(通常ゲルマニウムガラス製)により閉鎖される検出ウィンドウ5を有している。検出ウィンドウ5は、典型的にサーマル画像検出器3のレンズ4と一致するように配置される、または、いずれの場合でも、サーマル画像検出器3が保護ケーシング2の外部を「見る」ことができるように配置される。好適な実施形態によれば、シャッタ7が保護ケーシング2の外部にヒンジ連結されている。シャッタ7は、シャッタ7が検出ウィンドウ5を覆わない開放位置(添付図面に図示)と、シャッタ7が検出ウィンドウ5を覆う閉鎖位置(図示せず)との間で回転する。好適な実施形態によれば、電気モータ8(図4および図5に見える)が、保護ケーシング2内部に収容されるとともに、シャッタ7に機械的に接続されて(必要であれば、回転を減少させる機械的伝達部が両者の間に配置され得る)、シャッタ7を開放位置と閉鎖位置との間で移動させる。電気モータ8は、サーマルカメラ1の保護ケーシング2に配置されたアクチュエータのうちの1つを表す。
【0017】
サーマルカメラ1は、サーマルカメラアセンブリ1の動作を管理する制御電子機器、特に制御ユニット9(図4図5図6に図示)を備えている。制御ユニット9は、保護ケーシング2に組み込まれているとともに、サーモグラフ画像および/または記録を受信するとともにそれらをサーマルカメラ1の外部に伝送するように、サーマル画像検出器3に接続されている。図示の好適な実施形態によれば、制御ユニット9は、保護ケーシング2内部に配置されている。とりわけ、制御ユニット9は、サーモグラフ画像または記録を取得するのに厳密に必要な時間だけシャッタ7を開放するように、電気モータ8を駆動する。図1に示すように、制御ユニット9は、外部コントローラ、またはリモートコントローラ10(すなわち、サーマルカメラ1とは別個であり独立している)と通信する(情報をこれに送信したりこれから受信する)。制御ユニット9は、リモートコントローラ10に、電力供給および情報のデジタル伝送を目的として、単一の電気ケーブル11により接続されている。電気ケーブル11は、電気コネクタ12に接続されている。電気コネクタ12は、保護ケーシング2内部の電気接続をもたらすように、保護ケーシング2の後壁を横断して装着されている。
【0018】
したがって、サーマルカメラ1は、制御ユニット9を介して実施されるデータのデジタル伝送により、外部と通信するように構成されている。また、制御ユニット9は、電気ケーブル11を通じて伝達された電力供給を受け、これをサーマルカメラ1の内部部品に分配するように構成されている。そして、制御ユニット9は、サーマル画像検出器3の電力供給を制御する。
【0019】
図4図5および図6に図示のものによれば、制御ユニット9は、例えば、保護ケーシング2の下壁に装着された印刷回路基板13を備えている。
【0020】
図示の好適な実施形態によれば、印刷回路基板13と保護ケーシング2の下壁との間に、減衰要素14(振動が保護ケーシング2から印刷回路基板13に伝わらないように減衰させる振動ダンパ)が設けられている。
【0021】
サーマルカメラ1は、温度センサ15(図4に概略的に図示)を備えている。温度センサ15は、制御ユニット9に接続され、保護ケーシング2内部の温度値を測定する。好適な実施形態によれば、温度センサ15は、制御ユニット9に組み込まれている。すなわち、温度センサ15は、制御ユニット9の印刷回路基板13に装着されている。以下で詳述するように、好適な実施形態において、制御ユニット9は、ケーシング2内部の温度を、温度センサ15を用いてモニタリングし、温度値が所定の閾値を超えないように、必要に応じて冷却システム21に作用することで温度を調節する。すなわち、制御ユニット9は、単数または複数のアクチュエータへのコマンドを介して冷却システム(21)に作用するように構成されている。より具体的には、制御ユニット9は、温度センサ15から受信した信号に応じて、冷却システム21に作用する。さらに、好適な実施形態によれば、制御ユニット9は、非常時には、すなわち保護ケーシング2内部の温度が所定の閾値を超えた場合に、サーマル画像検出器3をオフにする(すなわち、サーマル画像検出器3への電力供給を断つ)ように構成されている。したがって、保護ケーシング2内部の温度を適切に補正することができず温度が高すぎる値に達した場合、サーマル画像検出器3は、サーマル画像検出器3内部でのジュール効果によるさらなる熱の発生を回避することにより、(可能な限り)「保護」されている。さらに、好適な実施形態によれば、制御ユニット9は、保護ケーシング2内部の温度が所定の閾値を超えた場合、アラーム信号を外部コントローラ10に送信するように構成されている。換言すれば、制御ユニット9は、外部コントローラ10に異常事態を通知し、必要に応じてオペレータによる処置を求める(例えば、異常事態が深刻過ぎる、または長く続き過ぎる場合)。
【0022】
また、サーマルカメラ1は、図4に概略的に図示される湿度センサ16を備えている。湿度センサ16は、制御ユニット9に接続され、保護ケーシング2内部の湿度値を測定する。好適な実施形態によれば、湿度センサ16は、制御ユニット9に組み込まれている。すなわち、湿度センサ16は、制御ユニット9の印刷回路基板13に装着されている。保護ケーシング2内部における過度の湿度は、結露を生じ得るため有害である。結露により、サーマル画像検出器3のレンズ4が曇り得る、電子部品が損なわれ得る、および金属部品の経時酸化を招き得る。好適な実施形態によれば、制御ユニット9は、保護ケーシング2内部の湿度が所定の閾値を超えた場合、アラーム信号を外部コントローラ10に送信するように構成されている。換言すれば、制御ユニット9は、外部コントローラ10に異常事態を通知し、必要に応じてオペレータによる処置を求める(例えば、異常事態が深刻過ぎる、または長く続き過ぎる場合)。
【0023】
図5に示すように、サーマルカメラ1は、保護ケーシング2内部に配置されたパイプ18を介して圧縮空気の流れを受ける圧縮空気分配器17を備えているとともに、圧縮空気分配器17を空気圧コネクタ19(図1および図3に図示)に接続している。空気圧コネクタ19は、保護ケーシング2の後壁を横切るように装着されるとともに、空気圧配線により圧縮空気源に接続されている。
【0024】
好適な実施形態によれば、圧力センサ20が設けられている。圧力センサ20は、好適には、圧縮空気分配器17に配置され、圧縮空気分配器17に進入する(すなわち保護ケーシング2に進入する)圧縮空気の圧力値を測定する。好適には、制御ユニット9は、圧力センサ20に接続されて、圧縮空気分配器17に進入する圧縮空気の圧力値を読み取り、圧力値が所定の最大閾値を超えた場合および/または所定の最低閾値より低い場合(すなわち、圧力が高過ぎる、または低過ぎる場合)、アラーム信号を外部コントローラ10に送信する。換言すれば、制御ユニット9は、外部コントローラ10に異常事態を通知し、必要に応じてオペレータによる処置を求める(例えば、異常事態が深刻過ぎる、または長く続き過ぎる場合)。
【0025】
図5に示す好適な実施形態によれば、上述のように、圧縮空気冷却システム21が設けられている。圧縮空気冷却システム21は、全体的に保護ケーシング2内部に配置され、保護ケーシング2に圧縮空気の流れを導入して温度を低下させる。制御ユニット9は、冷却システム21に向かう圧縮空気の流れを制御する。より具体的には、圧縮空気分配器17は、電磁弁22を備えている。電磁弁22は、制御ユニット9により制御されて、冷却システム21への圧縮空気の供給を調節する。すなわち、電磁弁22を開放および閉鎖することにより、制御ユニット9は、保護ケーシング2の内部容積を冷却するという冷却システム21が実施する作用を向上または低下させる。好適な実施形態において、制御ユニット9は、保護ケーシング2内部の温度の値を温度センサ15により測定し、これにより、保護ケーシング2内部の温度値に応じて、(アクチュエータを構成する)電磁弁22を制御する。換言すれば、制御ユニット9は、温度センサ15に接続されて物理量(温度)の値を読み取るとともに、(電磁弁22で構成される)アクチュエータに接続されて物理量(温度)の値に応じてアクチェータを制御する。
【0026】
一実施形態によれば、制御ユニット9は、温度センサ15により測定される温度が所定の閾値よりも高い場合に電磁弁22を開放し(すなわち、冷却システム21を「オン」にする)、温度センサ15により測定される温度が所定の閾値よりも低い場合に電磁弁22を閉鎖する(すなわち、冷却システム21を「オフ」にする)、(所定のヒステリシスを有する)単純なスイッチとして機能する。より高度な実施形態によれば、制御ユニット9は、温度センサ15により測定された温度と所定の閾値との差に応じて、電磁弁22の開放/閉鎖を部分的に実施する。
【0027】
図4に示すように、圧縮空気冷却システム21は、渦管23(すなわちRanque-Flilschチューブ)を備えている。渦管23は、(圧縮空気分配器17の電磁弁22にパイプ25を介して接続された)入口24で圧縮空気の流れを受容し、圧縮空気流を温かい部分と冷たい部分とに分離する。暖かい部分は、保護ケーシング2の外部に面する第1圧縮空気出口26に向かう。冷たい部分は、保護ケーシング2の内部に面する第2圧縮空気出口27に向かう(特に最も冷却を必要とする部品であるサーマル画像検出器3に向かう)。図4に示す好適な実施形態によれば、渦管23の出口26は、保護ケーシング2の後壁を通過して外部に通じている。換言すれば、渦管23により、入口24から流入する高圧流体は、非常に異なる温度を有する2つの別個のジェットに分離され得る。すなわち、最も熱いジェットは、(保護ケーシング2の後壁を介して外部に通じる)出口26を通過して保護ケーシング2の外部に向かう。一方、より冷たいジェットは、(サーマル画像検出器3に面する)出口27を通過して保護ケーシング2内部に向かう。
【0028】
図5に部分的に示す好適な実施形態は、圧縮空気クリーニング回路を備えている。圧縮空気クリーニング回路は、圧縮空気を圧縮空気分配器17から受容し、保護ケーシング2の外側で透明スクリーン6に圧縮空気のジェットを生成して、透明スクリーン6を清潔に保つ。圧縮空気分配器17は、(アクチュエータを構成する)電磁弁28を備えている。電磁弁28は、圧縮空気をパイプ18から受容し、これを圧縮空気クリーニング回路の終端部であるさらなるパイプ29に向かわせる。電磁弁28は、制御ユニット9により制御される。制御ユニット9は、シャッタ7が開放される度に電磁弁28を開放する(すなわち、圧縮空気クリーニング回路を作動させる)。想定可能な実施形態によれば、圧縮空気クリーニング回路は、検出ウィンドウ5の全周に配置された、開口または空気流路ダクトを有する環状ダクトを備えている。開口または空気流路ダクトは、径方向に延びて、検出ウィンドウ5の中央に向かうできるだけ多くの圧縮空気ジェットを生成する。
【0029】
図5および図6に示す好適な実施形態によれば、サーマル画像検出器3は、保護ケーシング2の下壁に装着され、それらの間に減衰要素30(すなわち、振動が保護ケーシング2からサーマル画像検出器3に伝わらないように減衰させる振動ダンパ)が配置されている。サーマル画像検出器3を支持する減衰要素30は、制御ユニット9の印刷回路基板13を支持するダンパ要素14とは(サイズおよび/または組成において)異なっている。これは、サーマル画像検出器3が印刷回路基板13よりもはるかに大きな質量を有するためであり、また、サーマル画像検出器3が印刷回路基板13とは異なる振動に対する感度を有するためである。好適な実施形態によれば、サーマル画像検出器3は、保護ケーシング2の下壁に固定された金属製のクレードル31等の支持体に配置(装着)されており、それらの間に減衰要素が配置されている。
【0030】
サーマルカメラ1は、少なくとも1つの慣性センサ32、好適には3軸加速度センサ、すなわち加速度計(図4に概略的に示す)を備えている。この慣性センサ32は、制御ユニット9に接続され、保護ケーシング2が受ける加速度の値を測定する。好適な実施形態によれば、加速度計32は、制御ユニット9に組み込まれている。より具体的には、加速度計32は、制御ユニット9の印刷回路基板13に装着されている。好適な実施形態によれば、制御ユニット9は、保護ケーシング2が受ける瞬間的な加速度のうち、その全部または1つが所定の閾値を超えた場合、アラーム信号を外部コントローラ10に送信するように構成されている。換言すれば、制御ユニット9は、外部コントローラ10に異常事態を通知し、必要に応じてオペレータによる処置を求める(例えば、異常事態が深刻過ぎる、または長く続き過ぎる場合)。特に、検出される振動は、例えば、保護ケーシング2がその支持体に最適でない(すなわち「緩すぎる」)態様で締結されていることにより、保護ケーシング2が被る衝撃により、または、工場での通常運転中にサーマルカメラが固定された支持体が移動することにより、引き起こされ得る。
【0031】
想定可能な実施形態によれば、制御ユニット9は、慣性センサ32の信号を既知の態様で処理して、保護ケーシング2およびサーマルカメラ1の全体的空間配置に関する情報を得るように構成されている。このような情報は、例えば、衝撃後に保護ケーシング2の正しい空間配置を回復するため、または、例えば保守介入を実施するために保護ケーシング2が取り外された後に再びこれを装着する際に利用され得る。保護ケーシング2の空間配置に関する情報は、サーマルカメラ1がその初期位置に対して不所望な移動をしたことを示す信号であるアラーム信号を外部コントローラ10に送信するためにも使用され得る。
【0032】
加速度計に代えて、またはこれに加えて、保護ケーシング2の空間配置を検出するために、ジャイロスコープ等の異なるタイプの慣性センサを設けることができる。
【0033】
想定可能な実施形態によれば、サーマルカメラ1は、シャッタ7の位置を直接的または間接的に検出する位置センサ33(図4に概略的に示す)を備えている。例えば、位置センサ33は、図4に示すように、(シャッタ7に機械的に接続された電気モータ8のシャフトの位置を検出するように)電気モータ8に連結され得る、または、(シャッタ7の位置を直接的に検出するように)保護ケーシング2の前壁に装着され得る。制御ユニット9は、位置センサ33に接続されて、シャッタ7の位置を読み取るとともに、電気モータ8の始動時にシャッタ7の位置が想定時間枠以内に変化しない場合、アラーム信号を外部コントローラ10に送信する。例えば、位置センサ33は、シャッタ7の2つの異なる位置(閉または開)を検出する一対のセンサから構成され得る。
【0034】
要約すると、サーマルカメラは、保護ケーシング2に配置されて物理量または状態を表す信号を提供する単数または複数のセンサを備えている。これらのセンサには、温度センサ15、湿度センサ16、圧力センサ20、位置センサ33、および加速度計32が含まれる。
【0035】
さらに、サーマルカメラ1は、同じく保護ケーシング2に配置された単数または複数のアクチュエータ、例えば、電磁弁22および28、および電気モータ8を備えている。
【0036】
制御ユニット9は、サーマル画像検出器3の他に、センサに接続されて、それらが提供する信号を受信するとともに、アクチュエータに接続されてセンサから受信した信号に応じてこのアクチュエータを制御する。
【0037】
上述のように、制御ユニット9は、サーマルカメラの内部部品の電力供給を制御する、したがって、サーマル画像検出器3、センサ、およびアクチュエータの電力供給を制御する。好適な実施形態によれば、保護ケーシング2の少なくとも一部に、断熱部が設けられている。保護ケーシング2の壁(すべての壁、または少なくとも一部の壁)の内面に、断熱部が設けられている。例えば、保護ケーシング2の金属製の壁は、内部に、空のままのチャンバ、または部分的または完全に断熱材で充填されたチャンバを有し得る。これにより、保護ケーシング2およびサーマルカメラ1の熱効率が全体的に向上する。
【0038】
上記から、外部コントローラ10が、制御ユニット9のみと通信することが明らかである。制御ユニット9は、全体的に保護ケーシング2内部に配置されており、また、好適な実施形態においていずれの場合でも、保護ケーシング2に組み込まれている。制御ユニット9は、外部と(すなわち、外部コントローラ10と)通信するサーマルカメラ1の唯一の部品である。したがって、サーマル画像検出器3は、デジタルデータのソート、およびデジタルデータのサーマル画像検出器3からおよびこれへの伝送を担当する制御ユニット9のみに排他的に接続されている。換言すれば、外部コントローラ10に接続された制御ユニット9(すなわち、サーマルカメラ1の制御電子機器)は、デジタルデータをソートする、およびデジタルデータをサーマル画像検出器3からおよびこれへ伝送する責任を負っている。
【0039】
添付図面に示す実施形態において、制御ユニット9は、全体的に保護ケーシング2内部に配置され、保護ケーシング2の下壁に装着されている。代替実施形態(図示せず)によれば、制御ユニット9は、サーマル画像検出器3内部に配置され得る。より具体的には、制御ユニット9は、サーマル画像検出器3の電子機器に組み込まれ得る(本実施形態においても、制御ユニット9は、全体的に保護ケーシング2内部に配置されている)。
【0040】
「インテリジェント」と定義され得る制御ユニット9は、サーマルカメラ1の部品(サーマル画像検出器3、センサ、アクチュエータ等)から情報および/またはデータを受信し、このような情報および/またはデータを自律的に処理し、サーマルカメラ1の部品を直接的に制御しつつ、センサから受信した信号に応じて外部コントローラ10にレポートおよび/またはアラーム信号のみを送信するように構成され得る。代替的に、制御ユニット9は、サーマルカメラの内部部品から情報および/またはデータを収集し、それらを外部コントローラ10に送信し、部品をどのように制御するかについての指示を外部コントローラ10から受信するのみであってもよい。また、中間的な解決策も可能である。ここでは、制御ユニット9がある信号に応答して内部部品を直接的に管理および制御する一方で、他の信号に応答して内部部品をどのように制御するかについて外部コントローラ10からの指示を求める。
【0041】
好適な実施形態によれば、制御ユニット9は、サーマル画像検出器3が収集したサーモグラフ画像および/または記録を自律的に処理し、これらを処理した後に、外部コントローラにサーモグラフ画像および/または記録を送信することができる。したがって、サーモグラフ画像および/または記録の処理を外部プロセッサに委ねなければならない既知のサーマルカメラと異なり、本発明のサーマルカメラ1は、自律的な態様で処理操作を実施することができ、外部プロセッサを必要とせずに工業工場で使用できるとともに、工業生産プロセスに組み込むことができる。また、本発明は、サーマルカメラアセンブリにより、工業生産環境において工業生産プロセスを制御するための制御方法であって、前記サーマルカメラアセンブリは、透明スクリーンにより閉鎖されるウィンドウを含む保護ケーシングを備え、前記保護ケーシングは、サーマル画像検出器と;単数または複数のセンサと;単数または複数のアクチュエータと;前記サーマル画像検出器と前記センサと前記アクチュエータとに直接的に接続された組込型制御ユニットとを収容する制御方法に関する。本発明による方法は、前記サーマルカメラアセンブリを、前記工業生産環境内において前記サーマルカメラアセンブリが向く必要のあるターゲットに対して位置決めするステップと、前記サーマル画像検出器により、前記ターゲットに対応する物体または材料の一部であって、前記工業生産プロセス中に使用または処理される一部についての少なくとも1つのサーモグラフ画像または記録を取得するステップと、前記サーモグラフ画像および/または記録を前記組込型制御ユニットに送信するステップと、前記サーモグラフ画像または記録を前記組込型制御ユニットにおいて処理して、少なくとも1つの処理されたサーモグラフ画像および/または記録を得るステップと、前記処理されたサーモグラフ画像および/または記録を、前記制御ユニットを介してのみ実施されるデータのデジタル伝送により外部に伝送するステップと、前記処理されたサーモグラフ画像および/または記録を使用して、前記工業生産プロセスの少なくとも一部を制御するステップと、を備えている。
【0042】
本発明による制御方法は、例えば、鋳造工場における金型等の物体の温度のチェック、熱間成形プロセスおよび圧延プロセスにおいて成形プロセスを受ける材料、より具体的には金属の温度変化のチェック、慣性溶接プロセスにおける溶接材料の温度のチェック、工業炉工場における溶融金属の温度のチェック、さらにはその他の生産プロセスに適用され得る。
【0043】
本明細書に記載の実施形態は、本発明の保護範囲から逸脱することなく互いに組み合わせることが可能である。
【0044】
上述のサーマルカメラ1は、複数の利点を提供する。
【0045】
まず第一に、電気ケーブル11(電力供給およびデータのデジタル伝送のための単一のケーブル)は、比較的小さな直径、すなわち比較的小さな厚さを有する。この結果、曲率半径の小さい屈曲部に屈曲され得るため、複数の近接した障害物がある場合の稼働が非常に簡単になる。さらに、サーマルカメラを移動させるような工場でのサーマルカメラ1の使用が非常に容易になる。換言すれば、外部コントローラ10とサーマルカメラ1(すなわち、サーマルカメラ1の制御ユニット9)との間の単一のデジタル接続部により、電気ケーブル11の直径を顕著に小さくすることができるため、曲率半径を小さくし、サーマルカメラ1の設置や移動操作が単純化される。また、電気ケーブル11のサイズが小さいことにより、非常に小さい寸法の電気コネクタ12を使用することができる。さらに、電気ケーブル11は、解除可能なコネクタにより互いに接続されたセクションに分割され得る。この場合、電気ケーブル11のうち最も過酷な環境条件に曝される部分だけは特別なシースにより保護する必要があるが、電気ケーブル11のうち過酷な環境条件にそれほど曝されない部分は保護シースを設けなくてもよい。
【0046】
本発明によるサーマルカメラ1により得られる結果および利点が実現可能であるのは、制御ユニット9が保護ケーシング2に組み込まれている、例えば完全に保護ケーシング2内部に配置されているとともに、サーマルカメラ1の全ての部品と外部コントローラ10との通信を管理および制御することができるためである。このように構成されていれば、制御ユニット9は、サーマルカメラ1の種々の部品を個別に、すなわち外部コントローラ10により提供される外部コマンドを必要とせずに制御することもできる。
【0047】
上述のサーマルカメラ1において、種々のセンサにより測定された値は、アラーム信号を生成するように局所的に利用され得る、または、診断およびデータ記録機能のために外部コントローラ10に伝送され得る。
【0048】
上述のサーマルカメラ1は、入口圧縮空気の圧力を圧力センサ20により測定することで、空気圧動作が常に適切かつ効果的であることを保証する。
【0049】
上述のサーマルカメラ1は、湿度を湿度センサ16により測定することで、空気圧システムを理由として、または保護ケーシング2における漏れを理由として湿気が保護ケーシング2内部に入らないことを確認する。
【0050】
上述のサーマルカメラ1は、サーマル画像器が受ける加速度、より具体的には動的加速度を、少なくとも1つの慣性センサ、例えば3軸加速度センサにより測定することで、サーマルカメラ1が通常の動作サイクル中に受ける応力をチェックする。
【0051】
上述のサーマルカメラ1は、サーマルカメラが受ける加速度、より具体的には静的加速度を、少なくとも1つの慣性センサ、例えば3軸加速度センサおよび/またはジャイロセンサにより測定することで、サーマルカメラ1の空間配置をモニタリングするとともに、その正しい締結および支持体におけるクランプ力のロスまたはオペレータの動作中の機械に対する衝突または不適切な操作を原因とする位置変化を確認する。慣性センサは、例えばMEMS技術により構成され得る。
【0052】
上述のサーマルカメラ1は、温度を温度センサ15により測定する。保護ケーシング2内部の熱的条件はこのようにして調節されて、冷却システム21が効果的に調整され、サーマル画像検出器(サーマル画像検出器)3が過度の温度を受けないことが保証される。電気モータにより作動するシャッタの存在により、サーマルカメラ1は、環境条件が良好であれば空気圧接続がなくても作動することができる。また、圧縮空気の消費量も低減され得る。環境条件が良好であれば、サーマルカメラ1は、実際には冷却システム21を有さなくてもよい。圧縮空気の利用は一般に高いエネルギー消費を伴うため、空気圧接続がなければ、経済的利点のみならず生態学的利点も提供され得る。
【0053】
保護ケーシング2内部に全体的に配置された冷却システム21、および保護ケーシング2内に断熱部が存在することにより、冷却に使用される圧縮空気の消費量が低減され得る。振動ダンパ(減衰要素14および30)を配置することにより、外部応力に対する抵抗が向上する。上述の減衰要素14および30の他に、サーマルカメラ1の他の「感度の高い」部品、例えば電磁弁や電気モータを保護するために、追加および/または別個の振動ダンパを設けることができる。また、本発明は、上述のサーマルカメラ1と、電源および処理手段と、を備える工業生産環境において工業生産プロセスをモニタリングおよび制御するための制御システムに関する。このような電源および処理手段は、サーマルカメラ1に組み込まれた制御ユニット9と、外部コントローラ10と、を備える。
【0054】
上述のように、好適な実施形態によれば、制御ユニット9、より一般的にはサーマルカメラ1は、電力供給およびデータのデジタル伝送のために、単一の電気ケーブル11により外部コントローラ10に接続される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6