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特許7606515難燃性ポリカーボネート樹脂組成物ペレットの製造方法
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  • 特許-難燃性ポリカーボネート樹脂組成物ペレットの製造方法 図1
  • 特許-難燃性ポリカーボネート樹脂組成物ペレットの製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】難燃性ポリカーボネート樹脂組成物ペレットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29B 9/06 20060101AFI20241218BHJP
   B29B 7/46 20060101ALI20241218BHJP
   B29B 9/12 20060101ALI20241218BHJP
   B29C 48/40 20190101ALI20241218BHJP
   B29C 48/57 20190101ALI20241218BHJP
   B29C 48/625 20190101ALI20241218BHJP
   B29C 48/76 20190101ALI20241218BHJP
   C08L 69/00 20060101ALI20241218BHJP
   C08K 5/521 20060101ALI20241218BHJP
   C08L 51/04 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
B29B9/06
B29B7/46
B29B9/12
B29C48/40
B29C48/57
B29C48/625
B29C48/76
C08L69/00
C08K5/521
C08L51/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022533678
(86)(22)【出願日】2021-03-08
(86)【国際出願番号】 JP2021008902
(87)【国際公開番号】W WO2022004058
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2023-10-18
(31)【優先権主張番号】P 2020112603
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】594137579
【氏名又は名称】三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】吉野 崇史
(72)【発明者】
【氏名】田尻 敏之
(72)【発明者】
【氏名】田島 寛之
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-210397(JP,A)
【文献】特開2019-181825(JP,A)
【文献】特開2016-107611(JP,A)
【文献】中国実用新案第201677485(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2014/0200302(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 9/00 - 9/16
B29B 7/00 - 7/94
B29C 48/00 -48/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂をペレット中に40質量%超含む樹脂ペレット(A)30~95質量%、室温で液状のリン酸エステル難燃剤(B)5質量%以上25質量%未満、ポリカーボネート樹脂フレーク(C)0~50質量%、ABS樹脂(D)0~30質量%、及び(B)以外の他の添加剤(E)0~15質量%[ただし、(A)~(E)の合計は100質量%]からなるポリカーボネート樹脂組成物ペレットを二軸押出機で製造する方法であって、
前記(A)、(C)、(D)及び(E)を二軸押出機に入れ、
第1混練部で混練する第1工程、第1混練部の下流部に前記(B)を添加し第2混練部で混練する第2工程、第2混練部の下流部でベントを減圧にして脱揮し押出する第3工程、を含み、
前記第1混練部は、Rニーディングディスク、Nニーディングディスク、Lニーディングディスク、Lスクリュー、シールリング、ミキシングスクリュー、またはロータスクリューのうちの2種以上を組み合わせた、長さが3.5D~5.5D(Dはスクリュー径)の構成からなり、
前記第2混練部は、Rニーディングディスク、Nニーディングディスク、Lニーディングディスク、Lスクリュー、シールリング、ミキシングスクリューまたはロータスクリューのうちの2種以上を組み合わせた、長さが2.0D~4.0Dの構成よりなる、
ことを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物ペレットの製造方法。
【請求項2】
樹脂ペレット(A)中、ポリカーボネート樹脂ペレットが、50質量%超である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
樹脂ペレット(A)の量が、(A)~(E)の合計は100質量%中、30~80質量%である請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
樹脂ペレット(A)が樹脂リサイクルペレットを含む請求項1~3のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物ペレットの製造方法。
【請求項5】
樹脂成分として、ポリカーボネート樹脂を50~100質量%、ABS樹脂及び/又はポリエステル樹脂を50~0質量%(両者の合計100質量%基準)を含有する請求項1~4のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物ペレットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性ポリカーボネート樹脂組成物ペレットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は、耐熱性、および機械的物性に優れた樹脂であることから、例えば電気機器、電子機器、自動車等の車両、プリンターや複写機等のOA機器、住宅、建築、その他の工業分野における部品製造用材料等に幅広く利用されている。
これらの製品は、高温による火災防止を目的とした安全上の観点から難燃性が要求され、特に、難燃化されたポリカーボネート樹脂組成物は、プリンターや複写機等のOA機器、パソコン、各種携帯端末、バッテリー等の筐体等として好適に使用されている。
【0003】
一方、近年、環境保護意識の高まりから樹脂を再生利用することが社会的に強く要請されており、また、各種法制度により規制も強化されつつある。そして、例えばOA機器や電子機器等の外装、筐体等には特にリサイクル樹脂の使用要求があり、リサイクル樹脂を所定量配合したポリカーボネート樹脂組成物が要求されるケースが多くなってきている。
【0004】
使用済製品から熱可塑性プラスチックを再生するには、例えば特許文献1にあるように、機器部品から回収された熱可塑性プラスチック部材を粉砕し、洗浄液で洗浄し、粉砕混合物から熱可塑性プラスチック粉砕物を分離することが行われる。
【0005】
ポリカーボネート樹脂のリサイクル材(再生材)の原料としては、例えばCDやDVD等の光学ディスク、導光板、自動車窓ガラスや自動車ヘッドランプレンズ、風防などの車両透明部材、水ボトルなどの容器、メガネレンズ、防音壁やガラス窓、波板などの建築部材などが挙げられ、これらを粉砕、洗浄、分離回収したものをペレット化されたペレットが利用されている。また、成形時のスプルーやランナー等の副生物もリペレットされて用いられる。
【0006】
このような再生材を特にOA機器等に採用するためには高い難燃性が必要である。
ポリカーボネート樹脂に難燃性を付与する手段としては、従来、有機臭素化合物等のハロゲン系難燃剤をポリカーボネート樹脂に配合する手法が広く知られているが、近年はハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤をポリカーボネート樹脂に配合することが提案され、現在ではリン系難燃剤が主体になりつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2000-198116
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
リン系難燃剤、例えばリン酸エステル系難燃剤には、室温で固体状のものと液状のものがあり、液状のものは押出機への液体添加が必要となる。しかしながら、押出機を使って、液状のリン系難燃剤と、上記した再生材のようなペレット状のポリカーボネート樹脂を溶融混練する場合、液状であるリン系難燃剤と混ざりにくく、ポリカーボネート樹脂の未溶融物が発生したり、ベント開口部にベントアップが発生したり、吐出量が上がらなかったり、ストランドの引き取りが出来なかったりしやすく、また、得られたポリカーボネート樹脂組成物ペレットの難燃性が不十分となりやすく、色相の低下が起きやすい。
本発明の目的(課題)は、液状リン系難燃剤を用いて難燃性ポリカーボネート樹脂組成物を得ることにより、上記問題点を解決するポリカーボネート樹脂組成物の製造方法にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を達成すべく、鋭意検討を重ねた結果、ポリカーボネート樹脂を含む樹脂ペレットに、室温で液状のリン酸エステル難燃剤を添加して二軸押出機で製造する際、最初の混練部の下流部で液状のリン酸エステルを添加し、次いで設けた次の混練部で混練し、その際、それぞれの混練部のスクリュー構成をそれぞれ特定のものにすることにより、未溶融物の発生やベントアップが起こらず、高い吐出量で安定的に生産性よく、均一で優れた難燃性と色相にも優れたポリカーボネート樹脂組成物ペレットが製造できることを見出し、本発明を完成した。
本発明は以下のポリカーボネート樹脂組成物ペレットの製造方法に関する。
【0010】
1.ポリカーボネート樹脂をペレット中に40質量%超含む樹脂ペレット(A)30~95質量%、室温で液状のリン酸エステル難燃剤(B)5質量%以上40質量%未満、ポリカーボネート樹脂フレーク(C)0~50質量%、ABS樹脂(D)0~30質量%、及び(B)以外の他の添加剤(E)0~15質量%[ただし、(A)~(E)の合計は100質量%]からなるポリカーボネート樹脂組成物ペレットを二軸押出機で製造する方法であって、
前記(A)、(C)、(D)及び(E)を二軸押出機に入れ、
第1混練部で混練する第1工程、第1混練部の下流部に前記(B)を添加し第2混練部で混練する第2工程、第2混練部の下流部でベントを減圧にして脱揮し押出する第3工程、を含み、
前記第1混練部は、Rニーディングディスク、Nニーディングディスク、Lニーディングディスク、Lスクリュー、シールリング、ミキシングスクリュー、またはロータスクリューのうちの2種以上を組み合わせた、長さが2.5D~6.0D(Dはスクリュー径)の構成からなり、
前記第2混練部は、Rニーディングディスク、Nニーディングディスク、Lニーディングディスク、Lスクリュー、シールリング、ミキシングスクリューまたはロータスクリューのうち2種以上を組み合わせた、長さが1.3D~4.0Dの構成よりなる、
ことを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物ペレットの製造方法。
2.樹脂ペレット(A)中、ポリカーボネート樹脂ペレットが、50質量%超である上記1に記載の製造方法。
3.樹脂ペレット(A)の量が、(A)~(E)の合計は100質量%中、30~80質量%である上記1または2に記載の製造方法。
4.室温で液状のリン酸エステル難燃剤(B)の量が、(A)~(E)の合計は100質量%中、5質量%以上25質量%未満である上記1~3のいずれかに記載の製造方法。
5.樹脂ペレット(A)が樹脂リサイクルペレットを含む上記1~4のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物ペレットの製造方法。
6.樹脂成分として、ポリカーボネート樹脂を50~100質量%、ABS樹脂及び/又はポリエステル樹脂を50~0質量%(両者の合計100質量%基準)を含有する上記1~5のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物ペレットの製造方法。
7.前記第1混練部の長さが3.5~5.5Dの範囲にあり、前記第2混練部の長さが2.0D~4.0Dの範囲にある上記1~6のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物ペレットの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法によれば、未溶融物やベントアップの発生がなく、高い吐出量で安定的に生産性よく、均一で優れた難燃性と色相にも優れたポリカーボネート樹脂組成物ペレットを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の方法で使用する押出機のスクリュー構成の一例を示す横断面図である。
図2】本発明の方法で使用する押出機のスクリュー構成の他の例を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について実施形態および例示物を示して詳細に説明するが、本発明は当該実施形態及び例示物等に限定して解釈されるものではない。
【0014】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物ペレットの製造方法で用いる原料は、(A)~(E)の合計100質量%基準で、ポリカーボネート樹脂をペレット中に40質量%超含む樹脂ペレット(A)30~95質量%、室温で液状のリン酸エステル難燃剤(B)5質量%以上40質量%未満、ポリカーボネート樹脂フレーク(C)0~50質量%、ABS樹脂(D)0~30質量%、及び(B)以外の他の添加剤(E)0~15質量%である。ただし、(A)~(E)の合計は100質量%である。
【0015】
[樹脂ペレット(A)]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物ペレットの製造方法は、ポリカーボネート樹脂をペレット中に40質量%超含む樹脂ペレット(A)を使用する。樹脂ペレット(A)としては、ポリカーボネート樹脂が、樹脂ペレット(A)として、40質量%超含まれていればよく、ポリカーボネート樹脂以外の他の樹脂、例えばABS樹脂、熱可塑性ポリエステル(ポリブチレンテレフタレート樹脂、あるいはポリエチレンテレフタレート樹脂等)等を含んでいる混合物やアロイも好ましく使用できる。樹脂ペレット(A)中、ポリカーボネート樹脂ペレットが、50質量%超であることが好ましい。
【0016】
樹脂ペレット(A)は、未使用のいわゆるバージンのペレットであってもよいし、リサイクル材(再生材)ペレット、あるいはリサイクル材ペレットを含むものであってもよい。リサイクル材ペレットの原料としては、例えばCDやDVD等の光学ディスク、導光板、自動車窓ガラスや自動車ヘッドランプレンズ、風防などの車両透明部材、水ボトルなどの容器、メガネレンズ、防音壁やガラス窓、波板などの建築部材などが好ましく挙げられる。また、成形時の不適合品、スプルーまたはランナーなどから得られた粉砕品、これらを粉砕、洗浄、分離回収したものをリペレットしたものであってもよい。以下、これらリサイクル材、再生材、リペレット等を併せて、リサイクル材あるいはリサイクルペレットともいう。
【0017】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物ペレットの製造方法は、特にリサイクル材のペレットを使用することが好ましい。リサイクル材のペレットの使用はLCA(ライフサイクルアセスメント)が低くなるので好ましい。
リサイクル材には、ポリカーボネート樹脂以外の他の樹脂、各種の添加剤を含んでいることが多いが、ポリカーボネート樹脂が、樹脂ペレット(A)として、40質量%超となっていればいずれも使用できる。ポリカーボネート樹脂のリサイクル材のペレットは、リサイクル材の製造者から購入して使用することも可能である。
【0018】
[ポリカーボネート樹脂]
ポリカーボネート樹脂としては、芳香族ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリカーボネート樹脂、芳香族-脂肪族ポリカーボネート樹脂が挙げられるが、好ましくは、芳香族ポリカーボネート樹脂であり、具体的には、芳香族ジヒドロキシ化合物をホスゲン又は炭酸のジエステルと反応させることによって得られる芳香族ポリカーボネート重合体又は共重合体が用いられる。
【0019】
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールA)、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールC)、テトラメチルビスフェノールA、α,α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-p-ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’-ジヒドロキシジフェニル等が挙げられる。
【0020】
ポリカーボネート樹脂の好ましい例としては、ジヒドロキシ化合物としてビスフェノールA又はビスフェノールAと他の芳香族ジヒドロキシ化合物とを併用したポリカーボネート樹脂、ビスフェノールC又はビスフェノールCと他の芳香族ジヒドロキシ化合物(特にビスフェノールA)とを併用したポリカーボネート樹脂が挙げられる。
【0021】
ポリカーボネート樹脂は、1種の繰り返し単位からなる単独重合体であってもよく、2種以上の繰り返し単位を有する共重合体であってもよい。このとき共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体等、種々の共重合形態を選択することができる。
芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、ホスゲン法(界面重合法)、溶融法(エステル交換法)等の従来法によることができる。
【0022】
ポリカーボネート樹脂の分子量は、制限はないが、粘度平均分子量(Mv)は、通常は10,000~100,000程度であり、好ましくは12,000~35,000程度である。粘度平均分子量を前記範囲の下限値以上とすることにより、ポリカーボネート樹脂組成物の機械的強度をより向上させることができ、機械的強度の要求の高い用途に用いる場合により好ましいものとなる。一方、粘度平均分子量を前記範囲の上限値以下とすることによりポリカーボネート樹脂組成物の流動性低下を抑制して改善でき、成形加工性を高めて薄肉成形も容易に行うこともできる。
なお、粘度平均分子量の異なる2種類以上のポリカーボネート樹脂を混合して用いてもよく、この場合には、粘度平均分子量が上記の好適な範囲外であるポリカーボネート樹脂を混合してもよい。
【0023】
なお、本発明において、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、ウベローデ粘度計を用いて、25℃にて、ポリカーボネート樹脂のメチレンクロライド溶液の粘度を測定し極限粘度([η])を求め、次のSchnellの粘度式から算出される値である。
[η]=1.23×10-4Mv0.83
【0024】
ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、ホスゲン法(界面重合法)及び溶融法(エステル交換法)のいずれの方法で製造したポリカーボネート樹脂も使用することができる。また、溶融法で製造したポリカーボネート樹脂に、末端のOH基量を調整する後処理を施したポリカーボネート樹脂も好ましい。
使用済みの製品としては、光学ディスク(CD、DVD)などの光記録媒体、導光板、自動車窓ガラスや自動車ヘッドランプレンズ、風防などの車両透明部材、水ボトルなどの容器、メガネレンズ、防音壁やガラス窓、波板などの建築部材などが好ましく挙げられる。また、再生ポリカーボネート樹脂としては、成形時の不適合品、スプルー、またはランナーなどから得られた粉砕品、またはそれらを溶融して得たペレット化したもの等も使用可能である。
【0025】
[リン酸エステル難燃剤(B)]
本発明に用いるリン酸エステル難燃剤は、室温で液状のリン酸エステル難燃剤である。
ここで「室温で液状」とは、23℃において液体であることをいう。
リン酸エステル難燃剤としては、ホスフェート系化合物、縮合リン酸エステル等が挙げられ、縮合リン酸エステルが好ましい。
【0026】
縮合リン酸エステルとしては、下記一般式(1)で表されるリン酸エステル化合物で、室温で液状のものが特に好ましい。
【化1】
(式中、R、R、RおよびRは、炭素数1~6のアルキル基またはアルキル基で置換されていてもよい炭素数6~20のアリール基を示し、p、q、rおよびsは、0または1であり、kは1から5の整数であり、Xはアリーレン基を示す。)
【0027】
上記一般式(1)で表されるリン酸エステル化合物は、kが異なる数を有する化合物の混合物であってもよく、かかるkが異なるリン酸エステルの混合物の場合は、kはそれらの混合物の平均値となる。異なるk数を有する化合物の混合物の場合は、平均のk数は好ましくは1~2、より好ましくは1~1.5、さらに好ましくは1~1.2、特に好ましくは1~1.15の範囲である。
【0028】
また、Xは、二価のアリーレン基を示し、例えばレゾルシノール、ハイドロキノン、ビスフェノールA、2,2’-ジヒドロキシビフェニル、2,3’-ジヒドロキシビフェニル、2,4’-ジヒドロキシビフェニル、3,3’-ジヒドロキシビフェニル、3,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、1,2-ジヒドロキシナフタレン、1,3-ジヒドロキシナフタレン、1,4-ジヒドロキシナフタレン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、1,8-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシ化合物から誘導される二価の基である。これらのうち、特に、ビスフェノールA、3,3’-ジヒドロキシビフェニルから誘導される二価の基が好ましい。
【0029】
また、一般式(1)におけるp、q、rおよびsは、それぞれ0または1を表し、なかでも1であることが好ましい。
また、R、R、RおよびRは、それぞれ、炭素数1~6のアルキル基またはアルキル基で置換されていてもよい炭素数6~20のアリール基を示す。このようなアリール基としては、フェニル基、クレジル基、キシリル基、イソプロピルフェニル基、ブチルフェニル基、tert-ブチルフェニル基、ジ-tert-ブチルフェニル基、p-クミルフェニル基等が挙げられるが、フェニル基、クレジル基、キシリル基がより好ましい。
【0030】
一般式(1)で表される縮合リン酸エステルのうち、室温で液状である具体例としては、ビスフェノールAビス-ジフェニルホスフェート等が好ましく挙げられる。市販品としては、例えば、ADEKA社製「FP-600」、大八化学工業社製「CR-741」等が挙げられる。
【0031】
[ポリカーボネート樹脂組成物ペレットの製造]
本発明の製造方法は、上記した樹脂ペレット(A)及びその他成分を二軸押出機に入れ、第1混練部で混練する第1工程、第1混練部の下流部に前記(B)を添加し第2混練部で混練する第2工程、第2混練部の下流部でベントを減圧にして脱揮し押出する第3工程を含む。
【0032】
本発明の製造方法には二軸押出機が使用される。二軸押出機は各種のものを使用することが出来、スクリューの回転方式は、同方向回転式でも、逆方向回転式でもよいが、同方向噛み合い型二軸押出機が好ましい。また、二軸押出機には、減圧或いは大気に開放されたベント口を設ける。
【0033】
図1は、本発明の方法で使用する押出機のスクリュー構成の一例を示す横断面図である。以下、図1~2を参照しながら、本発明の製造方法を説明する。
【0034】
原料の樹脂ペレット(A)及びその他成分(C)~(E)は、二軸押出機の根元にある供給口1から押出機に供給され、樹脂ペレット(A)は、押出機バレルの加熱およびスクリューの回転により、図1で右方向にある吐出口9の方に、溶融混練されながら運ばれ、吐出口9から吐出されたストランドは造粒機にてペレット化される。
【0035】
供給口1から供給された樹脂ペレット(A)等は、供給・搬送・予熱部2において、供給、搬送、予熱される。搬送用のスクリューとしては、通常のフライト状スクリューエレメントから構成されることが好ましい。
【0036】
次いで、第1混練部3にて樹脂ペレット(A)は溶融されるが、第1混練部3は、Rニーディングディスク、Nニーディングディスク、Lニーディングディスク、Lスクリュー、シールリング、ミキシングスクリュー、またはロータスクリューのうちの2種以上を組み合わせた、長さが2.5D~6.0D(Dはスクリュー径)の構成からなる。
【0037】
なお、第1混練部とは、液状のリン酸エステル難燃剤が入る前までの混練を行う領域を意味し、この第1混練部は、Rニーディングディスク、Nニーディングディスク、Lニーディングディスク、Lスクリュー、シールリング、ミキシングスクリュー、またはロータスクリューのうちの2種以上が連続していてもよいし、複数に分割されていてもよい。Rニーディングディスク、Nニーディングディスク、Lニーディングディスク、Lスクリュー、シールリング、ミキシングスクリュー、またはロータスクリューのうちの2種以上の合計の長さが2.5D~6.0D(Dはスクリュー径)であればよく、混練作用を有しない通常の送り用フライトは、第1混練部の長さに含めない。例えば、図2の第1混練部3のように、複数のニーディングディスクの間に通常の送り用のフライト状エレメント(図2中の3における斜めハッチングが付されたエレメント)を入れてもよく、このような送り用フライト状エレメントは2.5D~6.0Dの長さには含めない。
【0038】
Rニーディングディスクは、順送りニーディングディスク(以下Rと称することもある)ともよばれ、通常羽根が2枚以上でその羽根のねじれ角度Θは10度から75度である。このように羽根を所定角度ずらして設置することにより、樹脂を送ることができ、かつ強い剪断力を加えることができる。
Nニーディングディスクは、直交ニーディングディスク(以下Nと称することもある)ともよばれ、通常羽根が2枚以上で、かつ羽根のねじれ角度Θが75度から105度である。羽根が略90度ずらして設置されているために樹脂を送る力は殆どないが混練力は強い。
Lニーディングディスクは、逆送りニーディングディスク(以下Lと称することもある)ともよばれ、通常羽根が2枚以上でその羽根のねじれ角度Θは-10度から-75度である。Lニーディングディスクは送られてくる樹脂を堰き止めたり、送られた樹脂を送り戻す方向に働く昇圧能力のあるエレメントである。混練を促進するエレメントの下流側に設けることにより樹脂を堰き止め、強力な混練効果を発揮させるものである。
Lスクリューは、逆送りスクリューともよばれ、通常の送りスクリューに対して、反対の方向に螺旋しているスクリューであり、樹脂を堰き止めたり、送られた樹脂を戻す方向に昇圧能力のあるエレメントである。Lニーディングディスクと同じく、混練を促進するエレメントの下流側に設けることにより樹脂を堰き止め、強力な混練効果を発揮させるものである。
【0039】
上記の羽根は通常楕円状であり、楕円状の2つの頂点に平坦部が施されている。この羽根のことをディスクとも称し、各ニーディングディスクは通常、ディスク3~7枚により構成されている。このディスクは略三角状で3つの頂点をもつ場合もあり三条ニーディングディスクとも言う。同じく、R、N、Lのタイプがある。こちらも同様に使用することができる。ニーディングディスクの中には頂点をスクリュー軸方向にツイストしたツイストニーディングディスク等もあり、同様な混練効果が得られる。
【0040】
シールリングは、スクリューに嵌合されるリング状のものであって、流路の70~90%程度を閉塞し樹脂の流れを滞留させ、これにより樹脂圧力を高めることができる。Lニーディングと同じく、混練を促進するエレメントの下流側に設けることにより樹脂を堰き止め、強力な混練効果を発揮できる。
ミキシングスクリューは、スクリューフライトの山の部分を削ってできたものであり、一条あるいは二条の送り、あるいは逆送りスクリューであって、強い剪断分散力を有するエレメントである。順送り切欠き型ミキシングスクリュー、逆送り切欠き型ミキシングスクリューがある。
ロータスクリューは、楕円形状(2翼構造)もしくは三角形状のロータ翼を形成しているもので、ロータとバレル内壁面間の隙間(チップクリアランス)により強力なせん断力を発現できる。
【0041】
第1混練部3は上記したもののうちの2種以上を組み合わせるが、好ましくは、Rニーディングディスク、Nニーディングディスク、Lニーディングディスクを組み合わせたものが好ましく、例えば、Rのあとに複数のNを配置してLの構成、特にRNNL、RNNNL等が好ましい。
【0042】
また、第1混練部3のディスク構成は長さが2.5D~6.0Dの構成からなるが、3.5~5.5Dの範囲にあることが好ましい。
【0043】
上記のように構成された第1混練部により、樹脂ペレット(A)は十分な溶融が達成され、ついで搬送部4により第2混練部6に搬送されるが、その際、第1混練部の下流に設けた液体添加装置5(液体供給ポンプ等)により、液状のリン酸エステル難燃剤(B)が添加される。
【0044】
液状リン酸エステル難燃剤(B)の添加量は、得られるポリカーボネート樹脂組成物ペレット100質量%に対し、5質量%以上40質量%未満であり、このような添加量とすることで、高い難燃性と耐熱性を両立することができる。40質量%以上になると、耐熱性が低下する。添加量は、好ましくは7質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、好ましくは35質量%未満、より好ましくは30質量%未満、中でも25質量%未満、23質量%以下、特に好ましくは21質量%以下である。
【0045】
第2混練部6では、溶融した樹脂ペレット(A)等と液状リン酸エステル難燃剤(B)が溶融混練される。
【0046】
第2混練部6は、Rニーディングディスク、Nニーディングディスク、Lニーディングディスク、Lスクリュー、シールリング、ミキシングスクリュー、またはロータスクリューのうちの2種以上を組み合わせた、長さが1.3D~4.0Dの構成からなる。第2混練部6のスクリュー構成を上記のようにすることにより、第1混練部3の前記スクリュー構成と組み合わせることにより、樹脂ペレット(A)と液状リン酸エステル難燃剤(B)の均質な溶融混練ができ、安定的に生産性よく、均一で優れた難燃性と色相にも優れたポリカーボネート樹脂組成物ペレットを製造することができる。
【0047】
なお、第2混練部とは、リン酸エステル難燃剤が入り真空ベントに至るまでに混練を行う領域を意味し、この第2混練部は、Rニーディングディスク、Nニーディングディスク、Lニーディングディスク、Lスクリュー、シールリング、ミキシングスクリュー、またはロータスクリューのうちの2種以上が連続していてもよいし、複数に分割されていてもよい。Rニーディングディスク、Nニーディングディスク、Lニーディングディスク、Lスクリュー、シールリング、ミキシングスクリュー、またはロータスクリューのうちの2種以上の合計の長さが1.3D~4.0D(Dはスクリュー径)となればよく、混練作用を有しない通常の送り用フライトは、第2混練部の長さに含めない。例えば、図2の第2混練部6のように、複数のニーディングディスクの間に通常の送り用のフライト状エレメント(図2中の6における斜めハッチングが付されたエレメント)を入れて分割してもよく、このような送り用フライト状エレメントは1.3D~4.0Dの長さには含めない。
【0048】
第2混練部6は上記したもののうちの2種以上を組み合わせるが、好ましくは、Rニーディングディスク、Nニーディングディスク、Lニーディングディスクを組み合わせたものが好ましく、例えば、Rのあとに複数のNを配置したあとにLの構成とすることが好ましく、特にRNL、RNNL、RNNNL、RNNNNL、RNNNNNL等が好ましい。尚、構成中の各R、N、Lは、0.5D又は1.0Dの何れの組み合わせにおいても使用可能である。
【0049】
また、第2混練部6のディスク構成は長さが1.3D~4.0Dの構成からなるが、2.0D~4.0Dの範囲にあることが好ましい。
【0050】
第2混練部6の後、第2混練部の下流部でベント7を減圧にして脱揮し、押出部8により、ポリカーボネート樹脂組成物は押出機先端の吐出部9にある押出ダイからストランド状に押し出される。
二軸押出機のスクリューの回転数は500~900rpm程度であることが好ましい。
本発明の方法では、吐出量は、好ましくは350kg/hr以上、より好ましくは380kg/hr以上、さらに好ましくは400kg/hr以上、中でも450kg/hr以上、特に好ましくは500kg/hr以上を達成することが可能となる。
【0051】
そして、押し出されたポリカーボネート樹脂組成物のストランド状の溶融物は、水中冷却してカッティングされペレットとなる。
押出ダイの形状は特に制限はなく、公知のものが使用される。吐出ノズルのダイの直径は、押出し圧、所望するペレットの寸法にもよるが、通常2~5mm程度である。押出された直後のポリカーボネート樹脂の温度は、好ましくは280~300℃、より好ましくは280~290℃程度である。
【0052】
本発明の方法において、樹脂ペレット(A)、液状リン酸エステル難燃剤(B)以外に、ポリカーボネート樹脂フレーク(C)、ABS樹脂(D)、及び(B)以外の他の添加剤(E)を配合することも好ましい。各成分の配合量は、(A)~(E)の合計は100質量%基準で、ポリカーボネート樹脂フレーク(C)0~50質量%、ABS樹脂(D)0~30質量%、及び.(B)以外の他の添加剤(E)0~15質量%である。
このような(C)~(E)成分は、特にサイドフィードすることが好ましい場合を除き、樹脂ペレット(A)と一緒にまたは別フィードにて、二軸押出機の根元の供給口1から供給される。
【0053】
ポリカーボネート樹脂フレーク(C)は、平均粒径は2mm以下が好ましく、1.5mm以下がより好ましい。フレーク状のポリカーボネート樹脂を供給することにより、未溶融物の発生や添加剤の凝集等を抑制し、均質なポリカーボネート樹脂組成物ペレットが得られやすくなる。
ポリカーボネート樹脂フレーク(C)を使用する場合の配合量は、5~45質量%であることが好ましい。
【0054】
ABS樹脂(D)は、芳香族ビニル単量体成分、シアン化ビニル単量体成分、ジエン系ゴム質重合体成分からなることが好ましく、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体が好ましい。ABS樹脂(D)はペレット状のものを、樹脂ペレット(A)と共に二軸押出機の根元の供給口1から供給することが好ましい。ABS樹脂(D)を使用する場合の配合量は、5~25質量%であることが好ましい。
【0055】
液状リン酸エステル難燃剤(B)以外の他の添加剤(E)としては、フッ素樹脂(PTFE)等の難燃助剤、各種エラストマー(耐衝撃性改良剤)、離型剤、安定剤、フィラー(充填材)、強化剤、他の樹脂成分、他の難燃剤、着色材(染顔料)、紫外線吸収剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤等が好ましく挙げられる。(B)以外の他の添加剤(E)を使用する場合の配合量は、15質量%以下であり、好ましくは13質量%以下、さらに好ましくは12質量%以下、中でも11質量%以下、とりわけ10質量%以下であることが好ましい。
【0056】
本発明の製造方法で得られたポリカーボネート樹脂組成物ペレットは、樹脂ペレット(A)由来の樹脂30~95質量%、好ましくは30~80質量%、リン酸エステル難燃剤(B)5質量%以上40質量%未満、好ましくは5質量%以上25質量%未満、ポリカーボネート樹脂フレーク(C)由来のポリカーボネート樹脂0~50質量%、ABS樹脂(D)0~30質量%、及び(B)以外の他の添加剤(E)0~15質量%[ただし、(A)~(E)の合計は100質量%]からなる。
【0057】
得られたポリカーボネート樹脂組成物ペレットから成形品を製造する方法は、特に限定されるものではなく、ポリカーボネート樹脂について一般に採用されている成形法、すなわち、一般的な射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、多色射出成形法、ガスアシスト射出成形法、断熱金型を用いた成形法、急速加熱冷却金型を用いた成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法などを採用することができる。
【0058】
得られた成形品は、プリンターや複写機等のOA機器、電気機器、電子機器、自動車等の車両、プリンターや複写機等のOA機器、住宅、建築、その他の部品として好適に使用でき、特に、プリンターや複写機等のOA機器、コンピューター、パソコン、各種携帯端末、バッテリー等の筐体等として好適に使用できる。
【実施例
【0059】
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
【0060】
実施例および比較例に使用した押出機のスクリュー構成は、以下の通りである。
<第1混練部の構成例>
構成例1~4の各ニーディングディスクは5枚で、ディスク長さは1Dである。
構成例1: RL 長さ2D
構成例2: RNNL 長さ4D
構成例3: RNNNL 長さ5D
構成例4: RNNNNNL 長さ7D
<第2混練部の構成例>
構成例1、2、4のニーディングディスクは5枚でディスク長さは1Dであり、構成例3のニーディングディスクは5枚でディスク長さ0.5Dである。
構成例1: L 長さ1D
構成例2: RNL 長さ3D
構成例3: RNNNNNL 長さ3.5D
構成例4: RNNNL 長さ5D
【0061】
実施例および比較例に使用した原料は、以下の通りである。
・樹脂ペレット(A)
(A-1)ポリカーボネート樹脂リサイクルペレット
SHANGHAI AUSELL MATERIAL社製、「2010ANC」
MFR=14g/10min(300℃、1.2kg荷重)
(A-2)ポリカーボネート樹脂ペレット
三菱エンジニアリングプラスチックス社製、「S3000N」
粘度平均分子量Mv=22000
(A-3)ポリカーボネート樹脂/ABS樹脂ペレット
ポリカーボネート樹脂フレーク(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、「S3000F」、粘度平均分子量Mv=22000)80質量%と、ABS樹脂ペレット(日本エイアンドエル社製、「SXH-330」)20質量%を、あらかじめコンパウンドしたペレット
・液状リン系難燃剤(B)
ビスフェノールAビス-ジフェニルホスフェート
ADEKA社製、「アデカスタブFP-600」
・ポリカーボネート樹脂フレーク(C)
三菱エンジニアリングプラスチックス社製、「S3000F」、Mv=22000
・ABS樹脂(D)
ABS樹脂ペレット、日本エイアンドエル社製、「SXH-330」
・(B)以外の他の添加剤(E)
PTFE ダイキン工業社製、「FA500H」
【0062】
<製造例A1>
ポリカーボネート樹脂リサイクルペレット(A-1)を240kg/h(60質量%)、ポリカーボネート樹脂フレーク(C)を80kg/h(20質量%)を、同方向二軸押出機(「TEX44αII」、日本製鋼所社製)に供給口1から供給し、スクリュー構成例3の第1混練部で混練し、その後に液状リン系難燃剤(B)を液体供給ポンプ5から80kg/h(20質量%)で添加し、スクリュー構成例2の第2混練部で混練し、その後、ベントで減圧に引き、吐出口から押出してストランド化し、水槽で冷却後にペレタイザーによりポリカーボネート樹脂組成物ペレットを得た。スクリュー回転数は700rpmとし、シリンダー設定温度は260℃とした。
得られたペレットを射出成型し、厚さ3mmのプレートを成形した。
日本電色社製、SPECTROPHOTOMETER「SE6000」を用い透過光でYIを測定した。また、この3mmのプレートを日本電色社製、HAZE METER 「NDH4000」にて、光源D65/10°、JIS K7361、透過光で、全光線透過率(%)を測定した。
結果を表1に記す。
【0063】
<製造例A2~A6>
製造例A1において、第1混練部と第2混練部のスクリュー構成を表1に記載の構成例とし、スクリュー回転数を表1に記載の吐出量と回転数にした以外は同様にして、行った。
【0064】
<比較製造例A1>
第1混練部のスクリュー構成を構成例1、第2混練部を構成例3とした以外は製造例A1と同様にして、コンパウンドした。然しながら、原料ポリカーボネート樹脂リサイクルペレット(A-1)の未溶融物が出来、ストランドが破断して引き取り不能となり、ベントアップも発生した。製品ペレットのサンプリングは困難であった。第1混練部のスクリュー構成が短すぎ、原料ペレットが完全に溶融しなかったと考えられた。
【0065】
<比較製造例A2~A8>
製造例A1において、第1混練部と第2混練部のスクリュー構成を表1に記載の構成例とした以外は同様にして行った。結果は表1に示した。比較製造例A4,A5,A6ではベントには液状物が観察されベントアップが発生した。ストランドも頻繁に破断し、製品ペレットのサンプリングは困難であった。第2混練部の構成が短すぎ液状のリン系難燃剤が分散しなかったことが原因と考えられた。
【0066】
<比較製造例A9>
液状リン系難燃剤(B)を他の原料と同じ押出機根本の供給口から添加した以外は製造例A1と同様にコンパウンドした。然し、激しくベントアップし、未溶融があり、ストランドの引き取りは不能であった。液状リン系難燃剤が潤滑剤として作用し、ポリカーボネート樹脂ペレット(A-1)に第1混練部で剪断がかからずに溶融せず、第2混練部でも完全に溶融せず、ベントアップしコンパウンドできなかったと考えられる。
【0067】
<比較製造例A10>
比較製造例A9の状態で全ての原料の率を一定で下げていき吐出量を300Kg/hとしたが状況は改善されなかった。
【0068】
<比較製造例A11>
比較製造例A10の状態から徐々に全ての原料の率は一定にして供給量を下げていった。結果、ベントアップなくストランド引き取り可能とするためには、全体で140kg/hまで大幅にフィード量を下げる必要があった。フィード量が少なくなったことから、滞留時間が長くなり、十分な剪断がかかり、ポリカーボネート樹脂ペレット(A-1)が溶融したと考えられる。然しながら全光線透過率は低く、YIも高い値を示した。
以上の結果を表1-2に記す。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
<製造例B1~B6、比較製造例B1~B8>
ポリカーボネート樹脂リサイクルペレット(A-1)を200kg/h(50質量%)、ポリカーボネートフレーク(C)を140kg/h(35質量%)、液状リン系難燃剤(B)を60kg/h(15質量%)、スクリュー回転数を表に記載の回転数とした以外は、製造例A1と同様にコンパウンドした。結果を表3に示す。
【0072】
【表3】
【0073】
<製造例C1~C6、比較製造例C1~C8>
ポリカーボネート樹脂リサイクルペレット(A-1)を320kg/h(80質量%)、ポリカーボネートフレーク(C)を0kg/h(0質量%)、液状リン系難燃剤(B)を80kg/h(20質量%)、スクリュー回転数を表に記載の回転数とした以外は製造例A1と同様にコンパウンドした。
結果を表4に示す。
【0074】
【表4】
【0075】
<製造例D1~D6、比較製造例D1~D8>
ポリカーボネート樹脂リサイクルペレット(A-1)を200kg/h(50質量%)、ポリカーボネートフレーク(C)を40kg/h(10質量%)、ABS樹脂ペレット(D)を80kg/h(20質量%)、液状のリン系難燃剤(B)を80kg/h(20質量%)とし、スクリュー回転数を表に記載の回転数とした以外は製造例A1と同様にコンパウンドした。色調YIを反射光で測定した。
結果を表5に示す。
【0076】
【表5】
【0077】
<製造例E1~E6、比較製造例E1~E8>
ポリカーボネート樹脂リサイクルペレット(A-1)を200kg/h(50質量%)、ポリカーボネートフレーク(C)を40kg/h(10質量%)、ABS樹脂ペレット(D)を78kg/h(19.5質量%)、他の添加剤(E)としてPTFEを2kg/h(0.5質量%)を供給し、液状リン系難燃剤(B)を80kg/h(20質量%)とし、スクリュー回転数を表に記載の回転数にした以外は製造例A1と同様にコンパウンドした。色調YIを反射光で測定した。
結果を表6に示す。
【0078】
【表6】
【0079】
<製造例F1~F6、比較製造例F1~F8>
ポリカーボネート樹脂ペレット「S000N」(A-2)を320kg/h(80質量%)、液状難燃剤(B)を80kg/h(20質量%)とし、スクリュー回転数を表に記載の回転数にした以外は製造例A1と同様にコンパウンドした。色調YIは透過光で測定した。
結果を表7に示す。
【0080】
【表7】
【0081】
<製造例G1~G6、比較製造例G1~G8>
ポリカーボネート樹脂/ABS樹脂ペレット(A-3)を240kg/h(60質量%)、ポリカーボネートフレーク(C)を40kg/h(10質量%)、ABS樹脂ペレット(D)を40kg/h(10質量%)、液状リン系難燃剤(B)を80kg/h(20質量%)とし、スクリュー回転数を表に記載の回転数とした以外は製造例A1と同様にコンパウンドした。色調YIを反射光で測定した。
結果を表8に示す。
【0082】
【表8】
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の方法によれば、未溶融物やベントアップの発生がなく、高い吐出量で安定的に生産性よく、均一で優れた難燃性と色相にも優れたポリカーボネート樹脂組成物ペレットを製造することができ、得られたポリカーボネート樹脂ペレットは、プリンターや複写機等のOA、電気機器、電子機器、自動車等の車両、住宅、建築、その他の工業分野における部品製造用材料等に幅広く利用でき、産業上の利用性は非常に高い。
図1
図2