(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】絞り機構
(51)【国際特許分類】
G03B 9/02 20210101AFI20241218BHJP
G03B 9/10 20210101ALI20241218BHJP
G03B 9/24 20210101ALI20241218BHJP
G03B 30/00 20210101ALI20241218BHJP
【FI】
G03B9/02 B
G03B9/10 Z
G03B9/24
G03B30/00
(21)【出願番号】P 2022550180
(86)(22)【出願日】2022-07-20
(86)【国際出願番号】 CN2022106891
(87)【国際公開番号】W WO2024016239
(87)【国際公開日】2024-01-25
【審査請求日】2022-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】516180667
【氏名又は名称】北京小米移動軟件有限公司
【氏名又は名称原語表記】Beijing Xiaomi Mobile Software Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.018, Floor 8, Building 6, Yard 33, Middle Xierqi Road, Haidian District, Beijing 100085, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】宇野 勝
【審査官】眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-292882(JP,A)
【文献】特開2008-141798(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 9/00 - 9/54
G03B 30/00
H04N 5/222- 5/257
H04N 23/00
H04N 23/40 -23/76
H04N 23/90 -23/959
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸まわりに回転する回転環、及び、前記回転環を回転させる駆動力を生じる駆動源部、を備えた回転駆動部と、
前記回転環に係合し、前記回転環が回転することで揺動させられる、光軸まわりに配置された複数の絞り板を有し、前記複数の絞り板の揺動に伴って、光線が通る開口面積を拡大及び縮小できる絞り部と、を備え、
前記駆動源部は、
基部、緩衝部、ガイドピン、ホルダ、第1駆動体、第2駆動体を備え、前記緩衝部は前記基部と前記ホルダとの間に設けられ、前記ガイドピンは光軸方向に沿って前記基部を貫通し、前記ホルダ及び前記緩衝部には、前記基部を基準で前後方向に延びる長穴が形成され、前記ガイドピンは前記長穴を貫通し、前記ホルダと前記第1駆動体及び前記第2駆動体は、前記基部に対して前記長穴の形成範囲内で前後移動可能となっており、
前記第1駆動体及び前記第2駆動体の各々は、通電により変形する圧電素子と、前記圧電素子と連動するように設けられ前記回転環に当接可能に設けられた押圧部と、を備え、通電により前記圧電素子を変形させることにより前記押圧部を前記回転環に対して周方向成分を有する力で押圧することで前記回転環を回転させる絞り機構。
【請求項2】
前記複数の絞り板の各々は、
前記絞り部における径外側において、前記揺動の中心となる部分が軸支されており、
前記揺動の先端側における縁部に、前記開口面積の拡大及び縮小を行うための切欠部が形成されており、
前記回転環との係合がなされる係合部は、前記軸支された部分と前記切欠部との間に設けられている、請求項1に記載の絞り機構。
【請求項3】
前記回転環の回転軌跡と前記複数の絞り板の各々の揺動軌跡とは交差する関係にあり、
前記係合部による係合は、前記絞り板と前記回転環のうち一方に設けられた凸部と他方に設けられた凹部との組み合わせによるものであって、前記凹部の横断寸法は前記凸部の横断寸法よりも大きい、請求項2に記載の絞り機構。
【請求項4】
前記凹部が光軸方向視で長円形状である、請求項3に記載の絞り機構。
【請求項5】
前記駆動源部は、前記回転環の径方向での外周面に当接可能に設けられている、請求項1に記載の絞り機構。
【請求項6】
前記絞り部は偶数枚の前記絞り板を有し、
前記揺動の際に互いに重なり合う部分について、光軸方向の前方に位置する前記絞り板と後方に位置する前記絞り板とが周方向で隣り合うように配置されている、請求項1に記載の絞り機構。
【請求項7】
前記回転環に永久磁石が設けられており、前記回転環の径外側に磁気センサが設けられている、請求項1に記載の絞り機構。
【請求項8】
1つ以上のレンズと、
請求項1に記載の絞り機構と、を含む、カメラモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スマートフォン内蔵カメラや小型カメラに用いられる絞り機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、例えば、日本国特開2011-90028号公報に記載の絞り機構が挙げられる。この従来技術では、レバーにより絞りを動作させるよう構成されていることから、構成が複雑であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このことに鑑み、本発明は、絞りのための構成を小型化でき、しかも単純な構成とした絞り機構を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一つの形態は、光軸まわりに回転する回転環、及び、前記回転環を回転させる駆動力を生じる駆動源部、を備えた回転駆動部と、前記回転環に係合し、前記回転環が回転することで揺動させられる、光軸まわりに配置された複数の絞り板を有し、前記複数の絞り板の揺動に伴って、光線が通る開口面積を拡大及び縮小できる絞り部と、を備え、前記駆動源部は、通電により変形する圧電素子と、前記圧電素子と連動するように設けられ前記回転環に当接可能に設けられた押圧部と、を備え、通電により前記圧電素子を変形させることにより前記押圧部を前記回転環に対して周方向成分を有する力で押圧することで前記回転環を回転させる絞り機構である。
【0005】
また、前記複数の絞り板の各々は、前記絞り部における径外側において、前記揺動の中心となる部分が軸支されており、前記揺動の先端側における縁部に、前記開口面積の拡大及び縮小を行うための切欠部が形成されており、前記回転環との係合がなされる係合部は、前記軸支された部分と前記切欠部との間に設けられているものとできる。
【0006】
また、前記回転環の回転軌跡と前記複数の絞り板の各々の揺動軌跡とは交差する関係にあり、前記係合部による係合は、前記絞り板と前記回転環のうち一方に設けられた凸部と他方に設けられた凹部との組み合わせによるものであって、前記凹部の横断寸法は前記凸部の横断寸法よりも大きい。
【0007】
また、前記凹部が光軸方向視で長円形状であるものとできる。
【0008】
また、前記駆動源部は、前記回転環の径方向での外周面に当接可能に設けられているものとできる。
【0009】
また、前記絞り部は偶数枚の前記絞り板を有し、前記揺動の際に互いに重なり合う部分について、光軸方向の前方に位置する前記絞り板と後方に位置する前記絞り板とが周方向で隣り合うように配置されているものとできる。
【0010】
また、前記回転環に永久磁石が設けられており、前記回転環の径外側に磁気センサが設けられているものとできる。
【0011】
また、本発明のもう一つの形態は、1つ以上のレンズと、前記形態のいずれかに記載の絞り機構とを含むカメラモジュールである、
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る絞り機構の構造を概略的に示し、構成部材をそれぞれ分解して光軸方向に並べて示した分解斜視図である。
【
図2】
図2は、前記絞り機構の組み立て状態を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、前記絞り機構のうち回転駆動部と絞り部とを示す、底面側から見た斜視図である。
【
図4】
図4は、前記絞り部の開き状態を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、前記絞り部の絞り状態を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、前記回転駆動部の駆動源部を示す平面図(絞り機構として)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態に係る絞り機構1を、図面を示しつつ説明する。以下の説明における、「光軸方向」、「周方向」、「径方向」、「径内」、「径外」は、特記のない限り、絞り機構1全体における方向を示す。つまり、絞り機構1における光軸方向に対して周回する方向が周方向である。そして、光軸方向に直交する方向が径方向である。また、「前方」は光軸方向において被写体を向く方向とし、「後方」は光軸方向においてカメラの撮像素子を向く方向とする。
【0014】
図1に全体の分解図を示す。図示上方が光軸方向の前方であり、下方が光軸方向の後方である。
図1で左下方に示す、分解して示していない部分は、絞り機構1で絞られた光線を受けるレンズ駆動機構Xである。なお、レンズ駆動機構Xは本発明に直接の関係がないことから、必要な事項を除いて、以下で詳細な説明を行わない。絞り機構1は、光軸方向で前側(被写体側)からレンズ駆動機構Xに向かい、回転駆動部2、絞り部3、支持板4の順に配置されて構成され、これらがハウジング6内に設けられている。ハウジング6はレンズ駆動機構Xのハウジングと兼用されている。また、支持板4はレンズ駆動機構Xと兼用されている。ハウジング6の内側であって、回転駆動部2の前方には、カメラを構成する複数のレンズのうち1組または1枚のレンズ7が設けられている。
【0015】
絞り機構1は、レンズ駆動機構X(ハウジングを除いた部分)の前方に設けられている。レンズ駆動機構Xは、オートフォーカス機能により、その一部である筒体部X1が光軸方向に沿って前後移動する。絞り機構1全体も、筒体部X1と連動(同期移動)して前後移動するように構成されている。このように絞り機構1をレンズ駆動機構Xに連動するように構成することで、オートフォーカス機能とは関係なく固定的に設けられた構成に比べ、カメラの光学特性(具体的にはMTF)を向上させられる。
【0016】
回転駆動部2は、カメラにおいて設定される光軸まわりの方向Rに回転する回転環21、及び、回転環21を回転させる駆動力を生じる駆動源部22、を備える。回転環21は、絞り部3を開閉するための各絞り板31の揺動範囲に対応して係合突起212(後述)が周方向に移動する範囲で、駆動源部22の駆動力を受けて回転する。回転環21は、絞りの開閉に応じた所定角度分、無段階で回転するよう構成してもよいし、ステッピングモータのように多段階で回転するよう構成してもよい。回転環21は、中央に光線(カメラが有する撮像素子に入力される、被写体に対応した光)を通すように、光軸方向での中心が光軸と一致して配置された円環状とされている。
【0017】
本実施形態では、回転環21の径方向の断面形状が長方形とされている。回転環21の後面(図示下面)には、周方向の4箇所(絞り板31~31の枚数と一致)で、前方(図示上方)に凹む凹部211が形成されている。凹部211の後面は平面とされており、各絞り板31の第2基部312において同じく平面とされている前面と当接する。また、回転環21の径方向での外周面213は、各絞り板31の第1基部311とは干渉しないように、隙間をもって設けられている。凹部211の周方向寸法は、各絞り板31における第2基部312の揺動範囲よりも大きく形成されている。
図3に示すように、凹部211から後方(図示下方)に係合突起212が突出している。係合突起212は横断面形状が真円である円柱状とされている。凹部211における係合突起212の突出位置は、各絞り板31の揺動範囲に応じて定められる。本実施形態の係合突起212は、凹部211の周方向中央から端部側に片寄った位置に形成されている。
【0018】
回転駆動部2は押さえ部5(枠部51、滑り環52)によって、前方から押さえられ、カメラにおいて設定される光軸方向の位置決めがなされている。回転環21の内径部には複数(具体的には3個)の、円柱状のピン23~23が埋め込まれている。各ピン23は、枠部51における内周側に設けられた規制壁部511の径外側の外周面(図示しない)に当接する。これにより、回転環21の径方向での位置決めがされる。また、回転環21の前面は滑り環52を介して枠部51に前方から押さえられることにより、光軸方向での位置決めがされる。滑り環52は円環状の平坦なシートであって、表面の摩擦係数が他の部品よりも小さい。回転環21の前面と滑り環52との間では滑りが生じることで、回転環21の周方向への回転が阻害されずに円滑な回転が可能である。
【0019】
また、
図2に示すように、回転環21の外周部に永久磁石24が埋め込まれており、回転環21の外部であって径外側に、ホールセンサやMRセンサ等、永久磁石24の磁気に反応する磁気センサ(図示しない)が設けられている。これにより、回転環21の回転位置を検出できる。検出結果は、スマートフォンまたはカメラの制御部(図示しない)に送信され、絞りの制御のために使用される。
【0020】
駆動源部22は、
図6に示すように、基部221、緩衝部222、ガイドピン223、ホルダ224、第1駆動体225、第2駆動体226を備える。なお、
図6では、基部221等を上方に、各駆動体225,226を下方に図示している。また、
図2等に示す側方に突出した板状の部分は、給電用基板(FPC)228である。第1駆動体225、第2駆動体226の各々は、通電により変形(具体的には伸長)する圧電素子2251,2261と、圧電素子2251,2261と連動するように設けられ回転駆動部2における回転環21の表面(本実施形態では回転環21の径方向での外周面213)に当接可能に設けられた押圧部2252,2262と、を備える。本実施形態では、光軸方向で同じ位置に回転環21と駆動源部22とを配置できる。このため、駆動側の部材(駆動源部22)と従動側の部材(回転環21)を、光軸方向でコンパクトに配置することができる。また、回転環21と駆動源部22とは光軸方向で略同一寸法とされている。このため、回転環21と駆動源部22とを組み合わせた状態で光軸方向寸法が拡大してしまう(厚くなってしまう)ことを避けられる。従って本実施形態は、例えばモータとギア等により絞り部3を駆動させる構成に比べ、光軸方向寸法の小型化が可能である。また、構成を簡略化できる。
【0021】
基部221は枠部51に固定される部分である。本実施形態の基部221は有底の筒状に形成されており、内部にホルダ224が基部221基準で前後移動可能に(絞り機構1全体では径方向へ移動可能に)設けられる。ホルダ224には対称形状である第1駆動体225及び第2駆動体226が固定されている。つまり駆動源部22は、第1駆動体225及び第2駆動体226を一体に備える。緩衝部222は基部221とホルダ224との間に設けられている。緩衝部222はホルダ224の移動に伴い伸縮する。本実施形態の緩衝部222はシリコン等からなるゴム板から構成されている。ガイドピン223は光軸方向に沿うように基部221を貫通している。ホルダ224及び緩衝部222には、基部221基準で前後方向に延びる長穴227が形成されていて、ガイドピン223はこの長穴227を貫通している。このためホルダ224と第1駆動体225及び第2駆動体226は、基部221に対して長穴227の形成範囲内で前後移動可能となっている。
【0022】
第1駆動体225は、回転環21の周方向の一方側に位置する。第2駆動体226は、回転環21の周方向の他方側に位置する。第1駆動体225、第2駆動体226の各々は、正電圧の通電により伸長し、逆電圧の通電により短縮する圧電素子2251,2261、及び、圧電素子2251,2261と連動するように設けられ回転環21の表面(本実施形態では外周面213)に当接可能に設けられた押圧部2252,2262を備える。本実施形態の押圧部2252,2262は図示のように、圧電素子2251,2261に通電されていない状態では回転環21の外周面213に当接しているが、圧電素子2251,2261への正電圧の通電時(伸長時)にのみ当接するよう構成してもよい。
【0023】
圧電素子2251,2261は六面体(直方体)形状であってホルダ224に埋め込まれるようにして固定されている。押圧部2252,2262はセラミックから形成された板状であり、一面が各圧電素子2251,2261において互いに対向している面に対して接着されて一体となっている。なお、押圧部2252,2262はホルダ224には固定されておらず、圧電素子2251,2261の伸縮に伴い、ホルダ224に対して移動可能である。押圧部2252,2262における先端には、厚み寸法が拡大した拡大部2253,2263を有している。つまり、押圧部2252,2262の本体と拡大部2253,2263とは一体に形成されている。本実施形態の拡大部2253,2263の断面形状は円形とされている。拡大部2253,2263は、回転環21の外周面213に対向するように位置する。
【0024】
第1駆動体225と第2駆動体226とは対向して設けられている。第1駆動体225と第2駆動体226の対向する方向は絞り機構1の周方向に沿っている。第1駆動体225が備える押圧部2252と、第2駆動体226が備える押圧部2262とは互いに、回転環21の外周面213に対向する先端の方が基端よりも離れるように形成されている。両押圧部2252,2262は、
図6に示すように逆V字形状に配置されている。圧電素子2251,2261に正電圧をかけた場合の伸長方向2251M,2261Mは、図上において矢印で示した方向であって、前記逆V字形状を構成する両押圧部2252,2262の対称中心に向かう方向である。圧電素子2251,2261に逆電圧をかけた場合の短縮方向は、前記伸長方向と逆の方向である。なお、通電を停止すると、圧電素子2251,2261は伸縮前の形状に戻る。圧電素子2251,2261の伸長により、押圧部2252,2262は同方向に移動する。通電を周期的に行うことにより、通電間隔に対応した周波数で押圧部2252,2262を駆動させられ、この周波数に対応した周期で押圧部2252,2262(具体的には拡大部2253,2263)を、回転環21に対して間欠的に押圧することができる。
【0025】
なお、圧電素子2251,2261に逆電圧をかけることは必須ではなく、正電圧を間欠的にかけるのみであってもよい。逆電圧をかけることに関し、例えば、第1駆動体225の圧電素子2251に正電圧をかける場合、同時に第2駆動体226の圧電素子2261に逆電圧をかける。そうすると圧電素子2261は短縮するため、第2駆動体226の押圧部2262は回転環21の外周面213から離間する。よって、押圧部2262が回転環21の外周面213に当接したままであることに比べ、押圧部2262が回転環21を回転させる際の抵抗になりにくい。第2駆動体226の圧電素子2261に正電圧をかける場合は前記と逆で、同時に第1駆動体225の圧電素子2251に逆電圧をかけることになる。
【0026】
圧電素子2251,2261の伸長に伴う、押圧部2252,2262(拡大部2253,2263)の回転環21の外周面に対する押圧は、周方向成分を有するようになされる。このため、押圧の際に周方向に向かう力(摩擦力)を回転環21に及ぼすことができる。従って、押圧部2252,2262(拡大部2253,2263)は回転環21を周方向に、通電周期に応じて連続して蹴るような動作を行う。これにより回転環21は回転させられる。回転環21の外周面のうち、少なくとも押圧部2252,2262が押圧する部分は一定曲率とされている。このため、押圧部2252,2262の押圧力によって生じる回転環21の回転力を一定にすることができ、安定した回転を実現できる。
【0027】
絞り部3は、回転駆動部2における回転環21に係合し、回転環21が回転することで、光軸方向に直交する平面内である方向Mに揺動させられる、各々が同一形状である複数の絞り板31~31を有し、複数の絞り板31~31の揺動に伴って、光線が通る開口部分Oの開口面積を拡大(例えば
図3や
図4の状態)及び縮小(例えば
図5の状態)できる。複数の絞り板31~31は光軸まわりに配置されている。開口部分Oは光軸に一致するように形成される。
【0028】
絞り部3は複数、より詳しくは偶数の絞り板31~31(本実施形態では、周方向に90度ごとに設けられた4枚の絞り板31~31)から構成されており、複数の絞り板31~31は、揺動に伴って摺動し、部分的に重なり合う。つまり絞り部3は、少なくとも揺動の際に互いに重なり合う部分(本実施形態では絞り板31の全体)について、光軸方向の前方に位置する絞り板31と後方に位置する絞り板31が周方向で隣り合うように配置されている。複数の絞り板31~31は、光軸方向視で回転対称に設けられている。絞り部3の開口形状が変化することで、4枚の絞り板31~31で開口部分Oの開口面積をカメラ自体、または、カメラ搭載機器(スマートフォン等)が有する制御部が設定する絞り値に応じて拡大及び縮小できる。
【0029】
複数の絞り板31~31の各々(以下、単に「絞り板31」とする)は略扇形状とされており、扇形状の要部分(基端部分)に第1基部311と、第1基部311の揺動中心を基準とした径外方向に隣接し、第1基部311よりも厚み寸法の小さい第2基部312と、が設けられている。そして、第2基部312の径外方向に隣接して、第2基部312よりも厚み寸法の小さい平板部313が設けられている。平板部313は光軸方向に直交する方向に延びる平板状とされている。この平板部313で光線が遮られる。
【0030】
ここで前述のように、光軸方向の前方に位置する絞り板31と後方に位置する絞り板31が周方向で隣り合うように配置されている。このような各絞り板31の前後配置は、本実施形態では、軸部8において設けられた鍔部81の厚さを変更することでなされている。鍔部81は、円柱状の軸部8の本体から軸部8の径外方向に突出した円板状の部分である。鍔部81は軸部8の本体と一体に形成されている。鍔部81は絞り板31における第1基部311の後面と支持板4の前面との間に挟まれる。
図2に示すように、相対的に薄い鍔部81Aを配置することで、絞り板31を相対的に後方に配置できる。そして、相対的に厚い鍔部81Bを配置することで、絞り板31を相対的に前方に配置できる。このように軸部8による位置調整を行うことにより、複数の絞り板31~31を同一形状に統一できる利点がある。なお、軸部8の鍔部81による調整のほか、絞り板31における第1基部311の厚みを変更したり、支持板4に段差を設けたりシムを取り付けたりすることで、絞り板31の前後位置を調整してもよい。
【0031】
絞り板31の揺動の先端側における、光軸に面した縁部に、開口部分Oの開口面積の拡大及び縮小を行うための先端側切欠部314が形成されている。先端側切欠部314は絞り部3における光軸側(径内側)に設けられており、本実施形態では曲率が一定の円形状に切り欠かれた部分である。先端側切欠部314の曲率は、
図3及び
図4に示すように絞り空間である開口部分Oが最も拡大した状態で真円となるように設定されている。そして、複数の絞り板31~31が光軸に近づくように揺動すると、複数の先端側切欠部314が接近することにより、開口部分Oの開口面積が縮小される。
【0032】
第2基部312の揺動方向の一端には、光軸方向に直交して延びる基端側切欠部3121が形成されており、
図5に示したように、他の絞り板31の平板部313の縁部が基端側切欠部3121に入り込むことで、隣り合う絞り板31,31が揺動に伴い干渉しないようにされている。
【0033】
絞り部3における径外側(絞り部3全体の径外側)において、前記揺動の中心となる部分が軸支されている。このため絞り板31は、揺動する先端側が絞り部3における径内側に位置している。絞り板31の第1基部311には光軸方向に沿って延びる軸穴3111(
図1参照)が設けられていて、ここに軸部8が通される。軸部8は平板状の支持板4に設けられた貫通穴41に通され、後端部はレンズ駆動機構Xの支持穴X2に固定される。これにより、軸穴3111に通された軸部8を中心として、絞り板31が方向Mに揺動する。揺動のための駆動力は回転環21から伝達される。
【0034】
第2基部312には、回転環21との係合がなされる係合部としての係合穴315が設けられている。この係合穴315は、光軸方向に延びて第2基部312を貫通している。係合穴315は、前記軸支された部分と先端側切欠部314との間に設けられている。
【0035】
ここで、回転環21の回転軌跡(方向R)と各絞り板31の揺動軌跡(方向M)とは完全に一致しておらず、光軸方向視で交差する関係にある。ここで、前記係合部(係合穴315)による係合は、絞り板31と回転環21のうち一方に設けられた凸部(本実施形態では回転環21の係合突起212)と他方に設けられた凹部(本実施形態では各絞り板31の係合穴315)との組み合わせによるものであって、前記凹部の光軸方向に直交する横断寸法は前記凸部の横断寸法よりも大きく、前記回転環の回転に伴う前記揺動軌跡と前記回転軌跡とのずれを吸収する。本実施形態では、前記凹部としての係合穴315が、
図4及び
図5に示すように、光軸方向視で長円形状である。前記長円形の長径方向は、回転環21の回転方向R(周方向)に直交する方向、または、各絞り板31の揺動方向Mに直交する方向とできる。なお、厳密に直交している必要はなく、略直交であればよい。このように係合穴315が長円形状であることにより、係合突起212と係合穴315との間で遊びを生じさせることができるので、回転環21の回転軌跡(方向R)と各絞り板31の揺動軌跡(方向M)とのずれを吸収できる。
【0036】
複数の絞り板31~31は、均等に(回転対称の関係で)揺動する。そして、複数の絞り板31~31の各々における先端側切欠部314の、揺動方向での重なりに応じて、光軸に一致して形成される絞り空間である開口部分Oを、
図3や
図4に示すように最も拡大した状態と、
図5に示す最も縮小した状態との間で変化させることができる。
【0037】
前記説明のように、本実施形態は、光軸まわりに回転する回転環21、及び、前記回転環21を回転させる駆動力を生じる駆動源部22、を備えた回転駆動部2と、前記回転環21に係合し、前記回転環21が回転することで揺動させられる、光軸まわりに配置された複数の絞り板31~31を有し、前記複数の絞り板31~31の揺動に伴って、光線が通る開口面積を拡大及び縮小できる絞り部3と、を備え、前記駆動源部22は、通電により変形する圧電素子2251,2261と、前記圧電素子2251,2261と連動するように設けられ前記回転環21に当接可能に設けられた押圧部2252,2262と、を備え、通電により前記圧電素子2251,2261を変形させることにより前記押圧部2252,2262を前記回転環21に対して周方向成分を有する力で押圧することで前記回転環21を回転させる絞り機構1である。
【0038】
この構成によると、圧電素子2251,2261により回転される回転環21で絞り板31~31を揺動させ、この揺動に伴って、光線が通る開口部分Oの開口面積を拡大及び縮小できる。
【0039】
また、前記複数の絞り板31~31の各々は、前記絞り部3における径外側において、前記揺動の中心となる部分が軸支されており、前記揺動の先端側における縁部に、前記開口面積の拡大及び縮小を行うための先端側切欠部314が形成されており、前記回転環21との係合がなされる係合部(係合穴315)は、前記軸支された部分と前記先端側切欠部314との間に設けられているものとできる。
【0040】
この構成によると、先端側切欠部314で光線が通る開口面積を拡大及び縮小でき、揺動の中心となる軸支された部分と先端側切欠部314との間に設けられた係合部(係合穴315)で、回転環21の回転力を絞り板31の揺動のために受けることができる。
【0041】
また、前記回転環21の回転軌跡(方向R)と前記複数の絞り板31~31の各々の揺動軌跡(方向M)とは交差する関係にあり、前記係合部(係合穴315)による係合は、前記絞り板31と前記回転環21のうち一方に設けられた凸部(回転環21の係合突起212)と他方に設けられた凹部(絞り板31の係合穴315)との組み合わせによるものであって、前記凹部(係合穴315)の横断寸法は前記凸部(係合突起212)の横断寸法よりも大きく、前記回転環21の回転に伴う前記揺動軌跡と前記回転軌跡とのずれを吸収するものとできる。
【0042】
この構成によると、ずれを吸収できる凹凸係合で、駆動力を回転環21から絞り板31に伝達できる。
【0043】
また、前記凹部(係合穴315)が光軸方向視で長円形状であるものとできる。
【0044】
この構成によると、長円形状の凹部(係合穴315)により、回転環21の回転軌跡(方向R)と絞り板31の揺動軌跡(方向M)とのずれを吸収できる。
【0045】
また、前記駆動源部22は、前記回転環21の径方向での外周面213に当接可能に設けられているものとできる。
【0046】
この構成によると、光軸方向で同じ位置に回転環21と駆動源部22とを配置できる。
【0047】
また、前記絞り部3は偶数枚の前記絞り板31~31を有し、前記揺動の際に互いに重なり合う部分について、光軸方向の前方に位置する前記絞り板31と後方に位置する前記絞り板31とが周方向で隣り合うように配置されているものとできる。
【0048】
この構成によると、周方向で隣り合う絞り板31,31を光軸方向の前後でずらすことができるため、揺動によって干渉しないようにできる。
【0049】
また、前記回転環21に永久磁石が設けられており、前記回転環21の径外側に磁気センサが設けられているものとできる。
【0050】
この構成によると、簡単な構成で回転環21の回転位置を検出できる。
【0051】
以上のように構成された本実施形態の絞り機構1によると、回転環21、駆動源部22、複数の絞り板31~31で光線が通る開口部分Oの開口面積を拡大及び縮小できるため、絞りのための構成を小型化でき、しかも単純な構成とした絞り機構1を提供できる。
【0052】
本実施形態は以上のとおりであるが、本発明は、前述した形態に限定されず、本発明の意図する範囲内において適宜設計変更されることが可能である。また、本発明の作用効果も、前記実施形態で述べたもの限定されない。即ち、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって本発明を制限するものではない。本発明の範囲は、前述の説明ではなく特許請求の範囲によって画定される。また、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0053】
例えば、本実施形態では光軸方向前方に回転駆動部2が設けられ、後方に絞り部3が設けられていた。しかしこれに限らず、光軸方向後方に回転駆動部2が設けられ、前方に絞り部3が設けられていてもよい。
【0054】
また、駆動源部22による回転環21の押圧は、回転環21の光軸方向側の面(前面、後面)で行うこともできる。また、回転環21の径方向における内周面で行うこともできる。
【0055】
また、回転環21は光軸方向及び径方向の寸法が全周において一定であり、曲率が全周において一定の形状とされていた。しかしこれに限定されず、少なくとも、駆動源部22による押圧を受ける部分の周面の曲率が一定であればよい。従って、回転環21は全周でつながった環状ではなく、一部が欠けた環状(C字状等)であってもよい。また、環状ではなく枠状であってもよい。
【0056】
また、前記実施形態の絞り部3は、偶数である4枚の絞り板31~31から構成されていた。しかし、絞り板31の枚数は2枚または3枚であってもよく、また、5枚以上であってもよい。また、奇数の絞り板31~31から絞り部3が構成されていてもよい。
【0057】
また、前記実施形態の絞り部3では、先端側切欠部314が曲率一定の円形状に切り欠かれた部分であった。しかし、先端側切欠部314の形状はこれに限定されず、直線状(屈曲した形状を含む)や曲率が一定でない湾曲線状に切り欠かれた部分であってもよい。また、複数の絞り板31~31の重なり具合により、複数の絞り板31~31により形成される開口部分の開口面積を拡大及び縮小できるものであれば、先端側切欠部314の形状は限定されない。
【0058】
また、前記実施形態では、回転環21の係合突起212と絞り板31の係合穴315との組み合わせにより構成されていた。しかしこれと逆に、回転環21に凹部や穴を形成し、絞り板31に凸部を形成して両者が係合する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 絞り機構
2 回転駆動部
21 回転環
212 凸部、係合突起
213 外周面
22 駆動源部
2251 圧電素子
2252 押圧部
2261 圧電素子
2262 押圧部
24 永久磁石
3 絞り部
31 絞り板
3111 軸穴
314 切欠部、先端側切欠部
315 係合部、凹部、係合穴
4 支持板
5 押さえ部
6 ハウジング
7 レンズ
8 軸部
X レンズ駆動機構
M 絞り板の揺動方向
R 回転環の回転方向
O 絞り部の開口部分