(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】駆動ユニット
(51)【国際特許分類】
B62M 6/55 20100101AFI20241218BHJP
B62M 6/50 20100101ALI20241218BHJP
【FI】
B62M6/55
B62M6/50
(21)【出願番号】P 2022557805
(86)(22)【出願日】2021-02-22
(86)【国際出願番号】 EP2021054260
(87)【国際公開番号】W WO2021190844
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-12-13
(31)【優先権主張番号】102020203711.6
(32)【優先日】2020-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500045121
【氏名又は名称】ツェットエフ、フリードリッヒスハーフェン、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】ZF FRIEDRICHSHAFEN AG
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186716
【氏名又は名称】真能 清志
(72)【発明者】
【氏名】ステッフェン クラフト
(72)【発明者】
【氏名】ミラン ペルシク
(72)【発明者】
【氏名】ルディガー ニエレシャー
(72)【発明者】
【氏名】クラウス クラフト
【審査官】熊谷 健治
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109866866(CN,A)
【文献】独国特許出願公開第102013214701(DE,A1)
【文献】国際公開第2016/086526(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第106904240(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 6/55
B62M 6/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人力駆動式の車両のため
の駆動ユニット(10)であって、ハウジング(12)と、ボトムブラケットシャフト(14)と、電気補助駆動装置(16)と、中空軸として設計された出力軸(22)と、を有し、前記ボトムブラケットシャフト(14)および前記出力軸(22)は、相互に同軸に配置され、前記出力軸(22)は、前記ボトムブラケットシャフト(14)を、軸方向に部分的に、径方向外側で包囲する駆動ユニット(10)において、軸方向に相互に隣接して、前記出力軸(22)に作用する第1フリーホイールクラッチ(24)および第2フリーホイールクラッチ(26)は、径方向に前記ボトムブラケットシャフト(14)と前記出力軸(22)との間に配置され
、
前記第1フリーホイールクラッチ(24)は、前記ボトムブラケットシャフト(14)を前記出力軸(22)と結合し、前記第2フリーホイールクラッチ(26)は、前記電気補助駆動装置(16)を前記出力軸(22)と結合し、
前記電気補助駆動装置(16)は、フレックススプライン(32)を有する波動歯車装置(20)を備え、
スリーブ(96)が設けられ、前記スリーブ(96)は、前記ボトムブラケットシャフト(14)に押し付けられ、または押圧され、前記スリーブ(96)は、前記フレックススプライン(32)の1つまたは複数の転がり軸受(100、102)のためのソケット部分(98)を備え、前記1つまたは複数の転がり軸受(100、102)は、前記ソケット部分(98)において軸方向に固定可能である、または固定されることを特徴とする、駆動ユニット(10)。
【請求項2】
請求項
1に記載の駆動ユニット(10)において
、前記フレックススプライン(32)は
、環状のアダプタ(50)を介して、前記第2フリーホイールクラッチ(26)と結合されることを特徴とする、駆動ユニット(10)。
【請求項3】
請求項
2に記載の駆動ユニット(10)において、前記フレックススプライン(32)は結合部分(52)を備え、前記結合部分(52)を介して、前記フレックススプライン(32)および前記アダプタ(50)は、接続領域(54)において相互に接続され、前記接続領域(54)において、嵌合部分(56)および/または接着部分(58)が形成されることを特徴とする、駆動ユニット(10)。
【請求項4】
請求項1~
3の何れか一項に記載の駆動ユニット(10)において、前記ボトムブラケットシャフト(14)は、第1シャフト部分(66)と、別個の第2シャフト部分(68)と、を備え、前記第1シャフト部分(66)および前記第2シャフト部分(68)は、相互に接続可能であることを特徴とする、駆動ユニット(10)。
【請求項5】
請求項
4に記載の駆動ユニット(10)において、2つの前記シャフト部分(66、68)は
、径方向の中央に配置されたねじ接続部(72)を用いて相互に固定可能である、または固定されることを特徴とする、駆動ユニット(10)。
【請求項6】
請求項1~
5の何れか一項に記載の駆動ユニット(10)において、前記ボトムブラケットシャフト(14)は、第1軸受(78)を用いて、前記ハウジング(12)を区画するハウジングカバー(80)に回転可能に取り付けられ、前記ボトムブラケットシャフト(14)は、第2軸受(82)を用いて前記出力軸(22)に取り付けられることを特徴とする、駆動ユニット(10)。
【請求項7】
請求項1~
6の何れか一項に記載の駆動ユニット(10)において、前記ボトムブラケットシャフト(14)は、径方向外側に突出するシャフトショルダ(88)を備え、前記シャフトショルダ(88)を介して、前記ボトムブラケットシャフト(14)は前記第1フリーホイールクラッチ(24)と結合され、トルク検出用のセンサシステム(92)が設けられ、前記センサシステム(92)は、前記ボトムブラケットシャフト(14)に加えられるトルクを、前記シャフトショルダ(88)で検出することを特徴とする、駆動ユニット(10)。
【請求項8】
請求項
7に記載の駆動ユニット(10)において、トルク検出用の前記センサシステム(92)は、1つまたは複数の歪みゲージまたは1つまたは複数の磁歪式測定要素(94)を備えることを特徴とする、駆動ユニット(10)。
【請求項9】
請求項
1に記載の駆動ユニット(10)において、前記ボトムブラケットシャフト(14)と、前記ボトムブラケットシャフト(14)をガイドするステータキャリア(40)と、の間のシール位置のためのシール面(104)は、前記スリーブ(96)を用いて形成されることを特徴とする、駆動ユニット。
【請求項10】
請求項
1または
9に記載の駆動ユニット(10)において、前記スリーブ(96)に、または前記スリーブ(96)内に、ラインガイドが形成され、前記ラインガイドに、トルク検出用のセンサシステムと電子ユニット(48)との間の電力伝送および/または信号伝送のための電気ライン(89)を配置することができ、および/または前記電子ユニット(48)とトルク検出用のセンサシステムとの間の電力伝送および/または信号伝送のために、1つまたは複数のスリップリング(108、110)を、前記スリーブ(96)に取り付けることを特徴とする、駆動ユニット(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに記載の特徴を有する人力駆動式の車両のための駆動ユニットに関する。人力駆動式の車両は、特に、筋力によって作動される車両である。
【背景技術】
【0002】
DE102015100676A1号は、人力駆動装置、電気式の補助駆動装置、波動歯車装置、および共通の出力要素を有する駆動アセンブリを開示する。この駆動装置は、多数の個別コンポーネントおよび軸受点を有する複雑な構造を有する。
【0003】
EP2724926A1号は、人力駆動のためのボトムブラケットシャフトを有する中央駆動ユニットと、後置接続された遊星歯車装置を備える補助駆動装置と、を開示する。この駆動ユニットも、多数の個別コンポーネントを有する比較的複雑な構造を有する。
【0004】
DE102014108611A1号は、ボトムブラケットシャフトを受容する駆動ハウジングと、駆動ハウジング内部に配置されて牽引手段キャリアと駆動的に接続可能な波動歯車装置と、を有する自転車駆動装置を開示する。この自転車駆動装置もまた、複雑な構造を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】DE102015100676A1号
【文献】EP2724926A1号
【文献】DE102014108611A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、上記の先行技術と比較して改善された駆動ユニットを提供することである。特に、パッケージの最適化およびコンパクトな構造が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、請求項1の特徴を有する駆動ユニットによってこの課題を解決する。この駆動ユニットは、人力駆動式の車両のために、特に自転車またはEPAC(Electrically Power Assisted Cycle/電動アシスト自転車)のために構成される。駆動ユニットは、ハウジングと、ボトムブラケットシャフトと、電気補助駆動装置と、実質的にカップ状の中空軸として設計された出力軸と、を備える。ボトムブラケットシャフトおよび出力軸は、相互に同軸に配置される。出力軸は、ボトムブラケットシャフトを、軸方向に部分的に、径方向外側で包囲する。軸方向に相互に隣接して、出力軸に作用する第1フリーホイールクラッチおよび第2フリーホイールクラッチは、径方向にボトムブラケットシャフトと出力軸との間に配置される。
【0008】
コンパクトな構造に有利であるコンポーネントの同軸配置によって、利用可能な構造空間を良好に利用することができる。したがって、駆動ユニットのアセンブリ、例えば電子ユニットまたは電子回路基板、電気モータ、ギアユニット、出力軸、および/またはフリーホイールクラッチなどを、中央でボトムブラケットシャフトの周囲に配置することができる。
【0009】
フリーホイールクラッチは、出力軸に作用する。したがって、フリーホイールクラッチは、各々、出力側で、すなわちフリーホイールクラッチの出力、例えば外輪を介して、出力軸と機械的に結合させることができる。フリーホイールクラッチを、出力軸の内周面と結合することができる。この内周面は、軸方向に連続するように、特に一定の直径を有するように設計することができる。これとは別に、出力軸には、駆動チェーンと結合するためのチェーンリングまたはチェーンリングキャリアを固定可能である。
【0010】
フリーホイールクラッチの出力、例えばそれら外輪は、例えばフリーホイールクラッチを圧入することによって、出力軸の内周面と回転不能に接続することができる。フリーホイールクラッチは、各々、内輪、外輪、およびそれらの間に位置し、内輪と外輪との間で1つの回転方向のみでトルクを伝達可能にする制御要素を、備えることができる。制御要素は、例えば、クランプローラ、クランプ体、ラチェットなどである。
【0011】
電気補助駆動装置は、電気モータと、それと機械的に結合されたトランスミッションユニット、例えば波動歯車装置と、を備えることができる。波動歯車装置で、コンパクトな設計で高い変速比を達成可能である。波動歯車装置は、ウェーブジェネレータと、外歯(Flexspline:フレックススプライン)を有する変形可能な円筒形のブッシュと、内歯を有する円筒形の外側ブッシュと、を備えることができる。ウェーブジェネレータは、楕円形のディスクとして形成することができる。ディスクは、その上に配置された転がり軸受と、任意選択で変形可能な軌道と、を有する。フレックススプラインは、リング状またはカップ状に設計することができる。フレックススプラインは、通常、波動歯車装置の出力として機能する。
【0012】
電気モータは、外部ロータモータとして設計することができる。すなわち、電気モータのロータを、外部ロータとして設計することができる。ロータは、径方向外側でステータを包囲する。その結果、有利な出力密度と、コンパクトなサイズと、を達成することができる。
【0013】
特にスリーブ状の担持部分および特にディスク状の固定部分を備えるステータキャリアを設けることができる。ステータキャリアには、特に担持部分には、ステータを固定し、および/またはロータを転がり軸受を用いて取り付けることができる。これとは別に、ステータキャリアには、特に固定部分には、電子ユニット、例えば電子回路基板を、固定することができる。ステータキャリアは、固定部分を介して、駆動ユニットのハウジングに固定することができる。
【0014】
有利には、第1フリーホイールクラッチは、ボトムブラケットシャフトを出力軸と結合することができる。したがって、出力軸の人力駆動が、例えば、筋力を用いてボトムブラケットシャフトを作動させることによって、可能である。一方のコンポーネント、例えばボトムブラケットシャフトから、他方のコンポーネント、例えば出力軸にトルクを伝達できる場合に、パワーフローの結合が存在する。
【0015】
好都合にも、第2フリーホイールクラッチは、電気補助駆動装置と出力軸との間のパワーフローを結合できる。したがって、出力軸の電気駆動または補助駆動が可能である。一方のコンポーネント、例えばボトムブラケットシャフトから、他方のコンポーネント、例えば出力軸にトルクを伝達できる場合に、パワーフローの結合が存在する。
【0016】
有利には、電気補助駆動装置は、フレックススプラインを有する波動歯車装置を備えることができる。フレックススプラインは、好適には環状のアダプタを介して、第2フリーホイールクラッチと結合される。フレックススプラインと第2フリーホイールクラッチとの間の中間空間を、アダプタによって径方向にブリッジすることができる。したがって、出力軸を、構造上および製造上の観点から、より簡単に構成できる。アダプタは、任意選択で硬化させることができる。これにより、アダプタの安定性が向上する。上述のように、電気補助駆動装置は、波動歯車装置と結合される電気モータを備えることができる。したがって、電気モータのトルクを、波動歯車装置およびアダプタを用いて、出力軸に伝達することができる。
【0017】
好都合にも、波動歯車装置の出力としてのフレックススプラインは、好適にはスリーブ状の結合部分を備えることができる。結合部分を介して、フレックススプラインおよび環状のアダプタは、接続領域において相互に接続される。接続領域において、嵌合部分および/または接着部分が形成される。これが、フレックススプラインとアダプタとの正確で安定した結合に寄与する。したがって、フレックススプラインと環状のアダプタとの間の嵌合部分を、接続領域の部分において形成することができる(嵌合領域)。接着部分は、接続領域の更なる部分において形成することができる(接着領域)。嵌合領域および接着領域は、各々、例えばアダプタおよび/または結合部分に形成された径方向のショルダによって、相互に分離することができる。したがって、嵌合領域と接着領域の機能面は、相互に分離される。
【0018】
有利には、ボトムブラケットシャフトは、第1シャフト部分と、別個の第2シャフト部分と、を備えることができる。または、ボトムブラケットシャフトは、これらシャフト部分から構成することができる。シャフト部分は、特に可逆的に軸方向に相互に接続可能である。したがって、ボトムブラケットシャフトは、例えば軸方向に分割可能である。駆動ユニットの円筒形のハウジングの内部にアセンブリを簡単に取り付けることができるため、取り付けが容易になる。接続領域において、シャフト部分は、軸方向に突出するカラーを備えることができる。カラーは、接続された状態において、シャフト部分を径方向外側で包囲する。すなわち、シャフト部分は、接続領域において相互に重なり合う。一方のシャフト部品は差込部分を、他方のシャフト部品はそれに対応するソケット部分を備えることができる。
【0019】
好都合にも、2つのシャフト部分は、好適には中央に配置されたねじ接続部を用いて相互に固定可能である。これによって、構造的に簡単で安定した固定が可能である。ねじ接続部は、ただ1つのねじを用いて実現することができる。ねじの中心長手軸は、軸方向に整列させることができる、すなわち、ボトムブラケット軸の中心長手軸に対して平行に、または特に同軸に配向させることができる。ねじを、一方のシャフト部分、例えば第2シャフト部分の貫通孔から挿入し、他方のシャフト部分、例えば第1シャフト部分の内径ねじ孔にねじ留めすることができる。
【0020】
有利には、ボトムブラケットシャフトは、一端が、第1軸受を用いて、ハウジングをフロント側で区画するハウジングカバーに回転可能に取り付けることができる。および/またはボトムブラケットシャフトは、多端が、第2軸受を用いて出力軸に取り付けることができる。これによって、ボトムブラケットシャフトを、信頼性を高め、構造的に有利に取り付ける。
【0021】
好都合にも、ボトムブラケットシャフトは、径方向外側に突出するシャフトショルダを備えることができる。シャフトショルダを介して、ボトムブラケットシャフトが、第1フリーホイールクラッチと結合される。トルク検出用のセンサシステムを設けることができる。センサシステムは、ボトムブラケットシャフトに加えられるトルクを、シャフトショルダで、例えばフロント側で検出する。使用される測定方法にかかわらず、スリーブを用いる古典的なトルク測定を省くことが可能である。そのため、これによって、構造的に有利であり、同時に省スペースの構造が実現される。
【0022】
トルク検出用のセンサシステムは、ボトムブラケットシャフトに、例えばシャフトショルダの端面に取り付け、そこに固定することができる。したがって、センサシステムは、測定点に適用され、軸と共に回転することができる。エネルギーは、電子ユニット、例えば電子回路基板から、摺動接点または誘導によって供給することができる。センサシステムの信号は、無線または摺動接点を介して、電子ユニット、例えば電子回路基板に送信することができる。
【0023】
好都合にも、トルク検出用のセンサシステムは、例えばフロント側でシャフトショルダに取り付けられた1つまたは複数の歪みゲージを備えることができる。これによって、信頼性のあるトルクの検出が可能である。トルクの決定は、すなわちボトムブラケットシャフトに加えられるトルクの決定は、シャフトショルダのボトムブラケットシャフトに対する検出された変形に基づいて、行うことができる。
【0024】
代替的または補足的に、有利には、トルク検出用のセンサシステムは、シャフトショルダに、例えばフロント側に取り付けられた1つまたは複数の磁歪式測定要素を備えることができる。これによっても、トルクを決定することができる。トルクの決定、すなわちボトムブラケットシャフトに加えられるトルクの決定は、シャフトショルダの検出された剪断応力に基づいて、行うことができる。
【0025】
好都合にも、スリーブを設けることができる。スリーブは、ボトムブラケットシャフトに押し付けられる、または押圧される。スリーブは、フレックススプラインの1つまたは複数の転がり軸受のためのソケット部分を備える。1つまたは複数の転がり軸受は、ソケット部分において軸方向に固定可能である、または固定される。したがって、フレックススプラインの軸受を、構造的に簡単な態様で、軸方向に位置決めすることができる。1つまたは複数の転がり軸受は、フラックススプラインの出力側に、例えばフレックススプラインの結合部に配置された転がり軸受である。ソケット部分には、電気ラインを通過させるための、例えば軸方向に延在する貫通部を形成することができる。したがって、駆動ユニットの電子ユニットを、センサシステムと、すなわちセンサシステムの一部である電子ユニットと、簡単に接続することができる。
【0026】
有利には、ボトムブラケットシャフトと、ボトムブラケットシャフトをガイドするステータキャリアと、の間のシール位置のためのシール面は、スリーブを用いて形成することができる。その結果、ステータキャリアにおいて、信頼性の高い分離を形成することができる。これによって、ステータキャリアの一方の側に配置された電子ユニットが、例えば電子回路基板が、ステータキャリアの他方の側に配置された、機械的であり潤滑剤が供給される可能性のあるコンポーネントから、分離される。これによって、電子ユニットへの損傷の危険性を低減することができる。
【0027】
好都合にも、スリーブおよびボトムブラケットシャフトは、ボトムブラケットシャフトとスリーブとの間で径方向に配置されたシール要素、例えばOリングを用いて、シールすることができる。その結果、ボトムブラケットシャフトとスリーブとの間の径方向の毛細管作用を防止することができる。これによって、再度、電子ユニットへの損傷の危険性を低減することができる。
【0028】
有利には、スリーブに、またはスリーブ内に、ラインガイドを、例えばチャネルを形成することができる。ラインガイドに、例えばシャフトショルダに配置されたトルク検出用のセンサシステムと、電子ユニット、例えばステータキャリアに配置された電子回路基板と、の間の電力伝送および/または信号伝送のための電気ラインを配置することができる。その結果、電気エネルギーおよび/または信号を、特に省スペースで、スリーブを通して伝送することができる。
【0029】
好都合にも、電子ユニットとトルク検出用のセンサシステムとの間の電力伝送および/または信号伝送のために、1つまたは複数のスリップリングを、スリーブに取り付けることができる。好適には、電子ユニット、例えば電子回路基板は、1つまたは複数の電気的摺動接点を備えることができる。電気的摺動接点は、各々、スリップリングと相互作用する。これによって、省スペースで取り付けが容易な電力伝送および/または信号伝送が可能である。センサシステムの信号は、例えば無線周波数を介して、スリップリングの1つに変調することができる。
【0030】
本発明は、図面を参照して以下に説明される。同じ要素または同じ機能を有する要素には、同じ参照番号が付与される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図2】
図1の駆動ユニットの出力軸およびフリーホイールクラッチの拡大した部分図である。
【
図3】
図1の駆動ユニットの波動歯車装置のフレックススプラインの拡大した部分図である。
【
図4】
図1の駆動ユニットのボトムブラケットシャフトの断面図である。
【
図5】
図1の駆動ユニットのボトムブラケットシャフトの斜視図である。
【
図6a】
図1の駆動ユニットのボトムブラケットシャフト、スリーブ、およびステータキャリアの正面図である。
【
図6b】
図1の駆動ユニットのボトムブラケットシャフト、スリーブ、およびステータキャリアの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、例えば自転車またはEPACのような人力駆動式の車両のための駆動ユニットを示す。駆動ユニットは、全体として参照数字10で示される。
【0033】
駆動ユニット10は、ハウジング12を備える。ハウジング12には、またはハウジング12内には、駆動ユニット10のコンポーネントが配置される。駆動ユニット10は、筋力による人力駆動のために、ボトムブラケットシャフト14を備える。ボトムブラケットシャフト14は、駆動ユニット10のハウジング12に回転可能に取り付けられる。さらに、駆動ユニット10は、電気モータ18および波動歯車装置20を備える電気助駆動装置16を備える。駆動ユニット10は、さらに、中空軸として設計された実質的にカップ状の出力軸22を備える。
【0034】
ボトムブラケットシャフト14および出力軸22は、相互に同軸に配置される。出力軸22は、ボトムブラケットシャフト14を、軸方向に部分的に、径方向外側で包囲する。軸方向に相互に隣接して、出力軸に作用する第1フリーホイールクラッチ24および第2フリーホイールクラッチ26は、径方向にボトムブラケットシャフト14と出力軸22との間に配置される。
【0035】
フリーホイールクラッチ24、26(
図2)は、出力軸22に機械的に作用する。したがって、フリーホイールクラッチ24、26は、各々、出力側で、すなわちフリーホイールクラッチ24、26の出力、例えば外輪を介して、出力軸22と結合される。フリーホイールクラッチ24、26を、実施例のように、出力軸22の内周面28と結合することができる。内周面28は、軸方向に連続するように、特に一定の直径を有するように設計することができる。出力軸22には、駆動チェーンと結合するためのチェーンリングまたはチェーンリングキャリアを固定可能である(図示せず)。フリーホイールクラッチ24、26の出力、例えばそれらの外輪は、例えば各々のフリーホイールクラッチを圧入することによって、出力軸22の内周面28と回転不能に接続することができる。
【0036】
補助駆動装置16は、電気モータ18と、結合された波動歯車装置20(
図1)と、を備える。波動歯車装置20は、ウェーブジェネレータ30と、外歯(Flexspline:フレックススプライン)を有する変形可能な円筒形の内側ブッシュ32と、内歯を有する円筒形の外側ブッシュ34と、を備える。
【0037】
電気モータ18は、ステータ巻線37を有するステータ36と、ロータ38と、を備える。電気モータ18は、実施例では、外部ロータモータとして設計される。すなわち、電気モータ18のロータ38は、外部ロータとして設計される。ロータ38は、径方向外側でステータ36を包囲する。
【0038】
特にスリーブ状の担持部分42およびディスク状の固定部分44を備えるステータキャリア40が設けられる(
図1、
図6b)。ステータキャリア40には、特に担持部分42には、実施例のように、ステータ36を固定し、および/またはロータ38を転がり軸受46を用いて取り付けることができる。これとは別に、ステータキャリア40には、特に固定部分44には、電子ユニット48、例えば電子回路基板を、固定することができる。ステータキャリア40は、固定部分44を介して、ハウジング12に固定することができる。
【0039】
第1フリーホイールクラッチ24は、ボトムブラケットシャフト14を出力軸22と結合する。その結果、回転方向へボトムブラケットシャフト14によって、トルクを出力軸22に伝達することができる。第2フリーホイールクラッチ26は、電気補助駆動装置16を出力軸22と結合する。その結果、回転方向へ補助駆動装置16によって、トルクを出力軸22に伝達することができる。
【0040】
既に説明したように、電気補助駆動装置16は、フレックススプライン32を有する波動歯車装置20を備える。フレックススプライン32は、好適には環状のアダプタ50を介して、第2フリーホイールクラッチ26と結合される。アダプタ50は、任意選択で硬化させることができる
【0041】
フレックススプライン32は、好適はスリーブ状の結合部分52を備える。結合部分52を介して、フレックススプライン32およびアダプタ50は、接続領域54において相互に接続される(
図2および
図3)。接続領域において、嵌合部分56および/または接着部分58が形成される。フレックススプライン32とアダプタ50との間の嵌合部分56は、接続領域54の部分60において形成される(嵌合領域60)。接着部分58は、接続領域54の更なる部分62において形成される(接着領域62)。嵌合領域60および接着領域62は、実施例のように、各々、アダプタ50および結合部分52に形成された径方向のショルダ64によって、相互に分離することができる。
【0042】
ボトムブラケットシャフト14は、第1シャフト部分66と、別個の第2シャフト部分68と、を備え(
図4)、これらシャフト部分66、68から構成される。シャフト部分66、68は、可逆的に相互に接続可能である。したがって、ボトムブラケットシャフト14は、軸方向に分割可能である。接続領域において、第2シャフト部分68は、軸方向に突出するカラー70を備える。カラー70は、接続された状態において、第1シャフト部分66を径方向外側で包囲する。したがって、シャフト部分66、68は、接続された状態において、接続領域において相互に重なり合う。
【0043】
2つのシャフト部分66、68は、好適には中央に配置されたねじ接続部72を用いて相互に固定可能である。ねじ接続部72を、ただ1つのねじ74を用いて実現することができる。ねじ74の中心長手軸は、軸方向に整列される、すなわち、ボトムブラケットシャフト14の中心長手軸に対して平行に、または特に同軸に配向される。ねじ74を、第2シャフト部分68の貫通孔から挿入し、第1シャフト部分66の内径ねじ孔76にねじ留めすることができる。
【0044】
ボトムブラケットシャフト14は、一端が、第1軸受78(
図1)を用いて、ハウジング12をフロント側で区画するハウジングカバー80に回転可能に取り付けられる。さらに、ボトムブラケットシャフト14は、他端が、第2軸受82を用いて出力軸22に回転可能に取り付けられる。次いで出力軸22には、第3軸受84および第4軸受86が回転可能に取り付けられている。
【0045】
ボトムブラケットシャフト14は、径方向外側に突出するシャフトショルダ88を備える(
図1および
図2)。シャフトショルダ88を介して、ボトムブラケットシャフト14が、第1フリーホイールクラッチ24と結合される。トルク検出用のセンサシステム92が設けられる(
図2および
図6b)。センサシステム92は、ボトムブラケットシャフト14に加えられるトルクを、シャフトショルダ88で、特にフロント側すなわちシャフトショルダ88の端面90で検出する。
【0046】
トルク検出用のセンサシステム92は、ボトムブラケットシャフト14に、例えばシャフトショルダ88の端面90に取り付け、そこに固定することができる。したがって、センサシステム92は、測定点、すなわちシャフトショルダ88の端面90に適用され、ボトムブラケットシャフト14と共に回転することができる。
【0047】
トルク検出用のセンサシステム92は、フロント側でシャフトショルダ88に取り付けられた1つまたは複数の歪みゲージ(図示せず)を備えることができる。トルクの決定は、シャフトショルダ88のボトムブラケットシャフト14に対する検出された変形に基づいて、行うことができる。
【0048】
代替的または補足的に、トルク検出用のセンサシステム92は、シャフトショルダ88のフロント側、すなわち端面90に取り付けられた1つまたは複数の磁歪式測定要素94を備えることができる。トルクの決定は、シャフトショルダ88の検出された剪断応力に基づいて、行うことができる。
【0049】
駆動ユニット10はスリーブ96を備える。スリーブ96は、ボトムブラケットシャフト14に押し付けられる、または押圧される(
図3および
図6b)。スリーブ96は、フレックススプライン32の1つまたは複数の転がり軸受100、102のためのソケット部分98を備える。1つまたは複数の転がり軸受100、102は、ソケット部分98において軸方向に固定可能である、または固定される。転がり軸受100、102は、フレックススプライン32を結合部分52に取り付ける。ソケット部分98には、電気ライン89を通過させるための、軸方向に延在する貫通部87が形成される。ライン89は、駆動ユニット10の電子ユニット48を、センサシステム92の一部である電子ユニットと接続する(図示せず)。
【0050】
ボトムブラケットシャフト14と、ボトムブラケットシャフト14をガイドするステータキャリア40と、の間のシール位置のためのシール面104は、スリーブ96を用いて形成される。
【0051】
スリーブ96およびボトムブラケットシャフト14は、ボトムブラケットシャフト14とスリーブ96との間で径方向に配置されたシール要素106、例えばOリング106を用いて、シールされる。
【0052】
有利には、スリーブ96に、またはスリーブ96内に、ラインガイドを、例えばチャネルを形成することができる(図示せず)。ラインガイドに、トルク検出用のセンサシステム92と電子ユニット48と、の間の電力伝送および/または信号伝送のための電気ライン89を配置することができる(図示せず)。
【0053】
電子ユニット48、特に電子回路基板とトルク検出用のセンサシステム92との間の電力伝送および/または信号伝送のために、1つまたは複数のスリップリング108、110(
図6a、
図6b)が、スリーブ96に取り付けられる。電子ユニット48、例えば電子回路基板は、1つまたは複数の電気的摺動接点112、114を備える。電気的摺動接点112、114は、各々、スリップリング108、110と相互作用する。
【符号の説明】
【0054】
10 駆動ユニット
12 ハウジング
14 ボトムブラケットシャフト
16 補助駆動装置、電気的
18 電気モータ
20 波動歯車装置
22 出力軸
24 第1フリーホイールクラッチ
26 第2フリーホイールクラッチ
28 内周面
30 ウェーブジェネレータ
32 変形可能な内側ブッシュ、フレックススプライン
34 外側ブッシュ
36 ステータ
37 ステータ巻線
38 ロータ
40 ステータキャリア
42 担持部分
44 固定部分
46 転がり軸受
48 電子ユニット、回路基板
50 アダプタ
52 結合部分
54 接続領域
56 嵌合部分
58 接着部分
60 嵌合領域
62 接着領域
64 径方向のショルダ
66 第1シャフト部分
68 第2シャフト部分
70 突出するカラー
72 ねじ接続部
74 ねじ
76 孔
78 第1軸受
80 ハウジングカバー
82 第2軸受
84 第3軸受
86 第4軸受
87 貫通部
88 シャフトショルダ
89 電気ライン
90 端面
92 センサシステム
94 磁歪式測定要素
96 スリーブ
98 ソケット部分
100 転がり軸受
102 転がり軸受
104 シール面
106 シール要素
108 スリップリング
110 スリップリング
112 摺動接点
114 摺動接点