(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】鞍乗り型車両の車体フレーム
(51)【国際特許分類】
B62K 11/10 20060101AFI20241218BHJP
【FI】
B62K11/10
(21)【出願番号】P 2022561289
(86)(22)【出願日】2021-08-25
(86)【国際出願番号】 JP2021031171
(87)【国際公開番号】W WO2022102205
(87)【国際公開日】2022-05-19
【審査請求日】2023-04-17
(31)【優先権主張番号】P 2020187414
(32)【優先日】2020-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 潤子
(72)【発明者】
【氏名】中川 英亮
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 和啓
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 謙二郎
(72)【発明者】
【氏名】柳 健慈
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 則昭
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 慶介
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 千夏
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-186814(JP,A)
【文献】特開2015-166197(JP,A)
【文献】国際公開第2005/063559(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/181128(WO,A1)
【文献】特開2022-38807(JP,A)
【文献】特開2022-76820(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドパイプ(15)と、前記ヘッドパイプ(15)から下方に延びるメインフレーム(17)と、前記メインフレーム(17)から後方に延びるロアフレーム(18)と、前記ロアフレーム(18)から後上方に延びるリアフレーム(19)とを備え、前記リアフレーム(19)が、前記ロアフレーム(18)から上方に延びる上方延出部(19a)と、前記上方延出部(19a)の上部から後方に延びる後方延出部(19b)とを備え、前記上方延出部(19a)の後部(60)にガセット(20)が設けられる鞍乗り型車両の車体フレームにおいて、
前記ロアフレーム(18)は、前記ロアフレーム(18)と前記上方延出部(19a)との接続部(57)よりも後方に延びる延長部(18b)を備え、
前記ガセット(20)は、前記後部(60)に沿って上下に延び、前記ガセット(20)の下端部(20a)は、前記延長部(18b)に接続され、前記ガセット(20)の上端部(20b)は、前記後方延出部(19b)に接続され、
前記ロアフレーム(18)は、前後に延びるパイプ材(25)であり、前記延長部(18b)は、前記パイプ材(25)が前記接続部(57)よりも後方に延長された部分であ
り、
パワーユニット(12)を揺動可能に支持するリンク部材(38)が、前記ガセット(20)に揺動自在に接続され、
前記リンク部材(38)に当接して前記リンク部材(38)の揺動範囲を規制するストッパーとしての後壁(63)が、前記ガセット(20)に設けられることを特徴とする鞍乗り型車両の車体フレーム。
【請求項2】
前記ガセット(20)の前記下端部(20a)の下縁(61c,62c)は前後に延び、前記ガセット(20)は、前記下縁(61c,62c)の後端から下方に突出する突出部(61d,62d)を備え、
前記ガセット(20)は、前記下縁(61c,62c)及び前記突出部(61d,62d)が、前記延長部(18b)の側面に溶接されることを特徴とする請求項1記載の鞍乗り型車両の車体フレーム。
【請求項3】
前記下縁(61c,62c)は、車両側面視で、前記ロアフレーム(18)の軸線(18a)よりも上方に位置し、前記突出部(61d,62d)は、車両側面視で、少なくとも前記軸線(18a)の位置まで下方に延びることを特徴とする請求項2記載の鞍乗り型車両の車体フレーム。
【請求項4】
前記ガセット(20)は、前記後部(60)に沿って上下に延びる左右一対の側壁(61,62)と、左右の前記側壁(61,62)の後端を車幅方向に接続する
前記後壁(63)とを備え、
前記側壁(61,62)の前縁(61a,62a)は前記後部(60)に接続され、
前記ガセット(20)の前記下端部(20a)は、前記側壁(61,62)の下縁(61c,62c)を介し前記延長部(18b)に接合され、前記ガセット(20)の前記上端部(20b)は、前記側壁(61,62)の上縁(61b,62b)を介し前記後方延出部(19b)に接合されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の鞍乗り型車両の車体フレーム。
【請求項5】
前記ガセット(20)の前記後壁(63)は、前記ガセット(20)後方に開放する開口部(70)と前記開口部(70)の上下に設けられる上側後壁(68)と下側後壁(69)とを備え、
前記リンク部材(38)は、接続部(81)と前記接続部(81)の後部から上方及び下方に延びるアーム部材(84)とを有し、
前記接続部(81)が前記開口部(70)から前記ガセット(20)の内部空間に挿入され揺動可能に支持されると共に、
前記アーム部材(84)が前記上側後壁(68)と前記下側後壁(69)に後方から夫々対向することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の鞍乗り型車両の車体フレーム。
【請求項6】
同乗者用のピリオンステップ(43)が前記ガセット(20)に設けられることを特徴とする請求項1から
5のいずれかに記載の鞍乗り型車両の車体フレーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗り型車両の車体フレームに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヘッドパイプと、ヘッドパイプから下方に延びるメインフレームと、メインフレームから後方に延びるロアフレームと、ロアフレームから後上方に延びるリアフレームとを備える鞍乗り型車両が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1では、リアフレームの下面にガセットとしての補強板を設けることで、リアフレームの剛性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鞍乗り型車両の車体フレームでは、ガセットによって効率良く車体フレームの剛性を向上することが望まれる。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、鞍乗り型車両の車体フレームにおいて、ガセットによって効率良く車体フレームの剛性を向上できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この明細書には、2020年11月10日に出願された日本国特許出願・特願2020-187414の全ての内容が含まれる。
鞍乗り型車両の車体フレームは、ヘッドパイプと、前記ヘッドパイプから下方に延びるメインフレームと、前記メインフレームから後方に延びるロアフレームと、前記ロアフレームから後上方に延びるリアフレームとを備え、前記リアフレームが、前記ロアフレームから上方に延びる上方延出部と、前記上方延出部の上部から後方に延びる後方延出部とを備え、前記上方延出部の後部にガセットが設けられる鞍乗り型車両の車体フレームにおいて、前記ロアフレームは、前記ロアフレームと前記上方延出部との接続部よりも後方に延びる延長部を備え、前記ガセットは、前記後部に沿って上下に延び、前記ガセットの下端部は、前記延長部に接続され、前記ガセットの上端部は、前記後方延出部に接続されることを特徴とする。
【0006】
また、上述の構成において、前記ロアフレームは、前後に延びるパイプ材であり、前記延長部は、前記パイプ材が前記接続部よりも後方に延長された部分であっても良い。
また、上述の構成において、前記ガセットの前記下端部の下縁は前後に延び、前記ガセットは、前記下縁の後端から下方に突出する突出部を備え、前記ガセットは、前記下縁及び前記突出部が、前記延長部の側面に溶接されても良い。
【0007】
さらに、上述の構成において、前記下縁は、車両側面視で、前記ロアフレームの軸線よりも上方に位置し、前記突出部は、車両側面視で、少なくとも前記軸線の位置まで下方に延びても良い。
また、上述の構成において、前記ガセットは、前記後部に沿って上下に延びる左右一対の側壁と、左右の前記側壁の後端を車幅方向に接続する後壁とを備え、前記側壁の前縁は前記後部に接続され、前記ガセットの前記下端部は、前記側壁の下縁を介し前記延長部に接合され、前記ガセットの前記上端部は、前記側壁の上縁を介し前記後方延出部に接合されても良い。
【0008】
また、上述の構成において、パワーユニットを揺動可能に支持するリンク部材が、前記ガセットに揺動自在に接続されても良い。
また、上述の構成において、前記リンク部材に当接して前記リンク部材の揺動範囲を規制するストッパー部が、前記ガセットに設けられても良い。
【0009】
また、上述の構成において、同乗者用のピリオンステップが前記ガセットに設けられても良い。
【発明の効果】
【0010】
鞍乗り型車両の車体フレームは、ヘッドパイプと、ヘッドパイプから下方に延びるメインフレームと、メインフレームから後方に延びるロアフレームと、ロアフレームから後上方に延びるリアフレームとを備え、リアフレームが、ロアフレームから上方に延びる上方延出部と、上方延出部の上部から後方に延びる後方延出部とを備え、上方延出部の後部にガセットが設けられ、ロアフレームは、ロアフレームと上方延出部との接続部よりも後方に延びる延長部を備え、ガセットは、後部に沿って上下に延び、ガセットの下端部は、延長部に接続され、ガセットの上端部は、後方延出部に接続される。
この構成によれば、ロアフレームの延長部とリアフレームの後方延出部とが、リアフレームの上方延出部の後部に設けられるガセットによって接続されるため、車体フレームの剛性を効率良く向上させることができる。
【0011】
また、上述の構成において、ロアフレームは、前後に延びるパイプ材であり、延長部は、パイプ材が接続部よりも後方に延長された部分であっても良い。
この構成によれば、延長部は、パイプ材であるロアフレームが接続部よりも後方に延長された部分であるため、延長部を簡単な構造で設けることができる。このため、簡単な構造で車体フレームの剛性を向上できる。
また、上述の構成において、ガセットの下端部の下縁は前後に延び、ガセットは、下縁の後端から下方に突出する突出部を備え、ガセットは、下縁及び突出部が、延長部の側面に溶接される。
この構成によれば、ガセットは、下縁に加えて、下縁の後端から下方に突出する突出部が延長部の側面に溶接されるため、ガセットと延長部との溶接部の応力集中を効果的に緩和できる。
【0012】
さらに、上述の構成において、下縁は、車両側面視で、ロアフレームの軸線よりも上方に位置し、突出部は、車両側面視で、少なくとも軸線の位置まで下方に延びても良い。
この構成によれば、突出部がロアフレームの少なくとも軸線の位置まで下方に延びるため、突出部を上下の広い範囲に設けることができ、効果的に応力集中を緩和できる。
また、上述の構成において、ガセットは、後部に沿って上下に延びる左右一対の側壁と、左右の側壁の後端を車幅方向に接続する後壁とを備え、ガセットの下端部は、側壁の下縁を介し延長部に接合され、ガセットの上端部は、側壁の上縁を介し後方延出部に接合されても良い。
この構成によれば、ガセットが、左右一対の側壁及び後壁を備えるため、ガセットの剛性が高くなる。このため、車体フレームの剛性をガセットによって効果的に向上させることができる。
【0013】
また、上述の構成において、パワーユニットを揺動可能に支持するリンク部材が、ガセットに揺動自在に接続されても良い。
この構成によれば、リンク部材を、ガセットを利用する簡単な構造で車体フレームに接続できる。
また、上述の構成において、リンク部材に当接してリンク部材の揺動範囲を規制するストッパー部が、ガセットに設けられても良い。
この構成によれば、リンク部材の揺動範囲を規制するストッパー部を、ガセットを利用する簡単な構造で設けることができる。
【0014】
また、上述の構成において、同乗者用のピリオンステップがガセットに設けられても良い。
この構成によれば、同乗者用のピリオンステップを、ガセットを利用する簡単な構造で設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る自動二輪車の左側面図である。
【
図2】
図2は、車体カバー等が取り外されて車体フレームが露出した状態の自動二輪車の左側面図である。
【
図3】
図3は、車体フレームを前方から見た正面図である。
【
図4】
図4は、車体フレームにおいてガセットが設けられた部分の左側面図である。
【
図5】
図5は、車体フレームにおいてガセットが設けられた部分を後方側から見た斜視図である。
【
図7】
図7は、左側のガセットを前方側から見た図である。
【
図9】
図9は、リンク部材を前方側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。なお、説明中、前後左右および上下といった方向の記載は、特に記載がなければ車体に対する方向と同一とする。また、各図に示す符号FRは車体前方を示し、符号UPは車体上方を示し、符号LHは車体左方を示す。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態に係る自動二輪車1の左側面図である。
自動二輪車1は、車体フレーム10と、前輪2を操舵自在に支持するフロントフォーク11と、車体フレーム10の後部に支持されるパワーユニット12と、後輪3と、乗員が跨るようにして着座するシート13とを備えるスクーター型の鞍乗り型車両である。
自動二輪車1は、車体フレーム10等の車体を覆う車体カバー14を備える。
【0018】
図2は、車体カバー14等が取り外されて車体フレーム10が露出した状態の自動二輪車1の左側面図である。
図3は、車体フレーム10を前方から見た正面図である。
車体フレーム10は、車体フレーム10の前端部に設けられるヘッドパイプ15と、ヘッドパイプ15の後面に接続される前部ガセット16と、前部ガセット16から下方に延びる左右一対のメインフレーム17とを備える。なお、前部ガセット16は、メインフレーム17の一部と見なされても良い。
また、車体フレーム10は、メインフレーム17の下端部から後方に延びる左右一対のロアフレーム18と、ロアフレーム18の後端部から後上方に延びる左右一対のリアフレーム19とを備える。
詳細には、各リアフレーム19は、ロアフレーム18の後端部から上方に延びる上方延出部19aと、上方延出部19aの上部から後方に延びる後方延出部19bとを備える。上方延出部19a及び後方延出部19bは、共に後上がりに傾斜しているが、後方延出部19bは、上方延出部19aよりも水平に近い。
さらに、車体フレーム10は、リアフレーム19の上方延出部19aに設けられるガセット20を備える。
【0019】
また、車体フレームは、前部ガセット16の下方で左右のメインフレーム17を車幅方向(左右方向)に接続する第1クロスメンバー21aと、第1クロスメンバー21aの下方で左右のメインフレーム17を車幅方向に接続する第2クロスメンバー21bと、左右のロアフレーム18を車幅方向に接続する第3クロスメンバー21cと、左右のリアフレーム19の前部を車幅方向に接続する第4クロスメンバー21dと、左右のリアフレーム19の後部を車幅方向に接続する第5クロスメンバー21eとを備える。
【0020】
フロントフォーク11は、ヘッドパイプ15によって左右に操舵自在に支持される。
フロントフォーク11は、ヘッドパイプ15に回動自在に支持されるステアリングシャフト(不図示)と、上記ステアリングシャフトの下端部に固定されるブリッジ部材22と、ブリッジ部材22に支持され、ブリッジ部材22から下方に延びる左右一対のフォークチューブ23とを備える。
前輪2は、左右のフォークチューブ23の下端部間に渡される車軸2aに支持される。
操舵用のハンドル24は、フロントフォーク11の上端部に取り付けられる。
【0021】
パワーユニット12は、リアフレーム19の下方を車両前後方向に延びる。
パワーユニット12は、後輪3を揺動自在に支持するアーム部30と後輪3を駆動するエンジン31とが一体に設けられるユニットスイングエンジンである。
エンジン31は、内燃機関である。エンジン31は、クランク軸(不図示)を収納するクランクケース部32と、クランクケース部32の前面から前方に延出するシリンダー部33とを備える。上記クランク軸に接続されるピストン(不図示)は、シリンダー部33内を往復運動する。シリンダー部33は、クランクケース部32から、左右のリアフレーム19の前部の間を通ってリアフレーム19の前方に延出する。
【0022】
アーム部30は、クランクケース部32における左右方向の一方側(左側)の側面部から後方に延出する。
後輪3は、アーム部30の後端部に設けられる車軸3aに支持される。
アーム部30は、車幅の中央に位置する後輪3に対し左側にオフセットされている。すなわち、アーム部30は、クランクケース部32から、後輪3の左側方を通って後方に延びる。
【0023】
アーム部30は中空に形成される。アーム部30内には、プーリー及びVベルトを用いた無段変速機(不図示)が収納される。エンジン31の駆動力は、上記無段変速機を介して後輪3に伝達される。
アーム部30の上面部には、エアクリーナーボックス35が取り付けられる。エアクリーナーボックス35に取り込まれた外気は、エアクリーナーボックス35によって浄化された後、エンジン31に供給される。
【0024】
自動二輪車1は、車体フレーム10の後部に対しパワーユニット12を揺動自在に連結するリンク部材38(
図2)を備える。
リンク部材38は、車幅方向に延びる第1揺動軸39を介して車体フレーム10のガセット20に接続される。
また、リンク部材38は、車幅方向に延びる第2揺動軸40を介してクランクケース部32の上部に接続される。
パワーユニット12は、リンク部材38の第1揺動軸39及び第2揺動軸40を中心に上下に揺動する。
アーム部30の後端部と車体フレーム10の後端部との間には、リアクッション41が掛け渡される。
【0025】
図1を参照し、シート13は、リアフレーム19の後方延出部19bに沿うように配置され、後方延出部19bによって下方から支持される。
シート13の前部に着座する運転者が足を乗せるステップフロア42は、シート13の前下方に位置し、ロアフレーム18によって下方から支持される。
同乗者は、シート13の後部に着座する。同乗者が足を乗せる左右一対のピリオンステップ43は、ガセット20に設けられる。
【0026】
車体カバー14は、ハンドル24を覆うアッパーカバー44と、ヘッドパイプ15等の車体フレーム10の前部を前方から覆うフロントカバー45と、ヘッドパイプ15等の車体フレーム10の前部を後方から覆うインナーカバー46と、ロアフレーム18を側方から覆うロアカバー47と、シート13の下方の車体を側方から覆うリアサイドカバー48とを備える。
フロントフェンダー49は、フロントフォーク11に取り付けられる。
【0027】
図2を参照し、連続した1本のパイプ材25を長手方向の中間部で屈曲させることで、左側のメインフレーム17及び左側のロアフレーム18が一体に形成される。すなわち、左側のメインフレーム17及び左側のロアフレーム18は、1本のパイプ材25からなる。
右側のメインフレーム17及び右側のロアフレーム18についても同様に1本のパイプ材25からなる。メインフレーム17及びロアフレーム18は左右一対であるため、パイプ材25は2本設けられる。
パイプ材25は、断面円形である。
ロアフレーム18は、車両側面視では、やや後ろ上がりの姿勢で直線状に前後に延びる。ロアフレーム18の軸線18aは、やや後ろ上がり姿勢で前後に延びる。
【0028】
図4は、車体フレーム10においてガセット20が設けられた部分の左側面図である。
図5は、車体フレーム10においてガセット20が設けられた部分を後方側から見た斜視図である。
図4及び
図5では、リンク部材38も図示されている。
図2、
図4、及び
図5を参照し、左右の各リアフレーム19は、連続した1本のパイプ材50を長手方向の中間部で屈曲させることで形成される。すなわち、1本のパイプ材50を曲げることで上方延出部19a及び後方延出部19bが形成される。
リアフレーム19のパイプ材50は、断面円形である。リアフレーム19を構成するパイプ材50の肉厚は、メインフレーム17及びロアフレーム18を構成するパイプ材の肉厚よりも小さい。
【0029】
リアフレーム19の上方延出部19aは、水平よりも鉛直に近い姿勢でロアフレーム18の後端部から後上方に延びる。
上方延出部19aの下端部51は、ロアフレーム18の上面に沿うように前方に屈曲している。
また、下端部51は、下端部51の軸方向視において下端部51の部分におけるパイプ材50の下半部を切り欠くようにして形成される半円状である。
【0030】
下端部51の下縁51a,51bは、車両側面視で、ロアフレーム18の軸線18aに沿うように前後に延びる。下縁51a,51bは、上記半円状の部分の下縁であり、互いに車幅方向に離れて一対設けられる。
下縁51a,51bは、車両側面視で、ロアフレーム18の軸線18aよりも上方に位置する。すなわち、下縁51a,51bはロアフレーム18の上部に接続される。
上方延出部19aは、下縁51a,51bに沿って前後に延びる溶接ビード52によってロアフレーム18に接合される。
詳細には、一方の下縁51aは、ロアフレーム18の上部の車幅方向の外側面に接合され、他方の下縁51bは、ロアフレーム18の上部の車幅方向の内側面に接合される。
【0031】
リアフレーム19の後方延出部19bは、鉛直よりも水平に近い姿勢で上方延出部19aの上端から後方に延びる。
後方延出部19bは、上方延出部19aの上端から円弧状に後方に屈曲する屈曲部55と、屈曲部55の後端から後上方に延出する本体部56とを備える。
【0032】
上方延出部19aの下端部51は、ロアフレーム18と上方延出部19aとを接続する接続部57である。
ロアフレーム18は、接続部57よりも後方に延びる延長部18bを備える。
延長部18bは、ロアフレーム18を構成するパイプ材25が、そのまま接続部57よりも後方に延長された部分である。
【0033】
ガセット20は、左右の各上方延出部19aの後部60に設けられる。
ガセット20は、後部60に沿って後傾した姿勢で上下に延びる。ガセット20の下端部20aは、ロアフレーム18の延長部18bに接続される。ガセット20の上端部20bは、リアフレーム19の後方延出部19bに接続される。
すなわち、ガセット20は、延長部18bと後方延出部19bとを上下に接続する。
【0034】
図6は、左側のガセット20の左側面図である。
図7は、左側のガセット20を前方側から見た図である。
図8は、
図4のVIII-VIII断面図である。なお、左右のガセット20は、左右略対称であるため、ここでは、主に左側のガセット20を参照して説明する。
図4~
図8を参照し、ガセット20は、上方延出部19aの後部60に沿って上下に延びる左右一対の側壁61,62と、側壁61,62の後端を車幅方向に接続する後壁63とを備える。
【0035】
側壁61は、車幅方向外側の側壁であり、板厚方向を車幅方向に指向させて配置される。
側壁62は、車幅方向内側の側壁であり、側壁61に対向して、側壁61に対し車幅方向内側に配置される。
側壁61の前縁61a及び側壁62の前縁62aは、車両側面視で、上方延出部19aの軸線19a1に沿って後傾した姿勢で上下に延びる。
側壁61は、前縁61aに沿う溶接ビード64によって、後部60における車幅方向外側の面に接合される。
側壁62は、前縁62aに沿う溶接ビード65(
図5)によって、後部60における車幅方向内側の面に接合される。
【0036】
後壁63は、上方延出部19aの後部60を後方から覆う。後壁63は、延長部18bと後方延出部19bとの間を上下に延びる。後壁63は、車両側面視で、上方延出部19aの軸線19a1に沿って後傾した姿勢で上下に延びる。
詳細には、後壁63は、ガセット20の上部に設けられる上側後壁68と、上側後壁68の下方に設けられる下側後壁69とを備える。
後壁63は、後方に開放する開口部70を、上側後壁68と下側後壁69との間に備える。
上側後壁68は、上側後壁68の上部を後方延出部19bの下面に沿うように切り欠いた上側切り欠き部68aを備える。
下側後壁69は、下側後壁69の下部を延長部18bの上面に沿うように切り欠いた下側切り欠き部69aを備える。
【0037】
側壁61及び側壁62は、延長部18bと後方延出部19bとの間を上下に延びる。
側壁61の上縁61b及び側壁62の上縁62bは、車両側面視で、後方延出部19bの軸線19b1に沿って後上方に延びる。
側壁61の上縁61bは、上縁61bに沿う溶接ビード71によって、屈曲部55の下面部及び本体部56の下面部に接合される。
側壁62の上縁62bは、上縁62bに沿う溶接ビード72(
図5)によって、屈曲部55の下面部及び本体部56の下面部に接合される。
すなわち、ガセット20の上端部20bは、上縁61b及び上縁62bを介し後方延出部19bの前端部の下面部に接合される。
【0038】
側壁61の下縁61c及び側壁62の下縁62c(
図5)は、車両側面視で、ロアフレーム18の軸線18aに沿って前後に延びる。下縁61c及び下縁62cは、車両側面視で、ロアフレーム18の軸線18aよりも上方に位置する。下縁61c及び下縁62cは、ガセット20の下端部20aの下縁である。
また、側壁61は、下縁61cの後端から下方に突出する突出部61dを備える。突出部61dは、車両側面視で、上方延出部19aの軸線19a1に沿うように後傾している。
突出部61dは、車両側面視で、下縁61cから、ロアフレーム18の軸線18aを跨いで軸線18aの下方の位置まで延びる。突出部61dは、車両側面視で少なくとも軸線18aの位置まで下方に延びる。
【0039】
側壁62は、下縁62cの後端から下方に突出する突出部62dを備える。突出部62dは、車両側面視で、上方延出部19aの軸線19a1に沿うように後傾している。
突出部62dは、車両側面視で、下縁62cから、ロアフレーム18の軸線18aを跨いで軸線18aの下方の位置まで延びる。突出部62dは、車両側面視で少なくとも軸線18aの位置まで下方に延びる。
【0040】
側壁61は、下縁61c及び突出部61dの前縁に沿う溶接ビード73によって、ロアフレーム18の延長部18bの車幅方向外側の側面に接合される。
側壁62は、下縁62c及び突出部62dの前縁に沿う溶接ビード74(
図5)によって、ロアフレーム18の延長部18bの車幅方向内側の側面に接合される。
【0041】
図5及び
図8を参照し、ガセット20の後壁63の下側切り欠き部69aの周縁部の下部は、延長部18bの後端面の一部を後方から覆う。
下側切り欠き部69aの上端は、延長部18bの後端面の上部に対し上方に離間している。ガセット20の内部空間の下端部は、下側切り欠き部69aから後方の外側に連通する。
【0042】
図4及び
図6を参照し、側壁61には、孔部76が設けられる。
ピリオンステップ43は、側壁61に取り付けられるステップステー43aと、ステップステー43aに支持されるステップ43b(
図1)とを備える。
ステップステー43aは、側壁61から後方に延びる棒状である。ステップステー43aは、孔部76に挿入され、側壁61に接合される。
【0043】
ガセット20は、リンク部材38が接続されるリンク接続部77を備える。リンク接続部77は、側壁61及び側壁62を車幅方向に貫通する孔部である。リンク接続部77は、ステップステー43aの上方に設けられる。
リンク部材38は、リンク接続部77に挿通される第1揺動軸39(
図2)を介してガセット20に接続される。第1揺動軸39は、左右一対設けられ、左右のガセット20にそれぞれ取り付けられる。
【0044】
図9は、リンク部材38を前方側から見た図である。
図2、
図4、
図5及び
図9を参照し、リンク部材38は、第1揺動軸39(
図2)を介して左側のガセット20に接続される第1接続部81aと、第1揺動軸39を介して右側のガセット20に接続される第1接続部81bとを備える。
また、リンク部材38は、一方側(左側)の第1接続部81aと他方側(右側)の第1接続部81bとを左右方向に接続する棒状の左右接続部材82と、クランクケース部32の上部に接続される第2接続部83とを備える。
【0045】
第1接続部81aの前部は、左側のガセット20の開口部70からガセット20の内部空間に挿入され、第1揺動軸39に支持される。
第1接続部81bの前部は、右側のガセット20の開口部70からガセット20の内部空間に挿入され、第1揺動軸39に支持される。
【0046】
左右接続部材82の一端は、左側の第1接続部81aの後部に接続される。左右接続部材82の他端は、右側の第1接続部81bの後部に接続される。
第2接続部83は、車幅方向に延びる筒状部材である。第2接続部83は、車幅方向において第1接続部81aと第1接続部81bとの間の位置に配置され、左右接続部材82の下面に結合されている。第2接続部83は、第1接続部81a,81bの下方に配置される。
リンク部材38は、クランクケース部32の上部及び第2接続部83の筒内に挿通される第2揺動軸40(
図2)によってクランクケース部32に接続される。
【0047】
さらに、リンク部材38は、左側の第1接続部81aの後部から上方及び下方に延びるアーム部材84を備える。
アーム部材84は、左側のガセット20の後壁63の真後ろに配置される。アーム部材84の上端部には、上側後壁68に後方から対向する上側当接部84aが設けられる。アーム部材84の下端部には、下側後壁69に後方から対向する下側当接部84bが設けられる。
【0048】
リンク部材38は、パワーユニット12の揺動に伴って、第1揺動軸39を中心に揺動する。
リンク部材38の揺動範囲は、第1接続部81aと一体に揺動するアーム部材84がガセット20の後壁63に後方から当接することで規制される。すなわち、後壁63は、リンク部材38に当接してリンク部材38の揺動範囲を規制するストッパー部である。
詳細には、パワーユニット12が上方の限界位置まで揺動すると、上側当接部84aが上側後壁68に当接する。パワーユニット12が下方の限界位置まで揺動すると、下側当接部84bが下側後壁69に当接する。
【0049】
図4及び
図5を参照し、車体フレーム10では、ロアフレーム18の延長部18bとリアフレーム19の後方延出部19bとが、ガセット20によって上下に接続されるため、車体フレーム10の剛性を効率良く向上させることができる。このため、リアフレーム19を構成するパイプ材50の肉厚をメインフレーム17及びロアフレーム18を構成するパイプ材25の肉厚より小さくして軽量化を図った構成であっても、リアフレーム19の剛性を高くできる。また、ガセット20を設けた部分の重量は大きくなるが、ガセット20は自動二輪車1の車両前後方向の中央部寄りに位置するため、自動二輪車1の走行性能に対する重量増の影響を小さくできる。
また、ガセット20は、下端部20aが後方延出部19bの上部に接続されており、後方延出部19bよりも下方には延出しない。このため、例えば、ガセットをロアフレームの下端面まで設ける構成に比して、ガセット20を上下にコンパクトに設けることができる。
【0050】
以上説明したように、本発明を適用した実施の形態によれば、自動二輪車1の車体フレーム10は、ヘッドパイプ15と、ヘッドパイプ15から下方に延びるメインフレーム17と、メインフレーム17から後方に延びるロアフレーム18と、ロアフレーム18から後上方に延びるリアフレーム19とを備え、リアフレーム19が、ロアフレーム18から上方に延びる上方延出部19aと、上方延出部19aの上部から後方に延びる後方延出部19bとを備え、上方延出部19aの後部60にガセット20が設けられ、ロアフレーム18は、ロアフレーム18と上方延出部19aとの接続部57よりも後方に延びる延長部18bを備え、ガセット20は、後部60に沿って上下に延び、ガセット20の下端部20aは、延長部18bに接続され、ガセット20の上端部20bは、後方延出部19bに接続される。
この構成によれば、ロアフレーム18の延長部18bとリアフレーム19の後方延出部19bとが、リアフレーム19の上方延出部19aの後部60に設けられるガセット20によって接続されるため、車体フレーム10の剛性を効率良く向上させることができる。
【0051】
また、ロアフレーム18は、前後に延びるパイプ材25であり、延長部18bは、パイプ材25が接続部57よりも後方に延長された部分である。
この構成によれば、延長部18bは、パイプ材25であるロアフレーム18が接続部57よりも後方に延長された部分であるため、延長部18bを簡単な構造で設けることができる。このため、簡単な構造で車体フレーム10の剛性を向上できる。
また、ガセット20の下端部20aの下縁61c,62cは前後に延び、ガセット20は、下縁61c,62cの後端から下方に突出する突出部61d,62dを備え、ガセット20は、下縁61c,62c及び突出部61d,62dが、延長部18bの側面に溶接される。
この構成によれば、ガセット20は、下縁61c,62cに加えて、下縁61c,62cの後端から下方に突出する突出部61d,62dが延長部18bの側面に溶接される。このため、応力を下縁61c,62c及び突出部61d,62dに分散でき、ガセット20と延長部18bとの溶接部の応力集中を効果的に緩和できる。
【0052】
さらに、下縁61c,62cは、車両側面視で、ロアフレーム18の軸線18aよりも上方に位置し、突出部61d,62dは、車両側面視で、少なくとも軸線18aの位置まで下方に延びる。
この構成によれば、突出部61d,62dがロアフレーム18の少なくとも軸線18aの位置まで下方に延びるため、突出部61d,62dを上下の広い範囲に設けることができ、効果的に応力集中を緩和できる。
また、ガセット20は、後部60に沿って上下に延びる左右一対の側壁61,62と、左右の側壁61,62の後端を車幅方向に接続する後壁63とを備え、ガセット20の下端部20aは、側壁61,62の下縁61c,62cを介し延長部18bに接合され、ガセット20の上端部20bは、側壁61,62の上縁61b,62bを介し後方延出部19bに接合される。
この構成によれば、ガセット20が、左右一対の側壁61,62及び後壁63を備えるため、ガセット20の剛性が高くなる。このため、車体フレーム10の剛性をガセット20によって効果的に向上させることができる。
【0053】
また、パワーユニット12を揺動可能に支持するリンク部材38が、ガセット20に揺動自在に接続される。
この構成によれば、リンク部材38を、ガセット20を利用する簡単な構造で車体フレーム10に接続できる。
また、リンク部材38に当接してリンク部材38の揺動範囲を規制するストッパー部としての後壁63が、ガセット20に設けられる。
この構成によれば、リンク部材38の揺動範囲を規制するストッパー部を、ガセット20を利用する簡単な構造で設けることができる。
【0054】
また、同乗者用のピリオンステップ43がガセット20に設けられる。
この構成によれば、同乗者用のピリオンステップ43を、ガセット20を利用する簡単な構造で設けることができる。
【0055】
なお、上記実施の形態は本発明を適用した一態様を示すものであって、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。
上記実施の形態では、自動二輪車1を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明は、前輪または後輪を2つ備える3輪の鞍乗り型車両及び4輪以上を備える鞍乗り型車両に適用可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 自動二輪車(鞍乗り型車両)
10 車体フレーム
12 パワーユニット
15 ヘッドパイプ
17 メインフレーム
18 ロアフレーム
18a 軸線
18b 延長部
19 リアフレーム
19a 上方延出部
19b 後方延出部
20 ガセット
20a 下端部
20b 上端部
25 パイプ材
38 リンク部材
43 ピリオンステップ
57 接続部
60 後部
61,62 側壁
61a,62a 前縁
61b,62b 上縁
61c,62c 下縁(下端部の下縁、側壁の下縁)
61d,62d 突出部
63 後壁(ストッパー部)