IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三井化学株式会社の特許一覧

特許7606535樹脂組成物、粘着剤、積層体、表面保護フィルム、表面保護フィルムの製造方法および面を保護する方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】樹脂組成物、粘着剤、積層体、表面保護フィルム、表面保護フィルムの製造方法および面を保護する方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20241218BHJP
   C08L 23/20 20060101ALI20241218BHJP
   C08F 210/14 20060101ALI20241218BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20241218BHJP
   B29C 48/305 20190101ALI20241218BHJP
   B29C 48/21 20190101ALI20241218BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20241218BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20241218BHJP
   C09J 123/20 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
C08L101/00
C08L23/20
C08F210/14
B32B27/00 M
B29C48/305
B29C48/21
C09J7/38
C09J201/00
C09J123/20
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022563671
(86)(22)【出願日】2021-10-29
(86)【国際出願番号】 JP2021040125
(87)【国際公開番号】W WO2022107578
(87)【国際公開日】2022-05-27
【審査請求日】2023-04-21
(31)【優先権主張番号】P 2020190965
(32)【優先日】2020-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植草 貴行
(72)【発明者】
【氏名】安井 基泰
(72)【発明者】
【氏名】深川 克正
【審査官】常見 優
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/012274(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/099876(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/047321(WO,A1)
【文献】特開2014-208797(JP,A)
【文献】特開2015-214658(JP,A)
【文献】特開2021-014531(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/16
C08K 3/00- 13/08
C08F 6/00-246/00
C08F301/00
C09J 1/00-201/10
B32B 1/00- 43/00
B29C 48/00- 48/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記要件(a)および(b)を満たす4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)と、
下記要件(c)および(d)を満たす4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-2)と、
前記共重合体(A-1)および前記共重合体(A-2)以外の熱可塑性樹脂(B)とを含有し、
前記共重合体(A-1)、前記共重合体(A-2)および前記熱可塑性樹脂(B)の合計100質量%に対し、前記共重合体(A-1)および前記共重合体(A-2)の合計含有量が2~50質量%であり、前記熱可塑性樹脂(B)の含有量が50~98質量%である、
樹脂組成物(X):
(a)4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位(i)および4-メチル-1-ペンテン以外の炭素数2~20のα-オレフィンから導かれる構成単位(ii)の合計を100モル%とした時、構成単位(i)の含有量が65~80モル%であり、構成単位(ii)の含有量が20~35モル%である
(b)示差走査熱量計で観測される融点が110℃未満であるか観測されない
(c)4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位(i)および4-メチル-1-ペンテン以外の炭素数2~20のα-オレフィンから導かれる構成単位(ii)の合計を100モル%とした時、構成単位(i)の含有量が80~90モル%であり、構成単位(ii)の含有量が10~20モル%である
(d)示差走査熱量計で測定される融点が110~160℃である。
【請求項2】
-100~150℃の温度範囲で、10rad/sの周波数で動的粘弾性測定を行って得られるtanδピークとして、ピーク温度が0℃未満である第1ピークおよびピーク温度が0℃以上である第2ピークを有する、請求項1に記載の樹脂組成物(X)。
【請求項3】
前記共重合体(A-1)および前記共重合体(A-2)の合計含有量100質量%に対し、前記共重合体(A-1)の含有量が1~99質量%であり、前記共重合体(A-2)の含有量が99~1質量%である、請求項1または2に記載の樹脂組成物(X)。
【請求項4】
前記共重合体(A-1)および前記共重合体(A-2)のうち少なくとも一方の共重合体が、プロピレン由来の構成単位を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物(X)。
【請求項5】
前記共重合体(A-1)および前記共重合体(A-2)のうち、少なくとも一方の共重合体の構成単位(ii)がプロピレン由来の構成単位である、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物(X)。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂(B)がオレフィン系エラストマー(B1)である、請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物(X)。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂(B)がスチレン系エラストマー(B2)である、請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物(X)。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の樹脂組成物(X)を含む粘着剤。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の樹脂組成物(X)または請求項8に記載の粘着剤から形成された粘着層(L1)と、
基材層(L2)とを有する積層体。
【請求項10】
前記基材層(L2)がポリプロピレン層である、請求項9に記載の積層体。
【請求項11】
請求項1~7のいずれか1項に記載の樹脂組成物(X)もしくは請求項8に記載の粘着剤から形成された粘着層、または、請求項9もしくは10に記載の積層体を含む、表面保護フィルム。
【請求項12】
請求項11に記載の表面保護フィルムをTダイフィルム成形法によって形成する工程を含む、表面保護フィルムの製造方法。
【請求項13】
請求項11に記載の表面保護フィルムまたは請求項12に記載の製造方法で製造した表面保護フィルムを用いて、表面凹凸高さが0.1~300μmである面を保護する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、特定の樹脂組成物、該樹脂組成物を含む粘着剤、該樹脂組成物または該粘着剤から形成された粘着層を有する積層体、該粘着層または該積層体を含む表面保護フィルム、該表面保護フィルムの製造方法、あるいは、表面凹凸高さが所定の範囲にある面を保護する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム、鋼、ステンレスなどからなる金属製部材、これらの金属部材に塗料を塗装した部材、ガラス製部材、合成樹脂製部材などの被着体を保護するために、粘着層と基材層とを積層した表面保護フィルムが使用されている。この表面保護フィルムは、被着体の成形加工時または成形加工後の所定の時期に、被着体から剥離される。
【0003】
この表面保護フィルムは、被着体に粘着して容易に接着させることができ、被着体の運搬時などでは容易に剥離せず、被着体の加工時または加工後に、被着体から剥離したい時には容易に被着体から剥離可能であることが要求される。このため、該表面保護フィルムには、被着体に対する適度な接着性、表面保護フィルム自体が被着体面に傷をつけない程度の適度な柔軟性、被着体の加工成形に応じた伸び特性などの機械特性が適度であること、耐熱性を有することなどの各種の特性が要求される。
【0004】
また、表面保護フィルムが、偏光板、位相差板、導光板、反射板、プリズム板等のように、表面に凹凸を有する被着体の表面の保護に使用される場合、被着体と粘着層との接触面積が小さくなるため、粘着層には、このような表面に凹凸を有する被着体に対しても、適度な粘着力を有することが求められている。
【0005】
さらに、用途によっては良好な外観、透明性および色調を有することが必要とされ、ゲル、フィッシュアイ等のフィルム欠陥がないことが要求される。さらに、表面保護フィルムは、大量に使用され、かつ廃棄されるものであるため、安価に製造できるものであることが要求される。
【0006】
従来、前記のような粘着層としては、プロピレン系重合体からなる粘着層(例:特許文献1)、スチレン系重合体と粘着性付与樹脂とを含む粘着層(例:特許文献2および3)、ジエン系ブロック共重合体を含む粘着層(例:特許文献4)、スチレン系エラストマーとプロピレン系単独重合体とを含む粘着層(例:特許文献5)、重合体ブロックと脂肪酸アミド化合物とを含む粘着層(例:特許文献6)、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体と熱可塑性樹脂とを含む粘着層(例:特許文献7)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2008/099865号
【文献】特開2007-126512号公報
【文献】特開2012-255071号公報
【文献】特開2008-274213号公報
【文献】特開2011-126169号公報
【文献】特開2013-121989号公報
【文献】国際公開第2015/012274号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
被着体に表面保護フィルムを貼付した後に、時間の経過や高温に曝されるなどによって、粘着強度の増加、いわゆる粘着昂進することがあるが、表面保護フィルムを剥離する時には、糊残り等が起こらずに剥離できることが求められるため、このような粘着昂進の程度が小さい(低粘着昂進性)ことも求められている。このような粘着昂進は、特に表面に凹凸を有する被着体の場合、その昂進の程度が大きくなることが分かった。
【0009】
しかしながら、従来、被着体に十分に接着し、かつ、被着体から剥離する時には剥離可能であるという、被着体に対し適度な接着性を有することと、低粘着昂進性とを両立した粘着層は得られていない。
例えば、特許文献1および7に記載の粘着層には、低粘着昂進性の点で改良の余地があった。特許文献2および3に記載の粘着層は、特に、表面に凹凸を有する被着体に対する粘着強度が不十分であり、また、べたつきやブロッキングが生じやすく、押出成形性が悪いために生産性に難があった。特許文献4および5に記載の粘着層は、特に、表面に凹凸を有する被着体に対する粘着強度が不十分であった。また、特許文献6に記載の粘着層は、該粘着層を被着体から剥離する際に、被着体への汚染性等が懸念され、剥離性の点で改良の余地があった。
【0010】
本発明の一実施形態は、被着体に対し適度な接着性を有し、かつ、低粘着昂進性を有する粘着層を形成可能な樹脂組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、特定の特徴を有する複数の4-メチル-1-ペンテン共重合体と熱可塑性樹脂とを含有する樹脂組成物によれば、被着体に対し適度な接着性を有し、加熱・加圧(例えば、80℃、2kgf)前後での粘着強度の増加(粘着昂進)が生じにくい粘着層を形成できることを見出した。すなわち、前記粘着層は、適度な粘着強度を有する上、外部環境が変化しても粘着強度が大幅に増加せず良好な粘着安定性を有することを見出し、本発明の完成に至った。
【0012】
本発明の構成例は以下の通りである。
【0013】
[1] 下記要件(a)および(b)を満たす4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)と、
下記要件(c)および(d)を満たす4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-2)と、
前記共重合体(A-1)および前記共重合体(A-2)以外の熱可塑性樹脂(B)とを含有し、
前記共重合体(A-1)、前記共重合体(A-2)および前記熱可塑性樹脂(B)の合計100質量%に対し、前記共重合体(A-1)および前記共重合体(A-2)の合計含有量が2~50質量%であり、前記熱可塑性樹脂(B)の含有量が50~98質量%である、
樹脂組成物(X)。
(a)4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位(i)および炭素数2~20のα-オレフィン(ただし、4-メチル-1-ペンテンを除く)から導かれる構成単位(ii)の合計を100モル%とした時、構成単位(i)の含有量が65~80モル%であり、構成単位(ii)の含有量が20~35モル%である
(b)示差走査熱量計(DSC)で観測される融点が110℃未満であるか観測されない
(c)4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位(i)および炭素数2~20のα-オレフィン(ただし、4-メチル-1-ペンテンを除く)から導かれる構成単位(ii)の合計を100モル%とした時、構成単位(i)の含有量が80~90モル%であり、構成単位(ii)の含有量が10~20モル%である
(d)示差走査熱量計(DSC)で測定される融点が110~160℃である。
【0014】
[2] -100~150℃の温度範囲で、10rad/s(1.6Hz)の周波数で動的粘弾性測定を行って得られるtanδピークとして、ピーク温度が0℃未満である第1ピークおよびピーク温度が0℃以上である第2ピークを有する、[1]に記載の樹脂組成物(X)。
【0015】
[3] 前記共重合体(A-1)および前記共重合体(A-2)の合計含有量100質量%に対し、前記共重合体(A-1)の含有量が1~99質量%であり、前記共重合体(A-2)の含有量が99~1質量%である、[1]または[2]に記載の樹脂組成物(X)。
【0016】
[4] 前記共重合体(A-1)および前記共重合体(A-2)のうち少なくとも一方の共重合体が、プロピレン由来の構成単位を含む、[1]~[3]のいずれか1つに記載の樹脂組成物(X)。
【0017】
[5] 前記共重合体(A-1)および前記共重合体(A-2)のうち、少なくとも一方の共重合体の構成単位(ii)がプロピレン由来の構成単位である、[1]~[4]のいずれか1つに記載の樹脂組成物(X)。
【0018】
[6] 前記熱可塑性樹脂(B)がオレフィン系エラストマー(B1)である、[1]~[5]のいずれか1つに記載の樹脂組成物(X)。
【0019】
[7] 前記熱可塑性樹脂(B)がスチレン系エラストマー(B2)である、[1]~[5]のいずれか1つに記載の樹脂組成物(X)。
【0020】
[8] [1]~[7]のいずれか1つに記載の樹脂組成物(X)を含む粘着剤。
[9] [1]~[7]のいずれか1つに記載の樹脂組成物(X)または[8]に記載の粘着剤から形成された粘着層(L1)と、
基材層(L2)とを有する積層体。
[10] 前記基材層(L2)がポリプロピレン層である、[9]に記載の積層体。
【0021】
[11] [1]~[7]のいずれか1つに記載の樹脂組成物(X)もしくは[8]に記載の粘着剤から形成された粘着層、または、[9]もしくは[10]に記載の積層体を含む、表面保護フィルム。
【0022】
[12] [11]に記載の表面保護フィルムをTダイフィルム成形法によって形成する工程を含む、表面保護フィルムの製造方法。
【0023】
[13] [11]に記載の表面保護フィルムまたは[12]に記載の製造方法で製造した表面保護フィルムを用いて、表面凹凸高さが0.1~300μmである面を保護する方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明の一実施形態によれば、被着体に対し適度な接着性を有するとともに、加熱・加圧後でも低粘着昂進性を有する粘着層、該粘着層を含む積層体および表面保護フィルムを容易に形成することができる。
また、本発明の一実施形態によれば、表面に凹凸を有する被着体であってもその表面を十分に保護することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明するが、本発明は下記の実施形態の構成に限定されるものではない。なお、本発明において、数値範囲を規定する「~」は、その下限値以上、上限値以下を意味する。
【0026】
≪樹脂組成物(X)≫
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物(X)は、特定の物性を有する4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)および特定の物性を有する4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-2)と、当該共重合体(A-1)および共重合体(A-2)以外の熱可塑性樹脂(B)とを特定の割合で含有する。
なお、前記4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)および4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-2)を、それぞれ単に「共重合体(A-1)」および「共重合体(A-2)」という場合があり、前記共重合体(A-1)および共重合体(A-2)以外の熱可塑性樹脂(B)を単に「熱可塑性樹脂(B)」という場合がある。
【0027】
樹脂組成物(X)中の共重合体(A-1)および共重合体(A-2)の含有量の合計は、共重合体(A-1)、共重合体(A-2)および前記熱可塑性樹脂(B)の合計100質量%に対し、2~50質量%であり、上限値は、好ましくは45質量%、より好ましくは40質量%であり、下限値は、好ましくは5質量%、より好ましくは6質量%、さらに好ましくは8質量%である。
樹脂組成物(X)中の熱可塑性樹脂(B)の含有量は、共重合体(A-1)、共重合体(A-2)および熱可塑性樹脂(B)の合計100質量%に対し、50~98質量%であり、下限値は、好ましくは55質量%、より好ましくは60質量%であり、上限値は、好ましくは95質量%、より好ましくは94質量%、さらに好ましくは92質量%である。
共重合体(A-1)および共重合体(A-2)の含有量の合計および熱可塑性樹脂(B)の含有量が前記範囲にあると、被着体に対し適度な接着性を有し、かつ、低粘着昂進性を有する粘着層を容易に得ることができる。
【0028】
共重合体(A-1)および共重合体(A-2)の含有量の合計100質量%に対する、共重合体(A-1)の含有量の上限値は、好ましくは99質量%、より好ましくは90質量%、さらに好ましくは85質量%、特に好ましくは80質量%であり、下限値は、好ましくは1質量%、より好ましくは10質量%、さらに好ましくは15質量%、特に好ましくは20質量%である。
共重合体(A-1)および共重合体(A-2)の含有量の合計100質量%に対する、共重合体(A-2)の含有量の上限値は、好ましくは99質量%、より好ましくは90質量%、さらに好ましくは85質量%、特に好ましくは80質量%であり、下限値は、好ましくは1質量%、より好ましくは10質量%、さらに好ましくは15質量%、特に好ましくは20質量%である。
共重合体(A-1)の含有量および共重合体(A-2)の含有量が前記範囲にあると、被着体に対し適度な接着性を有し、かつ、低粘着昂進性を有する粘着層を容易に得ることができる。
樹脂組成物(X)は、共重合体(A-1)と共重合体(A-2)のどちらか一方を含むのではなく、共重合体(A-1)および共重合体(A-2)の両方を含むため、低粘着昂進性を有する粘着層を容易に得ることができ、特に、表面に凹凸を有する被着体に対しても適度な接着性を有し、加熱・加圧後でも低粘着昂進性を有する粘着層を容易に得ることができる。
【0029】
樹脂組成物(X)は、下記要件(x)および(y)を満たすことが好ましい。
【0030】
・要件(x)
10rad/s(1.6Hz)の周波数で、-100~150℃の温度範囲において、樹脂組成物(X)の動的粘弾性測定を行い、各温度での損失弾性率と貯蔵弾性率との比(損失正接、tanδ)を温度の関数としてプロットした場合、少なくとも第1ピークと第2ピークとが存在することが好ましい。
ここで、第1ピークは、0℃未満の範囲にあるピークのことをいい、好ましくは-60℃以上、より好ましくは-50℃以上、さらに好ましくは-45℃以上にあり、好ましくは0℃未満、より好ましくは-5℃以下、さらに好ましくは-10℃以下にある。
第1ピークは、熱可塑性樹脂(B)に起因するtanδのピークである。第1ピークは、2つ以上存在していてもよい。つまり、0℃未満の範囲に、tanδの極大値が2つ以上あってもよい。
また、第2ピークは、0℃以上の範囲にあるピークのことをいい、好ましくは0℃以上、より好ましくは5℃以上、さらに好ましくは10℃以上にあり、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下にある。
第2ピークは、共重合体(A-1)および/または共重合体(A-2)に起因するピークである。第2ピークは、2つ以上存在していてもよい。つまり、0℃以上の範囲に、tanδの極大値が2つ以上あってもよい。また、共重合体(A-1)由来のtanδピークと共重合体(A-2)由来のtanδピークとが重なっている場合、第2ピークは、1本のブロードなピークとして観測されることがある。
前記温度範囲に第1および第2ピークを有すると、樹脂組成物(X)を含む粘着層の粘着強度をより高めることができる。
なお、測定条件等の詳細は、後述する実施例の欄に記載のとおりである。
【0031】
・要件(y)
10rad/s(1.6Hz)の周波数で、-100~150℃の温度範囲において、樹脂組成物(X)の動的粘弾性測定を行い、各温度でのtanδを温度の関数としてプロットした場合、0℃以上に存在するtanδのピークの値(第2ピークの最大値)は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.15以上であり、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.5以下である。
0℃以上に存在するtanδのピーク値が前記範囲にあると、室温での粘着強度に優れる粘着層を容易に得ることができる。
なお、測定条件等の詳細は、後述する実施例の欄に記載のとおりである。
【0032】
〔4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)〕
前記共重合体(A-1)は下記要件(a)および(b)を満たす。
樹脂組成物(X)に用いる共重合体(A-1)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0033】
・要件(a)
共重合体(A-1)は、4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位(i)および炭素数2~20のα-オレフィン(ただし、4-メチル-1-ペンテンを除く)から導かれる構成単位(ii)を含み、構成単位(i)および構成単位(ii)の合計100モル%に対し、構成単位(i)を65~80モル%含み、構成単位(ii)を20~35モル%含む。
構成単位(i)および構成単位(ii)の合計100モル%に対する構成単位(i)の含有量の下限値は、好ましくは68モル%であり、上限値は、好ましくは78モル%、より好ましくは75モル%である。
構成単位(i)の含有量が前記下限値以上であると、凹凸追従性に優れる粘着層を容易に得ることができ、構成単位(i)の含有量が前記上限値以下であると、適度な柔軟性を有する粘着層を容易に得ることができる。
【0034】
共重合体(A-1)は、4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位(i)および炭素数2~20のα-オレフィン(ただし、4-メチル-1-ペンテンを除く)から導かれる構成単位(ii)を含み、共重合体(A-1)を構成する全構成単位を100モル%とすると、構成単位(i)の含有量の下限値は、好ましくは60モル%、より好ましくは65モル%、さらに好ましくは68モル%であり、構成単位(i)の含有量の上限値は、好ましくは80モル%、より好ましくは78モル%、さらに好ましくは75モル%である。
構成単位(i)の含有量が前記下限値以上であると、凹凸追従性に優れる粘着層を容易に得ることができ、構成単位(i)の含有量が前記上限値以下であると、適度な柔軟性を有する粘着層を容易に得ることができる。
【0035】
共重合体(A-1)は、4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位(i)および炭素数2~20のα-オレフィン(ただし、4-メチル-1-ペンテンを除く)から導かれる構成単位(ii)を含み、共重合体(A-1)を構成する全構成単位を100モル%とすると、構成単位(ii)の含有量の下限値は、好ましくは20モル%、より好ましくは22モル%であり、構成単位(ii)の含有量の上限値は、好ましくは35モル%、より好ましくは32モル%である。
構成単位(ii)の含有量が前記上限値以下であると、凹凸追従性に優れる粘着層を容易に得ることができ、構成単位(ii)の含有量が前記下限値以上であると、適度な柔軟性を有する粘着層を容易に得ることができる。
【0036】
前記構成単位(ii)を導くα-オレフィンとしては、直鎖状のα-オレフィンであってもよく、分岐状のα-オレフィンであってもよい。
直鎖状のα-オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンが挙げられる。直鎖状のα-オレフィンの炭素数は、好ましくは2~15、より好ましくは2~10である。
分岐状のα-オレフィンとしては、例えば、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセンが挙げられる。分岐状のα-オレフィンの炭素数は、好ましくは5~20、より好ましくは5~15である。
これらの中でもエチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンが好ましく、エチレン、プロピレンがより好ましく、下記要件(e)および(f)を満たす共重合体を容易に得ることができるため、プロピレンが特に好ましい。
共重合体(A-1)に含まれる構成単位(ii)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0037】
共重合体(A-1)の一例としては、構成単位(i)および構成単位(ii)のみからなる共重合体が挙げられる。この場合、構成単位(i)と構成単位(ii)との合計は100モル%である。
【0038】
共重合体(A-1)は、本発明の目的を損なわない程度の少量、具体的には10モル%以下、好ましくは5モル%以下、より好ましくは3モル%以下であれば、構成単位(i)および構成単位(ii)の他に、4-メチル-1-ペンテンおよび炭素数2~20のα-オレフィン以外の他の重合性モノマーから導かれる構成単位をさらに含んでいてもよい。
共重合体(A-1)に含まれ得る他の重合性モノマーから導かれる構成単位は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0039】
このような他の重合性モノマーの好ましい具体例としては、スチレン、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサン、ビニルノルボルナン等の環状構造を有するビニル化合物;酢酸ビニル等のビニルエステル類;無水マレイン酸等の不飽和有機酸またはその誘導体;ブタジエン、イソプレン、ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン等の共役ジエン類;1,4-ヘキサジエン、1,6-オクタジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、6-メチル-1,5-ヘプタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ジシクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、5-ビニル-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、6-クロロメチル-5-イソプロペニル-2-ノルボルネン、2,3-ジイソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-エチリデン-3-イソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-プロペニル-2,2-ノルボルナジエン等の非共役ポリエン類が挙げられる。
【0040】
ここで、共重合体(A-1)が、他の重合性モノマーから導かれる構成単位を含む場合、構成単位(ii)と他の重合性モノマーから導かれる構成単位との合計含有量が、前記構成単位(ii)の含有量の範囲を満たすことが好ましい。この場合、構成単位(i)と構成単位(ii)と他の重合性モノマーから導かれる構成単位との合計は100モル%である。
【0041】
なお、「Xから導かれる構成単位」(ここで、Xは、炭素-炭素二重結合を有する化合物)というときは、Xをモノマーとして得られる(共)重合体における、Xに対応する構成単位を意味する。例えば、「4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位」というときは、4-メチル-1-ペンテンをモノマーとして得られる4-メチル-1-ペンテン(共)重合体における、4-メチル-1-ペンテンに対応する構成単位を意味する。
【0042】
・要件(b)
共重合体(A-1)は、示差走査熱量計(DSC)によって観測される融点(Tm)が110℃未満であるか、または、示差走査熱量計(DSC)によって融点(Tm)が観測されず、好ましくは融点(Tm)が観測されない。
共重合体(A-1)が要件(b)を満たすことによって、得られる粘着層の粘着強度を調整することが可能となる。
なお、測定条件等の詳細は、後述する実施例の欄に記載のとおりである。
【0043】
共重合体(A-1)の好ましい形態は、更に下記要件(e)~(i)から選ばれる1以上、より好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上、特に好ましくは全てを満たす。
【0044】
・要件(e)
10rad/s(1.6Hz)の周波数で、-100~150℃の温度範囲において、共重合体(A-1)の動的粘弾性測定を行い、各温度でのtanδを温度の関数としてプロットした場合、共重合体(A-1)のガラス転移温度に起因するtanδのピーク温度は、好ましくは15℃以上、より好ましくは20℃以上、さらに好ましくは28℃以上である。また、共重合体(A-1)のガラス転移温度に起因するtanδのピーク温度は、好ましくは35℃以下、より好ましくは33℃以下である。
tanδのピーク温度が前記範囲にあると、得られる粘着層を室温で柔軟化することができ、室温での粘着強度に優れる粘着層を容易に得ることができる。
なお、測定条件等の詳細は、後述する実施例の欄に記載のとおりである。
【0045】
・要件(f)
10rad/s(1.6Hz)の周波数で、-100~150℃の温度範囲において、共重合体(A-1)の動的粘弾性測定を行い、各温度でのtanδを温度の関数としてプロットした場合、tanδのピーク値(最大値)は、好ましくは1.5以上、より好ましくは1.7以上、さらに好ましくは2.0以上であり、好ましくは5.0以下、より好ましくは4.0以下、さらに好ましくは3.0以下である。
tanδのピーク値が前記範囲にあると、室温での粘着強度に優れる粘着層を容易に得ることができる。
なお、測定条件等の詳細は、後述する実施例の欄に記載のとおりである。
【0046】
・要件(g)
共重合体(A-1)の、デカリン中135℃で測定した極限粘度[η]は、好ましくは0.1dl/g以上、より好ましくは0.5dl/g以上であり、好ましくは5.0dl/g以下、より好ましくは4.0dl/g以下、さらに好ましくは3.5dl/g以下である。
前記極限粘度[η]が前記範囲にあると、粘着層を形成する際の成形加工性が良好になる。
なお、測定条件等の詳細は、後述する実施例の欄に記載のとおりである。前記極限粘度[η]は、重合中に水素を用いると分子量を制御でき、極限粘度[η]を調整することができる。
【0047】
・要件(h)
共重合体(A-1)の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)とポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)との割合(分子量分布;Mw/Mn)は、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.2以上、さらに好ましくは1.5以上であり、好ましくは3.5以下、より好ましくは3.0以下、さらに好ましくは2.8以下である。
前記Mw/Mnが前記上限を超えると、組成分布に由来する低分子量、低立体規則性ポリマーの影響により、得られる粘着層の表面がべたつきやすくなり、また被着体を汚染しやすくなる。
なお、測定条件等の詳細は、後述する実施例の欄に記載のとおりである。後述する触媒を用いれば、前記要件(g)で示される極限粘度[η]の範囲内において、要件(h)を満たす前記共重合体(A-1)を容易に得ることができる。
【0048】
また、共重合体(A-1)の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算で、好ましくは500以上、より好ましくは1,000以上であり、好ましくは10,000,000以下、より好ましくは5,000,000以下、さらに好ましくは2,500,000以下である。
共重合体(A-1)の前記Mwが前記範囲にあると、該共重合体(A-1)は、樹脂組成物や粘着剤中において分散性に優れるため好ましい。
なお、測定条件等の詳細は、後述する実施例の欄に記載のとおりである。
【0049】
・要件(i)
共重合体(A-1)の密度(ASTM D 1505に基づいて測定)は、好ましくは830kg/m3以上であり、好ましくは870kg/m3以下、より好ましくは865kg/m3以下、さらに好ましくは855kg/m3以下である。
密度が前記範囲内にある共重合体(A-1)を用いることで、軽量な粘着層を形成することができるため好ましい。
なお、測定条件等の詳細は、後述する実施例の欄に記載のとおりである。密度は共重合体(A-1)のコモノマー組成比によって適宜調整することができる。
【0050】
〔4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-2)〕
共重合体(A-2)は、以下の要件(c)および(d)を満たす。
樹脂組成物(X)に用いる共重合体(A-2)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0051】
・要件(c)
共重合体(A-2)は、4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位(i)および炭素数2~20のα-オレフィン(ただし、4-メチル-1-ペンテンを除く)から導かれる構成単位(ii)を含み、構成単位(i)および構成単位(ii)の合計100モル%に対し、構成単位(i)を80~90モル%含み、構成単位(ii)を10~20モル%含む。
構成単位(i)および構成単位(ii)の合計100モル%に対する構成単位(i)の含有量の下限値は、好ましくは82モル%、より好ましくは84モル%であり、上限値は、好ましくは88モル%、より好ましくは86モル%である。
構成単位(i)の含有量が前記下限値以上であると、凹凸追従性に優れる粘着層を容易に得ることができ、構成単位(i)の含有量が前記上限値以下であると、適度な柔軟性を有する粘着層を容易に得ることができる。
【0052】
共重合体(A-2)は、4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位(i)および炭素数2~20のα-オレフィン(ただし、4-メチル-1-ペンテンを除く)から導かれる構成単位(ii)を含み、共重合体(A-2)を構成する全構成単位を100モル%とすると、構成単位(i)の含有量の下限値は、好ましくは80モル%、より好ましくは82モル%、さらに好ましくは84モル%であり、構成単位(i)の含有量の上限値は、好ましくは90モル%、より好ましくは88モル%、さらに好ましくは86モル%である。
構成単位(i)の含有量が前記下限値以上であると、凹凸追従性に優れる粘着層を容易に得ることができ、構成単位(i)の含有量が前記上限値以下であると、適度な柔軟性を有する粘着層を容易に得ることができる。
【0053】
共重合体(A-2)は、4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位(i)および炭素数2~20のα-オレフィン(ただし、4-メチル-1-ペンテンを除く)から導かれる構成単位(ii)を含み、共重合体(A-2)を構成する全構成単位を100モル%とすると、構成単位(ii)の含有量の下限値は、好ましくは10モル%、より好ましくは12モル%、さらに好ましくは14モル%であり、構成単位(ii)の含有量の上限値は、好ましくは20モル%、より好ましくは18モル%、さらに好ましくは16モル%である。
構成単位(ii)の含有量が前記上限値以下であると、凹凸追従性に優れる粘着層を容易に得ることができ、構成単位(ii)の含有量が前記下限値以上であると、適度な柔軟性を有する粘着層を容易に得ることができる。
【0054】
前記構成単位(ii)を導くα-オレフィンとしては、共重合体(A-1)の欄で例示したα-オレフィンと同様のオレフィンが挙げられ、好ましいオレフィンも同様である。
共重合体(A-2)に含まれる構成単位(ii)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0055】
共重合体(A-2)の一例としては、構成単位(i)および構成単位(ii)のみからなる共重合体が挙げられる。この場合、構成単位(i)と構成単位(ii)との合計は100モル%である。
【0056】
共重合体(A-2)は、本発明の目的を損なわない程度の少量、具体的には10モル%以下、好ましくは5モル%以下、より好ましくは3モル%以下であれば、構成単位(i)および構成単位(ii)の他に、4-メチル-1-ペンテンおよび炭素数2~20のα-オレフィン以外の他の重合性モノマーから導かれる構成単位をさらに含んでいてもよい。
共重合体(A-2)に含まれ得る他の重合性モノマーから導かれる構成単位は、1種でもよく、2種以上でもよい。
前記他の重合性モノマーとしては、共重合体(A-1)の欄で例示した他の重合性モノマーと同様のモノマーが挙げられる。
【0057】
ここで、共重合体(A-2)が、他の重合性モノマーから導かれる構成単位を含む場合、構成単位(ii)と他の重合性モノマーから導かれる構成単位との合計含有量が、前記構成単位(ii)の含有量の範囲を満たすことが好ましい。この場合、構成単位(i)と構成単位(ii)と他の重合性モノマーから導かれる構成単位との合計は100モル%である。
【0058】
・要件(d)
共重合体(A-2)は、示差走査熱量計(DSC)で測定される融点(Tm)が110~160℃であり、好ましくは120℃以上、より好ましくは125℃以上であり、好ましくは150℃以下、より好ましくは140℃以下である。
融点(Tm)が前記範囲にある共重合体(A-2)を用いると、粘着昂進を抑制可能な粘着層を容易に形成することができる。
なお、測定条件等の詳細は、後述する実施例の欄に記載のとおりである。
【0059】
共重合体(A-2)の好ましい形態は、共重合体(A-1)で記載した要件(g)~(i)および下記要件(j)~(k)から選ばれる1以上、より好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上、特に好ましくは全てを満たす。
【0060】
・要件(j)
10rad/s(1.6Hz)の周波数で、-100~150℃の温度範囲において、共重合体(A-2)の動的粘弾性測定を行い、各温度でのtanδを温度の関数としてプロットした場合、共重合体(A-2)のガラス転移温度に起因するtanδのピーク温度は、好ましくは35℃以上、より好ましくは38℃以上であり、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下、さらに好ましくは45℃以下である。
tanδのピーク温度が前記範囲にある共重合体(A-2)を用いると、得られる樹脂組成物(X)は、室温で適度な硬さを持ちつつ、高いtanδの値(すなわち、高い粘性)を有し、結果として粘着層の粘着強度を調整することが容易となる。
なお、測定条件等の詳細は、後述する実施例の欄に記載のとおりである。
【0061】
・要件(k)
10rad/s(1.6Hz)の周波数で、-100~150℃の温度範囲において、共重合体(A-2)の動的粘弾性測定を行い、各温度でのtanδを温度の関数としてプロットした場合、tanδのピーク値(最大値)は、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.7以上、さらに好ましくは0.9以上であり、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.6以下、さらに好ましくは1.5以下である。
tanδのピーク値が前記範囲にあると、粘着層の粘着強度を調整することが容易となる。
なお、測定条件等の詳細は、後述する実施例の欄に記載のとおりである。
【0062】
[共重合体(A-1)および共重合体(A-2)の製造方法]
共重合体(A-1)および共重合体(A-2)の製造方法は特に限定されず、例えば、4-メチル-1-ペンテンと、α-オレフィンとを適当な重合触媒存在下で重合することにより製造することができる。
【0063】
前記重合触媒としては、従来公知の触媒、例えば、マグネシウム担持型チタン触媒、国際公開第01/53369号、国際公開第01/27124号、特開平3-193796号公報、特開平02-41303号公報、国際公開第2011/055803号、国際公開第2014/050817号等に記載のメタロセン触媒などが好適に用いられる。
【0064】
〔熱可塑性樹脂(B)〕
前記熱可塑性樹脂(B)は、前記共重合体(A-1)および共重合体(A-2)以外の熱可塑性樹脂である限り特に制限はない。熱可塑性樹脂(B)を用いることで、樹脂組成物(X)に良好な粘着性、成形性、タック性等を付与することができる。
樹脂組成物(X)に用いる熱可塑性樹脂(B)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0065】
熱可塑性樹脂(B)としては、例えば、前記共重合体(A-1)および共重合体(A-2)以外の、オレフィン系エラストマー(B1);スチレン系エラストマー(B2);熱可塑性ポリウレタン;塩化ビニル樹脂;塩化ビニリデン樹脂;アクリル樹脂;エチレン・酢酸ビニル共重合体;エチレン・アクリレート共重合体;アイオノマー;エチレン・ビニルアルコール共重合体;ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0066】
これらの熱可塑性樹脂(B)のうち、オレフィン系エラストマー(B1)およびスチレン系エラストマー(B2)から選ばれる少なくとも1種が好適に用いられる。また、被着体が凹凸面である場合は、粘着強度が高い粘着層を容易に得ることができるため、スチレン系エラストマー(B2)が特に好ましい。ここで、熱可塑性樹脂(B)として、スチレン系エラストマー(B2)を用いる場合、熱可塑性樹脂(B)は、スチレン系エラストマー(B2)のみからなることがより好ましい。
【0067】
[オレフィン系エラストマー(B1)]
オレフィン系エラストマー(B1)の第1の態様としては、エチレンと炭素数3~20のα-オレフィンとの共重合体、エチレンと炭素数3~20のα-オレフィンと環状オレフィンとの共重合体、スチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等の各種ビニル化合物をコモノマーとするエチレン系共重合体、プロピレンと炭素数4~20のα-オレフィンとの共重合体、プロピレンと炭素数4~20のα-オレフィンと環状オレフィンとの共重合体が挙げられる。さらに、オレフィン系エラストマー(B1)の第1の態様には、ポリエチレンおよびポリプロピレンからなる群より選ばれる少なくとも1つと、ポリブタジエン、水素添加ポリブタジエン、ポリイソプレン、水素添加ポリイソプレン、ポリイソブチレン、および、α-オレフィンからなる群より選ばれる少なくとも1つとの共重合体が挙げられる。共重合の形態は、ブロック共重合、グラフト共重合のいずれでもよいが、ポリエチレンおよびポリプロピレンからなる群より選ばれる1つと、α-オレフィンからなる共重合体の場合のみ、共重合の形態はランダム共重合であってもよい。前記α-オレフィンとは、分子鎖の片末端に二重結合を有するオレフィンのことであり、1-ブテンや1-オクテンなどが好ましく用いられる。
【0068】
オレフィン系エラストマー(B1)の第1の態様として、例えば、硬質部となるポリプロピレン等の結晶性の高いポリマーを形成するポリオレフィンブロックと、軟質部となる非晶性を示すモノマー共重合体とのブロック共重合体が挙げられる。具体的には、オレフィン(結晶性)・エチレン・ブチレン・オレフィンブロック共重合体、ポリプロピレン・ポリオレフィン(非晶性)・ポリプロピレンブロック共重合体等を例示することができる。
市販品としては、例えば、JSR(株)製のDYNARON(ダイナロン)、三井化学(株)製のタフマー、ノティオ、ダウ・ケミカル社製のENGAGE、VERSIFY、エクソンモービル・ケミカル社製のVistamaxxが挙げられる。
【0069】
オレフィン系エラストマー(B1)の第2の態様としては、ポリエチレンおよびポリプロピレンからなる群より選ばれる少なくとも1つと、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体、エチレン・ブテン共重合体、および、水素添加スチレンブタジエンからなる群より選ばれる少なくとも1つとのブレンド物が挙げられる。
前記エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体、エチレン・ブテン共重合体は、部分的または完全に架橋されていてもよい。
【0070】
オレフィン系エラストマー(B1)の第2の態様の具体例としては、三井化学(株)製のタフマー、ミラストマー、住友化学(株)製のエスポレックス、三菱ケミカル(株)製のサーモラン、ゼラス、エクソンモービル・ケミカル社製のSantopleneなどの市販品が挙げられる。
【0071】
オレフィン系エラストマー(B1)は、酸無水物基、カルボキシル基、アミノ基、イミノ基、アルコキシシリル基、シラノール基、シリルエーテル基、ヒドロキシ基およびエポキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基で変性されていてもよい。
【0072】
樹脂組成物(X)にオレフィン系エラストマー(B1)を用いる場合、用いるオレフィン系エラストマー(B1)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0073】
[スチレン系エラストマー(B2)]
スチレン系エラストマー(B2)としては特に制限されないが、硬質部(結晶部)となるポリスチレンブロックと、軟質部となるジエン系モノマーブロックとのブロック共重合体(SBS)、水添スチレン・ブタジエン・スチレンランダム共重合体(HSBR)、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン・エチレン・ブテン・スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン・イソブチレン・スチレン共重合体(SIBS)、スチレン・イソブチレン共重合体(SIB)、スチレン・エチレン・ブテン・スチレン・スチレンブロック共重合体(SEBSS)などを例示することができる。
上記スチレン系エラストマーの中でも初期粘着力と柔軟性に優れる、SEBS、SIB、SIBSが好ましい。
【0074】
HSBRの具体例としては、JSR(株)製のダイナロンなどの市販品が挙げられる。
SEPSとしては、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)を水素添加してなるものが挙げられる。SISの具体例としては、JSR(株)製のJSR SIS、(株)クラレ製のハイブラー、クレイトン社製のクレイトンDなどの市販品が挙げられる。
SEPSの具体例としては、(株)クラレ製のセプトン、クレイトン社製のクレイトンなどの市販品が挙げられる。
SEBSの具体例としては、旭化成(株)製のタフテック、クレイトン社製のクレイトンなどの市販品が挙げられる。
SIB、SIBSの具体例としては、(株)カネカ製のシブスターなどの市販品が挙げられる。
SEBSSとしては、軟質部のブタジエンおよびイソプレンを重合する際にスチレンを合わせて重合することで軟質部にスチレン部位を導入して粘着力を調整した製品が挙げられ、具体例としては、旭化成(株)製のS.O.E.などの市販品が挙げられる。
【0075】
樹脂組成物(X)にスチレン系エラストマー(B2)を用いる場合、用いるスチレン系エラストマー(B2)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0076】
表面凹凸の大きい被着面に樹脂組成物(X)を用いる場合、熱可塑性樹脂(B)としてスチレン系エラストマー(B2)を用いることが好ましい。この場合、被着面の表面凹凸高さは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上であり、好ましくは300μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは50μm以下、特に好ましくは30μm以下である。
なお、本発明における表面凹凸高さとは、被着体の表面を走査型プローブ顕微鏡(SPM)で観察することにより測定された値である。
【0077】
〔その他の成分〕
樹脂組成物(X)は、共重合体(A-1)、共重合体(A-2)および熱可塑性樹脂(B)のみからなる組成物であってもよいが、共重合体(A-1)、共重合体(A-2)および熱可塑性樹脂(B)の他に、必要に応じて、従来公知のその他の成分をさらに含んでいてもよい。
該その他の成分はそれぞれ、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0078】
前記その他の成分としては、粘着付与剤、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、顔料、染料、可塑剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、酸化防止剤、結晶核剤、防黴剤、抗菌剤、難燃剤、充填剤(無機充填剤、有機充填剤)、軟化剤等が挙げられる。
【0079】
[粘着付与剤]
前記粘着付与剤としては、一般に粘着付与剤として製造・販売されている樹脂状物質が挙げられ、具体例としては、クマロン・インデン樹脂等のクマロン樹脂;フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、キシレン・ホルムアルデヒド樹脂等のフェノール系樹脂;テルペン・フェノール樹脂、テルペン樹脂(α,β-ピネン樹脂)、芳香族変性テルペン樹脂、水素化テルペン樹脂等のテルペン系樹脂;合成ポリテルペン樹脂、芳香族炭化水素樹脂、脂肪族系炭化水素樹脂、脂肪族系環状炭化水素樹脂、水素添加炭化水素樹脂、炭化水素系粘着化樹脂等の石油系炭化水素樹脂;ロジンのペンタエリスリトールエステル、ロジンのグリセリンエステル、水素添加ロジン、水素添加ロジンエステル、特殊ロジンエステル、ロジン系粘着付与剤等のロジン誘導体;が挙げられる。
【0080】
これら成分の中では、軟化点が、好ましくは70℃以上、より好ましくは70~130℃の範囲にある、水素添加炭化水素樹脂、水素添加脂肪族系環状炭化水素樹脂、水素添加脂肪族・脂環族系石油樹脂、水素化テルペン樹脂、水素化合成ポリテルペン樹脂等の水素添加樹脂;ロジンのペンタエリスリトールエステル、ロジンのグリセリンエステル、水素添加ロジン、水素添加ロジンエステル、特殊ロジンエステル、ロジン系粘着付与剤等のロジン誘導体;等が好ましい。
【0081】
粘着付与剤を用いることにより、得られる粘着層の被着体に対する粘着強度を容易に調整することができる。
樹脂組成物(X)が前記粘着付与剤を含む場合、当該粘着付与剤の含有量は、前記共重合体(A-1)、共重合体(A-2)および熱可塑性樹脂(B)の合計100質量部に対し、好ましくは5~100質量部である。
【0082】
[軟化剤]
前記軟化剤としては、従来公知の軟化剤を用いることができ、具体例としては、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン、流動パラフィン、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、石油アスファルト、ワセリンなどの石油系物質;コールタール、コールタールピッチなどのコールタール類;ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、大豆油、椰子油、トール油などの脂肪油;蜜ロウ、カルナウバロウおよびラノリンなどのロウ類;リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、12-水酸化ステアリン酸、モンタン酸、オレイン酸、エルカ酸などの脂肪酸またはその金属塩;ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケートなどのエステル系可塑剤;マイクロクリスタリンワックス、液状ポリブタジエンまたはその変性物もしくは水添物;液状チオコールが挙げられる。
【0083】
[充填剤]
前記充填剤の例としては、マイカ、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、グラファイト、ステンレス、アルミニウムなどの粉末充填剤;ガラス繊維、金属繊維などの繊維状充填剤が挙げられる。また、親水性の層状粘土鉱物、特定形状(層状を除く)の親水性無機化合物も挙げられる。
【0084】
親水性の層状粘土鉱物としては、例えば、2次元に広がる層が複数積層されたフィロ珪酸塩鉱物が挙げられ、例えば、スメクタイトが挙げられる。スメクタイトは、モンモリロン石群鉱物であって、例えば、モンモリロン石(モンモリロンナイト)、マグネシアンモンモリロン石、鉄モンモリロン石、鉄マグネシアンモンモリロン石、バイデライト、アルミニアンバイデライト、ノントロン石、アルミニアンノントロナイト、サポー石(サポナイト)、アルミニアンサポー石、ヘクトライト、ソーコナイト、スチーブンサイト、ベントナイトが挙げられる。
また、親水性の層状粘土鉱物としては、例えば、バーミキュル石(バーミキュライト)、ハロイサイト、膨潤性マイカ、黒鉛も挙げられる。
【0085】
このような親水性の層状粘土鉱物は、一般の市販品を用いることができ、具体例としては、天然品として、例えば、クニピアシリーズ(モンモリロナイト、クニミネ工業(株)製)、ベンゲルシリーズ(ベントナイト、(株)ホージュン製)、ソマシフMEシリーズ(膨潤性マイカ、片倉コープアグリ(株)製)が挙げられ、合成品として、例えば、スメクトン(サポナイト、クニミネ工業(株)製)、ルーセンタイトSWNシリーズ(ヘクトライト、片倉コープアグリ(株)製)、ラポナイト(ヘクトライト、ロックウッドホールディングス社製)が挙げられる。一般に、合成品は天然品よりも最大長さが短いため、小さい油滴を得ることができる等の点から、合成品が好ましい。
【0086】
[難燃剤]
前記難燃剤の例としては、アンチモン系難燃剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ほう酸亜鉛、グアニジン系難燃剤、ジルコニウム系難燃剤等の無機化合物、ポリリン酸アンモニウム、エチレンビストリス(2-シアノエチル)ホスホニウムクロリド、トリス(トリブロモフェニル)ホスフェート、トリス(3-ヒドロキシプロピル)ホスフィンオキシド等のリン酸エステルおよびその他のリン化合物、塩素化パラフィン、塩素化ポリオレフィン、パークロロシクロペンタデカン等の塩素系難燃剤、ヘキサブロモベンゼン、エチレンビスジブロモノルボルナンジカルボキシイミド、エチレンビステトラブロモフタルイミド、テトラブロモビスフェノールA誘導体、テトラブロモビスフェノールS、テトラブロモジペンタエリスリトール等の臭素系難燃剤が挙げられる。
【0087】
これら軟化剤、充填剤、難燃剤等の粘着付与剤以外のその他の成分の使用量の合計は、前記共重合体(A-1)、共重合体(A-2)および熱可塑性樹脂(B)の合計100質量部に対し、好ましくは0.001~50質量部である。
【0088】
〔樹脂組成物(X)の調製方法〕
樹脂組成物(X)は、前記共重合体(A-1)、共重合体(A-2)、熱可塑性樹脂(B)、および、必要により、前記その他の成分を、前記のような量で配合し、種々公知の方法で混合することで調製できる。該公知の方法としては、例えば、プラストミル、ヘンシェルミキサー、V-ブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー、ニーダールーダー等を用いて混合する方法、各成分を混合後、一軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等で溶融混練し、次いで、造粒または粉砕する方法が挙げられる。
【0089】
≪粘着剤≫
本発明の一実施形態に係る粘着剤(以下「本粘着剤」ともいう。)は、前記樹脂組成物(X)を含めば特に制限されないが、通常、前記樹脂組成物(X)(のみ)からなる。
本粘着剤は、樹脂組成物(X)を含むため、被着体から自然落下しない程度の適度な接着性を有し、かつ、低粘着昂進性を有する粘着層を容易に形成することができる。さらに、本粘着剤を表面に凹凸を有する被着体に用いる場合、本粘着剤は被着体の凹凸形状に追従するため、粘着面積が増加し、表面に凹凸を有する被着体に対しても、初期粘着時点で十分な粘着強度を有するとともに、加熱、加圧前後において被着体との接触面積が大幅に増加することがないため粘着昂進を抑制できる粘着層を容易に形成することができる。
本粘着剤は、下記積層体の粘着層(L1)を形成する材料として使用され得る。
【0090】
≪積層体≫
本発明の一実施形態に係る積層体(以下「本積層体」ともいう。)は、前記樹脂組成物(X)または前記本粘着剤から形成された粘着層(L1)と、基材層(L2)とを有する。
本積層体は、前記粘着層(L1)を有するため、被着体に対する適度な接着性を有し、かつ、低粘着昂進性を有する粘着層を含有する積層体となる。さらに、本積層体を、表面に凹凸を有する被着体に貼り付けた場合には、粘着層(L1)が被着体の凹凸形状に追従するため、粘着面積が増加し、表面に凹凸を有する被着体に対しても、初期粘着時点で十分な粘着強度を有するとともに、加熱、加圧前後において被着体との接触面積が大幅に増加することがないため粘着昂進を抑制できるとともに、粘着強度を安定して保持することも可能となる。
【0091】
本積層体の厚さは、本積層体の用途に応じて適宜選択すればよく、特に限定されないが、好ましくは10μm以上、より好ましくは16μm以上であり、好ましくは1000μm以下、より好ましくは500μm以下である。
【0092】
本積層体を23℃で1日置いた後の、本積層体(粘着層(L1))のアクリル板に対する粘着強度(23℃での粘着強度)は、好ましくは0.5N/50mm以上、より好ましくは0.6N/50mm以上であり、好ましくは25N/50mm以下、より好ましくは20N/50mm以下である。
本積層体を60℃で1日置いた後の、本積層体(粘着層(L1))のアクリル板に対する粘着強度(60℃で加熱後の粘着強度)は、好ましくは0.5N/50mm以上、より好ましくは0.8N/50mm以上であり、好ましくは35N/50mm以下、より好ましくは30N/50mm以下である。
本積層体を80℃で1日置いた後の、本積層体(粘着層(L1))のアクリル板に対する粘着強度(80℃で加熱後の粘着強度)は、好ましくは0.5N/50mm以上、より好ましくは0.8N/50mm以上であり、好ましくは35N/50mm以下、より好ましくは30N/50mm以下である。
前記粘着強度は、具体的には下記実施例に記載の方法で測定される。
【0093】
本積層体(粘着層(L1))の、23℃での粘着強度に対する60℃で加熱後の粘着強度の粘着昂進率の上限は、好ましくは100%以下、より好ましくは96%以下、さらに好ましくは80%以下、特に好ましくは58%以下である。本積層体(粘着層(L1))の、23℃での粘着強度に対する60℃で加熱後の粘着強度の粘着昂進率は低い方が好ましいため下限は限定されないが、通常、5%以上である。
本積層体(粘着層(L1))の、23℃での粘着強度に対する80℃で加熱後の粘着強度の粘着昂進率の上限は、好ましくは100%以下、より好ましくは70%以下、さらに好ましくは58%以下である。本積層体(粘着層(L1))の、23℃での粘着強度に対する80℃で加熱後の粘着強度の粘着昂進率は低い方が好ましいため下限は限定されないが、通常、5%以上である。
前記粘着昂進率は、具体的には下記実施例に記載の方法で測定される。
【0094】
<粘着層(L1)>
粘着層(L1)は、前記樹脂組成物(X)を含めば特に制限されないが、通常、前記樹脂組成物(X)または前記本粘着剤(のみ)から形成される。
【0095】
本積層体は、通常、被着体に貼り付けて使用され、粘着層(L1)が被着体に接するように貼り付けられる。
粘着層(L1)は、被着体の貼り付け面の物性、例えば、表面の凹凸(表面粗さ)の程度などに応じて成分を調整することが好ましく、例えば、被着体の貼り付け面の表面粗さが粗い場合には強粘着タイプの材質とすることが好ましい。該調整は、前記樹脂組成物(X)の欄に記載の範囲で行えばよい。
【0096】
粘着層(L1)の厚さは特に制限されず、被着体の種類や要求される物性(例:粘着強度)に応じて適宜選択すればよいが、通常1μm以上、好ましくは3μm以上であり、通常500μm以下、好ましくは300μm以下である。
【0097】
<基材層(L2)>
前記基材層(L2)としては特に制限されず、従来公知の基材層を用いることができる。
基材層(L2)を構成する材料としては、ポリオレフィン系樹脂などの熱可塑性樹脂が好ましく、その具体例としては、ポリプロピレン系樹脂(例:プロピレンの単独重合体、プロピレンと少量のα-オレフィンとのランダムまたはブロック共重合体)、ポリエチレン系樹脂(例:低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンおよび線状低密度ポリエチレン)、公知のエチレン系重合体(例:エチレン・α-オレフィン共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・メチルメタクリレート共重合体、エチレン・n-ブチルアクリレート共重合体)、公知のプロピレン系共重合体(例:プロピレン・α-オレフィン共重合体)、ポリ4-メチル-1-ペンテンが挙げられる。これらの中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4-メチル-1-ペンテンがより好ましく、粘着層との層間密着性、透明性、耐熱性等の点からプロピレンが特に好ましい。
基材層を構成する材料は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0098】
なお、基材層(L2)を構成する材料として、ポリプロピレンを用いる場合、得られる基材層(L2)は、プロピレン層であり、該プロピレン層としては、プロピレンからなる層であることが好ましい。
【0099】
基材層(L2)としては、一軸または二軸方向に延伸されたものを用いることもできる。
基材層(L2)の表面は、コロナ放電処理、プラズマ処理、フレーム処理、電子線照射処理および紫外線照射処置のような表面処理法で処理されていてもよく、基材層(L2)は無色透明の層であってもよいし、着色されたまたは印刷された層であってもよい。
【0100】
また、基材層(L2)には、必要に応じて表面に滑り性のような機能を付与するために、離型剤などの添加剤が含まれていてもよい。
【0101】
基材層(L2)の厚さは、本積層体の用途に応じて適宜選択すればよく、特に限定されないが、好ましくは9μm以上であり、より好ましくは15μm以上であり、好ましくは500μm以下、より好ましくは100μm以下である。
【0102】
<本積層体の構成>
本積層体としては、粘着層(L1)と、基材層(L2)とを有すれば特に制限されない。該本積層体の好適な用途として表面保護フィルムが挙げられる。
本積層体に含まれる粘着層(L1)は、1層でも、2層以上でもよく、本積層体に含まれる基材層(L2)も、1層でも、2層以上でもよい。例えば、本積層体が、2層以上の粘着層(L1)を含む場合、これらの層は、同一の層であってもよく、異なる層であってもよい。2層以上の他の層(基材層(L2)を含む)を含む場合についても同様である。
【0103】
本積層体の好適例の一つとしては、粘着層(L1)が、単層または多層の基材層(L2)の片面または両面に積層されてなる積層体が挙げられ、具体的には、基材層(L2)/粘着層(L1)の順番で積層された2層フィルム、または、粘着層(L1)/基材層(L2)/粘着層(L1)の順番で積層された3層フィルムが挙げられる。
【0104】
また、本積層体は、粘着層(L1)および基材層(L2)以外の他の層を含んでいてもよい。
該他の層としては、例えば、基材層(L2)の粘着層(L1)側とは反対側の面に、例えば、積層体をロールにした場合に、該積層体を繰り出し易くする等のために設けられる表面層(L3)、粘着層(L1)と基材層(L2)の間に設けられる中間層(L4)が挙げられる。
表面層(L3)や中間層(L4)としては特に制限されず、従来公知の層を用いることができる。
本積層体に含まれる他の層は、1層でも、2層以上でもよい。
【0105】
<本積層体の製造方法>
本積層体の製造方法としては特に制限されず、公知の多層フィルムの成形方法を用いればよいが、好ましい方法の例としては、Tダイフィルム成形法やインフレーションフィルム成形法を用いて、粘着層(L1)と基材層(L2)とを共押出しする方法や、予め成形された基材層(L2)上に、粘着層(L1)を押出しコーティングする方法が挙げられる。また、溶液状の樹脂組成物(X)を基材層(L2)上に塗布し、当該基材層(L2)上に粘着層(L1)を形成する方法も挙げられる。これらの中でも、粘着層(L1)と基材層(L2)とを共押出しする方法が好ましく、共押出しする方法としては、Tダイフィルム成形法がより好ましい。
【0106】
基材層(L2)と粘着層(L1)と、必要に応じて設けられる表面層(L3)とを含む積層体を製造する方法についても特に制限されず、予めTダイフィルム成形またはインフレーションフィルム成形などにより表面層(L3)を形成し、該表面層(L3)上に、押出しラミネーション、押出しコーティング等の公知の積層法により、基材層(L2)および粘着層(L1)を積層する方法や、表面層(L3)、基材層(L2)および粘着層(L1)を独立してフィルムとした後、各々のフィルムをドライラミネーションにより積層する方法等が挙げられるが、生産性の点から、表面層(L3)、基材層(L2)、粘着層(L1)の各層を形成する原料を多層の押出機に供して成形する共押出し成形が好ましく、共押出しする方法としては、Tダイフィルム成形法がより好ましい。このことは、前記中間層(L4)などの他の層を有する積層体を製造する場合にも同様に当てはまる。
【0107】
本積層体は、一軸方向または二軸方向に延伸されていてもよい。
一軸延伸の好ましい方法としては、通常用いられているロール延伸法を例示することができる。二軸延伸の方法としては、一軸延伸の後に二軸延伸を行う逐次延伸法や、チューブラ延伸法のような同時二軸延伸法を例示することができる。
【0108】
<本積層体の用途>
本積層体の用途としては、粘着シート、表面保護フィルム等が挙げられる。
具体的には、アルミニウム、鋼、ステンレスなどからなる金属製部材、これらの金属部材に塗料を塗装した部材、ガラス製部材、合成樹脂製部材、さらには、これらの部材を用いた家電製品、自動車部品、電子部品などの被着体を保護するための表面保護フィルムとして好適に利用できる。
さらに、例えば、粘着フィルム、プロテクトフィルム、半導体用工程保護フィルム、レンズ保護フィルム、半導体ウエハー用バックグラインドテープ、ダイシングテープ、基板用保護テープ(例:フレキシブル・プリント基板のメッキ処理の際に用いられるメッキマスク用保護テープ)などのエレクトロニクス分野に使用されるフィルムまたはテープ;窓ガラス保護用フィルム;焼付塗装用フィルム;にも好適に用いることができる。
また、粘着層(L1)は、凹凸追従性を有するため、表面に凹凸構造の多いプリズムシートや反射シート、シボ付けされた表面を保護するためのシート等にも好適に用いられる。
【0109】
≪表面保護フィルム≫
本発明の一実施形態に係る表面保護フィルムは、前記樹脂組成物(X)もしくは前記本粘着剤から形成された粘着層、または、前記本積層体を含む。該表面保護フィルムは、保護の対象である被着体に貼り付けて用いられる。
該表面保護フィルムは、前記粘着層のみからなってもよいし、本積層体のみからなってもよいし、前記粘着層または本積層体と他の層とを含んでいてもよい。例えば、表面保護フィルム同士のブロッキング(くっつき)を防ぐために、表面保護フィルム間に剥離紙や剥離フィルムを挟んでもよく、基材層(L2)の露出面に剥離剤を塗布してもよい。
【0110】
前記表面保護フィルムの製造方法は特に制限されないが、Tダイフィルム成形法によって該フィルムを形成する工程を含むことが好ましく、具体的には、前記樹脂組成物(X)または前記本粘着剤を、必要により、前記基材層(L2)や他の層の形成材料とともに、Tダイから(共)押出しして表面保護フィルムを製造することが好ましい。
【0111】
前記表面保護フィルムの厚さは、該表面保護フィルムの用途に応じて適宜選択すればよく特に限定されないが、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、好ましくは1000μm以下、より好ましくは500μm以下である。
【0112】
≪面を保護する方法≫
本発明の一実施形態に係る面を保護する方法は、前記表面保護フィルムを用いて、被着体面を保護する方法であり、具体的には、付着体に前記表面保護フィルムを貼り付けることで、被着体面を保護する。
該被着体面としては、本発明の効果がより発揮される等の点から、表面凹凸高さが、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上であり、好ましくは300μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは50μm以下、特に好ましくは30μm以下である面である。このような面を有する被着体の例としては、プリズムシートが挙げられる。
前記表面保護フィルムによれば、このような表面凹凸高さを有する被着体に対しても、適度な接着性を有するため、該被着体を十分に保護することができる。
【実施例
【0113】
以下、本発明の一実施形態を実施例により説明するが、本発明は、これら実施例により何ら限定されるものではない。
【0114】
[測定条件等]
下記物性の測定条件等は、以下のとおりである。
【0115】
〔組成〕
ポリマー中の構成単位(i)および構成単位(ii)の含有量は、13C-NMRにより、以下の装置および条件で測定した。
日本電子(株)製ECP500型核磁気共鳴装置を用い、溶媒をo-ジクロロベンゼン/重ベンゼン(80/20容量%)混合溶媒、試料濃度を55mg/0.6mL、測定温度を120℃、観測核を13C(125MHz)、シーケンスをシングルパルスプロトンデカップリング、パルス幅を4.7μ秒(45°パルス)、繰り返し時間を5.5秒、積算回数を1万回以上とし、27.50ppmをケミカルシフトの基準値として測定した。
【0116】
〔極限粘度〕
下記合成例で得られた共重合体の極限粘度[η](dl/g)は、デカリン溶媒を用いて135℃で測定した。
具体的には、共重合体約20mgをデカリン15mlに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定した。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5ml追加して希釈後、同様にして比粘度ηspを測定した。この希釈操作をさらに2回繰り返し、下記式(1)に示すように、濃度(C)を0に外挿した時のηsp/C値を極限粘度[η](単位:dl/g)とした。
[η]=lim(ηsp/C) (C→0) ・・・(1)
【0117】
〔分子量および分子量分布〕
下記合成例で得られた共重合体の分子量は、液体クロマトグラフ:Waters製ALC/GPC 150-C plus型(示差屈折計検出器一体型)を用い、カラムとして東ソー(株)製GMH6-HT×2本およびGMH6-HTL×2本を直列接続したものを用い、移動相媒体としてo-ジクロロベンゼンを用い、流速1.0ml/分、140℃で測定した。なお、1サンプル当たりの測定時間は60分とした。
得られたクロマトグラムを、公知の方法によって、標準ポリスチレンサンプルを使用した検量線を用いて解析することで、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を測定し、分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
【0118】
〔密度〕
下記合成例で得られた共重合体の密度は、ASTM D 1505(水中置換法)に従って、アルファーミラージュ(株)製の電子比重計MD-300Sを用い、水中と空気中で測定された各共重合体の質量から算出した。
【0119】
〔融点(Tm)〕
セイコーインスツル(株)製DSC220C装置を用い、示差走査熱量計(DSC)により下記合成例で得られた共重合体の融点(Tm)を測定した。
具体的には、下記合成例で得られた共重合体7~12mgをアルミニウムパン中に密封し、室温から10℃/分で200℃まで加熱した。その後、共重合体を完全融解させるために200℃で5分間保持し、次いで10℃/分で-50℃まで冷却した。-50℃で5分間置いた後、その試料を10℃/分で200℃まで再度加熱した。この再度の(2度目の)加熱でのピーク温度を、融点(Tm)として採用した。
【0120】
〔共重合体の動的粘弾性〕
190℃に設定した(株)神藤金属工業所製の油圧式熱プレス機を用い、下記合成例で得られた共重合体に圧力をかけない状態で5分間加熱し、その後、10MPaの圧力をかけた状態で1~2分間加熱することでシートを得た。次いで、20℃に設定した別の(株)神藤金属工業所の製油圧式熱プレス機を用い、得られたシートに5分間程度10MPaの圧力をかけることで、測定用試料(3mm厚のシート)を作製した。なお、前記圧力をかける際には、熱板として5mm厚の真鍮板を用いた。
得られた測定用試料およびANTONPaar社製MCR301を用い、10rad/s(1.6Hz)の周波数において、-100~150℃における動的粘弾性の温度依存性を測定し、0~60℃の範囲における、ガラス転移温度に起因する損失正接(tanδ)が最大値となる際の温度(以下「ピーク温度」ともいう。)、および、その際の損失正接(tanδ)の値(以下「ピーク値」ともいう。)を測定した。
【0121】
〔樹脂組成物の動的粘弾性〕
下記合成例で得られた共重合体の代わりに、下記実施例および比較例で得られた樹脂組成物を用いた以外は、共重合体の動的粘弾性と同様にして、樹脂組成物の損失正接(tanδ)の極大値となる際の温度(以下「ピーク温度」ともいう。)、および、その際の損失正接(tanδ)の値(以下「ピーク値」ともいう。)を測定した。なお、ピーク温度が0℃未満の範囲にあるピーク温度およびピーク値をそれぞれ、第1ピーク温度および第1ピーク値といい、ピーク温度が0℃以上の範囲にあるピーク温度およびピーク値をそれぞれ、第2ピーク温度および第2ピーク値という。
【0122】
〔粘着強度〕
JIS Z 0237:2000に準拠して、下記実施例および比較例で得られた積層体の粘着強度を測定した。具体的には、以下のように測定した。
50mm幅×100mm長さ×2mm厚の黒色アクリル板(三菱ケミカル(株)製、アクリライトREX)と、下記実施例および比較例で得られた積層体とを、温度23℃、相対湿度50%の環境下に1時間放置した後、下記実施例および比較例で得られた積層体の粘着層(L1)がアクリル板に接するように、積層体をアクリル板の上に配置し、約2kgのゴムロールを用い、圧力を加えながら該ゴムロールを2往復させ、アクリル板に積層体を貼り付けることで試験体を作製した。作製した試験体を、温度23℃、相対湿度50%の一定環境下に1日間置いた後、温度23℃、相対湿度50%の環境で、アクリル板から積層体を180°方向に速度300mm/分で引き剥がした時の粘着強度を、万能引張試験機(3380、インストロン社製)を用いて測定した(23℃での粘着強度)。
【0123】
作製した試験体を、温度23℃、相対湿度50%の一定環境下に1日間置く代わりに、60℃のオーブン中に1日間置いた以外は前記と同様にして、接着強度を測定した(60℃加熱後の粘着強度)。
また、作製した試験体を、温度23℃、相対湿度50%の一定環境下に1日間置く代わりに、80℃のオーブン中に1日間置いた以外は前記と同様にして、接着強度を測定した(80℃加熱後の粘着強度)。
【0124】
〔粘着昂進率〕
前記方法で測定した、23℃での粘着強度および60℃加熱後の粘着強度の値を用い、下記式(2)に基づいて、60℃加熱での粘着昂進率を算出し、23℃での粘着強度および80℃加熱後の粘着強度の値を用い、下記式(3)に基づいて、80℃加熱での粘着昂進率を算出した。
60℃加熱での粘着昂進率=
{(60℃加熱後の粘着強度)-(23℃での粘着強度)}/(23℃での粘着強度)×100 ・・・(2)
80℃加熱での粘着昂進率=
{(80℃加熱後の粘着強度)-(23℃での粘着強度)}/(23℃での粘着強度)×100 ・・・(3)
【0125】
〔合成例1〕
充分に窒素置換した容量1.5リットルの攪拌翼付SUS製オートクレーブに、23℃で4-メチル-1-ペンテンを750ml装入した。このオートクレーブに、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)の1.0mmol/mlトルエン溶液を0.75ml装入し、攪拌機を回した。
次に、オートクレーブを内温60℃まで加熱し、全圧が0.13MPa(ゲージ圧)となるようにプロピレンで加圧した。続いて、予め調製しておいたメチルアルミノキサンをAl換算で1mmol、および、ジフェニルメチレン(1-エチル-3-t-ブチル-シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチル-フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを0.01mmol含むトルエン溶液0.34mlを、窒素でオートクレーブに圧入し、重合を開始した。重合反応中、オートクレーブ内温が60℃になるように温度を調整した。重合開始から60分後、オートクレーブにメタノール5mlを窒素で圧入し、重合を停止し、オートクレーブを大気圧まで脱圧した。その後、反応溶液にアセトンを攪拌しながら注いだ。
得られた溶媒を含むパウダー状の重合体を100℃、減圧下で12時間乾燥した。得られた4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1-1)の量は36.9gであり、ポリマー中の構成単位(i)の含有量は72.5mol%、構成単位(ii)の含有量は27.5mol%であった。得られた共重合体の物性を表1に示す。
【0126】
〔合成例2〕
充分に窒素置換した容量1.5リットルの攪拌翼付SUS製オートクレーブに、23℃で、ノルマルヘキサン300ml(乾燥窒素雰囲気、活性アルミナで乾燥したもの)、および、4-メチル-1-ペンテン450mlを装入した。このオートクレーブに、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)の1.0mmol/mlトルエン溶液を0.75ml装入し、攪拌機を回した。
次に、オートクレーブを内温60℃まで加熱し、全圧が0.19MPa(ゲージ圧)となるようにプロピレンで加圧した。続いて、予め調製しておいたメチルアルミノキサンをAl換算で1mmol、および、ジフェニルメチレン(1-エチル-3-t-ブチル-シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチル-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド0.01mmolを含むトルエン溶液0.34mlを、窒素でオートクレーブに圧入し、重合を開始した。重合反応中、オートクレーブ内温が60℃になるように温度を調整した。重合開始から60分後、オートクレーブにメタノール5mlを窒素で圧入し、重合を停止し、オートクレーブを大気圧まで脱圧した。その後、反応溶液にアセトンを攪拌しながら注いだ。
得られた溶媒を含むパウダー状の重合体を100℃、減圧下で12時間乾燥した。得られた4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-2-1)の量は44.0gであり、ポリマー中の構成単位(i)の含有量は84.1mol%、構成単位(ii)の含有量は15.9mol%であった。得られた共重合体の物性を表1に示す。
【0127】
【表1】
【0128】
[実施例1]
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1-1)15質量部と、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-2-1)5質量部と、旭化成(株)製のタフテック H1052(以下「B2-1」とも記載する。)80質量部と、耐熱安定剤としてのn-オクタデシル-3-(4'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート0.2質量部とを配合して、粘着層(L1)を形成するための樹脂組成物(樹脂ペレット)を得た。
【0129】
30mmφ単軸押出機を兼ね備えた、ダイ幅300mmの3種3層T-ダイ成形機を用い、表面層(L3)、基材層(L2)、粘着層(L1)それぞれを形成するためのT-ダイにそれぞれ連結する樹脂供給ホッパーより、各層を形成するための樹脂ペレットを投入し、200~240℃に設定した単軸押出機内のシリンダーを通して樹脂ペレットを融解させた後、T-ダイよりダイス温度200℃で押出成形を行うことで積層体を得た。
この際、表面層(L3)および基材層(L2)を形成するための樹脂ペレットとしては、(株)プライムポリマー製のポリプロピレンF107を用い、粘着層(L1)を形成するための樹脂ペレットとしては、得られた樹脂組成物を用いた。表面層(L3)、基材層(L2)、粘着層(L1)の厚みが、L3/L2/L1=10/30/10μmになるように押出した。得られた積層体の各種物性を表2に示す。
【0130】
[実施例2]
樹脂組成物の原料として、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1-1)10質量部と、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-2-1)10質量部と、旭化成(株)製のタフテック H1052(B2-1)80質量部と、n-オクタデシル-3-(4'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート0.2質量部とを用いた以外は、実施例1と同様の方法により積層体を得た。各種物性を表2に示す。
【0131】
[実施例3]
樹脂組成物の原料として、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1-1)10質量部と、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-2-1)10質量部と、JSR(株)製のダイナロン 1320P(以下「B2-2」とも記載する。)80質量部と、n-オクタデシル-3-(4'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート0.2質量部とを用いた以外は、実施例1と同様の方法により積層体を得た。各種物性を表2に示す。
【0132】
[実施例4]
樹脂組成物の原料として、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1-1)10質量部と、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-2-1)10質量部と、三井化学(株)製のタフマー PN-3560(以下「B1-1」とも記載する。)80質量部と、n-オクタデシル-3-(4'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート0.2質量部とを用いた以外は、実施例1と同様の方法により積層体を得た。各種物性を表2に示す。
【0133】
[実施例5]
樹脂組成物の原料として、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1-1)10質量部と、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-2-1)10質量部と、三井化学(株)製のタフマー PN-2060(以下「B1-2」とも記載する。)80質量部と、n-オクタデシル-3-(4'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート0.2質量部とを用いた以外は、実施例1と同様の方法により積層体を得た。各種物性を表2に示す。
【0134】
[実施例6]
樹脂組成物の原料として、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1-1)5質量部、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-2-1)5質量部と、旭化成(株)製のタフテック H1052(B2-1)90質量部と、n-オクタデシル-3-(4'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート0.2質量部とを用いた以外は、実施例1と同様の方法により積層体を得た。各種物性を表2に示す。
【0135】
[実施例7]
樹脂組成物の原料として、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1-1)5質量部、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-2-1)3質量部と、三井化学(株)製のタフマー PN-2060(B1-2)92質量部と、n-オクタデシル-3-(4'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート0.2質量部とを用いた以外は、実施例1と同様の方法により積層体を得た。各種物性を表2に示す。
【0136】
[実施例8]
樹脂組成物の原料として、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1-1)20質量部、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-2-1)20質量部と、旭化成(株)製のタフテック H1052(B2-1)60質量部と、n-オクタデシル-3-(4'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート0.2質量部とを用いた以外は、実施例1と同様の方法により積層体を得た。各種物性を表2に示す。
【0137】
[実施例9]
樹脂組成物の原料として、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1-1)10質量部、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-2-1)10質量部と、(株)カネカ製のシブスター 072T(以下「B2-3」とも記載する。)80質量部と、n-オクタデシル-3-(4'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート0.2質量部とを用いた以外は、実施例1と同様の方法により積層体を得た。各種物性を表2に示す。
【0138】
[実施例10]
樹脂組成物の原料として、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1-1)5質量部、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-2-1)15質量部と、旭化成(株)製のタフテック H1052(B2-1)80質量部と、n-オクタデシル-3-(4'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート0.2質量部とを用いた以外は、実施例1と同様の方法により積層体を得た。各種物性を表2に示す。
【0139】
[比較例1]
樹脂組成物の原料として、旭化成(株)製のタフテック H1052(B2-1)100質量部と、n-オクタデシル-3-(4'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート0.2質量部とを用いたこと以外、実施例1と同様の方法により積層体を得た。各種物性を表3に示す。
【0140】
[比較例2]
樹脂組成物の原料として、三井化学(株)製のタフマー PN-3560(B1-1)100質量部と、n-オクタデシル-3-(4'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート0.2質量部とを用いたこと以外、実施例1と同様の方法により積層体を得た。各種物性を表3に示す。
【0141】
[比較例3]
樹脂組成物の原料として、三井化学(株)製のタフマー PN-2060(B1-2)20質量部と、旭化成(株)製のタフテック H1052(B2-1)80質量部と、n-オクタデシル-3-(4'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート0.2質量部とを用いたこと以外、実施例1と同様の方法により積層体を得た。各種物性を表3に示す。
【0142】
[比較例4]
樹脂組成物の原料として、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1-1)10質量部と、三井化学(株)製のタフマー PN-2060(B1-2)10質量部と、旭化成(株)製のタフテック H1052(B2-1)80質量部と、n-オクタデシル-3-(4'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート0.2質量部とを用いたこと以外、実施例1と同様の方法により積層体を得た。各種物性を表3に示す。
【0143】
【表2】
【0144】
【表3】