(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20241218BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
H01L21/68 A
H01L21/78 B
(21)【出願番号】P 2022581090
(86)(22)【出願日】2021-02-10
(86)【国際出願番号】 JP2021005042
(87)【国際公開番号】W WO2022172373
(87)【国際公開日】2022-08-18
【審査請求日】2023-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 芳邦
(72)【発明者】
【氏名】内山 茂行
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-274125(JP,A)
【文献】特開2017-205853(JP,A)
【文献】特開2013-71186(JP,A)
【文献】特開2014-216519(JP,A)
【文献】特開2020-145256(JP,A)
【文献】特開2015-191994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向を板厚方向とする板状の被加工物を加工する加工装置であって、
前記加工装置の動作を制御する制御部と、
前記被加工物を収容する収容部と、
前記被加工物を載置する搬送ハンドを有し、前記収容部に対して前記被加工物の搬出及び搬入を行う搬出入部と、
前記被加工物を加工する加工部と、
前記被加工物の上面を保持する保持部と、
前記搬送ハンドと前記加工部の間で、前記保持部を水平移動させ、また、前記加工部による前記被加工物の加工の際には、前記保持部を、前記加工部に対して相対移動させる移動部と、を含み、
前記保持部は、前記搬送ハンドの上方において、前記搬送ハンドとの間で前記被加工物の受け渡しを行い、
前記加工部は、前記保持部に保持された前記被加工物を下方から加工
し、
前記移動部は、前記上下方向と直交する第1方向に前記保持部を移動させる第1移動部と、前記上下方向及び前記第1方向と直交する第2方向に前記保持部を移動させる第2移動部と、を含み、
前記第1方向は、前記被加工物の加工の際の加工方向であり、
前記第2方向は、前記被加工物のピッチ送り方向であり、
前記保持部が前記搬送ハンドとの間で前記被加工物を受け渡す位置と、前記加工部が前記被加工物の加工を行うときの前記保持部の位置は、前記第1方向に並んでいる、加工装置。
【請求項2】
上下方向を板厚方向とする板状の被加工物を加工する加工装置であって、
前記加工装置の動作を制御する制御部と、
前記被加工物を収容する収容部と、
前記被加工物を載置する搬送ハンドを有し、前記収容部に対して前記被加工物の搬出及び搬入を行う搬出入部と、
前記被加工物を加工する加工部と、
前記被加工物の上面を保持する保持部と、
前記搬送ハンドと前記加工部の間で、前記保持部を水平移動させ、また、前記加工部による前記被加工物の加工の際には、前記保持部を、前記加工部に対して相対移動させる移動部と、を含み、
前記保持部は、前記搬送ハンドの上方において、前記搬送ハンドとの間で前記被加工物の受け渡しを行い、
前記加工部は、前記保持部に保持された前記被加工物を下方から加工
し、
前記被加工物は、板面に少なくとも3つの板面測定点を含み、
前記加工部は、各前記板面測定点を撮影して、各前記板面測定点の座標を測定するカメラと、前記加工部を、前記上下方向に移動させる第3移動部と、を含み、
前記制御部は、加工前に各前記板面測定点の座標に基づいて前記板面を特定し、前記板面上の任意の点と前記加工部との距離が一定になるように、前記第3移動部に前記加工部を移動させながら、前記加工部による加工を行わせる、加工装置。
【請求項3】
上下方向を板厚方向とする板状の被加工物を加工する加工装置であって、
前記加工装置の動作を制御する制御部と、
前記被加工物を収容する収容部と、
前記被加工物を載置する搬送ハンドを有し、前記収容部に対して前記被加工物の搬出及び搬入を行う搬出入部と、
前記被加工物を加工する加工部と、
前記被加工物の上面を保持する保持部と、
前記搬送ハンドと前記加工部の間で、前記保持部を水平移動させ、また、前記加工部による前記被加工物の加工の際には、前記保持部を、前記加工部に対して相対移動させる移動部と、を含み、
前記保持部は、前記搬送ハンドの上方において、前記搬送ハンドとの間で前記被加工物の受け渡しを行い、
前記加工部は、前記保持部に保持された前記被加工物を下方から加工
し、
前記保持部は、被加工物を保持する底面に少なくとも3つの底面測定点を含み、
前記加工部は、各前記底面測定点を撮影して、各前記底面測定点の座標を測定するカメラを含み、
前記制御部は、各前記底面測定点の座標に基づいて前記底面を特定し、前記底面上の任意の点と前記加工部との距離を算出する、加工装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の加工装置であって、
前記搬出入部は、少なくとも1つの挟持部を含み、
前記挟持部は、一対の挟持部材を有し、
前記一対の挟持部材は、前記搬送ハンドに載置した前記被加工物の側面を外側から挟み込んで、前記搬送ハンド上における前記被加工物の位置決めを行う、加工装置。
【請求項5】
請求項1に記載の加工装置であって、
前記搬送ハンドが前記収容部から前記被加工物を搬出入する方向は、前記第2方向であり、
前記収容部は、平面視にて前記移動部が占めうる領域と少なくとも一部が重畳するように、前記移動部の下方に配される、加工装置。
【請求項6】
請求項1又は請求項5に記載の加工装置であって、
前記第1移動部は、前記第1方向にのびて前記第2方向に並ぶ平行な一対の第1案内部を含み、
一対の前記第1案内部は、前記保持部を前記第1方向に移動可能に支持する、加工装置。
【請求項7】
請求項6に記載の加工装置であって、
前記第2移動部は、前記第2方向にのびて前記第1方向に並ぶ平行な一対の第2案内部を含み、
一対の前記第2案内部は、前記第1移動部を前記第2方向に移動可能に支持する、加工装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の加工装置であって、
前記収容部は、加工前の前記被加工物を収容する第1収容部と、加工後の前記被加工物を収容する第2収容部と、を含み、
前記搬送ハンドは、前記第1収容部から前記被加工物を搬出して、前記保持部に渡す第1搬送ハンドと、前記被加工物を前記保持部から受け取り前記第2収容部に搬入する第2搬送ハンドと、を含む、加工装置。
【請求項9】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の加工装置であって、
前記搬出入部は、前記被加工物を載置可能な補助ハンドをさらに備え、
前記補助ハンドは、前記保持部から前記被加工物を受け取り、また、前記搬送ハンドに前記被加工物を渡す、加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハ等の被加工物を加工する加工装置として、特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1のレーザ加工装置(加工装置)は、カセット(収容部)内に収容されている被加工物を、ロボットハンドを用いて仮置きテーブルに移載する。次いで、仮置きテーブル上の被加工物を、吸着パッドを用いてチャックテーブル(保持部)に移載して、チャックテーブル上に保持した被加工物をレーザ加工する。
被加工物の受け渡しは、カセット-ロボットハンド-仮置きテーブル-吸着パッド-チャックテーブルの順に行われ、カセット内の被加工物の加工を開始するまでに、合計4回の受け渡しが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のレーザ加工装置によると、以下のような問題がある。仮置きテーブルのためのスペースが必要なため、加工装置が大型化して設置スペースが大きくなる。また、受け渡し回数が多いと、そのぶん時間を要するので、生産性の低下につながる。さらに、受け渡しの回数が多いと、被加工物と他の部材が接触したり、被加工物に衝撃が加わったりする機会が増えるため、歩留まりの低下が懸念される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書において開示される技術は、上下方向を板厚方向とする板状の被加工物を加工する加工装置であって、前記加工装置の動作を制御する制御部と、前記被加工物を収容する収容部と、前記被加工物を載置する搬送ハンドを有し、前記収容部に対して前記被加工物の搬出及び搬入を行う搬出入部と、前記被加工物を加工する加工部と、前記被加工物の上面を保持する保持部と、前記搬送ハンドと前記加工部の間で、前記保持部を水平移動させ、また、前記加工部による前記被加工物の加工の際には、前記保持部を、前記加工部に対して相対移動させ移動部と、を含み、前記保持部は、前記搬送ハンドの上方において、前記搬送ハンドとの間で前記被加工物の受け渡しを行い、前記加工部は、前記保持部に保持された前記被加工物を下方から加工する、加工装置である。
【0006】
保持部は、被加工物の上面を保持することができるため、搬送ハンド上に載置された被加工物を直接保持することができる。また、保持部が被加工物を保持している場合、保持を解除することで、下方の搬送ハンド上に被加工物を直接載置することができる。これにより、保持部と搬送ハンドとの間で被加工物を受け渡す際に、被加工物を仮置きするスペース(以下、仮置きスペースという)が不要になり、加工装置の小型化、省スペース化が可能になる。
【0007】
また、仮置きスペースを介さず直接受け渡しが行われるため、被加工物の受け渡し回数を低減して、加工を開始するまでの時間、及び、加工後に被加工物を収容部に収容するまでの時間を短縮できる。これにより、加工装置の生産性が向上する。
【0008】
さらに、受け渡し回数が減ることにより、被加工物に衝撃が加わる機会や、被加工物が他の部材と接触する機会が減り、被加工物の損傷を抑制して歩留まりを向上させることができる。
【0009】
また、加工部は、被加工物を下方から加工するため、加工により生じた塵埃は下方に落下して被加工物に付着しにくい。これにより、被加工物を清浄に保ち、コンタミネーションを低減して被加工物の歩留まりを向上させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、収容部から被加工物を搬出した搬送ハンドは、仮置きテーブルを介さずに、保持部との間で直接被加工物を受け渡す。そのため、仮置きテーブルが不要になり、加工装置の小型化、省スペース化を実現できる。
【0011】
被加工物の受け渡しは、収容部-搬送ハンド-保持部、の間で行われる。このとき、加工開始までの受け渡し回数はわずか2回である。そのため、受け渡しに要する合計時間を短縮して、加工装置の生産性を向上させることができる。また、受け渡し回数が減少すると、受け渡しの際に被加工物がダメージを受ける機会を低減して、被加工物の歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図9】ウェハ傾き補正処理における、傾き算出処理のフローチャート
【
図12】XsZs軸同期制御実行時のXs軸及びZs軸の速度を表すグラフ
【
図13】事前キャリブレーション処理のフローチャート
【
図21B】第3搬出入部の側面図(Z3軸移動部及びY3軸移動部を消去)
【
図24A】供給~加工~収容処理の説明図(平面図)
【
図24B】供給~加工~収容処理の説明図(平面図)
【
図24C】供給~加工~収容処理の説明図(平面図)
【
図24D】供給~加工~収容処理の説明図(平面図)
【
図24E】供給~加工~収容処理の説明図(平面図)
【
図24F】供給~加工~収容処理の説明図(平面図)
【
図24G】供給~加工~収容処理の説明図(平面図)
【
図24H】供給~加工~収容処理の説明図(平面図)
【発明を実施するための形態】
【0013】
<加工装置の概要>
上下方向を板厚方向とする板状の被加工物を加工する加工装置は、前記加工装置の動作を制御する制御部と、前記被加工物を収容する収容部と、前記被加工物を載置する搬送ハンドを有し、前記収容部に対して前記被加工物の搬出及び搬入を行う搬出入部と、前記被加工物を加工する加工部と、前記被加工物の上面を保持する保持部と、前記搬送ハンドと前記加工部の間で、前記保持部を水平移動させ、また、前記加工部による前記被加工物の加工の際には、前記保持部を、前記加工部に対して相対移動させる移動部と、を含み、前記保持部は、前記搬送ハンドの上方において、前記搬送ハンドとの間で前記被加工物の受け渡しを行い、前記加工部は、前記保持部に保持された前記被加工物を下方から加工する。
【0014】
この構成では、搬送ハンドから保持部へ被加工物を渡すときは、搬送ハンドに載置された被加工物の上面を、保持部が保持する。また、保持部から搬送ハンドへ被加工物を渡すときは、保持部により上面が保持された被加工物を、搬送ハンドに載置する。つまり、搬送ハンドと保持部との間で、被加工物を直接受け渡すことができる。
【0015】
これにより、搬送ハンドと保持部との間の仮置きスペースが不要になり、加工装置の小型化、省スペース化が可能になる。
【0016】
また、仮置きスペースを介さず直接受け渡すため、被加工物の受け渡し回数が低減する。これにより、収容部内にある被加工物の加工を開始するまでの時間や、加工後に被加工物を収容部に収容するまでの時間を短縮でき、加工装置の生産性が向上する。
【0017】
さらに、受け渡し回数の低減により、被加工物に衝撃が加わる機会や、被加工物が他の部材と接触する機会が減り、被加工物の損傷を抑制して歩留まりを向上させることができる。
【0018】
また、加工部は、被加工物を下方から加工するため、加工により生じた塵埃は下方に落下して被加工物に付着しにくい。これにより、被加工物を清浄に保ち、コンタミネーションを低減して被加工物の歩留まりを向上させることができる。
【0019】
また、前記搬出入部は、少なくとも1つの挟持部を含み、前記挟持部は、一対の挟持部材を有し、前記一対の挟持部材は、前記搬送ハンドに載置した前記被加工物の側面を外側から挟み込んで、前記搬送ハンド上における前記被加工物の位置決めを行ってもよい。
【0020】
この構成では、搬送ハンドに載置された被加工物は、一対の挟持部材により、側面を外側から挟み込まれて搬送ハンド上の所定の位置に位置決めされる。搬送ハンド上で位置決めができるため、位置決めのために別途スペースを設ける必要がなく、加工装置の小型化、省スペース化が可能になる。
【0021】
また、搬送ハンド上で位置決めを行うことで、位置決めを行う場所に被加工物を移載する必要がなくなるため、被加工物の受け渡し回数を低減できる。これにより、生産性及び被加工物の歩留まりを向上させることができる。
【0022】
また、前記移動部は、前記上下方向と直交する第1方向に前記保持部を移動させる第1移動部と、前記上下方向及び前記第1方向と直交する第2方向に前記保持部を移動させる第2移動部と、を含み、前記第1方向は、前記被加工物の加工の際の加工方向であり、前記第2方向は、前記被加工物のピッチ送り方向であり、前記保持部が前記搬送ハンドとの間で前記被加工物を受け渡す位置と、前記加工部が前記被加工物の加工を行うときの前記保持部の位置は、前記第1方向に並んでいてもよい。
【0023】
一般に、保持部の移動距離は、ピッチ送りを行う第2方向よりも、受け渡し位置と加工位置の間で保持部を移動させる第1方向の方が大きい。また、被加工物の加工を行う加工方向と、受け渡し位置と加工位置の間で保持部が移動する方向とは、同じ第1方向である。ピッチ送り方向である第2方向の移動は、被加工物を高精度に加工するために、第1方向よりも高い位置決め精度が求められる。
【0024】
このようにすると、相対的に移動距離が大きく、加工方向でもある第1方向の移動を行う第1移動部を、移動速度及び直進性を重視した設計にすることが考えられる。一方、第2方向の移動を行う第2移動部は、移動速度及び直進性よりも、位置決め精度を重視すればよいため、第1移動部と第2移動部でそれぞれの役割に合わせて合理的な設計が可能になり、加工装置のコストを低減できる。
【0025】
また、前記搬送ハンドが前記収容部から前記被加工物を搬出入する方向は、前記第2方向であり、前記収容部は、平面視にて前記移動部が占めうる領域と少なくとも一部が重畳するように、前記移動部の下方に配されていてもよい。
【0026】
上述したように、受け渡し位置と加工位置は第1方向に並び、これらの間を保持部が移動する距離は、保持部が第2方向(ピッチ送り方向)に移動する距離よりも大きい。そのため、収容部を除いた加工装置の形状は、第1方向に長い。
【0027】
仮に、収容部から被加工物を搬出入する方向を第1方向にすると、収容部は受け渡し位置の第1方向側に配されるため、収容部を含めた加工装置は、さらに第1方向に大きくなる。
【0028】
一方、この構成では、被加工物の搬出入方向を第2方向にしている。これにより、収容部を受け渡し位置の第2方向側に配することができるため、収容部を加えても加工装置の第1方向の長さは大きくならない。
【0029】
また、収容部は、平面視にて移動部が占めうる領域と重畳するため、加工装置が第2方向に大きくなることを抑制できる。これにより、加工装置を小型化できる。
【0030】
また、前記第1移動部は、前記第1方向にのびて前記第2方向に並ぶ平行な一対の第1案内部を含み、一対の前記第1案内部は、前記保持部を前記第1方向に移動可能に支持してもよい。
【0031】
この構成では、保持部を、一対の第1案内部で支持するため、保持部を強固に支持してガタツキを抑え、振動を抑制できる。これにより、保持部が保持する被加工物が落下しにくくなり、保持部の第1方向の高速移動が可能になる。
【0032】
また、前記第2移動部は、前記第2方向にのびて前記第1方向に並ぶ平行な一対の第2案内部を含み、一対の前記第2案内部は、前記第1移動部を前記第2方向に移動可能に支持してもよい。
【0033】
第1移動部を、一対の第2案内部で支持するため、第1移動部を強固に支持してガタツキを抑え、第1移動部が支持する保持部の振動を抑制できる。これにより、ピッチ送りを行う第2方向の移動において、保持部の姿勢が安定するため、高精度なピッチ送りが可能になる。
【0034】
前記収容部は、加工前の前記被加工物を収容する第1収容部と、加工後の前記被加工物を収容する第2収容部と、を含み、前記搬送ハンドは、前記第1収容部から前記被加工物を搬出して、前記保持部に渡す第1搬送ハンドと、前記被加工物を前記保持部から受け取り前記第2収容部に搬入する第2搬送ハンドと、を含んでいてもよい
【0035】
このようにすると、保持部は、加工後の被加工物を第2搬送ハンドに渡した後、加工後の被加工物が収容部に収容されるのを待たずに、すぐに第1搬送ハンド上に移動して、第1搬送ハンドから加工前の被加工物を受け取ることができる。これにより、加工装置のタクトタイムが短縮され、生産性が向上する。
【0036】
また、前記搬出入部は、前記被加工物を載置可能な補助ハンドをさらに備え、前記補助ハンドは、前記保持部から前記被加工物を受け取り、また、前記搬送ハンドに前記被加工物を渡してもよい。
【0037】
このようにすると、保持部は、加工後の被加工物を補助ハンドに渡した後、すぐに搬送ハンド上に移動して、搬送ハンドから加工前の被加工物を受け取ることができる。つまり、保持部は、加工後の被加工物が収容部に収容されるのを待たずに、次に加工する被加工物を保持して加工部に移動できる。これにより、加工装置のタクトタイムが短縮され、生産性が向上する。
【0038】
また、前記被加工物は、板面に少なくとも3つの板面測定点を含み、前記加工部は、各前記板面測定点を撮影して、各前記板面測定点の座標を測定するカメラと、前記加工部を前記上下方向に移動させる第3移動部と、を含み、前記制御部は、加工前に各前記板面測定点の座標に基づいて前記板面を特定し、前記板面上の任意の点と前記加工部との距離が一定になるように、前記第3移動部に前記加工部を移動させながら、前記加工部による加工を行ってもよい。
【0039】
このようにすると、板面上の任意の点と加工部との距離を、第3移動部を用いて一定に保ちつつ、加工を行うことができる。これにより、加工部による上下方向の加工精度が上がり、加工のやり直し回数の低減、及び歩留まりの向上を図ることができる。
【0040】
また、前記保持部は、被加工物を保持する底面に少なくとも3つの底面測定点を含み、前記加工部は、各前記底面測定点を撮影して、各前記底面測定点の座標を測定するカメラを含み、前記制御部は、各前記底面測定点の座標に基づいて前記底面を特定し、前記底面上の任意の点と前記加工部との距離を算出してもよい。
【0041】
保持部は底面において被加工物の上面を保持しており、保持部と被加工物は接している。このようにして算出した、保持部の底面上の任意の点と加工部との距離を、加工開始時における、被加工物と加工部との距離の初期値として用いる。これにより、被加工物と加工部の距離を短時間で測定できる
【0042】
<実施形態1>
本明細書に開示された技術の一の実施形態を、実施形態1として、
図1から
図18Hを参照して説明する。
【0043】
1.加工装置10の構成
1.1 全体構成
本発明に係る加工装置の一例として、加工装置10を
図1A~
図1Cに示す。加工装置10は、被加工物90にパルスレーザを照射してダイシング加工を行うレーザダイシング装置である。
図1A~
図1Cは3面図を構成し、それぞれ平面図、正面図、側面図である。
図2は、加工装置10のブロック図である。
【0044】
加工装置10は平面視でX方向に長い略長方形状をなし、基台20と、被加工物90を上方から保持する保持部30と、基台20上に配設され、保持部30をXY方向に移動させる移動部50と、収容部70と、収容部70を載置する収容台69と、被加工物90を下方から加工する加工部80と、これらの動作を一体的に制御する制御部11と、を有する。
【0045】
図2に示すように、制御部11は、キーボードやディスプレイ等の入出力部12、演算処理を行う演算部(CPU)13、制御プログラムや計測データ、加工のレシピ等を保存する記憶部(RAM、ROM)14を有する。制御部11は一般的なコンピュータである。
【0046】
以下の説明において、鉛直方向をZ方向とし、
図1Aの平面図における左右方向(加工装置10の長辺方向)をX方向、上下方向(加工装置10の短辺方向)をY方向とする。X方向は「第1方向」の一例、Y方向は「第2方向」の一例である。また、X方向とY方向にのびるXY平面が水平面であるものとする。
【0047】
基台20は、
図1Bに示すように、矩形板状の基台水平部21と、2つの基台垂直部22と、を有している。基台垂直部22は、基台水平部21のX方向の両端から鉛直上方に立ち上がるように形成されており、その上端面には、Ys軸ボールねじ(「第2案内部」の一例)52が、水平に配置されて固定されている。また、基台水平部21には、収容部70を載置する収容台69が配設されている。
【0048】
収容台69は、基台水平部21の上に配設された直方体形状の台であり、上面69aは平坦かつ水平である。上面69aには、2つの収容部70(第1収容部71、第2収容部72)がY方向に並んで載置される。収容台69及び収容部71、72は、ともに移動部50よりも下方に配される。
【0049】
第1収容部71は、Y方向手前側に開口部71oを有する直方体形状の箱であり、内部は空間である。第1収容部71の内部空間を構成する5つの面のうち、X方向に対向する2つの板面71a、71bには、それぞれの板面71a、71bに対して垂直に立ち上がる凸部73が形成されている。
【0050】
板面71aの凸部73と、板面71bの凸部73との間を橋渡すように、上方から板状の被加工物90を載置することで、第1収容部71の内部空間に被加工物90を水平に収容できる。凸部73は、板面71a、71bにおいてそれぞれ上下方向に6つ等間隔に並んでおり、本実施形態の第1収容部71には、6枚の被加工物90が互いに接触しないように収容可能である。本実施形態では、図を簡略化するため6枚の被加工物90を収容する収容部を例示しているが、収容部に収容可能な被加工物90の枚数は6枚に限られず、これより多くても少なくてもよい。
【0051】
第2収容部72は、第1収容部71と同じ構成をしており、Y方向手前側に開口部72oを有し、内部空間に6枚の被加工物90を収容できる。本実施形態では、加工前の被加工物90を収容する収容部を第1収容部71、加工後の被加工物90を収容する収容部を第2収容部72としている。
【0052】
収容部70として、FOUP(Front Opening Unified Pod)を用いてもよい。FOUPは、半導体ウェハ等の複数の被加工物を互いに接触しないように間隔を空けて収容するために、一般に用いられている容器である。また、FOUPは、蓋で開口を塞ぎ、密閉した状態で持ち運ぶことができるようになっている。したがって、FOUPを用いると、前工程から加工装置10へ、そして加工装置10から後工程への搬送を、被加工物の汚染や破損を防ぎつつ安全かつ確実に行うことができる。
【0053】
1.2 移動部の構成
移動部50は、後述する保持部30をX方向及びY方向に移動させる機能を有しており、Y方向への移動を制御するYs軸移動部(「第2移動部」の一例)51と、X方向への移動を制御するXs軸移動部(「第1移動部」の一例)61と、からなる。
【0054】
<Ys軸移動部>
Ys軸移動部51は、
図1Aに示すように、Y方向に延設される2本のYs軸ボールねじ(「第2案内部」の一例)52と、2本のYs軸ボールねじ52にそれぞれ螺合して、Y方向に自在に往復移動可能な4つのYs軸スライダ53と、2つのYs軸スライダ53に接合されて、2本のYs軸ボールねじ52の間に橋渡される2つのYステージ54と、を有する。2つのYs軸スライダ53と1つのYステージ54とを1つのユニットとして、このユニットがY方向に所定の間隔を空けて一対設けられている。
【0055】
Ys軸ボールねじ52は、加工装置10のX方向の両端において、基台垂直部22の上面にそれぞれ1本ずつ、合計2本がY方向に延設される。Ys軸ボールねじ52は、図示しない駆動部により、軸周りに回転する。
【0056】
Ys軸スライダ53は、Ys軸ボールねじ52と螺合する図示しないナットを内部に有しており、このナットを介してYs軸ボールねじ52と結合している。Ys軸ボールねじ52を回転させることで、Ys軸スライダ53を軸方向であるY方向に移動させることができる。駆動部によるYs軸ボールねじ52の回転方向や回転数を適宜制御することで、Ys軸スライダ53をYs軸ボールねじ52上で任意の速度、任意の方向へ移動させ、また、任意の位置で停止させることができる。
【0057】
2本のYs軸ボールねじ52のどちらにも、それぞれ2個のYs軸スライダ53が螺合しており、Ys軸移動部51が有するYs軸スライダ53は合計4つである。2本のYs軸ボールねじ52の回転方向及び回転数は同期しており、
図1Aのように、4つのYs軸スライダ53は、それぞれが長方形の各頂点となる位置関係を維持したまま、Y方向に往復移動する。
【0058】
Yステージ54は、
図1Cに示すように、断面がL字型でX方向に延びる棒状の部材である。Yステージ54は、4つのYs軸スライダ53のうち、Y座標が等しい2つのYs軸スライダ53の間を架橋するような形で合計2本配設される。Ys軸スライダ53の上面とYステージ54の下面は、相対変位しないように接合されている。Ys軸ボールねじ52を回転させることにより、2本のYステージ54は、所定の間隔を保ったままY方向に往復移動する。2本のYステージ54の上に、Xs軸移動部61が載置される。
【0059】
<Xs軸移動部>
2本のYステージ54の上に載置されるXs軸移動部61の構成は、上述したYs軸移動部51を平面視で90°回転させたような構成をしている。すなわち、
図1Cに示すように、Xs軸移動部61は、X方向に延設される2本のXs軸ボールねじ(「第1案内部」の一例)62と、2本のXs軸ボールねじ62にそれぞれ螺合して、X方向に自在に往復移動可能な4つのXs軸スライダ63と、を有している。そして、2本のYステージに代えて、4つのXs軸スライダ63の上面と接合して、2本のXs軸ボールねじ62の間に橋渡される1つのXYステージ64を有する。
【0060】
Xs軸ボールねじ62は、各Yステージ54上において、Yステージ54の延設方向であるX方向に延設される。Xs軸ボールねじ62は、図示しない駆動部により、軸周りに回転する。
【0061】
Xs軸スライダ63は、Xs軸ボールねじ62と螺合するナットを内部に有しており、このナットを介してXs軸ボールねじ62と結合している。Xs軸ボールねじ62を回転させると、Xs軸スライダ63を軸方向であるX方向に移動させることができる。駆動部によるXs軸ボールねじ62の回転方向や回転数を適宜制御することで、Xs軸スライダ63をXs軸ボールねじ62上で任意の速度、任意の方向へ移動させ、また、任意の位置で停止させることができる。
【0062】
2本のXs軸ボールねじ62のどちらにも、それぞれ2個のXs軸スライダ63が螺合しており、Xs軸移動部61が有するXs軸スライダ63は合計4つである。2本のXs軸ボールねじ62の回転方向及び回転数は同期しており、
図1Aのように、4つのXs軸スライダ63は、それぞれが長方形の各頂点となる位置関係にあり、この位置関係を維持したまま、X方向に往復移動する。
【0063】
<XYステージ>
XYステージ64は、平面視でY方向に長い長方形状をなし、中央に円形の孔64aを有している。孔64aの側面にはローラーベアリング65が嵌入されている。後述する保持部30は、ローラーベアリング65を介して、XYステージ64に対してZ方向にのびるZ軸周りに回転可能な状態で保持されている。
【0064】
XYステージ64は、その下面の四隅においてXs軸スライダ63の上面と接合されており、Xs軸スライダ63のX方向の移動に伴い、一体的に移動する。なお、Xs軸スライダ63は、Y方向に移動可能なYステージ54上にあり、Yステージ54のY方向の移動に伴って一体的に移動する。
【0065】
以上のような構成により、Ys軸移動部51は、Yステージ54をY方向に移動させることができ、さらに、Xs軸移動部61は、XYステージ64をX方向に移動させることができる。そして、Xs軸移動部61はYステージ54上に載置されている。このような構成により、移動部50は、XYステージ64をXY方向の任意の位置に移動させることができる。
【0066】
<移動部に求められる性能について>
以下、Ys軸移動部51及びXs軸移動部61に求められる性能について説明する。各移動部51、61に求められる主な性能として、「直進性」「位置決め精度」「移動速度」の3つが挙げられる。
【0067】
直進性とは、各移動部51、61が、移動させる対象物(本実施形態ではYステージ54又はXYステージ64)をそれぞれの軸方向(Y方向又はX方向)に沿って直進させる性能である。例えば、Xs軸移動部61の直進性が低い場合には、XYステージ64をX方向に移動させる過程において、XYステージ64の軌道がX方向以外の方向(主にY方向)に大きく振れてしまう。逆に、Xs軸移動部61の直進性が高ければ、X方向の移動中におけるY方向の振れは小さくなり、XYステージ64の軌道は、より直線的になる。
【0068】
位置決め精度とは、各移動部51、61が、対象物を所定の位置まで小さな誤差で移動させる性能である。例えば、Xs軸移動部61の位置決め精度が高い場合、所定のX座標の位置に、より小さな誤差で、XYステージ64を移動させることができる。
【0069】
移動速度とは、各移動部51、61が、それぞれの軸方向に対象物を移動させるときに出すことが可能な速度である。例えば、Xs軸移動部61の移動速度が大きい場合、XYステージ64をX方向に高速度で移動させることができる。
【0070】
Xs軸移動部61とYs軸移動部51は、それぞれの役割の違いから、求められる性能が異なっている。本実施形態の加工装置10では、Xs軸移動部61には、Ys軸移動部51と比べて直進性、及び移動速度が求められるが、位置決め精度はYs軸移動部51ほど求められない。また、Ys軸移動部51には、Xs軸移動部61よりも高い位置決め精度が求められるが、直進性及び移動速度はXs軸移動部61ほど求められない。以下に理由を述べる。
【0071】
X方向は加工方向である。仮にXs軸移動部61の直進性が低ければ、保持部30とともにX方向に移動する被加工物90に対して、加工部80がレーザを照射する際に、照射位置が目標位置からY方向に外れ易くなり、加工精度が低下してしまう。したがって、加工精度を上げるため、Xs軸移動部61には高い直進性が求められる。
【0072】
また、X方向は、加工方向であると同時に、受け渡し位置と加工位置とを結ぶ方向でもあり、上述の通りこの間の移動距離は長い。長距離を高速度で移動できれば、移動に要する時間を大きく減少させて、加工装置10の生産性を向上させることができる。したがって、Xs軸移動部61の移動速度は高速度であることが求められる。
【0073】
図10は、後述する被加工物に含まれる、半導体ウェハ91の表面を表している。
図10に示すように、全ての加工ライン95は半導体ウェハ91の表面を横断するように配されている。加工の際に、移動部は、1本の加工ライン95において、一端から他端までの区間を一定速度で移動させつつレーザを照射すればよいため、高い位置決め精度は求められない。具体的には、
図10のR1とR2を結ぶ1本の加工ライン95に沿って加工する際は、R1を始点として、終点のR2まで連続してレーザを照射することになる。実際の工程では、未加工の部分を残さないようにするために、R1より手前(
図10ではR1より右側)からレーザの照射を開始し、半導体ウェハ91をX方向に移動させつつ照射を続け、R2を超えてからレーザの照射を停止する。つまり、R1とR2を結ぶ加工ライン95よりもX方向に長い距離にわたってレーザを照射する。したがって、仮にXs軸移動部61の位置決め精度が低く、加工開始時に半導体ウェハ91のX方向の位置がずれていても、レーザを照射する距離は加工ライン95よりも長いため、R1からR2まで未加工の部分を残さず加工できる。よって、Xs軸移動部61の位置決め精度には、後述するYs軸移動部51ほどの高精度は求められない。
【0074】
一方、上述したように、Y方向はピッチ送り方向である。Ys軸移動部51の位置決め精度が高ければ、加工ライン95の間隔に従って正確な加工が可能になり、加工精度が向上する。したがって、Ys軸移動部51には高い位置決め精度が求められる。
【0075】
レーザを照射して半導体ウェハ91を加工している間はX方向(加工方向)の移動のみであり、Y方向の移動はない。また、上述のように、レーザの照射は加工ライン95よりもX方向に長い距離にわたって行われる。したがって、Ys軸移動部51の直進性が低くX方向に振れが生じていても、加工精度に影響はなく、Ys軸移動部51には高い直進性は求められない。
【0076】
また、1本の加工ライン95について加工を終えると、移動部50は次に加工する加工ライン95の始点にレーザを照射するように半導体ウェハ91を移動させ、加工を再開する。具体的には、
図10に示すように、始点R1から終点R2までの加工を終えると、移動部50は半導体ウェハ91を移動させ、始点R3から加工を再開する。レーザの照射を行わない区間(終点R2から始点R3まで)の移動に要する時間を短縮すれば、加工装置10の生産性を向上させることができる。
【0077】
ここで、R2からR3までの移動をX方向とY方向に分離すると、Y方向は1ピッチ分の移動であり、Y方向の移動距離はX方向の移動距離よりも小さい。仮に各移動部51、61の移動速度が同じであれば、Y方向の移動が先に終わることになる。Y方向の移動は、X方向の移動が終わるまでの間に完了すればよいため、Ys軸移動部51には、Xs軸移動部61ほどの移動速度は求められない。
【0078】
以上述べたように、Ys軸移動部51とXs軸移動部61とには、それぞれ求められる性能、及び、それほど求められない性能がある。したがって、各移動部51、61の設計にあたっては、全ての性能を高めるのではなく、各移動部51、61に求められる性能を満たすようなコスト配分を行うことで、コストを削減して合理的な設計をすることができる。
【0079】
本実施形態に係る加工装置10では、Xs軸移動部61の直進性は、Ys軸移動部51の直進性よりも高い。このようにすると、加工方向に沿って、より直線的な加工ができるため、加工精度が向上する。Ys軸移動部51の位置決め精度は、Xs軸移動部61の位置決め精度よりも高い。このようにすると、正確なピッチ送りができるため、被加工物90の加工精度が向上する。Xs軸移動部61の移動速度は、Ys軸移動部51の移動速度よりも高い。このようにすると、X方向の移動に要する時間を短縮して、加工装置10の生産性が向上する。
【0080】
1.3 保持部の構成
次に、保持部30について説明する。
図3に示すように、保持部30は、θ軸モータ31と、θ軸モータ31の出力軸31aと結合してθ方向に自在に回転可能な回転体32と、回転体32の下面に接合されたチャックヘッド33と、を有する。θ軸とは、出力軸31aと同軸の軸であり、θ方向の回転とは、θ軸周りの回転をいう。
【0081】
θ軸モータ31は、例えば直流モータであり、外部から電力の供給を受けて出力軸31aを回転させる。電流の向きを変えることにより、出力軸31aの回転方向を切り替えることができる。
【0082】
回転体32は、段付きの円柱形状をしており、上端面において、出力軸31aと同軸になるように接合されている。回転体32は孔64aに嵌入しているが、嵌入部分の直径は、XYステージ64の孔64aの直径よりも小さい。嵌入部分における回転体32の側面は、孔64aの内面と、ローラーベアリング65を介して結合しており、回転体32はXYステージ64に対してθ方向に自由に回転できるようになっている。なお、θ軸モータ31と回転体32は、減速機を介して結合する構成であってもよい。
【0083】
チャックヘッド33は、円板状をしており、回転体32の下端面において、回転体32及び出力軸31aと同軸になる位置に接合されている。チャックヘッド33の底面33aに設けられた凹部33bには、吸着チャック34が隙間なく嵌入している。吸着チャック34は、円板状に形成されたポーラスな素材(例えば多孔質セラミック)からなる。チャックヘッド33の底面33aと吸着チャック34の底面は面一状になっている。
【0084】
回転体32及びチャックヘッド33の内部には、凹部33b側の端部に開口を有する吸引通路35が設けられている。吸引通路35の他端は図示しない真空ポンプに接続されている。制御部11は、真空ポンプを用いて、吸引通路35の内部空間の負圧と正圧を切り替えることができる。
【0085】
吸引通路35を負圧にすると、ポーラスな材料からなる吸着チャック34の周囲には、下面側から上面側に向かう空気の流れが生じる。このとき、被加工物90が吸着チャック34の底面に密着していると、被加工物90は吸着チャック34の底面及び底面33aに吸着して吸着チャック34に保持される。被加工物90を保持した状態で、吸引通路35の内部空間を正圧に切り替えると、被加工物90の保持を解除できる。このようにして、保持部30は、底面33aにおいて、底面33aより下方にある被加工物90の保持及び保持の解除を行う。
【0086】
1.4 被加工物の構成
被加工物90は、半導体ウェハ91と、ウェハリング92と、ダイシングテープ93と、からなる。
図4、及び
図4のA-A断面図である
図5に示すように、ダイシングテープ93の一方の面に、半導体ウェハ91及びウェハリング92の双方が貼着され、被加工物90を構成している。
【0087】
ウェハリング92は、略円形のステンレス製の板の中央に、直径W2の円形の開口92aを形成したものである。ウェハリング92の外周は、円の一部を4箇所切欠いて4つの辺を形成した形状である。2組の対向する2辺はそれぞれ平行であり、隣り合う辺を延伸すると直角に交わる。また、対向する2辺の間隔は等しく、その間隔を外形サイズW3とする(
図4、
図5参照)。
【0088】
ダイシングテープ93の一方の面には粘着剤が塗布されている。ダイシングテープ93は、粘着剤が塗布されている面をウェハリング92の板面と対向させて、開口92aを塞ぐように貼着される。
【0089】
半導体ウェハ91は、単結晶シリコンのインゴットを直径W1の円板状に切削加工し、一方の板面にCVD法等により回路パターンを形成したものである。回路パターンを形成した面をデバイス面91a、他方の面をグラインディング面91bとする。本実施形態では、半導体ウェハ91のデバイス面91aが、ダイシングテープ93と対向するように貼着される。
【0090】
図10は、半導体ウェハ91をグラインディング面91b側から見た底面図である。デバイス面91a(
図10で見えている面とは反対側の面)には、矩形の半導体チップがマトリクス状に複数形成されている。加工ライン95は、半導体チップ94の辺を含む直線であり、後述する加工部80によりレーザが照射されるラインである。加工ライン95は、半導体ウェハ91の外縁まで伸びており、他の加工ライン95と直角に交わる。
【0091】
なお、保持部30は、被加工物90を、ダイシングテープ93が上方、半導体ウェハ91が下方になる向きで保持する(
図5参照)。つまり、チャックヘッド33の底面33aは、ダイシングテープ93の、粘着剤が塗布されていない面を、上方から吸着することにより、被加工物90を下向きに保持する。後述する加工部80は、グラインディング面91b側から半導体ウェハ91の加工ライン95に沿ってレーザを照射して加工を行う。
【0092】
1.5 加工部の構成
図3に示すように、加工部80は、Zs軸移動部(「第3移動部」の一例)81と、レーザ発振器85と、カメラ86と、を有する。Zs軸移動部81は、レーザ発振器85をZ方向に移動させる機能を有する。具体的には、Zs軸移動部81は、基台垂直部22に固定され、Z方向に延設されたZs軸ボールねじ82と、Zs軸ボールねじ82と螺合するナットを備えたZs軸スライダ83と、Zs軸スライダ83に固定されたZステージ84と、を有する。Zステージ84には、レーザ発振器85が固定されている。
【0093】
Zs軸移動部81の構成は、上述したYs軸移動部51及びXs軸移動部61の構成と略同じである。すなわち、制御部11は、Zs軸ボールねじ82を、図示しない駆動部により軸周りに回転させることで、Zs軸スライダ83をZ方向に移動させることができる。Zs軸スライダ83にはZステージ84及びレーザ発振器85が固定されているため、Zs軸移動部81により、レーザ発振器85をZ方向に移動させることができる。
【0094】
レーザ発振器85は、一般的なレーザ発振器であり、半導体ウェハ91を透過する性質を有する波長(透過光)のパルスレーザ(以下、単にレーザともいう)を発振する。パルスレーザはレーザヘッド85aの内部で集光され、レーザヘッド85aの上端から、上方の半導体ウェハ91のグラインディング面91bに向けて照射される。パルスレーザは、グラインディング面91bの表面状態を変えることなく、半導体ウェハ91の内部に改質層を形成する。
【0095】
カメラ86は、レーザヘッド85aの近傍に、レーザの照射方向と同じく上方に向けて配設される。カメラ86は、半導体ウェハ91の回路パターン上に設定された任意の測定点を検出し、その座標(Xs、Ys、Zs)を制御部11へ送信する。制御部11は、測定点の座標に基づき、レーザヘッド85aと半導体ウェハ91の相対的な位置関係を算出する。そして、制御部11は、加工部80が半導体ウェハ91の加工ライン95に沿ってレーザを照射できるように、Ys軸移動部51、Xs軸移動部61、Zs軸移動部81をそれぞれ制御する。
【0096】
上述したように、半導体ウェハ91は、グラインディング面91bが下方を向いた状態で保持されている。そのため、カメラ86が可視光線のみを検出するものである場合、カメラ86とは反対側の面に形成されたデバイス面91aの回路パターンを認識することはできない。そこで、本実施形態では、カメラ86として赤外線カメラが使用されている。赤外線はシリコンからなる半導体ウェハ91を透過する性質を有するため、カメラ86により、デバイス面91aに形成された回路パターンをグラインディング面91b側から撮影できる。また、撮影した画像から、予め設定した特定のパターンを認識して、そのパターンが存在する座標(Xs、Ys、Zs)を、画像とともに制御部11に送信することもできる。
【0097】
以上のような構成により、加工部80は、下方から半導体ウェハ91のグラインディング面91bにレーザを照射して、半導体ウェハ91の表面状態を変えることなく内部に改質層を形成する。レーザを照射しながら保持部30をX方向に移動させることで、加工ライン95に沿って改質層を形成することができる。
【0098】
1本の加工ライン95の加工が終わると、Xs軸移動部61及びYs軸移動部51は保持部30を移動させ、加工部80は他の加工ライン95の加工を順次行う。具体的には、
図10に示すR1からR2までの加工を終えると、レーザ照射を停止して保持部30を移動させ、R3からR4までの加工を行う。次いで、同様に、R5からR6までの加工を行う。このようにして、加工部80は
図10におけるX方向の加工ラインに沿って順次加工を行う。X方向の加工ライン95全ての加工が完了すると、θ軸モータ31により被加工物90を90°回転させ、未加工の加工ライン95に対して、上記と同様に順次加工を行う。
【0099】
このようにして、加工部80は、半導体ウェハ91の全ての加工ライン95を加工して、加工ライン95に沿った改質層を形成する。加工開始位置や、終了位置、θ方向の回転角などは、カメラ86で認識した画像及び座標と、記憶部14に格納されたレシピを基に、制御部11が決定する。
【0100】
次に、エキスパンド処理について簡単に説明する。改質層を形成すると、半導体ウェハ91の内部には、改質層から半導体ウェハ91の板面に向かう微小なクラックが発生する。ダイシングテープ93を伸展して半導体ウェハ91に引っ張り応力を加えることにより、改質層を起点にクラックが広がり、半導体ウェハ91は加工ライン95沿いの改質層を分離境界として分離される。このようにして、個々の半導体チップ94を得ることができる。以上がエキスパンド処理である。エキスパンド処理は、加工装置10で実施される処理ではなく、その後の工程で他の装置等により実行される処理である。
【0101】
以上説明したように、加工部80は、加工ライン95に沿ってレーザを照射し、個々の半導体チップ94の分離境界となる改質層を形成する。また、加工部80は、半導体ウェハ91に対してレーザを照射する部分であるため、照射部ともいう。
【0102】
1.6 搬出入部の構成
続いて、収容部70から被加工物90の搬出入を行う搬出入部について説明する。加工装置10が有する2つの搬出入部は、
図1Aの左側が第1搬出入部110、右側が第2搬出入部120である。これらはそれぞれ「搬出入部」の一例であり、同一の構成である。以下、第1搬出入部110の構成を説明する。
【0103】
図6、
図7に示すように、第1搬出入部110は、Z1軸移動部111、Y1軸移動部112、第1搬送ハンド(「搬送ハンド」の一例)113、仮位置決めユニット130を有する。Y1軸及びZ1軸は、第1搬送ハンド113が移動するときの軸であり、Y軸及びZ軸とそれぞれ平行な軸である。
【0104】
Z1軸移動部111は、基台水平部21に固定され、Z方向に延設されたZ1軸ボールねじ111aと、Z1軸ボールねじ111aと螺合するナットを備えたZ1軸スライダ111bと、Z1軸スライダ111bに固定されたZ1ステージ111cと、を有する。Z1ステージ111cには、後述するY1軸移動部112及び仮位置決めユニット130が配設されている。
【0105】
Z1軸移動部111の構成は、上述したZs軸移動部81の構成と略同じである。すなわち、制御部11は、Z1軸ボールねじ111aを図示しない駆動部により軸周りに回転させて、Z1軸スライダ111bをZ方向に移動させることができる。Z1軸スライダ111bにはZ1ステージ111cが固定されているため、Z1軸移動部111を動作させることにより、Z1ステージ111c上に配設されたY1軸移動部112及び仮位置決めユニット130がZ方向に移動する。
【0106】
Y1軸移動部112は、Z1ステージ111cの上面に固定され、Y方向に延設されたY1軸ボールねじ112aと、Y1軸ボールねじ112aと螺合するナットを備えたY1軸スライダ112bと、を有する。
【0107】
上述したZ1軸移動部111と同様に、制御部11は、Y1軸ボールねじ112aを図示しない駆動部により軸周りに回転させることで、Y1軸スライダ112bをY方向に移動させることができる。制御部11は、Z1軸移動部111及びY1軸移動部112を動作させることにより、Y1軸スライダ112bを、YZ方向に自在に移動させることができる。
【0108】
<搬送ハンド>
図6に示すように、第1搬送ハンド113は、略Y字型をなす金属板であり、例えばステンレス鋼からなる。第1搬送ハンド113の基端部113aは、Y1軸スライダ112bの上面と接合されている。そのため、Y1軸スライダ112bと第1搬送ハンド113は、一体的に移動する。
【0109】
第1搬送ハンド113の先端部113bは、2本に枝分かれしており、それぞれY方向に延設される。先端部113bの内側同士の間隔をL1、外側同士の間隔をL2、先端部113bのY方向の長さをL3とする。以下、これらの寸法に求められる条件について説明する。
【0110】
先端部113bの内側同士の間隔L1は、半導体ウェハ91の直径W1よりも大きくなるように設定される。このようにすると、第1搬送ハンド113の上面に被加工物90を載置するときに、先端部113bの2本の枝の真中と半導体ウェハ91の中心が重なるようにすると、第1搬送ハンド113が半導体ウェハ91に接触しないからである。
【0111】
また、先端部113bの外側同士の間隔L2、及びY方向の長さL3は、ウェハリング92の外形サイズW3よりも小さい。このようにすると、第1搬送ハンド113の上面に被加工物90を載置するときに、被加工物90の少なくとも一部が、平面視にて先端部113bの外周からはみ出す。被加工物90のはみ出した部分をさらに外側から挟み込むことで、後述する仮位置決めユニット130による仮位置決めが可能になる。
【0112】
以上が第1搬出入部110の構成である。第2搬出入部120は、第1搬出入部110と同一の構成であるため、詳細な説明は省略する。第2搬出入部120が有する第2搬送ハンド(「搬送ハンド」の一例)123の移動軸を、それぞれY2軸及びZ2軸とする。第2搬出入部120は、Z2軸移動部121、Y2軸移動部122、第2搬送ハンド123を有している。
【0113】
1.7 仮位置決めユニットの構成
仮位置決めユニット130は、第1搬送ハンド113上の被加工物90を、第1搬送ハンド113上における所定の位置(通常は先端部113bの中央)に移動させるものである。
図8に示すように、仮位置決めユニット130は、上下ステージ131と、シリンダ132と、Y挟持部133と、X挟持部137と(
図6参照)、を有する。Y挟持部133と、X挟持部137は、それぞれ「挟持部」の一例である。
【0114】
シリンダ132は、一般的なエアシリンダであり、円筒状のシリンダ本体132aと、シリンダ本体132aに嵌入され、シリンダ本体132aの軸方向に変位するロッド132bと、からなる。複数のシリンダ本体132aが、ロッド132bを上方に向けた状態で、Z1ステージ111cに埋め込まれている。複数のシリンダ132は、それぞれ図示しない空気供給路及び空気ポンプと接続されている。制御部11は、空気供給路の空気圧を、正圧又は負圧に切り替えることで、複数のシリンダ132のロッド132bを同時に上下させることができる。
【0115】
上下ステージ131は、複数のロッド132bの上端と接合された板状のステージである。制御部11が空気供給路の空気圧を正圧にすると、複数のシリンダ132が同時に上方に伸長して、上下ステージ131は上方に移動する。また、空気圧を負圧に切り替えると、複数のシリンダ132が同時に縮み、上下ステージ131は下方に移動する。
【0116】
上下ステージ131の上面131aには、Y挟持部133と、X挟持部137が配設されている。
【0117】
Y挟持部133は、平行チャック134と、Y挟持部材135と、ガイドレール135cと、ガイドブロック135dと、を有する。Y挟持部材135と、後述するX挟持部材138は、それぞれ「一対の挟持部材」の一例である。
【0118】
平行チャック134は、内部に2つのシリンダが逆向きに配設された本体部134aと、一対の爪部134b、134cと、を有する。本体部134aは図示しない空気供給路及び空気ポンプと接続されている。一対の爪部134b、134cは、本体部134aの両端にそれぞれ配されており、制御部11が、空気供給路の空気圧を正圧又は負圧に切り替えると、爪部134b、134cの間隔を広げたり、狭くしたりできる。このとき、各爪部134b、134cは逆向きに同じ距離だけ移動する。
【0119】
Y挟持部材135は、
図8に示すように、X方向から見てL字型をなす2つの挟持部材135a、135bからなる。挟持部材135aは、水平部135a1及び垂直部135a2からなり、水平部135a1の一端が爪部134cと結合している。水平部135a1の他端からは、垂直部135a2が垂直に立ち上がっている。また、水平部135a1の下面は、ガイドブロック135dが結合している。ガイドブロック135dは、上下ステージ131の上面131a上にY方向に延設されるガイドレール135cと滑合している。したがって、ガイドブロック135d及びガイドブロック135dと結合している挟持部材135aは、ガイドレール135c上でY方向に移動することができる。
【0120】
もう一方の挟持部材135bも、水平部135b1、及び垂直部135b2からなり、挟持部材135aとは逆向きに同様の構成を有し、Y方向に移動できるようになっている。
【0121】
Y挟持部133は次のように動作する。制御部11が平行チャック134を動作させると、Y挟持部材135は、挟持部材135a、135bのY方向の間隔を広げたり、狭くしたりできる。
図8に示すように、挟持部材135a、135bの間隔を広げた状態で、2つの垂直部135a2、135b2の間に被加工物90を載置した第1搬送ハンド113を配する。次に、挟持部材135a、135bの間隔を狭くすると、それぞれの垂直部135a2、135b2で被加工物90を挟み込むことができる。2つの爪部134b、134cは逆向きに同じ距離移動するため、挟持部材135a、135bが被加工物90を挟み込むことで、被加工物90を、第1搬送ハンド113上のY方向における所定の位置に移動させることができる。なお、被加工物90を移動させた後は、挟持部材135a、135bの間隔を広げて被加工物90の挟み込みを解除する。
【0122】
X挟持部137は、Y挟持部133を平面視90°回転させた構成であるため、詳細な説明は省略する。X挟持部137は、X挟持部材(「一対の挟持部材」の一例)138a、138bを有し、それぞれの挟持部材の垂直部138a2、138b2で被加工物90を挟み込むことにより、第1搬送ハンド113上において、被加工物90をX方向における所定の位置に移動させることができる。
【0123】
以上のことから、仮位置決めユニット130は、Y挟持部材135及びX挟持部材138で被加工物90を挟み込むことにより、第1搬送ハンド113上の所定の位置に被加工物90を移動させる、仮位置決めを行うことができる。本実施形態の仮位置決めは、被加工物90を、半導体ウェハ91の中心と、第1搬送ハンド113の先端部113bの中心が一致するように移動させるものであり、センタリングともいう。
【0124】
1.8 ウェハ傾き補正処理の説明
上述したように、加工装置10は、保持部30が保持する被加工物90に下方からレーザを照射しつつ、保持部30をX方向に移動させることで、格子状の加工ライン95に沿って加工を行う。このような加工を高精度に行う場合、レーザを照射するレーザヘッド85aと半導体ウェハ91の面(ここではデバイス面91aとする)の位置関係を高精度に制御することが重要である。
【0125】
そこで、加工装置10は、レーザヘッド85aとデバイス面91aの距離Fを一定に保つために、ウェハ傾き補正処理を行う。
【0126】
デバイス面91aがX軸に対して傾いている状態では、半導体ウェハ91をX方向に移動させると、X方向の移動に伴って距離Fが変化する。距離Fが変化すると、半導体ウェハ91の内部でレーザが集束する深さが変化したり、レーザが半導体ウェハ91の内部で集束せず、改質層を形成できなくなったりするおそれがある。
【0127】
そこで、ウェハ傾き補正処理として、半導体ウェハ91の傾きをレーザ照射前に求めておき、その傾きに沿ってレーザ発振器85をZ方向に移動させて、レーザヘッド85aとデバイス面91aの距離Fを一定に保つ処理を行う。以下、
図9のフローチャート及び
図10~
図12を用いてウェハ傾き補正処理を具体的に説明する。
【0128】
ウェハ傾き補正処理は、まず「ウェハ傾き算出処理」を行い、次に「XsZs軸同期制御」を行う。以下、ウェハ傾き算出処理について説明する。
【0129】
<ウェハ傾き算出処理>
デバイス面91aに形成するパターン中に、
図10に示すように、任意の測定点P1、P2、P3を予め設定しておく。各測定点P1~P3としては、デバイス面91a上で一直線に並ぶ3点ではなく、三角形の各頂点となりうる3点を設定する。また、各測定点間の距離を大きくした方が、より高精度に傾きを算出できる。デバイス面91aにおける測定点P1~P3の例を、
図10に示す。
【0130】
デバイス面91aがX軸及びY軸に対して完全に平行となる理想的な状態を仮定したときの各測定点P1~P3のXYZ座標を、基準座標とする。基準座標の具体的な値は、半導体ウェハ91上における測定点P1~P3の設計上の位置から計算で求めることができ、それぞれ記憶部14に記憶されている。
【0131】
制御部11がウェハ傾き算出処理を開始すると、制御部11は、保持部30に半導体ウェハ91(被加工物90)が供給された直後、あるいは、θ軸モータ31が回転体32を45°以上回転させた直後か否かを判断する。
【0132】
半導体ウェハ91の供給直後やθ方向の回転の直後であれば(S81:YES)、デバイス面91aの傾きが不明であるか、前回の傾き補正時からずれている可能性が高いため、以下の処理を続行する。これら以外の場合は(S81:NO)、前回の補正時と同様の傾きに基づき後述するXsZs軸同期制御を行うため、ウェハ傾き算出処理を終了する。
【0133】
S81でYESとした場合、次に、制御部11は、カメラ86の視野中に測定点P1が入るように保持部30をXY方向に移動させる。制御部11は、カメラ86が撮影した画像に、Zs軸を用いたコントラスト法を行い、Xs軸、Ys軸、Zs軸それぞれの位置から測定点P1の計測座標(Xs1、Ys1、Zs1)を測定する(S82)。
【0134】
次に、制御部11は、測定点P1の基準座標とS82で測定した座標とを比較し、基準座標とのずれ量ΔXs1、ΔYs1、ΔZs1をそれぞれ算出する(S83)。
【0135】
測定点P2においても測定点P1と同様の測定を行い(S84)、制御部11は、基準座標とのずれ量ΔXs2、ΔYs2、ΔZs2をそれぞれ算出する(S85)
【0136】
このようにして求めたずれ量(ΔXs1、ΔYs1)、及び(ΔXs2、ΔYs2)から、測定点P1、P2がそれぞれX軸及びY軸に対して基準座標からどれだけずれているかがわかる。また、基準座標の線分P1P2と、計測座標の線分P1P2とがなす角度が、デバイス面91aのθ方向のずれ量Δθである(S86)。
【0137】
次に、制御部11は、ずれ量Δθが、所定の公差Δθ0以内か否かを判断する(S87)。ずれ量Δθが公差Δθ0よりも大きい場合(S87:NO)、制御部11は、Δθが0になるようにθ軸を補正する。
【0138】
具体的には、制御部11は、θ軸モータ31を駆動して、回転体32を-Δθだけ回転させる。これにより、ずれ量Δθはキャンセルされ、それを確認するために再度S82に戻り、測定点P1、P2の座標を測定してずれ量ΔXs1等を算出する。
【0139】
一方、ずれ量Δθが公差Δθ0よりも小さい場合(S87:YES)、制御部11は、測定点P3のXYZ座標の測定(S89)、及び、ずれ量ΔXs3、ΔYs3、ΔZs3の算出を行う(S90)。
【0140】
これにより、デバイス面91a上の3つの測定点P1~P3の座標が全て得られたため、制御部11は、デバイス面91aを一意に特定して、傾きを算出できる(S91)。そして、ウェハ傾き算出処理は終了する。
【0141】
<XsZs軸同期制御>
次に、制御部11は、XsZs軸同期制御を実行する。既にデバイス面91aは特定できており、Zs軸及びXs軸に対するデバイス面91aのZ座標とX座標は、
図11のような線分で表すことができる。したがって、保持部30をX方向に移動させつつ加工を行う際、距離Fを一定に保つためには、レーザヘッド85aを、この線分に合わせてZ方向に移動させるとよい。
【0142】
XsZs軸同期制御を行うときの、保持部30、及び一体的に移動する半導体ウェハ91のX方向の移動速度Vx(t)と、レーザヘッド85aのZ方向の移動速度Vz(t)との関係は、下記の(1)式により表される。aは、
図11の線分の傾きの逆数である。また、横軸を時間、縦軸を速度として、加工前後を含めた速度Vx(t)及び速度Vz(t)の値をプロットすると、
図12のようになる。
Vx(t)=a×Vz(t)・・・(1)
【0143】
図12には、時間t=0のときに保持部30のXs軸方向の移動及びレーザヘッド85aのZs軸方向の移動を開始し、加速後に一定速度で加工を行い、加工を終えて減速、停止するまでの速度をプロットしている。したがって、グラフ中の平坦な部分が加工区間であり、この間レーザヘッド85aから半導体ウェハ91に向けてレーザを照射している。
【0144】
このようにすると、レーザを照射している加工区間の最初から最後まで、速度Vx(t)及び速度Vz(t)は(1)式を満たしつつ、ともに一定である。つまり、傾き1/aで傾いている半導体ウェハ91が一定速度Vx(t)でXs軸方向に移動し、その半導体ウェハ91に対してレーザヘッド85aが一定速度Vz(t)=Vx(t)/aでZs軸方向に移動する。したがって、XsZs軸同期制御を行うと、加工区間の最初から最後まで、距離Fの値は一定である。
【0145】
ウェハ傾き算出処理とXsZs軸同期制御からなるウェハ傾き補正処理は、以上のようにして行われる。これにより、デバイス面91aが傾いていたとしても、傾きを補正して、レーザがONになっている加工区間において、距離Fを一定に保つことができる。このウェハ傾き補正処理は、加工の実行前に毎回行われ、Zs軸方向の加工精度を高めている。
1.9 事前キャリブレーション処理の説明
上述したウェハ傾き補正処理では、デバイス面91aに計測点P1~P3を設け、各計測点P1~P3の計測座標に基づきデバイス面91aの傾きを算出した。このウェハ傾き補正処理を実行する前に、加工部80と保持部30の間で事前キャリブレーション処理を行ってもよい。
【0146】
事前キャリブレーション処理は、チャックヘッド33の底面33aを一意に特定して、特定した底面33aに基づき、デバイス面91a上の測定点P1~P3のZ座標を推定する処理である。予め測定点P1~P3のZ座標を推定することにより、ウェハ傾き補正処理におけるZ座標の測定を短時間で行うことができる。以下、具体的なフローについて説明する。
【0147】
具体的なフローは
図13に示しているが、これは上述したウェハ傾き補正処理のウェハ傾き算出処理(
図9)とほぼ同じである。すなわち、予め底面33a上に、
図14に示すような任意の測定点Q1~Q3を設定しておく。そして、制御部11は、まず2点(Q1、Q2)の実測座標から、θ方向のずれ量Δθを求め、Δθが0になるようにθを補正する(スタート~S108)。
【0148】
次に、制御部11は、測定点Q3の座標を測定し、3つの測定点Q1~Q3から、底面33aを一意に特定する(S109~エンド)。
【0149】
底面33aを特定すると、底面33a上において任意のXY座標を有する点の、Z座標を算出できる。底面33aとデバイス面91aは、
図3に示すように非常に近接しており、間にはダイシングテープ93を挟むのみである。したがって、底面33a上のZ座標を算出することで、デバイス面91a上に設定されている、測定点P1~P3のZ座標に近い値を求めることができる。
【0150】
なお、事前キャリブレーション処理は、底面33aで被加工物90を保持する前に行ってもよいし、本実施形態のように、被加工物90の保持後であって、ウェハ傾き補正処理の実行前に行ってもよい。
【0151】
2.動作フローの説明
図15は、加工装置10全体で行われる処理を説明するためのフローチャートである。実際の加工装置10では各処理は並行して実行されるが、以下において、主に第1搬出入部110で行われる供給処理(S11~S17)と、主に第2搬出入部120で行われる収容処理(S31~S37)と、これらの処理に加工部80で行われる加工処理(S21~S29)を加えた全体処理と、に分割して説明する。
【0152】
2.1 供給処理の説明
供給処理は、第1収容部71内に収容されている加工前の被加工物90を、第1搬出入部110の第1搬送ハンド113を用いて保持部30のチャックヘッド33へ供給する処理である。以下、供給処理の1サイクルである、S11~S17について説明する。
【0153】
第1搬出入部110の初期状態を
図16Aに示す。第1収容部71の内部空間には、被加工物90がZ方向に間隔を開けて複数収容されている。制御部11は、Z1軸移動部111を動作させて、第1搬送ハンド113の高さが、これから保持部30へ供給しようとする被加工物90の底面よりもわずかに低くなるように、第1搬送ハンド113を移動させる。
【0154】
制御部11は、Y1軸移動部112を動作させて、第1搬送ハンド113の先端部113bが被加工物90と接触しないように、第1搬送ハンド113を第1収容部71の内部に挿入する(
図16B、S11)。
【0155】
制御部11は、第1搬送ハンド113を上昇させる。被加工物90は先端部113bにより持ち上げられ、先端部113bの上面に、被加工物90が載置される(
図16C、S12)。
【0156】
制御部11は、先端部113bに被加工物90を載置したまま、第1搬送ハンド113を第1収容部71から引き抜く(
図16D、S13)。このとき、被加工物90は、
図6に示すように、平面視にてY挟持部133の2つの垂直部135a2及び135b2と、X挟持部137の2つの垂直部138a2及び138b2と、に囲まれた位置に配される。
【0157】
制御部11は、シリンダ132を動作させて、上下ステージ131を上昇させる。上下ステージ131とともにY挟持部133及びX挟持部137も上昇し、Y挟持部133及びX挟持部137の各垂直部の上端は、被加工物90よりも上になる(
図16E、S14)。
【0158】
次いで、Y挟持部133を動作させる。Y挟持部133が被加工物90の側面を両側から挟み込み、Y方向の仮位置決めをする(
図16F)。次いでX挟持部137においても同様の操作を行い、X方向の位置決めをする(
図16G)。これにより、第1搬送ハンド113の先端部113bにおいて、所定の位置に被加工物90が移動したことになる。そして、制御部11は、シリンダ132を動作させて、上下ステージ131を下降させる(
図16H)。以上で仮位置決めは完了する。
【0159】
次に、制御部11は、Xs軸移動部61及びYs軸移動部51を動作させて、チャックヘッド33を所定の受け渡し位置(第1受け渡し位置)に移動させる(S28)。第1受け渡し位置は、先端部113bの真上である。チャックヘッド33が第1受け渡し位置に到着した後に、第1搬送ハンド113を第1受け渡し位置まで上昇させて(S15)、チャックヘッド33の真空引きをONにする(S16)。これにより、チャックヘッド33は、その底面33aにおいて、被加工物90の上面を吸着保持する(
図16I)。確実に吸着保持したか否かを判定するため、保持部30には、図示しない空気圧センサが配設され、吸引通路35の空気圧をモニタしている。空気圧センサが示す空気圧の低下は、チャックヘッド33が被加工物90を保持したことを表す。
【0160】
制御部11は、空気圧センサが示す圧力の低下によりチャックヘッド33が被加工物90を保持したことを確認した後に、空荷になった第1搬送ハンド113を、次にチャックヘッド33へ供給する被加工物90の高さまで下降させ(S17)、第1搬送ハンド113を第1収容部71に挿入する(S11、
図16B)。以上が第1搬出入部110による供給処理の1サイクルである。
【0161】
なお、第2搬出入部120も第1搬出入部110と同一の構成であるため、第2搬出入部120が供給処理を行うこともできる。
【0162】
2.2 収容処理の説明
次に、収容処理について説明する。収容処理は、チャックヘッド33が保持する加工後の被加工物90を、第2搬出入部120の第2搬送ハンド123を用いて第2収容部72へ収容する処理である。以下、収容処理の1サイクルである、S31~S37を説明する。
【0163】
第2搬出入部120の初期状態を
図17Aに示す。第2搬出入部120の内部空間には、加工後の被加工物90がすでに5枚収容されているが、最上段の収容位置が空いており、ここに被加工物90を収容する。制御部11は、第2搬送ハンド123が、所定の受け渡し位置(第2受け渡し位置)の真下に位置するように、Z2軸移動部121及びY2軸移動部122を動作させる。このとき、チャックヘッド33と第2搬送ハンド123の衝突を避けるため、第2搬送ハンド123は、第2受け渡し位置よりも下方で待機する(
図17A、S31)。
【0164】
次に、制御部11は、加工済みの被加工物90を保持したチャックヘッド33を、第2受け渡し位置に移動させる。チャックヘッド33が第2受け渡し位置に到着したことを確認後、制御部11は、第2搬送ハンド123を第2受け渡し位置まで上昇させ(
図17B、S32)、チャックヘッド33の真空をOFFにする(S33)。すると被加工物90の保持が解除されて、被加工物90は第2搬送ハンド123に載置される。
【0165】
制御部11は、図示しない空気圧センサにより測定した吸引通路35の空気圧が常圧になったことを確認後、加工後の被加工物90が載置された第2搬送ハンド123を下降させ、最上段の収容位置よりもわずかに高い位置で静止させる(
図17C、S34)。
【0166】
なお、空荷になったチャックヘッド33は、第1受け渡し位置まで移動して、第1搬送ハンド113から被加工物90を受け取る(S28、S15)。
【0167】
次に、制御部11は、第2搬出入部120が有する仮位置決めユニット130を動作させて、第2搬送ハンド123上の先端部123bにおいて、被加工物90の仮位置決めを行う(
図17D~
図17G、S35)。被加工物90を第2収容部72へ収容する前に位置決めを行うことで、収容中に被加工物90が第2収容部72の壁面に接触して落下し、加工後の半導体ウェハ91が破損することを抑制できる。仮位置決めの詳細は、上述した供給動作と同じなので、説明を省略する。
【0168】
制御部11は、第2搬送ハンド123を第2収容部72の内部に挿入する(
図17H、S36)。続いて、第2搬送ハンド123を下降させて、第2収容部72内部の凸部73上に被加工物90を載置して(
図17I、S37)、第2搬送ハンド123を引き抜く。その後、制御部11は第2搬送ハンド123を第2受け渡し位置に移動させ(S31)、待機させる。以上が第2搬出入部120による収容処理の1サイクルである。
【0169】
なお、第1搬出入部110も第2搬出入部120と同一の構成であるため、第1搬出入部110が供給処理を行うこともできる。
【0170】
2.3 全体の処理の説明
次に、上述した供給処理及び収容処理に、加工部80によるレーザ加工を施す加工処理を加えた、加工装置10全体で行われる処理について
図18A~
図18Hを参照して説明する。
【0171】
図18Aに示す初期状態において、第1搬出入部110及び第2搬出入部120は、上述した供給処理及び収容処理の初期状態(
図16A、
図17A)と同じ状態にある。また、チャックヘッド33の位置は、
図1Bのように、レーザ発振器85の真上(以下、加工位置という)であるが、チャックヘッド33は被加工物90を保持していないとする。
【0172】
全体の処理を開始すると(スタート)、制御部11は、まず上述した供給処理を実行する。具体的には、第1搬送ハンド113を第1収容部71に挿入して加工前の被加工物90とともに引き抜く(S11~S14、
図18B、
図18C)。続いて、チャックヘッド33を第1受け渡し位置に移動させて(S28)、第1搬送ハンド113上に載置された被加工物90を保持する(S15~S17、
図18D)。
【0173】
チャックヘッド33が被加工物90を保持したところで、保持している被加工物90に予定されているレシピ内の加工が全て完了したか否かを判断する。通常は1枚の被加工物90に対し、複数回の加工が行われるので、これまでに加工した内容が記録された実績データと、加工のレシピを照合して制御部11が判断する(S21)。
【0174】
ここで、保持している被加工物90の加工が完了していない場合(S21:NO)、制御部11はレシピを参照して、上述した事前キャリブレーションを実行するか否かを判断する(S22)。制御部11は、必要であれば事前キャリブレーション処理を実行する(S23)。さらに、ウェハ傾き補正処理を実行するか否かも判断し、必要であれば実行する(S24、S25、
図18E)。これにより、チャックヘッド33のXYZθ位置がそれぞれ調整される。
【0175】
次に、制御部11は、チャックヘッド33を加工開始位置に移動させる(S26)。続いて、加工が終了する位置まで、Xs軸移動部61、及びZs軸移動部81(
図3参照)によりチャックヘッド33とレーザ発振器85を移動させながら、レーザヘッド85aから半導体ウェハ91にレーザを照射して、加工を実施する(S27、
図18F)。
【0176】
加工が終わるとS21に戻り、制御部11は、レシピ内の加工が全て完了したか否か、再度判断する。このようにして、レシピ内の加工を完了するまでS21~S27を繰り返す。
【0177】
なお、保持部30と加工部80がキャリブレーション~加工(S21~S27)を繰り返している間、第1搬出入部110では供給処理の一部(S11~S14)が同時並行的に行われており、第1搬送ハンド113上に、次に加工する予定の被加工物90が準備される(
図18F)。
【0178】
制御部11は、レシピ内の加工が全て完了したと判断すると(S21:YES)、チャックヘッド33を第2受け渡し位置へ移動させて(S29)、被加工物90を第2搬送ハンド123に渡す(S32~S33、
図18G)。そして、第2搬出入部120で収容処理を実行し、チャックヘッド33が保持している被加工物90を第2収容部72に収容する(S34~S37、
図18H)。
【0179】
制御部11は、第2搬出入部120における収容処理と同時並行して、チャックヘッド33に、次に加工する被加工物90を受け取らせる。具体的には、チャックヘッド33は、加工後の被加工物90を第2搬送ハンド123に渡して空荷になると(S33~S34)、第1受け渡し位置に移動して(S28)、既に第1搬送ハンド113上に準備されている被加工物90を受け取る(S15~S17)。そして、制御部11は、被加工物90について、レシピ内の加工が完了したか否かの判断を行う(S21)。
【0180】
全体処理はこのようにして実行され、第1収容部71に収容されている全ての被加工物90の加工が完了して、加工後の被加工物90が第2収容部72に収容されるまで、供給処理、収容処理とともに全体処理が繰り返される。
【0181】
3.効果説明
以下、本実施形態に係る加工装置10の効果について説明する。
【0182】
このような構成の加工装置10では、第1搬送ハンド113に載置された被加工物90を、保持部30によって上方から保持することで、保持部30に直接渡すことができる。また、逆に、保持部30の下方に保持した被加工物90を第2搬送ハンド123に直接渡すこともできる。
【0183】
これにより、第1搬送ハンド113、123と保持部30との間で被加工物90を仮置きするためのスペース(以下、仮置きスペース)が不要になり、加工装置10を小型化、省スペース化できる。
【0184】
また、仮置きスペースを介さず直接受け渡すことで、収容部70に収容されている被加工物90の受け渡し回数を低減できる。具体的には、仮置きスペースを介した受け渡しでは、「収容部-搬送ハンド-仮置きスペース-保持部」、の順に受け渡されるため、受け渡し回数は4回である。これに対し、本実施形態では、「収容部70-第1搬送ハンド113-保持部30」、の間で受け渡しが行われるため、加工開始までの受け渡し回数は2回で済む。これにより、受け渡しに要する時間を短縮して、収容部70内にある被加工物90の加工を短時間で開始できる。また、加工後の被加工物90を短時間で収容部70に収容できる。したがって、加工装置10の生産性が向上する。
【0185】
また、受け渡しの際には、被加工物90に衝撃が加わったり、他の部材と接触したりして被加工物90が破損するおそれがある。本実施形態では、受け渡し回数を低減できるため、被加工物90に衝撃等が加わる機会を低減して破損を防ぎ、歩留まりの低下を抑制できる。
【0186】
さらに、加工部80は、保持部30によって上方から保持された被加工物90を、下方から加工する。加工により生じた塵埃は落下するため、被加工物90に付着しにくい。これにより、被加工物90を清浄に保ち、コンタミネーションを低減して歩留まりの低下を抑制できる。
【0187】
また、加工装置10は、挟持部(Y挟持部133、X挟持部137)を含み、挟持部133、137は、搬送ハンド(第1搬送ハンド113、第2搬送ハンド123)に載置した被加工物90の側面を外側から挟み込んで、搬送ハンド上における被加工物90を仮位置決めする。
【0188】
仮位置決めは、被加工物90を、保持部30の所定の位置に保持させること、及び、収容部70の所定の位置に収容することを目的として行う。仮位置決めを行うことにより、レーザの照射位置を短時間で加工開始位置に移動させることができる。また、被加工物90を収容部70に収容する際の、位置ずれによる落下を抑制して、スムーズに収容できる。
【0189】
また、このようにすると、被加工物90を第1搬送ハンド113等に載置したまま位置決めができるため、仮位置決めのための別途スペース(仮位置決めテーブル)を設ける必要がなく、加工装置10を省スペース化できる。
【0190】
また、被加工物を仮位置決めテーブルに載置する必要がないため、被加工物90の受け渡し回数を低減できる。これにより、タクトタイムが短縮されて生産性が向上する。また、受け渡し時に生じる被加工物90の破損を低減して、歩留まりの低下を抑制できる。
【0191】
また、移動部50は、上下方向と直交するX方向(第1方向)に保持部30を移動させるXs軸移動部(第1移動部)61と、上下方向及びX方向と直交するY方向(第2方向)に保持部30を移動させるYs軸移動部(第2移動部)51と、を含み、X方向は、被加工物90の加工の際の加工方向であり、Y方向は、被加工物90のピッチ送り方向であり、保持部30が搬送ハンド(第1搬送ハンド113又は第2搬送ハンド123)との間で被加工物90を受け渡す位置(受け渡し位置)と、加工部80が被加工物90の加工を行うときの保持部30の位置(加工位置)は、X方向に並んでいる。
【0192】
保持部30の移動距離は、ピッチ送りを行うY方向よりも、受け渡し位置と加工位置の間で保持部30を移動させるX方向の方が大きい。また、被加工物90の加工を行う加工方向と、受け渡し位置と加工位置の間で保持部30が移動する方向は、同じX方向である。
【0193】
このような構成では、保持部30の移動に要する時間を短縮して生産性の向上を図るためには、移動距離の大きいX方向の移動速度を高速度にすることが特に有効である。さらに、加工ライン95に沿って直線的な加工を行うために、X方向の移動には、高い直進性が求められる。一方、ピッチ送り方向であるY方向の移動においては、被加工物90を高精度に加工するために、X方向よりも高い位置決め精度が求められる。
【0194】
つまり、相対的に移動距離が大きく、加工方向でもあるX方向の移動を行うXs軸移動部61を、移動速度及び直進性を重視した設計にできる。一方、ピッチ送り方向の移動を行うYs軸移動部51は、移動速度及び直進性よりも、位置決め精度を重視した設計にすればよい。このように、Xs軸移動部61とYs軸移動部51でそれぞれの役割に合わせて合理的な設計が可能になり、加工装置10のコストを低減できる。
【0195】
また、搬送ハンド(第1搬送ハンド113及び第2搬送ハンド123)が収容部70から被加工物90を搬出入する方向は、Y方向であり、収容部70は、移動部50が移動可能な領域と、平面視にて少なくとも一部が重畳するように、移動部50の下方に配されている。
【0196】
上述したように、受け渡し位置と加工位置はX方向に並び、これらの間を保持部30が移動する距離は、保持部30がY方向(ピッチ送り方向)に移動する距離よりも大きい。そのため、収容台69を除いた加工装置10の形状は、X方向に長い。
【0197】
仮に、収容部70から被加工物90を搬出入する方向をX方向とすると、収容台69は受け渡し位置のX方向に配されるため、収容台69を含めた加工装置10は、さらにX方向に大きくなる。一方、被加工物90の搬出入方向をY方向にすると、収容台69を受け渡し位置のY方向に配することができるため、加工装置10のX方向の長さは大きくならない。
【0198】
また、収容部及び収容台69は、平面視にて移動部50の移動可能領域と重畳するため、加工装置10が第2方向に大きくなることを抑制できる。これにより、加工装置10を省スペース化することができる。
【0199】
また、Xs軸移動部61(第1移動部)は、第1方向(X方向)にのびて前記第2方向(Y方向)に並ぶ平行な一対(2本)のXs軸ボールねじ(第1案内部)62を含み、一対のXs軸ボールねじ62は、Xs軸スライダ63及びXYステージ64を介して、保持部30をX方向に移動可能に支持している。
【0200】
保持部30を、一対(2本)のXs軸ボールねじ62で支持するため、保持部30を強固に支持してガタツキを抑え、振動を抑制できる。これにより、保持部30が保持する被加工物90が落下しにくくなり、保持部30のX方向の高速移動が可能になる。
【0201】
また、Ys軸移動部51は、Y方向にのびてX方向に並ぶ平行な一対(2本)のYs軸ボールねじ52を含み、一対のYs軸ボールねじ52は、Xs軸移動部61をY方向に移動可能に支持している。
【0202】
このようにすると、一対(2本)のYs軸ボールねじ52で、Xs軸移動部61を支持するため、Xs軸移動部61を強固に支持してガタツキを抑制できる。これにより、ピッチ送りを行うY方向の移動において、保持部30の姿勢が安定するため、高精度なピッチ送りが可能になる。
【0203】
また、収容部70は、加工前の被加工物90を収容する第1収容部71と、加工後の被加工物90を収容する第2収容部72と、を含み、搬送ハンドは、第1収容部71から被加工物90を搬出して、保持部30に渡す第1搬送ハンド113と、被加工物90を保持部30から受け取り第2収容部72に搬入する第2搬送ハンド123と、を含んでいる。
【0204】
このようにすると、供給処理を第1搬送ハンド113で行い、収容処理を第2搬送ハンド123で行うことができる。したがって、保持部30は、加工後の被加工物90を第2搬送ハンド123に渡した後、第2搬送ハンド123が被加工物90を第2収容部72に収容している最中に、第1搬送ハンド113から加工前の被加工物90を受け取ることができる。
【0205】
これにより、第2搬送ハンド123の収容処理と、第1搬送ハンド113の供給処理を同時並行的に行うことができ、加工装置10のタクトタイムが短縮されて生産性が向上する。
【0206】
被加工物90は、デバイス面91a(板面)に3つの板面測定点P1~P3を含み、加工部80は、各板面測定点P1~P3を撮影して、各板面測定点P1~P3の座標を測定するカメラ86と、加工部80を、上下方向に移動させるZs軸移動部81と、を含み、制御部11は、加工前に各板面測定点P1~P3の座標に基づいて板面を特定し、板面上の任意の点と加工部80との距離が一定になるように、Zs軸移動部81に加工部80を移動させながら、加工部80による加工を行わせる。
【0207】
このようにすると、デバイス面91aと、加工部80のレーザヘッド85aとの距離F1を一定に保ったまま、半導体ウェハ91にレーザを照射して加工できるため、Z方向の加工精度が向上する。これにより、半導体チップ94の歩留まりを向上させることができる。
【0208】
保持部30は、被加工物90を保持するチャックヘッド33の底面33aに3つの底面測定点Q1~Q3を含み、加工部80は、各底面測定点Q1~Q3を撮影して、各底面測定点Q1~Q3の座標を測定するカメラ86を含み、制御部11は、各底面測定点Q1~Q3の座標に基づいて底面33aを特定し、底面33a上の任意の点と加工部80との距離F2を算出する。
【0209】
このようにして算出した、底面33a上の任意の点と加工部80(レーザヘッド85a)との距離F2は、被加工物90と加工部80の距離に近い値である。そのため、算出した距離F2を、加工時における被加工物90と加工部80の距離の初期値として用いることで、被加工物90と加工部80の距離を短時間で測定できる。
【0210】
<実施形態2>
上述した実施形態1に係る加工装置10は、加工前の被加工物90を収容する第1収容部71と、加工後の被加工物90を収容する第2収容部72という、X方向に並ぶ2つの収容部を有している。さらに、加工装置10は、各収容部71、72にそれぞれ対応する2つの搬出入部(第1搬出入部110、第2搬出入部120)を有している。第1搬出入部110は供給処理のみを行い、第2搬出入部120は収容処理のみを行う。
【0211】
これに対し、実施形態2に係る加工装置200が有する収容部170及び搬出入部(第3搬出入部210)は、
図19Aに示すように、それぞれ1つずつである。このようにすると、加工装置10に比べてX方向の長さを小さくすることができる。以下、加工装置200の具体的な構成について
図19A~
図22を参照して説明する。
【0212】
実施形態2に係る加工装置200は、収容部(収容部170)が1つであること、第3搬送ハンド213(「搬送ハンド」の一例)の形状、及び、第3搬送ハンド213に加えて補助ハンド216を有するという点において、実施形態1の加工装置10と異なる。実施形態1と重複する構成、作用、及び効果については説明を省略する。また、実施形態1と同一の構成については、同一の符号を用いるものとする。
【0213】
加工装置200の全体図を
図19A~
図19Cに示す。
図19A~
図19Cは3面図を構成し、それぞれ平面図、正面図、側面図である。加工装置200は収容部170、第3搬出入部210を有している。
【0214】
第3搬出入部210のみ抜き出した平面図を
図20に、側面図を
図21Aにそれぞれ示す。第3搬出入部210は、上述したZ1軸移動部111、Y1軸移動部112に加え、第3搬送ハンド213、Z3軸移動部214、Y3軸移動部215、補助ハンド216を有する。Y3軸及びZ3軸は、補助ハンド216が移動するときの軸であり、Y軸及びZ軸とそれぞれ平行な軸である。
【0215】
図19Bに示すように、Z3軸移動部214は、基台水平部21に固定されている。また、
図21Aに示すように、Z3軸移動部214は、Z方向に延設されたZ3軸ボールねじ214aと、Z3軸ボールねじ214aと螺合するナットを備えたZ3軸スライダ214bと、Z3軸スライダ214bに固定されたZ3ステージ214cと、を有する。Z3ステージ214cには、後述するY3軸移動部215が接合されている。
【0216】
Z3軸移動部214の構成は、上述したZ1軸移動部111の構成と略同じである。すなわち、制御部11は、Z3軸ボールねじ214aを図示しない駆動部により軸周りに回転させて、Z3軸スライダ214bをZ方向に移動させることができる。Z3軸スライダ214bにはZ3ステージ214cが固定されているため、Z3軸移動部214を動作させることにより、Z3ステージ214c上に配設されたY3軸移動部215がZ方向に移動する。
【0217】
Y3軸移動部215は、Z3ステージ214cの上面に固定され、Y方向に延設されたY3軸ボールねじ215aと、Y3軸ボールねじ215aと螺合するナットを備えたY3軸スライダ215bと、を有する。
【0218】
上述したY1軸移動部112と同様に、制御部11は、Y3軸ボールねじ215aを図示しない駆動部により軸周りに回転させることで、Y3軸スライダ215bをY方向に移動させることができる。制御部11は、Z3軸移動部214及びY3軸移動部215を動作させることにより、Y3軸スライダ215bを、Y方向及びZ方向に自在に移動させることができる。
【0219】
図20に示すように、補助ハンド216は平面視にて略Y字型をなす板状の部材であり、例えばステンレス鋼からなる。補助ハンド216の基端部216aは、Y3軸スライダ215bの上面と接合されている。そのため、Y3軸スライダ215bのY及びZ方向の動きに伴い、補助ハンド216もY方向及びZ方向に一体的に移動する。
【0220】
補助ハンド216の先端部216bは、U字状に2本に枝分かれしており、それぞれY方向に延設される。先端部216bの内側同士の間隔をL4とする。
【0221】
ここで、第3搬送ハンド213の先端部213bの外側同士の間隔をL5とすると、先端部216bの内側同士の間隔L4は、先端部213bの外側同士の間隔L5よりも大きく、かつ、ウェハリング92の外径サイズW3よりも小さい。つまり、下記(2)式の関係が成り立つ。
L2<L4<W3・・・(2)
【0222】
このようにすると、後述するように、第3搬送ハンド213と補助ハンド216との間で被加工物90の受け渡しが可能になる。なお、第3搬送ハンド213の先端部213bの内側同士の間隔は、第1搬送ハンド113と同じくL1であり、ウェハ直径W1よりも大きい。
【0223】
また、
図21Bに示すように、第3搬送ハンド213は、実施形態1の第1搬送ハンド113(
図7参照)とはX方向から見た形状が異なる。なお、
図21Bは、
図21Aから、説明のためにZ3軸移動部214及びY3軸移動部215を図示省略して、第3搬送ハンド213及び補助ハンド216を見易くしたものである。
図21Bにおいては、説明の都合上、図中にZ3軸移動部214及びY3軸移動部215を図示していない。
【0224】
図21Bに示すように、第3搬送ハンド213は、Z1軸スライダ111bと接合している基端部213aと、先端部213bと、の間に、Z方向に立ち上がるクランク部213cを有している。クランク部213cの存在により、基端部213aと先端部213bのZ方向の位置(高さ)が異なっており、第3搬送ハンド213はX方向から見てクランク状になる。クランク部213cは、後述する供給・収容処理において、第3搬送ハンド213と補助ハンド216との間で被加工物90を受け渡す際に、第3搬送ハンド213の基端部213aが、補助ハンド216の基端部216aと接触しないようにするために設けられている。
【0225】
<全体の処理の説明(実施形態2)>
次に、加工装置200で行われる供給~加工~収容の各処理について、
図22のフローチャート、
図23A~
図23P、及び
図24A~
図24Hを参照して説明する。なお、収容部170及び第3搬出入部210の側面図(一部断面図)である
図23A~
図23Pでは、上述した
図21Bと同様に、補助ハンド216を移動させるZ3軸移動部214及びY3軸移動部215を図示していない。また、
図24A~
図24Hは、
図23A~
図23Pに示す側面図のいずれかと対応する平面図である。
【0226】
まず、スタート時の初期状態として、
図23Aに示すように、収容部170の内部には加工前の被加工物90が5枚収容されており、収容部170内部の最上段のみ空いているとする。また、第3搬送ハンド213、及び補助ハンド216にはそれぞれ被加工物90は載置されていない。また、チャックヘッド33(
図23F等に図示)の底面には、加工後の被加工物90が保持されているとする。
図23Aに対応する平面図は、
図24Aである。
【0227】
制御部11からの指示により、加工装置200の動作がスタートすると、制御部11は、Z1軸移動部111を動作させて、第3搬送ハンド213の高さが、これから保持部30へ供給しようとする被加工物90(収容部170内で上から2段目)の底面よりもわずかに低くなるように、第3搬送ハンド213を移動させる(
図23A、
図24A、S45)。
【0228】
制御部11は、Y1軸移動部112を動作させて、第3搬送ハンド213の先端部213bが被加工物90と接触しないように、第3搬送ハンド213を収容部170の内部に挿入する(
図23B、
図24B、S46)。
【0229】
制御部11は、第3搬送ハンド213を上昇させる。被加工物90は先端部213bにより持ち上げられ、先端部213bの上面に、被加工物90が載置される(
図23C、S47)。
【0230】
制御部11は、先端部213bに被加工物90を載置したまま、第3搬送ハンド213を収容部170から引き抜く(
図23D、
図24C、S48)。
【0231】
制御部11は、Z1軸移動部111を動作させて、第3搬送ハンド213がチャックヘッド33との間で加工前の被加工物90を受け渡す位置(以下、受け渡し位置という)まで第3搬送ハンド213を上昇させる(
図23E、S49)。これと同時に、仮位置決めユニット130を動作させ、第3搬送ハンド213上における被加工物90の仮位置決めを行う(S50)。
【0232】
これまでに説明したS45~S50では、第3搬送ハンド213は収容部170から加工前の被加工物90を搬出して受け渡し位置まで移動させた。この間に、初期状態において加工後の被加工物90を保持していたチャックヘッド33は、第3搬送ハンド213の動きと並行して、補助ハンド216に被加工物90を渡す動作(S51~S55)を行う。以下、S51~S55について説明する。
【0233】
制御部11は、Ys軸移動部51及びXs軸移動部61を動作させて、チャックヘッド33を補助ハンド216の上方に移動させる(S51、
図24D)。次に、Z3軸移動部214により補助ハンド216を上昇させて、チャックヘッド33が保持する被加工物90に補助ハンド216の先端部216bの上面を近づけ(
図23F、S52)、チャックヘッド33の真空引きをOFFにする。すると被加工物90の保持が解除されて、被加工物90は先端部216bに載置される(S53)。
【0234】
制御部11は、図示しない空気圧センサにより測定した吸引通路35(
図19C参照)の空気圧が常圧になったことを検出して、保持の解除を確認した後、加工後の被加工物90が載置された補助ハンド216を下降させる(S54)。その後、制御部11はチャックヘッド33を加工前の被加工物90が載置された第3搬送ハンド213上に移動させる(
図23G、
図24E、S55)。
【0235】
制御部11は、第3搬送ハンド213を上昇させて、被加工物90をチャックヘッド33の底面33aに押し付け、チャックヘッド33の真空引きをONにする(
図23H、S56)。これにより、チャックヘッド33は、その底面33aにおいて、被加工物90を上方から吸着保持する。制御部11は、図示しない空気圧センサが示す圧力の低下を検出して、保持したことを確認した後、空荷になった第3搬送ハンド213を下降させる(
図23I、S57)。
【0236】
制御部11はチャックヘッド33を加工位置まで移動させ、加工前の被加工物90を加工する(S71~S77)。S71~S77は、実施形態1のS21~S27と同一の工程であり、説明は省略する。
【0237】
S71~S77の加工を行っている間、第3搬出入部210では、補助ハンド216から第3搬送ハンド213へ加工後の被加工物90を渡し(S58~S61)、第3搬送ハンド213が収容部170内へ被加工物90を収容する処理(S41~S44)を行う。以下、この処理について説明する。
【0238】
制御部11は、加工後の被加工物90を載置した補助ハンド216を第3搬送ハンド213上に移動させ、第3搬送ハンド213を上昇させる(
図23J、
図24F、S58)。上述した(2)式及び
図20に示すように、先端部216bの内側同士の間隔L4は、先端部213bの外側同士の間隔L5よりも大きい。そのため、
図23JのようにX方向から見て先端部216bと先端部213bが重畳しているように見えても、実際には先端部213bは先端部216bの内側を通ることができるので、両者は接触していない。また、
図21Bに示すように、第3搬送ハンド213はX方向から見てクランク状になっているため、
図23Kのように先端部213bが先端部216bよりも上になっても、基端部213aは補助ハンド216に接触しない。
【0239】
したがって、
図23JのようにX方向から見て補助ハンド216と第3搬送ハンド213が重畳していても、両者は接触しない。
図23Jの状態よりもさらに第3搬送ハンド213を上昇させると、補助ハンド216上の被加工物90は第3搬送ハンド213に載置される(
図23K、S59)。このようにして補助ハンド216から第3搬送ハンド213へ加工後の被加工物90を渡すことができる。
【0240】
次に、制御部11は補助ハンド216を図中左側に退避させ(
図23L、
図24G、S60)、仮位置決めユニット130により、第3搬送ハンド213上で仮位置決めを行う(S61)。
【0241】
次に、第3搬送ハンド213上に載置された加工後の被加工物90を、収容部170内に収容する。具体的には、制御部11は、第3搬送ハンド213を下降させ、最上段の収容位置よりもわずかに高い位置で静止させる(
図23M、S41)。
【0242】
制御部11は、第3搬送ハンド213を収容部170内に挿入する(
図23N、
図24H、S42)。続いて、第3搬送ハンド213を下降させて、収容部170内の凸部73上に被加工物90を載置して(
図23O、S43)、第3搬送ハンド213を収容部170から引き抜く(
図23P、S44)。その後、制御部11は、第3搬送ハンド213を、次にチャックヘッド33に供給する被加工物90の高さまで下降させ(S45)、収容部170内に挿入する(S46)。以上が加工装置200で行われる処理の1サイクルである。
【0243】
<効果説明(実施形態2)>
以上説明したように、実施形態2に係る加工装置200の第3搬出入部210は、被加工物90を載置可能な補助ハンド216を備え、補助ハンド216は、保持部30(チャックヘッド33)から被加工物90を受け取り、また、第3搬送ハンド213に被加工物90を渡すことができる。
【0244】
このようにすると、保持部30は、加工後の被加工物90を補助ハンド216に渡した後、すぐに第3搬送ハンド213上の受け渡し位置に移動して、加工前の被加工物90を第3搬送ハンド213から受け取ることができる。つまり、加工後の被加工物90が収容部170に収容されるのを待たずに、保持部30は次回加工する被加工物90を保持して、被加工物90を加工部80で加工できる。これにより、加工装置200のタクトタイムが短縮され生産性が向上する。
【0245】
実施形態2の構成では、収容部及び搬出入部をそれぞれ1つずつ(収容部170、第3搬出入部210)しか有しない構成の加工装置200であっても、加工部のアイドルタイムを短縮でき、加工装置200の生産性が向上する。また、収容部及び搬出入装置を2つずつ有する構成の加工装置10と比べて、装置を小型化、省スペース化することができる。
【0246】
<他の実施形態>
(1)上述した実施形態1では、2つの収容部(第1収容部、第2収容部)、及び2つの搬出入部(第1搬出入部110、第2搬出入部120)を含む加工装置10を例示したが、収容部及び搬出入部の数は1つでもよい。この場合、1つの搬送ハンドが被加工物90の搬出(供給処理)及び搬入(収容処理)の両方を行う。
【0247】
(2)上述した実施形態1では、第1収容部には加工前の被加工物を収容し、第2収容部には加工後の被加工物を収容する場合を例示した。しかし、各収容部に収容される被加工物を、加工前後のどちらかに限定しなくてもよい。この場合、各収容部に対応する搬出入部の搬送ハンドは、被加工物の搬出(供給処理)及び搬入(収容処理)の両方を行う。
【0248】
(3)搬出入部及び収容部の数は3以上であってもよい。
【0249】
(4)上述した各実施形態では、ボールねじを用いて保持部30、搬送ハンド113等、補助ハンド216をX方向及びY方向や、Y方向及びZ方向に移動させた。保持部等を移動させる構成として、ボールねじ以外の機構、例えば、リニアモータ、ベルトプーリー機構、ギヤ機構等を用いてもよい。
【0250】
(5)上述した各実施形態では、レーザ加工の一例として、半導体ウェハの内部に改質層を形成する方法を例示した。しかし、これ以外のレーザ加工、例えばフルカット加工、ハーフカット加工、グルービング加工等であってもよい。フルカット加工は、半導体ウェハの厚みの全てをレーザでカットする方法である。ハーフカット加工は、半導体ウェハの表面から厚みの半分程度までをレーザでカットし、その後反対側の面を研削して個々の半導体チップを得る方法である。グルービング加工は、半導体ウェハに含まれる脆い層を先にレーザ加工して除去し、その他の層はレーザまたは他の方法により別途加工して個々の半導体チップを得る方法である。いずれの方法においても、レーザ加工された部分が、半導体ウェハを個片に分割する際の分離境界となる。
【0251】
(6)上述した各実施形態では、Zステージ84にレーザ発振器85を固定した。しかし、Zステージ84とレーザ発振器85の間に、X軸周りの回転角を調整するθxステージ、及びY軸周りの回転角を調整するθyステージを設けてレーザ発振器85を任意の角度に調整できるようにしてもよい。このようにすると、θx、θyステージにより、レーザヘッド85aのZ軸に対する角度を調整できるため、被加工物90の板面に対して任意の角度(通常は垂直)でレーザ光を照射することができる。
【符号の説明】
【0252】
10…加工装置
11…制御部
20…基台
30…保持部
50…移動部
70…収容部
80…加工部
90…被加工物
110…第1搬出入部(搬出入部)
113…第1搬送ハンド(搬送ハンド)
120…第2搬出入部(搬出入部)
123…第2搬送ハンド(搬出入部)
130…仮位置決めユニット
133…Y挟持部(挟持部)
135…Y挟持部材(一対の挟持部材)
137…X挟持部(挟持部)
138…X挟持部材(一対の挟持部材)