(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】発光装置、表示装置、光電変換装置、電子機器、照明装置、および、移動体
(51)【国際特許分類】
H10K 50/19 20230101AFI20241218BHJP
H10K 50/813 20230101ALI20241218BHJP
H10K 65/00 20230101ALI20241218BHJP
H10K 50/822 20230101ALI20241218BHJP
H10K 50/824 20230101ALI20241218BHJP
H10K 50/814 20230101ALI20241218BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20241218BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20241218BHJP
【FI】
H10K50/19
H10K50/813
H10K65/00
H10K50/822
H10K50/824
H10K50/814
G09F9/30 365
G09F9/30 338
G09F9/30 348A
H10K59/10
(21)【出願番号】P 2023006066
(22)【出願日】2023-01-18
【審査請求日】2023-12-18
(31)【優先権主張番号】P 2022116573
(32)【優先日】2022-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 哲生
(72)【発明者】
【氏名】石津谷 幸司
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 希之
(72)【発明者】
【氏名】松田 陽次郎
(72)【発明者】
【氏名】権守 英輔
(72)【発明者】
【氏名】日當 翔馬
(72)【発明者】
【氏名】沖田 彰
【審査官】渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0102499(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0043983(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0044178(US,A1)
【文献】国際公開第2022/003504(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/216198(WO,A1)
【文献】特開2022-022875(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/19
H10K 50/813
H10K 65/00
H10K 50/822
H10K 50/824
H10K 50/814
G09F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の主面の上に配された絶縁層と、前記絶縁層の上に配された複数の下部電極と、前記複数の下部電極を覆うように配された有機層と、前記有機層を覆うように配された上部電極と、前記上部電極に電位を供給する供給電極と、を備える発光装置であって、
前記有機層は、それぞれ発光層を含む複数の機能層と、前記複数の機能層の間に配される電荷発生層と、を含み、
前記上部電極は、前記供給電極と接するコンタクト部を含み、
前記主面に対する正射影において、前記絶縁層は、前記複数の下部電極のそれぞれと前記コンタクト部との間に溝を備え、
前記溝における前記電荷発生層の厚さが、前記複数の下部電極の上における前記電荷発生層の厚さよりも薄化していることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記複数の下部電極は、互いに隣り合う第1下部電極と第2下部電極とを含み、
前記主面に対する正射影において、前記コンタクト部が、前記第1下部電極と前記第2下部電極との間に配され、かつ、前記溝に少なくとも部分的に取り囲まれていることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記複数の下部電極は、互いに隣り合う第3下部電極および第4下部電極をさら含み、
前記主面に対する正射影において、前記第3下部電極と前記第4下部電極との間には、前記コンタクト部が配されておらず、
前記第1下部電極と前記第2下部電極との中心間の距離と、前記第3下部電極と前記第4下部電極との中心間の距離と、が同じであることを特徴とする請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記複数の下部電極は、互いに隣り合う第3下部電極および第4下部電極をさら含み、
前記主面に対する正射影において、前記第3下部電極と前記第4下部電極との間には、前記コンタクト部が配されておらず、
前記第1下部電極と前記第2下部電極との中心間の距離が、前記第3下部電極と前記第4下部電極との中心間の距離よりも長いことを特徴とする請求項2に記載の発光装置。
【請求項5】
前記第1下部電極と前記第2下部電極との中心間の距離が、前記第3下部電極と前記第4下部電極との中心間の距離の2倍であることを特徴とする請求項4に記載の発光装置。
【請求項6】
前記主面に対する正射影において、前記有機層のうち前記複数の下部電極に接する部分が、それぞれ前記溝に少なくとも部分的に取り囲まれていることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項7】
前記複数の下部電極は、互いに隣り合う第1下部電極と第2下部電極とを含み、
前記主面に対する正射影において、前記コンタクト部が、前記第1下部電極と前記第2下部電極との間に配されていることを特徴とする請求項6に記載の発光装置。
【請求項8】
前記主面に対する正射影において、
前記有機層および前記上部電極は、前記複数の下部電極が配された表示領域よりも外側の外周領域まで配されており、
前記コンタクト部が、前記外周領域のうち前記有機層が配されている領域に配されていることを特徴とする請求項6に記載の発光装置。
【請求項9】
前記主面に対する正射影において、
前記有機層および前記上部電極は、前記複数の下部電極が配された表示領域よりも外側の外周領域まで配され、
前記上部電極は、前記外周領域において前記有機層よりも外側まで配されており、
前記コンタクト部が、前記外周領域のうち前記有機層よりも外側の領域に配されていることを特徴とする請求項6に記載の発光装置。
【請求項10】
前記上部電極と前記電荷発生層とが電気的に接続していることを特徴とする請求項
1に記載の発光装置。
【請求項11】
前記主面に対する正射影において、
前記有機層および前記上部電極は、前記複数の下部電極が配された表示領域よりも外側の外周領域まで配されており、
前記コンタクト部が、前記外周領域のうち前記有機層が配されている領域に配され、かつ、前記溝に少なくとも部分的に取り囲まれていることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項12】
前記主面に対する正射影において、
前記有機層および前記上部電極は、前記複数の下部電極が配された表示領域よりも外側の外周領域まで配されており、
前記コンタクト部が、前記外周領域のうち前記有機層が配されている領域に配され、
前記表示領域が、前記溝に少なくとも部分的に取り囲まれていることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項13】
前記主面に対する正射影において、
前記有機層および前記上部電極は、前記複数の下部電極が配された表示領域よりも外側の外周領域まで配され、
前記上部電極は、前記外周領域において前記有機層よりも外側まで配されており、
前記コンタクト部が、前記外周領域のうち前記有機層よりも外側の領域に配され、
前記表示領域が、前記溝に少なくとも部分的に取り囲まれていることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項14】
前記外周領域において、前記上部電極と前記電荷発生層とが電気的に接続していることを特徴とする請求項13に記載の発光装置。
【請求項15】
前記複数の機能層は、前記複数の下部電極に接する第1機能層を含み、
前記溝のうち互いに対向する上辺の間の距離が、前記第1機能層のうち前記複数の下部電極に接する部分の厚さの2倍以上であることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項16】
前記溝のうち互いに対向する上辺の間の長さが、前記溝の深さよりも短いことを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項17】
前記電荷発生層のうち前記溝に没入した部分が、前記電荷発生層のうち前記複数の下部電極の上に配されている部分の1/2以下の膜厚を備える部分を含むことを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項18】
前記電荷発生層のうち前記溝に没入した部分が、不連続な部分を含むことを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項19】
前記上部電極が、前記溝に没入しないことを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項20】
前記上部電極が、前記溝の上で連続して配されていることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項21】
基板の主面の上に配された絶縁層と、前記絶縁層の上に配された複数の下部電極と、前記複数の下部電極を覆うように配された有機層と、前記有機層を覆うように配された上部電極と、前記上部電極に電位を供給する供給電極と、を備える発光装置であって、
前記有機層は、それぞれ発光層を含む複数の機能層と前記複数の機能層の間に配される電荷発生層とを含み、
前記上部電極は、前記供給電極と接するコンタクト部を含み、
前記絶縁層と前記有機層との間、かつ、前記主面に対する正射影において前記複数の下部電極のそれぞれと前記コンタクト部との間に、前記電荷発生層に電界を印加するための電界印加電極が配されていることを特徴とする発光装置。
【請求項22】
前記発光装置の動作中に、前記電界印加電極と前記上部電極との間に、前記発光層の発光閾値以上の電圧が印加されることを特徴とする請求項21に記載の発光装置。
【請求項23】
基板の主面の上に配された第1絶縁層と、前記第1絶縁層の上に配された複数の下部電極と、前記第1絶縁層の上かつ前記複数の下部電極の間に配された第2絶縁層と、前記複数の下部電極および前記第2絶縁層を覆うように配された有機層と、前記有機層を覆うように配された上部電極と、前記上部電極に電位を供給する供給電極と、を含む発光装置であって、
前記有機層は、それぞれ発光層を含む複数の機能層と前記複数の機能層の間に配される電荷発生層とを含み、
前記上部電極は、前記供給電極と接するコンタクト部を含み、
前記第2絶縁層の前記有機層に向かい合う表面には、前記主面に対する正射影において前記複数の下部電極のそれぞれと前記コンタクト部との間に、前記主面に対して傾きを有する傾斜部が配され、
前記主面と前記傾斜部との間に、前記主面に対する正射影において前記傾斜部に重なるように、導電層がさらに配され、
前記導電層の電位は、
前記複数の下部電極が陽極、前記上部電極が陰極の場合、前記複数の下部電極よりも低く、
前記複数の下部電極が陰極、前記上部電極が陽極の場合、前記複数の下部電極よりも高いことを特徴とする発光装置。
【請求項24】
前記導電層の電位と前記上部電極の電位との差が、前記導電層の電位と前記複数の下部電極の電位との差よりも小さいことを特徴とする請求項23に記載の発光装置。
【請求項25】
前記導電層の電位が、前記上部電極の電位と同じことを特徴とする請求項23に記載の発光装置。
【請求項26】
前記導電層が、前記上部電極に電気的に接続されていることを特徴とする請求項23に記載の発光装置。
【請求項27】
前記第2絶縁層の前記表面には、前記複数の下部電極のそれぞれを取り囲むように溝が設けられており、
前記傾斜部が、前記溝の側壁を構成していることを特徴とする請求項23に記載の発光装置。
【請求項28】
前記傾斜部の前記主面に平行な仮想面に対する角度が、50°以上であることを特徴とする請求項23に記載の発光装置。
【請求項29】
前記複数の下部電極は、透光性を備え、
前記主面と前記第1絶縁層との間に、前記複数の下部電極のそれぞれに対応するように反射層を含む反射領域が配されており、
前記反射領域が、前記導電層として機能することを特徴とする請求項23に記載の発光装置。
【請求項30】
前記複数の下部電極は、透光性を備え、
前記主面と前記第1絶縁層との間に、前記複数の下部電極のそれぞれに対応するように反射層を含む反射領域が配されており、
前記反射領域は、前記複数の下部電極のうち対応する下部電極に電気的に接続され、
前記導電層は、前記反射領域に電気的に接続されていないことを特徴とする請求項23に記載の発光装置。
【請求項31】
前記導電層と前記反射領域とが、前記主面から同じ高さに配されていることを特徴とする請求項30に記載の発光装置。
【請求項32】
前記導電層が、前記複数の下部電極に電気的に接続されていないことを特徴とする請求項23に記載の発光装置。
【請求項33】
請求項1乃至32の何れか1項に記載の発光装置と、前記発光装置に接続されている能動素子と、を有することを特徴とする表示装置。
【請求項34】
複数のレンズを有する光学部と、前記光学部を通過した光を受光する撮像素子と、画像を表示する表示部と、を有し、
前記表示部は、前記撮像素子が撮像した画像を表示し、かつ、請求項1乃至32の何れか1項に記載の発光装置を有することを特徴とする光電変換装置。
【請求項35】
表示部が設けられた筐体と、前記筐体に設けられ、外部と通信する通信部と、を有し、
前記表示部は、請求項1乃至32の何れか1項に記載の発光装置を有することを特徴とする電子機器。
【請求項36】
光源と、光拡散部および光学フィルムの少なくとも一方と、を有する照明装置であって、
前記光源は、請求項1乃至32の何れか1項に記載の発光装置を有することを特徴とする照明装置。
【請求項37】
機体と、前記機体に設けられている灯具と、を有する移動体であって、
前記灯具は、請求項1乃至32の何れか1項に記載の発光装置を有することを特徴とする移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置、表示装置、光電変換装置、電子機器、照明装置、および、移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子などの自発光素子を用いた発光装置への関心が高まっている。発光装置においてカラー表示を行うために、白色発光する発光素子とカラーフィルタとを用いる方式(白+CF方式)が知られている。特許文献1には、白+CF方式に加えて、複数の発光層が積層され、発光層間に電荷発生層が配されたタンデム型の有機ELディスプレイが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2018/0102499号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の発光層とそれらの発光層間に配される電荷発生層によって、発光装置の高効率化を図ることができる。しかしながら、電荷発生層は導電性が高いため、電荷発生層を介したリーク電流によって、画像の表示品質が低下してしまう可能性がある。
【0005】
本発明は、発光装置の表示品質の低下の抑制に有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に鑑みて、本発明の実施形態に係る発光装置は、基板の主面の上に配された絶縁層と、前記絶縁層の上に配された複数の下部電極と、前記複数の下部電極を覆うように配された有機層と、前記有機層を覆うように配された上部電極と、前記上部電極に電位を供給する供給電極と、を備える発光装置であって、前記有機層は、それぞれ発光層を含む複数の機能層と、前記複数の機能層の間に配される電荷発生層と、を含み、前記上部電極は、前記供給電極と接するコンタクト部を含み、前記主面に対する正射影において、前記絶縁層は、前記複数の下部電極のそれぞれと前記コンタクト部との間に溝を備え、前記溝における前記電荷発生層の厚さが、前記複数の下部電極の上における前記電荷発生層の厚さよりも薄化していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、発光装置の表示品質の低下の抑制に有利な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態にかかる発光装置の構成例を示す平面図。
【
図21】
図1の発光装置を形成する際の蒸着シミュレーションを説明する図。
【
図22】
図1の発光装置を形成する際の蒸着シミュレーション結果を説明する図。
【
図25】本実施形態の発光装置を用いた表示装置の一例を示す図。
【
図26】本実施形態の発光装置を用いた光電変換装置の一例を示す図。
【
図27】本実施形態の発光装置を用いた電子機器の一例を示す図。
【
図28】本実施形態の発光装置を用いた表示装置の一例を示す図。
【
図29】本実施形態の発光装置を用いた照明装置の一例を示す図。
【
図30】本実施形態の発光装置を用いた移動体の一例を示す図。
【
図31】本実施形態の発光装置を用いたウェアラブルデバイスの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
図1~
図16を参照して、本開示の実施形態による表示装置について説明する。
図1は、本実施形態における発光装置10の構成例を示す平面図である。
図2は、
図1に示される発光装置10のうち表示領域3000の一部の拡大図であり、表示領域3000に含まれる3つの有機発光素子100を抜き出した平面図である。
図3は、
図2に示される平面図におけるA-A'間の断面図である。
【0011】
図1に示されるように、発光装置10は、表示領域3000と表示領域3000の周辺に設けられた外周領域2000とを含む。表示領域3000は、発光する有機発光素子100(画素または副画素とも呼ばれうる)が配列された領域であり、画像や文字などを表示してもよいし、後述する応用例のように照明に用いる光源として使用されてもよい。外周領域2000には、表示領域3000で適当な表示を行うための駆動回路などが配されうる。外周領域2000は、
図1に示される構成では、表示領域3000を取り囲むように配されているが、これに限られることはない。例えば、外周領域2000は、表示領域3000の1つの辺のみに沿って設けられていてもよいし、表示領域3000の2辺または3辺に沿って設けられていてもよい。
【0012】
図2、3を参照して、発光装置10について、より詳細に説明する。発光装置10の表示領域3000には、複数の有機発光素子100が配されている。ここで、複数の有機発光素子100のうち特定の有機発光素子を示す場合、有機発光素子100「a」のように、参照番号の後に添え字する。特に区別しない場合は、「有機発光素子100」と表記する。他の構成要素についても同様である。
【0013】
発光装置10は、基板1の主面12の上に配された絶縁層30と、絶縁層30の上に配された複数の下部電極2と、複数の下部電極2を覆うように配された有機層40と、有機層40を覆うように配された上部電極5と、上部電極5に電位を供給する供給電極8と、を備えうる。また、基板1の主面12と絶縁層30との間には、反射層102が配されていてもよい。有機発光素子100は、それぞれ電気的に独立して配される下部電極2によって位置が決定されうる。一方、有機層40および上部電極5は、複数の有機発光素子100によって共有されうる。表示領域3000の全体にわたって、1つの有機層40および1つの上部電極5が配されていてもよい。つまり、有機層40は、発光装置10の画像などを表示する表示領域3000の全面において、一体的に形成されていてもよい。同様に、上部電極5は、発光装置10の画像などを表示する表示領域3000の全面において、一体的に形成されていてもよい。有機発光素子100は、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子などの自発光素子でありうる。
【0014】
基板1には、下部電極2、有機層40、上部電極5などの各構成要素を支持可能な材料が用いられる。基板1として、例えば、ガラス、プラスチック、シリコンなどが適用できる。基板1には、トランジスタなどのスイッチング素子(不図示)や、導電体11、層間絶縁層22などが形成されうる。
【0015】
有機発光素子100の下部電極2は、有機層40の発光層から発せられる光を透過してもよい。下部電極2には、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)などの透明導電酸化物が用いられうる。また、下部電極2に、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、白金(Pt)などの金属やその合金の薄膜が用いられてもよい。下部電極2の膜厚は、有機発光素子100a、有機発光素子100b、有機発光素子100cのそれぞれで異なっていてもよい。有機発光素子100a、有機発光素子100b、有機発光素子100cのそれぞれで異なる光共振器構造を有してよい。光共振器構造は、それぞれの下部電極の下に光反射層を設け、それぞれに異なる長さの光学距離を設けることで構成されてよい。
【0016】
有機層40は、有機発光素子100の下部電極2の上に配される。本実施形態において、有機層40は、それぞれ発光層を含む複数の機能層41、43と、機能層41と機能層43との間に配される電荷発生層42と、を含む、所謂、タンデム型である。機能層の数は2層に限られることはなく、3層以上のそれぞれ発光層を含む機能層が積層されていてもよい。また、3層以上の機能層が積層されている場合、各機能層間に電荷発生層が配されていてもよい。すなわち、電荷発生層は、発光層と他の発光層との間に配されてよい。電荷発生層42は、発光層を有する機能層41と、他の発光層を有する機能層43と、の間に配されるからである。
【0017】
機能層41、43は、少なくとも発光層を含む層であり、複数の層から構成されていてもよい。発光層以外の層として、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層、発光層、正孔ブロック層、電子輸送層、電子注入層などが挙げられる。機能層41、43は、陽極から注入された正孔と陰極から注入された電子とが発光層において再結合することによって、発光層から光を出射する。発光層の構成は単層構造であってもよいし複層構造であってもよい。発光層は、赤色発光材料、緑色発光材料、青色発光材料を含むことができ、各発光色を混合することによって、白色光を得ることも可能である。また、発光層が、青色発光材料および黄色発光材料など補色の関係の発光材料を含んでいてもよい。例えば、機能層41に配された発光層が赤色発光材料と緑色発光材料とを含み、機能層43に配された発光層が青色発光材料を含んでいてもよい。
【0018】
電荷発生層42は、電子供与性の材料と電子受容性の材料とを含み電荷を発生する層である。電子供与性の材料と電子受容性の材料とは、それぞれ、電子を与える材料とその電子を受け取る材料である。これによって、電荷発生層42には正および負の電荷が発生するため、電荷発生層42よりも上方および下方に配された機能層41、43に、正または負の電荷を供給することができる。
【0019】
電子供与性の材料には、例えば、リチウム、セシウムなどのアルカリ金属が用いられてもよい。また、電子供与性の材料には、例えば、フッ化リチウム、リチウム錯体、炭酸セシウム、セシウム錯体などが用いられてもよい。この場合、アルミニウム、マグネシウム、カルシウムのような還元性の材料が共に含まれることによって、電子供与性が発現してもよい。また、電子供与性の材料は、正孔輸送性の材料であってよい。正孔輸送性の材料として、トリアリールアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、オキサゾール誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、ポリ(ビニルカルバゾール)、ポリ(シリレン)、ポリ(チオフェン)、その他の導電性高分子など、有機化合物が用いられてもよい。また、電子供与性の材料は、電子輸送性の材料に含まれてよい。電子輸送性の材料として、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、ピラジン誘導体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、ペリレン誘導体、キノリン誘導体、キノキサリン誘導体、フルオレノン誘導体、アントロン誘導体、フェナントロリン誘導体、有機金属錯体などの有機化合物が用いられてもよい。電子受容性の材料には、例えば、酸化モリブデンのような遷移金属酸化物をはじめとする無機物が用いられてもよいし、[ジピラジノ[2,3-f:2’,3’-h]キノキサリン-2,3,6,7,10,11-ヘキサカルボニトリル]のような有機物が用いられてもよい。電荷発生層は、電子受容性の材料と電子供与性の材料とを混合して含む層であってもよい。また、電荷発生層は、電子受容性の材料を含む層と電子供与性の材料を含む層とが積層された層であってもよい。つまり、電荷発生層42は、単層構造であってもよいし、複層構造であってもよい。
【0020】
有機層40は、真空蒸着法、イオン化蒸着法、スパッタリング法、プラズマ法などのドライプロセスを用いて形成することができる。また、ドライプロセスに代えて、適当な溶媒に上述のような材料を溶解させて公知の塗布法(例えば、スピンコーティング法、ディッピング法、キャスト法、ラングミュア・ブロジェット(LB法)、インクジェット法など)を用いて有機層40を形成するウェットプロセスを用いることもできる。例えば、真空蒸着法や塗布法などを用いて有機層40を形成すると、有機層40の結晶化などが起こり難く、経時安定性に優れた有機層40を得ることができる。また、例えば、塗布法で有機層40を成膜する場合、適当なバインダー樹脂と組み合わせて有機層40が形成可能である。
【0021】
バインダー樹脂として、ポリビニルカルバゾール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、尿素樹脂などが挙げられる。しかしながら、バインダー樹脂は、これらに限られるものではない。また、これらのバインダー樹脂は、ホモポリマーまたは共重合体として1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。さらに必要に応じて、公知の可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの添加剤を併用してもよい。
【0022】
有機層40は、下部電極2と上部電極5との間に配置されている。有機層40は、上述のように、基板1の上面に連続的に形成され、複数の有機発光素子100によって共有されていてもよい。また、有機層40のすべて、または、一部が、有機発光素子100ごとにパターニングされていてもよい。有機層40は、表示領域3000の周辺に配される外周領域2000の一部まで形成されていてもよい。
【0023】
上部電極5は、有機層40に配される発光層で発せられる光を透過する。また、上部電極5は、その表面に到達した光の一部を透過するとともに他の一部を反射する性質(すなわち半透過反射性)を備える半透過性の材料であってもよい。上部電極5には、例えば、ITOやIZOのような透明導電酸化物や、AlやAg、金(Au)などの単体金属、リチウム(Li)やセシウム(Cs)などのアルカリ金属、マグネシウム(Mg)やカルシウム(Ca)やバリウム(Ba)などのアルカリ土類金属、これらの金属材料を含んだ合金材料などが用いられる。半透過材料として、MgやAgを主成分とする合金が用いられてもよい。ここで主成分とは、それぞれの構成要素に含まれる材料のうち最も質量%濃度が高い成分でありうる。また、上部電極5は、適当な透過率を有するならば、上述した材料を用いた層を積層した積層構造であってもよい。上部電極5は、上述のように、基板1の上面に連続的に形成され、複数の有機発光素子100によって共有されていてもよい。また、上部電極5は、有機層40と同様に、表示領域3000の周辺に配される外周領域2000の一部まで形成されていてもよい。この場合、後述するが、上部電極5は、外周領域2000において有機層40よりも外側まで配されていてもよい。有機発光素子100において、下部電極2が陽極、上部電極5が陰極であってもよい。また、下部電極2が陰極、上部電極5が陽極であってもよい。
【0024】
図3に示されるように、下部電極2の外周部を覆うように、絶縁層3が設けられていてもよい。絶縁層3には、下部電極2の一部が露出するように開口部が設けられ、下部電極2と有機層40とが接する発光領域101を画定している。絶縁層3は、発光領域101を正確に所望の形状にするために形成されうる。絶縁層3を設けない場合、下部電極2の形状によって発光領域101が画定される。絶縁層3は、窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン(SiON)、酸化シリコン(SiO)など無機材料で形成されうる。絶縁層3の形成には、スパッタリング法や化学気相堆積法(CVD法)など公知の技術が用いられうる。また、絶縁層3は、アクリル樹脂やポリイミド樹脂のような有機材料を用いて形成することも可能である。
【0025】
発光装置10の表示領域3000には、さらに、上部電極5を覆うように配された保護層6、保護層6を覆うように配された平坦化層7、平坦化層7の上に配されたカラーフィルタ121およびマイクロレンズ122などが配されていてもよい。保護層6は、保護層6よりも基板1の側に配された各構成要素を大気中の水分などから保護する。保護層6は、例えば、SiN、SiON、SiOなどの無機材料で形成されうる。また、保護層6は、各種の樹脂など有機材料を用いて形成されてもよい。また、保護層6は、これらの積層構造であってもよい。平坦化層7は、後述する絶縁層30の厚さの違いなどによって生じる段差を抑制するために配される。平坦化層7は、上述したような無機材料を用いて形成されてもよいし、有機材料を用いて形成されてもよい。カラーフィルタ121は、絶縁層30の厚さに起因する光学干渉に応じた色の光を透過する。例えば、カラーフィルタ121aは、赤色系の光を透過し、カラーフィルタ121bは緑色系の光を透過し、カラーフィルタ121cは、青色系の光を透過しうる。マイクロレンズ122は、有機層40に含まれる発光層で発せられた光の利用効率を向上させる。カラーフィルタ121およびマイクロレンズ122は、公知の成膜手法を用いて形成することができる。また、カラーフィルタ121とマイクロレンズ122との間に、平坦化層などの適当な層が配されていてもよい。
【0026】
本実施形態において、有機発光素子100には、反射層102を含む積層部104が配されている。積層部104は、反射領域105を備え、反射領域105には反射層102が配されており、基板1の主面12に対する正射影において、反射層102は、下部電極2の発光領域101に重なるように配される。また、電蝕抑制層103が、反射層102の上に形成される。基板1の主面12に対する正射影において、発光領域101と重なる領域の少なくとも一部において、積層部104の電蝕抑制層103は、反射層102が露出するように開口を有する。この構成によって、有機層40に配された発光層で発せられた光は、下部電極2を透過し、反射層102で効率よく反射される。電蝕抑制層103の開口の大きさは、発光効率向上の観点から、発光領域101と同じ大きさであってもよいし、発光領域101よりも大きくてもよい。
図3に示される構成では、基板1の主面12に対する正射影において、発光領域101は、電蝕抑制層103の開口に重なるように配され、電蝕抑制層103の開口の大きさは、発光領域101よりも大きい。
【0027】
反射層102で反射した光は、上部電極5から光出射側に取り出されるため、本実施形態の発光装置10は、高い発光効率を得ることができる。ここで、光出射側とは、下部電極2に対する上部電極5の側を示す。
【0028】
反射層102には、例えば、高反射率であるAgやAlが用いられてもよい。また、電蝕抑制層103には、例えば、コバルト(Co)、モリブデン(Mo)、Pt、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、窒化チタン(TiN)、タングステン(W)などが用いられてもよい。反射層102および電蝕抑制層103は、合金や化合物であってもよい。例えば、反射層102としてAlを主成分とする材料が用いられ、電蝕抑制層103としてTiまたはTiNを主成分とする材料が用いられてもよい。さらに、反射層102には、Alを主成分とし銅(Cu)が含有されていてもよい。また、電蝕抑制層103には、TiNが主成分として含まれていてもよい。また、積層部104の基板1の側にはTiやTiNなどのバリアメタルが設けられていてもよい。
【0029】
反射層102および電蝕抑制層103は、スパッタリング法やCVD法、原子層堆積法(ALD法)などの公知の成膜手法を用いて形成することができる。反射層102は、高反射率の材料を基板1の上に成膜した後、公知のエッチングプロセスでパターニングすることによって形成することが可能である。また、電蝕抑制層103も、材料を基板1の上に成膜した後、公知のエッチングプロセスでパターニングすることによって形成することが可能である。また、積層部104に設けた電蝕抑制層103の開口部は、公知のエッチングプロセスで電蝕抑制層103を取り除くことによって形成することが可能である。
【0030】
本実施形態において、積層部104の反射層102と下部電極2との間に、光学干渉層として機能する絶縁層30が配されている。絶縁層30の厚みを調整することによって、有機発光素子100の有機層40に含まれる発光層と反射層102との光学距離を最適化することが可能になる。これによって、光学干渉を利用した発光装置10の発光効率の向上が可能となる。絶縁層30は、単層構造であってもよいし、複数の層を含む積層構造であってもよい。
【0031】
図3に示されるように、複数の下部電極2は、互いに隣り合う下部電極2aと下部電極2bとを含む。また、複数の下部電極2は、互いに隣り合う下部電極2bと下部電極2cとを含む。このとき、絶縁層30のうち有機発光素子100aに配される反射層102aと下部電極2aとの間の絶縁層30の厚さと、絶縁層30のうち有機発光素子100bに配される反射層102bと下部電極2bとの間の絶縁層30の厚さと、は互いに異なっている。また、絶縁層30のうち有機発光素子100bに配される反射層102bと下部電極2bとの間の絶縁層30の厚さと、絶縁層30のうち有機発光素子100cに配される反射層102cと下部電極2cとの間の絶縁層30の厚さと、は互いに異なっている。さらに、
図3に示されるように、絶縁層30のうち有機発光素子100aに配される反射層102aと下部電極2aとの間の絶縁層30の厚さと、絶縁層30のうち有機発光素子100cに配される反射層102cと下部電極2cとの間の絶縁層30の厚さと、は互いに異なっていてもよい。
【0032】
有機発光素子100a、有機発光素子100b、有機発光素子100cの絶縁層30の厚みをそれぞれ異ならせることによって、それぞれの有機発光素子100a~100cから発せられる光の色を調整することが可能である。絶縁層30は、複数の層の積層構造とすることも可能である。例えば、有機発光素子100a、有機発光素子100b、有機発光素子100cの順に絶縁層30を薄くする場合、有機発光素子100aに配される反射層102aと下部電極2aとの間に、絶縁層30として絶縁層31、絶縁層32、絶縁層33を設ける。また、有機発光素子100bに配される反射層102bと下部電極2bとの間に、絶縁層32、絶縁層33を設け、さらに、有機発光素子100cに配される反射層102cと下部電極2cとの間に、絶縁層33を設ける。これによって、光学調整層として機能する絶縁層30が形成できる。
【0033】
絶縁層30は、有機層40に配された発光層で発せられる光に対して、透明な材料で構成されうる。例えば、絶縁層30(絶縁層31~33)として、SiO、SiN、SiONなどが用いられうる。この場合、絶縁層は、スパッタリング法、CVD法、ALD法などの公知技術を用いて形成されうる。
【0034】
また、
図2、3に示されるように、積層部104は、反射領域105とは絶縁され、下部電極2と電気的に接続された導電パターン112を含む画素コンタクト領域115を有していてもよい。下部電極2と画素コンタクト領域115(導電パターン112)とは電気的に接続していてもよい。これによって、有機発光素子100は、導電パターン112を介して下部電極2に電位を供給(例えば、給電)することができる。例えば、下部電極2には、有機発光素子100の発光強度に応じた信号が供給される。
【0035】
画素コンタクト領域115は、反射領域105の反射層102および電蝕抑制層103と同じ層を用いてもよい。つまり、複数の下部電極2のそれぞれと基板1の主面12との間に、複数の下部電極2のそれぞれに電気的に接続された導電パターン112が配され、主面12から反射層102までの距離と、主面12から導電パターン112までの距離と、が同じであってもよい。この場合、画素コンタクト領域115は、反射層102と同層の導電パターン112と電蝕抑制層103と同層の電蝕抑制層113とを含む。したがって、反射層102の主成分と、導電パターン112の主成分と、は同じでありうる。同様に、電蝕抑制層103の主成分と、電蝕抑制層113の主成分と、は同じでありうる。
【0036】
絶縁層30を設ける場合には、絶縁層30にビアホールを設け、ビアホール内に導電体11を形成することによって、下部電極2と画素コンタクト領域115とを電気的に接続できる。導電体11には、下部電極2と同じ材料がもちいられてもよい。また、導電体11には、WやTi、TiNのような公知の導電材料を用いることが可能である。また、ビアホールを通じて、下部電極2と画素コンタクト領域115とが接していてもよい。画素コンタクト領域115において導電体11と接する部分には、電蝕抑制の観点から電蝕抑制層113が配されうる。
【0037】
導電体11を配する領域は、例えば、
図2、3に示されるように、積層部104の電蝕抑制層113がある画素コンタクト領域115でありうる。画素コンタクト領域115と下部電極2とが直接、接する場合、電蝕抑制層113と下部電極2とはガルバニック腐食を起こしにくい組み合わせであると、発光装置10の信頼性が向上する。例えば、電蝕抑制層113にTiNを主成分とする材料が用いられ、下部電極2(導電体11)として、ITO、IZOが用いられてもよい。
【0038】
図3には、光学干渉層として機能する絶縁層30や反射層102を用いた有機発光素子100示したが、これに限られることはない。絶縁層30が、有機発光素子100a~100cの間で同じ厚さを備えていてもよい。この場合、反射層102が配されずに、下部電極2が光の反射性を有する材料で形成されていてもよい。
【0039】
図3に示される構成において、表示領域3000に、上部電極5に電位を供給するための供給電極8が配されている。
図4は、
図3の点線で囲まれる部分Bを拡大した図である。上部電極5は、供給電極8に接するコンタクト部51を含む。供給電極8は、上部電極5と接する導電体であり、反射層102と電気的に接続されている。これによって、上部電極5と反射層102とが同電位(例えば、グランド電位)になる。
【0040】
供給電極8は、反射層102を配線パターンとして、上部電極5とそれぞれの有機発光素子100に電力を供給するための電力供給部との間を電気的に接続することができる。このため、反射層102と同層に、反射層102とは別に、上部電極5と電気的に接続するための配線パターンを形成する必要がない。結果として、表示領域3000の微細化(高精細化)に有利である。また、反射層102と同じ層に別途、配線パターンを形成する場合と比較して、反射層102を配線パターンと使用できるため、作成工程が簡略化できる。
【0041】
これらによって、電流が上部電極5だけではなく、供給電極8および反射層102を流れて、電力供給部に到達する。そのため、上部電極5のみに電流が流れる場合に比べて、抵抗が低くなり、電圧降下が起き難くなる。
【0042】
図3に示されるように、本実施形態において、基板1の主面12に対する正射影において、複数の下部電極2のそれぞれとコンタクト部51との間に、発光装置10は、電荷発生層42が薄化している部分を備えている。より具体的には、基板1の主面12に対する正射影において、絶縁層30は、複数の下部電極2のそれぞれとコンタクト部51との間に溝9を備えている。この溝9に電荷発生層42の一部が没入することによって、
図4に示されるように、溝9において電荷発生層42が薄化している。ここで、電荷発生層42が薄化しているとは、有機層40のうち下部電極2に接する部分(発光領域101)における電荷発生層42の膜厚を基準として、電荷発生層42の膜厚が薄くなっていることを示す。したがって、溝9における電荷発生層42の厚さが、複数の下部電極2の上における電荷発生層42の厚さよりも薄化している、ともいえる。また、電荷発生層42の膜厚の基準は、電荷発生層42のうち発光領域101の上の下部電極2の表面と平行な方向に延びる部分の膜厚であってもよい。しかしながら、電荷発生層42の膜厚の基準は、これに限られることはない。電荷発生層42が下地(例えば、機能層41)の比較的平坦な部分の上に形成され、膜厚が一様になっている部分であれば、当該部分が電荷発生層42の膜厚の基準として用いられてもよい。例えば、溝9の周縁部において、電荷発生層42の膜厚が一様な部分が、電荷発生層42の膜厚の基準として用いられてもよい。
【0043】
電荷発生層42が薄化している部分は、
図3、4に示される溝9のように凹形状であってもよいし、絶縁層30が突出した部分を備える凸形状であってもよい。しかしながら、製造工程を考慮した場合、溝9のような凹形状が適している。溝9の一方の内壁が、電荷発生層42の形成工程において、電荷発生層の材料粒子が溝9内に入射することを妨げることによって、対向する他方の内壁に材料粒子が堆積し難くなり、電荷発生層42の膜厚が薄くなりやすいためである。
【0044】
溝9において、電荷発生層42が薄化する。
図4に示されるように、上部電極5のコンタクト部51の近傍で、電荷発生層42は、供給電極8に接する可能性がある。また、上部電極5のコンタクト部51の近傍で、電荷発生層42は、上部電極5に近接または接する可能性がある。これによって、電荷発生層42と上部電極5との間でリーク電流が流れる可能性がある。一方、本実施形態において、溝9において、電荷発生層42が薄化することによって、電荷発生層42は高抵抗化する。これによって、電荷発生層42と上部電極5との間のリーク電流が抑制される。結果として、有機発光素子100の発光効率が高くなり、表示品質の低下を抑制することが可能になる。
【0045】
図2、3に示されるように、基板1の主面12に対する正射影において、上部電極5のうち供給電極8に接するコンタクト部51が、有機発光素子100aの下部電極2aと有機発光素子100bの下部電極2bとの間に配されていてもよい。この場合、コンタクト部51が、溝9に少なくとも部分的に取り囲まれていてもよい。
図2に示されるように、コンタクト部51が、溝9に完全に取り囲まれていてもよい。これによって、上部電極5と電荷発生層42との間のリーク電流が流れるパスを、より確実に抑制することができる。
【0046】
供給電極8は、基板1の主面12に対する正射影において、有機層40が形成される領域の内側に配されていてもよい。一般的に、微細な有機ELデバイスなどの発光装置10は、表示領域3000の全面において、有機層40が一体で形成される。これは、有機発光素子100ごと(画素ごと)に有機層の形成領域を分離する方式では、微細な成膜プロセスが必要なため、成膜位置ずれなどの影響で歩留りが低下しやすいためである。
【0047】
有機層40が表示領域3000全面において一体で形成される場合、上部電極5と供給電極8とを電気的に接続する際に、有機層40が障害になりやすい。一方、
図3、4に示されるように、供給電極8のうち上部電極5に接する部分は、ビアホールのような凹形状の中に供給電極8が配されている。凹形状によって、供給電極8のうちビアホールの側壁に沿った内壁の一部が、有機層40に覆われている。換言すると、供給電極8のビアホールの側壁に沿った内壁の一部に、有機層40が形成されない部分ができる。この供給電極8のうちビアホールの側壁に沿った内壁の有機層40に覆われていない領域に、上部電極5が接している(コンタクト部51)。これによって、上部電極5と供給電極8とを電気的に接続することができる。
【0048】
供給電極8は、下部電極2を形成する際に、同じ導電膜からエッチングプロセスを用いてパターニングすることによって形成することができる。そのため、下部電極2の主成分と、供給電極8の主成分と、が同じであってもよい。また、上述した下部電極2と導電パターン112との間の接続と同様に、反射層102と供給電極8との間の電蝕を抑制するための電蝕抑制層103を介して、反射層102と供給電極8とが電気的に接続されていてもよい。
【0049】
図2、3に示される構成では、有機発光素子100aと有機発光素子100bとの間に供給電極8を備える発光装置10を示したが、これに限定されるものではない。例えば、有機発光素子100bと有機発光素子100cとの間にも、溝9に取り囲まれた供給電極8が配されていてもよい。供給電極8は、表示領域3000内に少なくとも1つ配されていればよい。例えば、所定の個数の有機発光素子100ごとに、供給電極8が配されていてもよい。
【0050】
有機層40は、
図4に示されるように、供給電極8のうちビアホール14の側壁141に沿った内壁81の上端82を覆っていてもよい。有機層40が供給電極8の内壁81の上端82を覆うことによって、有機層40の上に配される上部電極5が、基板1の主面12に平行な方向から供給電極8のビアホール14内に向かって曲がる部分において、上部電極5が薄化してしまうことや、さらに、上部電極5が部分的に形成されないことを抑制できる。結果として、上部電極5の抵抗値が上昇することによって、発光装置10の動作電圧が高電圧化してしまうことを防ぐことができる。
【0051】
一般的な半導体プロセスを用いた場合、ビアホール14の側壁141の上端142は、角張った形状になる。また、ビアホール14を覆うように形成される供給電極8の内壁81の上端82は、角張った形状になりやすい。有機層40が、供給電極8の内壁81に形成されないように成膜した場合、上部電極5が供給電極8の内壁81に向かって曲がる部分において、形状が急激に変化し、上部電極5の薄化が発生する可能性が高くなる。
【0052】
一方、本実施形態において、角張った供給電極8の内壁81の上端82の上に有機層40が形成されることによって、有機層40の上面は、湾曲形状となる。このため、上部電極5の形状の変化が緩やかになり、上部電極5が薄化してしまうことや部分的に形成されないことが抑制される。
【0053】
また、有機層40が、供給電極8の内壁81の上端82を含む内壁81の一部を覆うことによる効果として、保護層6の水分遮断性の向上がある。供給電極8の内壁81の上端82のように角張った形状の上に、保護層6を形成する場合を考える。この場合、保護層6の成長過程において、保護層6のうち供給電極8の内壁81上で成長する部分と、保護層6のうち供給電極8の上面の上で成長する部分と、が会合する領域において、保護層6が低密度化しやすい。保護層6の低密度化した領域は、保護層6の下部まで達するため、低密度化した領域を介して、有機層40に水分が侵入しやすい。一方、本実施形態において、有機層40が供給電極8の内壁81の上端82を含む内壁81の一部を覆うことによって、有機層40の上面は湾曲形状となり、傾斜角が連続的に変化する構造となる。このため、異なる傾斜角上に成長した保護層6が連続的に会合し、保護層6の低密度化した領域が形成されることが抑制される。
【0054】
ここで、供給電極8の上端82のうち互いに対向する上辺の間の長さDが、有機層40の厚さCの2倍よりも大きくてもよい。これによって、供給電極8の内壁81の内側が、有機層40によって埋め込まれてしまうことが抑制され、上部電極5と供給電極8とを接触させやすくすることができる。
【0055】
有機層40に含まれる複数の機能層41、43は、下部電極2に接する機能層41を含む。この場合、溝9のうち互いに対向する上辺92の間の長さEが、機能層41のうち下部電極2に接する部分の厚さの2倍以上であってもよい。
図4には、機能層41のうち下部電極2に接する部分は示されていないが、機能層41の溝9の外に配された部分に示される厚さFが、機能層41のうち下部電極2に接する部分の厚さに近似する。これによって、溝9の内壁91が、機能層41によって埋め込まれてしまうことが抑制される。つまり、電荷発生層42が溝9に没入せずに薄化しないことを抑制できる。
【0056】
また、溝9のうち互いに対向する上辺92の間の長さEが、溝9の深さGよりも短くてもよい。これによって、電荷発生層42を形成する際に、電荷発生層42の材料粒子が、溝9に侵入し難くなり、電荷発生層42が、薄化しやすくなる。
【0057】
電荷発生層42のうち溝9に没入した部分が、電荷発生層42のうち下部電極2の上に配されている部分の1/2以下の膜厚を備える部分を含んでいてもよい。溝9における電荷発生層42の膜厚とは、電荷発生層42のそれぞれの部分における表面に対する法線方向の厚さである。さらに、電荷発生層42は溝9において薄化するだけでなく、電荷発生層42のうち溝9に没入した部分が、不連続な部分を含んでいてもよい。電荷発生層42の連続性が失われ、電荷発生層42が形成されていない部分が生じることによって、溝9において、電荷発生層42をより高抵抗化することができる。
【0058】
一方、機能層43は、溝9を覆うように形成されていてもよい。これによって、機能層43の上に配される上部電極5が、溝9に没入せずに、溝9の上で連続して形成されやすくなる。結果として、上部電極5が、溝9に起因して高抵抗化してしまうことを抑制できる。
【0059】
供給電極8の上端82のうち互いに対向する上辺の間の長さD、溝9のうち互いに対向する上辺92の間の長さE、および、有機層40の厚さCは、D>(2×C)>Eの関係であってもよい。これによって、供給電極8では有機層40が不連続になり、上部電極5と供給電極8とが接し、溝9では有機層40が不連続になり難くなる。結果として、上部電極5が、溝9で不連続になることなく供給電極8まで到達し、上部電極5と供給電極8との間で電流を流すことができる。
【0060】
以下、
図5(a)~5(c)を参照しながら発光装置10の製造方法を説明する。なお、絶縁層30を形成するまでの各工程は、有機発光素子を備える一般的な発光装置を形成する工程と同様な工程を用いることができるため、ここでは説明を省略する。
【0061】
絶縁層30を形成した後に、
図5(a)に示されるように、絶縁層30を貫通するビアホール13およびビアホール14を形成する。次いで、スパッタ法などを用いて導電部材を形成する。このとき、ビアホール14において、導電部材は、ビアホール14の側壁141を覆うだけで、ビアホール14を埋め込むことはない。次に、フォトリソグラフィ法などを用いてパターニングすることによって、
図5(b)に示すように、導電部材から下部電極2および供給電極8、さらに、溝9が形成される。溝9は、パターニングする際のエッチング時間を制御することによって、深さを制御することができる。
【0062】
続いて、スパッタ法などを用いて絶縁層3を形成し、フォトリソグラフィ法などを用いてパターニングする。このとき、ビアホール14に形成された供給電極8を露出させる必要がある。つまり、供給電極8の内壁81の上に形成された絶縁層3をエッチングする必要がある。そのため、絶縁層3をエッチングする工程には、等方性のドライエッチングやウエットエッチングが用いられてもよい。この工程によって、
図5(c)に示すように、絶縁層3が形成される。
【0063】
次に、有機層40および上部電極5の形成方法について、
図6(a)、6(b)を用いて説明する。
図6(a)は、有機層40および上部電極5を形成する際の蒸着源201、202と基板1との位置関係を示す図である。基板1は、有機層40および上部電極5を形成する際に回転する。有機層40を形成するための蒸着源202と上部電極5を形成するための蒸着源201とは、ともに基板1の回転中心から基板1の主面12に平行な方向に距離Rの位置に配される。また、有機層40を形成するための蒸着源202は、基板1の回転中心から基板1の主面12に直交する方向に距離iの位置に配される。また、上部電極5を形成するための蒸着源201は、基板1の回転中心から基板1の主面12に直交する方向に距離hの位置に配される。このとき、距離iは、距離hよりも短い。つまり、有機層40を形成するための蒸着源202の方が、上部電極5を形成するための蒸着源201よりも、基板1に近い位置に配されている。
図6(a)では、説明のために、蒸着源201および蒸着源202が、1つの蒸着装置(チャンバ)に配されているように描かれている。しかしながら、
図6(a)は、有機層40および上部電極5を形成する際の、基板1と蒸着源201、202との位置関係を示すための図である。したがって、蒸着源201と蒸着源202とは、別々の蒸着装置(チャンバ)にそれぞれ配されていてもよいし、同じ蒸着装置(チャンバ)に配されていてもよい。
【0064】
図6(b)は、基板1の回転中心からの距離rの位置204(
図6(a)参照)における、上述の
図5(a)の工程まで形成された発光装置10を拡大した図である。
図6(a)を用いて説明した構成によって、上部電極5を形成するための蒸着源201から蒸着材料が入射する入射角205と、有機層40を形成するための蒸着源202から蒸着材料が入射する入射角206と、が異なる。これによって、上部電極5の蒸着材料は、有機層40の蒸着材料がビアホール14に入る深さの限界の位置208よりも深い位置207まで到達する。これによって、上部電極5は、供給電極8の内壁81に接することができる。ここでは、有機層40の形成方法として蒸着法を用いる場合を説明したが、例えば、レーザーアブレーション法などを用いて有機層40が形成されてもよい。有機層40および上部電極5を形成した後に、保護層6などが順次、形成される。これらの各工程については、有機発光素子を備える一般的な発光装置を形成する工程と同様な工程を用いることができるため、ここでは説明を省略する。
【0065】
図7は、
図2に示される構成の変形例を示す図である。
図7に示される構成において、基板1の主面12に対する正射影において、有機層40のうち複数の下部電極2に接する部分(発光領域101)が、それぞれ溝9に少なくとも部分的に取り囲まれている。
図7に示されるように、溝9は、発光領域101を完全に取り囲んでいてもよい。ここで、発光領域101は、
図3に示されるように、電蝕抑制層103よりも内側に配されている。溝9の配置以外の構成は、
図2、3に示される構成と同様であってもよい。
【0066】
溝9が発光領域101を取り囲むことによって、上部電極5と電荷発生層42との間のリーク電流だけでなく、互いに隣り合う有機発光素子100間の電荷発生層42を介したリーク電流が抑制できる。そのため、互いに隣り合う有機発光素子100間での混色を抑制することができ、高い色純度が実現され、発光装置10の表示品質が向上する。
図7に示される構成では、基板1の主面12に対する正射影において、供給電極8は、溝9に取り囲まれていないが、コンタクト部51(供給電極8)を取り囲むように、さらに、溝9が配されていてもよい。
【0067】
図8は、
図2に示される構成の変形例を示す図である。
図8に示される構成は、
図2に示される構成に対して、有機発光素子100bが電位供給部200に変化し、電位供給部200の中央に供給電極8が配されている。それ以外の構成は、上述の
図2、3に示される構成と同様でありうる。電位供給部200には、電蝕抑制層103dの開口が形成されず、また、下部電極2、絶縁層3の開口(発光領域101)、導電体11、導電パターン112、電蝕抑制層113も形成されなくてもよい。
図8に示される構成においても、コンタクト部51(供給電極8)が溝9に取り囲まれるため、上述と同様に、上部電極5と電荷発生層42との間のリーク電流が抑制できる。
【0068】
電位供給部200は、発光層の発光に必要な構成を必ずしも配する必要がないため、供給電極8を配置するスペースを作りやすい。そのため、
図8に示される構成は、有機発光素子100の微細化に適している。
【0069】
図8に示される構成において、有機発光素子100(副画素)の発光色が、赤、緑、青、白の4種類である場合、白発光の有機発光素子100を電位供給部200としてもよい。白色は赤、緑、青の有機発光素子100を用いて出力することができるためである。電位供給部200は、表示領域3000内に少なくとも1つ配されて入ればよい。例えば、所定の個数の有機発光素子100ごとに、電位供給部200が配されていてもよい。
【0070】
ここで、
図2、3に示される構成では、間に供給電極8が配される有機発光素子100aの下部電極2aと有機発光素子100bの下部電極2bとの中心間の距離と、間に供給電極8が配されない有機発光素子100bの下部電極2bと有機発光素子100cの下部電極2cとの中心間の距離と、が同じになる。一方、
図7に示される構成では、間に供給電極8が配される有機発光素子100aの下部電極2aと有機発光素子100cの下部電極2cとの中心間の距離が、間に供給電極8が配されない有機発光素子100の下部電極2と有機発光素子100の下部電極2との中心間の距離よりも長くなりうる。例えば、間に供給電極8が配される有機発光素子100aの下部電極2aと有機発光素子100cの下部電極2cとの中心間の距離が、間に供給電極8が配されない有機発光素子100の下部電極の中心間の距離の2倍になりうる。
【0071】
図9(a)~9(c)は、
図8に示される構成とは異なる位置に電位供給部200を備える発光装置10の構成を示す図である。
図8に示される構成では、電位供給部200は、表示領域3000に配された有機発光素子100の間に配される例を説明した。しかしながら、電位供給部200は、外周領域2000に配されていてもよい。
【0072】
図9(a)に示される境界線4000は、表示領域3000と外周領域2000との境界を示す線である。上述のように、基板1の主面12に対する正射影において、有機層40および上部電極5は、複数の下部電極2が配された表示領域3000よりも外側の外周領域2000まで配される。この場合、基板1の主面12に対する正射影において、コンタクト部51が、外周領域2000のうち有機層40が配されている領域に配され、かつ、溝9に少なくとも部分的に取り囲まれていてもよい。
図9(a)に示されるように、溝9は、コンタクト部51を完全に取り囲んでいてもよい。ここで、外周領域2000にも表示領域3000の下部電極2と同様の形状を持つ構造体が配される場合があるが(後述するダミー領域500など。)、構造体に下部電極2と同様に信号が供給されない構成の場合は、本開示において、そのような構造体を下部電極2とは呼ばない。例えば、構造体に、配線パターンが電気的に接続されていない場合など、有機層40に配された発光層を発光させることができない構成などが挙げられる。
【0073】
発光装置10において、上部電極5が外周領域2000において有機層40よりも外側まで配され、有機層40の形成領域の外側に供給電極8(コンタクト部51)を設ける場合がある。これに対して、
図9(a)に示される構成は、有機層40の形成領域内に供給電極8を設けるため、チップサイズを小さくすることができる。それによって、例えば、1枚のウェーハからより多くのチップを取得することができ、チップあたりのコストを低減することができる。
図9(a)に示される構成においても、コンタクト部51が溝9に取り囲まれるため、上述と同様に、上部電極5と電荷発生層42との間のリーク電流が抑制できる。
【0074】
図9(b)に示されるように、外周領域2000に電位供給部200(コンタクト部51)が配され、基板1の主面12に対する正射影において、有機層40のうち下部電極2に接する部分(発光領域101)が、溝9に取り囲まれていてもよい。それによって、
図7に示される構成と同様に、有機発光素子100間でのリーク電流を抑制できる。また、
図9(c)に示されるように、外周領域2000に電位供給部200(コンタクト部51)が配され、溝9は、境界線4000に沿って配されていてもよい。例えば、表示領域3000が、溝9に少なくとも部分的に取り囲まれていてもよいし、溝9が、表示領域3000を完全に取り囲んでいてもよい。また、
図9(a)~9(c)の各構成が、組み合わせて用いられてもよいし、上述の各構成と組み合わされてもよい。例えば、コンタクト部51が、表示領域3000および外周領域2000の両方に配されていてもよい。
【0075】
図10~
図12を用いて、発光装置10の上述の各構成とはまた異なる構成について説明する。
図10は、本実施形態における発光装置10の構成例を示す平面図である。
図11、
図12は、それぞれ
図10のB-B’間およびC-C’間の断面図である。
【0076】
図10~
図12に示されるように、基板1の主面12に対する正射影において、有機層40および上部電極5は、複数の下部電極2が配された表示領域3000よりも外側の外周領域2000まで配され、上部電極5は、外周領域2000において有機層40よりもさらに外側まで配されている。このとき、上部電極5のうち供給電極8に接するコンタクト部51が、外周領域2000のうち有機層40よりも外側の領域に配され、表示領域3000が、溝9に少なくとも部分的に取り囲まれている。溝9は、表示領域3000を完全に取り囲んでいてもよい。上部電極5が供給電極8に接するコンタクト部51と、表示領域3000の最外周の有機発光素子100における有機層40と下部電極2とが接する発光領域101と、の間に溝9が配されるともいえる。
【0077】
有機層40の形成領域の端部では、電荷発生層42と上部電極5とが、
図11、
図12に示されるように接触しうるが、溝9において電荷発生層42が高抵抗化されるため、上部電極5と電荷発生層42との間のリーク電流が抑制できる。つまり、表示領域3000における表示品質の低下を抑制できる。溝9を設けない場合、電荷発生層42と上部電極5とが接触しないように、電荷発生層42の形成領域の外側まで機能層43の形成領域が続くように配置する必要がある。本実施形態では、有機層40の各層の形成領域を同一にできるため、その分、チップサイズを小さくすることができる。これによって、1枚のウェーハから多くのチップを取得することができ、チップあたりのコストを低減することができる。
【0078】
図10~
図12に示される構成において、表示領域3000に上部電極5のコンタクト部51(供給電極8)が設けられていない。しかしながら、これに限られることはなく、
図10~
図12に示される構成に追加して、
図2~
図8に示される各構成のように、表示領域3000にコンタクト部51(供給電極8)が配されていてもよい。その場合、
図2~
図8に示される各構成のように、表示領域3000にも溝9が配される。
【0079】
図10~
図12に示される構成において、ダミー領域500が、外周領域2000に設けられている。ダミー領域500には、積層部504が配されている。積層部504は、層間絶縁層22と絶縁層30との間に、積層部104の反射層102と主成分が同じである反射層502と、反射層502と絶縁層30との間に、電蝕抑制層103と主成分が同じである電蝕抑制層503とを含みうる。ダミー領域500が配されることによって、表示領域3000に隣り合う領域に表示領域3000に配される有機発光素子100と少なくとも一部が同じ構成の構造体が配される。それによって、表示領域3000内の有機発光素子100の製造上のばらつきが抑制される。例えば、
図11、
図12に示されるように、ダミー領域500に、下部電極2に準ずる構造体、絶縁層30、有機層40、上部電極5などを表示領域3000と同様に形成することができる。
【0080】
ダミー領域500の積層部504は、積層部104と電気的に絶縁されていてもよい。また、有機発光素子100において、画素コンタクト領域115が反射領域105と電気的に絶縁されている場合、
図12に示されるように、ダミー領域500の積層部504と表示領域3000の反射領域105とは、電気的に接続されていてもよい。
【0081】
積層部504は、積層部104を形成する際に、同時に形成することができる。反射層102、502および電蝕抑制層103、503の成膜時やパターニング時のプロセスばらつきを抑制する観点から、積層部104と基板1との間の距離は、積層部504と基板1との間の距離と略同一であってもよい。また、反射層102と反射層502との膜厚は略同一であってもよく、電蝕抑制層103および電蝕抑制層503の膜厚は、略同一であってもよい。
【0082】
図10~
図12に示される構成において、上部電極コンタクト領域600が、外周領域2000に設けられている。上部電極コンタクト領域600には、積層部604が配されている。積層部604は、層間絶縁層22と絶縁層30との間に、積層部104の反射層102と主成分が同じである反射層602と、反射層602と絶縁層30との間に、電蝕抑制層103と主成分が同じである電蝕抑制層603とを含みうる。上部電極コンタクト領域600は、上部電極5と電気的に接触する領域である。上部電極5と積層部604とは、直接、接していてもよいし、上部電極5と積層部604との間に、電気な接続を中継する部材があってもよい。例えば、
図11、
図12に示されるように、上部電極コンタクト領域600の積層部604上に、プラグ606と下部電極2と主成分が同じ材料で構成される供給電極8を配することによって、上部電極5と積層部604とを電気的に接続することが可能である。プラグ606には、供給電極8と同じ材料が用いられてもよいし、例えば、W、TiN、Tiなど、他の材料が用いられてもよい。
【0083】
また、
図12に示すように、有機発光素子100において、画素コンタクト領域115が反射領域105と電気的に絶縁されている場合、上部電極コンタクト領域600の積層部604と、表示領域3000の反射領域105と、は電気的に接続されていてもよい。このような場合、上部電極5と反射領域105との電位は同じとなる。さらに、有機発光素子100において、画素コンタクト領域115が反射領域105と電気的に絶縁されている場合、上部電極コンタクト領域600の積層部604とダミー領域500の積層部504と表示領域3000の反射領域105とは、電気的に接続されていてもよい。この場合、上部電極5、積層部604、積層部504および反射領域105の電位は、同じ電位になる。
【0084】
積層部604は、積層部104を形成する際に、同時に形成することができる。換言すると、積層部604は、積層部104および積層部504と同時に形成されうる。反射層102、602および電蝕抑制層103、603の成膜時やパターニング時のプロセスばらつきを抑制する観点から、積層部104と基板1との間の距離は、積層部604と基板1との間の距離と略同一であってもよい。また、反射層102と反射層602との膜厚は略同一であってもよく、電蝕抑制層103および電蝕抑制層603の膜厚は、略同一であってもよい。
【0085】
図10~
図12に示される構成において、配線領域700が、外周領域2000に設けられている。配線領域700には、積層部704が配されている。積層部704は、層間絶縁層22と絶縁層30との間に、積層部104の反射層102と主成分が同じである反射層702と、反射層702と絶縁層30との間に、電蝕抑制層103と主成分が同じである電蝕抑制層703とを含みうる。配線領域700は、上部電極5とは電気的に絶縁された積層部704を配線パターンとして使用する領域である。配線パターンの用途は、特に限定されない。
【0086】
積層部704は、積層部104を形成する際に、同時に形成することができる。換言すると、積層部704は、積層部104、積層部504および積層部604と同時に形成されうる。反射層102、702および電蝕抑制層103、703の成膜時やパターニング時のプロセスばらつきを抑制する観点から、積層部104と基板1との間の距離は、積層部704と基板1との間の距離と略同一であってもよい。また、反射層102と反射層702との膜厚は略同一であってもよく、電蝕抑制層103および電蝕抑制層703の膜厚は、略同一であってもよい。
【0087】
図10~
図12に示される構成において、防湿領域800が、外周領域2000に設けられている。防湿領域800には、積層部804が配されている。積層部804は、層間絶縁層22と絶縁層30との間に、積層部104の反射層102と主成分が同じである反射層802と、反射層802と絶縁層30との間に、電蝕抑制層103と主成分が同じである電蝕抑制層803とを含みうる。防湿領域800は、発光装置10の最外周に設けられており、発光装置10の周囲から水分の侵入を防ぐ目的で配される。したがって、防湿性の観点から、積層部804は、発光装置10の最外周に連続的に形成されていてもよい。また、防湿領域800において、積層部804と基板1との間に設けられたプラグ805や、積層部804の上に設けられたプラグ806が、発光装置10の最外周に連続的に形成されていてもよい。さらに、プラグ806の上部に、密着部807が、発光装置10の最外周に連続的に形成されていてもよい。保護層6が配される場合に、保護層6と密着部807とが接していてもよい。密着部807は、下部電極2と主成分が同じ材料で形成することができる。換言すると、密着部807は、下部電極2と同時に形成することができる。
【0088】
積層部804は、積層部104を形成する際に、同時に形成することができる。換言すると、積層部804は、積層部104、積層部504、積層部604および積層部704と同時に形成されうる。反射層102、802および電蝕抑制層103、803の成膜時やパターニング時のプロセスばらつきを抑制する観点から、積層部104と基板1との間の距離は、積層部804と基板1との間の距離と略同一であってもよい。また、反射層102と反射層802との膜厚は略同一であってもよく、電蝕抑制層103および電蝕抑制層803の膜厚は、略同一であってもよい。
【0089】
図13~
図15は、
図10~
図12を用いて説明した発光装置10の変形例を示す図である。
図13は、本実施形態における発光装置10の構成例を示す平面図である。
図14は、本実施形態における発光装置10の構成例を示す断面図である。
図15は、
図14の断面図の変形例を示す図である。
【0090】
図13~
図15に示される構成では、
図10~
図12に示される構成と同様に、基板1の主面12に対する正射影において、上部電極5のうち供給電極8に接するコンタクト部51が、外周領域2000のうち有機層40よりも外側の領域に配されている。一方、
図10~
図12に示される構成では、溝9が表示領域3000を取り囲むように配されていたが、
図13~
図15に示される構成では、溝9は、有機層40のうち下部電極2に接する部分(発光領域101)を取り囲むように配される。それによって、上述の
図7に示される構成と同様に、上部電極5と電荷発生層42との間のリーク電流だけでなく、互いに隣り合う有機発光素子100間の電荷発生層42を介したリーク電流が抑制できる。そのため、互いに隣り合う有機発光素子100間での混色を抑制することができ、高い色純度が実現される。
【0091】
図14に示されるように、外周領域2000において、電荷発生層42が、上部電極5に接していてもよい。また、
図15に示されるように、外周領域2000において、電荷発生層42が、上部電極5および供給電極8に接触していてもよい。これによって、有機発光素子100ごとに配された溝9の外側(基板1の主面12に対する正射影において、溝9の発光領域101と反対の側。)において、上部電極5と電荷発生層42とが同電位になる。それによって、上部電極5と電荷発生層42との間に配される機能層43に起因するリーク電流を抑制することができる。
【0092】
これまで、有機層40のうち電荷発生層42が没入する溝9を設けることによって、電荷発生層42を高抵抗化し、電荷発生層42が配されることによって発生するリーク電流を抑制することについて説明した。しかしながら、電荷発生層42が配されることに起因するリーク電流の抑制は、溝9を用いた電荷発生層42の薄化に限定されるものではない。
【0093】
図16は、溝9の代わりに電荷発生層42が配されることに起因するリーク電流を抑制するための電界印加電極901を備える発光装置10を説明する図である。
図16に示されるように、絶縁層30と有機層40との間、かつ、基板1の主面12に対する正射影において複数の下部電極2のそれぞれとコンタクト部51との間に、電荷発生層42に電界を印加するための電界印加電極901が配されている。電界印加電極901には、プラグ904、電蝕抑制層903、反射層902、プラグ905を介して、所定の電位が供給される。これ以外の構成は、上述の発光装置10の各構成と同様であってもよいため、ここでは説明を省略する。
【0094】
図16に示される構成において、電界印加電極901に所定の電位を供給することによって、電界印加電極901と上部電極5との間に電界を印加することができる。電界印加電極901と上部電極5との間に印加された電界によって、下部電極2と有機層40とが接する領域から有機層40を介して流れる電荷の電荷再結合が促進され、供給電極8まで到達し難くなる。それによって、有機層40に導電性が高い電荷発生層42が配されることに起因するリーク電流を抑制することができるだけでなく、機能層41、43に起因するリーク電流も抑制することができる。発光装置10の動作中に、電界印加電極901と上部電極5との間に、有機層40に配された発光層の発光閾値以上の電圧が印加されてもよい。それによって、電界による電荷再結合が促進しやすくなる。
【0095】
電界印加電極901は、上述の溝9と同様の位置に配されうる。また、電界印加電極901と溝9とが、組み合わされて用いられてもよい。電界印加電極901を用いた場合においても、上述の各構成と同様にリーク電流を抑制し、発光装置10の表示品質の低下が抑制できる。
【0096】
溝9を設けることによって、電荷発生層42を薄化させた場合に、電荷発生層42だけではなく機能層41、43を含む有機層40が薄化しうる。有機層40が薄化すると、有機層40の薄化した部分を介した下部電極2と上部電極5との間のリーク電流が生じやすくなりうる。以下、有機層40を介した下部電極2と上部電極5との間のリーク電流を抑制するための上述の発光装置10の変形例を、
図17、
図18を用いて説明する。
図17は、本実施形態における発光装置10の構成例を示す断面図であり、
図18は、発光装置10の構成例を示す平面図である。
図17は、
図18に示されるA-A’間の断面である。
【0097】
図17に示されるように、絶縁層3の有機層40に向かい合う表面には、基板1の主面12に対して傾きを有する傾斜部34、35が配されている。傾斜部34、35は、絶縁層3の表面に設けられた溝36の側壁を構成していていてもよい。溝36は、
図17に示されるように、絶縁層3にのみ設けられていてもよい。また、例えば、溝36は、絶縁層3および絶縁層30に設けられていてもよい。さらに、例えば、溝36は、上述の溝9と同等の構成を有していてもよい。
【0098】
有機層40は、上述したように、絶縁層3のうち基板1の主面13と平行な平坦部よりも傾斜部34、35の上に配された部分において、電荷発生層42の膜厚が薄く成膜されやすい。そのため、電荷発生層42を高抵抗化することができる。結果として、有機発光素子100間のクロストーク電流を抑制することができる。
【0099】
しかしながら、有機層40のうち絶縁層3の傾斜部34、35の上に配された部分おいて、有機層40の層厚も薄くなってしまう。それによって、有機層40を介した下部電極2と上部電極5との間のリーク電流が増加する可能性がある。そこで、
図17に示されるように、基板1の主面12と傾斜部34、35(溝36)との間に、基板1の主面12に対する正射影において傾斜部34、35(溝36)に重なるように、導電層が配されている。本実施形態において、反射領域105に配されている反射層102および電蝕抑制層103が、導電層として機能する。導電層(反射領域105に配されている反射層102および電蝕抑制層103)は、複数の下部電極2の何れにも電気的に接続されていない。
【0100】
反射領域105は、
図17に示される反射領域105aのように、積層部604、プラグ606および供給電極8を介して上部電極5に電気的に接続されていてもよい。つまり、基板1の主面12と傾斜部34、35(溝36)との間に配される導電層の電位が、上部電極5の電位と同じであってもよい。また、
図18に示されるように、有機発光素子100のそれぞれに対応する反射領域105が、互いに電気的に接続されていてもよい。それによって、基板1の主面12に対する正射影において傾斜部34、35に重なる位置に配された、傾斜部34、35に最も近い導電層として機能する反射領域105の電位が上部電極5と同電位になる。
【0101】
導電層(反射領域105に配されている反射層102および電蝕抑制層103)が、上部電極5と同電位になる。それによって、傾斜部34、35の上に積層される有機層40にかかる方向Bの電界強度を弱めることができるため、有機層40を介した下部電極2と上部電極5との間のリーク電流が抑制されうる。これは、まず、有機層40に印加される方向Bの電界は、電荷発生層42での電荷分離を促進し電荷が発生する。傾斜部34、35の上に形成された層厚が薄い有機層40に多くの電荷がある場合に、電荷が薄い有機層40を通じて、電荷再結合せずに対向する電極まで流れてしまい、下部電極2と上部電極5との間のリーク電流源になってしまうからである。この方向Bの電界強度を弱めることによって、有機層40を介した下部電極2と上部電極5との間のリーク電流が抑制される。ここで、方向Bの電界は、下部電極2が陽極であり、上部電極5が陰極である場合のリーク電流を促進する電界の方向を例として図示したものある。下部電極2が陰極であり、上部電極5が陽極である場合は、方向Bの向きは、
図3に示される無機とは反対の下向きになる。
【0102】
導電層として機能する反射領域105が、上部電極5と同電位であることを上述したが、導電層の電位は、上部電極5と同電位であることに限られることはない。例えば、導電層(反射領域105)は、フローティング状態であってもよい。また、例えば、導電層(反射領域105)は所定の電源に接続され、電源から導電層に所定の電位が供給されていてもよい。具体的には、以下の電位の関係であれば、有機層40を介した下部電極2と上部電極5との間のリーク電流を抑制する効果が発現される。
【0103】
導電層(反射領域105)の電位は、下部電極2が陽極、上部電極5が陰極の場合、下部電極2よりも低く設定される。つまり、導電層の電位をV、下部電極の電位をVDとした場合に、
V < VD ・・・ (1)
の関係であってもよい。それによって、上部電極5に対する下部電極2の電位差よりも、上部電極5に対する導電層(反射領域105)の電位差が小さくなる。結果として、有機層40のうち傾斜部34、35上に配された部分における電界強度が、有機層40を介した下部電極2と上部電極5とのリーク電流を抑制する方向に改善する。
【0104】
また、導電層(反射領域105)の電位は、下部電極2が陰極、上部電極5が陽極の場合、下部電極2よりも高く設定される。つまり、導電層の電位をV、下部電極の電位をVDとした場合に、
V > VD ・・・ (2)
の関係であってもよい。それによって、上部電極5に対する下部電極2の電位差よりも、上部電極5に対する導電層(反射領域105)の電位差が大きくなる。結果として、有機層40のうち傾斜部34、35上に配された部分における電界強度が、有機層40を介した下部電極2と上部電極5とのリーク電流を抑制する方向に改善する。
【0105】
導電層(反射領域105)の電位と上部電極5の電位との差が、導電層の電位と下部電極2の電位との差よりも小さくてもよい。それによって、上部電極5と導電層との間に印加される電界強度が小さくなりうる。例えば、導電層の電位と上部電極5の電位との差が、1V以下であってもよい。さらに、上述のように、導電層12の電位と上部電極5の電位とが同電位であってもよい。
【0106】
図17に示される構成は、有機層40に対して基板1とは反対側に光を取り出すトップエミッション型の発光装置10を示している。しかしながら、基板1の側に光を取り出すボトムエミッション型の発光装置においても、有機層40に対して基板1の側の電極を下部電極2、基板1とは反対側の電極を上部電極5と考えることができる。つまり、ボトムエミッション型の発光装置においても、傾斜部34、35および導電層を配することによって、上述と同様の効果を得ることができる。
【0107】
比較例として、
図19、
図20に示されるよう発光装置19を考える。
図19は、比較例の発光装置19の断面図であり、
図20は、発光装置19の平面図である。
図19は、
図20に示されるA-A’間の断面である。発光装置19は、反射領域105が、それぞれ下部電極2に接続され、有機発光素子100ごとに電気的に独立して配されている。また、反射領域105は、上部電極5に電気的に接続される積層部604に電気的に接続されていない。この場合に、有機発光素子100aを発光させるために、下部電極2と上部電極5との間に電位差を与えると、有機層40のうち傾斜部34や傾斜部35の上に配された部分にも方向Bの電界が印加されてしまう。この電界によって、比較例の発光装置19では、下部電極2と上部電極5との間のリーク電流が増加しやすくなってしまう。一方、反射領域105を下部電極2よりも上部電極5に近い電位にする本実施形態の発光装置10では、有機発光素子100間のクロストークを抑制しつつ、下部電極2と上部電極5との間のリーク電流を抑制することができる。
【0108】
絶縁層3の表面に配される傾斜部34、35は、下部電極2(発光領域101)の周囲に沿って、下部電極2(発光領域101)を取り囲むように配されていてもよい。上述のように、傾斜部34、35が、溝36の側壁を構成していてもよい。溝36、複数の下部電極2(発光領域101)のそれぞれを取り囲むように設けられていてもよい。溝36の一部として、傾斜部34と傾斜部35とのような対向した傾斜がある場合、有機層40を成膜する際の有機化合物粒子が、一方の傾斜部を有する絶縁層3に阻害され、他方の傾斜部へ到達し難くなる。それによって、電荷発生層42が薄化されうる。結果として、発光素子100間のクロストーク電流が抑制されうる。
【0109】
傾斜部34、35を含む溝36が配される場合、
図17に示されるように、電荷発生層42の一部が、溝36に没入していてもよい。つまり、電荷発生層42の少なくとも一部が、溝36の開口の上端よりも下方(基板1の側)に配されていてもよい。それによって、電荷発生層42が薄化しやすくなる。
【0110】
溝36の上端の幅は、有機層40のうち機能層41の下部電極2に接している部分の厚みよりも広くてもよい。例えば、溝36の上端の幅は、機能層41の下部電極2に接している部分の厚みの2倍よりも広くてもよい。それによって、溝36の開口が、機能層41によって封じられ難くなり、電荷発生層42が溝36に没入し、薄化しやすくなりうる。また、溝36の深さは、機能層41の下部電極に接している部分の厚みよりも深くてもよい。それによって、電荷発生層42が溝36に没入し、薄化しやすくなりうる。
【0111】
溝36の深さは、例えば、下部電極2の厚みよりも深くてもよい。それによって、電荷発生層42が溝36に没入し、電荷発生層42が薄化しやすくなる。一方、溝36の深さは、下部電極2の厚みよりも浅くてもよい。それによって、有機層40が薄膜化し過ぎることなく、有機層40を介した下部電極2と上部電極5との間のリーク電流が抑制されうる。発光素子100間のクロストーク電流と、有機層40を介した下部電極2と上部電極5との間のリーク電流と、の特性に応じて、溝36の深さは、適宜、設定されればよい。
【0112】
本実施形態において、下部電極2は透光性を備え、下部電極の下方に光学調整層として機能する絶縁層30を有し、絶縁層30と基板1の主面13との間に反射層102が配される。それぞれの発光素子100から発せられる色に応じて、光学調整層として機能する絶縁層30の厚みを調整する。それによって、有機層40が複数の発光素子100にまたがる共通の層である場合においても、それぞれの発光素子100の発光効率を高めることができる。発光素子100の発光色に応じて厚みが異なる絶縁層30を用いる場合、絶縁層3の上面に傾斜部34、35以外にも傾斜した部分が配されやすくなる。そのため、傾斜部34、35以外の部分おいても有機層40が薄膜化しやすく、有機層40を介した下部電極2と上部電極5との間のリーク電流が流れやすくなってしまう。したがって、上述の傾斜部34、35および導電層を配する効果が大きくなる。
【0113】
下部電極2の端部は、電蝕抑制層103の開口部の端部と、発光領域101の端部の間に配置されていてもよい。それによって、電蝕抑制層103の端部の形状を反映してできる、絶縁層3の傾斜部での電界強度を小さくすることができる。結果として、有機層40を介した下部電極2と上部電極5との間のリーク電流を抑制することができる。
【0114】
次に、傾斜部34、35の傾斜角についての知見を得るための、蒸着法による成膜シミュレーションについて説明する。
図21は、蒸着シミュレーションにおける各部材の配置図である。有機層40の蒸着源201、基板1、基板1に配された発光素子100の位置関係を、それぞれ
図21に示されるように設定した。ここで、R=200mm、r=95mm、h=340mmである。
【0115】
以下の式(3)で表される、蒸着分布を示すNをN=2とした。
Φ=Φ
0COS
NA ・・・ (3)
ここで、Aは、発光素子100における傾斜の角度、Φは、角度Aにおける蒸気流密度、Φ
0はA=0における蒸気流密度である。また、基板1は、
図21に示されるように、基板1の中心を軸として回転することを前提とした。
【0116】
基板1上の発光素子100の位置に、傾斜角0°~90°の傾斜部34、35がある場合を仮定し、傾斜角0°における有機層の層厚を76nmとした際の、各傾斜角における、傾斜部34、35の上に成膜される有機層40の層厚を計算した。
【0117】
図22は、蒸着シミュレーションの結果を示す。
図22に示される結果から、傾斜角が50°以上の場合、傾斜部34、35の上に形成される有機層40の層厚が薄くなりやすい。一方、傾斜角が50°よりも小さい場合、傾斜部34、35の上に形成される有機層40の層厚は厚くなりやすいことがわかる。したがって、傾斜部34、35の基板1の主面13に平行な仮想面に対する角度が、50°以上であってもよい。また、傾斜角の上限は特になく、例えば、傾斜部34、35が逆テーパー状であってもよい。例えば、傾斜部34、35の基板1の主面13に平行な仮想面に対する角度は、50°以上かつ180°未満であってもよい。それによって、電荷発生層42を薄膜化することが可能であり、発光素子100間のクロストーク電流を抑制することができる。
【0118】
発光素子100の発光領域101間の距離(発光素子100が配されるピッチ)は、例えば、10mm以内であってもよく、さらに、5mm以内であってもよい。このような高精細な画素配列に際して、発光素子100間のクロストーク電流が大きくなりやすい。そのため、上述した傾斜部34、35および導電層を配する効果が大きくなりうる。
【0119】
図23、
図24は、
図17、
図18を用いて説明した発光装置10の変形例を示す図である。
図23は、本実施形態における発光装置10の構成例を示す断面図であり、
図24は、発光装置10の構成例を示す平面図である。
図23は、
図24に示されるA-A’間における断面が示されている。
【0120】
本実施形態において、
図23、24に示されるように、基板1の主面12と絶縁層3に設けられた傾斜部34、35(溝36)との間に、基板1の主面12に対する正射影において傾斜部34、35(溝36)に重なるように、導電層405が配されている。また、
図17、
図18に示される構成と比較して、画素コンタクト領域115が配されずに、プラグ11を介して反射領域105と下部電極2とが電気的に接続されている。
図23に示されるように、例えば、反射領域105aが下部電極2aに電気的に接続されるなど、反射領域105は、複数の下部電極2のうち同じ発光素子100に配された対応する下部電極2に接続される。これ以外の構成は、上述の
図17、
図18に示される構成と同様であってもよいため、異なる点を中心に以下、説明を行う。
【0121】
本実施形態において、上述の導電層として反射領域105を用いた場合と同様に、導電層405の電位は、下部電極2が陽極、上部電極5が陰極の場合、下部電極2よりも低く設定される。また、導電層405の電位は、下部電極2が陰極、上部電極5が陽極の場合、下部電極2よりも高く設定される。導電層405の電位と上部電極5の電位との差が、導電層405の電位と下部電極2の電位との差よりも小さくてもよい。それによって、上部電極5と導電層12との間に印加される電界強度が小さくなりうる。例えば、導電層405の電位と上部電極5の電位との差が、1V以下であってもよい。さらに、導電層405の電位と上部電極5の電位とが同電位であってもよい。その場合に、導電層405が、上部電極5に電気的に接続されていてもよい。本実施形態において、導電層405は、下部電極2や反射層102および電蝕抑制層103によって構成される反射領域105に電気的に接続されていない。また、積層部604の一部が、
図24に示されるように、下部電極2よりも上部電極5に近い電位に設定される導電層405と同様に機能していてもよい。
【0122】
図24に示される構成において、有機発光素子100cの下部電極2cと反射領域105cとの間に配された絶縁層30の層厚は、有機発光素子100a、100bの下部電極2a、2bと反射領域105a、105bとの間に配された絶縁層30の層厚よりも薄くなる。そのため、下部電極2cと反射領域105cとの間に電位差によって、下部電極2cと反射領域105cとの間に配された絶縁層30は、他の部分よりも絶縁破壊してしまう可能性が高くなりうる。本実施形態において、下部電極2cは、反射領域105cと同電位になるため、下部電極2cと反射領域105cとの間の絶縁層30(絶縁層33)の絶縁破壊が抑制される。
【0123】
また、本実施形態においても、基板1の主面12に対する正射影において、傾斜部34、35(溝36)に重なるように配される導電層405は、上部電極5に近似した電位、または、上部電極5と同じ電位に設定される。そのため、有機層40の傾斜部34、35の上に配された部分に印加される方向Bの電界強度を抑制することができる。したがって、上述と同様に、発光素子100間のクロストークを抑制しつつ、有機層40を介した下部電極2と上部電極5との間のリーク電流を抑制することができる。
【0124】
導電層405は、反射領域105を形成する際に同時に形成することが可能である。導電層405と反射領域105とを同一プロセスで作成することによって、発光装置10を製造する工程数の増加を抑制することができる。導電層405を反射領域105と同時に形成する場合、導電層405は、層間絶縁層22と絶縁層30との間に、反射層102と主成分が同じである反射層402と、反射層402と絶縁層30との間に、電蝕抑制層103と主成分が同じである電蝕抑制層403とを含むことになる。そのため、反射領域105の下面と導電層405の下面との基板1の主面12からの高さが同じであってもよい。また、例えば、反射領域105の上面と導電層405の上面との基板1の主面12からの高さが同じであってもよい。つまり、導電層505と反射領域105とが、基板1の主面12から同じ高さに配されていてもよい。
【0125】
図17、
図18、
図23、
図24に示される構成において、表示領域3000に上部電極5のコンタクト部51(供給電極8)が設けられていない。しかしながら、これに限られることはなく、
図17、
図18、
図23、
図24に示される構成に追加して、
図2~
図8に示される各構成のように、表示領域3000にコンタクト部51(供給電極8)が配されていてもよい。上述のそれぞれの実施形態は、適宜、組み合わせて用いられてもよい。
【0126】
ここで、本実施形態の発光装置10を表示装置、光電変換装置、電子機器、照明装置、移動体、および、ウェアラブルデバイスに適用した応用例について
図25~
図31(a)、31(b)を用いて説明する。
【0127】
図25は、本実施形態の発光装置10を用いた表示装置の一例を表す模式図である。表示装置1000は、上部カバー1001と、下部カバー1009と、の間に、タッチパネル1003、表示パネル1005、フレーム1006、回路基板1007、バッテリー1008を有していてもよい。タッチパネル1003および表示パネル1005は、フレキシブルプリント回路FPC1002、1004が接続されている。回路基板1007には、トランジスタなどの能動素子が配される。バッテリー1008は、表示装置1000が携帯機器でなければ、設けなくてもよいし、携帯機器であっても、この位置に設ける必要はない。表示パネル1005に、発光装置10が適用できる。表示パネル1005として機能する発光装置10の表示領域3000は、回路基板1007に配されたトランジスタなどの能動素子と接続され動作する。
【0128】
図25に示される表示装置1000は、複数のレンズを有する光学部と、当該光学部を通過した光を受光し電気信号に光電変換する撮像素子とを有する光電変換装置(撮像装置)の表示部に用いられてもよい。光電変換装置は、撮像素子が取得した情報を表示する表示部を有してもよい。また、表示部は、光電変換装置の外部に露出した表示部であっても、ファインダ内に配置された表示部であってもよい。光電変換装置は、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラであってもよい。
【0129】
図26は、本実施形態の発光装置10を用いた光電変換装置の一例を表す模式図である。光電変換装置1100は、ビューファインダ1101、背面ディスプレイ1102、操作部1103、筐体1104を有してよい。光電変換装置1100は、撮像装置とも呼ばれうる。表示部であるビューファインダ1101や背面ディスプレイ1102に、本実施形態の発光装置10が適用できる。この場合、発光装置10の表示領域3000は、撮像する画像のみならず、環境情報、撮像指示などを表示してもよい。環境情報には、外光の強度、外光の向き、被写体の動く速度、被写体が遮蔽物に遮蔽される可能性などであってよい。
【0130】
撮像に適するタイミングはわずかな時間である場合が多いため、少しでも早く情報を表示した方がよい。したがって、有機EL素子などの有機発光材料を用いた有機発光素子100が表示領域3000に配される発光装置10が、ビューファインダ1101や背面ディスプレイ1102に用いられてもよい。有機発光材料は応答速度が速いためである。有機発光材料を用いた発光装置10は、表示速度が求められる、これらの装置に、液晶表示装置よりも適している。
【0131】
光電変換装置1100は、不図示の光学部を有する。光学部は複数のレンズを有し、光学部を通過した光を受光する筐体1104内に収容されている光電変換素子(不図示)に結像する。複数のレンズは、その相対位置を調整することで、焦点を調整することができる。この操作を自動で行うこともできる。
【0132】
発光装置10は、電子機器の表示部に適用されてもよい。その際には、表示機能と操作機能との双方を有してもよい。携帯端末としては、スマートフォンなどの携帯電話、タブレット、ヘッドマウントディスプレイなどが挙げられる。
【0133】
図27は、本実施形態の発光装置10を用いた電子機器の一例を表す模式図である。電子機器1200は、表示部1201と、操作部1202と、筐体1203を有する。筐体1203には、回路、当該回路を有するプリント基板、バッテリー、通信部を有してよい。操作部1202は、ボタンであってもよいし、タッチパネル方式の反応部であってもよい。操作部1202は、指紋を認識してロックの解除等を行う、生体認識部であってもよい。通信部を有する携帯機器は通信機器ということもできる。表示部1201に、本実施形態の発光装置10が適用できる。
【0134】
図28(a)、28(b)は、本実施形態の発光装置10を用いた表示装置の一例を表す模式図である。
図28(a)は、テレビモニタやPCモニタなどの表示装置である。表示装置1300は、額縁1301を有し表示部1302を有する。表示部1302に、本実施形態の発光装置10が適用できる。表示装置1300は、額縁1301と表示部1302とを支える土台1303を有していてもよい。土台1303は、
図28(a)の形態に限られない。例えば、額縁1301の下辺が土台1303を兼ねていてもよい。また、額縁1301および表示部1302は、曲がっていてもよい。その曲率半径は、5000mm以上6000mm以下であってよい。
【0135】
図28(b)は、本実施形態の発光装置10を用いた表示装置の他の一例を表す模式図である。
図28(b)の表示装置1310は、折り曲げ可能に構成されており、いわゆるフォルダブルな表示装置である。表示装置1310は、第1表示部1311、第2表示部1312、筐体1313、屈曲点1314を有する。第1表示部1311と第2表示部1312とに、本実施形態の発光装置10が適用できる。第1表示部1311と第2表示部1312とは、つなぎ目のない1枚の表示装置であってよい。第1表示部1311と第2表示部1312とは、屈曲点で分けることができる。第1表示部1311と第2表示部1312とは、それぞれ異なる画像を表示してもよいし、第1表示部と第2表示部とで1つの画像を表示してもよい。
【0136】
図29は、本実施形態の発光装置10を用いた照明装置の一例を表す模式図である。照明装置1400は、筐体1401と、光源1402と、回路基板1403と、光学フィルム1404と、光拡散部1405と、を有していてもよい。光源1402に、本実施形態の発光装置10が適用できる。光学フィルム1404は光源の演色性を向上させるフィルタであってよい。光拡散部1405は、ライトアップなど、光源の光を効果的に拡散し、広い範囲に光を届けることができる。必要に応じて、最外部にカバーを設けてもよい。照明装置1400は、光学フィルム1404と光拡散部1405との両方を有していてもよいし、何れか一方のみを有していてもよい。
【0137】
照明装置1400は例えば室内を照明する装置である。照明装置1400は白色、昼白色、その他青から赤のいずれの色を発光するものであってよい。それらを調光する調光回路を有してよい。照明装置1400は、光源1402として機能する発光装置10の表示領域3000に接続される電源回路を有していてもよい。電源回路は、交流電圧を直流電圧に変換する回路である。また、白とは色温度が4200Kで昼白色とは色温度が5000Kである。また、照明装置1400は、カラーフィルタを有してもよい。また、照明装置1400は、放熱部を有していてもよい。放熱部は装置内の熱を装置外へ放出するものであり、比熱の高い金属、液体シリコンなどが挙げられる。
【0138】
図30は、本実施形態の発光装置10を用いた車両用の灯具の一例であるテールランプを有する自動車の模式図である。自動車1500は、テールランプ1501を有し、ブレーキ操作などを行った際に、テールランプ1501を点灯する形態であってもよい。本実施形態の発光装置10は、車両用の灯具としてヘッドランプに用いられてもよい。自動車は移動体の一例であり、移動体は船舶やドローン、航空機、鉄道車両、産業用ロボットなどであってもよい。移動体は、機体とそれに設けられた灯具を有してよい。灯具は機体の現在位置を知らせるものであってもよい。
【0139】
テールランプ1501に、本実施形態の発光装置10が適用できる。テールランプ1501は、テールランプ1501として機能する発光装置10の表示領域3000を保護する保護部材を有してよい。保護部材は、ある程度高い強度を有し、透明であれば材料は問わないが、ポリカーボネートなどで構成されてもよい。また、保護部材は、ポリカーボネートにフランジカルボン酸誘導体、アクリロニトリル誘導体などを混ぜてよい。
【0140】
自動車1500は、車体1503、それに取り付けられている窓1502を有してもよい。窓は、自動車の前後を確認するための窓であってもよいし、透明なディスプレイであってもよい。当該透明なディスプレイに、本実施形態の発光装置10が用いられてもよい。この場合、発光装置10が有する電極などの構成材料は透明な部材で構成される。
【0141】
図31(a)、31(b)を参照して、本実施形態の発光装置10のさらなる適用例について説明する。発光装置10は、例えば、スマートグラス、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)、スマートコンタクトのようなウェアラブルデバイスとして装着可能なシステムに適用できる。このような適用例に使用される撮像表示装置は、可視光を光電変換可能な撮像装置と、可視光を発光可能な発光装置とを有する。
【0142】
図31(a)は、1つの適用例に係る眼鏡1600(スマートグラス)を説明する。眼鏡1600のレンズ1601の表面側に、CMOSセンサやSPADのような撮像装置1602が設けられている。また、レンズ1601の裏面側には、本実施形態の発光装置10が設けられている。
【0143】
眼鏡1600は、制御装置1603をさらに備える。制御装置1603は、撮像装置1602と各実施形態に係る発光装置10に電力を供給する電源として機能する。また、制御装置1603は、撮像装置1602と発光装置10~70の動作を制御する。レンズ1601には、撮像装置1602に光を集光するための光学系が形成されている。
【0144】
図31(b)は、1つの適用例に係る眼鏡1610(スマートグラス)を説明する。眼鏡1610は、制御装置1612を有しており、制御装置1612に、撮像装置1602に相当する撮像装置と、発光装置10が搭載される。レンズ1611には、制御装置1612内の撮像装置と、発光装置10からの発光を投影するための光学系が形成されており、レンズ1611には画像が投影される。制御装置1612は、撮像装置および発光装置10に電力を供給する電源として機能するとともに、撮像装置および発光装置10の動作を制御する。制御装置1612は、装着者の視線を検知する視線検知部を有してもよい。視線の検知は赤外線を用いてよい。赤外発光部は、表示画像を注視しているユーザの眼球に対して、赤外光を発する。発せられた赤外光の眼球からの反射光を、受光素子を有する撮像部が検出することで眼球の撮像画像が得られる。平面視における赤外発光部から表示部への光を低減する低減手段を有することで、画像品位の低下を低減する。
【0145】
赤外光の撮像により得られた眼球の撮像画像から表示画像に対するユーザの視線を検出する。眼球の撮像画像を用いた視線検出には任意の公知の手法が適用できる。一例として、角膜での照射光の反射によるプルキニエ像に基づく視線検出方法を用いることができる。
【0146】
より具体的には、瞳孔角膜反射法に基づく視線検出処理が行われる。瞳孔角膜反射法を用いて、眼球の撮像画像に含まれる瞳孔の像とプルキニエ像とに基づいて、眼球の向き(回転角度)を表す視線ベクトルが算出されることにより、ユーザの視線が検出される。
【0147】
本開示の一実施形態に係る発光装置10は、受光素子を有する撮像装置を有し、撮像装置からのユーザの視線情報に基づいて表示画像を制御してよい。
【0148】
具体的には、発光装置10は、視線情報に基づいて、ユーザが注視する第1視界領域と、第1視界領域以外の第2視界領域とを決定する。第1視界領域、第2視界領域は、発光装置10の制御装置が決定してもよいし、外部の制御装置が決定したものを受信してもよい。発光装置10の表示領域において、第1視界領域の表示解像度を第2視界領域の表示解像度よりも高く制御してもよい。つまり、第2視界領域の解像度を第1視界領域よりも低くしてよい。
【0149】
また、表示領域は、第1表示領域、第1表示領域とは異なる第2表示領域とを有し、視線情報に基づいて、第1表示領域および第2表示領域から優先度が高い領域が決定される。第1表示領域、第2表示領域は、発光装置10の制御装置が決定してもよいし、外部の制御装置が決定したものを受信してもよい。優先度の高い領域の解像度を、優先度が高い領域以外の領域の解像度よりも高く制御してよい。つまり優先度が相対的に低い領域の解像度を低くしてよい。
【0150】
なお、第1視界領域や優先度が高い領域の決定には、AIを用いてもよい。AIは、眼球の画像と当該画像の眼球が実際に視ていた方向とを教師データとして、眼球の画像から視線の角度、視線の先の目的物までの距離を推定するよう構成されたモデルであってよい。AIプログラムは、発光装置10が有しても、撮像装置が有しても、外部装置が有してもよい。外部装置が有する場合は、通信を介して、発光装置10に伝えられる。
【0151】
視認検知に基づいて表示制御する場合、外部を撮像する撮像装置を更に有するスマートグラスに好ましく適用できる。スマートグラスは、撮像した外部情報をリアルタイムで表示することができる。
【0152】
本明細書の開示は、以下の発光装置、表示装置、光電変換装置、電子機器、照明装置、および、移動体を含む。
【0153】
(項目1)
基板の主面の上に配された絶縁層と、前記絶縁層の上に配された複数の下部電極と、前記複数の下部電極を覆うように配された有機層と、前記有機層を覆うように配された上部電極と、前記上部電極に電位を供給する供給電極と、を備える発光装置であって、
前記有機層は、それぞれ発光層を含む複数の機能層と、前記複数の機能層の間に配される電荷発生層と、を含み、
前記上部電極は、前記供給電極と接するコンタクト部を含み、
前記主面に対する正射影において、前記絶縁層は、前記複数の下部電極のそれぞれと前記コンタクト部との間に溝を備え、
前記溝における前記電荷発生層の厚さが、前記下部電極の上における前記電荷発生層の厚さよりも薄化していることを特徴とする発光装置。
【0154】
(項目2)
前記複数の下部電極は、互いに隣り合う第1下部電極と第2下部電極とを含み、
前記主面に対する正射影において、前記コンタクト部が、前記第1下部電極と前記第2下部電極との間に配され、かつ、前記溝に少なくとも部分的に取り囲まれていることを特徴とする項目1に記載の発光装置。
【0155】
(項目3)
前記複数の下部電極は、互いに隣り合う第3下部電極および第4下部電極をさら含み、
前記主面に対する正射影において、前記第3下部電極と前記第4下部電極との間には、前記コンタクト部が配されておらず、
前記第1下部電極と前記第2下部電極との中心間の距離と、前記第3下部電極と前記第4下部電極との中心間の距離と、が同じであることを特徴とする項目2に記載の発光装置。
【0156】
(項目4)
前記複数の下部電極は、互いに隣り合う第3下部電極および第4下部電極をさら含み、
前記主面に対する正射影において、前記第3下部電極と前記第4下部電極との間には、前記コンタクト部が配されておらず、
前記第1下部電極と前記第2下部電極との中心間の距離が、前記第3下部電極と前記第4下部電極との中心間の距離よりも長いことを特徴とする項目2に記載の発光装置。
【0157】
(項目5)
前記第1下部電極と前記第2下部電極との中心間の距離が、前記第3下部電極と前記第4下部電極との中心間の距離の2倍であることを特徴とする項目4に記載の発光装置。
【0158】
(項目6)
前記主面に対する正射影において、前記有機層のうち前記複数の下部電極に接する部分が、それぞれ前記溝に少なくとも部分的に取り囲まれていることを特徴とする項目1に記載の発光装置。
【0159】
(項目7)
前記複数の下部電極は、互いに隣り合う第1下部電極と第2下部電極とを含み、
前記主面に対する正射影において、前記コンタクト部が、前記第1下部電極と前記第2下部電極との間に配されていることを特徴とする項目6に記載の発光装置。
【0160】
(項目8)
前記主面に対する正射影において、
前記有機層および前記上部電極は、前記複数の下部電極が配された表示領域よりも外側の外周領域まで配されており、
前記コンタクト部が、前記外周領域のうち前記有機層が配されている領域に配されていることを特徴とする項目6に記載の発光装置。
【0161】
(項目9)
前記主面に対する正射影において、
前記有機層および前記上部電極は、前記複数の下部電極が配された表示領域よりも外側の外周領域まで配され、
前記上部電極は、前記外周領域において前記有機層よりも外側まで配されており、
前記コンタクト部が、前記外周領域のうち前記有機層よりも外側の領域に配されていることを特徴とする項目6に記載の発光装置。
【0162】
(項目10)
前記外周領域において、前記上部電極と前記電荷発生層とが電気的に接続していることを特徴とする項目8または9に記載の発光装置。
【0163】
(項目11)
前記主面に対する正射影において、
前記有機層および前記上部電極は、前記複数の下部電極が配された表示領域よりも外側の外周領域まで配されており、
前記コンタクト部が、前記外周領域のうち前記有機層が配されている領域に配され、かつ、前記溝に少なくとも部分的に取り囲まれていることを特徴とする項目1に記載の発光装置。
【0164】
(項目12)
前記主面に対する正射影において、
前記有機層および前記上部電極は、前記複数の下部電極が配された表示領域よりも外側の外周領域まで配されており、
前記コンタクト部が、前記外周領域のうち前記有機層が配されている領域に配され、
前記表示領域が、前記溝に少なくとも部分的に取り囲まれていることを特徴とする項目1に記載の発光装置。
【0165】
(項目13)
前記主面に対する正射影において、
前記有機層および前記上部電極は、前記複数の下部電極が配された表示領域よりも外側の外周領域まで配され、
前記上部電極は、前記外周領域において前記有機層よりも外側まで配されており、
前記コンタクト部が、前記外周領域のうち前記有機層よりも外側の領域に配され、
前記表示領域が、前記溝に少なくとも部分的に取り囲まれていることを特徴とする項目1に記載の発光装置。
【0166】
(項目14)
前記外周領域において、前記上部電極と前記電荷発生層とが電気的に接続していることを特徴とする項目13に記載の発光装置。
【0167】
(項目15)
前記複数の機能層は、前記複数の下部電極に接する第1機能層を含み、
前記溝のうち互いに対向する上辺の間の距離が、前記第1機能層のうち前記複数の下部電極に接する部分の厚さの2倍以上であることを特徴とする項目1乃至14の何れか1項目に記載の発光装置。
【0168】
(項目16)
前記溝のうち互いに対向する上辺の間の長さが、前記溝の深さよりも短いことを特徴とする項目1乃至15の何れか1項目に記載の発光装置。
【0169】
(項目17)
前記電荷発生層のうち前記溝に没入した部分が、前記電荷発生層のうち前記複数の下部電極の上に配されている部分の1/2以下の膜厚を備える部分を含むことを特徴とする項目1乃至16の何れか1項目に記載の発光装置。
【0170】
(項目18)
前記電荷発生層のうち前記溝に没入した部分が、不連続な部分を含むことを特徴とする項目1乃至17の何れか1項目に記載の発光装置。
【0171】
(項目19)
前記上部電極が、前記溝に没入しないことを特徴とする項目1乃至18の何れか1項目に記載の発光装置。
【0172】
(項目20)
前記上部電極が、前記溝の上で連続して配されていることを特徴とする項目1乃至19の何れか1項目に記載の発光装置。
【0173】
(項目21)
基板の主面の上に配された絶縁層と、前記絶縁層の上に配された複数の下部電極と、前記複数の下部電極を覆うように配された有機層と、前記有機層を覆うように配された上部電極と、前記上部電極に電位を供給する供給電極と、を備える発光装置であって、
前記有機層は、それぞれ発光層を含む複数の機能層と前記複数の機能層の間に配される電荷発生層とを含み、
前記上部電極は、前記供給電極と接するコンタクト部を含み、
前記絶縁層と前記有機層との間、かつ、前記主面に対する正射影において前記複数の下部電極のそれぞれと前記コンタクト部との間に、前記電荷発生層に電界を印加するための電界印加電極が配されていることを特徴とする発光装置。
【0174】
(項目22)
前記発光装置の動作中に、前記電界印加電極と前記上部電極との間に、前記発光層の発光閾値以上の電圧が印加されることを特徴とする項目21に記載の発光装置。
【0175】
(項目23)
基板の主面の上に配された第1絶縁層と、前記第1絶縁層の上に配された複数の下部電極と、前記第1絶縁層の上かつ前記複数の下部電極の間に配された第2絶縁層と、前記複数の下部電極および前記第2絶縁層を覆うように配された有機層と、前記有機層を覆うように配された上部電極と、前記上部電極に電位を供給する供給電極と、を含む発光装置であって、
前記有機層は、それぞれ発光層を含む複数の機能層と前記複数の機能層の間に配される電荷発生層とを含み、
前記上部電極は、前記供給電極と接するコンタクト部を含み、
前記第2絶縁層の前記有機層に向かい合う表面には、前記主面に対する正射影において前記複数の下部電極のそれぞれと前記コンタクト部との間に、前記主面に対して傾きを有する傾斜部が配され、
前記主面と前記傾斜部との間に、前記主面に対する正射影において前記傾斜部に重なるように、導電層がさらに配され、
前記導電層の電位は、
前記複数の下部電極が陽極、前記上部電極が陰極の場合、前記複数の下部電極よりも低く、
前記複数の下部電極が陰極、前記上部電極が陽極の場合、前記複数の下部電極よりも高いことを特徴とする発光装置。
【0176】
(項目24)
前記導電層の電位と前記上部電極の電位との差が、前記導電層の電位と前記複数の下部電極の電位との差よりも小さいことを特徴とする項目23に記載の発光装置。
【0177】
(項目25)
前記導電層の電位が、前記上部電極の電位と同じことを特徴とする項目23または24に記載の発光装置。
【0178】
(項目26)
前記導電層が、前記上部電極に電気的に接続されていることを特徴とする項目23乃至24の何れか1項目に記載の発光装置。
【0179】
(項目27)
前記第2絶縁層の前記表面には、前記複数の下部電極のそれぞれを取り囲むように溝が設けられており、
前記傾斜部が、前記溝の側壁を構成していることを特徴とする項目23乃至26の何れか1項目に記載の発光装置。
【0180】
(項目28)
前記傾斜部の前記主面に平行な仮想面に対する角度が、50°以上であることを特徴とする項目23乃至27の何れか1項目に記載の発光装置。
【0181】
(項目29)
前記複数の下部電極は、透光性を備え、
前記主面と前記第1絶縁層との間に、前記複数の下部電極のそれぞれに対応するように反射層を含む反射領域が配されており、
前記反射領域が、前記導電層として機能することを特徴とする項目23乃至28の何れか1項目に記載の発光装置。
【0182】
(項目30)
前記複数の下部電極は、透光性を備え、
前記主面と前記第1絶縁層との間に、前記複数の下部電極のそれぞれに対応するように反射層を含む反射領域が配されており、
前記反射領域は、前記複数の下部電極のうち対応する下部電極に電気的に接続され、
前記導電層は、前記反射領域に電気的に接続されていないことを特徴とする項目23乃至28の何れか1項目に記載の発光装置。
【0183】
(項目31)
前記導電層と前記反射領域とが、前記主面から同じ高さに配されていることを特徴とする項目30に記載の発光装置。
【0184】
(項目32)
前記導電層が、前記複数の下部電極に電気的に接続されていないことを特徴とする項目23乃至31の何れか1項目に記載の発光装置。
【0185】
(項目33)
項目1乃至32の何れか1項目に記載の発光装置と、前記発光装置に接続されている能動素子と、を有することを特徴とする表示装置。
【0186】
(項目34)
複数のレンズを有する光学部と、前記光学部を通過した光を受光する撮像素子と、画像を表示する表示部と、を有し、
前記表示部は、前記撮像素子が撮像した画像を表示し、かつ、項目1乃至32の何れか1項目に記載の発光装置を有することを特徴とする光電変換装置。
【0187】
(項目35)
表示部が設けられた筐体と、前記筐体に設けられ、外部と通信する通信部と、を有し、
前記表示部は、項目1乃至32の何れか1項目に記載の発光装置を有することを特徴とする電子機器。
【0188】
(項目36)
光源と、光拡散部および光学フィルムの少なくとも一方と、を有する照明装置であって、
前記光源は、項目1乃至32の何れか1項目に記載の発光装置を有することを特徴とする照明装置。
【0189】
(項目37)
機体と、前記機体に設けられている灯具と、を有する移動体であって、
前記灯具は、項目1乃至32の何れか1項目に記載の発光装置を有することを特徴とする移動体。
【0190】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神および範囲から離脱することなく、様々な変更および変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0191】
1:基板、2:下部電極、5:上部電極、8:供給電極、9:溝、10:発光装置、12:主面、30:絶縁層、40:有機層、41,43:機能層、42:電荷発生層、51:コンタクト部