(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】ポリウレタンフォームとその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 18/00 20060101AFI20241218BHJP
A47C 7/18 20060101ALI20241218BHJP
A47C 27/14 20060101ALI20241218BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20241218BHJP
C08G 18/40 20060101ALI20241218BHJP
C08G 18/48 20060101ALI20241218BHJP
C08G 18/63 20060101ALI20241218BHJP
C08G 18/76 20060101ALI20241218BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20241218BHJP
【FI】
C08G18/00 G
A47C7/18
A47C27/14 A
B60N2/90
C08G18/00 F
C08G18/40 009
C08G18/48 033
C08G18/63
C08G18/76 007
C08G101:00
(21)【出願番号】P 2023036881
(22)【出願日】2023-03-09
(62)【分割の表示】P 2018139264の分割
【原出願日】2018-07-25
【審査請求日】2023-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒井 歩
【審査官】大塚 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-210832(JP,A)
【文献】特表2009-541576(JP,A)
【文献】特開2020-015808(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00
A47C 7/18
A47C 27/14
B60N 2/90
C08G 18/40
C08G 18/48
C08G 18/63
C08G 18/76
C08G 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンオキサイドの付加率が75~100重量%である高EOポリエーテルポリオールと、エチレンオキサイドの付加率が1~25重量%である低EOポリエーテルポリオールと、ポリマーポリオールとを含み、かつ前記高EOポリエーテルポリオール、前記低EOポリエーテルポリオール、及び前記ポリマーポリオールの合計を100重量部とした場合、前記高EOポリエーテルポリオールを5~20重量部含むモールドポリウレタンフォーム用組成物を原料として得られ、
セル数が4~30個/25mm、熱伝導率が0.039~0.050W/m・Kであるモールドポリウレタンフォーム。
【請求項2】
請求項1
に記載のモールドポリウレタンフォームを備える車両用内装材。
【請求項3】
請求項1
に記載のモールドポリウレタンフォームを備えるシートクッション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンフォームとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリウレタンフォームは、一般に発泡体として熱を伝えにくくする断熱材としても用いられており、また、シートクッションやヘッドレストあるいはアームレストなどの車両用内装材には、モールドポリウレタンフォームが用いられている。
モールドポリウレタンフォームは、ポリウレタンフォーム用組成物からモールド発泡法によって製造される。
【0003】
モールド発泡法は、金型内に、ポリオール、発泡剤、触媒、イソシアネートを含むポリウレタンフォーム用組成物を注入し、ポリオールとイソシアネートの反応により発泡させて、ポリウレタンフォームを製造する方法である。モールド発泡法では、発泡によって製品形状のポリウレタンフォームが得られるため、後加工を少なくできる利点がある。
【0004】
ところで、自動車においては、カーエアコンの作動によって車室内の温調が行われているが、省エネルギーのために、車室内の冷暖房効率を高めることが求められている。
【0005】
しかし、車両用内装材に使用されているモールドポリウレタンフォームは、熱伝導率が低いために熱が籠もりやすく、車室内を適温にするのに多くのエネルギーが必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、熱伝導率が高く、車両用内装材に使用した場合に車室内の冷暖房効率を高めることができ、省エネに貢献することができるモールドポリウレタンフォームとその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様は、ポリオール、発泡剤、触媒、整泡剤、イソシアネートを含むポリウレタンフォーム用組成物から得られるモールドポリウレタンフォームにおいて、前記ポリオールとして、エチレンオキサイドの付加率が1~25重量%である低EOポリエーテルポリオールと、ポリマーポリオールを含み、前記整泡剤が、粘度1000mPa・s(25℃)以上、表面張力26mN/m(25℃)以下のシリコーン系整泡剤であることを特徴とする。
【0009】
第2の態様は、第1の態様において、全ポリオール量を100重量部とした場合に、前記低EOポリエーテルポリオールは30~80重量部であり、前記シリコーン系整泡剤が、直鎖状シリコーンであることを特徴とする。
【0010】
第3の態様は、第1または第2の態様において、前記イソシアネートは、MDI系イソシアネート単独またはMDI系イソシアネートとTDIとの併用であることを特徴とする。
【0011】
第4の態様は、第1から第3の態様の何れか一態様において、前記触媒として泡化触媒と樹脂化触媒の2種類を含むことを特徴とする。
【0012】
第5の態様は、第1から第4の態様の何れか一態様において、前記ポリオールとして、前記低EOポリエーテルポリオールと前記ポリマーポリオールと共にエチレンオキサイドの付加率が70~100重量%である高EOポリエーテルポリオールを含むことを特徴とする。
【0013】
第6の態様は、第1から第5の態様の何れか一態様において、前記ポリウレタンフォーム用組成物に架橋剤を含むことを特徴とする。
【0014】
第7の態様は、第1から第6の態様の何れか一態様において、前記モールドポリウレタンフォームは、密度が30~70kg/m3、セル数が4~30個/25mm、熱伝導率が0.039~0.050W/m・Kであることを特徴とする。
【0015】
第8の態様は、ポリオール、発泡剤、触媒、整泡剤、イソシアネートを含むポリウレタンフォーム用組成物を金型内に注入して発泡させるモールドポリウレタンフォームの製造方法において、前記ポリオールとして、エチレンオキサイドの付加率が1~25重量%である低EOポリエーテルポリオールと、ポリマーポリオールを含み、前記整泡剤が、粘度1000mPa・s(25℃)以上、表面張力26mN/m(25℃)以下のシリコーン系整泡剤であることを特徴とする。
【0016】
第9の態様は、第8の態様において、全ポリオール量を100重量部とした場合に、前記低EOポリエーテルポリオールは30~80重量部であり、前記シリコーン系整泡剤が、直鎖状シリコーンであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、熱伝導率が高いモールドポリウレタンフォームを得ることができ、本発明のモールドポリウレタンフォームを車両用内装材に使用した場合に車室内の冷暖房効率を高めることができ、省エネに貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明のモールドポリウレタンフォームの一例の断面図である。
【
図2】モールドポリウレタンフォームの製造時を示す断面図である。
【
図3】実施例及び比較例のポリウレタンフォーム用組成物の配合と物性測定結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態について説明する。
図1に示す本発明の一実施形態のモールドポリウレタンフォーム10は、車両のシートクッションとして用いられるものであり、ポリウレタンフォーム用組成物から得られる。
【0020】
ポリウレタンフォーム用組成物は、ポリオール、発泡剤、触媒、整泡剤、イソシアネートを含む。
ポリオールは、低EOポリエーテルポリオールと、ポリマーポリオールを含み、より好ましくは、さらに高EOポリエーテルポリオールを含む。
【0021】
低EOポリエーテルポリオールは、エチレンオキサイド(EO)の付加率が1~25重量%であり、より好ましくは5~20重量%である。低EOポリエーテルポリオールとしては、官能基数1~4、分子量(数平均)3000~8000が好ましい。
なお、エチレンオキサイド(EO)の付加率(重量%)は、ポリエーテルポリオールの製造時のモノマーであるエチレンオキサイド(EO)やプロピレンオキサイド(PO)等のアルキレンオキサイド(AO)の総量に対するエチレンオキサイド(EO)の重量比率をいい、EO重量×100/AO総量(EO重量+PO重量等)により算出される値である。
【0022】
ポリマーポリオールは、ポリオール中にポリアクリロニトリルやポリスチレンを分散させたポリオールである。ポリマーポリオールとしては、エチレンオキサイド(EO)の付加率が1~25重量%、官能基数1~4、分子量(数平均)3000~8000が好ましい。より好ましいエチレンオキサイド(EO)の付加率は、5~20重量%である。
【0023】
高EOポリエーテルポリオールは、エチレンオキサイド(EO)の付加率が70~100重量%であり、より好ましくは75~100重量%である。高EOポリエーテルポリオールとしては、官能基数1~4、分子量(数平均)300~7000が好ましく、より好ましくは官能基数2~4、分子量(数平均)1000~6000である。
【0024】
低EOポリエーテルポリオール、ポリマーポリオール及び高EOポリエーテルポリオールは、それぞれ一種類に限られず複数種類を使用してもよい。
低EOポリエーテルポリオールとポリマーポリオールを併用することにより、シートクッションとして適した硬さのポリウレタンフォームを得ることができる。さらに高EOポリエーテルポリオールを含むことにより、ポリウレタンフォームを構成する個々のセルをよりセルオープンなもの(セルオープン性)とすることができ、ポリウレタンフォームの通気度を向上させることができる。
各ポリオールの量は、低EOポリエーテルポリオールとポリマーポリオールと高EOポリエーテルポリオールの合計を100重量部とした場合、低EOポリエーテルポリオールは30~80重量部、ポリマーポリオールは15~60重量部、高EOポリエーテルポリオールは0~20重量部が好ましい。さらに、より好適には、各ポリオールの量は、低EOポリエーテルポリオールとポリマーポリオールと高EOポリエーテルポリオールの合計を100重量部とした場合、低EOポリエーテルポリオールは40~75重量部、ポリマーポリオールは20~50重量部、高EOポリエーテルポリオールは0~15重量部が好ましい。
【0025】
発泡剤は、水、代替フロンあるいはペンタンなどの炭化水素を、単独または組み合わせて使用でき、特に水が好ましい。水の場合は、ポリオールとイソシアネートの反応時に炭酸ガスを発生し、その炭酸ガスによって発泡がなされる。発泡剤としての水の量は、ポリオール100重量部に対して1.0~4.0重量部が好ましい。
【0026】
触媒は、ポリウレタンフォーム用の公知のものを使用することができる。本発明では、泡化触媒と樹脂化触媒の併用が好ましい。 泡化触媒は、ポリイソシアネートと水の反応を促進して炭酸ガスを発生させる触媒である。泡化触媒は限定されるものではなく、例えば、トリエチルアミン、ジメチルアミノエトキシエタノール、N,N,N’-トリメチルアミノエチル-エタノールアミン、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル等のアミン系触媒を挙げることができる。
【0027】
樹脂化触媒は、ポリオールとイソシアネートとのウレタン化反応(樹脂化反応)を促進させる触媒である。樹脂化触媒は限定されるものではなく、例えば、1,2-ジメチルイミダゾール、N・(N’,N’-ジメチルアミノエチル)-モルホリン、テトラメチルグアニジン、ジメチルアミノエタノール、トリエチレンジアミン、N-メチル-N’-(2ヒドロキシエチル)-ピペラジン、N,N,N’,N’-テトラメチルプロパン1,3-ジアミン、N,N’-ジメチルピペラジン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサン-1,6-ジアミン、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジプロピレン-トリアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)モルホリン、エチレングリコールビス(3-ジメチル)-アミノプロピルエーテル、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N-メチル-N’-(2ジメチルアミノ)エチルピペラジン等のアミン系触媒を挙げることができる。
【0028】
泡化触媒と樹脂化触媒を併用することにより、モールドポリウレタンフォームの成形性とセルオープン性(通気度)とを共に優れたものとすることができる。触媒の合計量は、ポリオール100重量部に対し、0.3~3.0重量部が好ましい。
【0029】
整泡剤は、JIS K1557-5に基づく粘度が1000mPa・s(25℃)以上、好ましくは1200~10000mPa・s(25℃)であって、かつウィルヘルミー法に基づく表面張力(25℃)が26mN/m以下、好ましくは18~24mN/mの軟質ポリウレタンフォーム用またはモールドフォーム用のシリコーン系整泡剤が使用される。整泡剤は、粘度が1000mPa・s(25℃)未満の場合、セルが細かくなってセル数が大きくなり、熱伝導率が悪くなる。一方、表面張力が26mN/mを超える場合、整泡力が弱くなり泡を保持しにくくなる。シリコーン系整泡剤としては、直鎖状シリコーン((AB)n型)が好ましい。使用可能な整泡剤の例として、Momentive社製の「L-6164」、「L-629」を挙げることができる。「L-6164」は、直鎖状シリコーンであり、粘度が4840mPa・s(25℃)、表面張力が22.7mN/m(25℃)である。また、「L-629」は、直鎖状シリコーンであり、粘度が1560mPa・s(25℃)、表面張力が20.6mN/m(25℃)である。整泡剤は一種類に限られず、二種類以上を併用してもよい。整泡剤の量は、少なすぎると発泡時に泡を保持することが困難となったり、着座した際の初期圧縮性の感触が硬く、クッション感が悪くなる。逆に多すぎるとセルが細かくなり通気性も悪くなって、クッション性が悪くなる傾向があるため、ポリオール100重量部に対して0.1~2.0重量部が好ましく、より好ましくは0.4~1.8重量部である。
【0030】
イソシアネートは、イソシアネート基を2以上有する脂肪族系または芳香族系ポリイソシアネート、それらの混合物、およびそれらを変性して得られる変性ポリイソシアネートを使用することができる。脂肪族系ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキサメタンジイソシアネート等を挙げることができ、芳香族ポリイソシアネートとしては、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメリックポリイソシアネート(クルードMDI)等を挙げることができる。なお、その他これらを変成したプレポリマーも使用することができる。
【0031】
本発明では、イソシアネートとして、特に、MDI系イソシアネート単独またはMDI系イソシアネートとTDIとの併用が好ましい。MDI系イソシアネートは、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)単独、ポリメリックポリイソシアネート(クルードMDI)単独、これらの混合物、又はそれらのプレポリマータイプをいう。MDI系イソシアネートとトルエンジイソシアネート(TDI)を併用する場合、MDI系イソシアネートの割合が10%以上のものが好ましい。
【0032】
イソシアネートインデックスは、80~120が好ましく、より好ましくは85~105である。イソシアネートインデックスは、イソシアネートにおけるイソシアネート基のモル数をポリオールの水酸基などの活性水素基の合計モル数で割った値に100を掛けた値であり、[イソシアネートのNCO当量/活性水素当量×100]で計算される。
【0033】
その他に適宜配合される添加材として、例えば、架橋剤、難燃剤、着色剤等を挙げることができる。
【0034】
架橋剤は、モールドポリウレタンフォームの硬さを調整するために配合される。架橋剤としては、グリセリン、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール等の多価アルコールや、エタノールアミン類、ポリエチレンポリアミン類等のアミン等を挙げることができる。架橋剤は二種類以上使用してもよい。架橋剤を配合する場合、架橋剤の量は、ポリオール100重量部に対して0.1~4重量部が好ましい。架橋剤は、一種に限られず、二種以上を使用してもよい。
【0035】
難燃剤は、ポリウレタンフォームを低燃焼化するために配合される。難燃剤としては、公知の液体系難燃剤や固体系難燃剤等を挙げることができる。例えば、ポリ塩化ビニル、クロロプレンゴム、塩素化ポリエチレンなどのハロゲン化ポリマー、リン酸エステルやハロゲン化リン酸エステル化合物、あるいはメラミン樹脂やウレア樹脂などの有機系難燃剤、酸化アンチモンや水酸化アルミニウムなどの無機系難燃剤等を挙げることができる。難燃剤を配合する場合、難燃剤の量は、ポリオール100重量部に対して、0.1~5重量部が好ましい。難燃剤は、一種に限られず、二種以上を併用してもよい。
着色剤は、ポリウレタンフォームを適宜の色にするために配合され、求められる色に応じたものが使用される。着色剤として、顔料・黒鉛等を挙げることができる。
【0036】
前記ポリウレタンフォーム用組成物から得られるモールドポリウレタンフォーム10は、密度(JIS K7222:2005)が30~70kg/m3であり、軽量のため、車両用内装材に好適である。
【0037】
前記ポリウレタンフォーム用組成物から得られるモールドポリウレタンフォーム10は、セル数(JIS K 6400)が4~30個/25mm、常温における熱伝導率(JIS A 1412-2:熱流計法)が0.039~0.050W/m・Kであり、熱伝導率が高く、熱伝導性が良好であるため、車両用内装材に使用した場合に車室内の冷暖房効率を高めることができ、省エネに貢献することができる。
【0038】
前記ポリウレタンフォーム用組成物から得られるモールドポリウレタンフォーム10の製造方法について説明する。
まず、
図2の(2-A)に示すように、金型20内にポリウレタンフォーム用組成物Pを注入ノズルNで注入する。金型20は、下型21と上型22とからなり、製造するモールドポリウレタンフォームの外形状と等しい形状をした金型内面を有する。
【0039】
次に、
図2の(2-B)のように金型20を閉じてポリウレタンフォーム用組成物Pを発泡させ、
図2の(2-C)のように金型20内に充満させる。それにより、モールドポリウレタンフォーム10を発泡形成し、その後に金型20からモールドポリウレタンフォーム10を取り出す。
【0040】
なお、図示の例では、金型20を開いた状態でポリウレタンフォーム用組成物Pを注入し、注入後に金型20を閉じるオープンモールド発泡の例を示したが、金型を閉じた状態で金型に設けた孔からポリウレタンフォーム用組成物を注入するクローズドモールド発泡でもよい。
【0041】
前記ポリウレタンフォーム用組成物を金型へ注入する際のパック率(充填率)は、100~200%、より好ましくは105~150%となるようにするのが好ましい。パック率(充填率)は、(モールド発泡時の密度/フリー発泡時の密度)×100で計算される。
【実施例】
【0042】
以下の成分を使用して
図3に示す各実施例及び各比較例の配合で調製したポリウレタンフォーム用組成物を、混合して金型に注入し、モールドポリウレタンフォームを製造した。金型の内面形状及び寸法は20×20×8cmの直方体からなり、パック率を105%とした。なお、
図3の各成分の量は重量部である。
【0043】
・ポリエーテルポリオールA1:EO付加率=80重量%、ポリオキシアルキレンポリオール、分子量=4000、官能基数=3、OHV=39mgKOH/g
・ポリエーテルポリオールA2-1:EO付加率=15重量%、ポリオキシアルキレンポリオール、分子量=5000、官能基数=3、OHV=33mgKOH/g
・ポリエーテルポリオールA2-2:EO付加率=15重量%、ポリオキシアルキレンポリオール、分子量=7000、官能基数=3、OHV=24mgKOH/g
・ポリエーテルポリオールA3:EO付加率=15重量%、ポリオキシアルキレンポリオール、分子量=5000、官能基数=3、OHV=28mgKOH/g、ポリマーポリオール(ポリマー分20重量%)
・ポリエーテルポリオールA4:EO付加率=0重量%、ポリオキシプロピレンポリオール、分子量=1000、官能基数=2、OHV=112mgKOH/g
【0044】
・架橋剤-1:グリセリン、分子量=92、官能基数=3 ・架橋剤-2:ジエタノールアミン、分子量=105、官能基数=2 ・架橋剤-3:ポリエーテル系架橋剤、分子量=190、官能基数=3
【0045】
・触媒-1:泡化触媒、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、品番;BL-19、エアープロダクツジャパン社製 ・触媒-2:樹脂化触媒、トリエチレンジアミンの33%ジプロピレングリコール溶液、品番;DABCO-33-LV、エアープロダクツジャパン社製
【0046】
・整泡剤-1:直鎖状シリコーン系整泡剤、粘度=4840mPa・s(25℃)、表面張力=22.7mN/m(25℃)、品番;L-6164、MOMENTIVE社製
・整泡剤-2:直鎖状シリコーン系整泡剤、粘度1560mPa・s(25℃)、表面張力20.6mN/m(25℃)、品番;L-629、Momentive社製
・整泡剤-3:シリコーン系整泡剤、粘度40mPa・s(25℃)、表面張力20.9mN/m(25℃)、品番;B-8738LF、エボニックジャパン(株)社製
・整泡剤-4:ジメチルシロキサンコポリマー、粘度=610mPa・s(25℃)、表面張力=20.8mN/m(25℃)、品番;L-3184J、MOMENTIVE社製
【0047】
・イソシアネート-1:2,4-トルエンジイソシアネート(TDI)と2,6-トルエンジイソシアネート(TDI)の80:20の混合物80%と、ポリメリックポリイソシアネート(クルードMDI)20%との混合物、品番;TM-20、三井化学社製 ・イソシアネート-2:変性4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、品名:コロネート1050、日本ポリウレタン工業株式会社製
【0048】
得られた実施例1~5及び比較例1~5に対して、密度(JIS K7222:2005)と、セル数(JIS K 6400)、熱伝導率(JIS A 1412-2:熱流計法)、通気度(JIS L1096:フラジール式A法、厚み15mm)、反発(JIS K 6400)について測定した。測定結果を
図3に示す。
【0049】
実施例1は、ポリオールとしてEO付加率80重量%、分子量4000、官能基数3のポリエーテルポリオールA1を5重量部、EO付加率15重量%、分子量5000、官能基数3のポリエーテルポリオールA2-1を35重量部、EO付加率15重量%、分子量7000、官能基数3のポリエーテルポリオールA2-2を40重量部、EO付加率15重量%、分子量5000、官能基数3のポリマーポリオールからなるポリエーテルポリオールA3を20重量部使用し、架橋剤-1を1.2重量部、架橋剤-2を1.1重量部、発泡剤として水を3.6重量部、触媒-1(泡化触媒)を0.05重量部、触媒-2(樹脂化触媒)を0.52重量部、整泡剤-2(直鎖状シリコーン系整泡剤、粘度1560mPa・s(25℃)、表面張力20.6mN/m(25℃))を1.5重量部、イソシアネート1を42.9重量部からなるポリウレタンフォーム用組成物から製造した例である。
実施例1は、密度35kg/m3、セル数7.5個/25mm、熱伝導率0.047W/m・K、通気度11cm3/cm2・s、反発38%であった。
【0050】
実施例2は、ポリオールとしてEO付加率80重量%、分子量4000、官能基数3のポリエーテルポリオールA1を5重量部、EO付加率15重量%、分子量5000、官能基数3のポリエーテルポリオールA2-1を35重量部、EO付加率15重量%、分子量7000、官能基数3のポリエーテルポリオールA2-2を20重量部、EO付加率15重量%、分子量5000、官能基数3のポリマーポリオールからなるポリエーテルポリオールA3を40重量部使用し、架橋剤-1を1.2重量部、架橋剤-2を1.1重量部、発泡剤として水を3.2重量部、触媒-1(泡化触媒)を0.05重量部、触媒-2(樹脂化触媒)を0.52重量部、整泡剤-2(直鎖状シリコーン系整泡剤、粘度1560mPa・s(25℃)、表面張力20.6mN/m(25℃))を1.5重量部、イソシアネート1を41.8重量部からなるポリウレタンフォーム用組成物から製造した例である。
実施例2は、密度43kg/m3、セル数12.5個/25mm、熱伝導率0.045W/m・K、通気度10cm3/cm2・s、反発42%であった。
【0051】
実施例3は、ポリオールとして、EO付加率80重量%のポリエーテルポリオールA1を含まず、EO付加率15重量%、分子量5000、官能基数3のポリエーテルポリオールA2-1を40重量部、EO付加率15重量%、分子量7000、官能基数3のポリエーテルポリオールA2-2を10重量部、EO付加率15重量%、分子量5000、官能基数3のポリマーポリオールからなるポリエーテルポリオールA3を50重量部、EO付加率0重量%、分子量1000、官能基数2のポリエーテルポリオールA4を5重量部使用し、架橋剤-1を1.2重量部、架橋剤-2を1.1重量部、発泡剤として水を2.7重量部、触媒-1(泡化触媒)を0.05重量部、触媒-2(樹脂化触媒)を0.52重量部、整泡剤-2(直鎖状シリコーン系整泡剤、粘度1560mPa・s(25℃)、表面張力20.6mN/m(25℃))を1.5重量部、イソシアネート1を32.5重量部からなるポリウレタンフォーム用組成物から製造した例である。
実施例3は、密度56kg/m3、セル数22.5個/25mm、熱伝導率0.040W/m・K、通気度2cm3/cm2・s、反発30%であった。
【0052】
実施例4は、ポリオールとしてEO付加率80重量%、分子量4000、官能基数3のポリエーテルポリオールA1を15重量部、EO付加率15重量%、分子量5000、官能基数3のポリエーテルポリオールA2-1を15重量部、EO付加率15重量%、分子量7000、官能基数3のポリエーテルポリオールA2-2を30重量部、EO付加率15重量%、分子量5000、官能基数3のポリマーポリオールからなるポリエーテルポリオールA3を40重量部使用し、架橋剤を含まず、発泡剤として水を2.9重量部、触媒-1(泡化触媒)を0.05重量部、触媒-2(樹脂化触媒)を0.7重量部、整泡剤-1(直鎖状シリコーン系整泡剤、粘度=4840mPa・s(25℃)、表面張力=22.7mN/m(25℃))を1.2重量部、イソシアネート2を49.0重量部からなるポリウレタンフォーム用組成物から製造した例である。
実施例4は、密度56kg/m3、セル数7.5個/25mm、熱伝導率0.043W/m・K、通気度27cm3/cm2・s、反発56%であった。
【0053】
実施例5は、ポリオールとしてEO付加率80重量%、分子量4000、官能基数3のポリエーテルポリオールA1を10重量部、EO付加率15重量%、分子量5000、官能基数3のポリエーテルポリオールA2-1を30重量部、EO付加率15重量%、分子量7000、官能基数3のポリエーテルポリオールA2-2を10重量部、EO付加率15重量%、分子量5000、官能基数3のポリマーポリオールからなるポリエーテルポリオールA3を50重量部使用し、架橋剤-3を3重量部、発泡剤として水を2.9重量部、触媒-1(泡化触媒)を0.05重量部、触媒-2(樹脂化触媒)を0.7重量部、整泡剤-1(直鎖状シリコーン系整泡剤、粘度=4840mPa・s(25℃)、表面張力=22.7mN/mmN/m(25℃))を1.2重量部、イソシアネート2を56.9重量部からなるポリウレタンフォーム用組成物から製造した例である。
実施例5は、密度60kg/m3、セル数17.5個/25mm、熱伝導率0.042W/m・K、通気度19cm3/cm2・s、反発45%であった。
【0054】
比較例1は、実施例1において、EO付加率80重量%、分子量4000、官能基数3のポリエーテルポリオールA1を1重量部、EO付加率15重量%、分子量5000、官能基数3のポリエーテルポリオールA2-1を39重量部に変更し、発泡剤として水を3.4重量部とし、整泡剤-2に代えて整泡剤-4(ジメチルシロキサンコポリマー、粘度=610mPa・s(25℃)、表面張力=20.8mN/m(25℃))を0.5重量部使用し、イソシアネート1を44.8重量部とし、他の成分を実施例1と同様にしたポリウレタンフォーム用組成物から製造した例である。
比較例1は、密度36kg/m3、セル数42.5個/25mm、熱伝導率0.037W/m・K、通気度43cm3/cm2・s、反発67%であった。比較例1は、実施例1と比べると、整泡剤-2(直鎖状シリコーン系整泡剤、粘度1560mPa・s(25℃)、表面張力20.6mN/m(25℃))を使用していないため、セル数が多く、熱伝導率が低くなった。
【0055】
比較例2は、実施例2において、EO付加率80重量%、分子量4000、官能基数3のポリエーテルポリオールA1を1重量部、EO付加率15重量%、分子量5000、官能基数3のポリエーテルポリオールA2-1を39重量部に変更し、発泡剤として水を3重量部とし、整泡剤-2に代えて整泡剤-4(ジメチルシロキサンコポリマー、粘度=610mPa・s(25℃)、表面張力=20.8mN/m(25℃))を0.5重量部使用し、イソシアネート1を36.9重量部とし、他の成分を実施例2と同様にしたポリウレタンフォーム用組成物から製造した例である。
比較例2は、密度45kg/m3、セル数47.5個/25mm、熱伝導率0.036W/m・K、通気度29cm3/cm2・s、反発70%であった。比較例2は、実施例2と比べると、整泡剤-2(直鎖状シリコーン系整泡剤、粘度1560mPa・s(25℃)、表面張力20.6mN/m(25℃))を使用していないため、セル数が多く、熱伝導率が低くなった。
【0056】
比較例3は、実施例3において、発泡剤として水を2.5重量部とし、整泡剤-2に代えて整泡剤-4(ジメチルシロキサンコポリマー、粘度=610mPa・s(25℃)、表面張力=20.8mN/m(25℃))を0.5重量部使用し、イソシアネート1を34.0重量部とし、他の成分を実施例3と同様にしたポリウレタンフォーム用組成物から製造した例である。
比較例3は、密度57kg/m3、セル数57.5個/25mm、熱伝導率0.035W/m・K、通気度17cm3/cm2・s、反発63%であった。比較例3は、実施例3と比べると、整泡剤-2(直鎖状シリコーン系整泡剤、粘度1560mPa・s(25℃)、表面張力20.6mN/m(25℃))を使用していないため、セル数が多く、熱伝導率が低くなった。
【0057】
比較例4は、実施例4において、EO付加率80重量%、分子量4000、官能基数3のポリエーテルポリオールA1を3重量部、EO付加率15重量%、分子量5000、官能基数3のポリエーテルポリオールA2-1を37重量部、EO付加率15重量%、分子量7000、官能基数3のポリエーテルポリオールA2-2を10重量部に変更し、また、官能基数3のポリマーポリオールからなるポリエーテルポリオールA3を50重量部に変更し、発泡剤として水を2.7重量部とし、整泡剤-1に代えて整泡剤-3(シリコーン系整泡剤、粘度40mPa・s(25℃)、表面張力20.9mN/m(25℃))を0.4重量部使用し、イソシアネート2を46.5重量部とし、他の成分を実施例4と同様にしたポリウレタンフォーム用組成物から製造した例である。
比較例4は、密度54kg/m3、セル数52.5個/25mm、熱伝導率0.036W/m・K、通気度18cm3/cm2・s、反発55%であった。比較例4は、実施例4と比べると、整泡剤-1(直鎖状シリコーン系整泡剤、粘度4840mPa・s(25℃)、表面張力=22.7mN/m(25℃))を使用していないため、セル数が多く、熱伝導率が低くなった。
【0058】
比較例5は、実施例5において、EO付加率80重量%、分子量4000、官能基数3のポリエーテルポリオールA1を2重量部、EO付加率15重量%、分子量5000、官能基数3のポリエーテルポリオールA2-1を38重量部に変更し、発泡剤として水を2.7重量部とし、整泡剤-1に代えて整泡剤-3(シリコーン系整泡剤、粘度40mPa・s(25℃)、表面張力20.9mN/m(25℃))を0.4重量部使用し、イソシアネート2を57.4重量部とし、他の成分を実施例5と同様にしたポリウレタンフォーム用組成物から製造した例である。
比較例5は、密度59kg/m3、セル数47.5個/25mm、熱伝導率0.037W/m・K、通気度28cm3/cm2・s、反発47%であった。比較例5は、実施例5と比べると、整泡剤-1(直鎖状シリコーン系整泡剤、粘度4840mPa・s(25℃)、表面張力=22.7mN/m(25℃))を使用していないため、セル数が多く、熱伝導率が低くなった。
【0059】
このように、実施例のモールドポリウレタンフォームは比較例のモールドポリウレタンフォームよりも熱伝導率が高く、車両用内装材に使用した場合に車室内の冷暖房効率を高めることができる。さらに、実施例のモールドポリウレタンフォームは、セル数が5~25個/25mmであり、車両用シートクッションなどのクッション材に使用した場合には、クッション性や圧縮時の感触性に悪影響を及ぼすおそれがない。
なお、本発明のモールドポリウレタンフォームは、シートクッションのほか、同様にして、ヘッドレスト、アームレスト等の車両用内装材に用いることもできる。
【符号の説明】
【0060】
10:モールドポリウレタンフォーム
20:金型
21:下型
22:上型
N:注入ノズル
P:ポリウレタンフォーム組成物