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特許7606559窒化ホウ素粒子、窒化ホウ素粉末、樹脂組成物、及び樹脂組成物の製造方法
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  • 特許-窒化ホウ素粒子、窒化ホウ素粉末、樹脂組成物、及び樹脂組成物の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】窒化ホウ素粒子、窒化ホウ素粉末、樹脂組成物、及び樹脂組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 21/064 20060101AFI20241218BHJP
   C08K 3/28 20060101ALI20241218BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
C01B21/064 G
C01B21/064 B
C08K3/28
C08L101/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023061189
(22)【出願日】2023-04-05
(62)【分割の表示】P 2022544005の分割
【原出願日】2021-08-19
(65)【公開番号】P2023083333
(43)【公開日】2023-06-15
【審査請求日】2023-06-14
(31)【優先権主張番号】P 2020139486
(32)【優先日】2020-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(74)【代理人】
【識別番号】100218855
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 政輝
(72)【発明者】
【氏名】山本 麻菜
(72)【発明者】
【氏名】宮田 建治
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 祐輔
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109704296(CN,A)
【文献】国際公開第2018/139644(WO,A1)
【文献】特開2019-043792(JP,A)
【文献】特開2008-214130(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0276310(US,A1)
【文献】国際公開第2020/090240(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/136959(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/175377(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 21/064
C08K 3/28
C08L 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長形状を有する窒化ホウ素粒子であって、
前記窒化ホウ素粒子の短手方向に0.27mN/秒の負荷速度で0.2mNから20mNまで徐々に負荷をかけて圧縮する負荷工程と、0.27mN/秒の除荷速度で0.2mNまで徐々に除荷する除荷工程とをこの順に備える負荷除荷試験に供されたときに、前記負荷工程で圧縮された前記窒化ホウ素粒子の前記短手方向の長さの少なくとも一部が前記除荷工程で戻り、
前記負荷除荷試験において、前記窒化ホウ素粒子の変位量をX、負荷量をYとしたときに、前記負荷工程における前記窒化ホウ素粒子の変位量Xと負荷量Yとの関係を負荷曲線L1、前記除荷工程における前記窒化ホウ素粒子の変位量Xと負荷量Yとの関係を除荷曲線L2とするとき、
前記負荷曲線L1と、前記除荷曲線L2と、Y=0.2mNを示す直線L3とで囲まれる領域の面積Pを塑性変形仕事量W とし、前記除荷曲線L2と、前記直線L3と、前記負荷曲線L1及び前記除荷曲線L2の交点と前記直線L3とを結ぶY軸に平行な直線L4とで囲まれる領域Eの面積を弾性変形仕事量W とし、W とW との合計(W +W )を全仕事量W とするときに、前記全仕事量W に対する前記弾性変形仕事量W の比率(W /W )が0.1以上である、窒化ホウ素粒子。
【請求項2】
窒化ホウ素により形成される外殻部と、前記外殻部に囲われた中空部と、を有する、請求項1に記載の窒化ホウ素粒子。
【請求項3】
アスペクト比が1.5以上8.0以下である、請求項1又は2に記載の窒化ホウ素粒子。
【請求項4】
細長形状を有する窒化ホウ素粒子の集合体である窒化ホウ素粉末であって、
下記(1)~(3)の工程:
(1)前記窒化ホウ素粉末から選ばれる10個の窒化ホウ素粒子Aのそれぞれについて、前記窒化ホウ素粒子Aの短手方向に0.27mN/秒の負荷速度で負荷をかけて圧壊させるために必要な負荷の大きさを測定し、前記負荷の大きさの平均値Fを算出する算出工程
(2)前記窒化ホウ素粒子Aとは別に前記窒化ホウ素粉末から選ばれる窒化ホウ素粒子Bの短手方向に、0.27mN/秒の負荷速度で0.2mNから前記負荷の大きさの平均値Fの50%の大きさまで徐々に負荷をかけて圧縮する負荷工程
(3)前記窒化ホウ素粒子Bに対し、0.27mN/秒の除荷速度で0.2mNまで徐々に除荷する除荷工程
をこの順に備える負荷除荷試験に供されたときに、前記負荷工程で圧縮された前記窒化ホウ素粒子Bの前記短手方向の長さの少なくとも一部が前記除荷工程で戻り、
前記負荷除荷試験において、前記窒化ホウ素粒子Bの変位量をX、負荷量をYとしたときに、前記負荷工程における前記窒化ホウ素粒子Bの変位量Xと負荷量Yとの関係を負荷曲線L1、前記除荷工程における前記窒化ホウ素粒子Bの変位量Xと負荷量Yとの関係を除荷曲線L2とするとき、
前記負荷曲線L1と、前記除荷曲線L2と、Y=0.2mNを示す直線L3とで囲まれる領域の面積Pを塑性変形仕事量W とし、前記除荷曲線L2と、前記直線L3と、前記負荷曲線L1及び前記除荷曲線L2の交点と前記直線L3とを結ぶY軸に平行な直線L4とで囲まれる領域Eの面積を弾性変形仕事量W とし、W とW との合計(W +W )を全仕事量W とするときに、前記全仕事量W に対する前記弾性変形仕事量W の比率(W /W )の平均値が0.1以上である、窒化ホウ素粉末。
【請求項5】
前記細長形状を有する窒化ホウ素粒子が、窒化ホウ素により形成される外殻部と、前記外殻部に囲われた中空部と、を有する、請求項に記載の窒化ホウ素粉末。
【請求項6】
前記細長形状を有する窒化ホウ素粒子のアスペクト比が1.5以上8.0以下である、請求項4又は5に記載の窒化ホウ素粉末。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載の窒化ホウ素粒子又は請求項4~6のいずれか一項に記載の窒化ホウ素粉末と、樹脂と、を含有する樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載の窒化ホウ素粒子又は請求項4~6のいずれか一項に記載の窒化ホウ素粉末を用意する工程と、
前記窒化ホウ素粒子又は前記窒化ホウ素粉末を樹脂と混合する工程と、を備える、樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
前記窒化ホウ素粒子又は前記窒化ホウ素粉末を粉砕する工程を更に備える、請求項に記載の樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、窒化ホウ素粒子、窒化ホウ素粉末、樹脂組成物、及び樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化ホウ素は、潤滑性、高熱伝導性、及び絶縁性を有しており、固体潤滑材、離型材、化粧料の原料、放熱材、並びに、耐熱性及び絶縁性を有する焼結体等の種々の用途に利用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、樹脂に充填して得られる樹脂組成物に高い熱伝導性と高い絶縁耐力を付与することが可能な六方晶窒化ホウ素粉末として、六方晶窒化ホウ素の一次粒子からなる凝集粒子を含み、BET比表面積が0.7~1.3m/gであり、且つ、JIS K 5101-13-1に基づき測定される吸油量が80g/100g以下であることを特徴とする六方晶窒化ホウ素粉末が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-160134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らの検討によれば、窒化ホウ素粒子を例えば放熱材(放熱シート)に用いる場合、特定の方向の熱伝導性を高めるために、窒化ホウ素粒子が細長形状を有することが望ましい。また、窒化ホウ素粒子を樹脂と混合し、シート状に成形して放熱材として用いる場合、樹脂との混合中や放熱材の成形中に窒化ホウ素粒子に負荷がかかって変形することがあるが、当該負荷が除かれたときに、窒化ホウ素粒子が元の形状、又はそれにできる限り近い形状に戻ることが望ましい。
【0006】
本発明の主な目的は、新規な窒化ホウ素粒子及び窒化ホウ素粉末を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面は、細長形状を有する窒化ホウ素粒子であって、上記窒化ホウ素粒子の短手方向に0.27mN/秒の負荷速度で0.2mNから20mNまで徐々に負荷をかけて圧縮する負荷工程と、0.27mN/秒の除荷速度で0.2mNまで徐々に除荷する除荷工程とをこの順に備える負荷除荷試験に供されたときに、上記負荷工程で圧縮された上記窒化ホウ素粒子の上記短手方向の長さの少なくとも一部が上記除荷工程で戻る、窒化ホウ素粒子である。
【0008】
上記負荷工程において上記窒化ホウ素粒子が上記短手方向に変位した量をD、上記除荷工程において上記窒化ホウ素粒子が上記短手方向に変位した量をDとしたときに、D/Dが0.2以上であってよい。
【0009】
窒化ホウ素粒子は、窒化ホウ素により形成される外殻部と、上記外殻部に囲われた中空部と、を有してよい。
【0010】
本発明の他の一側面は、細長形状を有する窒化ホウ素粒子の集合体である窒化ホウ素粉末であって、下記(1)~(3)の工程:
(1)上記窒化ホウ素粉末から選ばれる10個の窒化ホウ素粒子Aのそれぞれについて、上記窒化ホウ素粒子Aの短手方向に0.27mN/秒の負荷速度で負荷をかけて圧壊させるために必要な負荷の大きさを測定し、上記負荷の大きさの平均値Fを算出する算出工程
(2)上記窒化ホウ素粒子Aとは別に上記窒化ホウ素粉末から選ばれる窒化ホウ素粒子Bの短手方向に、0.27mN/秒の負荷速度で0.2mNから上記負荷の大きさの平均値Fの50%の大きさまで徐々に負荷をかけて圧縮する負荷工程
(3)上記窒化ホウ素粒子Bに対し、0.27mN/秒の除荷速度で0.2mNまで徐々に除荷する除荷工程
をこの順に備える負荷除荷試験に供されたときに、上記負荷工程で圧縮された上記窒化ホウ素粒子Bの上記短手方向の長さの少なくとも一部が上記除荷工程で戻る、窒化ホウ素粉末である。
【0011】
上記負荷工程において上記窒化ホウ素粒子Bが上記短手方向に変位した量の平均値をD、上記除荷工程において上記窒化ホウ素粒子Bが上記短手方向に変位した量の平均値をDとしたときに、D/Dが0.2以上であってよい。
【0012】
窒化ホウ素粉末は、窒化ホウ素により形成される外殻部と、上記外殻部に囲われた中空部と、を有する窒化ホウ素粒子の集合体であってよい。
【0013】
本発明の他の一側面は、上記窒化ホウ素粒子又は上記窒化ホウ素粉末と、樹脂と、を含有する樹脂組成物である。
【0014】
本発明の他の一側面は、上記窒化ホウ素粒子又は上記窒化ホウ素粉末を用意する工程と、上記窒化ホウ素粒子又は上記窒化ホウ素粉末を樹脂と混合する工程と、を備える、樹脂組成物の製造方法である。この樹脂組成物の製造方法は、上記窒化ホウ素粒子又は上記窒化ホウ素粉末を粉砕する工程を更に備えてよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一側面によれば、新規な窒化ホウ素粒子及び窒化ホウ素粉末を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】窒化ホウ素粒子を負荷除荷試験に供したときの負荷量と窒化ホウ素粒子の変位量との関係を示す概略図である。
図2】実施例1の窒化ホウ素粒子のX線回折測定結果のグラフである。
図3】実施例1の窒化ホウ素粒子のSEM画像である。
図4】実施例1の窒化ホウ素粒子B(粒子No.1)を負荷除荷試験に供したときの負荷量と窒化ホウ素粒子の変位量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0018】
(第一実施形態:窒化ホウ素粒子)
本発明の一実施形態(第一実施形態)は、細長形状を有する窒化ホウ素粒子である。細長形状を有する窒化ホウ素粒子は、例えば、1.5以上のアスペクト比を有してよい。窒化ホウ素粒子のアスペクト比は、1.6以上、1.7以上、1.8以上、1.9以上、2.0以上、2.5以上、又は3.0以上であってよく、12.0以下、10.0以下、9.5以下、9.0以下、8.0以下であってよい。
【0019】
窒化ホウ素粒子のアスペクト比は、窒化ホウ素粒子の最大長さ(L)と、当該最大長さを有する方向に垂直な方向における窒化ホウ素粒子の最大長さ(L)との比(L/L)として定義される。窒化ホウ素粒子の最大長さ(L)とは、窒化ホウ素粒子を顕微鏡で観察したときに、1個の窒化ホウ素粒子上の任意の2点間の直線距離のうち最大となる長さを意味する。顕微鏡は、例えば微小圧縮試験機(例えば、株式会社島津製作所製、MCTシリーズ)に付属の顕微鏡であってよい。当該最大長さ(L)の測定は、観察画像を画像解析ソフトウェア(例えば、微小圧縮試験機に付属のソフトウェア)に取り込んで行ってもよい。最大長さを有する方向に垂直な方向における窒化ホウ素粒子の最大長さ(L)は、最大長さ(L)と同様の方法で測定することができる。
【0020】
窒化ホウ素粒子のアスペクト比が大きいほど、窒化ホウ素粒子はより細長い形状を有する。そのため、例えば、窒化ホウ素粒子を樹脂と混合して放熱材としたときに、窒化ホウ素粒子同士が重なりやすくなる。さらに、細長形状を有する窒化ホウ素粒子が他の窒化ホウ素粒子と重なるとき、細長形状を有する窒化ホウ素粒子が斜めになるように重なると考えられる。したがって、放熱材の厚さ方向に並ぶ粒子数が少なくなり、窒化ホウ素粒子間での伝熱ロスが少なくなるため、放熱材の熱伝導性がより優れると考えられる。
【0021】
窒化ホウ素粒子の最大長さ(L)は、80μm以上、100μm以上、125μm以上、150μm以上、175μm以上、200μm以上、225μm以上、250μm以上、275μm以上、又は300μm以上であってよく、500μm以下又は400μm以下であってよい。
【0022】
窒化ホウ素粒子の最大長さ(L)を有する方向に垂直な方向における窒化ホウ素粒子の最大長さ(L)は、50μm以上、60μm以上、70μm以上、又は80μm以上であってよく、300μm以下、200μm以下、150μm以下、又は100μm以下であってよい。
【0023】
窒化ホウ素粒子の外観形状は、細長形状であれば特に限定されない。窒化ホウ素粒子は、定形であっても不定形であってもよい。窒化ホウ素粒子の外観形状としては、回転楕円体状、棒状、ダンベル状等が挙げられる。窒化ホウ素粒子は、例えば、二以上の方向に分岐する分岐構造を有していてもよい。
【0024】
窒化ホウ素粒子は、中実又は中空であってよい。窒化ホウ素粒子が中空である場合、窒化ホウ素粒子は、窒化ホウ素により形成される外殻部と、外殻部に囲われた中空部とを有してよい。中空部は、窒化ホウ素粒子の長手方向に沿って延在していてよい。すなわち、窒化ホウ素粒子は、チューブ状であってもよい。この場合、窒化ホウ素粒子の長手方向における端部の少なくとも一つが開口端であってよく、全ての端部が開口端であってよい。当該開口端は、上述した中空部と連通していてよい。窒化ホウ素粒子が中空であり、窒化ホウ素粒子の長手方向における端部の少なくとも一つが開口端であることにより、例えば、窒化ホウ素粒子を樹脂と混合して放熱材として用いたときに、窒化ホウ素粒子よりも軽い樹脂が中空部に充填されることで、放熱材の熱伝導率の向上が図られつつ、放熱材の軽量化が期待できる。
【0025】
本実施形態の窒化ホウ素粒子は、窒化ホウ素粒子の短手方向に0.27mN/秒の負荷速度で0.2mNから20mNまで徐々に負荷をかけて圧縮する負荷工程と、0.27mN/秒の除荷速度で0.2mNまで徐々に除荷する除荷工程とをこの順に備える負荷除荷試験に供されたときに、負荷工程で圧縮された窒化ホウ素粒子の短手方向の長さの少なくとも一部が除荷工程で戻る窒化ホウ素粒子である。
【0026】
負荷工程では、まず、試料台に窒化ホウ素粒子を設置する。このとき、窒化ホウ素粒子の長手方向が試料台の設置面に沿うように窒化ホウ素粒子を設置する。続いて、微小圧縮試験機(例えば、株式会社島津製作所製、MCTシリーズ)の圧子(例えば圧子径200μm)を、試料台上の窒化ホウ素粒子1個に向けて降下させて、0.27mN/秒の負荷速度で、窒化ホウ素粒子に0.2mNから20mNまで徐々に負荷をかける。このとき、かけられた負荷(負荷量)に対する窒化ホウ素粒子の変位の大きさ(変位量)が測定される。
【0027】
除荷工程では、負荷工程における負荷(20mN)が窒化ホウ素粒子にかかっている状態から、0.27mN/秒の除荷速度で0.2mNまで徐々に除荷する。このときも、負荷量に対する窒化ホウ素粒子の変位量が測定される。なお、負荷工程が完了してから除荷工程を開始する(窒化ホウ素粒子に20mNの負荷がかかった状態が維持される)時間は、5秒間以下とする。
【0028】
窒化ホウ素粒子をこの負荷除荷試験に供したときの、負荷量と窒化ホウ素粒子の変位量との関係の一例を図1に示す。図1に示されるように、窒化ホウ素粒子の変位量をX、負荷量をYとしたときに、例えば、負荷工程における窒化ホウ素粒子の変位量Xと負荷量Yとは負荷曲線L1のような関係となり、除荷工程における窒化ホウ素粒子の変位量Xと負荷量Yは除荷曲線L2のような関係となる。
【0029】
負荷工程において窒化ホウ素粒子が短手方向に変位した量(絶対値)をD、除荷工程において窒化ホウ素粒子が短手方向に変位した量(絶対値)をDとすると、負荷工程で圧縮された窒化ホウ素粒子の短手方向の長さの少なくとも一部が除荷工程で戻るとは、D>0であることを意味する。そして、除荷工程で圧縮された窒化ホウ素粒子がどの程度戻るかを示す復元率(D/D)は、大きいほど好ましい。復元率(D/D)は、例えば、0.2以上、0.25以上、0.3以上、0.35以上、又は0.4以上であってよい。
【0030】
復元率が大きいということは、窒化ホウ素粒子の弾性変形仕事比率が大きいと言い換えることもできる。すなわち、窒化ホウ素粒子の弾性変形仕事比率が大きいほど、当該窒化ホウ素粒子は圧縮されても元の形状により戻りやすい。窒化ホウ素粒子の弾性変形仕事比率は、例えば、0.1以上、0.15以上、0.2以上、0.25以上、0.3以上、又は0.35以上であってよい。
【0031】
窒化ホウ素粒子の弾性変形仕事比率は、以下のとおり定義される。すなわち、図1に示されるように、負荷曲線L1と、除荷曲線L2と、Y=0.2mNを示す直線L3とで囲まれる領域Pの面積を塑性変形仕事量Wとし、除荷曲線L2と、直線L3と、負荷曲線L1及び除荷曲線L2の交点と直線L3とを結ぶY軸に平行な直線L4とで囲まれる領域Eの面積を弾性変形仕事量Wとし、WとWとの合計(W+W)を全仕事量Wとするときに、弾性変形仕事比率は、全仕事量Wに対する弾性変形仕事量Wの比率(W/W)と定義される。
【0032】
一実施形態に係る窒化ホウ素粒子は、外部から負荷がかかって変形したとしても、除荷したときに元の形状に近い形状に戻る。そのため、例えば、窒化ホウ素粒子を樹脂と混合してシート状に成形した放熱材を作製したときに、窒化ホウ素粒子が、樹脂との混合中又は放熱材の成形中に変形したとしても、その後に窒化ホウ素粒子は元の形状に近い形状に戻る。したがって、この窒化ホウ素粒子は、従来の窒化ホウ素粒子に比べて、放熱材中で熱伝導経路を維持しやすい。加えて、この窒化ホウ素粒子は細長形状を有しているため、放熱材における特定方向の熱伝導性を特に高めることもできる。よって、この窒化ホウ素粒子は、放熱材として好適に用いることができる。なお、窒化ホウ素粒子の用途として放熱材を例示したが、この窒化ホウ素粒子は、放熱材に限らず種々の用途に利用できる。
【0033】
(第二実施形態:窒化ホウ素粉末)
本発明の他の一実施形態(第二実施形態)は、細長形状を有する窒化ホウ素粒子の集合体(複数の細長形状を有する窒化ホウ素粒子で構成される粉体)である窒化ホウ素粉末である。第二実施形態に係る窒化ホウ素粉末において、各窒化ホウ素粒子は、上述した第一実施形態に係る窒化ホウ素粒子であってよい。
【0034】
第二実施形態に係る窒化ホウ素粉末は、下記(1)~(3)の工程:
(1)窒化ホウ素粉末から選ばれる10個の窒化ホウ素粒子Aのそれぞれについて、窒化ホウ素粒子Aの短手方向に0.27mN/秒の負荷速度で負荷をかけて圧壊させるために必要な負荷の大きさを測定し、負荷の大きさの平均値Fを算出する算出工程
(2)窒化ホウ素粒子Aとは別に窒化ホウ素粉末から選ばれる窒化ホウ素粒子Bのそれぞれの短手方向に、0.27mN/秒の負荷速度で0.2mNから負荷の大きさの平均値Fの50%の大きさまで徐々に負荷をかけて圧縮する負荷工程
(3)0.27mN/秒の除荷速度で0.2mNまで徐々に除荷する除荷工程
をこの順に備える負荷除荷試験に供されたときに、負荷工程で圧縮された窒化ホウ素粒子Bの短手方向の長さの少なくとも一部が除荷工程で戻る、窒化ホウ素粉末であってよい。
【0035】
算出工程では、まず、窒化ホウ素粉末から選ばれる10個以上の窒化ホウ素粒子を試料台に設置する。このとき、各窒化ホウ素粒子の長手方向が試料台の設置面に沿うように窒化ホウ素粒子を設置する。続いて、微小圧縮試験機(例えば、株式会社島津製作所製、MCTシリーズ)の圧子(例えば圧子径200μm)を、試料台上の窒化ホウ素粒子1個に向けて降下させて、0.27mN/秒の負荷速度で負荷をかける。そして、窒化ホウ素粒子の短手方向の変位量が急激に上昇するときの負荷の大きさを、窒化ホウ素粒子を圧壊させるために必要な負荷の大きさとして測定する。この測定を10個の窒化ホウ素粒子(この窒化ホウ素粒子を窒化ホウ素粒子Aと呼ぶ)について同様に行い、窒化ホウ素粒子Aを圧壊させるために必要な負荷の大きさの平均値F(mN)を算出する。
【0036】
続いて、窒化ホウ素粒子Aとは別に窒化ホウ素粉末から選ばれる窒化ホウ素粒子(この窒化ホウ素粒子を窒化ホウ素粒子Bと呼ぶ)に対して、第一実施形態で説明したのと同様に、負荷工程が実施される。ただし、第二実施形態における負荷工程は、0.27mN/秒の負荷速度で、窒化ホウ素粒子Bに0.2mNから上記算出工程において算出された平均値F(mN)の50%まで徐々に負荷をかける点で、第一実施形態における負荷工程と異なる。その後、窒化ホウ素粒子Bに対して、第一実施形態で説明したのと同様に、除荷工程が実施される。負荷工程及び除荷工程において、第一実施形態で説明したのと同様に、負荷量に対する窒化ホウ素粒子Bの変位量が測定される。
【0037】
窒化ホウ素粒子Bを負荷除荷試験に供したときの、負荷量と窒化ホウ素粒子Bの変位量との関係の一例は、第一実施形態で説明したのと同様に、図1に示される。図1に示されるように、窒化ホウ素粒子Bの変位量をX、負荷量をYとしたときに、例えば、負荷工程における窒化ホウ素粒子Bの変位量Xと負荷量Yとは負荷曲線L1のような関係となり、除荷工程における窒化ホウ素粒子Bの変位量Xと負荷量Yは除荷曲線L2のような関係となる。
【0038】
負荷工程において窒化ホウ素粒子Bが短手方向に変位した量(絶対値)の平均値(平均変位量)をD、除荷工程において窒化ホウ素粒子Bが短手方向に変位した量(絶対値)の平均値(平均変位量)をDとしたとき、平均復元率(D/D)は、大きいほど好ましい。平均復元率(D/D)は、例えば、0.2以上、0.25以上、0.3以上、0.35以上、又は0.4以上であってよい。平均変位量D及び平均変位量Dは、それぞれ、10個の窒化ホウ素粒子Bについて、第一実施形態で説明したのと同様に測定した変位量D、及び変位量Dの平均値を意味する。
【0039】
平均復元率が大きいということは、窒化ホウ素粒子Bの平均弾性変形仕事比率が大きいと言い換えることもできる。すなわち、窒化ホウ素粒子Bの平均弾性変形仕事比率が大きいほど、当該窒化ホウ素粒子Bは圧縮されても元の形状により戻りやすい。窒化ホウ素粒子Bの平均弾性変形仕事比率は、例えば、0.1以上、0.15以上、0.2以上、0.25以上、0.3以上、又は0.35以上であってよい。平均弾性変形仕事比率は、10個の窒化ホウ素粒子Bについて、第一実施形態で説明したのと同様に測定した弾性変形仕事比率(W/W)の平均値を意味する。
【0040】
続いて、上述した窒化ホウ素粒子の製造方法について以下に説明する。上述した窒化ホウ素粒子は、例えば、炭素材料で形成された容器内に、炭化ホウ素及びホウ酸を含有する混合物と、炭素材料で形成された基材とを配置する工程(配置工程)と、容器内を窒素雰囲気にした状態で加熱及び加圧することにより、基材上に窒化ホウ素粒子を生成させる工程(生成工程)と、を備える窒化ホウ素粒子の製造方法により製造することができる。本発明の他の一実施形態は、このような窒化ホウ素粒子の製造方法である。
【0041】
炭素材料で形成された容器は、上記混合物及び基材を収容できるような容器である。当該容器は、例えばカーボンルツボであってよい。容器は、好ましくは、開口部に蓋をすることにより、気密性を高められるような容器である。配置工程では、例えば、混合物を容器内の底部に配置し、基材を容器内の側壁面や蓋の内側に固定するように配置してよい。炭素材料で形成された基材は、例えば、シート状、板状、又は棒状であってよい。炭素材料で形成された基材は、例えば、カーボンシート(グラファイトシート)、カーボン板、又はカーボン棒であってよい。
【0042】
混合物中の炭化ホウ素は、例えば粉末状(炭化ホウ素粉末)であってよい。混合物中のホウ酸は、例えば粉末状(ホウ酸粉末)であってよい。混合物は、例えば、炭化ホウ素粉末と、窒化ホウ素粉末と、ホウ酸粉末と、を公知の方法で混合することにより得られる。
【0043】
炭化ホウ素粉末は、公知の製造方法により製造することができる。炭化ホウ素粉末の製造方法としては、例えば、ホウ酸とアセチレンブラックとを混合した後、不活性ガス(例えば窒素ガス)雰囲気中で、1800~2400℃にて、1~10時間加熱し、塊状の炭化ホウ素粒子を得る方法が挙げられる。この方法により得られた塊状の炭化ホウ素粒子を、粉砕、篩分け、洗浄、不純物除去、乾燥等を適宜行うことで炭化ホウ素粉末を得ることができる。
【0044】
塊状の炭素ホウ素粒子の粉砕時間を調整することによって、炭化ホウ素粉末の平均粒子径を調整することができる。炭化ホウ素粉末の平均粒子径は、5μm以上、7μm以上、又は10μm以上であってよく、100μm以下、90μm以下、80μm以下、又は70μm以下であってよい。炭化ホウ素粉末の平均粒子径は、レーザー回折散乱法により測定することができる。
【0045】
炭化ホウ素とホウ酸との混合比率は、適宜選択できる。混合物中のホウ酸の含有量は、窒化ホウ素粒子が大きくなりやすい観点から、炭化ホウ素100質量部に対して、好ましくは2質量部以上であり、より好ましくは5質量部以上であり、更に好ましくは8質量部以上であり、100質量部以下、90質量部以下、又は80質量部以下であってよい。
【0046】
炭化ホウ素及びホウ酸を含有する混合物は、他の成分を更に含有してもよい。他の成分としては、炭化ケイ素、炭素、酸化鉄等が挙げられる。炭化ホウ素及びホウ素酸を含有する混合物が炭化ケイ素を更に含むことで、開口端を有さない窒化ホウ素粒子を得やすくなる。
【0047】
容器内は、例えば95体積%以上の窒素ガスを含む窒素雰囲気となっている。窒素雰囲気中の窒素ガスの含有量は、好ましくは95体積%以上であり、より好ましくは99.9体積%以上であり、実質的に100体積%であってよい。窒素雰囲気中に、窒素ガスに加えて、アンモニアガス等が含まれてもよい。
【0048】
加熱温度は、窒化ホウ素粒子が大きくなりやすい観点から、好ましくは1450℃以上であり、より好ましくは1600℃以上であり、更に好ましくは1800℃以上である。加熱温度は、2400℃以下、2300℃以下、又は2200℃以下であってよい。
【0049】
加圧する際の圧力は、窒化ホウ素粒子が大きくなりやすい観点から、好ましくは0.3MPa以上であり、より好ましくは0.6MPa以上である。加圧する際の圧力は、1.0MPa以下、又は0.9MPa以下であってよい。
【0050】
加熱及び加圧を行う時間は、窒化ホウ素粒子が大きくなりやすい観点から、好ましくは3時間以上であり、より好ましくは5時間以上である。加熱及び加圧を行う時間は、40時間以下、又は30時間以下であってよい。
【0051】
この製造方法によれば、上述した窒化ホウ素粒子が炭素材料で形成された基材上に生成する。したがって、基材上の窒化ホウ素粒子を回収することにより、窒化ホウ素粒子が得られる。基材上に生成した粒子が窒化ホウ素粒子であることは、基材上に生成した粒子の一部を基材から回収し、回収した粒子についてX線回折測定を行い、窒化ホウ素に由来するピークが検出されることにより確認できる。
【0052】
以上のようにして得られる窒化ホウ素粒子に対して、特定の範囲の最大長さを有する窒化ホウ素粒子のみが得られるように分級する工程(分級工程)を実施してもよい。
【0053】
以上のようにして得られる窒化ホウ素粒子は、樹脂と混合して樹脂組成物として用いることができる。すなわち、本発明の他の一実施形態は、上記の窒化ホウ素粒子と、樹脂と、を含有する樹脂組成物である。
【0054】
樹脂としては、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、アクリル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル、フッ素樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、全芳香族ポリエステル、ポリスルホン、液晶ポリマー、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、マレイミド変性樹脂、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)樹脂、AAS(アクリロニトリル-アクリルゴム・スチレン)樹脂、AES(アクリロニトリル・エチレン・プロピレン・ジエンゴム-スチレン)樹脂等が挙げられる。
【0055】
窒化ホウ素粒子の含有量は、樹脂組成物を放熱材として用いる場合、放熱材の熱伝導率を向上させ、優れた放熱性能が得られやすい観点から、樹脂組成物の全体積を基準として、15体積%以上、20体積%以上、30体積%以上、40体積%以上、50体積%以上、又は60体積%以上であってよい。窒化ホウ素粒子の含有量は、樹脂組成物をシート状の放熱材に成形する際に空隙が発生することを抑制し、シート状の放熱材の絶縁性及び機械強度の低下を抑制できる観点から、樹脂組成物の全体積を基準として、85体積%以下又は80体積%以下であってよい。
【0056】
樹脂の含有量は、樹脂組成物の用途、要求特性などに応じて適宜調整してよい。樹脂の含有量は、樹脂組成物の全体積を基準として、例えば、15体積%以上、20体積%以上、30体積%以上、40体積%以上、50体積%以上、又は60体積%以上であってよく、85体積%以下、70体積%以下、60体積%以下、50体積%以下、又は40体積%以下であってよい。
【0057】
樹脂組成物は、樹脂を硬化させる硬化剤を更に含有していてよい。硬化剤は、樹脂の種類に応じて適宜選択される。例えばエポキシ樹脂と共に用いられる硬化剤としては、フェノールノボラック化合物、酸無水物、アミノ化合物、イミダゾール化合物等が挙げられる。硬化剤の含有量は、樹脂100質量部に対して、例えば、0.5質量部以上又は1.0質量部以上であってよく、15質量部以下又は10質量部以下であってよい。
【0058】
樹脂組成物は、その他の成分を更に含有してもよい。その他の成分は、硬化促進剤(硬化触媒)、カップリング剤、湿潤分散剤、表面調整剤等であってよい。
【0059】
硬化促進剤(硬化触媒)としては、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルフォスフェイト等のリン系硬化促進剤、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール系硬化促進剤、三フッ化ホウ素モノエチルアミン等のアミン系硬化促進剤などが挙げられる。
【0060】
カップリング剤としては、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、及びアルミネート系カップリング剤等が挙げられる。これらのカップリング剤に含まれる化学結合基としては、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、メタクリル基、メルカプト基等が挙げられる。
【0061】
湿潤分散剤としては、リン酸エステル塩、カルボン酸エステル、ポリエステル、アクリル共重合物、ブロック共重合物等が挙げられる。
【0062】
表面調整剤としては、アクリル系表面調整剤、シリコーン系表面調整剤、ビニル系表面調整剤、フッ素系表面調整剤等が挙げられる。
【0063】
樹脂組成物は、例えば、一実施形態に係る窒化ホウ素粒子又は一実施形態に係る窒化ホウ素粉末を用意する工程(用意工程)と、窒化ホウ素粒子又は窒化ホウ素粉末を樹脂と混合する工程(混合工程)と、を備える、樹脂組成物の製造方法により製造することができる。本発明の他の一実施形態は、このような樹脂組成物の製造方法である。混合工程では、窒化ホウ素粒子及び樹脂に加えて、上述した硬化剤やその他の成分を更に混合してもよい。
【0064】
一実施形態に係る樹脂組成物の製造方法は、窒化ホウ素粒子又は窒化ホウ素粉末を粉砕する工程(粉砕工程)を更に備えてよい。粉砕工程は、用意工程と混合工程との間に行われてよく、混合工程と同時に行われてもよい(窒化ホウ素粒子又は窒化ホウ素粉末を樹脂と混合すると同時に、窒化ホウ素粒子又は窒化ホウ素粉末を粉砕してもよい)。
【0065】
上記の樹脂組成物は、例えば放熱材として用いることができる。放熱材は、例えば、樹脂組成物を硬化させることにより製造することができる。樹脂組成物を硬化させる方法は、樹脂組成物が含有する樹脂(及び必要に応じて用いられる硬化剤)の種類に応じて適宜選択される。例えば、樹脂がエポキシ樹脂であり、上述した硬化剤が共に用いられる場合、加熱により樹脂を硬化させることができる。
【実施例
【0066】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0067】
<窒化ホウ素粒子(粉末)の製造>
塊状の炭化ホウ素粒子を粉砕機により粉砕し、平均粒子径が10μmである炭化ホウ素粉末を得た。得られた炭化ホウ素粉末100質量部と、ホウ酸9質量部とを混合し、得られた混合物をカーボンルツボに充填し、カーボンルツボの開口部をカーボンシート(NeoGraf社製)で覆い、カーボンルツボの蓋とカーボンルツボとでカーボンシートを挟むことで、カーボンシートを固定した。蓋をしたカーボンルツボを抵抗加熱炉内で、窒素ガス雰囲気下で、2000℃、0.85MPaの条件で10時間加熱することで、カーボンシート上に粒子が生成した。
【0068】
カーボンシート上に生成した粒子の一部を回収し、X線回折装置(株式会社リガク製、「ULTIMA-IV」)を用いてX線回折測定した。このX線回折測定結果、及び比較対象としてデンカ株式会社製の窒化ホウ素粉末(GPグレード)のX線回折測定結果をそれぞれ図2に示す。図2から分かるように、窒化ホウ素に由来するピークのみが検出され、窒化ホウ素粒子が生成したことを確認できた。得られた窒化ホウ素粉末のSEM画像を図3に示す。
【0069】
<窒化ホウ素粒子の評価>
得られた窒化ホウ素粉末中の10個の窒化ホウ素粒子Aについて、微小圧縮試験機(株式会社島津製作所製、MCTシリーズ)を使用して、窒化ホウ素粒子Aのそれぞれに対して、短手方向に0.27mN/秒の負荷速度で徐々に負荷をかけて圧壊させた。各窒化ホウ素粒子Aを圧壊させるのに必要な負荷の大きさの平均値Fは40mNであった。
【0070】
続いて、得られた窒化ホウ素粉末中の窒化ホウ素粒子Aとは別の10個の窒化ホウ素粒子Bのそれぞれについて、微小圧縮試験機(株式会社島津製作所製、MCTシリーズ)に付属の顕微鏡で観察することにより、最大長さ(L)と、当該最大長さ(L)を有する方向に垂直な方向における窒化ホウ素粒子の最大長さ(L)とを測定した。また、測定された最大長さL及びLからアスペクト比(L/L)を算出した。結果を表1に示す。
【0071】
また、微小圧縮試験機(株式会社島津製作所製、MCTシリーズ)を使用して、上記の10個の窒化ホウ素粒子Bのそれぞれについて、短手方向に0.27mN/秒の負荷速度で0.2mNから20mN(上記窒化ホウ素粒子Aを圧壊させるのに必要な負荷の大きさの平均値F(40mN)の50%)まで徐々に負荷をかけて窒化ホウ素粒子を圧縮した(負荷工程)後、0.27mN/秒の除荷速度で0.2mNまで除荷した(除荷工程)。負荷除荷試験に供した窒化ホウ素粒子Bのうちの1個(粒子No.1)について、負荷除荷試験における負荷量と窒化ホウ素粒子の変位量との関係を図4に示す。
【0072】
10個の窒化ホウ素粒子Bのそれぞれについて、負荷工程における窒化ホウ素粒子の短手方向の変位量D、除荷工程における窒化ホウ素粒子の短手方向の長さから変位量D、及び復元率D/Dを算出した。また、10個の窒化ホウ素粒子Bのそれぞれについて、図1に示す負荷曲線L1と、除荷曲線L2と、Y=0.2mNを示す直線L3とで囲まれる領域Pの面積を塑性変形仕事量Wとし、除荷曲線L2と、直線L3と、負荷曲線L1及び除荷曲線L2の交点と直線L3とを結ぶY軸に平行な直線L4とで囲まれる領域Eの面積を弾性変形仕事量Wとし、WとWとの合計(W+W)を全仕事量Wとしたときの弾性変形仕事比率W/Wを算出した。結果を表1に示す。
【0073】
【表1】


図1
図2
図3
図4