(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、及び情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 40/08 20120101AFI20241218BHJP
【FI】
G06Q40/08
(21)【出願番号】P 2023093082
(22)【出願日】2023-06-06
(62)【分割の表示】P 2020016896の分割
【原出願日】2020-02-04
【審査請求日】2023-06-06
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 発行所名:日本経済新聞社 刊行物名:日本経済新聞 日刊,第1面 発行年月日:令和2年1月10日 〔刊行物等〕 ウェブサイトのアドレス https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54216510Z00C20A1MM8000/?n_cid=DSREA001 https://www.nikkei.com/article/DGXZZO54225640Z00C20A1000000/ 掲載日:令和2年1月9日 〔刊行物等〕 ウェブサイトのアドレス https://www.rakuten-sonpo.co.jp/news/tabid/85/Default.aspx?itemid=423&dispmid=753 掲載日:令和2年1月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】399037405
【氏名又は名称】楽天グループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120189
【氏名又は名称】奥 和幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135518
【氏名又は名称】青木 隆
(72)【発明者】
【氏名】井手 丙午
【審査官】山崎 雄司
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-287480(JP,A)
【文献】特開2019-185307(JP,A)
【文献】特開2013-186711(JP,A)
【文献】松岡 順,米国連邦洪水保険制度(NFIP)の現状,[online],2010年10月,6-7ページ,[2024年5月29日検索],インターネット,<URL:https://www.sonposoken.or.jp/media/reports/sonposokenreport093_1.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保険申込者により指定された被保険対象となる物件の所在地情報を入力する入力手段と、
所定の地域において外水氾濫により想定される外水浸水深を示す外水浸水深データと、当該所定
の地域において内水氾濫により想定される内水浸水深を示す内水浸水深データとを、浸水深データベースから取得する浸水深データ取得手段と、
前記外水浸水深に応じて複数に区分された外水リスク区分を示す外水リスク区分データと、前記内水浸水深に応じて複数に区分された内水リスク区分とを示す内水リスク区分データとを、リスク区分データベースから取得するリスク区分データ取得手段と、
前記浸水深データ取得手段により取得された前記外水浸水深データ及び前記内水浸水深データを参照して、前記入力手段により入力された所在地情報により特定される物件所在地の外水浸水深及び内水浸水深を特定する浸水深特定手段と、
前記リスク区分データ取得手段により取得された前記外水リスク区分データ及び前記内水リスク区分データを参照して、前記浸水深特定手段により特定された前記外水浸水深が該当する前記外水リスク区分と、前記浸水深特定手段により特定された前記内水浸水深が該当する前記内水リスク区分とを特定するリスク区分特定手段と、
水災リスクに応じて複数に区分された保険料のうち、前記入力手段により入力された所在地情報に対応する保険料を取得する保険料取得手段と、
前記保険料取得手段により取得された保険料と、前記リスク区分特定手段により特定された前記外水リスク区分の情報と、前記リスク区分特定手段により特定された前記内水リスク区分の情報とを同時に前記保険申込者に提示する提示手段と、
を備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記外水リスク区分の情報は、前記外水リスク区分のレベルであり、前記内水リスク区分の情報は、前記内水リスク区分のレベルであることを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記保険料取得手段は、前記入力手段により入力された所在地情報に対応する前記外水リスク区分と前記入力手段により入力された所在地情報に対応する前記内水リスク区分との組合せに係る組合せリスク区分に対応する保険料を取得することを特徴とする請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記組合せリスク区分に対応する保険料は、前記組合せリスク区分毎に算出された純保険料率に基づいて複数に区分された保険料であることを特徴とする請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記保険料取得手段は、前記入力手段により入力された所在地情報に対応する保険料であって、物件の構造毎に算出された保険料のうち前記被保険対象となる物件の構造に対応する保険料を取得することを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
1以上のコンピュータにより実行される情報処理方法であって、
保険申込者により指定された被保険対象となる物件の所在地情報を入力するステップと、
所定の地域において外水氾濫により想定される外水浸水深を示す外水浸水深データと、当該所定
の地域において内水氾濫により想定される内水浸水深を示す内水浸水深データとを、浸水深データベースから取得するステップと、
前記外水浸水深に応じて複数に区分された外水リスク区分を示す外水リスク区分データと、前記内水浸水深に応じて複数に区分された内水リスク区分とを示す内水リスク区分データとを、リスク区分データベースから取得するステップと、
前記取得された前記外水浸水深データ及び前記内水浸水深データを参照して、前記入力された所在地情報により特定される物件所在地の外水浸水深及び内水浸水深を特定するステップと、
前記取得された前記外水リスク区分データ及び前記内水リスク区分データを参照して、前記特定された前記外水浸水深が該当する前記外水リスク区分と、前記特定された前記内水浸水深が該当する前記内水リスク区分とを特定するステップと、
水災リスクに応じて複数に区分された保険料のうち、前記入力された所在地情報に対応する保険料を取得するステップと、
前記取得された保険料と、前記特定された前記外水リスク区分の情報と、前記特定された前記内水リスク区分の情報とを同時に前記保険申込者に提示する提示ステップと、
を含むことを特徴とする情報処理方法。
【請求項7】
コンピュータを、
保険申込者により指定された被保険対象となる物件の所在地情報を入力する入力手段と、
所定の地域において外水氾濫により想定される外水浸水深を示す外水浸水深データと、当該所定
の地域において内水氾濫により想定される内水浸水深を示す内水浸水深データとを、浸水深データベースから取得する浸水深データ取得手段と、
前記外水浸水深に応じて複数に区分された外水リスク区分を示す外水リスク区分データと、前記内水浸水深に応じて複数に区分された内水リスク区分とを示す内水リスク区分データとを、リスク区分データベースから取得するリスク区分データ取得手段と、
前記浸水深データ取得手段により取得された前記外水浸水深データ及び前記内水浸水深データを参照して、前記入力手段により入力された所在地情報により特定される物件所在地の外水浸水深及び内水浸水深を特定する浸水深特定手段と、
前記リスク区分データ取得手段により取得された前記外水リスク区分データ及び前記内水リスク区分データを参照して、前記浸水深特定手段により特定された前記外水浸水深が該当する前記外水リスク区分と、前記浸水深特定手段により特定された前記内水浸水深が該当する前記内水リスク区分とを特定するリスク区分特定手段と、
水災リスクに応じて複数に区分された保険料のうち、前記入力手段により入力された所在地情報に対応する保険料を取得する保険料取得手段と、
前記保険料取得手段により取得された保険料と、前記リスク区分特定手段により特定された前記外水リスク区分の情報と、前記リスク区分特定手段により特定された前記内水リスク区分の情報とを同時に前記保険申込者に提示する提示手段として機能させることを特徴とする情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水災リスクに応じた水災保険料を算定するシステム等の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、保険会社の保険料収入のうち契約者への保険金支払いに充てられる合理的な純保険料を計算する方法が提案されている。例えば特許文献1に開示された技術では、火災、地震、水災のリスクファクターごとの損害率と発生確率の期間構造と商品構造をもとに、最終的に統合したリスク分布を計算し、保険者のリスク調整後収益率に対応したリスク許容度を考慮して純保険料を計算するようになっている。このように、個別のリスクファクターではなくすべてのリスクファクターを統合的に担保することにより、純保険料を合理的に下げることが可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、水災の純保険料率は構造級ごとに全国一律の料率となっているが、例えば川沿いの住宅と高台の住宅とが同一の保険料であることは契約者にとって不公平感があるといった問題がある。このような問題は、特許文献1に開示された技術では解決することができない。
【0005】
そこで、本発明は、上記点に鑑みてなされたものであり、契約者に対して適切な保険料を知らせると同時に契約者の物件所在地における水災リスクを正しく把握させることが可能な情報処理装置、情報処理方法、及び情報処理プログラムを提供することを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、保険申込者により指定された被保険対象となる物件の所在地情報を入力する入力手段と、所定の地域において外水氾濫により想定される外水浸水深を示す外水浸水深データと、当該所定の地域において内水氾濫により想定される内水浸水深を示す内水浸水深データとを、浸水深データベースから取得する浸水深データ取得手段と、前記外水浸水深に応じて複数に区分された外水リスク区分を示す外水リスク区分データと、前記内水浸水深に応じて複数に区分された内水リスク区分とを示す内水リスク区分データとを、リスク区分データベースから取得するリスク区分データ取得手段と、前記浸水深データ取得手段により取得された前記外水浸水深データ及び前記内水浸水深データを参照して、前記入力手段により入力された所在地情報により特定される物件所在地の外水浸水深及び内水浸水深を特定する浸水深特定手段と、前記リスク区分データ取得手段により取得された前記外水リスク区分データ及び前記内水リスク区分データを参照して、前記浸水深特定手段により特定された前記外水浸水深が該当する前記外水リスク区分と、前記浸水深特定手段により特定された前記内水浸水深が該当する前記内水リスク区分とを特定するリスク区分特定手段と、水災リスクに応じて複数に区分された保険料のうち、前記入力手段により入力された所在地情報に対応する保険料を取得する保険料取得手段と、前記保険料取得手段により取得された保険料と、前記リスク区分特定手段により特定された前記外水リスク区分の情報と、前記リスク区分特定手段により特定された前記内水リスク区分の情報とを同時に前記保険申込者に提示する提示手段と、を備えることを特徴とする。これにより、保険申込者に対して適切な保険料を知らせると同時に保険申込者の物件所在地における水災リスクを正しく把握させることができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の情報処理装置において、前記外水リスク区分の情報は、前記外水リスク区分のレベルであり、前記内水リスク区分の情報は、前記内水リスク区分のレベルであることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の情報処理装置において、前記保険料取得手段は、前記入力手段により入力された所在地情報に対応する前記外水リスク区分と前記入力手段により入力された所在地情報に対応する前記内水リスク区分との組合せに係る組合せリスク区分に対応する保険料を取得することを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の情報処理装置において、前記組合せリスク区分に対応する保険料は、前記組合せリスク区分毎に算出された純保険料率に基づいて複数に区分された保険料であることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の何れか一項に記載の情報処理装置において、前記保険料取得手段は、前記入力手段により入力された所在地情報に対応する保険料であって、物件の構造毎に算出された保険料のうち前記被保険対象となる物件の構造に対応する保険料を取得することを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、1以上のコンピュータにより実行される情報処理方法であって、保険申込者により指定された被保険対象となる物件の所在地情報を入力するステップと、所定の地域において外水氾濫により想定される外水浸水深を示す外水浸水深データと、当該所定の地域において内水氾濫により想定される内水浸水深を示す内水浸水深データとを、浸水深データベースから取得するステップと、前記外水浸水深に応じて複数に区分された外水リスク区分を示す外水リスク区分データと、前記内水浸水深に応じて複数に区分された内水リスク区分とを示す内水リスク区分データとを、リスク区分データベースから取得するステップと、前記取得された前記外水浸水深データ及び前記内水浸水深データを参照して、前記入力された所在地情報により特定される物件所在地の外水浸水深及び内水浸水深を特定するステップと、前記取得された前記外水リスク区分データ及び前記内水リスク区分データを参照して、前記特定された前記外水浸水深が該当する前記外水リスク区分と、前記特定された前記内水浸水深が該当する前記内水リスク区分とを特定するステップと、水災リスクに応じて複数に区分された保険料のうち、前記入力された所在地情報に対応する保険料を取得するステップと、前記取得された保険料と、前記特定された前記外水リスク区分の情報と、前記特定された前記内水リスク区分の情報とを同時に前記保険申込者に提示する提示ステップと、を含むことを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、コンピュータを、保険申込者により指定された被保険対象となる物件の所在地情報を入力する入力手段と、所定の地域において外水氾濫により想定される外水浸水深を示す外水浸水深データと、当該所定の地域において内水氾濫により想定される内水浸水深を示す内水浸水深データとを、浸水深データベースから取得する浸水深データ取得手段と、前記外水浸水深に応じて複数に区分された外水リスク区分を示す外水リスク区分データと、前記内水浸水深に応じて複数に区分された内水リスク区分とを示す内水リスク区分データとを、リスク区分データベースから取得するリスク区分データ取得手段と、前記浸水深データ取得手段により取得された前記外水浸水深データ及び前記内水浸水深データを参照して、前記入力手段により入力された所在地情報により特定される物件所在地の外水浸水深及び内水浸水深を特定する浸水深特定手段と、前記リスク区分データ取得手段により取得された前記外水リスク区分データ及び前記内水リスク区分データを参照して、前記浸水深特定手段により特定された前記外水浸水深が該当する前記外水リスク区分と、前記浸水深特定手段により特定された前記内水浸水深が該当する前記内水リスク区分とを特定するリスク区分特定手段と、水災リスクに応じて複数に区分された保険料のうち、前記入力手段により入力された所在地情報に対応する保険料を取得する保険料取得手段と、前記保険料取得手段により取得された保険料と、前記リスク区分特定手段により特定された前記外水リスク区分の情報と、前記リスク区分特定手段により特定された前記内水リスク区分の情報とを同時に前記保険申込者に提示する提示手段として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、保険申込者に対して適切な保険料を知らせると同時に保険申込者の物件所在地における水災リスクを正しく把握させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】保険料算定システムSの概要構成例を示す図である。
【
図2】(A)は、保険料設定サーバ2の概要構成例を示すブロック図であり、(B)は、システム制御部23における機能ブロックの一例を示す図である。
【
図3】外水リスク区分及び内水リスク区分の一例を示す図である。
【
図4】(A)は、保険契約処理サーバ3の概要構成例を示すブロック図であり、(B)は、システム制御部33における機能ブロックの一例を示す図である。
【
図5】水災保険料の設定動作時におけるシステム制御部23の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図6】(A)は、組合せリスク区分毎に算出された純率をマトリクス状に表した図であり、(B)は、組合せリスク区分毎に算出された相対純率指数をマトリクス状に表した図であり、(C)は、組合せリスク区分毎に算出された純率較差をマトリクス状に表した図である。
【0015】
【
図7】Minimum Bias法により保有保険金額n
ijと相対純率指数r
ijから純率較差r^
ijを求めるときの様子を示す概念図である。
【
図8】組合せリスク区分毎の純率較差をクラスタ分析により分類し、料率区分毎に純率較差を算出するときの様子を示す概念図である。
【
図9】(A)は、水災保険料の提示動作時におけるシステム制御部33の処理の一例を示すフローチャートであり、(B)は、水災保険料の提示動作時におけるシステム制御部23の処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施の形態は、保険情報処理システムSに対して本発明を適用した場合の実施形態である。本実施形態に係る保険情報処理システムSにおいては、主として、氾濫により想定される浸水深を示す浸水深データを利用して物件所在地(物件の所在地)毎の水災リスクに応じて複数に区分される保険料(以下、「水災保険料」という)を設定する動作と、水災に係る保険の申込の際に保険申込者(契約者)の物件所在地の水災リスクに応じた水災保険料等を当該保険申込者に提示する動作とが行われる。ここで、水災リスクとは、外水リスクと内水リスクとの少なくとも何れか一方を含む。外水リスクとは、外水氾濫により想定される外水浸水深を意味する。一方、内水リスクとは、内水氾濫により想定される内水浸水深を意味する。
【0017】
[1.保険情報処理システムSの構成及び機能]
先ず、
図1を参照して、本実施形態に係る保険情報処理システムSの構成及び機能について説明する。
図1は、保険情報処理システムSの概要構成例を示す図である。
図1に示すように、保険情報処理システムSは、保険申込端末1、保険料設定サーバ2、及び保険契約処理サーバ3等を含んで構成される。保険申込端末1、保険料設定サーバ2、及び保険契約処理サーバ3は、それぞれ、ネットワークNWに接続される。ネットワークNWは、例えば、インターネット、移動体通信ネットワーク及びその無線基地局等から構成される。なお、
図1の例では、保険申込端末1は、1つ示されているが実際には複数存在する。また、保険料設定サーバ2と保険契約処理サーバ3とは1つのサーバにより構成されてもよい。
【0018】
[1-1.保険申込端末1の構成及び機能]
保険申込端末1は、水災に係る保険の申込の際に水災保険料等を保険申込者に提示するための端末である。保険申込端末1のユーザ(操作者)は、保険申込者または保険募集人である。保険員とは、保険申込者に対して対面で保険の申込を薦める保険会社(またはその代理店)のスタッフである。保険申込端末1には、ネットワークNWを介して保険契約処理サーバ3へアクセスして水災に係る保険の申込手続きを行うためのアプリケーション(専用のアプリケーション)やウェブブラウザ等がインストールされている。なお、保険申込端末1には、例えばパーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット等が適用可能であり、例えば人の指やペン等による操作を受け付ける入力機能と保険申込画面等に情報を表示する表示機能を有するタッチパネルが備えられる。
【0019】
[1-2.保険料設定サーバ2の構成及び機能]
保険料設定サーバ2は、水災保険料を設定するサーバであり、1または複数のコンピュータにより構成される。
図2(A)は、保険料設定サーバ2の概要構成例を示すブロック図である。
図2(A)に示すように、保険料設定サーバ2は、通信部21、記憶部22、及びシステム制御部23等を備える。通信部21は、ネットワークNWに接続して通信を行う機能を担う。記憶部22は、例えば、ハードディスクドライブ等からなり、オペレーティングシステム,サーバプログラム(本発明の情報処理プログラムを含む)等を記憶する。なお、サーバプログラムは、所定のサーバから保険料設定サーバ2にダウンロードされてもよいし、CDやDVD等の記録媒体から読み込まれて記憶部22に記憶されるようにしてもよい。
【0020】
記憶部22には、物件データベース221、浸水深データベース222、リスク区分データベース223、及び水災保険料データベース224等が構築される。なお、これらのデータベースは、保険料設定サーバ2とは分離されたデータベースサーバ内に構築されてもよい。物件データベース221には、特定地域(例えば、日本全土の地域、または都道府県の地域)に存在する複数の物件のそれぞれの所在地情報を含む物件データが格納される。ここで、物件データは、例えば保険会社により保有されるデータであり、当該物件データに示される物件は例えば被保険対象となった建物(契約者の住居等)である。所在地情報は、例えば物件所在地の郵便番号や住所、または物件所在地の緯度及び経度である。なお、物件データには、物件の構造が含まれてもよい。物件の構造の例として、マンション構造(M構造)、耐火構造(T構造)、及び非耐火構造(H構造)が挙げられる。
【0021】
浸水深データベース222には、上記特定地域を含む地域において氾濫により想定される浸水深を示す浸水深データが格納される。ここで、浸水深データは、例えば、当該地域における各地点の緯度及び経度に対して浸水深が対応付けられたデータである。浸水深データには、上記特定地域を含む地域において外水氾濫により想定される外水浸水深を示す外水浸水深データと、当該地域において内水氾濫により想定される内水浸水深を示す内水浸水深データとの双方または何れか一方が含まれる。なお、外水浸水深データは、例えば国土交通省等により作成された浸水想定区域データまたは洪水ハザードマップから取得され、内水浸水深データは、例えば国土交通省等により作成された低位地帯データから取得される。
【0022】
リスク区分データベース223には、浸水深に応じて複数に区分されたリスク区分を示すリスク区分データが格納される。ここで、リスク区分データには、浸水深(外水浸水深)に応じて複数に区分された外水リスク区分を示す外水リスク区分データと、浸水深(内水浸水深)に応じて複数に区分された内水リスク区分とを示す内水リスク区分データとの双方または何れか一方が含まれる。
図3は、外水リスク区分及び内水リスク区分の一例を示す図である。
図3の例では、外水リスク区分及び内水リスク区分は、それぞれ、(1)~(5)の5区分にレベル分けされている。例えば、外水リスク区分(1)及び内水リスク区分(1)には浸水深0mが該当し、外水リスク区分(2)及び内水リスク区分(2)には浸水深0m超0.5m未満が該当し、外水リスク区分(3)及び内水リスク区分(3)には浸水深0.5m以上2.0m未満が該当し、外水リスク区分(4)及び内水リスク区分(4)には浸水深2.0m以上5.0m未満が該当し、外水リスク区分(5)及び内水リスク区分(5)には浸水深5m以上が該当する。
【0023】
なお、このような区分は、5区分に限定されるものではなく、2~4区分であってもよいし6区分以上であってもよい。また、
図3の例では、内水と外水ともに同様の基準(例えば、浸水深0.5mで床上浸水、浸水深2.0mで建物1階の軒下まで浸水、浸水深5.0mで建物2階の軒下まで浸水、浸水深5.0m以上で2階屋根以上が浸水)により区分設定(つまり、浸水深の範囲設定)を行っているが、これに限定されるものではなく、また、内水と外水とで異なる基準により区分設定されてもよい。
図3の例では、外水リスク区分(1)~(5)と内水リスク区分(1)~(5)との複数の組合せに係るリスク区分(以下、「組合せリスク区分」という)は25区分となる。
【0024】
水災保険料データベース224には、物件所在地毎の水災リスクに応じて設定された異なる複数の水災保険料が格納される。ここで、水災保険料とは、水災に係る保険の申込による契約成立後に保険申込者が所定期間毎(例えば、1ヶ月毎)に支払うべき営業保険料である。営業保険料は、保険会社の保険料収入のうち保険申込者への保険金支払いに充てられる純保険料と、保険会社が保険事業を運営していくための必要な経費等に充てられる付加保険料とからなる。なお、本実施形態では、水災保険料のうち、特に純保険料の算定方法に特徴があるので、付加保険料及び付加保険料率の算定方法についての説明を省略する。
【0025】
システム制御部23は、CPU(Central Processing Unit),ROM(Read Only Memory),及びRAM(Random Access Memory)等を備え、オペレーティングシステム上でサーバプログラム等を実行する。
図2(B)は、システム制御部23における機能ブロックの一例を示す図である。システム制御部23は、サーバプログラム等の実行により、
図2(B)に示すように、情報取得部231、リスク区分振分部232、純率算出部233、及び保険料設定部234等として機能する。ここで、情報取得部231は、本発明における物件データ取得手段の一例である。リスク区分振分部232は、本発明における振分手段の一例である。純率算出部233は、本発明における算出手段の一例である。保険料設定部234は、本発明における設定手段の一例である。
【0026】
情報取得部231は、特定地域に存在する複数の物件のそれぞれの所在地情報を含む物件データを物件データベース221から取得し、当該特定地域を含む地域において氾濫により想定される浸水深を示す浸水深データを浸水深データベース222から取得する。なお、取得される浸水深データは、外水浸水深データと内水浸水深データとの双方または何れか一方である。そして、情報取得部231は、複数の物件のそれぞれの物件データと、浸水深データとを突合(例えば、緯度及び経度により突合)することにより、当該物件毎に浸水深が付与された物件データを取得する。
【0027】
リスク区分振分部232は、情報取得部231により浸水深が付与された物件データのそれぞれを、当該浸水深に基づいて、上記リスク区分データにより示されるリスク区分のうち何れかのリスク区分に振り分ける。換言すると、物件データ毎に、付与された浸水深が該当するリスク区分に対して当該物件データが対応付けられる。ここで、外水浸水深及び内水浸水深が付与された物件データを用いる場合、リスク区分振分部232は、外水浸水深及び内水浸水深が付与された物件データのそれぞれを、上述した複数の組合せリスク区分のうち何れかの組合せリスク区分(例えば、25区分のうち何れかの1つの区分)に振り分ける。これにより、外水リスクと内水リスクとの2つの観点から、より適切な水災保険料を設定することが可能となる。例えば、外水浸水深2.2m及び内水浸水深0.6mが付与された物件データである場合、
図3の例では、当該物件データは外水リスク区分(4)と内水リスク区分(3)との組合せリスク区分に振り分けられることになる。
【0028】
純率算出部233は、リスク区分振分部232よる振分結果に基づいてリスク区分毎に純保険料率(以下、「純率」という)を算出する。例えば、純率算出部233は、予め設定された水災リスクモデルを用いてシミュレーションを実行することでリスク区分毎にリスク量を算出する。これにより、リスク量に応じた適切な純率を用いて、より適切な水災保険料を設定することが可能となる。ここで、水災リスクモデルには、例えば所定期間における水災発生回数や損害割合等の確率分布を表す関数が設定されており、リスク区分に振り分けられた物件データに係る情報(例えば、保険の対象、物件の数、物件の構造等)が水災リスクモデルへ入力されることで、その出力値としてリスク量が得られる。
【0029】
なお、所定期間とは、シミュレーションの対象となる期間(例えば、年数)であり、例えば1万年、5万年、または10万年という期間を設定することができる。そして、純率算出部233は、リスク区分毎のリスク量とリスク区分毎の保有保険金額とに基づいてリスク区分毎に純率を算出する。ここで、保有保険金額とは、例えば、任意の時点における保険会社の有効契約全ての保険金額の合計値を意味する。リスク区分振分部232より組合せリスク区分に振り分けられた場合、その振分結果に基づいて組合せリスク区分毎に純率が算出される。また、純率は、リスク区分、且つ物件の構造(例えば、M構造、T構造、H構造)毎に算出されてもよい。
【0030】
保険料設定部234は、純率算出部233によりリスク区分毎に算出された純率に基づいて複数に区分された水災保険料を設定する。例えば、純率に付加保険料率が加えられることより保険料率が算出され、当該保険料率が保険金額に乗じられることより水災保険料が算定(設定)される。ここで、保険金額とは、保険事故が発生した場合に保険会社が支払う保険金の限度額である。
【0031】
なお、純率算出部233より組合せリスク区分毎に純率が算出された場合、当該組合せリスク区分毎に算出された純率に基づいて複数に区分された水災保険料が設定される。ただし、水災保険料の扱い易さや信頼性の観点から、組合せリスク区分を集約することで当該組合せリスク区分より少ない数の区分毎に水災保険料が設定されることが望ましい。この場合、保険料設定部234は、組合せリスク区分毎に他の組合せリスク区分との純率の較差(以下、「純率較差」という)を算出し、純率較差をクラスタ分析により分類することにより、組合せリスク区分より少ない複数の料率区分毎の純率較差を求め、当該料率区分毎の純率較差に基づいて料率区分毎に水災保険料を設定するとよい。これにより、料率区分毎の純率較差を用いて、より適切な水災保険料を設定することができる。なお、純率較差は、クラスタ分析以外の統計的手法等によって計算されることにより分類されてもよい。
【0032】
[1-3.保険契約処理サーバ3の構成及び機能]
保険契約処理サーバ3は、水災に係る保険の申込の際にネットワークNWを介して保険申込端末1とやり取りを行うサーバであり、1または複数のコンピュータにより構成される。
図4(A)は、保険契約処理サーバ3の概要構成例を示すブロック図である。
図4(A)に示すように、保険契約処理サーバ3は、通信部31、記憶部32、及びシステム制御部33等を備える。通信部31は、ネットワークNWに接続して通信を行う機能を担う。記憶部32は、例えば、ハードディスクドライブ等からなり、オペレーティングシステム,サーバプログラム(本発明の情報処理プログラムを含む)等を記憶する。なお、サーバプログラムは、所定のサーバから保険契約処理サーバ3にダウンロードされてもよいし、CDやDVD等の記録媒体から読み込まれて記憶部32に記憶されるようにしてもよい。
【0033】
システム制御部33は、CPU,ROM,及びRAM等を備え、オペレーティングシステム上でサーバプログラム等を実行する。
図4(B)は、システム制御部33における機能ブロックの一例を示す図である。システム制御部33は、サーバプログラム等の実行により、
図4(B)に示すように、情報入力部331、保険情報取得部332、及び保険情報提示部333等として機能する。ここで、情報入力部331は、本発明における入力手段の一例である。保険情報取得部332は、本発明における保険料取得手段の一例である。保険情報提示部333は、本発明における提示手段の一例である。
【0034】
情報入力部331は、保険申込端末1において保険申込者により指定された被保険対象となる物件の所在地情報を保険申込端末1からネットワークNWを介して入力(受信)する。保険情報取得部332は、保険料設定サーバ2の保険料設定部234により複数に区分されて設定された水災保険料のうち、情報入力部331により入力された所在地情報(例えば、緯度及び経度)に対応する水災保険料を保険料設定サーバ2から取得する。このとき、保険情報取得部332は、情報入力部331により入力された所在地情報に対応する水災リスク(つまり、浸水深)に関する情報(以下、「水災リスク情報」という)を保険料設定サーバ2から取得するとよい。
【0035】
保険情報提示部333は、保険情報取得部332により取得された水災保険料を含む保険情報をネットワークNWを介して保険申込端末1へ送信して保険申込画面に表示させることにより、当該水災保険料を含む保険情報を保険申込者に提示する。これにより、保険申込者に対して不公平感の少ない適切な水災保険料を知らせることができる。また、水災保険料が保険申込者に提示される際に、保険情報取得部332により取得された水災リスク情報が保険申込者に提示されるとよい。これにより、保険申込者に対して適切な水災保険料を知らせると同時に保険申込者の物件所在地における水災リスクを正しく把握させることができる。この場合、保険情報提示部333は、水災保険料及び水災リスク情報を含む保険情報を保険申込端末1へ送信することになる。
【0036】
なお、水災リスク情報には、複数の外水リスク区分のうち情報入力部331により入力された所在地情報に対応する外水リスク区分の情報と、複数の内水リスク区分のうち情報入力部331により入力された所在地情報に対応する内水リスク区分の情報が含まれるとよい。ここで、外水リスク区分の情報は、外水リスク区分のレベル(
図3の例では(1)~(5)の何れか)であってもよいし、外水リスク区分に該当する浸水深であってもよい。また、内水リスク区分の情報は、内水リスク区分のレベル(
図3の例では(1)~(5)の何れか)であってもよいし、内水リスク区分に該当する浸水深であってもよい。
【0037】
[2.保険情報処理システムSの動作]
次に、本実施形態に係る保険情報処理システムSの動作について説明する。なお、以下に説明する動作においては、外水浸水深データと内水浸水深データとの双方が利用されるものとする。
【0038】
[2-1.水災保険料の設定動作]
先ず、
図5等を参照して、保険料設定サーバ2による水災保険料の設定動作の一例について説明する。
図5は、水災保険料の設定動作時におけるシステム制御部23の処理の一例を示すフローチャートである。
【0039】
図5に示す処理は、例えば保険会社の管理者からの指示にしたがって開始される。
図5に示す処理が開始されると、システム制御部23(情報取得部231)は、特定地域に存在する複数の物件のそれぞれの所在地情報(ここでは、物件所在地の住所とする)を含む物件データを物件データベース221から取得する(ステップS1)。こうして取得された各物件データは、システム制御部23におけるRAMの所定領域に記憶される。次いで、システム制御部23(情報取得部231)は、ステップS1で取得された各物件データに含まれる物件の住所を緯度及び経度に変換する(ステップS2)。
【0040】
次いで、システム制御部23(情報取得部231)は、外水浸水深データ及び内水浸水深データを浸水深データベース222から取得する(ステップS3)。こうして取得された外水浸水深データ及び内水浸水深データは、システム制御部23におけるRAMの所定領域に記憶される。次いで、システム制御部23(情報取得部231)は、ステップS2で物件の住所が緯度及び経度に変換された各物件データと、ステップS3で取得された外水浸水深データ及び内水浸水深データとを突合することにより、外水浸水深及び内水浸水深が付与された各物件データを取得する(ステップS4)。
【0041】
次いで、システム制御部23(情報取得部231)は、外水リスク区分データ及び内水リスク区分データをリスク区分データベース223から取得する(ステップS5)。次いで、システム制御部23(情報取得部231)は、ステップS5で取得された外水リスク区分データ及び内水リスク区分データに基づいて、外水リスク区分と内水リスク区分との組合せリスク区分を複数特定する(ステップS6)。
【0042】
次いで、システム制御部23(リスク区分振分部232)は、ステップS4で取得された物件データのそれぞれを、当該外水浸水深及び内水浸水深に基づいて、ステップS6で特定された複数の組合せリスク区分のうち何れかの組合せリスク区分に振り分ける(ステップS7)。次いで、システム制御部23(純率算出部233)は、ステップS7で各組合せリスク区分に振り分けられた物件データ及び水災リスクモデルを用いてシミュレーションを実行することで組合せリスク区分毎に所定期間(シミュレーションの対象となる期間)分のリスク量を算出する(ステップS8)。
【0043】
次いで、システム制御部23(純率算出部233)は、ステップS8で算出された、組合せリスク区分毎の所定期間分のリスク量と、組合せリスク区分毎の保有保険金額とに基づいて組合せリスク区分毎に純率を算出する(ステップS9)。例えば、所定期間分のリスク量を保有保険金額で除することにより算出された値(=所定期間分のリスク量/保有保険金額)を、上記所定期間で除することにより、単位期間(例えば、1ヶ月または1年)あたりの純率が組合せリスク区分毎に算出される。
図6(A)は、組合せリスク区分毎に算出された純率をマトリクス状に表した図である。
図6(A)において、一部のフィールド内の値を省略([xxxx]と表記)している(
図6(B)及び
図6(C)についても同様)。
図6(A)に示すように、外水リスク及び内水リスクが大きい(つまり、浸水深が大きい)組合せリスク区分ほど純率が高くなっている。なお、
図6(A)に示す全体計は、全ての組合せリスク区分の純率を加重平均(例えば、保有保険金額を重みとして加重平均)することで得られた全体の純率である。
【0044】
次いで、システム制御部23(保険料設定部234)は、ステップS9で算出された、組合せリスク区分毎の純率を、全体の純率で除することにより、組合せリスク区分毎に相対純率指数(=組合せリスク区分の純率/全体の純率)を算出する(ステップS10)。
図6(B)は、組合せリスク区分毎に算出された相対純率指数をマトリクス状に表した図である。各相対純率指数は、組合せリスク区分の純率についての全体の純率(
図6(B)の例では、0.100)に対する割合である。
【0045】
次いで、システム制御部23(保険料設定部234)は、組合せリスク区分毎に他の組合せリスク区分との純率較差を算出(つまり、組合せリスク区分間の純率較差を算出)する(ステップS11)。
図6(C)は、組合せリスク区分毎に算出された純率較差をマトリクス状に表した図である。各組合せリスク区分の純率較差は、各組合せリスク区分の保有保険金額と、各組合せリスク区分の相対純率指数とを用いてMinimum Bias(ミニマムバイアス)法により算出されるとよい。ただし、各組合せリスク区分の純率較差は、Minimum Bias法以外の手法により算出されてもよい。Minimum Bias法は、次の連立方程式を解くことにより、料率係数x^i,y^jを求める手法である。
【数1】
【0046】
ここで、n
ijは各組合せリスク区分の保有保険金額であり、r
ijは各組合せリスク区分の相対純率指数である。r^
ijは各組合せリスク区分の純率較差であり加算型ではr^
ij=x^
i+y^
jとして求められ、乗算型ではr^
ij=x^
i×y^
jとして求められる。
図7は、Minimum Bias法により保有保険金額n
ijと相対純率指数r
ijから純率較差r^
ijを求めるときの様子を示す概念図である。
【0047】
なお、外水リスク区分と内水リスク区分には一定相関があると考えられる(例えば、標高が低い地点では、標高の高い地点に比べ、外水リスクも内水リスクも高い)が、このような相関は除外されることが望ましい。Minimum Bias法によれば、リスク区分間に相関があった場合に相関を除外することができる。組合せリスク区分間の相関を除外する手法として、Minimum Bias法での算出の他にGLMの手法が用いられてもよく、或いは、これらの手法以外の手法が用いられてもよい。
【0048】
次いで、システム制御部23(保険料設定部234)は、ステップS11で算出された、組合せリスク区分毎の純率較差をクラスタ分析により分類する(ステップS12)。次いで、システム制御部23(保険料設定部234)は、ステップS12で分類された純率較差を各組合せリスク区分の保有保険金額で料率区分毎に加重平均することで料率区分毎に純率較差を算出(つまり、料率区分間の純率較差を算出)する(ステップS13)。
【0049】
図8は、組合せリスク区分毎の純率較差をクラスタ分析により分類し、料率区分毎に純率較差を算出するときの様子を示す概念図である。
図8において、
図6(C)と同様、一部のフィールド内の値を省略([xxxx]と表記)している。
図8の例では、25区分の組合せリスク区分の純率較差が4区分の料率区分(区分A~区分D)に分類(つまり、異なる3つの閾値により分類)され、料率区分毎に純率較差が算出されている。例えば、料率区分Aには、
図8に示すように、7つの組合せリスク区分(A1~A7)の純率較差が含まれる。なお、料率区分は、4区分に限定されるものではなく、2~3区分であってもよいし5区分以上であってもよい。ただし、料率区分が多くなればなるほど、端部の料率区分の水災保険料が増えることになるので、料率区分は4区分程度にすることが望ましい。
【0050】
次いで、システム制御部23(保険料設定部234)は、ステップS13で算出された、料率区分毎の純率較差に全国一本の純率を乗じることにより、料率区分毎に純率を算出する(ステップS14)。全国一本の純率は、予め設定されるものであり、例えば、損害保険料率算出機構が算出した参考純率を修正(「保険会社の商品の補償内容」と「参考純率の前提となる補償内容」の差異を修正)した純率である。次いで、システム制御部23(保険料設定部234)は、ステップS14で算出された、料率区分毎の純率に付加保険料率を加えて保険料率を算出し、当該保険料率を保険金額に乗じることより料率区分毎に水災保険料を設定する(ステップS15)。
【0051】
こうして料率区分毎に設定された水災保険料は、各料率区分に対応付けられて水災保険料データベース22に格納される。このとき、各料率区分には、それぞれの料率区分の元になった組合せリスク区分(つまり、各料率区分に属する組合せリスク区分)が対応付けられて水災保険料データベース22に格納されるとよい。例えば、料率区分Aには、7つの組合せリスク区分(A1~A7)が対応付けられる。また、上記浸水深データには、各地点の緯度及び経度に対して料率区分または水災保険料が対応付けられてもよい。
【0052】
なお、物件の構造(例えば、M構造、T構造、H構造)毎に純率が算出される場合、ステップS1において物件の構造毎に区別されて物件データが取得され、それぞれの物件の構造毎に取得された物件データが用いられてステップS2~S15の処理が実行される。
【0053】
[2-2.水災保険料の提示動作]
次に、
図9を参照して、保険契約処理サーバ3による水災保険料の提示動作について説明する。
図9(A)は、水災保険料の提示動作時におけるシステム制御部33の処理の一例を示すフローチャートであり、
図9(B)は、水災保険料の提示動作時におけるシステム制御部23の処理の一例を示すフローチャートである。なお、水災保険料の提示動作は、保険申込者に対して不公平感の少ない適切な水災保険料を知らせ、さらに、保険申込者の物件所在地における水災リスクを正しく把握させるという課題を解決するための動作である。
【0054】
図9(A)に示す処理は、例えば、保険契約処理サーバ3にアクセスした保険申込端末1からリクエストがあった場合に開始される。
図9(A)に示す処理が開始されると、保険契約処理サーバ3のシステム制御部33は、保険申込画面を表示させるための表示用データを、通信部31及びネットワークNWを介して保険申込端末1へ送信する(ステップS21)。これにより、保険申込端末1には保険申込画面が表示される。
【0055】
なお、保険申込端末1がブラウザにより保険契約処理サーバ3にアクセスする場合、表示用データは、保険申込画面のウェブページを構成する構造化文書(例えば、HTML(Hyper Text Markup Language)文書やXHTML文書等)データである。一方、保険申込端末1が専用のアプリケーションにより保険契約処理サーバ3にアクセスする場合、表示用データは、保険申込端末1内に事前に記憶された保険申込画面に表示させるテキストデータ等である。
【0056】
こうして表示された保険申込画面において保険申込者により被保険対象となる物件が指定されると、当該物件の所在地情報が保険申込端末1からネットワークNWを介して保険契約処理サーバ3へ送信される。なお、当該物件は、保険申込画面に設けられた住所入力欄にその住所が入力されることで指定されてもよいし、保険申込画面に表示された地図上でその所在地のある地点(緯度及び経度に対応)が選択されることで指定されてもよい。或いは、当該物件は、保険申込画面に設けられた物件名入力欄に物件名が入力されることで指定されてもよく、この場合、物件名から住所が検索される。
【0057】
システム制御部33(情報入力部331)は、保険申込端末1から通信部31を通じて受信された所在地情報(物件所在地の住所、または物件所在地の緯度及び経度)を入力する(ステップS22)。次いで、システム制御部33(保険情報取得部332)は、ステップS22で入力された所在地情報を含むリクエストを、通信部31及びネットワークNWを介して保険料設定サーバ2へ送信する(ステップS23)。
【0058】
一方、保険料設定サーバ2のシステム制御部23は、保険契約処理サーバ3から所在地情報を含むリクエストを受信すると、
図9(B)に示す処理を開始する。
図9(B)に示す処理が開始されると、システム制御部23は、外水浸水深データ及び内水浸水深データを浸水深データベース222から取得する(ステップS31)。次いで、システム制御部23は、外水リスク区分データ及び内水リスク区分データをリスク区分データベース223から取得する(ステップS32)。
【0059】
次いで、システム制御部23は、ステップS31で取得された外水浸水深データ及び内水浸水深データを参照して、リクエストに含まれる所在地情報(例えば、緯度及び経度)により特定される物件所在地の外水浸水深及び内水浸水深を特定する(ステップS33)。なお、所在地情報が住所である場合、当該住所が緯度及び経度に変換された後に、当該緯度及び経度に対応付けられた外水浸水深及び内水浸水深が特定されるとよい。
【0060】
次いで、システム制御部23は、ステップS32で取得された外水リスク区分データ及び内水リスク区分データを参照して、ステップS33で特定された外水浸水深が該当する外水リスク区分と、ステップS33で特定された内水浸水深が該当する内水リスク区分とを特定する(ステップS34)。次いで、システム制御部23は、ステップS34で特定された外水リスク区分と内水リスク区分との組合せに係る組合せリスク区分を特定する(ステップS35)。
【0061】
次いで、システム制御部23は、ステップS35で特定された組合せリスク区分が対応付けられた料率区分(つまり、組合せリスク区分が属する料率区分)の水災保険料を水災保険料データベース224から取得する(ステップS36)。次いで、システム制御部23は、ステップS34で特定された外水リスク区分及び内水リスク区分の情報を含む水災リスク情報を取得する(ステップS37)。次いで、システム制御部23は、ステップS36で取得された水災保険料と、ステップS37で取得された水災リスク情報とを含む保険情報を、リクエストに含まれる所在地情報に対応する保険情報として、通信部21及びネットワークNWを介して保険契約処理サーバ3へ送信する(ステップS38)。
【0062】
保険契約処理サーバ3のシステム制御部33(保険情報取得部332)は、保険料設定サーバ2から所在地情報に対応する保険情報を受信(取得)すると(ステップS24)、システム制御部33(保険情報提示部333)は、当該取得した保険情報を、通信部31及びネットワークNWを介して保険申込端末1へ送信する(ステップS25)。これにより、保険申込端末1の保険申込画面には、所在地情報に対応する水災保険料及び水災リスク情報が表示され、保険申込者に提示されることになる。なお、保険契約処理サーバ3がデータベース222~224に直接的にアクセス可能とすることで、保険契約処理サーバ3が
図9(B)に示す処理を実行してもよい。
【0063】
以上説明したように、上記実施形態によれば、保険料設定サーバ2は、特定地域に存在する複数の物件のそれぞれの所在地情報を含む物件データと、当該特定地域を含む地域において氾濫により想定される浸水深を示す浸水深データとを突合することにより、物件毎に浸水深が付与された物件データを取得し、浸水深が付与された物件データのそれぞれを、浸水深に応じて複数に区分されたリスク区分のうち何れかのリスク区分に振り分け、その振分結果に基づいてリスク区分毎に純率を算出し、リスク区分毎に算出された純率に基づいて複数に区分された水災保険料を設定するように構成したので、物件所在地毎の水災リスクに応じた適切な水災保険料を設定することができる。すなわち、水災リスクに応じて水災保険料を細分化することができるので、保険申込者による水災保険料負担の不公平感を解消することができる。
【0064】
また、上記実施形態によれば、保険契約処理サーバ3は、保険申込者により指定された被保険対象となる物件の所在地情報を入力し、水災リスクに応じて複数に区分されて設定された水災保険料のうち、上記入力された所在地情報に対応する水災保険料を取得して保険申込者に提示するように構成したので、保険申込者に対して不公平感の少ない適切な水災保険料を知らせることができ、保険契約の成立を促進することができる。さらに、保険契約処理サーバ3は、水災保険料を保険申込者に提示する際に、上記入力された所在地情報に対応する水災リスク情報を保険申込者に提示するように構成したので、保険申込者に対して適切な水災保険料を知らせると同時に保険申込者の物件所在地における水災リスクを正しく把握させることができる。換言すると、保険会社側は保険手続きを通じて、水災リスクを保険申込者に知らせるとともに、その水災リスクに見合った水災保険料を知らせることができ、さらに、防災対策を促進させることができる。
【0065】
以上のように本発明の一実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態から種々構成等に変更を加えてもよく、その場合も本発明の技術的範囲に含まれる。なお、上記実施形態においては、水災保険料を設定する場合に本発明を適用したが、本発明は水災保険料以外の災害保険料に対して適用可能である。例えば、上記実施形態において、水災リスクに加えて(または、水災リスクに代えて)、ハザードマップの土砂崩れリスクと高潮リスクの少なくとも何れか一方の災害リスクに応じた保険料を設定し、保険申込者により入力された所在地情報に対応する災害保険料を取得して保険申込者に提示することも可能である。例えば、土砂崩れリスクの場合、「浸水深」を「危険度(または、土砂堆積量)」と読み替え、「氾濫により想定される浸水深を示す浸水深データ」を「土砂崩れにより想定される危険度を示す危険度データ」と読み替えるものとする。一方、高潮リスクの場合、「氾濫により想定される浸水深を示す浸水深データ」を「高潮により想定される浸水深を示す浸水深データ」と読み替えるものとする。
【符号の説明】
【0066】
1 保険申込端末
2 保険料設定サーバ
3 保険契約処理サーバ
21 通信部
22 記憶部
23 システム制御部
231 情報取得部
232 リスク区分振分部
233 純率算出部
234 保険料設定部
31 通信部
32 記憶部
33 システム制御部
331 情報入力部
332 保険情報取得部
333 保険情報提示部
S 保険情報処理システム
NW ネットワーク