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特許7606579通信中継装置、遠隔制御装置、システム、アンテナ制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】通信中継装置、遠隔制御装置、システム、アンテナ制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 16/28 20090101AFI20241218BHJP
   H04W 84/06 20090101ALI20241218BHJP
   H04B 7/0413 20170101ALI20241218BHJP
   H04B 7/185 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
H04W16/28
H04W84/06
H04B7/0413 310
H04B7/185
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023177048
(22)【出願日】2023-10-12
【審査請求日】2023-10-17
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度国立研究開発法人情報通信研究機構「革新的情報通信技術研究開発委託研究/上空プラットフォームにおけるCPSを活用した動的エリア最適化技術」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(74)【代理人】
【識別番号】100128691
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 弘通
(72)【発明者】
【氏名】星野 兼次
(72)【発明者】
【氏名】柴田 洋平
(72)【発明者】
【氏名】高畠 航
【審査官】永田 義仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-213079(JP,A)
【文献】特開2022-161734(JP,A)
【文献】特開2020-036070(JP,A)
【文献】星野 兼次, 柴田 洋平, 高畠 航, 田代 晃司, 大槻 知明,上空プラットフォームにおけるカバーエリア最適化に関する研究開発,電子情報通信学会2023年通信ソサイエティ大会講演論文集1,一般社団法人電子情報通信学会,2023年09月05日,p.SS-23~SS-24
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B7/02-7/26
H04L1/02-1/06
H04W4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上空に位置する機体に設けられた中継通信局のサービスリンク用アンテナを介して地上又は海上のサービスエリアに向けて一又は複数のセルを形成し前記セルに在圏する複数の端末装置と無線通信する上空中継型の通信中継装置であって、
前記複数の端末装置の位置の情報に基づいて、前記サービスエリアにおける前記複数の端末装置の分布に対応させて前記セルを形成するように、前記サービスリンク用アンテナのアンテナパラメータを最適化するエリア最適化制御を実行するエリア最適化制御部と、
前記機体の位置及び姿勢の少なくとも一方の情報に基づいて、前記サービスエリアにおける前記セルのフットプリントの位置を固定するように、前記サービスリンク用アンテナが形成するビームの方向又は前記サービスリンク用アンテナの主指向性方向を制御するフットプリント固定制御を実行するフットプリント固定制御部と、
記憶部と、を備え
前記エリア最適化制御部は、
前記サービスエリアにおける前記複数の端末装置の位置を推定し、
前記複数の端末装置の位置の推定結果に基づいて、前記サービスリンク用アンテナのアンテナパラメータを最適化し、
前記最適化が完了した後の前記アンテナパラメータの最適値又は前記アンテナパラメータの初期値を基準にした前記最適値のオフセット値を前記記憶部に保存し、
前記フットプリント固定制御部は、前記機体の位置及び姿勢の少なくとも一方の情報と、前記記憶部に記憶されている前記アンテナパラメータの最適値又は前記オフセット値とに基づいて、前記サービスエリアにおける前記セルのフットプリントの位置を固定するように、前記サービスリンク用アンテナが形成するビームの方向又は前記サービスリンク用アンテナの主指向性方向を制御する、
ことを特徴とする通信中継装置。
【請求項2】
請求項1の通信中継装置において、
前記エリア最適化制御を、一定間隔又は可変間隔の頻度で実行し、
前記フットプリント固定制御を、前記エリア最適化制御よりも高頻度で又は連続して実行する、
ことを特徴とする通信中継装置
【請求項3】
求項の通信中継装置において、
前記サービスリンク用アンテナは、複数のアンテナ素子を有するビームフォーミング制御可能なアレイアンテナであり、
前記最適化の対象のアンテナパラメータは、前記サービスリンク用アンテナから前記セルに向けて形成するビームの水平ビーム方向、垂直ビーム方向及びビーム幅を含み、
前記フットプリント固定制御部は、
前記機体の位置及び姿勢の少なくとも一方の情報に基づいて、前記サービスリンク用アンテナから前記セルに向けて形成するビームのステアリング方向を計算し、
前記ビームのステアリング方向の計算結果と、前記記憶部に記憶されている前記アンテナパラメータの最適値又は前記オフセット値とに基づいて、前記複数のアンテナ素子に対応する複数のアンテナウェイトを計算し、
前記複数のアンテナ素子で送受信される複数の信号に前記複数のアンテナウェイトを適用する、
ことを特徴とする通信中継装置。
【請求項4】
請求項の通信中継装置において、
前記最適化の対象のアンテナパラメータは、前記サービスリンク用アンテナから前記セルに向けて形成するビームの水平ビーム方向及び垂直ビーム方向を含み、
前記フットプリント固定制御部は、
前記機体の位置及び姿勢の少なくとも一方の情報に基づいて、前記サービスリンク用アンテナから前記セルに向けて形成するビームのステアリング方向を計算し、
前記ビームのステアリング方向の計算結果と、前記記憶部に記憶されている前記アンテナパラメータの最適値又は前記オフセット値とに基づいて、前記サービスリンク用アンテナの主指向性方向を変更するように前記サービスリンク用アンテナを駆動制御する、
ことを特徴とする通信中継装置。
【請求項5】
請求項1乃至のいずれかの通信中継装置において、
前記機体に搭載された前記中継通信局は、送受信信号を再生せずに中継するリピータ型の中継通信局である、ことを特徴とする通信中継装置。
【請求項6】
請求項1乃至のいずれかの通信中継装置において、
前記機体に搭載された前記中継通信局は、送受信信号を再生し、再生した信号を再変調して中継する基地局装置を有する基地局型の中継通信局である、ことを特徴とする通信中継装置。
【請求項7】
上空に位置する機体に設けられた中継通信局のサービスリンク用アンテナを介して地上又は海上のサービスエリアに向けて一又は複数のセルを形成し前記セルに在圏する複数の端末装置と無線通信する上空中継型の通信中継装置と通信可能な遠隔制御装置であって、
前記複数の端末装置の位置の情報に基づいて、前記サービスエリアにおける前記複数の端末装置の分布に対応させて前記セルを形成するように、前記サービスリンク用アンテナのアンテナパラメータを最適化するエリア最適化制御を実行するエリア最適化制御部と、
前記機体の位置及び姿勢の少なくとも一方の情報に基づいて、前記サービスエリアにおける前記セルのフットプリントの位置を固定するように、前記サービスリンク用アンテナが形成するビームの方向又は前記サービスリンク用アンテナの主指向性方向を制御するフットプリント固定制御を実行するフットプリント固定制御部と、
記憶部と、を備え、
前記エリア最適化制御部は、
前記サービスエリアにおける前記複数の端末装置の位置を推定し、
前記複数の端末装置の位置の推定結果に基づいて、前記サービスリンク用アンテナのアンテナパラメータを最適化し、
前記最適化が完了した後の前記アンテナパラメータの最適値又は前記アンテナパラメータの初期値を基準にした前記最適値のオフセット値を前記記憶部に保存し、
前記フットプリント固定制御部は、前記機体の位置及び姿勢の少なくとも一方の情報と、前記記憶部に記憶されている前記アンテナパラメータの最適値又は前記オフセット値とに基づいて、前記サービスエリアにおける前記セルのフットプリントの位置を固定するように、前記サービスリンク用アンテナが形成するビームの方向又は前記サービスリンク用アンテナの主指向性方向を制御する、
ことを特徴とする遠隔制御装置。
【請求項8】
請求項の遠隔制御装置において、
前記エリア最適化制御を、一定間隔又は可変間隔の頻度で実行し、
前記フットプリント固定制御を、前記エリア最適化制御よりも高い頻度で又は連続して実行する、
ことを特徴とする遠隔制御装置
【請求項9】
請求項7又は8の遠隔制御装置と、上空に位置する機体に設けられた中継通信局のサービスリンク用アンテナを介して地上又は海上のサービスエリアに向けて一又は複数のセルを形成し前記セルに在圏する複数の端末装置と無線通信する上空中継型の通信中継装置と、を備えるシステム。
【請求項10】
上空に位置する機体に設けられた中継通信局のサービスリンク用アンテナを介して地上又は海上のサービスエリアに向けて一又は複数のセルを形成するときのアンテナ制御方法であって、
前記複数の端末装置の位置の情報に基づいて、前記サービスエリアにおける前記複数の端末装置の分布に対応させて前記セルを形成するように、前記サービスリンク用アンテナのアンテナパラメータを最適化するエリア最適化制御を実行することと、
前記機体の位置及び姿勢の少なくとも一方の情報に基づいて、前記サービスエリアにおける前記セルのフットプリントの位置を固定するように、前記サービスリンク用アンテナが形成するビームの方向又は前記サービスリンク用アンテナの主指向性方向を制御するフットプリント固定制御を実行することと、
前記サービスエリアにおける前記複数の端末装置の位置を推定することと、
前記複数の端末装置の位置の推定結果に基づいて、前記サービスリンク用アンテナのアンテナパラメータを最適化することと、
前記最適化が完了した後の前記アンテナパラメータの最適値又は前記アンテナパラメータの初期値を基準にした前記最適値のオフセット値を記憶することと、
前記機体の位置及び姿勢の少なくとも一方の情報と、前記記憶されている前記アンテナパラメータの最適値又は前記オフセット値とに基づいて、前記サービスエリアにおける前記セルのフットプリントの位置を固定するように、前記サービスリンク用アンテナが形成するビームの方向又は前記サービスリンク用アンテナの主指向性方向を制御することと、
を含む、ことを特徴とするアンテナ制御方法。
【請求項11】
請求項10のアンテナ制御方法において、
前記エリア最適化制御を一定間隔又は可変間隔の頻度で実行することと、
前記フットプリント固定制御を、前記エリア最適化制御よりも高頻度で又は連続して実行することと、
を含む、ことを特徴とするアンテナ制御方法
【請求項12】
空に位置する機体に設けられた中継通信局のサービスリンク用アンテナを介して地上又は海上のサービスエリアに向けて一又は複数のセルを形成し前記セルに在圏する複数の端末装置と無線通信する上空中継型の通信中継装置に設けられたコンピュータ又はプロセッサで実行されるプログラムであって、
前記複数の端末装置の位置の情報に基づいて、前記サービスエリアにおける前記複数の端末装置の分布に対応させて前記セルを形成するように、前記サービスリンク用アンテナのアンテナパラメータを最適化するエリア最適化制御を実行するためのプログラムコードと、
前記機体の位置及び姿勢の少なくとも一方の情報に基づいて、前記サービスエリアにおける前記セルのフットプリントの位置を固定するように、前記サービスリンク用アンテナが形成するビームの方向又は前記サービスリンク用アンテナの主指向性方向を制御するフットプリント固定制御を実行ためのプログラムコードと、
前記サービスエリアにおける前記複数の端末装置の位置を推定するためのプログラムコードと、
前記複数の端末装置の位置の推定結果に基づいて、前記サービスリンク用アンテナのアンテナパラメータを最適化するためのプログラムコードと、
前記最適化が完了した後の前記アンテナパラメータの最適値又は前記アンテナパラメータの初期値を基準にした前記最適値のオフセット値を記憶するためのプログラムコードと、
前記機体の位置及び姿勢の少なくとも一方の情報と、前記記憶されている前記アンテナパラメータの最適値又は前記オフセット値とに基づいて、前記サービスエリアにおける前記セルのフットプリントの位置を固定するように、前記サービスリンク用アンテナが形成するビームの方向又は前記サービスリンク用アンテナの主指向性方向を制御するためのプログラムコードと、
を含むことを特徴とするプログラム。
【請求項13】
上空に位置する機体に設けられた中継通信局のサービスリンク用アンテナを介して地上又は海上のサービスエリアに向けて一又は複数のセルを形成し前記セルに在圏する複数の端末装置と無線通信する上空中継型の通信中継装置と通信可能な遠隔制御装置に設けられたコンピュータ又はプロセッサで実行されるプログラムであって、
前記複数の端末装置の位置の情報に基づいて、前記サービスエリアにおける前記複数の端末装置の分布に対応させて前記セルを形成するように、前記サービスリンク用アンテナのアンテナパラメータを最適化するエリア最適化制御を実行するためのプログラムコードと、
前記機体の位置及び姿勢の少なくとも一方の情報に基づいて、前記サービスエリアにおける前記セルのフットプリントの位置を固定するように、前記サービスリンク用アンテナが形成するビームの方向又は前記サービスリンク用アンテナの主指向性方向を制御するフットプリント固定制御を実行するためのプログラムコードと、
前記サービスエリアにおける前記複数の端末装置の位置を推定するためのプログラムコードと、
前記複数の端末装置の位置の推定結果に基づいて、前記サービスリンク用アンテナのアンテナパラメータを最適化するためのプログラムコードと、
前記最適化が完了した後の前記アンテナパラメータの最適値又は前記アンテナパラメータの初期値を基準にした前記最適値のオフセット値を記憶するためのプログラムコードと、
前記機体の位置及び姿勢の少なくとも一方の情報と、前記記憶されている前記アンテナパラメータの最適値又は前記オフセット値とに基づいて、前記サービスエリアにおける前記セルのフットプリントの位置を固定するように、前記サービスリンク用アンテナが形成するビームの方向又は前記サービスリンク用アンテナの主指向性方向を制御するためのプログラムコードと、
を含むことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上空中継型(空中滞在型)の通信中継装置が地上又は海上に向けて形成するセルで構成されるサービスエリアの最適化に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空中に浮揚して滞在可能な高高度プラットフォーム局(HAPS)(「高高度疑似衛星」ともいう。)等の通信中継装置が地上に形成するサービスエリア(以下、単に「エリア」ともいう。)の全体で所望の通信品質(例えば、スループット)が得られるようにサービスリンクのアンテナパラメータ(例えばセル形成のビームの方向及び幅)を最適化するエリア最適化を行う方法が知られている(特許文献1~3、非特許文献1~6参照)。
【0003】
例えば、非特許文献1には、エリアにおける端末装置としてのユーザ装置(以下「UE」ともいう。)の分布が一様分布であると想定してエリア最適化を行う方法が開示されている。また、非特許文献2には、エリアが複数のセルで構成されている場合に、エリア全体で所望の通信品質(例えば、スループット)が得られるようセルごとに最適化を行う方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2022-161734号公報
【文献】特開2022-161742号公報
【文献】特許第7318047号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】Y. Shibata, N. Kanazawa, M. Konishi, K. Hoshino, Y. Ohta and A. Nagate, "System Design of Gigabit HAPS Mobile Communications," in IEEE Access, vol. 8, pp. 157995-158007, 2020.
【文献】柴田洋平, 高畠航, 星野兼次, 長手厚史, "複数セル構成におけるユーザ分布を考慮したHAPS動的セル制御アルゴリズム", 信学技報, vol. 120, no. 322, RCS2020-185, pp. 170-175, 2021年1月.
【文献】Shaoshuai Fan, Hui Tian1 and Cigdem Sengul ,"Self-optimization of coverage and capacity based on a fuzzy neural network with cooperative reinforcement learning", EURASIP Journal on Wireless Communications and Networking 2014.
【文献】Rubayet Shafin, Hao Chen, Young Han Nam, Sooyoung Hur, Jeongho Park, Jianzhong (Charlie) Zhang, Jeffrey Reed, and Lingjia Liu "Self-Tuning Sectorization: Deep Reinforcement Learning Meets Broadcast Beam Optimization", IEEE Transactions on Wireless Communications, 2020.
【文献】Eren Balevi and Jeffrey G. Andrews ,"A Novel Deep Reinforcement Learning Algorithm for Online Antenna Tuning",in Proc. IEEE Global Communications Conference (GLOBECOM), 2019.
【文献】Yohei Shibata, Wataru Takabatake, Kenji Hoshino, Atsushi Nagate and Tomoaki Ohtsuki, "Two-Step Dynamic Cell Optimization Algorithm for HAPS Mobile Communications", IEEE Access, vol. 10, pp.68085-68098, 2022.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のエリア最適化の方法では、サービスエリア内のユーザ分布(端末装置の分布)の取得やエリア最適化の計算処理に時間がかかる。そのため、上空のHAPS等のプラットフォーム(通信中継装置)の機体の高速移動、旋回又は姿勢変化が発生した場合、機体から見たユーザ分布(端末装置の分布)が高速に移動又は回転し、サービスエリアをカバーするセルを形成するためのアンテナパラメータを最適化する処理が間に合わず、サービスエリアのカバレッジ及び通信容量の最大化を図ることができないおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る通信中継装置は、上空に位置する機体に設けられた中継通信局のサービスリンク用アンテナを介して地上又は海上のサービスエリアに向けて一又は複数のセルを形成し前記セルに在圏する複数の端末装置と無線通信する上空中継型の通信中継装置である。この通信中継装置は、前記複数の端末装置の位置の情報に基づいて、前記サービスエリアにおける前記複数の端末装置の分布に対応させて前記セルを形成するように、前記サービスリンク用アンテナのアンテナパラメータを最適化するエリア最適化制御を実行するエリア最適化制御部と、前記機体の位置及び姿勢の少なくとも一方の情報に基づいて、前記サービスエリアにおける前記セルのフットプリントの位置を固定するように、前記サービスリンク用アンテナが形成するビームの方向又は前記サービスリンク用アンテナの指向性方向を制御するフットプリント固定制御を実行するフットプリント固定制御部と、を備える。
【0008】
本発明の他の態様に係る遠隔制御装置は、上空に位置する機体に設けられた中継通信局のサービスリンク用アンテナを介して地上又は海上のサービスエリアに向けて一又は複数のセルを形成し前記セルに在圏する複数の端末装置と無線通信する上空中継型の通信中継装置と通信可能な遠隔制御装置である。この遠隔制御装置は、前記複数の端末装置の位置の情報に基づいて、前記サービスエリアにおける前記複数の端末装置の分布に対応させて前記セルを形成するように、前記サービスリンク用アンテナのアンテナパラメータを最適化するエリア最適化制御を実行するエリア最適化制御部と、前記機体の位置及び姿勢の少なくとも一方の情報に基づいて、前記サービスエリアにおける前記セルのフットプリントの位置を固定するように、前記サービスリンク用アンテナが形成するビームの方向又は前記サービスリンク用アンテナの指向性方向を制御するフットプリント固定制御を実行するフットプリント固定制御部と、を備える。
【0009】
前記通信中継装置及び前記遠隔制御装置において、前記エリア最適化制御部は、前記サービスエリアにおける前記複数の端末装置の位置を推定し、前記複数の端末装置の位置の推定結果に基づいて、前記サービスリンク用アンテナのアンテナパラメータを最適化し、前記最適化が完了した後の前記アンテナパラメータの最適値又は前記アンテナパラメータの初期値を基準にした前記最適値のオフセット値を、前記サービスリンク用アンテナに適用してもよい。
【0010】
前記通信中継装置及び前記遠隔制御装置において、前記サービスリンク用アンテナは、複数のアンテナ素子を有するビームフォーミング制御可能なアレイアンテナであってもよく、前記最適化の対象のアンテナパラメータは、前記サービスリンク用アンテナから前記セルに向けて形成するビームの水平ビーム方向、垂直ビーム方向及びビーム幅を含んでもよい。ここで、前記エリア最適化制御部は、前記アンテナパラメータの最適値に基づいて、前記複数のアンテナ素子に対応する複数のアンテナウェイトを計算し、前記複数のアンテナ素子で送受信される複数の信号に前記複数のアンテナウェイトを適用してもよい。
【0011】
前記通信中継装置及び前記遠隔制御装置において、前記最適化の対象のアンテナパラメータは、前記サービスリンク用アンテナから前記セルに向けて形成するビームの水平ビーム方向及び垂直ビーム方向を含んでもよく、前記エリア最適化制御部は、前記アンテナパラメータの最適値に基づいて、前記サービスリンク用アンテナの指向性方向を変更するように前記サービスリンク用アンテナを駆動制御してもよい。
【0012】
前記通信中継装置及び前記遠隔制御装置において、前記エリア最適化制御は、一定間隔又は可変間隔の頻度で実行し、前記フットプリント固定制御は、前記エリア最適化制御よりも高頻度で又は連続して実行してもよい。
【0013】
前記通信中継装置及び前記遠隔制御装置において、記憶部を備え、前記エリア最適化制御部は、前記サービスエリアにおける前記複数の端末装置の位置を推定し、前記複数の端末装置の位置の推定結果に基づいて、前記サービスリンク用アンテナのアンテナパラメータを最適化し、前記最適化が完了した後の前記アンテナパラメータの最適値又は前記アンテナパラメータの初期値を基準にした前記最適値のオフセット値を前記記憶部に保存してもよく、前記フットプリント固定制御部は、前記機体の位置及び姿勢の少なくとも一方の情報と、前記記憶部に記憶されている前記アンテナパラメータの最適値又は前記オフセット値とに基づいて、前記サービスエリアにおける前記セルのフットプリントの位置を固定するように、前記サービスリンク用アンテナが形成するビームの方向又は前記サービスリンク用アンテナの指向性方向を制御してもよい。
【0014】
前記通信中継装置及び前記遠隔制御装置において、前記サービスリンク用アンテナは、複数のアンテナ素子を有するビームフォーミング制御可能なアレイアンテナであってもよく、前記最適化の対象のアンテナパラメータは、前記サービスリンク用アンテナから前記セルに向けて形成するビームの水平ビーム方向、垂直ビーム方向及びビーム幅を含んでもよい。ここで、前記フットプリント固定制御部は、前記機体の位置及び姿勢の少なくとも一方の情報に基づいて、前記サービスリンク用アンテナから前記セルに向けて形成するビームのステアリング方向を計算し、前記ビームのステアリング方向の計算結果と、前記記憶部に記憶されている前記アンテナパラメータの最適値又は前記オフセット値とに基づいて、前記複数のアンテナ素子に対応する複数のアンテナウェイトを計算し、前記複数のアンテナ素子で送受信される複数の信号に前記複数のアンテナウェイトを適用してもよい。
【0015】
前記通信中継装置及び前記遠隔制御装置において、前記最適化の対象のアンテナパラメータは、前記サービスリンク用アンテナから前記セルに向けて形成するビームの水平ビーム方向及び垂直ビーム方向を含んでもよい。ここで、前記フットプリント固定制御部は、前記機体の位置及び姿勢の少なくとも一方の情報に基づいて、前記サービスリンク用アンテナから前記セルに向けて形成するビームのステアリング方向を計算し、前記ビームのステアリング方向の計算結果と、前記記憶部に記憶されている前記アンテナパラメータの最適値又は前記オフセット値とに基づいて、前記サービスリンク用アンテナの指向性方向を変更するように前記サービスリンク用アンテナを駆動制御してもよい。
【0016】
前記通信中継装置及び前記遠隔制御装置において、前記機体に搭載された前記中継通信局は、送受信信号を再生せずに中継するリピータ型の中継通信局であってもよいし、又は、送受信信号を再生し、再生した信号を再変調して中継する基地局装置を有する基地局型の中継通信局であってもよい。
【0017】
本発明の更に他の態様に係るシステムは、前記いずれかの遠隔制御装置と、上空に位置する機体に設けられた中継通信局のサービスリンク用アンテナを介して地上又は海上のサービスエリアに向けて一又は複数のセルを形成し前記セルに在圏する複数の端末装置と無線通信する上空中継型の通信中継装置と、を備える。
【0018】
本発明の更に他の態様に係る方法は、上空に位置する機体に設けられた中継通信局のサービスリンク用アンテナを介して地上又は海上のサービスエリアに向けて一又は複数のセルを形成するときのアンテナ制御方法である。このアンテナ制御方法は、前記複数の端末装置の位置の情報に基づいて、前記サービスエリアにおける前記複数の端末装置の分布に対応させて前記セルを形成するように、前記サービスリンク用アンテナのアンテナパラメータを最適化するエリア最適化制御を実行することと、前記機体の位置及び姿勢の少なくとも一方の情報に基づいて、前記サービスエリアにおける前記セルのフットプリントの位置を固定するように、前記サービスリンク用アンテナが形成するビームの方向又は前記サービスリンク用アンテナの指向性方向を制御するフットプリント固定制御を実行することと、を含む。
【0019】
前記アンテナ制御方法において、前記サービスエリアにおける前記複数の端末装置の位置を推定することと、前記複数の端末装置の位置の推定結果に基づいて、前記サービスリンク用アンテナのアンテナパラメータを最適化することと、前記最適化が完了した後の前記アンテナパラメータの最適値を、前記サービスリンク用アンテナに適用することと、を含んでもよい。
【0020】
前記アンテナ制御方法において、前記エリア最適化制御を一定間隔又は可変間隔の頻度で実行することと、前記フットプリント固定制御を、前記エリア最適化制御よりも高頻度で又は連続して実行することと、を含んでもよい。
【0021】
前記アンテナ制御方法において、前記サービスエリアにおける前記複数の端末装置の位置を推定することと、前記複数の端末装置の位置の推定結果に基づいて、前記サービスリンク用アンテナのアンテナパラメータを最適化することと、前記最適化が完了した後の前記アンテナパラメータの最適値又は前記アンテナパラメータの初期値を基準にした前記最適値のオフセット値を記憶することと、前記機体の位置及び姿勢の少なくとも一方の情報と、前記記憶されている前記アンテナパラメータの最適値又は前記オフセット値とに基づいて、前記サービスエリアにおける前記セルのフットプリントの位置を固定するように、前記サービスリンク用アンテナが形成するビームの方向又は前記サービスリンク用アンテナの指向性方向を制御することと、を含んでもよい。
【0022】
前記アンテナ制御方法において、前記サービスリンク用アンテナは、複数のアンテナ素子を有するビームフォーミング制御可能なアレイアンテナであってもよく、前記最適化の対象のアンテナパラメータは、前記サービスリンク用アンテナから前記セルに向けて形成するビームの水平ビーム方向、垂直ビーム方向及びビーム幅を含んでもよい。ここで、前記アンテナパラ制御方法は、前記アンテナパラメータの最適値に基づいて、前記複数のアンテナ素子に対応する複数のアンテナウェイトを計算することと、前記複数のアンテナ素子で送受信される複数の信号に前記複数のアンテナウェイトを適用することと、を含んでもよい。
【0023】
前記アンテナ制御方法において、前記最適化の対象のアンテナパラメータは、前記サービスリンク用アンテナから前記セルに向けて形成するビームの水平ビーム方向及び垂直ビーム方向を含んでもよい。ここで、前記アンテナ制御方法は、前記アンテナパラメータの最適値に基づいて、前記サービスリンク用アンテナの指向性方向を変更するように前記サービスリンク用アンテナを駆動制御することを含んでもよい。
【0024】
本発明の更に他の態様に係るプログラムは、上空に位置する機体に設けられた中継通信局のサービスリンク用アンテナを介して地上又は海上のサービスエリアに向けて一又は複数のセルを形成し前記セルに在圏する複数の端末装置と無線通信する上空中継型の通信中継装置に設けられたコンピュータ又はプロセッサで実行されるプログラムである。このプログラムは、前記複数の端末装置の位置の情報に基づいて、前記サービスエリアにおける前記複数の端末装置の分布に対応させて前記セルを形成するように、前記サービスリンク用アンテナのアンテナパラメータを最適化するためのプログラムコードと、前記機体の位置及び姿勢の少なくとも一方の情報に基づいて、前記サービスエリアにおける前記セルのフットプリントの位置を固定するように、前記サービスリンク用アンテナが形成するビームの方向又は前記サービスリンク用アンテナの指向性方向を制御するフットプリント固定制御を実行ためのプログラムコードと、を含む。
【0025】
本発明の更に他の態様に係るプログラムは、上空に位置する機体に設けられた中継通信局のサービスリンク用アンテナを介して地上又は海上のサービスエリアに向けて一又は複数のセルを形成し前記セルに在圏する複数の端末装置と無線通信する上空中継型の通信中継装置と通信可能な遠隔制御装置に設けられたコンピュータ又はプロセッサで実行されるプログラムである。このプログラムは、前記複数の端末装置の位置の情報に基づいて、前記サービスエリアにおける前記複数の端末装置の分布に対応させて前記セルを形成するように、前記サービスリンク用アンテナのアンテナパラメータを最適化するエリア最適化制御を実行するためのプログラムコードと、前記機体の位置及び姿勢の少なくとも一方の情報に基づいて、前記サービスエリアにおける前記セルのフットプリントの位置を固定するように、前記サービスリンク用アンテナが形成するビームの方向又は前記サービスリンク用アンテナの指向性方向を制御するフットプリント固定制御を実行するためのプログラムコードと、を含む。
【0026】
前記プログラムにおいて、前記サービスエリアにおける前記複数の端末装置の位置を推定するためのプログラムコードと、前記複数の端末装置の位置の推定結果に基づいて、前記サービスリンク用アンテナのアンテナパラメータを最適化するためのプログラムコードと、前記最適化が完了した後の前記アンテナパラメータの最適値を、前記サービスリンク用アンテナに適用するためのプログラムコードとを含んでもよい。
【0027】
前記プログラムにおいて、前記サービスリンク用アンテナは、複数のアンテナ素子を有するビームフォーミング制御可能なアレイアンテナであってもよく、前記最適化の対象のアンテナパラメータは、前記サービスリンク用アンテナから前記セルに向けて形成するビームの水平ビーム方向、垂直ビーム方向及びビーム幅を含んでもよい。ここで、前記プログラムは、前記アンテナパラメータの最適値に基づいて、前記複数のアンテナ素子に対応する複数のアンテナウェイトを計算するためのプログラムコードと、前記複数のアンテナ素子で送受信される複数の信号に前記複数のアンテナウェイトを適用するためのプログラムコードとを含んでもよい。
【0028】
前記プログラムにおいて、前記最適化の対象のアンテナパラメータは、前記サービスリンク用アンテナから前記セルに向けて形成するビームの水平ビーム方向及び垂直ビーム方向を含んでもよく、前記プログラムは、前記アンテナパラメータの最適値に基づいて、前記サービスリンク用アンテナの指向性方向を変更するように前記サービスリンク用アンテナを駆動制御するためのプログラムコードを含んでもよい。
【0029】
前記プログラムにおいて、前記エリア最適化制御を一定間隔又は可変間隔の頻度で実行するためのプログラムコードと、前記フットプリント固定制御を前記エリア最適化制御よりも高頻度で又は連続して実行するためのプログラムコードとを含んでもよい。
【0030】
前記プログラムにおいて、前記サービスエリアにおける前記複数の端末装置の位置を推定するためのプログラムコードと、前記複数の端末装置の位置の推定結果に基づいて、前記サービスリンク用アンテナのアンテナパラメータを最適化するためのプログラムコードと、前記最適化が完了した後の前記アンテナパラメータの最適値又は前記アンテナパラメータの初期値を基準にした前記最適値のオフセット値を記憶するためのプログラムコードと、前記機体の位置及び姿勢の少なくとも一方の情報と、前記記憶部に記憶されている前記アンテナパラメータの最適値又は前記オフセット値とに基づいて、前記サービスエリアにおける前記セルのフットプリントの位置を固定するように、前記サービスリンク用アンテナが形成するビームの方向又は前記サービスリンク用アンテナの指向性方向を制御するためのプログラムコードと、を含んでもよい。
【0031】
前記プログラムにおいて、前記サービスリンク用アンテナは、複数のアンテナ素子を有するビームフォーミング制御可能なアレイアンテナであってもよく、前記最適化の対象のアンテナパラメータは、前記サービスリンク用アンテナから前記セルに向けて形成するビームの水平ビーム方向、垂直ビーム方向及びビーム幅を含んでもよい。ここで、前記プログラムは、前記機体の位置及び姿勢の少なくとも一方の情報に基づいて、前記サービスリンク用アンテナから前記セルに向けて形成するビームのステアリング方向を計算するためのプログラムコードと、前記ビームのステアリング方向の計算結果と、前記記憶部に記憶されている前記アンテナパラメータの最適値又は前記オフセット値とに基づいて、前記複数のアンテナ素子に対応する複数のアンテナウェイトを計算するためのプログラムコードと、前記複数のアンテナ素子で送受信される複数の信号に前記複数のアンテナウェイトを適用するためのプログラムコードと、を含んでもよい。
【0032】
前記プログラムにおいて、前記最適化の対象のアンテナパラメータは、前記サービスリンク用アンテナから前記セルに向けて形成するビームの水平ビーム方向及び垂直ビーム方向を含んでもよい。ここで、前記プログラムは、前記機体の位置及び姿勢の少なくとも一方の情報に基づいて、前記サービスリンク用アンテナから前記セルに向けて形成するビームのステアリング方向を計算するためのプログラムコードと、前記ビームのステアリング方向の計算結果と、前記記憶部に記憶されている前記アンテナパラメータの最適値又は前記オフセット値とに基づいて、前記サービスリンク用アンテナの指向性方向を変更するように前記サービスリンク用アンテナを駆動制御するためのプログラムコードと、を含んでもよい。
【0033】
前記プログラムの全部又は一部は、機械学習によって作成された学習済モデルを含んでもよい。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、上空中継型の通信中継装置の機体の高速移動、旋回又は姿勢変化が発生する環境下でも、サービスエリアのカバレッジ及び通信容量の最大化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、実施形態に係る通信システムの全体の構成の一例を示す説明図である。
図2図2(a)は、7個のセルで構成されるサービスエリア内のセルごとのエリア最適化制御を適用する前のセルの配置及びサイズの一例を示す説明図である。図2(b)は、同エリア最適化制御を適用した後のセルの配置及びサイズの一例を示す説明図である。
図3図3は、エリア最適化制御に用いるアンテナパラメータとしてのアンテナチルト角、水平半値幅及び垂直半値幅の一例を示す説明図である。
図4図4は、参考例に係るエリア最適化制御アルゴリズムの一例を示すフローチャートである。
図5図5(a)は、7個のセルで構成されるサービスエリアにおいてFP固定制御を適用する前のセルの配置の一例を示す説明図である。図5(b)は、同FP固定制御を適用した後のセルの配置の一例を示す説明図である。
図6図6は、実施形態に係る制御システムおけるエリア最適化制御とFP固定制御との組み合わせの一例を説明図である。
図7図7は、実施形態に係る通信中継装置(HAPS)のヨー回転を考慮した場合のエリア最適化制御とFP固定制御との組み合わせによるセルの配置及びサイズの変化の一例を示す説明図である。
図8図8は、実施形態に係るエリア最適化制御及びFP固定制御を含む全体制御の一例を示すフローチャートである。
図9図9は、図8の全体制御におけるFP固定制御の一例を示すフローチャートである。
図10図10は、図8の全体制御におけるエリア最適化制御の一例を示すフローチャートである。
図11図11は、実施形態に係るエリア最適化制御及びFP固定制御を含む全体制御の他の例を示すフローチャートである。
図12図12は、実施形態に係る制御システムの装置構成の一例を示す説明図である。
図13図13は、実施形態に係る制御システムの装置構成の他の例を示す説明図である。
図14図14は、実施形態に係る制御システムの装置構成の更に他の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
本書に記載された実施形態に係るシステムは、上空プラットフォームとしての上空中継型の通信中継装置(HAPS)から地上又は海上に向けて形成するサービスエリアにおける複数のセルのフットプリントを固定するフットプリント固定制御(以下「FP固定制御」ともいう。)により、通信中継装置の機体の高速移動、旋回又は姿勢変化による機体から見たセルの移動及び回転を補償するとともに、サービスエリアをカバーするセルを形成するためのアンテナパラメータを最適化するエリア最適化制御により、機体の高速移動、旋回又は姿勢変化が発生する環境下でもサービスエリアのカバレッジ及び通信容量の最大化を図ることができる制御システムを含む通信システムである。特に、本実施形態に係るシステムは、FP固定制御とエリア最適化制御との間でメモリ等の記憶装置を介して各制御に用いるアンテナパラメータを共有し、FP固定制御よりも低い頻度で、処理に時間を要するエリア最適化制御を実行し、エリア最適化制御で得られたアンテナパラメータの最適値又はそのオフセット値を記憶し、そのエリア最適化制御を実行して記憶したアンテナパラメータの最適値又はそのオフセット値を参照しながら、エリア最適化制御よりも高い頻度で又は連続して、サービスエリアに向けて形成するセルを固定するFP固定制御を実行する制御システムを含む通信システムである。
【0037】
図1は、実施形態に係る通信システムの全体構成の一例を示す説明図である。なお、本実施形態に係る通信システムは、多数の端末装置(以下「UE」という。)61への同時接続や低遅延化などに対応する第5世代又はその後の世代の移動通信の3次元化ネットワークの実現に適する。また、本明細書に開示する通信システム、無線中継局、基地局、リピータ及びUEに適用可能な移動通信の標準規格は、第5世代の移動通信の標準規格、及び、第5世代以降の次々世代の移動通信の標準規格を含む。
【0038】
図1に示すように、通信システムは、上空プラットフォームを構成する上空中継型の通信中継装置(無線中継装置)としての高高度プラットフォーム局(HAPS)(「高高度疑似衛星」、「成層圏プラットフォーム」ともいう。)10を備えている。HAPS10は、上空滞在型又は空中浮揚型の通信中継装置であり、所定高度の空域に位置して、対象のサービスエリア20Aに向けた所定高度のセル形成目標空域に3次元セル(3次元エリア)を形成する。
【0039】
HAPS10は、自律制御又は外部から制御により地面又は海面から100[km]以下の高高度の空域(浮揚空域)に浮遊あるいは飛行して位置するように制御される飛行体又は浮揚体の機体100に、中継通信局110が搭載されたものである。HAPS10が位置する空域は、例えば、高度Hが18[km]以上及び50[km]以下の成層圏の空域であってもよい。この空域は、気象条件が比較的安定している高度15[km]以上25[km]以下の空域であってもよく、特に高度がほぼ20[km]の空域であってもよい。
【0040】
HAPS10で3次元セルを形成する目標の空域であるセル形成目標空域は、HAPS10が位置する空域と従来のマクロセル基地局等の基地局(例えばLTEのeNodeB又は次世代のgNodeB)がカバーする地面近傍のセル形成領域との間に位置する、所定高度範囲(例えば、50[m]以上1000[m]以下の高度範囲)の空域であってもよい。
【0041】
セル形成目標空域は、海、川又は湖の上空であってもよい。また、HAPS10で形成する3次元セルは、地上又は海上に位置するUE61との間でも通信できるよう地面又は海面に達するように形成してもよい。
【0042】
HAPS10は、上空に位置する飛行体又は浮揚体等の機体100に設けられた中継通信局110のサービスリンクアンテナ(「SLアンテナ」ともいう。)111を介してUE61と無線通信する。HAPS10は、例えばバッテリー及び太陽光発電システムの少なくとも一方を備え電力で飛行することができる。HAPS10は、図示のソーラープレーン型のHAPSのほか、飛行船型のHAPSであってもよい。また、中継通信局110が設けられるHAPS10は、人工衛星(例えば、通信衛星)、気球、又は、ドローン、UAS(Unmanned Aircraft Systems)等の無人航空機(UAV:Unmanned Aerial Vehicle)であってもよい。また、HAPS10は、動力源として、バッテリー及びエンジンの少なくとも一方を備えて飛行してもよい。UAVは、例えば、燃料で飛行する無人飛行機、又は、バッテリー等で飛行するドローンであってもよい。
【0043】
中継通信局110は、サービスリンク用アンテナ(SLアンテナ)111とフィーダリンク用アンテナ(以下「FLアンテナ」ともいう。)112と、を備える。中継通信局110は、SLアンテナ111を介して、UE61と間でサービスリンクSLの通信を行うことができる。SLアンテナ111は、例えば、対象のサービスエリア20Aに複数のセル20C(1)~20C(7)を形成する複数のビームのそれぞれについてビームの方向及び幅を制御することができるビームフォーミング制御可能なアレイアンテナである。セル形成目標空域においてビームが通過する領域が3次元セル20C(1)~20C(7)である。セル形成目標空域において互いに隣り合う複数のビームは部分的に重なってもよい。また、複数のセル20C(1)~20C(7)が地上(又は海上など)に到達した複数の通信エリアがフットプリント20F(1)~20F(7)である。
【0044】
なお、図示の例では、SLアンテナ111を介して7個のセル20C(1)~20C(7)を形成する場合を示しているが、セル20Cの数は単数でもよいし、2個~6個でもよいし、8個以上であってもよい。
【0045】
SLアンテナ111は、例えば、複数のアンテナ素子が2次元的に又は3次元的に配列され、地上に向けて複数のビームを形成可能な単数又は複数のアレイアンテナである。SLアンテナ111は、多数のアンテナ素子が2次元配列され、水平方向と垂直方向のビーム指向性を制御できるMassiveアンテナであってもよい。
【0046】
中継通信局110は、FLアンテナ112を介して、地上(又は海上等)に設けられたHAPS用のゲートウェイ装置(「フィーダ局」ともいう。以下「GW局」という。)70と間でフィーダリンクFLの通信を行うことができる。FLアンテナ112は、例えば指向性(指向性ビームの方向)を制御できるアレイアンテナである。FLアンテナ112は、例えば、複数のアンテナ素子が2次元的に又は3次元的に配列された単数又は複数のアレイアンテナである。FLアンテナ112は、多数のアンテナ素子が2次元配列され、水平方向と垂直方向の指向性を制御できるMassiveアンテナであってもよい。図中のフィーダリンクFL(F)は、GW局70からHAPS10を経由してUE61に向かうフォワードリンクであり、フィーダリンクFL(R)は、UE61からHAPS10を経由してGW局70に向かうリバースリンクである。
【0047】
HAPS10の機体100に搭載された中継通信局110は、送受信信号を再生せずに中継するリピータ型の中継通信局でもよいし、又は、送受信信号を再生し、再生した信号を再変調して中継する基地局装置を有する基地局型の中継通信局であってもよい。
【0048】
リピータ型の中継通信局110は、GW局70からなるリピータ親機に対応するリピータ子機として機能し、例えば、サービスリンクと周波数の異なるフィーダリンクの周波数を変換する無線中継装置(以下「周波数変換リピータ」ともいう。)である。下り回線では、中継通信局110は、基地局装置80からGW局70を介して送信されたフィーダリンクの周波数をサービスリンクの周波数に変換し、UE61に送信する。一方、上り回線では、中継通信局110は、UE61から送信されたサービスリンクの周波数をフィーダリンクの周波数に変換し、GW局70を介して基地局装置80に送信する。
【0049】
リピータ型の中継通信局110は、例えば、リピータと周波数変換装置とを有する。リピータは、例えば、SLアンテナ111を介して受信したサービスリンクSLの受信信号を増幅する低ノイズ増幅器、SLアンテナ111を介して送信するサービスリンクSLの送信信号を増幅する電力増幅器等を有する。周波数変換装置は、サービスリンクSLの周波数とフィーダリンクFLの周波数との間の変換を行う。
【0050】
基地局型の中継通信局110は、基地局装置と周波数変換装置を有する。基地局装置は、サービスリンクのベースバンド信号を処理するベースバンド処理装置、GW局70を経由するバックホール回線を介して移動通信網90のコアネットワークと通信するための通信インターフェース部等を有する。周波数変換装置は、中継通信局110内の基地局装置に対して入出力されるサービスリンク信号の周波数と、FLアンテナ112を介して送受信されるフィーダリンク信号の周波数との間の変換を行う。
【0051】
なお、以下に示す実施形態では、HAPS10の機体100に搭載された中継通信局110がリピータ型の中継通信局(リピータ子機)である場合について主に説明する。
【0052】
UE(ユーザ装置)61は、地上又は海上などでユーザが使用する端末装置である。UE61は、例えば、携帯電話機、スマートフォン、移動通信機能を有する携帯パソコン等であり、携帯端末、移動局、移動機、携帯型の通信端末とも呼ばれる。UE61は、自動車等の車両、遠隔操縦可能な小型のヘリコプター等の航空機であるドローンなどの移動体に組み込まれたモジュール状の移動局であってもよいし、IoT(Internet of Things)向けデバイスの端末装置であってもよい。
【0053】
HAPS10は、内部に組み込まれたコンピュータ又はプロセッサ等で構成された制御部が制御プログラムを実行することにより、自身の浮揚移動(飛行)や中継通信局110での処理及び制御を自律制御してもよい。例えば、HAPS10は、後述のエリア最適化制御及びFP固定制御を自律的に行うことができる。また、HAPS10は、自身の現在位置情報(例えばGPS位置情報等のGNSS(Global Navigation Satellite System)位置情報)、予め記憶した位置制御情報(例えば、飛行スケジュール情報)、周辺に位置する他のHAPSの位置情報などを取得し、それらの情報に基づいて浮揚移動(飛行)や中継通信局110での処理及び制御を自律制御してもよい。
【0054】
HAPS10の位置及び姿勢の情報は、そのHAPS10に組み込んだGPS受信装置、ジャイロセンサ、加速度センサ、慣性センサなどの出力に基づいて取得してもよい。例えば、HAPS10の位置及び姿勢の情報は、HAPS10に組み込んだGNSSシステムと慣性測定ユニット(IMU:Inertial Measurement Unit)とを組み合わせたGNSS慣性航法システム(GNSS/INS)の出力に基づいて取得してもよい。
【0055】
また、HAPS10の浮揚移動(飛行)や中継通信局110での処理及び制御は、移動通信網90の通信センター等に設けられた遠隔制御装置95によって制御できるようにしてもよい。遠隔制御装置95は、例えば、PCなどのコンピュータ装置やサーバ等で構成することができる。HAPS10は、遠隔制御装置95からの制御情報を受信したり遠隔制御装置95に監視情報などの各種情報を送信したりできるように制御用通信端末装置(例えば、移動通信モジュール)が組み込まれ、遠隔制御装置95から識別できるように端末識別情報(例えば、IPアドレス、電話番号など)が割り当てられるようにしてもよい。制御用通信端末装置の識別には通信インターフェースのMACアドレスを用いてもよい。
【0056】
遠隔制御装置95は、例えば、HAPS10と連携することにより後述のエリア最適化制御及びFP固定制御を行ってもよい。
【0057】
また、HAPS10は、自身又は周辺のHAPSの浮揚移動(飛行)や中継通信局110での処理に関する情報、HAPS10の位置情報、HAPS10の状態に関する情報や各種センサなどで取得した観測データなどの監視情報を、遠隔制御装置95等の所定の送信先に送信するようにしてもよい。制御情報は、HAPSの目標飛行ルート情報を含んでもよい。監視情報は、HAPS10の現在位置、飛行ルート履歴情報、対気速度、対地速度及び推進方向、HAPS10の周辺の気流の風速及び風向、並びに、HAPS10の周辺の気圧及び気温の少なくとも一つの情報を含んでもよい。
【0058】
中継通信局110とUE61との無線通信の上りリンク及び下りリンクの複信方式は、特定の方式に限定されず、例えば、時分割複信(Time Division Duplex:TDD)方式でもよいし、周波数分割複信(Frequency Division Duplex:FDD)方式でもよい。また、中継通信局110とUE61との無線通信のアクセス方式は、特定の方式に限定されず、例えば、FDMA(Frequency Division Multiple Access)方式、TDMA(Time Division Multiple Access)方式、CDMA(Code Division Multiple Access)方式、又は、OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)であってもよい。また、前記無線通信には、ダイバーシティ・コーディング、送信ビームフォーミング、空間分割多重化(SDM:Spatial Division Multiplexing)等の機能を有し、送受信両方で複数のアンテナを同時に利用することにより、単位周波数当たりの伝送容量を増やすことができるMIMO(多入力多出力:Multi-Input and Multi-Output)技術を用いてもよい。また、前記MIMO技術は、1つの基地局が1つのUEと同一時刻・同一周波数で複数の信号を送信するSU-MIMO(Single-User MIMO)技術でもよいし、1つの基地局が複数の異なるUEに同一時刻・同一周波数で信号を送信又は複数の異なる基地局が1つのUEに同一時刻・同一周波数で信号を送信するMU-MIMO(Multi-User MIMO)技術であってもよい。
【0059】
上記構成の通信システムにおいて、例えば基地局装置80からの信号がGW局70及びHAPS10で中継され、地上のUE61に通信サービスを提供することができる。特に、本実施形態の通信システムによれば、上空プラットフォームとして機能する上空中継型の通信中継装置としてのHAPS10により、高度18[km]以上及び50[km]以下(特に20[km]程度)の成層圏から直接地上のUE(携帯端末)61等に超広域の移動通信サービスを提供することができる。また、HAPS10からなる上空プラットフォームは、大規模災害等を用途とした新たな通信フォームとして注目されている。
【0060】
本実施形態の通信システムでは、HAPS10等の上空プラットフォームが地上に向けて形成する複数のセル20C(1)~20C(7)で構成されるサービスエリア20Aの全体で所望の通信品質(例えば、スループット)が得られるようにSLアンテナ111のアンテナパラメータを最適化するエリア最適化を行う。例えば、複数のセル20C(1)~20C(7)でサービスエリア20AをカバーするHAPS10等の上空プラットフォームにおいて、人口分布(又は、ユーザ分布、UE分布等)に応じて各セルのビームの方向や幅を最適化するエリア最適化制御を行う。
【0061】
例えば、図2(a)に示すようにエリア最適化制御を適用しないでサービスエリア20Aに同じサイズの複数のセル20C(1)~20C(7)を均一に分布させるように形成する場合、図中のサービスエリア20Aの左側に位置するユーザ(UE)密集エリアにおけるカバレッジ及び通信容量が低下するおそれがある。一方、図2(b)では、サービスエリア20Aにおける人口分布等にビッグデータに基づいて、複数のセル20C(1)~20C(7)のそれぞれに対するビームの方向や幅を最適化するエリア最適化制御を適用している。このようにエリア最適化制御を適用することにより、サービスエリア20Aの左側に位置するユーザ(UE)密集エリアを集中的にカバーするようにユーザ(UE)密集エリアをカバーするセル数を高め、ユーザ(UE)密集エリアにおける通信容量の低下を抑えることができる。これにより、サービスエリア20Aにおけるカバレッジ及び通信容量の最大化を行うことができる。
【0062】
エリア最適化制御では、例えば、N個のセルで構成されるエリアのエリア最適化において、エリア内の任意のi番目のセルiに対する複数種類のアンテナパラメータとして、次の4種類のアンテナパラメータA~Dを定義して用いる。
A.チルト角θtilt,i
B.垂直半値幅θ3dB,i
C.水平半値幅φ3dB,i
D.セルの水平指向方向ω
【0063】
図3に示すように、チルト角θtilt,iは、HAPS10のSLアンテナ111から対象のi番目のセル20C(i)の中心に向かうベクトルVcの水平方向Hからの角度である。垂直半値幅θ3dB,iは、i番目のセル20C(i)の中心に向かうベクトルVcを含む垂直面Pにおいてビームの利得が主ビーム中央の最大利得から3dB減少した2点間の角度幅である。水平半値幅φ3dB,iは、i番目のセル20C(i)の中心に向かうベクトルVcを含む水平面Pにおいてビームの利得が主ビーム中央の最大利得から3dB減少した2点間の角度幅である。
【0064】
また、i番目のセルの水平指向方向ωは、HAPS10のSLアンテナ111の位置を基準点として含む水平面において、所定の基準水平方向Hsを基準にして、上記基準点から対象のセルの中心を通る方向の角度である。
【0065】
図4は、参考例に係るエリア最適化制御アルゴリズムの一例を示すフローチャートである(前述の特許文献1参照)。図4において、エリア最適化制御は、UE位置推定ステップ(S110)と、逐次エリア最適化ステップ(S120)と、実環境への最適化パラメータを適用するパラメータ適用ステップ(S130)とを含む。
【0066】
UE位置推定ステップ(S110)では、何らかの方法でサービスエリア20A内の各UE61の位置が推定され、その推定結果(例えば、各UE61の位置の座標データ)が出力される。各UE61の位置は、例えば、各UE61からフィードバックされるGNSSの位置情報又はMR(測定報告)を用いて推定することができる。
【0067】
次に、逐次エリア最適化ステップ(S120)では、UE位置推定ステップ(S110)で出力された各UE61の位置の推定結果(例えば、各UE61の位置の座標データ)が入力され、サブエリアごとに最適化される各セルのアンテナパラメータの最適値が出力される。例えば、N個のセルが形成されるサービスエリア20AをM個のサブエリアに分割し、以下の手順で各サブエリアを順番に最適化する。
【0068】
まず、例えば、サブエリア間の相互依存性が低くなるようにサービスエリア20Aを複数(M個)のサブエリアに分割する(S121)。次に、例えば、目的関数への寄与度xに応じてサブエリアそれぞれの粒度をf(x)に設定する(S122)。次に、上記決定した粒度をf(x)の設定に基づき、所定の複数個のアンテナパラメータを遺伝的アルゴリズム等により最適化する(S123)。次に、サービスエリア20Aの全体のアンテナパラメータの値が、上記最適化されたパラメータの値でアップデートされる(S123)。なお、すべてのサブエリアについての上記S121~S123の処理はT回(T≧1)繰り返してもよい。
【0069】
パラメータ適用ステップ(S130)では、上記逐次エリア最適化ステップ(S120)が完了した後のサービスエリア20A内の各セルのアンテナパラメータの更新最終値が、実環境の中継通信局110におけるSLアンテナ111の制御設定値として適用される。
【0070】
なお、図4に例示したエリア最適化制御は定期的(例えば、1時間ごと又は2時間後ごとの周期的なタイミング)に実行してもよいし、又は、サービスエリア20A内のUE分布に大きな変化が生じるたびに(例えば、所定の監視エリア内のUE数の変化量が所定の閾値を超えたタイミングに)実行してもよい。
【0071】
上記エリア最適化制御を実行することにより、HAPS(上空プラットフォーム)10が地上に向けて形成する複数のセル20C(1)~20C(7)で構成されるサービスエリア20Aの全体で所望の通信品質(例えば、スループット)を得ることができる。
【0072】
しかしながら、上記エリア最適化制御では人口分布(又は、ユーザ分布、UE分布等)の取得や最適化計算処理に数分~数十分の時間がかかるため、HAPS(上空プラットフォーム)10の機体100が定点で滞空している場合には適用できるが、機体100の高速移動、旋回又は姿勢変化により機体100から見たユーザ分布(又はUE分布)が移動又は回転する場合には分布の変化に対してエリア最適化制御が間に合わないおそれがある。
【0073】
本実施形態では、FP(フットプリント)固定制御により機体100の旋回によるセル20C(1)~20C(7)の移動を補償するとともに、エリア最適化制御により各セル20C(1)~20C(7)のビームに対して補正を行っている。特に、本実施形態では、高頻度に制御可能なFP(フットプリント)固定制御を用いることで機体100の旋回によるセル20C(1)~20C(7)の移動を補償し、低頻度に制御を行うエリア最適化制御を用いて各セルのビームに対して補正を行うことで、機体100が高速移動、旋回又は姿勢変化が発生する環境下でも、アンテナパラメータの最適化によるビーム最適化を実現している。これにより、HAPS(上空プラットフォーム)10の機体100の高速移動、旋回又は姿勢変化が発生する環境下でも、サービスエリア20Aのカバレッジ及び通信容量の最大化を図ることができる。
【0074】
すなわち、表1に示すように、エリア最適化制御では、ユーザ(UE)分布の変化には対応できるが、HAPS10の機体100の高速移動、旋回及び姿勢変化には対応できない。一方、FP固定制御では、HAPS10の機体100の高速移動、旋回及び姿勢変化には対応できるが、ユーザ(UE)分布の変化には対応できない。そこで、本実施形態では、エリア最適化制御とFP固定制御とを組み合わせることにより、HAPS10の機体100の高速移動、旋回及び姿勢変化とユーザ(UE)分布の変化の両方に対応できる。
【表1】
【0075】
図5(a)及び図5(b)はそれぞれ、7個のセル20C(1)~20C(7)で構成されるサービスエリア20AにおいてFP固定制御を適用する前及びFP固定制御を適用した後のセルの配置の一例を示す説明図である。図示の例では、HAPS10の回転運動(ヨー回転の旋回)及び並進運動によるセル20C(1)~20C(7)のフットプリント20F(1)~20F(7)の移動の例である。
【0076】
HAPS10は、成層圏などの空中での気流や気圧などの影響により、機体100が高速移動(並進運動)、旋回(回転運動)又は姿勢変化するおそれがある。そのため、図5(a)に示すように複数セル構成では地上(又は海上等)に形成されるセル20C(1)~20C(7)のフットプリント20F(1)~20F(7)が移動することでサービスエリア20A内のセル境界部に位置する多数のUE(端末装置)が一斉にハンドオーバ(HO)することが想定され、HOによる制御信号の増加やHO失敗による通信断が発生するおそれがある。また、HOのみならずUEでの受信電力の低下(カバーエリアから外れる)の影響も考えられる。
【0077】
そこで、本実施形態のFP固定制御では、上記機体の高速移動、旋回又は姿勢変化によるHOの頻発や受信電力の低下に対する対策として、図5(b)に示すようにHAPS10の機体100が高速移動、旋回又は姿勢変化しても地上(又は海上等)におけるフットプリント20F(1)~20F(7)が移動しないように制御する。例えば、SLアンテナ111として複数のアンテナ素子を有するデジタルビームフォーミング(DBF)制御可能なアレイアンテナを用い、HAPS10の位置及び姿勢(例えば、所定方位に対する姿勢)の少なくとも一方の情報に基づいてSLアンテナ111の各アンテナ素子で送受信される信号に適用するアンテナウェイトを調整することにより、各アンテナ素子で送受信される信号の振幅及び位相を制御する。また、SLアンテナ111として所定の指向性特性を有するアンテナを用い、HAPS10の位置及び姿勢(例えば、所定方位に対する姿勢)の少なくとも一方の情報に基づいてSLアンテナ111の指向性方向を調整するようにSLアンテナ111を機械的に制御する。
【0078】
図6は、本実施形態に係る制御システムにおけるエリア最適化制御とFP固定制御との組み合わせの一例を説明図である。図6において、高頻度に(又は、常に連続して)実行するFP固定制御S220でサービスエリア20Aの各セルに向けてビームを固定しておき、FP固定制御よりも低頻度でエリア最適化制御S210を実行し、記憶装置(記憶部)115、950でアンテナパラメータ等の制御パラメータの値を共有することで、エリア最適化制御及びFP固定制御の2つの制御を両立させている。
【0079】
記憶装置115、950は、例えば、メモリ、又は、ビームフォーミング制御を行うBF基板等の制御基板上のレジスタで構成され、中継通信局110又は遠隔制御装置95に設けられる。例えば、エリア最適化制御及びFP固定制御を実行する制御装置(制御部)が上空のHAPS10の中継通信局110に設けられる場合は、中継通信局110に記憶装置115が設けられる。また、エリア最適化制御及びFP固定制御を実行する制御装置(制御部)が遠隔制御装置95に設けられる場合は、遠隔制御装置95に記憶装置950が設けられる。
【0080】
記憶装置115、950には、例えば、表2に示す機体100の位置情報の初期値(デフォルト値)、アンテナパラメータの初期値(デフォルト値)、エリア最適化制御後のアンテナパラメータの最適値のオフセット値等の情報が記憶される。表2の例において、機体100の位置情報は機体100の高度(hdef)、緯度(xdef,i)及び経度(ydef,i)の情報である。アンテナパラメータの初期値は、複数のセル20C(i)のそれぞれに対応する、水平ビーム方向、水平ビーム幅、垂直ビーム方向及び垂直ビーム幅の初期値(φdef_str,i、φdef_3dB,i、θdef_str,i、θdef_3dB,i)である。アンテナパラメータの最適値のオフセット値は、アンテナパラメータの初期値からの変化量であり、複数のセル20C(i)のそれぞれに対応する、水平ビーム方向、水平ビーム幅、垂直ビーム方向及び垂直ビーム幅のオフセット値(Δφdc_str,i、Δφdc_3dB,i、Δθdc_str,i、Δθdc_3dB,i)である。i(=1~7)はセルID(セル識別番号)である。
【表2】
【0081】
なお、アンテナパラメータの最適値のオフセット値の代わりに、エリア最適化制御後のアンテナパラメータの最適値そのものを記憶してもよい。また、記憶装置115、950には、FP固定制御S220で用いられる設定情報として、SLアンテナ111の素子パターンを考慮したアレイファクタ(固定パラメータ)の値も記憶されている。
【0082】
図7は、実施形態に係る通信中継装置(HAPS)10のヨー回転を考慮した場合のエリア最適化制御とFP固定制御との組み合わせによるセルの配置及びサイズの変化の一例を示す説明図である。図7中の黒丸はユーザ分布(UE分布)を示している。
【0083】
図7のエリア最適化制御S310,S320では、サービスエリア20Aのユーザ分布(UE分布)を考慮したアンテナパラメータの最適化制御により、複数のセル20C(i)のそれぞれに対するビームの幅を調整するとともに、当該ビームを所定の水平ビーム方向のオフセット値Δφdc_str,i度だけ回転させるように制御する。
【0084】
図7のFP固定制御S330,S340では、複数のセル20C(i)のそれぞれに対するビームを所定の角度φfp_str,i度だけ回転させるように制御することにより、機体100の回転を打ち消す。
【0085】
図7のエリア最適化制御とFP固定制御との組み合わせ制御S350では、複数のセル20C(i)のそれぞれに対するビームを所定の角度φfp_str,i+Δφdc_str,i度だけ回転させるように制御することにより、サービスエリア20Aのユーザ分布(UE分布)を考慮したエリア最適化とFP固定を同時に実施することができる。
【0086】
図8は、実施形態に係るエリア最適化制御及びFP固定制御を含む全体制御の一例を示すフローチャートである。図8は、FP固定制御S220においてSLアンテナ111が形成するビームの方向を制御するビームフォーミング制御(デジタル制御)を用いる例を示している。なお、図8の制御は、中継通信局110又は遠隔制御装置95に設けられたエリア最適化制御部及びFP固定制御部として機能する制御装置(制御部)で実行される。この制御装置は、後述の図12及び図13の装置構成例における遠隔制御装置95に設けられたFP固定制御装置951及びエリア最適化制御装置952に対応し、並びに、図14の装置構成例における中継通信局110に設けられたFP固定制御装置116及びエリア最適化制御装置117に対応する。なお、以下の図8図11の説明では、これらの制御を行う装置を区別せずに「制御装置」と記載する。
【0087】
図8において、本実施形態に係る全体制御は、記憶装置115、950を介してアンテナパラメータを共有する、低頻度に実行するエリア最適化制御S210と、高頻度に(又は、常に連続して)実行するFP固定制御S220とを含む。エリア最適化制御S210では、基地局装置80等から取得した複数のUE61の位置の情報に基づいてサービスエリア20Aにおける複数のUE61の分布に対応させて各セル20C(1)~20C(7)を形成するようにSLアンテナ111のアンテナパラメータを最適化する。FP固定制御S220では、HAPS10に搭載されたセンサ(例えばジャイロセンサ)等から取得した機体100の位置及び姿勢の少なくとも一方の情報に基づいて、サービスエリア20Aにおけるセル20C(1)~20C(7)のフットプリント20F(1)~20F(7)の位置を固定するようにSLアンテナ111が形成するビームの方向を制御する。
【0088】
図9は、図8の全体制御におけるFP固定制御S220の内部処理の一例を示すフローチャートである。FP固定制御S220では、まず、制御装置は、HAPS10に搭載されたセンサ(例えばジャイロセンサ)等から機体100の位置及び姿勢の情報を取得する(S221)。機体100の位置情報は、例えば予め定義された直交座標系における初期の位置を基準にした(原点とした)機体100の座標(x,y,z)である。機体100の姿勢情報は、初期の姿勢の移動方向を基準にした機体のヨー角y、ピッチ角p及びロール角rである。
【0089】
次に、制御装置は、直近のエリア最適化制御による最適化が完了した後のアンテナパラメータの最適値のオフセット値を、記憶装置115、950から読み出す(S222)。例えば、制御装置は、前述の表2に例示する各セル20C(i)に対応する水平ビーム方向、水平ビーム幅、垂直ビーム方向及び垂直ビーム幅のオフセット値(Δφdc_str,i、Δφdc_3dB,i、Δθdc_str,i、Δθdc_3dB,i)を、記憶装置115、950から読み出す。記憶装置115、950から読み出す情報は、前述の表2に例示する機体100の位置情報の初期値と、アンテナパラメータの初期値とを含んでもよい。
【0090】
次に、制御装置は、機体100の位置及び姿勢に応じたセル20C(i)に対するビームのステアリング方向(水平ビーム方向:φfp_str,i及び垂直ビーム方向:θfp_str,i)を計算する(S223)。
【0091】
次に、制御装置は、記憶装置115、950から読み出したエリア最適化制御後の水平ビーム方向、水平ビーム幅、垂直ビーム方向及び垂直ビーム幅のオフセット値を加算する(S224)。例えば、制御装置は、上記ステアリング方向の計算値(水平ビーム方向:φfp_str,i及び垂直ビーム方向:θfp_str,i)に、エリア最適化制御後の水平ビーム方向及び垂直ビーム方向のオフセット値(Δφdc_str,i、Δθdc_str,i)を加算し、FP固定制御に用いる所望の水平ビーム方向及び垂直ビーム方向の目標値(φstr,i=φfp_str,i+Δφdc_str,i、θstr,i=θfp_str,i+Δθdc_str,i)を得る。また、上記ビーム幅の初期値(水平ビーム幅:φdef_3dB,i及び垂直ビーム幅:θdef_3dB,i)に、エリア最適化制御後の水平ビーム幅及び垂直ビーム幅のオフセット値(Δφdc_3dB,i、Δθdc_3dB,i)を加算し、FP固定制御に用いる所望の水平ビーム幅及び垂直ビーム幅の目標値(φ3dB,i=φdef_3dB,i+Δφdc_3dB,i、θ3dB,i=θdef_3dB,i+Δθdc_3dB,i)を得る。
【0092】
次に、制御装置は、上記FP固定制御に用いる所望の水平ビーム方向及び垂直ビームの目標値(φstr,i、θstr,i)並びに所望の水平ビーム幅及び垂直ビーム幅の目標値(φ3dB,i、θ3dB,i)を考慮し、SLアンテナ111のアンテナ素子毎のアンテナウェイトを計算する(S225)。このアンテナウェイトの計算には、記憶装置115、950950から読み出したSLアンテナ111の素子パターンを考慮したアレイファクタ(固定パラメータ)が用いられる。
【0093】
次に、制御装置は、SLアンテナ111のアンテナ素子毎に計算したアンテナウェイトを、実環境の中継通信局110におけるSLアンテナ111のビームフォーミング制御の設定値として適用する。
【0094】
制御装置は、上記FP固定制御(S221~S226)を、後述のエリア最適化制御(S211~S213)の実行間隔よりも短い時間間隔で繰り返し実行する。
【0095】
図10は、図8の全体制御におけるエリア最適化制御S210の内部処理の一例を示すフローチャートである。図10のエリア最適化制御S210では、まず、制御装置は、基地局装置80等から、サービスエリア20Aに在圏する複数のUE61の位置の情報(端末位置情報)を取得又は推定する(S211)。
【0096】
次に、制御装置は、基地局装置80等から取得又は推定した複数のUE61の位置の情報(端末位置情報)に基づいて、エリア最適化によるビームの最適化計算を実行する(S212)。ビームの最適化計算では、例えば、サービスエリア20Aのユーザ分布(UE分布)を考慮したアンテナパラメータの最適化制御により、各セル20C(i)に対応する水平ビーム方向、水平ビーム幅、垂直ビーム方向及び垂直ビーム幅のオフセット値(Δφdc_str,i、Δφdc_3dB,i、Δθdc_str,i、Δθdc_3dB,i)を計算する。
【0097】
次に、制御装置は、アンテナパラメータの最適値として、上記ビーム最適化計算の計算結果を記憶装置115、950に書き込んで保存する(S213)。例えば、制御装置は、前述の表2に例示する各セル20C(i)に対応する水平ビーム方向、水平ビーム幅、垂直ビーム方向及び垂直ビーム幅のオフセット値(Δφdc_str,i、Δφdc_3dB,i、Δθdc_str,i、Δθdc_3dB,i)の計算結果を、記憶装置115、950に書き込んで保存する。
【0098】
ここで、前回のビーム最適化計算の計算結果(例えば、アンテナパラメータのオフセット値)が記憶装置115、950に保存済みの場合は、上記新たに計算されたビーム最適化計算の計算結果(例えば、アンテナパラメータのオフセット値)で更新される。また、上記計算結果の書き込み時にエラーが発生した場合は書き込みを行わず、記憶装置115、950に保存済みの値を更新しない。また、記憶装置115、950に書き込まれるビーム最適化計算の計算結果(例えば、アンテナパラメータのオフセット値)は、その変化量が一定以上にならないよう徐々に変化させてもよい。
【0099】
制御装置は、上記エリア最適化制御(S211~S213)を、前述のFP固定制御(S221~S226)の実行間隔よりも長い時間間隔で繰り返し実行する。
【0100】
図11は、実施形態に係るエリア最適化制御及びFP固定制御を含む全体制御の他の例を示すフローチャートである。図11は、FP固定制御S220においてSLアンテナ111の指向性方向を機械的に制御する例を示している。なお、図11において、前述の図8図10と共通する部分については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0101】
図11のエリア最適化制御S210において、制御装置は、サービスエリア20Aのユーザ分布(UE分布)を考慮したアンテナパラメータの最適化制御により、各セル20C(i)に対応する水平ビーム方向及び垂直ビーム方向のオフセット値(Δφdc_str,i、Δθdc_str,i)を計算する(S212')。制御装置は、アンテナパラメータの最適値として、上記水平ビーム方向及び垂直ビーム方向のオフセット値(Δφdc_str,i、Δθdc_str,i)の計算結果を、記憶装置115に書き込んで保存する(S213')。本制御例の記憶装置115は、例えば、上空のHAPS10の中継通信局110に設けられたメモリ、又は、制御基板上のレジスタである。また、本制御例では、水平ビーム幅及び垂直ビーム幅のオフセット値(Δφdc_3dB,i、Δθdc_3dB,i)の計算及び保存は不要である。
【0102】
図11のFP固定制御S220において、制御装置は、各セル20C(i)に対応する水平ビーム方向及び垂直ビーム方向のオフセット値(Δφdc_str,i、Δθdc_str,i)を、記憶装置115から読み出す(S222')。また、制御装置は、記憶装置115から読み出したエリア最適化制御後の水平ビーム方向及び垂直ビーム方向のオフセット値を、上記ステアリング方向の計算値(水平ビーム方向:φfp_str,i及び垂直ビーム方向:θfp_str,i)に加算し、FP固定制御に用いる所望の水平ビーム方向及び垂直ビーム方向の目標値(φstr,i=φfp_str,i+Δφdc_str,i、θstr,i=θfp_str,i+Δθdc_str,i)を得る(S224')。また、制御装置は、水平ビーム方向及び垂直ビーム方向の目標値(φstr,i、θstr,i)の計算結果を、実環境の中継通信局110におけるSLアンテナ111の指向性方向の機械的な制御の設定値として適用する(S225')。本制御例では、水平ビーム幅及び垂直ビーム幅のオフセット値(Δφdc_3dB,i、Δθdc_3dB,i)の読み出しは不要であり、水平ビーム幅及び垂直ビーム幅の目標値(φ3dB,i、θ3dB,i)の計算及び実環境への適用も不要である。
【0103】
図12は、本実施形態に係る制御システムの装置構成の一例を示す説明図である。図12の制御システムは、FP固定制御及びエリア最適化制御を実行可能な遠隔制御装置95を備える通信システムに適用可能な装置構成である。
【0104】
図12において、地上(又は海上)に設けられた遠隔制御装置95は、記憶装置(記憶部)950とFP固定制御装置(フットプリント固定制御部)951とエリア最適化制御装置(エリア最適化制御部)952とを備える。記憶装置950は、前述のアンテナパラメータのオフセット値などを記憶する。FP固定制御装置951は、予め組み込まれている制御プログラムを実行することにより前述のFP固定制御を実行する。エリア最適化制御装置952は、予め組み込まれている制御プログラムを実行することにより前述のエリア最適化制御を実行する。FP固定制御装置951で計算されたアンテナ素子毎のアンテナウェイトは、GW局70の無線中継装置71において、上空のHAPS10の中継通信局110との間で送受信される信号に適用される。
【0105】
上空のHAPS10の中継通信局110はリピータ型の中継通信局である。中継通信局110の無線中継装置(無線送受信装置)113は、GW局70の無線中継装置71から受信した上記アンテナ素子毎のアンテナウェイトが適用された信号を、SLアンテナ111の各アンテナ素子に送信する。また、無線中継装置113は、SLアンテナ111の各アンテナ素子から受信した信号を、GW局70の無線中継装置71に送信する。
【0106】
図13は、実施形態に係る制御システムの装置構成の他の例を示す説明図である。図13の制御システムは、FP固定制御及びエリア最適化制御を実行可能な遠隔制御装置95を備える通信システムに適用可能な装置構成である。なお、図13において、前述の図12と共通する部分については同じ符号を付し、その部分についての説明は省略する。また、なお、図13において、GW局70と上空のHAPS10の中継通信局110との間のユーザデータのフィーダリンク通信については省略する。
【0107】
図13において、FP固定制御装置951で計算されたアンテナ素子毎のアンテナウェイトは、GW局70の無線中継装置71を介して上空のHAPS10の中継通信局110に送信される。上空のHAPS10の中継通信局110は基地局装置114を有する基地局型の中継通信局である。中継通信局110の無線中継装置113は、GW局70の無線中継装置71から送信された上記アンテナ素子毎のアンテナウェイトを受信する。無線中継装置113は、SLアンテナ111の各アンテナ素子で受信されて基地局装置114に送られる受信信号にアンテナウェイトを適用し、基地局装置114で生成されてSLアンテナ111の各アンテナ素子に送られる送信信号にアンテナウェイトを適用する。
【0108】
図14は、実施形態に係る制御システムの装置構成の更に他の例を示す説明図である。なお、図14において、GW局70と上空のHAPS10の中継通信局110との間のバックホール回線のフィーダリンク通信については省略する。
【0109】
図14において、上空のHAPS10の中継通信局110は、基地局装置114と記憶装置(記憶部)115とFP固定制御装置(フットプリント固定制御部)116とエリア最適化制御装置(エリア最適化制御部)117とを備える。記憶装置115は、前述のアンテナパラメータのオフセット値などを記憶する。FP固定制御装置116は、予め組み込まれている制御プログラムを実行することにより前述のFP固定制御を実行する。エリア最適化制御装置117は、予め組み込まれている制御プログラムを実行することにより前述のエリア最適化制御を実行する。FP固定制御装置116で計算されたアンテナ素子毎のアンテナウェイトは、基地局装置114とSLアンテナ111との間で送受信される信号に適用される。
【0110】
以上、本実施形態によれば、上空中継型の通信中継装置であるHAPS10の機体100の高速移動、旋回又は姿勢変化が発生する環境下でも、サービスエリア20Aのカバレッジ及び通信容量の最大化を図ることができる。
【0111】
また、本発明は、高度20km程度の成層圏などから地上の端末装置に超広域の移動通信サービスを提供することができる大規模災害等を用途とした新たな通信プラットフォームを構築できるため、持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」の達成に貢献できる。
【0112】
なお、本明細書で説明された処理工程並びにHAPS等の通信中継装置の中継通信局、フィーダ局、ゲートウェイ局、遠隔制御装置、サーバ、端末装置(ユーザ装置、移動局、通信端末)、基地局及び基地局装置の構成要素は、様々な手段によって実装することができる。例えば、これらの工程及び構成要素は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又は、それらの組み合わせで実装されてもよい。
【0113】
ハードウェア実装については、実体(例えば、無線中継局、フィーダ局、ゲートウェイ局、基地局、基地局装置、無線中継局装置、端末装置(ユーザ装置、移動局、通信端末)、管理装置、監視装置、遠隔制御装置、サーバ、ハードディスクドライブ装置、又は、光ディスクドライブ装置)において前記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、1つ又は複数の、特定用途向けIC(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、デジタル信号処理装置(DSPD)、プログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、電子デバイス、本明細書で説明された機能を実行するようにデザインされた他の電子ユニット、コンピュータ、又は、それらの組み合わせの中に実装されてもよい。
【0114】
また、ファームウェア及び/又はソフトウェア実装については、前記構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、本明細書で説明された機能を実行するプログラム(例えば、プロシージャ、関数、モジュール、インストラクション、などのコード)で実装されてもよい。一般に、ファームウェア及び/又はソフトウェアのコードを明確に具体化する任意のコンピュータ/プロセッサ読み取り可能な媒体が、本明細書で説明された前記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段の実装に利用されてもよい。例えば、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば制御装置において、メモリに記憶され、コンピュータやプロセッサにより実行されてもよい。そのメモリは、コンピュータやプロセッサの内部に実装されてもよいし、又は、プロセッサの外部に実装されてもよい。また、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、フラッシュメモリ、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、磁気又は光データ記憶装置、などのような、コンピュータやプロセッサで読み取り可能な媒体に記憶されてもよい。そのコードは、1又は複数のコンピュータやプロセッサにより実行されてもよく、また、コンピュータやプロセッサに、本明細書で説明された機能性のある態様を実行させてもよい。
【0115】
また、前記媒体は非一時的な記録媒体であってもよい。また、前記プログラムのコードは、コンピュータ、プロセッサ、又は他のデバイス若しくは装置機械で読み込んで実行可能であればよく、その形式は特定の形式に限定されない。例えば、前記プログラムのコードは、ソースコード、オブジェクトコード及びバイナリコードのいずれでもよく、また、それらのコードの2以上が混在したものであってもよい。
【0116】
また、本明細書で開示された実施形態の説明は、当業者が本開示を製造又は使用するのを可能にするために提供される。本開示に対するさまざまな修正は当業者には容易に明白になり、本明細書で定義される一般的原理は、本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他のバリエーションに適用可能である。それゆえ、本開示は、本明細書で説明される例及びデザインに限定されるものではなく、本明細書で開示された原理及び新規な特徴に合致する最も広い範囲に認められるべきである。
【符号の説明】
【0117】
10 :HAPS(上空中継型の通信中継装置)
20A :サービスエリア
20C :セル
20F :フットプリント
61 :UE(端末装置)
70 :GW局
71 :無線中継装置
80 :基地局装置
90 :移動通信網(コアネットワーク)
95 :遠隔制御装置
100 :機体
110 :中継通信局
111 :サービスリンク用アンテナ(SLアンテナ)
112 :フィーダリンク用アンテナ(FLアンテナ)
113 :無線中継装置
114 :基地局装置
115 :記憶装置
116 :FP固定制御装置
117 :エリア最適化制御装置
950 :記憶装置
951 :FP固定制御装置
952 :エリア最適化制御装置
【要約】
【課題】機体の高速移動や姿勢変化が発生する環境下でも、サービスエリアのカバレッジ及び通信容量の最大化を図ることができる上空中継型の通信中継装置を提供する。
【解決手段】通信中継装置は、上空に位置する機体に設けられた中継通信局のサービスリンク用アンテナを介して地上又は海上のサービスエリアに向けて一又は複数のセルを形成し、前記セルに在圏する複数の端末装置と無線通信する。通信中継装置は、複数の端末装置の位置の情報に基づいて、サービスエリアにおける複数の端末装置の分布に対応させて前記セルを形成するように、サービスリンク用アンテナのアンテナパラメータを最適化し、機体の位置及び姿勢の少なくとも一方の情報に基づいて、サービスエリアにおけるセルのフットプリントの位置を固定するように、アンテナが形成するビームの方向又はアンテナの主指向性方向を制御する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14