(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】ウエハ載置台
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20241218BHJP
H01L 21/3065 20060101ALN20241218BHJP
H01L 21/31 20060101ALN20241218BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L21/302 101G
H01L21/31 F
(21)【出願番号】P 2023509407
(86)(22)【出願日】2022-09-02
(86)【国際出願番号】 JP2022033051
(87)【国際公開番号】W WO2024047857
(87)【国際公開日】2024-03-07
【審査請求日】2023-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久野 達也
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 太朗
(72)【発明者】
【氏名】石川 征樹
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/038044(WO,A1)
【文献】特開2021-150329(JP,A)
【文献】特開2022-119239(JP,A)
【文献】特開2008-130609(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/3065
H01L 21/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極を内蔵するセラミック基材を備え、前記セラミック基材の上面にウエハ載置面を有する上部基材と、
前記上部基材の下面側に配置され、冷媒を流通させる冷媒流路又は前記冷媒流路の側壁及び底を構成する冷媒流路溝を備えた下部基材と、
前記下部基材を上下方向に貫通する貫通穴と、
前記下部基材の上面の全体にドット状に設けられ、前記上部基材の下面と当接するか、又は、前記上部基材の下面の全体にドット状に設けられ、前記下部基材の上面と当接する複数の突起と、
前記突起を挿入する突起挿入穴を有し、前記上部基材と前記下部基材との間で圧縮された状態で配置された放熱シートと、
前記上部基材の下面のうち前記貫通穴に対向する位置に設けられたネジ穴と、
前記貫通穴に前記下部基材の下面から挿入され、前記ネジ穴に螺合されたネジ部材と、
を備え
、
前記貫通穴は、前記突起を貫通するように設けられている、
ウエハ載置台。
【請求項2】
電極を内蔵するセラミック基材を備え、前記セラミック基材の上面にウエハ載置面を有する上部基材と、
前記上部基材の下面側に配置され、冷媒を流通させる冷媒流路又は前記冷媒流路の側壁及び底を構成する冷媒流路溝を備えた下部基材と、
前記下部基材を上下方向に貫通する貫通穴と、
前記下部基材の上面の全体にドット状に設けられ、前記上部基材の下面と当接するか、又は、前記上部基材の下面の全体にドット状に設けられ、前記下部基材の上面と当接する複数の突起と、
前記突起を挿入する突起挿入穴を有し、前記上部基材と前記下部基材との間で圧縮された状態で配置された放熱シートと、
前記上部基材の下面のうち前記貫通穴に対向する位置に設けられたネジ穴と、
前記貫通穴に前記下部基材の下面から挿入され、前記ネジ穴に螺合されたネジ部材と、
を備え、
前記貫通穴は、前記冷媒流路又は前記冷媒流路溝と交差するように設けられ、
前記下部基材は、前記ネジ部材が挿入された前記貫通穴から前記下部基材の下面に前記冷媒が漏れ出すのを防止する冷媒漏出防止部材を有している、
ウエハ載置台。
【請求項3】
前記上部基材は、前記セラミック基材と、前記セラミック基材の下面に金属接合層を介して接合された金属製又は金属セラミック複合材料製の支持基材と、を備え、
前記ネジ穴は、前記支持基材の下面に設けられている、
請求項1
又は2に記載のウエハ載置台。
【請求項4】
前記放熱シートの熱抵抗は、0.35K・cm
2/W以下である、
請求項1又は2に記載のウエハ載置台。
【請求項5】
前記放熱シートのヤング率は、100MPa以下である、
請求項1又は2に記載のウエハ載置台。
【請求項6】
前記貫通穴は、前記冷媒流路又は前記冷媒流路溝と交差しないように設けられている、
請求項
1に記載のウエハ載置台。
【請求項7】
前記下部基材は、易加工性材料製である、
請求項1又は2に記載のウエハ載置台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハ載置台に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ウエハ載置面を有し電極を内蔵するセラミック基材と、セラミック基材のうちウエハ載置面とは反対側の面に配置された金属板とを備えたウエハ載置台が知られている。特許文献1には、こうしたウエハ載置台において、金属板に複数の貫通孔を設けると共に、セラミック基材の下面のうち各貫通孔に対向する位置にネジ穴を設け、各貫通孔に金属板の下面からネジ部材を差し込んでネジ穴に螺合してセラミック基材と金属板とを締結したものが開示されている。セラミック基材と金属板との間には、非接着性の熱伝導シート(放熱シートの一種)が配置される。熱伝導シートは、セラミック基材の熱を金属板に伝達する役割を果たす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2018/038044号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、ウエハ載置台を製造する際、端子穴等を避けて熱伝導シートを位置決めする必要があるが、熱伝導シートを位置決めする手段がないため、熱伝導シートが本来の位置からずれることがあった。また、熱伝導シートの潰れ量(ひいては熱伝導性)は各ネジ部材の締め付け具合に依存するため、各ネジ部材の締め付け具合にバラツキがあるとウエハの均熱性が悪化することがあった。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、ウエハ載置台を製造する際の放熱シートの位置決めを容易にすると共に、ウエハの均熱性を向上させることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明のウエハ載置台は、
電極を内蔵するセラミック基材を備え、前記セラミック基材の上面にウエハ載置面を有する上部基材と、
前記上部基材の下面側に配置され、冷媒を流通させる冷媒流路又は前記冷媒流路の側壁及び底を構成する冷媒流路溝を備えた下部基材と、
前記下部基材を上下方向に貫通する貫通穴と、
前記下部基材の上面の全体にドット状に設けられ、前記上部基材の下面と当接するか、又は、前記上部基材の下面の全体にドット状に設けられ、前記下部基材の上面と当接する複数の突起と、
前記突起を挿入する突起挿入穴を有し、前記上部基材と前記下部基材との間で圧縮された状態で配置された放熱シートと、
前記上部基材の下面のうち前記貫通穴に対向する位置に設けられたネジ穴と、
前記貫通穴に前記下部基材の下面から挿入され、前記ネジ穴に螺合されたネジ部材と、
を備えたものである。
【0007】
このウエハ載置台では、放熱シートは複数の突起を挿入する複数の突起挿入穴を有している。ウエハ載置台を製造する際、下部基材の上面の全体又は上部基材の下面の全体にドット状に設けられた突起を放熱シートの突起挿入穴へ挿入するため、放熱シートは容易に位置決めされる。また、ネジ部材は、上部基材と下部基材との間隔が突起の高さと一致するまでねじ込まれる。これにより、上部基材と下部基材との間に配置された放熱シートは、全体が突起の高さと同じ厚みかほぼ同じ厚みになるまで圧縮される。そのため、放熱シートの熱伝導性は場所によって大きく異なることがない。したがって、ウエハの均熱性が向上する。
【0008】
なお、本明細書では、上下、左右、前後などを用いて本発明を説明することがあるが、上下、左右、前後は、相対的な位置関係に過ぎない。そのため、ウエハ載置台の向きを変えた場合には上下が左右になったり左右が上下になったりすることがあるが、そうした場合も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0009】
[2]上述したウエハ載置台(前記[1]に記載のウエハ載置台)において、前記上部基材は、前記セラミック基材と、前記セラミック基材の下面に金属接合層を介して接合された金属製又は金属セラミック複合材料製の支持基材と、を備えていてもよく、前記ネジ穴は、前記支持基材の下面に設けられていてもよい。こうすれば、支持基材は、金属製又は金属セラミック複合材料製のため、セラミック基材に比べて熱伝導性に優れている。そのため、セラミック基材の熱を効率よく下部基材へ伝導することができる。
【0010】
[3]上述したウエハ載置台(前記[1]又は[2]に記載のウエハ載置台)において、前記貫通穴は、前記突起を貫通するように設けられていてもよい。こうすれば、貫通穴と連通する連通穴を放熱シートに設ける必要がないため、放熱シートの機能が十分に発揮される。
【0011】
[4]上述したウエハ載置台(前記[1]~[3]のいずれかに記載のウエハ載置台)において、前記放熱シートの熱抵抗は、0.35K・cm2/W以下であってもよい。こうすれば、上部基材の熱は下部基材へ速やかに伝導される。
【0012】
[5]上述したウエハ載置台(前記[1]~[4]のいずれかに記載のウエハ載置台)において、前記放熱シートのヤング率は、100MPa以下であってもよい。こうすれば、ネジ部材の締結力が放熱シートの全面にわたって均等に伝わりやすいため、放熱シートはその全面で上部基材と下部基材にしっかりと密着する。
【0013】
[6]上述したウエハ載置台(前記[1]~[5]のいずれかに記載のウエハ載置台)において、前記貫通穴は、前記冷媒流路又は前記冷媒流路溝と交差しないように設けられていてもよい。こうすれば、ネジ部材が挿入された貫通穴から冷媒が漏れ出すおそれがない。
【0014】
[7]上述したウエハ載置台(前記[1]~[5]のいずれかに記載のウエハ載置台)において、前記貫通穴は、前記冷媒流路又は前記冷媒流路溝と交差するように設けられていてもよく、前記下部基材は、前記ネジ部材が挿入された前記貫通穴から前記下部基材の下面に前記冷媒が漏れ出すのを防止する冷媒漏出防止部材を有していてもよい。こうすれば、ネジ部材を迂回して冷媒流路を設ける必要がないため、冷媒流路又は冷媒流路溝の設計の自由度が向上する。また、冷媒漏出防止部材により、ネジ部材が挿入された貫通穴から冷媒が漏れ出すのが防止される。
【0015】
[8]上述したウエハ載置台(前記[1]~[7]のいずれかに記載のウエハ載置台)において、前記下部基材は、易加工性材料製であってもよい。こうすれば、下部基材に冷媒流路又は冷媒流路溝を容易に形成することができるため、加工コストを低減できる。
【0016】
[9]上述したウエハ載置台(前記[1]~[8]のいずれかに記載のウエハ載置台)において、前記突起の側面と前記放熱シートの前記突起挿入穴の内周面との間、及び、前記突起の頂面と前記上部基材の下面との間の少なくとも一方に、熱伝導ペーストが介在するようにしてもよい。こうすれば、上部基材から下部基材への熱伝導が促進される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】チャンバ94に設置されたウエハ載置台10の縦断面図。
【
図3】ウエハ載置台10を放熱シート40で水平に切断した切断面を上から見たときの断面図。
【
図4】ウエハ載置台10の製造工程図(上部基材20の製造工程)。
【
図5】ウエハ載置台10の製造工程図(下部基材30の製造工程)。
【
図6】ウエハ載置台10の製造工程図(ウエハ載置台10の組立工程)。
【
図7】貫通穴36が突起38を貫通するように設けた別例の部分拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の好適な実施形態を、図面を参照しながら以下に説明する。
図1はチャンバ94に設置されたウエハ載置台10の縦断面図(ウエハ載置台10の中心軸を含む面で切断したときの断面図)、
図2はウエハ載置台10の平面図、
図3はウエハ載置台10を放熱シート40で水平に切断した切断面を上から見たときの断面図である。
【0019】
ウエハ載置台10は、ウエハWにプラズマを利用してCVDやエッチングなどを行うために用いられるものであり、半導体プロセス用のチャンバ94の内部に設けられた設置板96に固定されている。ウエハ載置台10は、上部基材20と、下部基材30と、放熱シート40と、ネジ部材50とを備えている。
【0020】
上部基材20は、セラミック基材21と、セラミック基材21の下側に配置された支持基材23と、セラミック基材21と支持基材23とを接合する金属接合層25とを備えている。上部基材20の厚みは、強度を考慮すると8mm以上や10mm以上であることが好ましく、冷却効率を考慮すると25mm以下であることが好ましい。
【0021】
セラミック基材21は、円形のウエハ載置面21aを備えている。ウエハ載置面21aには、ウエハWが載置される。セラミック基材21は、アルミナ、窒化アルミニウムなどに代表されるセラミック材料で形成されている。セラミック基材21は、ウエハ載置面21aに近い側に、ウエハ吸着用電極22を内蔵している。ウエハ吸着用電極22は、例えばW、Mo、WC、MoCなどを含有する材料によって形成されている。ウエハ吸着用電極22は、円板状又はメッシュ状の単極型の静電電極である。セラミック基材21のうちウエハ吸着用電極22よりも上側の層は誘電体層として機能する。ウエハ吸着用電極22には、ウエハ吸着用直流電源52が給電端子54を介して接続されている。給電端子54は、下部基材30、支持基材23及び金属接合層25を上下方向に貫通する穴に配置された絶縁管55を通過して、セラミック基材21の下面からウエハ吸着用電極22に至るように設けられている。ウエハ吸着用直流電源52とウエハ吸着用電極22との間には、ローパスフィルタ(LPF)57が設けられている。
【0022】
支持基材23は、セラミック基材21よりも一回り大きな円板であり、導電材料で作製されている。導電材料としては、例えば、複合材料や金属などが挙げられる。複合材料としては、金属とセラミックとの複合材料などが挙げられる。金属とセラミックとの複合材料としては、金属マトリックス複合材料(メタル・マトリックス・コンポジット(MMC))やセラミックマトリックス複合材料(セラミック・マトリックス・コンポジット(CMC))などが挙げられる。こうした複合材料の具体例としては、Si,SiC及びTiを含む材料やSiC多孔質体にAl及び/又はSiを含浸させた材料などが挙げられる。Si,SiC及びTiを含む材料をSiSiCTiといい、SiC多孔質体にAlを含浸させた材料をAlSiCといい、SiC多孔質体にSiを含浸させた材料をSiSiCという。金属としては、Moなどが挙げられる。支持基材23に使用する材料は、セラミック基材21に使用するセラミック材料との40~400℃の線熱膨張係数差の絶対値が1.5×10-6/K以下であることが好ましく、1.0×10-6/K以下であることがより好ましく、0.5×10-6/K以下であることが更に好ましい。支持基材23の厚みは、強度を考慮すると3mm以上や6mm以上であることが好ましく、冷却効率を考慮すると20mm以下であることが好ましい。
【0023】
支持基材23の下面には、複数のネジ穴24が設けられている。ネジ穴24は、後述する貫通穴36と対向する位置に設けられている。ネジ穴24は、支持基材23の下面に円柱穴を設けてその円柱穴に直接ネジ溝を切ることにより形成されているが、特にこれに限定されない。例えば、ネジ穴24を、円柱穴に螺旋状のネジインサートを挿入することにより形成してもよいし、円柱穴に特許文献1の雌ネジ付き端子(例えば袋ナットなど)を挿入してろう接してもよい。隣接する2つのネジ穴24の中心間間隔は、特に限定するものではないが、例えば100mm以下であることが好ましい。
【0024】
金属接合層25は、セラミック基材21の下面と支持基材23の上面とを接合する。金属接合層25は、例えば、はんだや金属ろう材で形成された層であってもよい。金属接合層25は、例えばTCB(Thermal compression bonding)により形成される。TCBとは、接合対象の2つの部材の間に金属接合材を挟み込み、金属接合材の固相線温度以下の温度に加熱した状態で2つの部材を加圧接合する公知の方法をいう。
【0025】
下部基材30は、易加工性材料製の円板部材である。本実施形態では、下部基材30の外径は支持基材23の外径と同じである。下部基材30は、冷媒流路35を内蔵している。冷媒流路35は、セラミック基材21が配置された全域に行き渡るように、冷媒流路35の入口35aから出口35bまで一筆書きの要領で渦巻き状に形成されている。入口35aは、ウエハ載置台10の外周側に設けられ、出口35bは、ウエハ載置台10の中央側に設けられている。入口35a及び出口35bは、図示しない冷媒冷却装置に接続されており、出口35bから排出された冷媒は、冷媒冷却装置で所定の低温になるように温度調整されたあと再び入口35aに戻されて冷媒流路35内に供給される。冷媒流路35を流れる冷媒は、液体が好ましく、電気絶縁性であることが好ましい。電気絶縁性の液体としては、例えばフッ素系不活性液体などが挙げられる。下部基材30に使用する易加工性材料は、支持基材23よりも加工が容易なものが好ましい。加工性の指標としては、例えば、JIS B 0170(2020)に示された被削性指数を用いることができる。易加工性材料としては、被削性指数が40以上の材料が好ましく、100以上の材料がより好ましく、140以上の材料がさらに好ましい。易加工性材料としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼(SUS材)などが挙げられる。
【0026】
下部基材30は、RF電源62に給電端子64を介して接続されている。そのため、下部基材30は、プラズマ発生用の高周波(RF)電極としても機能する。下部基材30とRF電源62との間には、ハイパスフィルタ(HPF)63が配置されている。
【0027】
下部基材30は、複数の貫通穴36を有する。貫通穴36は、ネジ部材50を挿入するための穴であり、冷媒流路35と交差しないように下部基材30を上下方向に貫通している。貫通穴36は、ネジ部材50の頭部50aを収納する大径部36aと、ネジ部材50の足部50bは通過するが頭部50aは通過不能な小径部36bとを有する。下部基材30の上面には、
図3に示すように、全体にわたって複数の突起38がドット状に設けられている。複数の突起38の少なくとも1つは、冷媒流路35の入口35aの直上に設けられている。突起38は、例えば扁平な円柱突起としてもよい。突起38の頂面は、上部基材20の下面(すなわち支持基材23の下面)と当接している。突起38の高さは、例えば0.05mm以上1mm以下が好ましく、0.1mm以上0.5mm以下がより好ましい。突起38は、下部基材30の上面の半径方向に直線状に並ばないように配置するのが好ましい。
【0028】
放熱シート40は、上部基材20の下面と下部基材30の上面との間に配置されている。放熱シート40は、複数の突起38の各々に対向する位置に突起挿入穴44を有している。突起挿入穴44は、放熱シート40を上下方向に貫通する穴である。突起挿入穴44には、突起38が挿入されている。ウエハ載置台10に組み付けられる前の放熱シート40の厚みは、突起38の高さよりも大きいが、ウエハ載置台10に組み付けられた後の放熱シート40の厚みは、突起38の高さと一致しているかほぼ一致している。そのため、放熱シート40は、上部基材20と下部基材30との間に挟まれて上下方向に圧縮されている。こうすることにより、放熱シート40は上部基材20の下面と下部基材30の上面にしっかりと密着するため、上部基材20の熱が下部基材30へ速やかに伝導する。放熱シート40は、導電性を有することが好ましい。放熱シート40の熱抵抗は、0.35K・cm2/W以下が好ましく、0.1K・cm2/W以下がより好ましい。放熱シート40のヤング率は、100MPa以下が好ましく、20MPa以下がより好ましく、5MPa以下がさらに好ましい。熱抵抗は、例えばASTM D5470に準じて測定することができる。放熱シート40は、接着性を有していないかほとんど有していない。
【0029】
放熱シート40は、具体的には、カーボン及び樹脂を含むシートであることが好ましい。カーボンとしては、グラファイトやカーボンファイバー、カーボンナノチューブなどが挙げられ、樹脂としては、シリコーン樹脂などが挙げられる。グラファイトの場合、グラファイトを構成するグラフェンの面方向が上下方向に沿うように配置するのが好ましく、カーボンファイバーやカーボンナノチューブの場合、軸方向が上下方向に沿うように配置するのが好ましい。放熱シート40の材料としては、例えばサーマル・インタフェース・マテリアル(TIM)を用いることができる。放熱シート40の具体例としては、EX20000C4S(デクセリアルズ社製)、GraphitePADやGraphiteTIM(登録商標)(いずれもパナソニック社製)などが挙げられる。放熱シート40のポアソン比は、0.4以下が好ましく、0.3以下がより好ましく、0.2以下がさらに好ましい。放熱シート40のポアソン比が小さいほど、ネジ部材50の締結力が放熱シート40の全面にわたって均等に伝わり、横方向に逃げにくいため、放熱シート40はその全面にわたって支持基材23と下部基材30にしっかりと密着する。そのため、ウエハWをより均一に冷却できる。放熱シート40のショア硬度(ShoreOO)は、50以上80以下としてもよい。
【0030】
ネジ部材50は、
図1の拡大図に示すように、大径の頭部50aと小径の足部50bとを有する。ネジ部材50は、冷媒流路35と交差しないように設けられた貫通穴36に下部基材30の下面から挿入され、支持基材23のネジ穴24に螺合される。ネジ部材50は、下部基材30の突起38の頂面が上部基材20の下面と接触するまでネジ穴24に螺合される。その結果、ネジ部材50の頭部50aは、貫通穴36の段差面36c(大径部36aと小径部36bとの境界)を上向きに押圧する。また、上部基材20の支持基材23と下部基材30とは放熱シート40を挟み込んだ状態で締結され、放熱シート40は上下方向に圧縮される。ネジ部材50の頭部50aは、下部基材30の下面から下方へ飛び出さないように大径部36aに収納されている。ネジ部材50は、本実施形態では、
図3に示すように、放熱シート40と同心円をなす複数(ここでは3つ)の円(
図3の1点鎖線)に沿って多数設けられている。ネジ部材50の材料は、導電性及び熱伝導性の良好な材料が好ましく、例えばステンレス鋼が好ましい。
【0031】
なお、金属接合層25の側面(外周面)、支持基材23の上面及び側面、下部基材30の側面は、必要に応じて絶縁膜で被覆してもよい。絶縁膜としては、例えばアルミナやイットリアなどの溶射膜が挙げられる。また、放熱シート40の外周を取り囲むように金属製又は樹脂製のOリングを配置してもよい。Oリングは、上部基材20と下部基材30との間で上下方向に圧縮されてシール性を発揮する。こうすることにより、放熱シート40はOリングによって保護される。
【0032】
次に、ウエハ載置台10の製造例を
図4~
図6を用いて説明する。
図4~
図6はウエハ載置台10の製造工程図であり、
図4は上部基材20の製造工程を示し、
図5は下部基材30の製造工程を示し、
図6はウエハ載置台10の組立工程を示す。
【0033】
上部基材20は、例えば以下のように作製する。まず、セラミック基材21を、セラミック粉末の成形体をホットプレス焼成することにより作製する(
図4A)。セラミック基材21は、ウエハ吸着用電極22を内蔵している。次に、セラミック基材21の下面からウエハ吸着用電極22まで穴21bをあけ(
図4B)、その穴21bに給電端子54を挿入して給電端子54とウエハ吸着用電極22とを接合する(
図4C)。
【0034】
これと並行して、円板状の支持基材23を作製し(
図4D)、支持基材23に上下方向に貫通する穴23bを形成すると共に支持基材23の下面の所定位置にネジ穴24を形成する(
図4E)。支持基材23の穴23bは、セラミック基材21の穴21bと連通可能な位置に形成される。セラミック基材21がアルミナ製の場合、支持基材23はSiSiCTi製かAlSiC製であることが好ましい。SiSiCTiやAlSiCであれば、熱膨張係数を、アルミナの熱膨張係数と概ね同じにすることができるからである。
【0035】
SiSiCTi製の支持基材23は、例えば以下のように作製することができる。まず、炭化珪素と金属Siと金属Tiとを混合して粉体混合物を作製する。次に、得られた粉体混合物を一軸加圧成形により円板状の成形体を作製し、その成形体を不活性雰囲気下でホットプレス焼結させることにより、SiSiCTi製の支持基材23を得る。
【0036】
次に、支持基材23の上面に円形の金属接合材を配置する。金属接合材には、支持基材23の穴23bに連通する穴を設けておく。そして、セラミック基材21の給電端子54を金属接合材の穴及び支持基材23の穴23bに挿入しつつ、セラミック基材21を金属接合材の上に載せる。これにより、支持基材23と金属接合材とセラミック基材21とを下からこの順に積層した積層体を得る。この積層体を加熱しながら加圧することにより(TCB)、上部基材20を得る(
図4F)。上部基材20は、支持基材23の上面に、金属接合層25を介してセラミック基材21が接合されたものである。
【0037】
TCBは、例えば以下のように行われる。すなわち、金属接合材の固相線温度以下(例えば、固相線温度から20℃引いた温度以上固相線温度以下)の温度で積層体を加圧して接合し、その後室温に戻す。これにより、金属接合材は金属接合層(あるいは導電接合層)になる。このときの金属接合材としては、Al-Mg系接合材やAl-Si-Mg系接合材を使用することができる。例えば、Al-Si-Mg系接合材を用いてTCBを行う場合、真空雰囲気下で加熱した状態で積層体を加圧する。金属接合材は、厚みが100μm前後のものを用いるのが好ましい。
【0038】
また、上部基材20の作製と並行して、易加工性材料を用いて下部基材30を例えば以下のように作製する。まず、下部基材30の元となる円板状で易加工性材料製の2つの円板部材31,32を準備する(
図5A)。円板部材31,32は、アルミニウム製、アルミニウム合金製又はステンレス鋼製であることが好ましい。次に、上側の円板部材31の下面に最終的に冷媒流路35となる溝35cを形成する(
図5B)。その後、上側の円板部材31の下面と下側の円板部材32の上面とを、図示しない接合材(例えばろう材など)で接合することにより、冷媒流路35を内蔵する下部基材30を作製する(
図5C)。そして、下部基材30の下面から冷媒流路35の底面までを上下方向に貫通する入口35a及び出口35bを形成するとともに、下部基材30を上下方向に貫通する端子孔30bを形成する。また、下部基材30の所定の位置に大径部36aと小径部36bとを有する貫通穴36を形成すると共に、下部基材30の上面の全体にわたって複数の突起38を形成する(
図5D)。
【0039】
次に、
図6A及び
図6Bに示すように、下部基材30の上面に、放熱シート40を配置する。放熱シート40は、下部基材30と同径の円形シートである。放熱シート40は、複数の突起38と対向する位置に放熱シート40を上下方向に貫通する突起挿入穴44を有すると共に、貫通穴36の小径部36bと対向する位置や端子孔30bと対向する位置に放熱シート40を上下方向に貫通する穴46,47を有している。放熱シート40は、突起挿入穴44に突起38を挿入することにより、穴46が小径部36bと対向し、穴47が端子孔30bと対向するように位置決めされる。この状態では、放熱シート40の厚みは、突起38の高さよりも大きい。また、突起挿入穴44の内周面と突起38の外周面との間には隙間が空いている。
【0040】
次に、上部基材20の給電端子54を端子孔30bに挿入しながら、下部基材30の上面に配置された放熱シート40の上に上部基材20を載せる。次に、各貫通穴36に対して、ネジ部材50を下部基材30の下面から挿入して支持基材23のネジ穴24に螺合する。ネジ部材50は、突起38が支持基材23の下面に接触するまでねじ込む。これにより、放熱シート40は支持基材23と下部基材30との間でほぼ均等に圧縮されて高い熱伝導性能を発揮する。その後、端子孔30bに、給電端子54を挿通する絶縁管55を配置する(
図6C)。以上のようにして、ウエハ載置台10を得ることができる。
【0041】
次に、ウエハ載置台10の使用例について
図1を用いて説明する。まず、ウエハ載置台10をチャンバ94の設置板96に設置する。具体的には、最初に、設置板96の上面と下部基材30の下面との間に、シール部材80,82a,82bを配置する。シール部材80は、外径が下部基材30の直径よりもやや小さい金属製又は樹脂製のリングであり、上下方向に圧縮可能である。シール部材82a,82bは、冷媒流路35の入口35a及び出口35bの開口縁に沿って配置される金属製又は樹脂製のリングであり、上下方向に圧縮可能である。次に、ネジ部材70を、設置板96の下面からネジ挿通孔97を介して下部基材30の下面に設けられたネジ穴39に螺合する。こうすることにより、シール部材82a,82bは上下方向に圧縮されてシール性を発揮して冷媒がシール部材82a,82bから外側に漏出するのを防止する。
【0042】
設置板96に設置されたウエハ載置台10のウエハ載置面21aには、円盤状のウエハWが載置される。この状態で、ウエハ吸着用電極22にウエハ吸着用直流電源52の直流電圧を印加してウエハWをウエハ載置面21aに吸着させる。また、温度調節した冷媒を冷媒流路35の入口35aに供給し、出口35bから冷媒を排出する。そして、チャンバ94の内部を所定の真空雰囲気(又は減圧雰囲気)になるように設定し、シャワーヘッド98からプロセスガスを供給しながら、下部基材30にRF電源62からのRF電圧を印加する。すると、ウエハWとシャワーヘッド98との間でプラズマが発生する。そして、そのプラズマを利用してウエハWにCVD成膜を施したりエッチングを施したりする。
【0043】
以上説明したウエハ載置台10では、放熱シート40は複数の突起38を挿入する複数の突起挿入穴44を有している。ウエハ載置台10を製造する際、下部基材30の上面の全体にドット状に設けられた突起38を放熱シート40の突起挿入穴44へ挿入するため、放熱シート40は容易に位置決めされる。また、ネジ部材50は、上部基材20と下部基材30との間隔が突起38の高さと一致するまでねじ込まれる。これにより、上部基材20と下部基材30との間に配置された放熱シート40は、全体が突起38の高さと同じ厚みかほぼ同じ厚みになるまで圧縮される。そのため、放熱シート40の熱伝導性は場所によって大きく異なることがない。したがって、ウエハWの均熱性が向上する。
【0044】
また、上部基材20は、セラミック基材21と、セラミック基材21の下面に金属接合層25を介して接合された金属製又は金属セラミック複合材料製の支持基材23と、を備え、ネジ穴24は、支持基材23の下面に設けられている。支持基材23は、金属製又は金属セラミック複合材料製のため、セラミック基材21に比べて熱伝導性に優れている。そのため、セラミック基材21の熱を効率よく下部基材30へ伝導することができる。
【0045】
更に、複数の突起38の少なくとも1つは、冷媒流路35の入口35aの直上に設けられている。上部基材20のうち冷媒流路35の入口35aの直上は、他の箇所に比べて冷媒によって冷却されやすいが、冷媒流路35の入口35aの直上に突起38が設けられているため、冷媒による過度な冷却を抑えることができる。
【0046】
更にまた、下部基材30の貫通穴36は、冷媒流路35と交差しないように設けられている。そのため、ネジ部材50が挿入された貫通穴36から冷媒が漏れ出すおそれがない。
【0047】
そしてまた、下部基材30は、易加工性材料で作製されている。これにより、下部基材30に冷媒流路35や突起38を容易に形成することができるため、加工コストを低減できる。また、下部基材30を金属とセラミックとの複合材料(例えばMMCやCMC)で形成した場合に比べて、材料コストを低く抑えることができる。
【0048】
放熱シート40の熱抵抗は、0.35K・cm2/W以下が好ましい。こうすれば、上部基材の熱は下部基材へ速やかに伝導される。放熱シート40のヤング率は、100MPa以下が好ましい。こうすれば、ネジ部材50の締結力が放熱シート40の全面にわたって均等に伝わりやすいため、放熱シート40はその全面で上部基材20と下部基材30にしっかりと密着する。
【0049】
支持基材23は、セラミック基材21との40~400℃の線熱膨張係数差の絶対値が1.5×10-6/K以下であることが好ましい。こうすれば、セラミック基材21と支持基材23との熱膨張差が小さいため、熱応力による上部基材20の反りや破損を抑制できるし、セラミック基材21と支持基材23とを接合する金属接合層25の破損も抑制できる。また、金属接合層25は、樹脂に比べてセラミック基材21と支持基材23との熱伝導を良好にする。
【0050】
支持基材23は、金属とセラミックとの複合材料製であることが好ましい。金属とセラミックとの複合材料は、セラミック基材21との線熱膨張係数差の絶対値を小さくすることができるし、セラミック材料よりも靱性が高いため熱応力が生じても破損しにくい。また、こうした複合材料は導電性を有するため、RF電極として使用することもできる。
【0051】
放熱シート40は導電性を有していることが好ましい。こうすれば、下部基材30は支持基材23や金属接合層25と同電位になるため、支持基材23や金属接合層25をRF電極として用いることができ、ウエハWの上方でプラズマを生成しやすくなる。なお、導電性のネジ部材50を使用し、下部基材30と支持基材23とをネジ部材50を介して同電位となるようにしてもよい。
【0052】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0053】
上述した実施形態では、下部基材30を上下方向に貫通する貫通穴36は、下部基材30の突起38を貫通しないように設けたが、特にこれに限定されない。例えば、
図7に示すように、貫通穴36が突起38を貫通するように設けてもよい。こうすれば、貫通穴36と連通する連通穴(
図6A,Bの穴46)を放熱シート40に設ける必要がないため、放熱シート40の機能が十分に発揮される。なお、
図7では上述した実施形態と同じ構成要素については同じ符号を付した。
【0054】
上述した実施形態では、下部基材30は冷媒流路35を内蔵するものとしたが、特にこれに限定されない。例えば、
図8に示すウエハ載置台110のように、下部基材130は、下部基材130の上面に開口する冷媒流路溝132を有するものとしてもよい。この場合、冷媒流路135は、冷媒流路溝132の開口が放熱シート40によって蓋をされることにより形成される。冷媒流路溝132は、冷媒流路135の側壁及び底を構成し、放熱シート40は、冷媒流路135の天井を構成する。こうすれば、下部基材130は、一枚の円板部材を加工することにより形成することができる。なお、
図8では上述した実施形態と同じ構成要素については同じ符号を付した。
【0055】
上述した実施形態では、上部基材20は、セラミック基材21と、セラミック基材21の下面に金属接合層25を介して接合され支持基材23と、を備え、ネジ穴24は、支持基材23の下面に設けられるようにしたが、特にこれに限定されない。例えば、
図9に示すウエハ載置台210のように、上部基材220は、セラミック基材221のみで形成されていてもよい。この場合、ネジ部材50をねじ込むネジ穴224はセラミック基材221の下面に設けられる。なお、
図9では上述した実施形態と同じ構成要素については同じ符号を付した。
【0056】
上述した実施形態では、下部基材30の貫通穴36は、冷媒流路35と交差しないように設けたが、特にこれに限定されない。例えば、
図10に示すウエハ載置台310のように、貫通穴336は、冷媒流路35と交差するように設けてもよい。貫通穴336は、上述した実施形態と同様、大径部336aと小径部336bとを備えている。貫通穴336の段差面336c(大径部336aと小径部336bとの境界)には、樹脂製又は金属製のOリング51が配置されている。Oリング51は、冷媒漏出
防止部材であり、貫通穴336の段差面336cとネジ部材50の頭部50aによって上下方向に圧縮されている。こうすれば、ネジ部材50を迂回して冷媒流路35を設ける必要がないため、冷媒流路35の設計の自由度が向上する。また、Oリング51により、ネジ部材50が挿入された貫通穴336から下部基材30の下面に冷媒が漏れ出すのが防止される。なお、
図10では上述した実施形態と同じ構成要素については同じ符号を付した。上述した
図8においても、貫通穴36を冷媒流路溝132と交差するように設けてもよい。
【0057】
上述した実施形態では、突起38の側面と放熱シート40の突起挿入穴44の内周面との間や突起38の頂面と上部基材20の下面(支持基材23の下面)との間に、何も充填しなかったが、特にこれに限定されない。例えば、
図11Cのウエハ載置台410のように、突起38の側面と放熱シート40の突起挿入穴44の内周面との間や突起38の頂面と上部基材20の下面(支持基材23の下面)との間に熱伝導ペースト60を介在させてもよい。なお、
図11では上述した実施形態と同じ構成要素については同じ符号を付した。ウエハ載置台410を作製するには、
図11Aに示すように、突起38の頂面に熱伝導ペースト60を塗布した後、
図11Bに示すように、下部基材30の上面に、放熱シート40を配置する。この状態では、突起挿入穴44の内周面と突起38の外周面との間には隙間が空いている。次に、上部基材20の給電端子54を端子孔30bに挿入しながら、下部基材30の上面に配置された放熱シート40の上に上部基材20を載せる。次に、各貫通穴36に対して、ネジ部材50を下部基材30の下面から挿入して支持基材23のネジ穴24に螺合する。ネジ部材50は、突起38が支持基材23の下面に接触するまでねじ込む。これにより、放熱シート40は支持基材23と下部基材30との間でほぼ均等に圧縮されて高い熱伝導性能を発揮する。それと共に、突起38の頂面に塗布されていた熱伝導ペースト60は、突起挿入穴44の内周面と突起38の外周面との隙間に入り込む。そのため、この隙間に空隙が残る場合に比べて、上部基材20から下部基材30への熱伝導が促進される。また、熱伝導ペースト60の一部は、突起38の頂面と支持基材23との間に留まる。突起38の頂面には微小な凹凸が存在するが、その凹凸が熱伝導ペースト60によって埋まる。そのため、突起38の頂面に微小な凹凸がそのまま残る場合に比べて、上部基材20から下部基材30への熱伝導が促進される。熱伝導ペースト60としては、熱伝導率が0.5W/mK以上のペーストが好ましく、1W/
mK以上のペーストがより好ましく、2W/
mK以上のペーストが更に好ましい。こうしたペーストとしては、例えばNOK社のTran-Qクレイ(熱伝導率2.8W/mK)、ヘンケル社のBERGQUIST TLF 6000HG(熱伝導率6.0W/mK)、信越化学工業社のX-23-7921-5(熱伝導率6.0W/mK)などが挙げられる。
【0058】
上述した実施形態では、突起38を下部基材30の上面の全体にドット状に設けたが、特にこれに限定されない。例えば、突起38を下部基材30の上面に設ける代わりに、上部基材20の下面(支持基材23の下面)の全体にドット状に設け、その突起の頂面が下部基材30の上面と当接するようにしてもよい。この場合も、上部基材20と下部基材30との間に配置された放熱シート40は、全体が突起の高さと同じ厚みかほぼ同じ厚みになるまで圧縮される。そのため、放熱シート40の熱伝導性は場所によって大きく異なることがなく、ウエハWの均熱性が向上する。
【0059】
上述した実施形態では、放熱シート40は導電性を有するものを例示したが、放熱シート40は絶縁性であってもよい。
【0060】
上述した実施形態では、セラミック基材21にウエハ吸着用電極22を内蔵したが、これに代えて又は加えて、プラズマ発生用のRF電極を内蔵してもよい。この場合、下部基材30ではなくRF電極に高周波電源を接続する。また、セラミック基材21は、ヒータ電極(抵抗発熱体)を内蔵してもよい。この場合、ヒータ電極にヒータ電源を接続する。セラミック基材21は、電極を1層内蔵していてもよいし、2層以上内蔵していてもよい。
【0061】
上述した実施形態では、冷媒流路35は入口35aから出口35bまで渦巻状に設けたが、冷媒流路35の形状は特に限定されない。
【0062】
上述した実施形態では、セラミック基材21はセラミック粉末の成形体をホットプレス焼成することにより作製したが、そのときの成形体は、テープ成形体を複数枚積層して作製してもよいし、モールドキャスト法によって作製してもよいし、セラミック粉末を押し固めることによって作製してもよい。
【0063】
上述した実施形態では、下部基材30を易加工性材料で作製したが、特にこれに限定されない。例えば、下部基材30を金属とセラミックとの複合材料で作製してもよい。但し、材料コストを考慮すると、アルミニウムやアルミニウム合金などの易加工性材料を用いることが好ましい。
【0064】
上述した実施形態のウエハ載置台10において、下部基材30の下面からウエハ載置面21aに至るようにウエハ載置台10を貫通する穴を設けてもよい。こうした穴としては、ウエハWの裏面に熱伝導ガス(例えばHeガス)を供給するためのガス供給穴や、ウエハ載置面21aに対してウエハWを上下させるリフトピンを挿通するためのリフトピン穴などが挙げられる。ガス供給穴やリフトピン穴が放熱シート40を貫通する箇所には、樹脂製又は金属製のOリングを配置するのが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明のウエハ載置台は、例えば半導体製造装置に用いられる。
【符号の説明】
【0066】
10 ウエハ載置台、20 上部基材、21 セラミック基材、21a ウエハ載置面、21b 穴、22 ウエハ吸着用電極、23 支持基材、23b 穴、24 ネジ穴、25 金属接合層、30 下部基材、30b 端子孔、31,32 円板部材、35 冷媒流路、35a 入口、35b 出口、35c 溝、36 貫通穴、36a 大径部、36b 小径部、36c 段差面、38 突起、39 ネジ穴、40 放熱シート、44 突起挿入穴、46,47 穴、50 ネジ部材、50a 頭部、50b 足部、51 Oリング、52 ウエハ吸着用直流電源、54 給電端子、55 絶縁管、60 熱伝導ペースト、62 RF電源、64 給電端子、70 ネジ部材、80,82a,82b シール部材、94 チャンバ、96 設置板、97 ネジ挿通孔、98 シャワーヘッド、110 ウエハ載置台、130 下部基材、132 冷媒流路溝、135 冷媒流路、210 ウエハ載置台、220 上部基材、221 セラミック基材、224 ネジ穴、310 ウエハ載置台、336 貫通穴、336a 大径部、336b 小径部、336c 段差面、410 ウエハ載置台。